ビタミン過剰が原因と疑われる牛の異常産について

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脂溶性ビタミン過剰が原因と疑われた牛異常産 西部家畜保健衛生所西讃支所 萱原由美 真鍋圭哲 1 はじめに近年 食の安心安全対策から牛乳成分の中でも体細胞数や細菌数についての規制基準が厳しくなったことで 酪農家の乳房炎対策への意識が高まっている 管内でも 乳質改善や乳房炎対策のため ビタミン A 単体や脂溶性ビタミン複合剤 (AD3E) を投与する酪農家が増加している 今回 乳房炎予防の目的で投与していた脂溶性ビタミン過剰が原因と推測される異常産発生があり 指導により改善したのでその概要を報告する 2 農場の概要と発生状況 ( 表 -1) 発生農場は乳用牛 58 頭の酪農経営で 泌乳量に応じて2 群 ( 高泌乳牛群グループ 低泌乳牛群グループ ) に分けてフリーバーン牛舎で飼養している 人工授精は地域で活動する家畜人工授精師に委託し 出生した交雑種と乳雄子牛は2ヶ月齢で出荷 乳雌子牛は後継牛として北海道の農場で約 1 年間育成し 初産前に再導入している 後継牛はそのほかにも 北海道産初妊牛を年間約 10 頭導入している 平成 19 年 3 月に 4ヶ月前から四肢が弱く 正常に起立できない子牛が続いて生まれると家保に相談があった 3 調査と病性鑑定 (1) 異常産子の状況 ( 表 2) 聞きとり調査で 平成 18 年 11 月から平成 19 年 6 月までの産子 40 頭のうち9 頭 (22.5%) が症状を示していたことを確認した 異常産子は 種別では交雑種 6 頭 乳用種 3 頭 性別ではオス4 頭 メス 5 頭 関節異常は前肢のみ3 頭 後肢のみ4 頭 四肢全肢 2 頭と様々であった また 母牛はすべて2 ~6 産の経産牛で 体調に異常はなく 予定日前後に出産し早産などの問題はなかった

(2) 病性鑑定子牛 3 頭 (No.7 No.8 No.9) を病性鑑定に用いた ( 表 3) 子牛は起立困難 四肢関節の異常がみられたが その他の外見に異常はなく 食欲もあり元気であった ( 図 -1) 四肢関節の症状は 前肢の球節 ( 中手指節関節 ) または後肢の中足趾節関節が伸展し 起立させようとすると 前肢はナックルになった 起立させると四肢の関節が伸展しているため副蹄が地面につくような状態になり 長時間起立することはできなかった 剖検では 関節に関節液の高度な貯留 球節の硬直がみられた 組織所見は著変はなく 細菌検査は陰性であった ウイルス抗体検査では 5 月に母牛に異常産ワクチンを接種したため 6 月生まれの子牛 (No.9) はアイノウイルス抗体が256 倍以上と高かったが アカバネウイルス チュウザンウイルスには動きはなく ウイルス遺伝子検査およびウイルス分離も陰性であった (3) 疫学的調査 ( 表 4) 飼料はすべて購入飼料で給与内容は18 年前から変えておらず 飲水は水道水であった 異常産子 9 頭の種雄牛を人工授精師に確認したところ 和牛 3 頭 ホルスタイン3 頭の凍結精液を受精しており 種雄牛の関連性は無かった また 周辺農家では同様の異常産の発生はなく 平成 17~19 年に近隣農家で実施した異常産ウイルス抗体調査でもウイルスの動きはなかった そこで さらに 最近の飼養管理の変更点を畜主に聞きとりしたところ 平成 18 年 4 月より乳房炎予防を目的に脂溶性ビタミン剤投与量を増やし 前年の4 倍量を使用していることが判明した

4 判明したビタミン剤の過量投与 (1) 投与方法と投与量 ( 表 5) 製品は要指示薬品でない 液体の動物用医薬品であり 有効成分は1 本 1リットル中 ビタミン A 2500 万単位 D 1250 万単位 E 1 万 5000 単位を含有 用法用量は1 日量 0.005~0.024ml/kg と明記しており この農家の平均の体重 620 キロの牛の1 日量は 3.1~14.88ml になる 実際の投与量は平成 18 年 3 月までは 導入時 100ml 産後 300ml(100ml を3 日連続投与 ) を経口投与していたが 同年 4 月以降は 産後投与量を 450ml(150ml 3 日 ) と増量したうえ さらに乳房炎予防のため高泌乳牛に 450ml(150ml 3 日 ) 投与を繰り返し 個体によっては毎週のように投与していたとのことである しかし どの牛に投与したかは 畜主もはっきりと記憶しておらず 記録を残していなかった (2) 脂溶性ビタミン要求量と充足率 ( 表 6) 日本飼料標準によると この農家の平均牛 ( 体重 620kg 泌乳量 35kg) の1 日要求量は ビタミンA 71,788 単位 D 6,200 単位 E 1,240 単位である 要求量からみた給与飼料中ビタミン ミネラル添加剤からの充足率はそれぞれ 216% 419% 40% であった ビタミンEの充足率は低いが 乾燥 穀類など基礎飼料に含有しているため 十分量摂取している このうえに乳房炎予防のために投与したビタミン剤は 1クールでビタミン A は 1 日要求量の157 倍 D は903 倍にもなっていた これを毎週のように投与することを一年間続けており 体内に高濃度に蓄積されたことが推察された

(3) ビタミン投与と異常産発生当該農家では高泌乳牛群 20 頭 低泌乳牛群 35 頭の2 群にわけて飼養しているが 異常産 9 頭は すべてビタミン過量投与した高泌乳牛群で発生し 発生率は75% であった 同時期の低泌乳牛群では28 頭うまれたが 異常産はなかった ( 表 -7) そこで さらに 異常産歴のある母牛 (No4 No5 No6 No8の母牛 ) 平成 4 頭と正常産の母牛 4 頭で血漿中ビタミン濃度を測定し比較した ( 図 -2) 異常産母牛は異常産後 3~6ヶ月経ち 6~9ヶ月以上ビタミン剤を投与していないが 正常産牛群と比べビタミンA D3 Eすべて高値を示し 特にビタミンAとEには有意な差があることから 牛体内に長期蓄積していることを確認した 以上よりまとめると 1 周辺農家では異常産はなく ビタミン投与量も適正量であった 2 当該農家ではビタミン剤を前年の4 倍量を反復投与し 母牛体内に蓄積していた 3 過量投与した高泌乳経産牛にのみ異常産が発生し 初妊牛と導入牛には発生がなかった 4 投与時期と異常産発生時期が連動している 5 細菌 ウイルスの関与がない これらのことから 母牛への脂溶性ビタミン剤過量投与が胎子に影響を及ぼし 異常産が発生したと推察した

5 農家への指導とその後の経過 (1) 指導項目聞きとり調査の過程で 明らかになったこの農家の問題点は1 脂溶性ビタミンの副作用の知識がなく 大量に投与すれば効果が高く 余分な量は尿に排出されると認識 2 使用説明書を読まずに投与 3 投与した牛個体番号などを記録していない ということが浮かび上がった そこで 診療獣医師とも協力し 対策を実施した ( 表 8) 指導項目は以下の4 点である 1 脂溶性ビタミンの過剰症 副作用について説明 2 高泌乳牛へのビタミン剤投与を中止 3 用法用量の遵守など適正使用につとめる 4 投与年月日 牛の個体番号 投与量を記録し 過量投与を防止 (2) その後の経過月別産子数と異常産数 ビタミン給与時期を図 -3に示した ビタミン過量投与を開始してから 7ヶ月後の11 月に初発があり 3 月に投与中止を指示など対策した後は 3ヶ月後の6 月に発生した 1 頭を最後に発生は終息した

6 まとめと考察ビタミン A D E は脂溶性ビタミンであり 要求量以上を摂取すると体内に蓄積する 牛の過剰症状としては ビタミン A 過剰では 成長不全 骨の発育異常 子牛に多給するとハイエナ病になり ビタミン D 過剰は食欲不振 下痢 また全身に石灰沈着したり 関節強直になることが知られている ビタミンEは 報告がなく 過剰症状はないとされている ( 表 9) ビタミン A は 反芻動物はルーメン微生物によりビタミンAが破壊されるので 非反芻動物より耐性が高いといわれているが 要求量の100~1000 倍量を長期連続投与すると 食欲減退 体重減少 骨肥大増殖などの慢性中毒症状が発生するとの報告がある また ビタミンEは 毒性が極めて弱く 適量の100 倍以上を接種しても有害作用はないとされる 脂溶性ビタミン過剰による牛の異常産の報告はないが 人やその他の動物では VA 過剰による催奇形性があることが知られており また妊娠ラットにVD3を大量投与すると 胎子の骨形成の障害がでるとの報告もある 今回の症例では 当初 原因をウイルスと疑っていたため 詳細な病理学検査や子牛血液と肝臓のビタミンAを測定しなかったことが悔やまれたが 原因は過剰なビタミンAまたは Dと推察した 近年 乳房炎対策としてビタミン剤を投与する酪農家が増えており これからも同様の発生がないよう広く危険性を啓発していきたい 参考文献 (1)J.M.Payne: 牛の栄養障害と代謝病,112-122, チクサン出版社 (1991) (2) 農林水産省経済局編 : 家畜共済における臨床病理検査要領,201-212,541-545 全国農業共済協会 (3) 内藤善久 浜名克己 元井葭子 : 生産獣医療における牛の生産病の実際,99-112, 文永堂出版 (4) 矢野秀雄 石橋晃 : 飼料学 (37), 畜産の研究, 第 61 巻, 第 5 号,613-620(2007) (5) 内藤善久 高木久 : 骨と脂溶性ビタミン- 牛ハイエナ病の病因に関連して-, 栄養生理研究会報,39(2),117-127(1995) (6)Paul M.Newberne ら ; 獣医臨床生化学第 4 版,798-833, 近代出版 (1991) (7) 林寛 : 栄養学総論,106-117, 三共出版