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方法癌研有明病院消化器外科において術前に Stage II または Stage III と診断され 根治切除が可能な原発性大腸癌手術症例を対象とした CTC の測定方法は Veridex 社の Cell search system を用いて行った その要旨は以下のとおりである 1)20ml を採血し 保存剤入り専用採血管に注入する 検体は室温で保存し 採血後 72 時間以内に解析を開始する 2) 上皮細胞接着分子 Epithelial Cell Adhesion Molecule(EpCAM) に対する抗体に鉄を結合させたものを細胞と反応させ 磁気で収集し 上皮細胞を濃縮させる (Cell Search System) 3) 核の認識は蛍光核酸染色 4,2-diamidino-2phenylindole dihydrochroride (DAPI) にて発色させて行う 4) 上皮細胞の標識は phycoerthrin (PE) 蛍光標識した抗 cytokeratin 8,18,19 モノクローナル抗体を反応させて行う 140

5) 白血球の認識は allophycocyan (APC) 蛍光標識した抗 CD45 モノクローナル抗体を反応させて行う 6) 癌細胞の候補である cytokeratin 陽性 CD45 陰性細胞 DAPI 陽性細胞を Cell Spotter Analyzer によって蛍光合成イメージで収集する 7) 破損した癌細胞 および断片のイメージを除外し 形態が保全された細胞を癌細胞として同定しカウントする ( 図 1) 解析対象となる血液は 患者から同意書を取得し 以下の方法で採血した 1) 末梢静脈血 : 手術時に全身麻酔下に末梢静脈から静脈血 20ml を採取した 2) 門脈血 : 手術時に腫瘍からドレナージされる静脈から門脈血 20ml を採取した 結果 1) 門脈血採取方法の確立まず始めに 腫瘍に近い辺縁静脈から採取を試みた しかし 操作中に腫瘍への辺縁動脈血流が損傷され採取不可能となったり 辺縁静脈が細いため採血に時間を要して検体が凝固し CTC 測定が不可能となるなど 手技的に困難であった そこで 血液採取静脈として辺縁静脈は不適であると判断し 辺縁静脈よりも中枢の 腫瘍ドレナージ静脈本幹から採血を行うこととした 切除直前に 切除範囲の腸管膜中枢で腫瘍ドレナージ静脈本幹を露出し ここから採血を行った この方法の確立移行は 測定に必要な量の血液が必ず採血可能となり 検体における CTC 測定が可能であった ( 図 2) 1) 末梢静脈血および門脈血における CTC 15 例の患者から手術時に末梢静脈血および門脈血を採取し CTC を測定した 対象は平均年齢 63 歳 (47 歳 ~ 75 歳 ) 男女は 6/9 例であった 腫瘍部位は右結腸 2 例 左結腸 11 例 直腸 2 例であった 切除標本における病理学的病期は stage II/III 7/8 例であった また 原発巣 141

の組織型は全例 well or moderately differentiated adenocarcinoma であった 末梢血 CTC 個数は対象 15 例中 1 例のみで陽性 (1 個 ) 残り 14 例で陰性 (0 個 ) であった 一方 門脈血 CTC は中央値 4 個 (0-1144 個 ) であり 15 例中 12 例で陽性 3 例で陰性であった 門脈血では末梢血にくらべ有意に CTC 数が多かった (p<0.0001) 次に予後と関連する臨床病理学的因子と門脈血 CTC 個数の関連を解析した Stage II と Stage III の間で門脈血 CTC 数に有意な差は認めなかった ( 中央値 4 vs. 4.5, p=0.4843) Stage II-III 全体で見ると T4 症例は T3 症例に比べ有意に門脈血中 CTC 数が多く ( 中央値 3 vs. 219, p=0.0225) また術前 CEA 10 以上の症例では 10 未満の症例に比べ門脈血中 CTC 数が多い傾向を示した ( 中央値 3 vs. 183, p=0.1480) ( 表 1) 考察本研究の結果 Stage II-III 根治切除大腸癌において 末梢血では CTC はほとんど測定されなかったが 門脈血中では CTC が多く出現した その原因としては 大腸癌の特異な血流支配があげられる 大腸癌からの血流は直接末梢静脈へ注ぐのではなく まず腸管膜静脈から門脈系へドレナージされ 肝 肺で filtration された血液が末梢静脈となる これらの課程で血液が希釈され さらに臓器で濾過されることから 末梢静脈血では CTC が検出されにくいものと考えられる 大腸癌の転移形式の 8 割以上が肝転移であることを考え合わせても 腫瘍から肝臓への直接血流である門脈血を CTC 測定の対象として用いるのが最も理論的に有用であると考えられる さらに CTC が門脈血において末梢血よりも高頻度に出現する事実は stage II-III 大腸癌の再発部位として肝臓が圧倒的に高頻度であり 肝 肺以外での再発がきわめて少ないことを説明しうると考えられた ( 文献 2) 門脈血 CTC 数は腫瘍深達度と有意に関連し また術前 CEA 上昇とも関連する傾向を示した 腫瘍深達度 術前 CEA は stage II-III 大腸癌の予後と関連する重要な因子であり これらと相関する門脈血 CTC 数は stage II-III 大腸癌における新たな予後予測因子となりうることが示唆された ( 文献 3) 一方 門脈血 CTC 数は Stage II と III すなわちリンパ節転移の有無とは有意な関連を示さなかった 症例 142

集積が少ないため有意差を生じていない可能性もあるが 門脈血 CTC 数はリンパ節転移と独立した予後マーカーとなりうる可能性を示唆すると考えられた 結論本研究の結論として stage II-III 大腸癌の予後指標として 末梢静脈血 CTC は陽性率が低く臨床応用に適さないが 門脈血 CTC は陽性率が高く 臨床応用可能な新たな予後指標となる可能性がある 臨床的な意義を検討するため 今後 さらに多くの症例を重ね 長期フォローによる予後との関連を評価する必要がある 要約 stage II-III 大腸癌において血液中循環癌細胞 (CTC) の予後マーカーとしての役割を明らかにすることを目的とした 癌研有明病院消化器外科において根治切除された Stage II-III 大腸癌手術症例 15 例を対象として四肢末梢血および腫瘍ドレナージ静脈の門脈血を採取し Veridex 社の Cell search system を用いて CTC 数を測定した 末梢血 CTC 個数は対象 15 例中 14 例で陰性であったが 門脈血 CTC は中央値 4 個 (0-1144 個 ) 15 例中 12 例で陽性であり 門脈血では末梢血にくらべ有意に CTC 数が多かった Stage II と Stage III の間で門脈血 CTC 数に有意な差は認めなかったが Stage II-III 全体で見ると T4 症例は T3 症例に比べ有意に門脈血中 CTC 数が多く また術前 CEA 10 以上の症例では 10 未満の症例に比べ門脈血中 CTC 数が多い傾向を示した stage II-III 大腸癌において 末梢静脈血 CTC に比べ門脈血 CTC は陽性率が高く 臨床応用可能な新たな予後指標となる可能性がある 文献 1)Matsusaka S, Suenaga M, Mishima Y, Kuniyoshi R, Takagi K, Terui Y, Mizunuma N, Hatake K. Circulating tumor cells as a surrogate marker for determining response to chemotherapy in Japanese patients with metastatic colorectal cancer. Cancer Sci. 2011 Jun;102(6):1188-92. 2)Jiao LR, Apostolopoulos C, Jacob J, Szydlo R, Johnson N, Tsim N, Habib NA, Coombes RC, Stebbing J. Unique localization of circulating tumor cells in patients with hepatic metastases. J Clin Oncol. 2009 Dec 20;27(36):6160-5. 3) 小西毅, 大矢雅敏, 上野雅資, 黒柳洋弥, 藤本佳也, 秋吉高志, 山川景子, 板谷善朗, 小川大志, 千野昌子, 五十嵐正広, 山口俊晴, 武藤徹一郎. Stage III 大腸癌においてリンパ節転移個数が予後に与える影響と staging の妥当性に関する検討. 第 72 回大腸癌研究会. 2010 年 1 月 15 日. 福岡. 口演 ( 日本大腸肛門病学会雑誌 63 巻 7 号 Page450) 143