写 2 6 台監第 4 3 号 平成 27 年 1 月 30 日 殿 台東区監査委員 丸山 幸秀 元田 秀治 小坂 義久 平成 26 年度行政監査の結果について ( 報告 ) 地方自治法第 199 条第 2 項の規定に基づき標記監査を実施しましたので こ の結果を同法第 199 条第 9 項の規定により 別紙のとおり報告します
1 テーマ 債権管理について 平成 26 年度行政監査結果報告 ( 別紙 ) 2 選定の目的歳入の確保や区民負担の公平を維持するうえで 収入未済対策は非常に重要な課題である 平成 25 年度の収入未済額は各課の債権回収の努力もあり 前年度に比較して増加額や増加率は鈍化したが 累積額を減らすまでには至っていない 今回の行政監査は各課における債権管理事務の現況を把握するとともに 滞納防止の取組みや未収金発生から消滅までの処理について調査することで さらなる健全な財政運営に資することを目的とするものである 非強制徴収公債権及び私債権の収入未済額の推移 ( 表 1) 平成 23 年度平成 24 年度平成 25 年度 一般会計 263,736,401 324,740,702 365,490,540 特別会計 22,700,765 23,718,352 27,901,830 合計 286,437,166 348,459,054 393,392,370 増減率 22% 13% 3 実施期間 平成 26 年 9 月 26 日 ( 金 ) から平成 27 年 1 月 28 日 ( 水 ) 4 債権の概要 (1) 債権の定義地方公共団体の債権は 地方自治法第 237 条第 1 項に公有財産 物品並びに基金とともに財産として規定されている また 地方自治法第 240 条第 1 項において 債権 とは金銭の給付を目的とする地方公共団体の権利とされている 1
(2) 債権の分類地方公共団体の債権は公法上の債権 ( 公債権 ) と私法上の債権 ( 私債権 ) に判別される 公法上の債権 ( 公債権 ) は地方税の滞納処分の例により強制徴収できるもの ( 強制徴収公債権 ) と地方税の滞納処分の例によることができないもの ( 非強制徴収公債権 ) に分類される 私法上の原因に基づいて発生した債権は私債権とされる 債 権 金銭債権 自治体が保有する金銭の給付を目的とする権利 ( 自治法第 240 条 ) 公債権 公法上の原因に基づいて発生する債権 ( 行政処分等 ) 強制徴収公債権 租税債権 地方税の滞納処分の例により強制徴収ができる債権 私債権 非強制徴収公債権 その他債権 私法上の原因に基づいて発生する債権 ( 契約等 ) 地方税の滞納処分の例によることができず 民事執行法による強制執行が必要な債権 2
(3) 各債権の比較 発生 不服申立 強制徴収公債権 行政処分等 ( 地方税法ほか個別法律の規定 自治法第 231 条 自治令第 154 条 ) 公債権 可 非強制徴収公債権 行政処分等 ( 自治法第 231 条 自治令第 154 条 ) 私債権 契約等 ( 自治法第 231 条 自治令第 154 条 ) 不可 根拠 地方税法ほか個別法律の規定 自治法第 231 条の 3 第 1 項 自治法第 231 条の 3 第 1 項 自治法第 240 条第 2 項自治令第 171 条 督促 効果等 時効中断の効果 ( 自治法第 236 条第 4 項 ) 民法第 153 条の規定にかかわらず時効中断の効力を有する 再督促は時効中断の効力を有しない 督促にかかる手数料及び延滞金の強制徴収可 ( 自治法第 231 条の 3 第 2 項 自治法第 231 条の 3 第 3 項 ) 督促にかかる手数料の徴収不可 強制執行の方法 財産調査 滞納処分 ( 地方税法ほか個別法律の規定 自治法第 231 条の 3 第 3 項 ) 調査権あり ( 地方税法第 298 条 ) 訴訟手続による債務名義の取得 ( 自治令第 171 条の 2) 任意調査のみ 保 全 地方税法ほか個別法律の規定 履行期限の繰上げ ( 自治令第 171 条の 3) 債権の申出 担保権の行使 ( 自治令第 171 条の 4) 執行停止 徴収停止等 地方税法ほか個別法律の規定 徴収停止 ( 自治令第 171 条の 5) 履行延期の特約 ( 自治令第 171 条の 6) 時効期間 原則 5 年 ( 自治法第 236 条第 1 項 ) 時効に関し他の法律に定めのあるものを除く 1 2 3 5 10 年 ( 民法第 167 条から第 174 条 商法第 522 条 ) 時効の援用不要 ( 自治法第 236 条第 2 項 ) 必要 ( 民法第 145 条 ) 消滅 時効消滅 時効期間の経過により消滅 ( 自治法第 236 条第 1 項 ) ( 地方税法ほか個別法律の規定 ) 時効期間の経過により消滅 ( 自治法第 236 条第 1 項 ) 時効の援用 ( 民法第 145 条 ) 債権放棄 ( 自治法第 96 条第 1 項第 10 号 ) により消滅 債務免除 地方税法ほか個別法律の規定 自治令第 171 条の 7 3
(4) 発生から消滅まで 非強制徴収公債権の発生から消滅まで 納付告知 納入通知 ( 自治法第 231 条 自治令第 154 条 ) 日常の債権管理 納期における納付 納期までに納付がないもの 督促 ( 自治法第 231 条の 3 第 1 項 ) 支払催告納付相談訪問徴収等 時効の中断 ( 自治法第 236 条第 4 項 ) 停止等 徴収停止 ( 自治令第 171 条の 5) 履行延期の特約 ( 自治令第 171 条の 6) 強制執行等 ( 自治令第 171 条の 2) 担保の実行 債務名義による強制執行 訴訟手続きによる債務名義の取得 保全 履行期限の繰り上げ ( 自治令第 171 条の 3) 債権の申出 担保権の行使 ( 自治令第 171 条の 4) 消滅時効 ( 自治法第 236 条第 1 項 ) 債権免除 ( 自治令第 171 条の 7) 債権放棄 ( 自治法第 96 条第 1 項第 10 号 ) による議決 不納欠損 4
私債権の発生から消滅まで 納付告知 納入通知 ( 自治法第 231 条 自治令第 154 条 ) 日常の債権管理 納期における納付 納期までに納付がないもの 督促 ( 自治法第 240 条第 2 項 自治令第 171 条 ) 支払催告納付相談訪問徴収等 時効の中断 ( 自治法第 236 条第 4 項 ) 停止等 徴収停止 ( 自治令第 171 条の 5) 履行延期の特約 ( 自治令第 171 条の 6) 強制執行等 ( 自治令第 171 条の 2) 担保の実行 債務名義による強制執行 訴訟手続きによる債務名義の取得 保全 履行期限の繰り上げ ( 自治令第 171 条の 3) 債権の申出 担保権の行使 ( 自治令第 171 条の 4) 時効の援用 ( 民法第 145 条 ) 債権免除 ( 自治令第 171 条の 7) 債権放棄 ( 自治法第 96 条第 1 項第 10 号 ) による議決 不納欠損 5
5 監査対象 平成 25 年度決算において非強制徴収公債権及び私債権 ( 以下 私債権等 ) を管理する課 子育て支援課 福祉課 高齢福祉課 介護保険課 保護課 国民健康保険課 台東清掃事務所 住宅課 交通対策課 学務課 児童保育課 青少年 スポー ツ課 12 課 6 実施方法 (1) 平成 25 年度歳入決算において収入未済額が10 万円以上の私債権等を管理する12 課 30 債権を対象とした ( 参考 1 行政監査監査対象債権及び主管課一覧 のとおり ) (2) 対象債権を管理する主管課に対して 調査シート及び事業の根拠法令規則 ( 条例 要綱等 ) 関係書類の提出を求め 内容の確認 分析をするとともに 必要に応じて担当職員に対する聞き取り調査を実施した ( 参考 2 平成 26 年度行政監査調査シート設問 のとおり ) 7 主な観点 (1) 債権管理業務に関する体制やマニュアル 帳票類は整備されているか (2) 滞納を未然に防止する取組みは 適切に行われているか (3) 未収金の発生から消滅までの手続きは 適正に行われているか 8 監査結果 (1) 調査シート及び関係書類等による調査 ア債権管理の体制について 債権管理を担当する職員数 ( 専任以外も含む ) ( 単位 : 件 ) 債権数 1 人 4 2 人 12 3 人以上 14 債権管理を担当する職員数をみると 1 人で担当しているものが全体の約 1 割である 6
職員の研修実施状況 ( 単位 : 件 ) 債権数 職場内研修を実施している 1 他機関等が主催する研修に職員を参加させている 8 職場内研修を実施し 他機関等が主催する研修にも職員を参加させている 0 研修を行っていない 21 債権管理を担当する職員への研修実施は 全体の3 割に止まっている 債権管理マニュアル等の整備状況 ( 単位 : 件 ) 債権数 整備されている 4 部分的に整備されている 9 作成中である 2 今後作成予定である 1 整備されていない 14 債権管理マニュアル等は 作成中のものも含め30 債権件中 15 債権で整 備されている イ台帳管理について 債権管理台帳の作成状況 ( 単位 : 件 ) 債権数作成している ( 紙台帳 ) 11 作成している ( 電子台帳 ) 10 作成している ( 紙台帳及び電子台帳 ) 6 作成していない 3 債権管理台帳は30 債権件中 27 債権で作成されている 債権管理台帳が作成されていない3 債権については 債権管理件数が少ないため 個別に管理シートが作成されている 7
債権管理台帳の記載内容 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 債権発生日 20 債務者の住所 19 債務者の氏名 27 債権額 27 納付日 26 納付状況の記録 18 督促の実施日 15 督促状況の記録 10 催告の実施日 19 催告状況の記録 14 その他 7 債務者の氏名と債権額は 全ての台帳で記載されている その他の内容は 弁護士との協議内容 生活状況 経過などである ウ債権回収について 督促状の発出状況 ( 単位 : 件 ) 債権数 納期限後 20 日以内 6 納期限後何日以内とは定めず 随時発出している 12 3か月分をまとめて概ね納期限から1か月以内に発出 2 6か月分をまとめて概ね納期限から1か月以内に発出 1 本人と会えた際 誓約書とともに納付書を発出 1 行なっていない 8 督促状の発出は 30 債権件中 22 債権で行われている 督促を行なって いない8 債権については 催告又は分納の手続きが行われている 催告の実施状況 ( 単位 : 件 ) 債権数 月に1 回以上 6 半年に1 回以上 4 1 年に1 回以上 13 必要に応じ 随時行っている 3 行なっていない 4 8
催告は 30 債権件中 26 債権で行われている 催告を行っていない 4 債権 については 督促又は分納の手続きが行われている 催告の方法 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 電話 16 訪問 14 書面 23 面談 9 その他 0 催告の方法は書面によるものが最も多く全体の約 8 割を占めている 納付相談の実施状況 ( 単位 : 件 ) 債権数行なっている 29 行なっていない 1 納付相談の状況をみると 30 債権件中 29 債権で行われている 行っていない1 債権については 債務者からの応答がないものである 納付がなされない主な理由 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 債務者の支払能力が不足している 27 債務者の所在が不明 22 債務者が既に亡くなっている 13 支払の利便性が十分でない 2 債務者に支払の意思がない 10 未納のまま海外に転出 2 納付がなされない主な理由をみると 債務者の支払能力が不足している が27 債権でもっとも多い 9
強制執行等の手続き状況 強制執行等の状況をみると 実際の手続きまで至っているものはない 参考: 強制執行の内容 担保権の実行手続き : 債権者が債務者の財産について抵当権などの担保権を有しているときに その担保を処分若しくは競売して換価代金から債権に充てる手続き強制執行手続き : 判決などの債務名義を得た人 ( 債権者 ) の申出に基づいて 相手方 ( 債務者 ) に対する請求権を裁判所が強制的に実現する手続き訴訟手続きによる履行の請求 : 簡易裁判所による支払督促 訴訟 少額訴訟などの請求 エ債権の保全について 債権保全の手続き状況 ( 単位 : 件 ) 債権数履行期限の繰り上げ 0 債権の申出等 1 行っていない 29 債権の保全については債務者に信用不安等が生じた場合の対応であり 債権保全の手続きが取られたものは30 債権件中 債権の申出等の1 債権である 参考: 債権保全の内容 履行期限の繰り上げ : 債権について履行期限を繰り上げることができる理由が生じたときは 遅滞なく 債務者に対し履行期限を繰り上げる旨の通知をする手続き ( 地方自治法施行令第 171 条の3) 債権の申出等 : 債権について 債務者が強制執行又は破産手続開始の決定を受けたこと等を知った場合において 法令の規定により当該地方公共団体が債権者として直ちに行う配当の要求その他債権の申出などのための措置をとること ( 地方自治法施行令第 171 条の4 第 1 項 ) 担保の提供 : 債権を保全するために必要があると認めるときに 債務者に対して求める担保の提供 ( 地方自治法施行令第 171 条の4 第 2 項 ) 10
強制執行等が実施できない理由 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 強制執行等の費用が債権の額を超えてしまう 3 調査等にかかる経費が債権の額を超えてしまう 3 法的手続きの着手のタイミング等方法がわからない 23 債務者の情報が得られない 19 債務者の支払能力が不足している 17 担当職員の不足 16 債務者が死亡している 1 催告中であるため 1 強制執行等が実施できない理由としては 法的手続きの着手のタイミング 等方法がわからない が7 割を超えている オ債権の停止等について 債権の停止等の状況 ( 単位 : 件 ) 債権数徴収停止 0 履行延期の特約 2 行っていない 28 債権の停止等の状況をみると 手続きが採られているものは30 債権件中 履行延期の特約が2 債権である 参考: 債権の停止等の内容 徴収停止 : 債権で履行期限後相当の期間を経過してもなお完全に履行されないものについて 一定の要件に該当し これを履行させることが著しく困難又は不適当であると認めるときは 以後その保全及び取り立てをしないこと ( 地方自治法施行令第 171 条の5) 履行延期の特約 : 債権について 債務者が無資力又はこれに近い状態にあるときあるいは 債務者が当該債務の全部を一時に履行することが困難であり かつ その現に有する資産の状況により 履行期限を延長することが徴収上有利であると認められるときなど所定の事由に該当する場合においては 当該債権の金額を適宜分割して履行期限を定める手続き ( 地方自治法施行令第 171 条の6) 11
カ消滅等について 債権の消滅等の状況 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 債務の免除 2 債権放棄 0 時効の援用 2 行っていない 28 債権の消滅等の手続きが取られているものは 30 債権中 4 債権である 参考: 債権の消滅等の内容 債務の免除 : 債務者が無資力又はこれに近い状態にあるため履行期限の延期する特約又は処分をした債権について当初の履行期限から 10 年を経過した後 なお同様の状態にあり弁済見込みがないと認められるときは当該債権を免除すること ( 地方自治法施行令第 171 条の7) 債権放棄 : 債権者の一方的な意思表示 ( 単独行為 ) により債務を消滅させること ( 地方自治法第 96 条第 1 項第 10 号 ) 時効の援用 : 債務者が時効の利益を受ける旨の主張をすること ( 民法 145 条 ) 公債権は時効期間の経過により債権が消滅するが 私債権においては未納のまま時効期間が経過しても債務者の時効の援用がなければ債権は消滅しない 債務者が行方不明等で時効の援用ができない場合は 債権者が債権の放棄を行わない限りその債権は消滅しない 地方自治体が債権放棄を行う場合は 議決が必要である なお 条例に特別の定めがある場合は 議決を要せず債権放棄が可能とされている ( 地方自治法第 96 条第 1 項第 10 号 ) 不納欠損手続き状況 ( 単位 : 件 ) 債権数行っている 9 行っていない 21 不納欠損手続き状況をみると 30 債権件中 21 債権で行われていない 12
不納欠損の手続きが実施できない理由 ( 複数回答 ) ( 単位 : 件 ) 債権数 私債権が時効を迎えても時効の援用ができない 9 債務者の情報がつかめない 7 債務者の所在が不明 5 手続き方法がわからない 5 手続きが必要とされる債権がないため 4 催告中又は債務者に支払う意思があるため 2 不納欠損の手続きが実施できない理由としては 私債権が時効を迎えても 時効の援用ができない が9 債権でもっとも多い 13
9 意見 上記の調査結果を基に 意見を述べるものである ア総括意見今回の監査結果において 債権管理事務については 概ね適切に処理がなされているが 多少困難な状況にあって やや対応不足と思料される部分もみられた 今後とも公平かつ公正に債権を管理し より一層合理的かつ能率的に事業を実施していくためには 債権管理業務の運営や滞納防止の取組み 収入未済対策をさらに充実させることが期待される そのための個別意見を以下に付す イ個別意見 (1) 債権管理業務について 債権管理業務は半数以上の債権において 1 名もしくは2 名の担当職員により遂行されている よって 当該債権管理に関わる職務知識やノウハウの継承は 業務を円滑に運営していく上で 特に重要である 現状では研修の実施は全体の3 割 マニュアルの整備も作成中のものを含め半数に止まっている このことから 担当職員の債権管理業務に対する理解をより深めるため 職場内研修などによる啓発や担当債権のマニュアル作成等を通じた知識の共有化など 人材育成を促進されたい 債権管理台帳は大半の債権で作成されているが 記載内容については個々の債権により異なっている 台帳に記載された情報は 納入の通知や入金管理等 日常業務を効率的に運営する上で必要なだけでなく 将来的に強制執行を行う場合には重要な意味を持つ 例えば 私債権等では区が督促を行っても納付がなされない場合には 裁判上の手続きによって 強制的に債務内容の実現を図ることとなる この際 督促の実施日や方法 または分納とした場合の最終納付日などは 債権の存在や法的な手続きの有無を裏付ける証拠となる このような視点を踏まえ 債権管理台帳の記載項目や内容については 適宜 精査や見直しを図られたい なお 債権管理台帳の他 個別管理シートやファイルを作成し 記録や証拠を管理している場合には 台帳との関連性を確認し 必要に応じて効率化を図られたい 14
(2) 滞納を未然に防止する取組みについて 貸付条例は対象となる全ての私債権で整備され 資格要件等が示されている なお 実際の貸付業務においては 債務の不履行を避けるため 事前の慎重な審査が不可欠である 今後とも審査においては本人確認の後 収入や資産 負債の状況から返済能力を公平かつ公正に判断した上で 貸付けの可否を決定されたい また 本人の返済能力に不安がある場合でも 制度の目的によっては貸付けが実施される場合もある その際は 保証人の返済能力を厳密に審査するだけなく 従来の実印による押印と印鑑証明書の添付に加えて 面前自署や電話又は郵便の照会などによる保証人の意思確認も徹底されたい なお 返済期限が到来していない分の債権を可能な限り回収するために民法 137 条では 期限の利益の喪失 を規定し 債務者が破産手続き開始決定や担保毀損など一定の場合に 債権者は残債務全額の一括請求を求められるとしている しかし 債務者の信用悪化までは至らない状況で分納が滞った場合などへ適用するためには この法令上の規定のみでは不十分であることから 貸付け等の場合など個々の内容や性格を踏まえて 履行延滞等による期限の利益の喪失規定などを入れるなどして必要な規定の整備を図られたい 滞納を発生させないためには 債務者の納付意識の醸成を図ることが肝要である 各課とも債権の原因発生時には調定を行ない 納入通知書を送付しているが 課によっては 債務者に向けて制度の理解を深めるためのパンフレットを配布するなど 積極的な働きかけも行われている 貸付金等の原資は税金であり 住民負担の公平性を確保する上でも 確実な納付は必須であることから 今後とも啓発の充実を図られたい 納付相談はほぼ全ての債権で行われており 行われていないものは債務者からの応答がないもののみである 相談業務の実効性をより一層高めるためには 債務者に事前に必要な資料を示し それらを持参して来庁相談することを促されたい 当該資料を基に 債務者より納付における課題のほか 収入や負債 財産の状況などを十分に聞き出し 的確に状況を把握した上で 法令等に従った実現可能な納付計画が立てられるよう指導されたい 15
(3) 収入未済対策について 債権回収に向けて 滞納時には全ての債権で 督促あるいは催告が実施されている また 夜間や休日における訪問徴収をはじめとする様々な取組みが 多くの債権で展開されている その一方 私債権等は督促の後 相当の期間を経過してもなお履行されない時は 一定の要件に該当する場合等を除き強制執行等の措置を取らなければならない ( 地方自治法施行令第 171 条の2) とされているが 法的な手続きまで至ったものはごくわずかである その理由として 調査票では 法的手続きの方法がわからない との回答が最も多く ヒアリングでは強制執行等に至るまでの手続きの複雑性や困難性を挙げるものが多かった このような状況から 債権管理業務に関しては内部統制部門が中心となって 可能な限り統一的な基準を提示し 各課における実務を支援していくことが肝要である 具体的には 公債権 私債権の分類をはじめ 債権管理台帳の基本記載事項 督促や催告及び強制執行等手続きの時期や方法 徴収停止や履行延期特約の取扱い 時効管理や不納欠損の手続きなどを明確化することにより 全庁的な取組みをより一層強化されたい また 訴えの提起 和解 調停などの手続きについては 債権額が一定金額以下の私債権に限り 専決処分により行える旨を議決している自治体も多くあるので これらを研究するとともに 議決を行う場合でも 簡易 迅速に議決が行えるように工夫されたい 今回の監査対象とした債権のうち発生から10 年以上経過したものが約半数に存在している 納付交渉の末 分納が行われている場合もあるが 私債権において債務者の所在不明や死亡などにより残存した債権の管理を継続している場合がその大半を占めている このような回収の見込みのない私債権を放棄するために 議決が必要であるが 少額かつ多数の債権それぞれに議決を求めることは現実的には困難である 地方自治法第 96 条第 1 項第 10 号では債権放棄のための議決を 法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除く としていることから 地方自治法施行令第 171 条の 7 における債務の免除規定の趣旨も鑑みつつ 条例によりその管理を委ねることも検討されたい なお 議決で債権放棄を行う場合でも放棄する債権一覧表に理由を附してまとめて処理するのが効果的と思料される 16
10 まとめ 今回の行政監査は 各課の債権管理事務の現況等の調査を通じて 職員の当 該業務に対する認識を深め 今後のより円滑な事業執行及び健全な財政運営に 資することを目的として実施したものである 今後とも予想される行政需要の拡大に対して 安定的に区民サービスを提供していくためには 着実な財源の確保は不可欠である 区ではこれまでも庁内検討組織を設け 債権管理を含む収入未済対策に取り組んできたが これをさらに充実させるとともに 各課においては 適正な債権管理と未収金の回収を徹底されたい この不断の取組みを通じ 区民の負担の公正性 公平性が維持され 区政への期待と信頼の向上が図られていくことを望むものである 17
行政監査監査対象債権及び主管課一覧 参考 1 主管課債権名 1 女性福祉資金貸付金元利収入元金 利子 2 ひとり親家庭等医療助成返納金 1 子育て支援課 3 児童扶養手当過年度過払分返還金 4 児童育成手当過年度過払分返還金 5 児童手当過年度過払分返還金 6 こども手当過年度過払分返還金 7 生業資金貸付金元利収入元金 利子 2 福祉課 8 応急福祉資金貸付金元金収入元金 9 保健福祉修学資金貸付金元金収入元金 10 老人保護措置費個人負担金 3 高齢福祉課 11 介護サービス費個人負担金 4 介護保険課 13 返納金 12 高齢者サービス ( 高齢者緊急一時保護自己負担金 ) 5 保護課 14 生活保護弁償金 15 生活保護返納金 16 高額療養費資金貸付金元金収入元金 6 国民健康保険課 17 老人保健医療返納金 18 一般被保険者返納金 7 台東清掃事務所 19 有料ごみ処理券手数料 20 従前居住者用住宅使用料 8 住宅課 21 住宅使用料 22 区民住宅共益費 23 特定優良賃貸住宅共益費 9 交通対策課 24 自転車売却益 10 学務課 25 幼稚園保育料 26 幼稚園 ( こども園在園者給食費 ) 27 こどもクラブ費個人負担金 11 児童保育課 28 一時保育等に係る保育料 29 認証保育所運営事業費等補助金返還金 12 青少年 スポーツ課 30 奨学資金貸付金元金収入元金 12 課 30 債権 18
平成 26 年度行政監査調査シート設問 参考 2 テーマ 債権管理について 区の債権は 公債権 と 私債権 に大別されます 公債権 は区が自ら強制徴収することができる 強制徴収公債権 と区が自ら強制徴収することのできない 非強制徴収公債権 とに分かれます 私債権 と 非強制徴収公債権 は 裁判所の手続きを経なければ強制執行できないことから 未収金の回収に時間を要する一因ともなっています 今般の行政監査では 主管課による債権管理の状況 関連法規の運用実態 未収金回収への取組み状況などを調査し 事業執行の適正性を監査します 対象とする事業については 監査事務局であらかじめ抽出しました 回答は別シートに記入し 監査事務局 > 書き込み>26 行政監査 : 債権調査の課別フォルダ内の調査シートに記載してください 25 年度の債権管理について伺います あらかじめシートに記載した内容等が異なっている場合は 赤字で上書き訂正ください < 基本事項 > 1. 所管課名 担当者名 内線番号 ( または電話番号 ) を記入してください 2. 債権の名称を記入してください 3. 根拠法令を記入してください 4. 平成 23 年度から平成 25 年度の収入未済額及び件数 5. 債権発生から一番古い債権の経過年数を記入してください ア.1 年以上 5 年未満イ.5 年以上 10 年未満ウ.10 年以上 < 主管課による債権管理の状況 > ( 債権管理の体制 ) 問 1. 債権管理の担当職員は何名ですか ( 専任以外の職員も含む ) ア 1 人 19
イ 2 人 ウ 3 人以上 エその他 ( 具体的に記入してください ) 問 2. 債権管理事務に従事する職員に対し研修は行っていますか ア行っている 問 3へイ行っていない 問 4へ 問 3. 実施している研修を選択してください ( 問 2でアと回答した場合のみ ) ア職場内研修を実施している (OJT を含む ) イ他機関等が主催する研修に職員を参加させているウ職場内研修を実施し 他機関等が主催する研修にも職員を参加させている 問 4. 債権管理マニュアル等は整備されていますか ア整備されているイ部分的に整備されている 問 6へウ作成中であるエ整備されていない 問 5へ 問 5. 今後 債権管理マニュアル等を作成する予定はありますか ( 問 4 でエと回答した場合のみ ) アある イない理由 ( ) ( 債権の発生 ) 問 6. 債権管理台帳を作成していますか ア作成している ( 紙台帳 ) イ作成している ( 電子台帳 ) ウしていない 問 8へ 問 7. 債権管理台帳の記載内容を選択してください ( 問 6 でア又はイと回答した場合のみ ) ア債権発生日 ( 複数回答可 ) イ債務者の住所ウ債務者の氏名エ債権額オ納付日カ納付状況の記録 20
キ督促の実施日ク督促状況の記録ケ催告の実施日コ催告状況の記録サその他 ( 具体的に記入してください ) ( 債権の回収 ) 問 8. 督促状の発出は行っていますか ア納付期限後 20 日以内イ納付期限後何日以内とは定めず随時発出しているウ行っていないエその他 ( 具体的に記入してください ) 問 9. 催告の頻度を選択してください ア月に 1 回以上イ半年に 1 回以上ウ一年に 1 回以上エしていない 問 11へオその他 ( 具体的に記入してください ) 問 10. 催告の方法を選択してください ( 複数回答可 )( 問 9でエ以外と回答した場合のみ ) ア電話イ訪問ウ書面エ面談オその他 ( 具体的に記入してください ) 問 11. 納付相談は行っていますか ア行っている イ行っていない 問 12. 納付がなされない主な理由を選択してください ( 複数回答可 ) ア債務者の支払能力が不足しているイ債務者の所在が不明ウ債務者が既に亡くなっている 21
エ支払いの利便性が十分でない オその他 ( 具体的に記入してください ) 問 13. 強制執行等 ( 地方自治法施行令第 171 条の 2) の手続きで行ったことのあるものを選択してください ( 複数回答可 ) ア担保権の実行イ強制執行手続ウ訴訟手続による履行の請求エ行っていないオその他 ( 具体的に記入してください ) ( 債権の保全 ) 問 14. 債権保全の手続きで行ったことのあるものを選択してください ( 複数回答可 ) ア履行期限の繰り上げ ( 地方自治法施行令第 171 条の 3) イ債権の申出等 ( 地方自治法施行令第 171 条の 4) ウ行っていないエその他 ( 具体的に記入してください ) 問 15. 強制執行等の法的手続きができない理由を選択してください ( 複数回答可 ) ( 問 13 でエ 又は問 14 でウと回答した場合のみ ) ア強制執行等の費用が 債権の額を超えてしまうイ調査等にかかる経費が 債権の額を超えてしまうウ法的手続きの方法がわからない ( 法的手続き着手のタイミング等 ) エ債務者の情報が得られない ( 所在 財産等 ) オ債務者の支払能力が不足しているカ担当職員の不足キその他 ( 具体的に記入してください ) ( 債権の停止等 ) 問 16. 債権の徴収停止等の手続きで行ったことのあるものを選択してください ( 複数回答可 ) ア徴収停止 ( 地方自治法施行令第 171 条の 5) イ履行延期の特約 ( 地方自治法施行令第 171 条の 6) エ行っていないオその他 ( 具体的に記入してください ) 22
( 債権の消滅 ) 問 17. 債権の消滅手続きで行ったことのあるものを選択してください ( 複数回答可 ) ア債務の免除 ( 地方自治法施行令第 171 条の 7) イ債権放棄 ( 要議会議決 ) ウ時効の援用エ行っていない 問 18. 不納欠損の手続きを行っていますか ア行っている イ行っていない 問 19 へ 問 19. 不納欠損の手続きを行っていない理由を選択してください ( 問 18 でイと回答した場合のみ ) ア私債権の時効を迎えても時効の援用ができない ( 複数回答可 ) イ債務者の情報がつかめないウ債務者の所在が不明エその他 ( 具体的に記入してください ) 問 20. 債権管理に対し 現在検討又は新たに取り組んでいる事項があれば記入してください ご多用の折 ご協力ありがとうございました 締め切りは 10 月 24 日 ( 金 ) です よろしくお願いします 問い合わせ先監査事務局内線 4511 23