2. 本義 育心理学 の紹介乳幼児期の子どもたちは遊びのなかで できることを少しずつ増やして 自らの自由や可能性を大いに広げていく そんな子どもたちの主体性を存分に引き出し 豊かな知性や人間性を育むための知識や技術が保育者には必要である したがって 本義を通して 子どもの知的発達や学びのしくみについ

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回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

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総合的な探究の時間 は 何を 何のために学ぶ学習なのか? 総合的な探究の時間 は与えられたテーマから みなさんが自分で 課題 を見つけて調べる学習です 総合的な探究の時間 ( 総合的な学習の時間 ) には教科書がありません だから 自分で調べるべき課題を設定し 自分の力で探究学習 ( 調べ学習 )

平成30年度シラバス作成要領

領域別正答率 Zzzzzzzzzzzzzzzzzzzzzz んんんんんんんんんんんんん 小学校 中学校ともに 国語 A B 算数( 数学 )A B のほとんどの領域において 奈良県 全国を上回っています 小学校国語 書く B において 奈良県 全国を大きく上回っています しかし 質問紙調査では 自分

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Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

授業概要と課題 第 1 回 オリエンテェーション 授業内容の説明と予定 指定された幼児さんびか 聖書絵本について事後学習する 第 2 回 宗教教育について 宗教と教育の関係を考える 次回の授業内容を事前学習し 聖書劇で扱う絵本を選択する 第 3 回 キリスト教保育とは 1 キリスト教保育の理念と目的

Ⅲ アンケート結果に対する FD 委員会としての評価 <アンケート実施に関する評価 > 〇授業評価アンケートについては FD 作業部会委員及び教務課職員が連携 協力し 実施後できるだけ早く教員に還元することに努めている ただ 授業の終盤に実施している関係で 非常勤の教員でアンケート未実施のケースが若

開設 全学共通科目 講義コード 科目ナンバー ZC103 講義名 手話入門 ⅠA 組 開講期 前期 担当者名 橋本一郎 受講可能学部 E/I/C/U 単位数 2 備考 科目の趣旨 手話という聴覚障害者のコミュニケーションツールの初歩レベルを学び あわせて 聴覚障害者を取り巻く社会的

「標準的な研修プログラム《

乳児期からの幼児教育について 大阪総合保育大学 大方美香


課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

2013 年度 統合実習 [ 表紙 2] 提出記録用紙 5 実習計画表 6 問題リスト 7 看護過程展開用紙 8 ( アセスメント用紙 1) 9 ( アセスメント用紙 2) 学生証番号 : KF 学生氏名 : 実習期間 : 月 日 ~ 月 日 実習施設名 : 担当教員名 : 指導者名 : 看護学科

7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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~この方法で政策形成能力のレベルアップが図れます~

3-2 学びの機会 グループワークやプレゼンテーション ディスカッションを取り入れた授業が 8 年間で大きく増加 この8 年間で グループワークなどの協同作業をする授業 ( よく+ある程度あった ) と回答した比率は18.1ポイント プレゼンテーションの機会を取り入れた授業 ( 同 ) は 16.0

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第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

いろいろな衣装を知ろう

平成 30 年 6 月 8 日 ( 金 ) 第 5 校時 尾道市立日比崎小学校第 4 学年 2 組外国語活動 指導者 HRT 東森 千晶 JTE 片山 奈弥津 単元名 好きな曜日は何かな? ~I like Mondays.~ 本単元で育成する資質 能力 コミュニケーション能力 主体性 本時のポイント

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5. 単元指導目標単元の目標 ( 子どもに事前に知らせる ) 小数 整数の意味を考えよう 小数 整数の計算の仕方を見つけ 計算できるようになろう 子どもに事前に知らせる どうまとめるのか 何を ( どこを ) どうするのか ( 作業 教える 考えさせる ) 何についてまとめるのか 1. 小数 整数の

平成 28 年度全国学力 学習状況調査の結果伊達市教育委員会〇平成 28 年 4 月 19 日 ( 火 ) に実施した平成 28 年度全国学力 学習状況調査の北海道における参加状況は 下記のとおりである 北海道 伊達市 ( 星の丘小 中学校を除く ) 学校数 児童生徒数 学校数 児童生徒数 小学校

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

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ハンドブックp10-14:東京都教育委員会

表 回答科目数と回答数 前期 後期 通年 ( 合計 ) 科目数 回答数 科目数 回答数 科目数 回答数 外国語 ( 英語 ) 120 / 133 3,263 / 4, / 152 3,051 / 4, / 285 6,314 / 8,426 外国語 ( 英語以

5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

~明日のコア人材を育成する参加型研修~

フトを用いて 質問項目間の相関関係に着目し 分析することにした 2 研究目的 全国学力 学習状況調査結果の分析を通して 本県の児童生徒の国語及び算数 数学の学習 に対する関心 意欲の傾向を考察する 3 研究方法平成 25 年度全国学力 学習状況調査の児童生徒質問紙のうち 国語及び算数 数学の学習に対

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H30全国HP

商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

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第 3 学年 2 組算数科学習指導案 1 単元名たし算とひき算の筆算 指導者永田佳江 2 単元について (1) 単元観 該当する学習指導要領の内容 A 数と計算 A(2) 加法, 減法 (2) 加法及び減法の計算が確実にできるようにし, それらを適切に用いる能力を伸ばす 本単元で扱う たし算とひき算

具体的な場面を設定し 実際に整理 整頓の計画を立てることで 実生活に繋げていくことができる よう指導していきたい また 第 3 次には環境とのかかわりについても押さえ 広い視野で考えられ るようにしていきたい 3 題材の目標 身の回りの整理 整頓に関心をもち 気持ちよく過ごそうとする 家庭生活への関

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2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

2/9 ページ 5. 一斉授業より 4 人班等による活動的な授業の方が積極的に参加できている る やや当る あまり当て ら る計 % 14

3 時限目日本にあるブラジル生まれの食べ物を知る 4 時限目なぜピラルクがへっているのかを考えて, 自分たちに何ができるのか考える 一部が隠れた写真を使い, 日本にあるブラジルのものを考える活動を行う 感想を交流する ピラルクがへっているのかを考えて, 自分たちに何ができるのか考える活動を行う 感想

の 問を提示して定着度を確認していく 1 分けて計算するやり方 70 = =216 2 =6 2 筆算で計算する方法 題材の指導計画 ( 全 10 時間扱い ) ⑴ ⑵ ⑶ 何十 何百 1 位数の計算 1 時間 2 位数 1 位数

8章 学びの基本編                   TFUリエゾンゼミⅠ 学びのナビゲーション『    』

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第 2 学年 * 組保健体育科 ( 保健分野 ) 学習指導案 1 単元名生涯の各段階における健康 ( イ ) 結婚生活と健康 指導者間中大介 2 単元の目標 生涯の各段階における健康について, 課題の解決に向けての話し合いや模擬授業, ディベート形式のディスカッションなどの学習活動に意欲的に取り組む

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スライド 1

5. 一斉授業より 4 人班等による活動的な授業の方が積極的に参加できている てはまる らはまら 2やや当てはまる % はまら り当ててはま ら はまらる

2/9 ページ 5. 一斉授業より 4 人班等によ活動的な授業の方が積極的に参加できてい 1よく当てはま やや当てはま 当て よく当 てはま 5わから % 3 あま

2/9 ページ 5. 一斉授業より 4 人班等による活動的な授業の方が積極的に参加できている 1よく当てはまる 当て 当ては まらな 5わから い % 5 6. 自

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

1 発達とそのメカニズム 7/21 幼児教育 保育に関する理解を深め 適切 (1) 幼児教育 保育の意義 2 幼児教育 保育の役割と機能及び現状と課題 8/21 12/15 2/13 3 幼児教育 保育と児童福祉の関係性 12/19 な環境を構成し 個々 1 幼児期にふさわしい生活 7/21 12/

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

本調査では 学習時間を十分に取っている子どもほど学業成績がよいという結果が明らかになりました 学習の 量 と 成績 は ある程度比例します この意味で 一定の学習時間を確保することは 学力を高めるのに重要な要素といえます しかし一方で 相対的に短い学習時間でも 学習方法の工夫によって成果を上げること

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

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1 国の動向 平成 17 年 1 月に中央教育審議会答申 子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児教育の在り方について が出されました この答申では 幼稚園 保育所 ( 園 ) の別なく 子どもの健やかな成長のための今後の幼児教育の在り方についての考え方がまとめられています この答申を踏まえ

濱名氏基調講演0204

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目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

スライド 1

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

l. 職業以外の幅広い知識 教養を身につけたいから m. 転職したいから n. 国際的な研究をしたかったから o. その他 ( 具体的に : ) 6.( 修士課程の学生への設問 ) 修士課程進学を決めた時期はいつですか a. 大学入学前 b. 学部 1 年 c. 学部 2 年 d. 学部 3 年 e

プレゼンテーションとは プレゼンテーションの構成

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

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指導内容科目国語総合の具体的な指導目標評価の観点 方法 読むこと 書くこと 対象を的確に説明したり描写したりするなど 適切な表現の下かを考えて読む 常用漢字の大体を読み 書くことができ 文や文章の中で使うことができる 与えられた題材に即して 自分が体験したことや考えたこと 身の回りのことなどから 相

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5. 単元について本単元は,2 年生 1 学期に学習した ともこさんはどこかな から引き続いての 話す 聞く の学習である ともこさんはどこかな では, 大事なことを落とさずに話したり聞いたりできるようにすることをねらいとして学習してきた 本単元では, これに加えて互いの話をしっかり聞いてやり取りを

目次 はじめに 1 Ⅰ. 調査の概要 1 Ⅱ. アンケート調査結果 ( 速報 ) 2 Ⅲ. 基礎集計 8 資料 アンケート調査票 11 アンケート依頼 15

5 児童の実態と主題に迫るための手だて (1) 児童の実態本学級の児童は明るく 男女の仲もよい いろいろな場面で声を掛け合ったり 仕事を手伝ったりできる児童も多い 話し合い活動では 友達の意見のいいところを取り上げて考えをまとめることができたり 人の意見を聞いて自分の考えを変えることができたりする児

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3 題材の目標 (1) (2) 4 題材の評価規準 ( 指導要録の四つの観点 ( 生活や技術への関心 意欲 態度 ) から題材の学習を通して目指す生徒の姿を示します ) 文章の語尾は 評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料 ( 中学校技術 家庭 ) 平成 23 年 11 月 ( 国立教

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生徒用プリント ( 裏 ) 入力した内容はすべて記録されている!! 印 : 授業で学んだこと 管理者のパソコンには どのパソコンから いつ どのような書き込みがされたか記録されています 占いだけではなく メールや掲示板の内容も同じように記録されています もし 悪意のある管理者から個人情報が洩れたらど

Transcription:

研究紀要 60 61 215 222 研究業 育心理学 の実施 中 村 多 見 Enforcement and reflection of an open class The educational psychology Tami Nakamura Abstract This paper is record of an open class performed in the Department of Early Children Education of Takamatsu Junior College. This class is performed by educational psychology. The content of this class is extrinsic motivation and intrinsic motivation. The aim of this class is to understand the reason why we act including learning and the memory from the general outline of motivation. Moreover, it is the aim of this class to understand how to give rewards affect the qualitative change of extrinsic motivation and intrinsic motivation. Key words : open class, educational psychology, motivation 1 研究業および検討会の日程 研究業 日時 2012年11月8日 木 4校時 14時40分 16時10分 場所 2101義室 2号館1階 業科目 育心理学 担当 中村多見 検討会 日時 2012年11月8日 木 5校時 16時20分 17時50分 場所 2104図工室2 2号館1階 提出年月日2013 年 11月30日 高松短期大学保育学科 215

2. 本義 育心理学 の紹介乳幼児期の子どもたちは遊びのなかで できることを少しずつ増やして 自らの自由や可能性を大いに広げていく そんな子どもたちの主体性を存分に引き出し 豊かな知性や人間性を育むための知識や技術が保育者には必要である したがって 本義を通して 子どもの知的発達や学びのしくみについて理解し 子どもが生き生きと主体的に学ぶことを支える 保育者になることを目指していく 3. 本義 育心理学 の受生育心理学は 幼稚園諭二種免許状取得のための必修科目 かつ卒業必修科目として位置づけられているため 毎年全員の保育学科生が受している 平成 24 年度後期の受生は 保育学科 1 年生 63 名と2 年生 1 名であった そのほとんどが保育職を目指す学生で 子どもや保育 幼児育についての関心は非常に高い また 前期業で得た子ども理解と 後期から始まる観察参加実習のおかげで より一層身近に感じられる業内容に熱心に取り組む学生は多い そのため 業への欠席 遅刻はほぼなく 私語のない静穏な業環境を保つことができている 4. 育心理学 の義内容と学生の理解 回 ( 日付 ) 義内容 第 1 回 (9/27) オリエンテーション 第 2 回 (10/4) 育と発達 第 3 回 (10/11) 知能と学力 学習の原理 1 第 4 回 (10/18) 第 5 6 回 (10/25) 第 7 回 * (11/8) 第 8 回 (11/15) 第 9 10 回 (11/29) 学習の原理 2 - 学習過程 記憶の成り立ち 意欲と動機づけ 1 意欲と動機づけ 2 育評価育測定と統計 学生の理解 育心理学を学ぶ理由を考え 理解する また 半期の業計画と受上の注意を知る 効果的な育のために必要な子どもの発達を理解し 個に応じた育の実現を目指す 知能の概要と学力との関係性について知り 人間の学習のしくみを理解する 人間の学習のしくみについての理解から それに合う法を知る 人間の記憶のしくみについて理解し 学習の成果を確かなものにするための工夫を知る 人間が行動する原動力になっている動機づけについて理解する 子どもが主体的に学ぼうと動機づける方法ややる気を高める働きかけと環境構成を知る 育評価の意義を知り それに適した方法で測定 分析 評価することを理解する -216-

第 11 回 (12/6) パーソナリティと適応 第 12 回 (12/13) これからの特別支援育 第 13 回 (12/20) 第 14 回 (1/10) 第 15 回 (1/24) 発達障害を持つ子どもの理解と対応 育相談の進め方 業のまとめ 個に応じた育を実現させるための適性処遇交互作用について理解する 特別支援育の概要と保育者に求められる障害理解の必要性について理解する 発達障害の概要を理解し 適切な保育対応について知る さまざまな育 / 保育相談に応じるためのカウンセリングマインドとテクニックを知る * 本時 5. 材とその工夫材 : テキスト レジュメ (A3 両面 右面はノート仕様 ) 出席確認票 ( 確認テスト付 : 毎時採点して返却し 前時と本時のつながりを明確にするために使用 ) 工夫 : レジュメはテキストの要点と補助 ( 図表等 ) を基本文章でまとめ 主要な箇所は穴埋めにして目立つようにしている 読解力を高め 漢字学習に役立てばと工夫している また レジュメが板書代わりになっているため 右面のノートは学生主体で質疑応答や追加内容 復習 試験対策等に活用できるようにしている 6. 研究業の指導案これまでの育心理学で 学生は 学習 や 記憶 といった子どもの知的発達と学びのしくみについて業を受けてきた その 学習 や 記憶 を含む人間のあらゆる行動がなぜ引き起こされるのかについて考えるのが本義のテーマ 意欲と動機づけ である 前半 (1) の本義では 動機づけの定義と種類について詳しく説明し 人間が行動する理由について理解することが第一のねらいである 第二のねらいは 報酬の与え方が動機づけの質的変化に大きくかかわっていることを知り 次週後半 (2) の 動機づけと育 -やる気を高める工夫- につなげていく予定になっている -217-

時間内容目標と留意点 ~14:40 材準備, 座席表の提示 その他 3 校時の片づけを手早く済ませる 14:40 レジュメ配布 前時確認テストの返却 14:55 15:30 15:55 16:10 挨拶 前時確認テストのチェック 意欲と動機づけ 動機づけの定義 Letʼs Challenge への回答 聞き取り 補足 動機づけの源 - 欲求と情動 (2 度目 ) Letʼs Challenge への回答 聞き取り 動機づけの種類 Letʼs Challenge への回答 聞き取り 両動機づけの関係 まとめ 出席確認票の配布, 提出 終了 ( 挨拶 ) 最前列に準備された配布物が全員に行き渡ったかを確認する 業の始まりを意識する 確認テストの模範回答から前時の復習を行い 誤解を正し より良い理解を深める 本時とのつながりを意識する 前時までの学習と記憶だけでなく 人間のあらゆる行動に目を向ける 人間が行動する理由について 動機づけの定義だけでなく その源泉にあたる欲求 情動についても発心 Ⅰ を振り返って確認する マズローの欲求階層理論から 育が人間の自己実現を支えるために 平和であることがいかに重要かも知る ( できれば感謝もしてほしい )! Letʼs Challenge! への回答から 人間が行動する理由が様々であることを実感し それが種類に分かれることを知る 両動機づけの特徴を把握し 育や学習において望ましいのはどちらかを理解する 報酬の与え方が動機づけの質的変化に大きくかかわっていることを知り 業内容の概略を図示し その理解度を確認テストでチェックする 次週への期待 ( 課題 ) を持たせ 出席を促す 7. 業を終えての自己省察今回 業者にとっては2 回目 6 年ぶりの研究業であった 前回に比べると 業内容や進め方 レジュメの工夫について 検討会で 落ち着きのある丁寧な業 学生傾向に熟慮された業 と評価された 研究業に臨むときの緊張は前回と変わりなかったが それでも学生の様子を確認しながら業を進め 話すテンポや順序 言葉遣いに配慮できるようになっていたことは自分なりの発見でもあった 今後も 業の精度を上げ 学生にとって分かりやすく残りやすい そして将来必ず役立つ業を展開できるよう精進すべきと覚悟を新たにした 以下に 研究業後に行われた検討会で指摘を受けた事項について自己省察する -218-

(1) 板書をしない業スタイルについてこの業スタイルは 業者が業をするようになって3 4 年目くらいから取り入れられた 初期は板書もしていたが どうしても板書に多くの時間を要し 学生との対話がままならない事態に直面したため 心理学という いかに自身の経験と重ねることができるか を実現させるための時間の効率化を図るためというのが第一の理由である また 板書を書き写すことができない ( 筆記用具やノートを持って来てなかったり そういう習慣がない等 ) 学生にも対応しなければならなかったことも第二の理由に挙げられる 時間の効率化や学生対応の結果ではあるが 業内容をできるだけしっかりと学生に理解してもらいたいという目的は明確に 学生に分かりやすく思い出しやすいレジュメを作成して配布することで 毎度大量の板書をせずに 学生との自由で双方向的な対話を重ねながら業を進めることができている なお 現在のレジュメのスタイルは前回の研究業時に 穴埋めだけでは安易すぎるのでは という指摘から発展させたものである 右面をノート仕様にすることで 学生が自由にメモしたり 質問への回答欄に使ったり 復習や試験勉強時のまとめの場にしたり活用できるように工夫してきたものである (2) 学生の理解度の確認について毎度 業を進めながら学生の様子を確認し 時には質問や対話を交えながら 業の理解度を確認している また 業終わりの出席確認を兼ねた確認テストでも 学生の解答内容 状況から理解度を確認し 次回業初めに模範解答と共に 間違いの指摘とその解説 理解の仕方等は丁寧に説明するよう心がけている 前回の研究業時にも 出席確認を兼ねた用紙を配布していたが 当時は単なる業への感想や質問 意見を書かせるだけであった その内容も理解度を確認することに役立ってはいたが それを含め こちらがねらいとして定めた業内容をしっかり理解しているかどうかを確認するためにテスト形式を採用したことは有益であった 現在も裏面に感想や質問 意見を書く欄はそのままに 学生が書きたいときに自由に書いてもらったり こちらが聞き取りたいことがあれば質問し回答してもらっている ただし 多人数のために その確認の正確さや確実さは保証しきれない できるだけ努めているが 抜け落ちがあることもまた自覚している 今後 どういった理解度を確認する術があるか模索しつづけることはもちろん 検討会でも提案のあった復習課題等の取り -219-

入れもチャレンジしていきたいと考えている (3) 観察参加実習との関連づけについて育心理学が一年生後期の業になってから 業で観察参加実習のことを引き合いに出して説明することが多くなっている やはり幼いころの自身の経験と重ねたり 頭の中で想像するだけでなく 今 経験していること と関連づけて話した方が学生の反応は断然いい そのため 意識して業の中に取り入れているが 研究業を経て その程度をもっと増やした方がいいことが分かった また より具体的に学生に聞き取っていく方が良いことも分かった 今後の課題にはなるが 観察参加実習だけでなく 他の業との関連づけ 連携を密にし 学生の学びを連続性ある体系的なものにすべく工夫していけたらと思う (4) 幼稚園育要領 保育所保育指針との関連づけについて今回業では 全く触れなかった 業内容によっては 一年生前期の発達心理学 Ⅰから始まって 育心理学でも話題にすることはある ただし 毎回必ずということはなく その程度が心配になった 今後 どういった関連づけができるか 自身の読み込みに努めていこうと思う 参考文献本郷一夫編著 2007 シードブック発達心理学保育 育に活かす子どもの理解 建帛社 *1 本郷一夫 八木成和編著 2008 シードブック育心理学 建帛社深堀元文編著 2010 図解でわかる心理学のすべて 日本実業出版社 *1 本義の使用テキスト 付記 最後に 研究業にご協力頂いた学生をはじめ 多くのご意見ご指導をくださった諸先 生方に心より御礼申し上げます * 以下は 研究業のレジュメである -220-

育心理学 第 7 回義 第 3 章 意欲と動機づけ① 動機づけの定義 人間はなぜ行動するのか 学習し 記憶するのはどうしてか 面白いから 将来のために 卒業できないと困るから 内容はいろいろと異なるものの すべての行動にはそれが生じ る 理由 が必ず存在する それを説明する概念が 動機づけ 意欲 やる 気 モチベーションとも言う であり その定義は 人間のすべての行動を起こし それを一 定の方向へ維持していくプロセスのこと を指す!Let s Challenge! あなたはなぜ 行動 するのか ① あなたは なぜご飯を食べる お腹が空くから 美味しいから 食べないと叱られるから ② あなたは なぜ友だちと遊ぶ 楽しいから ストレス解消のために 友だちを失くしたくないから ③ あなたは なぜ業に来た 興味があるから 単位取得のため 不可になったら困るから 補足 動機づけの源 欲求と情動 欲求と情動は 人間に行動を動機づける 例えば マズ ローの欲求階層理論 右図 によると 人間には生理的欲 求 安全の欲求 愛情と所属の欲求 承認の欲求 自己実 現の欲求があり 低次の欲求ほど強く それらが満たされ てはじめて より高次の欲求を感じることができるとして いる すなわち 最高次の自己実現の欲求を感じるために は より低次の欲求が十分に満たされた状態であることが 必要になる そして 楽しい 怖い 悲しい といっ た極めて本能的な心の作用である情動もまた 笑う 逃 げる 泣く といった行動をかりたてている 動機づけの種類 ① 内発的動機づけ 行動すること自体を目的として行動する動機づけ 自分の興味関心や好奇心に従って行動し 行動すること自体が目的になっている動機づけで ある あることが楽しいから行動するとか 面白いからやるといったものである 例えば 趣 味や遊びは誰かにやれと言われて仕方なくやるわけではないし やらなければならないと思っ てやっているわけでもない そのことを自分がやりたいと思って行動し 楽しさや面白さを感 じる 内発的動機づけは 自分の興味や関心に基づいているので 行動が自発的に生じる ま た 他者がかかわらなくても興味のある限り行動が継続するという特徴もある ② 外発的動機づけ 報酬と罰 目標のための手段として行動する動機づけ 報酬と罰 他者や周りの状況など 自分以外の外的要因に働きかけられて行動するという動 機づけである やりたいからやるというものではなく やらされるからやる やらないといけ ないからやるというものである 例えば 勉強嫌いな子どもの場合 特に何もなければ勉強し ないが 親や先生から叱られる 罰 からしぶしぶ勉強する または 成績が上がった 221

育心理学 第 7 回義 ら欲しい物を買ってあげる 報酬 という提案に乗って勉強するなど 外発的動機 づけは 行動することで報酬を受けたり 罰を回避したりするための手段になっているところ に特徴がある そのため 外的要因がなくなると 行動しなくなってしまう!Let s Challenge! 育や学習において望ましい動機づけはどっち 答え 内発的動機づけ 年齢とともに低下することが多い なぜだと思う 内発的動機づけと外発的動機づけの関係 前述のとおり 内発的動機づけと外発的動機づけは質的に異なる特徴をもっている 育や 学習においては 内発的動機づけこそが重要なものであり 外発的動機づけは悪である と考 えられやすい しかしながら 実はこの内発的動機づけと外発的動機づけはまったく独立の もしくは対立 するものではなく 連続性 をもつものであることが分かっている つまり 2 つの 動機づけは互いに 質的変化 する関係にあり それを生じさせるのは外的要因であ る 報酬 の与え方が大きくかかわっているとされている 内発的動機づけから外発的動機づけへの質的変化 アンダーマイニング現象 報酬そのものや報酬をもらえるという期待が 内発的動機づけを低減させたり 外発的動機 づけへと質的に変化させることがある 報酬や罰などを用いて 親やが子どもをコントロ ールしようとすると 子どもの自分で自分の行動を決めようという 自律性 自己決定 が損なわれ その結果やる気を失ってしまうのである ただし 報酬は報酬でも 言語的報酬 は 逆に内発的動機づけを高めることが分 かっており これを エンハンシング効果 と言う よく出来たね がんばっ たね などの結果についての情報提供 フィードバック が内発的動機づけの基盤である コンピテンス 有能感 を高めるためである 外発的動機づけから内発的動機づけへの質的変化 機能的自律性 アンダーマイニング現象とは逆に 無気力でほとんどやる気のなかったことや 嫌々ながら やる やらされていたことが いつの間にか楽しくなって自ら進んでやっていたというような ケースも実際多い これは 偶然にうまくいったことをまわりから褒められ承認されること 報酬 で やればできる という自信 有能感 コンピテンス が芽生え 自分からやってみよう という内発的動機づけを引き出すためと考えられる 例えば 親がすすめた習い事に子どもが 熱中していくことなどが挙げられる やる気のある子どもと ない子どもの違いは どのような 経験 や考え方をし ているかの違いであって 性格 上の特徴や問題では決してない 本来 人間には知的好奇心や探究心といったやる気が生まれながらに備わっている それ を周囲 親や の働きかけで損なうようなことだけは避けなければならない 222

研究紀要第60 61合併号 執 筆 井 上 英 晴 澤 田 文 男 藤 井 明日香 河 合 紀 宗 落 合 俊 郎 R.T.Williams 横 手 健 太 津 村 怜 花 関 由佳利 佃 昌 道 森 靖 之 藤 井 雄 三 水 口 文 吾 池 内 裕 二 中 村 多 見 溝 渕 利 博 者 紹 介 高松大学発達科学部 高松大学発達科学部 高松大学発達科学部 広島大学大学院 広島大学大学院 高松大学経営学部 高松大学経営学部 高松大学経営学部 高松大学経営学部 高松大学発達科学部 平成26年2月25日 平成26年2月28日 研 究 紀 要 第60 61合併号 印刷 発行 編集発行 高 松 大 学 761-0194 高松市春日町960番地 TEL 087 841 3255 FAX 087 844 4759 印 株式会社 美巧社 高松市多賀町1 8 10 TEL 087 833 5811 刷