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第 36 回 優秀環境装置 日本産業機械工業会会長賞 住友重機械エンバイロメント株式会社 1. 開発経緯 1.1 開発の趣旨近年 ビール 飲料工場や食品工場では排水処理に UASB EGSB 等の嫌気性処理が採用されることが多い しかし UASB EGSB システムに高濃度 SS が流入すると 設備に悪影響を及ぼすことがある このため 高濃度 SS が排出される工場では UASB EGSB の前段に初沈槽や加圧浮上槽を設けて これを防止している これら初沈槽や加圧浮上槽で分離された濃縮汚泥は余剰汚泥と混合し 脱水されて場外搬出され コンポスト化等されているが この処理エネルギーと処理コストは比較的大きい そこで初沈汚泥の可溶化 ( 減容 ) および可溶化液からのエネルギー回収を目的とし SS 可溶化システムを開発した 1.2 開発目標 1 有機汚泥 (VS) 可溶化率 40% 以上 2 安全性とコストメリットを踏まえた加温エネルギーを考慮のこと 3 効果的な可溶化槽内攪拌ができること 4 シンプルかつコンパクトな装置構成とすること 5 原価回収 3 年以内とすること 1.3 開発経緯 2001.10 SAT(Super Anaerobic Treatment) アサヒビール株式会社との嫌気性処理共同開発チーム結成 2002.03 同チームで嫌気処理排水中の SS 分離装置および可溶化の試験開始 2003.10 SS 可溶化システム関係特許出願 2003.12 SS 可溶化槽関係特許出願 2004.09 SS 可溶化システム関係特許出願 2004.10 概略可溶化条件決定 可溶化液からのメタンガス回収量確認 2005.12 SS 可溶化を含む低濃度嫌気処理設備 1 号機を納入 2007.03 嫌気処理排水中の SS を対象とした可溶化詳細条件決定 (SAT チーム活動終了 ) 2007.07 SS 可溶化対象汚泥を初沈汚泥に変更 2008.06 可溶化槽攪拌適正化 アルカリ回収量の確認 2008.08 SAT-Chel 商標出願( 09.02 登録商標第 5209243 号 ) 2008.09 商品基本システムおよび機器特許出願 ( 特願 2008-238453) 2008.10 初沈汚泥を対象とした新型 SS 可溶化システムとして 2 号機を納入 2009.12 3~6 号機納入 -49-

2. 装置説明 2.1 SS 可溶化 +メタンガス回収システム の概要本システムは熱アルカリおよび機械的せん断力により良好な可溶化反応を実現させた 効率的な温度コントロールと NaOH 添加制御によりベストな可溶化条件を維持させ 更に反応槽では特殊な流れと効果的なせん断力を発生させ 可溶化率の向上を図っている 本システムフローを図 2-1 に示す biogas effluent influent Steam NaOH excess sludge sedimentation tank P P P P [SAT-Chel] sludge solubilization system UASB (EGSB) system 図 2-1 SAT-Chel システムフロー例まず 初沈引抜汚泥や加圧浮上フロスを可溶化槽へ受け入れ 熱アルカリとせん断力により可溶化処理する 可溶化液は初沈槽または加圧浮上槽入口に戻され 可溶化液の SS( 未可溶化分 ) は再度分離され 濃縮汚泥の一部として引き抜かれる 可溶化液上澄み中の溶解性有機物は UASB EGSB で嫌気性処理され メタンガスとしてエネルギー回収される ( 特許出願済み ) また アルカリ性の可溶化液を初沈へと返送するため 酸発酵の進んだ排水の中和剤としてアルカリが回収再利用され 更には初沈槽がアルカリ側となることで 初沈槽での臭気発生が抑制されるというメリットもある SS 可溶化槽の実機写真を図 2-2 2-3 に示す 図 2-2 1 号機写真 図 2-3 2 号機写真 -50-

2.2 SS 可溶化の原理 (1) 装置の構成装置概略構成を図 2-4 に示す 本申請の SS 可溶化 +メタンガス回収システム は 2 初沈槽 ( または前段加圧浮上槽 ) と 12 可溶化槽移送ポンプと 5SS 可溶化槽と 15 可溶化槽攪拌ポンプと 13 可溶化液返送ポンプ 更に温度コントロール設備一式と ph コントロール設備一式により構成される 温度コントロールは通常蒸気で加温する ph コントロールはアルカリ薬品 (NaOH 等 ) を用いる 図 2-4 SS 可溶化 + メタンガス回収システム 参考フロー (2) 原理 SS 可溶化の原理は 1 NaOH による有機物の加水分解 ( アルカリ加水分解 ) 例えば以下のようにたんぱく質のアミド結合の加水分解や 油脂のエステルを加水分解 ( ケン化 ) R-NHCO-R + NaOH R-NH2 + R-COONa R-COO-R' + NaOH R-COONa + R'-OH 2 加温による可溶化熱エネルギーによる SS 変性 溶解の促進 高温高圧での可溶化は可溶化率は向上するものの可溶化液に難分解性有機物が残留し 後段嫌気処理によるガス回収は不可能となるため あえて 大きなエネルギーを必要とする高温高圧での可溶化とはせず 中高温常圧での可溶化としている 3 撹拌せん断力による可溶化せん断力による SS の細分化 溶解の促進 本システムでは可溶化槽の攪拌に特徴があ -51-

り 可溶化槽の底部への汚泥が堆積防止や槽全体に適度なせん断力をかけることができる構造としている 3. 成果 3.1 性能 ( 安全性 耐久性等 ) (1) 装置能力 運転条件と性能例 1 対象汚泥 : ビール工場初沈汚泥 + 嫌気性汚泥対象汚泥量 :120 m 3 /d 汚泥濃度 : 約 30000 mg/l 初沈形式 : 円形沈殿槽可溶化槽容量 :40 m 3 SS 可溶化率 : 平均 46 % 処理条件と性能例 2 対象汚泥 : ビール工場初沈汚泥対象汚泥量 :54 m 3 /d 汚泥濃度 : 約 38000 mg/l 初沈形式 : 高速凝集沈殿槽スミシックナー可溶化槽容量 :15 m 3 SS 可溶化率 : 平均 45 % (2) 装置性能 安全性 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム は以下のとおり操作性 環境面での安全性が高い 1 操作安全性 装置の運転は全て自動化されており 前後の関連設備とインターロックを取ることにより安全に起動 / 停止を行なえるようにしている 駆動部分は各種小型ポンプ 空気作動弁のみであり 大型回転機器が無い 又 駆動部 回転体等には安全カバーを設けて巻き込まれ災害を防止し さらに危険表示により注意喚起を図っている 機器は全て床面から手の届く高さに設置しており 日常の機器メンテナンスでは高所作業の必要が無い SS 可溶化槽は基本的に中高温常圧の環境としている 高温高圧ではないため 安全である 2 環境安全性 SS 可溶化槽は密閉構造としていることから 汚泥の飛散や臭気の漏洩が無く 作業環境を汚染する可能性が無いものとしている SS 可溶化槽内はアルカリ性であり 基本的に臭気の発生がほとんど無い 高い騒音 振動を発生する機器が無いことから 設置場所の騒音 振動問題を発 -52-

生させる危険性が無いものとしている 本装置の渦巻きポンプ軸封は全て無注水とし アルカリ液が外に漏れないものとしている 耐久性 申請の装置全体として 1 号機を 2005 年 12 月に住友重機械エンバイロメント株式会社 ( 当時 住友重機械工業株式会社水環境事業部 ) が納入以降 4 年以上の実施設での連続実績により長期の耐久性や安定運転に対する信頼性を確認している 1 耐久性 SS 可溶化槽本体についてはいずれの施設もトラブルは無く 4 年以上の耐久性が確認できている 渦巻きポンプや付帯計装機器についても 4 年以上の運転実績でもトラブルはなく運転できており 長期の耐久性が望める状況である 2 安定運転の信頼性以下の通り 設置施設において長期に渡る安定した処理を確認しており 十分に信頼できる装置であることを確信している 納入施設のいずれにおいても既設処理設備との連動により常時無人運転されており 良好な SS 可溶化性能を発揮している 3.2 特許の有無本申請装置に関しては 以下の基本特許について出願中であるほか 関連特許については登録済みである 基本特許出願名称 : 排水処理装置出願番号特願 2008-238453 出願中 関連特許出願名称 : 有機性廃水の処理装置特許 4468771 号登録済みアサヒビール株式会社と共願 3.3 維持管理 ( 容易さ 低コスト等 ) (1) 運転 操作性 装置起動 停止はタッチパネルによる連動自動運転が標準 供給量は自動にて基本的に連続投入とし 流量計とコントロールバルブ等で流量自動調整とした 可溶化液排出は 基本的に可溶化槽のレベルにて可溶化液返送ポンプを制御とした ph コントロールは ph 指示値による NaOH ポンプのコントロールと 汚泥流量に対しての比例制御とした 可溶化槽の底部への汚泥が堆積防止や槽全体に適度なせん断力をかけるための攪拌切替は自動弁としタイマー制御とした -53-

(2) メンテナンス性構造がシンプルなことから 定期的なメンテナンス範囲は極めて少ない 以下の通り メンテナンスも容易に行なえるよう工夫している 渦巻きポンプは無注水のダブルメカニカルシールとし 基本的にメンテナンスフリーとしている 駆動部が少ないことから給油部分も少なく 日常のメンテナンスを必要とする部分は極端に少ない ph 計はライン設置型とし 全ての機器をフロアからメンテナンスできるものとした (3) 維持管理コスト施設の維持管理コスト面で 本申請装置の設置により小さなランニングコストで大きな低減効果を上げることが出来た 熱源には基本的に蒸気を用いるが 可溶化液をメタン発酵することによりメタンガス経由で熱回収される 加温は基本的に中高温のため 使用蒸気量よりも回収蒸気が上回り 熱回収できるためメリットが生じる 可溶化薬品としてアルカリ剤を用いるが 実際の可溶化反応で消費するアルカリ度は添加した量の 10~40% 程度であった このため 残りのアルカリ分は初沈槽に返送されることにより 酸性傾向の排水と混合し 中和剤として回収される このため 可溶化反応で消費される薬品量は少ないものとなる SS 可溶化槽の攪拌はポンプ攪拌のみであり 攪拌動力は小型の渦巻きポンプ 1 台のみと非常に小さい 3.4 経済性 2 号機納入のデータを基に本システム導入前後の年間メリット計算を行った 汚泥削減結果 まずは実際の汚泥削減効果を検証した 汚泥削減結果を表 2-1 に示す 表 2-1 SS 可溶化 +メタンガス回収システム 導入前後の工場からの脱水汚泥搬出量 導入前 2 ヶ月平均 (H19.12~20.1) 導入後 2 ヶ月平均 (H20.12~21.1) 1 排水量 m 3 147,341 130,227 2 脱水初沈汚泥搬出量 kg-wet 371,570 180,754 3 2/1 kg-wet/m 3 2.52 1.39 工場では月ごとに生産量が違うため 排水 1m 3 を原単位として汚泥削減効果を比較 した 導入前は排水 1m 3 あたりの脱水汚泥搬出量は 2.52kg であったが 導入後は 1.39 とな った このため 実績として (2.52-1.39)/2.52 45 % 削減されている -54-

可溶化液からのメタン発酵によるガス回収エネルギー量 初沈にて再度分離された可溶化液上澄みは UASB(EGSB) によりメタン発酵を行い ガス回収される この発生メタンガスからの回収蒸気エネルギーを表 2-2 に示す 表 2-2 発生メタンガスと回収蒸気エネルギー 導入前 2 ヶ月平均 (H19.12~20.1) 導入後 2 ヶ月平均 (H20.12~21.1) 脱水初沈汚泥量 kg-wet/m 3 2.52 1.39 可溶化液からの Nm 3 0 0.14 メタンカ ス回収量 /m 3 回収熱量 kj/m 3 0 4,727 搬出汚泥含水率 75% CODcr/SS=1.78 可溶化液上澄みのメタン発酵試験でのガス 化率 280NL-CH 4 /CODcr より 本システムを導入することにより排水 1m 3 あたり 4,727 kj の回収熱量と算出される (37,180 kj/nm 3 -CH 4 ボイラー効率 90% として計算 ) -55-

コストメリット算出方法 コストメリット算出のまとめを表 2-2 に示す (3+4+5+6-1-2-7) 年間稼動日にて算出 1 SS 可溶化槽必要電力 2 SS 可溶化槽必要蒸気 3 回収蒸気 4 汚泥処分削減費 5 汚泥削減による脱水機動力削減費 6 汚泥削減による脱水ポリマー削減費 7 SS 可溶化槽 NaOH 消費量 設備条件 単価 他 各項目費用 合計 SS 可溶化設備 表 2-2 ランニング削減コスト試算 1 汚泥処理量 54 m3/d 2 汚泥濃度 ( 入口 SS) 40,400 mg/l 3 汚泥 ( 入口 )T-CODcr 82,400 mg/l 4 汚泥 ( 入口 )F-CODcr 10,500 mg/l 5 汚泥温度 32 6 可溶化槽撹拌方法 P ポンプ攪拌 7 CODcr 可溶化率 45 % 8 SS 可溶化率 45 % 9 可溶化処理液 ( 上澄み ) ガス化率 280 L-CH4/kg-CODcr 10 可溶化 NaOH 添加濃度 168 mmol/l 11 可溶化後 HCl 滴定濃度 104 mmol/l 12 脱水機動力 30.0 kw 13 現状脱水機稼働時間 10.0 h/d 14 脱水汚泥含水率 75 % 15 電力 7.8 \/kwh 16 蒸気 3.2 \/kg 17 汚泥処分費 18,500 \/m3 18 脱水ポリマー 900 \/kg 19 NaOH 40 \/kg-100% 20 排水処理設備年間稼働日 300 日 1 SS 可溶化槽必要電力 535 \/d 2 SS 可溶化槽必要蒸気 2,095 \/d 3 回収蒸気 18,822 \/d 4 汚泥処分削減費 72,647 \/d 5 脱水機動力削減費 892 \/d 6 脱水ポリマー削減費 8,835 \/d 7 SS 可溶化槽 NaOH 消費量 5,564 \/d 8 年間削減費用 =(3+4+5+6-1-2-7) 年間稼動日 27,901 k\/y 年間稼働日を 300 日とすると 導入後では年間コストメリットは 2790 万円と算出され 非常に大きなコストメリットとなる -56-

3.5 将来性汚泥の削減は一般的に大きなコストメリットを生むため 多くの事業体での需要がある 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム は 現在 初沈汚泥対象としての実績のみであるが 活性汚泥の余剰汚泥やそのほかの有機汚泥も可溶化の対象とすれば 大きく適用範囲を広げられると思われる 既存の排水処理設備に UASB や EGSB 等の嫌気性処理を用いている事業体においては 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム は簡単に導入しやすいものであり わずかな初期投資で非常に大きなメリットを生むことが出来る可能性が高く 普及は進むものと予想される 3.6 独創性 (1) シンプルなシステムフローと装置構成について既存排水処理設備に 初沈槽 と UASB(EGSB) があれば SS 可溶化槽ユニット および 付帯ポンプ類 の設置および入口出口の配管接続と 必要ユーティリティー ( 電気 計装エア 蒸気のみ ) の接続のみで わずかな初期投資で非常に大きなメリットを生むことが出来る (2)SS 可溶化槽の効果的な攪拌について本システムでは可溶化槽の攪拌に特徴があり わずかな動力で可溶化槽の底部への汚泥が堆積防止や槽全体に適度なせん断力をかけることができる構造としている (3) 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム 導入の様々なメリットについて 1 汚泥減容のメリット 汚泥処分量 ( 費用 ) の削減 2 エネルギー回収のメリット メタン発酵によるエネルギー回収 3 電力削減のメリット 汚泥減容のため脱水機の稼働時間が減少 4 薬品削減のメリット 汚泥減容のため脱水ポリマー量が減少 5 臭気発生の低減 一般的に初沈槽は酸発酵による有機酸臭や硫酸還元による硫黄系臭気の発生があり アルカリ脱臭の必要性があるが 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム を導入すると 初沈槽内の ph は全体的に弱アルカリ側へと維持され 臭気の発生がほとんど無くなる 3.7 今後の規制に対する対応策本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム 導入により 以下のとおり今後予想される法整備や規制強化に対しても対策が容易である (1) 環境負荷としての CO 2 排出量規制強化本設備 2 号機の運転データに基づき 年間稼働日 300 日と仮定して本設備導入による CO 2 削減効果を計算すると 1 電力削減 - 5 t-co 2 /y 2 蒸気回収 -236 t-co 2 /y 3 汚泥削減 - 41 t-co 2 /y 1+2+3= -282 t-co 2 /y と 大きな CO 2 削減効果をもたらしている (2) 廃棄物削減と循環型社会への寄与これまで ビール工場 飲料工場 食品工場他での初沈汚泥はそのまま脱水され処分されることがほとんどであった この廃棄物として取り扱われていた初沈汚泥は 可溶 -57-

化 +メタン発酵 することにより有価物に変化させることができる 本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム 導入により 循環社会へ寄与できるものと考える (3) 臭気対策への寄与本 SS 可溶化 +メタンガス回収システム 導入により 初沈槽の悪臭防止効果が得られる 4. 応用分野現在 初沈汚泥を対象としての実績のみであるが 活性汚泥の余剰汚泥や その他の有機性廃棄物に適用も検討している -58-