産子数を考える ~ 繁殖生理のおさらいと不受胎 低産子数について~ 秋季性の繁殖障害が見られる頃になりました 通常分娩舎の暑さの為に母豚の食欲が減退するため 離乳後の発情が弱く受胎率が低下し特に若令の母豚に影響が多いといわれています これにより生産計画が後ろにずれ込み 密飼いの発生 出荷頭数の偏り ( 秋に出荷大幅増 ) という一連の現象として養豚現場では昔から問題視されています 今年はペットボトルクーリングなどの対策が功を奏したという話も聞きますが 全く解消したわけではありません 今一度基本になる繁殖生理をおさらいして 産子数の増加とはどんなことなのかについて考えてみたいと思います 胚 ' 卵細胞が分裂していく過程 ( と胎子の結果卵巣から排卵した卵が受精し 分裂を繰り返しながら子宮内をただよい 子宮内膜面に着床し発育していく正常な時間的経過を左下にまとめました そして右側には 発生した問題を緑で その結果母豚で見られる現象を赤で対比し簡潔に示しました 胎令とその位置や状態 種付け日を 日として 12~ 日 : 排卵 12~ 日 12~12 日 12~13 日 4~12 日 12~14 日 : 受精 : 卵管を下る : 胚のサイス.2~.5mm : 子宮内部に拡散する : 着床完了胚のサイス 5~mm 胚の死滅やトラブル 母豚の状態や結果 * 排卵しない * 発情しない * 受精が行なわれない *21 日で再発 * 日目以内に全滅 *21 日で再発 * 日目で 5 つ生存 * 日目以降で全滅 * 妊娠継続 ( 低産子数 ) * 再発遅延 24~38 日 * 着床後あるいは 35 日目までに全滅 * 母体偽妊娠 空胎 * 再発遅延 ~7 日 *35 日以降で全滅 * ミイラとして遺存 * 産子数減尐 * 突発であれば流産 ' * いずれも異常分娩 ' ミュアヘット & アレキサンタ ー 1997(
25 個以上排卵した母豚の割合 '%( 解説 排卵しないのであれば当然発情も来ません 受精が行なわれない場合も同じく 21 日目には ほぼ正 確に再発情を示します 胚が 5 つ以上生き残っている場合には妊娠が維持されますので 低産子でも分娩まで継続します 胚が着床 (12~14 日目 ) までに全滅してしまえば 発生時期に応じて日数がずれて再発が来ます (24 ~38 日後 ) 着床し損ねる原因は 母体にかかる管理上でのストレス ( 騒音 振動 移動 ケンカなど ) ですので 特に注意しましょう 着床までの 2 週間に起こる様々な要因によって 低産子数や不受胎となります 着床したのに残念ながらその後全滅というときは妊娠安定期と言えども急激な環境変化などが要因であることが多いですが オリモノやその他の症状も伴うのであれば感染なども疑われます しかし母豚は健康にやり過ごし 発情にも気付かず分娩舎までという最悪のパターンもありえますので おやっ と思ったら鑑定器でチェックすること ( 胎子の成長を確認できる ) が必要です いずれにしても排卵した生命の始まりが 色々な理由で死んでしまうことはかわいそうですが 生理的に正常 な部分もあり 完全解明されている訳ではありません 研究によると 実に ~ 個といわれる卵子の ~ 6% が死滅してしまうといわれています 母豚はストレスがかかった時やむなく不受胎あるいは流産として身の 安全を守っているということをもう一度考えてください ( 妊娠及び分娩が大きな試練であることは母豚自身がよ く本能的に知っているからです ) 何事もなく無事に育て上げることが母体あるいは子宮の仕事です それを 手助けすることが管理者の仕事です 母豚にとって頼みの綱は管理者自身です そのためにもなんとか胚の 事故率を % 以下に抑えたいものです 低産子数の背景は何? したがって産子数が尐なくなる理由は 1 排卵数がそもそも尐ないこと 2 排卵数は十分だが受精から着床 にかけて不安定の 2 点です それ以降の事故 すなわち一旦受精卵が着床してから 死亡あるいはミイラにな って産子数が減尐してしまうことも妊娠中期付近で見られますが むしろ特殊な例といえるでしょう 若い母豚は排卵数が少ない? ある研究によると 25 個以上の排卵があった産歴の割合が 4 産以降が若い豚に比べて格段に高いことが示されています ( 右のグラフ ) 7 年度のグローバルピッグファームのグループ農場の成績 (9 農場 ) を調べてみると 3~6 産の最も働く母豚では総産子数が 12.2 頭と最も総産子数が多いのに対し 初産の母豚では.8 頭でした 先のグラフの 5 45 43.8 35 38.8 25 15 16.7 5 2~3 4~6 7 産歴 区分とは違うため それほど極端ではありませんが 尐なからず体が出来ていない若令豚は総産子数が尐ない すなわち排卵数も尐ないのではないかということが推測されます 豚の生理的な成熟度と排卵数に ある程度の関係があることは確かですので 現在では以前の 7 ヶ月令を目安に種付けに入る方針を改め むしろ 8 ヶ月から 8 ヵ月半令までじっくり性成熟させてから使い始めるようにしています 排卵数が増加するという報告もあるので豚の管理が丁寧であればあるほど成績アップは可能でしょう 管理面で尐しでも初産の総産子が伸びる事を数字の裏付けとして期待したいものです低産子数の分析産子数が尐ない7 頭以下しかできない場合に ピッグチャンプでは区別して小産子腹数率を計算しますが 総産子数との関係や繁殖成績との関係はどうなっているのでしょうか?
' 頭 ( 13 p=1 1 腹当り総産子数 線形 (p=1 小産子腹数率 ) p=1 小産子腹数率 線形 (p=1 1 腹当り総産子数 ) '%( 5 12 11 9 8 総産子数 ( 左軸で棒グラフ ) と小産子腹数率 ( 右軸でスポット ) を左から右へ母豚当たりの年間離乳頭数で成績順に並べてみたもの 一つ一つの棒が農場の母豚あたりの年間離乳離頭数である したがって左の軸に寄るほど離乳頭数が多い優良農場になる このグラフから一般的な指標とされている母豚当たりの離乳頭数がよい農場ほど総産子数も多く 逆に小産子腹数率は尐ないことがわかる ( 線形の傾きに注意 ) 18.5 9.4 3.8 1 母豚当年間離乳数上位 25% 初産の小産子腹数率 (7 年度 ( 24.7 2.2 1 母豚当年間離乳数中位 25% 28.3 12.9 14.. 1 母豚当年間離乳数下位 25% さらに母豚当たりの年間離乳頭 数でランク付けした上位 25% 中位 25% 下位 25% の小産子腹数率の ばらつき分布をチェックしたところ 同じような結果が出てきました ( 次の ページのグラフ ) データはばらつきがあり 単なる 傾向で統計的にはどうかわかりませ んが 小産子腹の発生率 ( 特に初 腹 ) は繁殖全般の管理の良し悪し に関係がありそうなことが再確認で きます 繁殖生理でも説明したように 排 卵した卵を子宮に軟着陸させて 育てる助けをするのも管理者の大事な仕事だということが別の角度から説 明できたのではないかと考えています つまり母豚は身重ですから より丁寧な管理が必要になってくるので す これは産歴には関係ないことですが 若い豚ほど母豚群に占める比率も高いし (*) 成績の影響も大き いので よい農場ではことさら注意深く管理しているのが理解されるでしょう *7 年度のデータでは 種付け後分娩前の雌豚 (P=) は上位 25% 農場でも 28.1% 初回分娩を経て 妊娠中の母豚 (P=1) では 15.8% とあわせて 43.9% もの比率になり これらの豚での成績の良し悪しが大 きく繁殖成績全体に及ぼします
感染性の不受胎要因低産子数は確かに問題ですが 極端な例は別にして8 頭ないしは9 頭位しか生まれないケースが現場ではよく見られると思います 母豚側に立ってみれば色々なことがあったのでしょうが 経済動物ですから淘汰対象になりかねません 繁殖生理もさることながら 管理面でも大きな絶対的な影響を与えるのが疾病だということは忘れてはなりません AD PRRS 丹毒 パルボなど繁殖障害を起こす一般的な疾病の理解は十分と思いますが それよりもむしろはっきりした診断結果が得られない常在型の疾病が最近注目を浴びています 最近話題のサーコウィルス (PCV2) などがそれです 一腹全部駄目にしないまでも 例えば発情を弱めたり 不受胎を起こしたり 着床率を悪化させたりといった たちの悪いいたずら を主とします 母体に変化がないだけに厄介なこれらの疾病に対する対策は 更新豚のピッグフローを変えて急激な排菌を防いだり 馴致免疫の方法を変更してしっかりと免疫をつけさせるなど 科学的な分析と粘り強い努力が必要です 共通要因として以下のようなことが言えるのではないでしょうか 1 突然集団的に発生する 2 母豚の一部が持っているありふれた病気の可能性が高い ( 推測 ) 3 特定の豚 例えばギルトなどに限定して問題が起きる 4 いわゆる PRRS や丹毒などの検査診断で導きにくい 5 基本に戻って丁寧な管理をしても解消しない 6 なかなか免疫が出来上がらない特徴があるものの 免疫が出来れば問題が解消するこれらの特徴に心当たりがあれば 入念なチェックや獣医師との細かい検討が必要です 感染性の不受胎 流産の鑑別ポイントは 1 母体に症状 ( 熱発 食滞 ) があるかないか 2 再発にオリモノが伴うかどうか 3ミイラや流産などが確認されたかどうかです 環境要因で流産した胎子 豚 IgG 検査の結果 この胎子には抗体 (IgG) は確認されず感染し ていないことがわかりました 豚の場合 胎令 7 日以降になると徐々に広がる病気 例えばパル ボウィルス症 によっては感染抗体を作り出すことがわかっており 検査することができます
まとめと管理面での注意 1. 産子数に問題があるのであれば繁殖生理を整理してみましょう 2. 排卵数の問題 ( 更新豚の管理に問題はないかどうか ) はどうでしょうか 3. よい発情を来させる様に栄養 ボディコンの調整に努力しましょう 4. 受精卵が着床して安定するまでの間の死滅が多いので この間の管理に気をつけましょう : 例えば種付け後は更新豚 母豚を動かさない 種付け後 1~2 日は問題ないと言われていますが 出来るだけ周囲環境を一定に快適な場所で着床 (35 日 ) まで管理しましょう 5. 妊娠が確定しても快適な環境は重要です 管理要因が主な流産 再発の原因ですが 再発の出方も重要なポイントです 6. 妊娠期に突発的な冷風や不愉快な環境 ( 濡れたり蒸れたり ) は母豚を極度に痛めます 出来るだけ避けましょう 7. 常在疾病もおさらいして季節的に動き易い疾病や環境には特に配慮しましょう 8 年 月グローバルピッグファーム