高温干ばつ対策 H20 7/25

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農業気象技術対策資料


畜舎内から畜舎温度を下げる技術 換気扇 扇風機による送風 細霧装置による冷房 家畜への直接送風 散水等の技術が7 割半ば程度取り組まれ ほぼ全てにある程度以上の効果が認められるが 畜舎構造に合わせた効果的な送風技術の確立のための 技術改良 導入基準 ( の設定 ) 農家の設置費用と経済効果といった

平成 30 年 7 月 27 日 ( 表題 ) 台風第 12 号の接近に伴う農作物被害技術対策情報について ( 担当 ) 佐賀北部農業技術者連絡協議会事務局 気象庁によると台風第 12 号は 現在 ( 平成 30 年 7 月 27 日 6 時 45 分 ) 硫黄島の南 東約 80km を北東に向かっ

Ⅰ 収穫量及び作柄概況 - 7 -

Ⅱ 今後の管理について 1 水管理について (1) 気象変動に対応した水管理 幼穂形成期に入ったら間断かん水 出穂期から開花期にかけては湛水管理 その後は間断 かん水が水管理の基本になりますが 気象変動に対応した水管理を心がけましょう 1 減数分裂期の低温 減数分裂期 ( 葉耳間長 ±0cm 出穂期

予報 岡病防第16号

今後の管理のポイント [懸案事項] ①早期作型における2番花 房の花芽分化遅延 ②炭そ病とハダニ類の発生 拡大 [対策] ①寒冷紗を被覆して 花芽分化を誘導する 2番花房 の花芽分化を確認して被覆を除去する 被覆期間の目安 9月25 10月20日 ②定期的に薬剤による防除を行う 特に葉かぎ後の 葉か

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仙台稲作情報令和元年 7 月 22 日 管内でいもち病の発生が確認されています低温 日照不足によりいもち病の発生が懸念されます 水面施用剤による予防と病斑発見時の茎葉散布による防除を行いましょう 1. 気象概況 仙台稲作情報 2019( 第 5 号 ) 宮城県仙台農業改良普及センター TEL:022

目 的 大豆は他作物と比較して カドミウムを吸収しやすい作物であることから 米のカドミウム濃度が相対的に高いと判断される地域では 大豆のカドミウム濃度も高くなることが予想されます 現在 大豆中のカドミウムに関する食品衛生法の規格基準は設定されていませんが 食品を経由したカドミウムの摂取量を可能な限り

スプレーストック採花時期 採花物調査の結果を表 2 に示した スプレーストックは主軸だけでなく 主軸の下部から発生する側枝も採花できるため 主軸と側枝を分けて調査を行った 主軸と側枝では 側枝の方が先に採花が始まった 側枝について 1 区は春彼岸前に採花が終了した 3 区 4 区は春彼岸の期間中に採

コシヒカリの上手な施肥

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軽症 : 入院を要しないもの中等症 : 生命の危険はないが 入院を要するもの重症 : 生命の危険が強いと認められたもの重篤 : 生命の危険が切迫しているもの 図 2 初診時程度別の救急搬送人員 ( 平成 29 年 6 月 ~9 月 ) (3) 年齢区分別の救急搬送状況年齢区分別の救急搬送状況を見ると

日照不足技術対策資料 H18,5.26

項目換気遮光かん水敷きワラ散水 対策技術熱気は高い位置から抜くのが基本 妻面上部の開放妻面フィルム展張部をネットに張り替える サイド換気の改善フルオープンハウス ハーフオープンハウスの導入を検討する サイドフィルムの換気位置をできるだけ高くする 天窓換気 換気扇 ( 循環扇と併せて設置 ) 循環扇

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台風15号技術対策資料 H24年8月27日

バンカーシート 利用マニュアル 2017年版(第一版)

1 章夏季のイベントにおける暑熱環境 (3) 夏季のイベントにおける暑熱環境 (3) 夏季のイベントにおける暑熱環境 イベント会場の中や周辺では 熱中症が発生するリスクが高い状況が存在します 本項目では どのような状況 で熱中症が発生しやすくなるか 実際に屋内外の複数施設で測定したデータに基づいて考


表紙

4 野菜夏野菜のナス トマト キュウリ等は 高温乾燥による生理障害等の発生や草勢の低下による着果不良 着色不良等による品質低下に注意する 秋野菜のキャベツ ハクサイ等は 育苗時の発芽不良や定植時の活着不良等に注意する 高温 少雨は チョウ目 アザミウマ類 アブラムシ類等害虫の多発生を助長するため 害

ネギ 防除法

11月表紙

平成19年度事業計画書

圃場試験場所 : 県農業研究センター 作物残留試験 ( C-N ) 圃場試験明細書 1/6 圃場試験明細書 1. 分析対象物質 およびその代謝物 2. 被験物質 (1) 名称 液剤 (2) 有効成分名および含有率 :10% (3) ロット番号 ABC 試験作物名オクラ品種名アーリーファ

「節電対策パンフレット」(家庭向け)

1 台風通過後は降雨の状況に応じ 入排水を行なう 2 茎葉の損傷により根の老化が進むので台風通過後は毎日通水するなど間断通水の間隔を短くし 根の機能維持に努める また 可能であれば夜間通水を行なうなどきめ細かな水管理を実施する 3 塩水が水田に侵入した場合は 速やかに塩水を排出し 淡水の散水や入水に

Microsoft PowerPoint - 乳牛暑熱対策マニュアル 教科書編(第2版-1)

作物ごとの対策については 以下のとおりです 水稲 水稲に対する日照不足の影響で最も懸念されることはいもち病の発病であり 出穂期以降では登熟障害 いわゆる白未熟の発生が懸念される また 大雨により河川の水位が高くなり 排水路の水が河川に放流できずに冠水被害をもたらすことがある これらを考慮して健全な生

農業指導情報 第 1 号能代市農業総合指導センター環境産業部農業振興課 発行平成 26 年 4 月 25 日二ツ井地域局環境産業課 確かな農産物で もうかる 農業!! 農家の皆さんを支援します!! 農家支援チームにご相談ください! 今年度 農業技術センター内に農家支援

委託試験成績 ( 平成 25 年度 ) 担当機関名 部 室名 実施期間 大課題名 課題名 目的 担当者名 山口県農林総合技術センター 農業技術部土地利用作物研究室 資源循環研究室 平成 24~26 年度 Ⅰ 大規模水田営農を支える省力 低コスト技術の確立 うね立て同時条施肥機を利用した被覆尿素の深層

○地下かんがい手引き.doc

カンキツの土づくりと樹勢回復対策 近年高品質果実生産のために カンキツ類のマルチ栽培や完熟栽培など樹体にストレスをかける栽培法が多くなっています それにより樹体への負担が大きく 樹勢が低下している園地が増えています カンキツ類を生産するうえで樹が適正な状態であることが 収量の安定とともに高品質生産の

Microsoft Word - ⑦内容C【完成版】生物育成に関する技術.doc

職業性熱中症の発生に関わる屋外気象条件の解析

2018/4/19 JA いなば大豆栽培講習会自己紹介 30 年産大豆の収量 品質向上に向けて平成 27 年度大豆栽培講習会 平成 30 年 4 月 20 日 ( 金 ) JA いなば農業創造センター会議室高岡農林振興センター小矢部班 高岡農林振興センター伊山幸秀 2 富山県農林水産総合技術センター

排水対策の実施例 暗渠がある場合排水がよいほ場 排水が悪いほ場 周囲明渠 弾丸暗渠 心土破砕は 2 ~5m おきに行う 周囲明渠は深さ 30 cmを確保する 周囲明渠は排水口に確実に接続する 弾丸暗渠本暗渠 暗渠がない場合排水がよいほ場 排水がよく 長辺が長いほ場 100m 以 ほ場内排水溝は4 ~

技術名

Microsoft PowerPoint - 別紙+参考1

5 播種 (1) 播種期本県奨励品種の好適播種期は6 月上 ~ 中旬である 麦跡では6 月中旬 ~7 月上旬の播種となる 早播きすると過繁茂になりやすく 子実害虫の被害も多くなり 遅播きすると生育量が不足し収量が低下する (2) 播種量 適期播種の標準栽培では10a 当り8,000 ~12,000

麦 類 生 育 情 報

病害虫発生予察情報(11月予報)

Ⅲ-3-(1)施設花き

水稲いもち病当面の対策                   

営農のしおり(夏秋キク)

(Taro-0390\203T\203C\203l\203\212\203A.jtd)

4. 台風通過後の対策として 適時適切な防除を心掛けること 特に 都道府県病害虫防除所から発表される発生予察情報に基づき適期防除に努めること 作目別対策 1. 園芸作物全般 (1) 事前の対策ア. 台風が接近する前に施設やほ場周辺の点検 排水路の清掃を行うこと イ. 温室 育苗 集荷施設等については

スライド 1

     くらぶち草の会の野菜、畑作栽培技術

資料6 (気象庁提出資料)

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3 園芸作物 < 果菜類 > 1-1 トマト [ ハウス ] ア導入すべき持続性の高い農業生産方式の内容 トマトは主に道央 道南および道北の施設で栽培され 作型は促成 ( ハウス加温 マルチ ) 半促成 ( ハウス マルチ ) 抑制 ( ハウス ) などである 品種は 桃太郎 ハウス桃太郎 桃太郎

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ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

本文、発送文

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実証研究の目的 東日本大震災の被災地域である福島県浜通り地域において 花き生産を中心とした農業経営の収益性向上に貢献するため 夏秋トルコギキョウと低温性花きのカンパニュラ メジューム ( 以下カンパニュラ ) を効率的に組合せた周年生産体系の現地実証を行い その成果を普及させることを目的としています

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隔年結果

JA越後さんとうにおける   高品質米生産の取り組み

取組の詳細 作期の異なる品種導入による作期分散 記載例 品種名や収穫時期等について 26 年度に比べ作期が分散することが確認できるよう記載 主食用米について 新たに導入する品種 継続使用する品種全てを記載 26 年度と 27 年度の品種ごとの作付面積を記載し 下に合計作付面積を記載 ( 行が足りない

高品質米の生産のために

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窒素吸収量 (kg/10a) 目標窒素吸収量 土壌由来窒素吸収量 肥料由来 0 5/15 5/30 6/14 6/29 7/14 7/29 8/13 8/28 9/12 9/ 生育時期 ( 月日 ) 図 -1 あきたこまちの目標収量確保するための理想的窒素吸収パターン (

水田メタン発生抑制のための新たな水管理技術マニュアル(改訂版)

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あたらしい 農業技術 No.510 環境にやさしい柑橘の草生栽培 平成 20 年度 - 静岡県産業部 -

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毒 2 全面土壌散布 ( 注 : 対象雑草のはシバムギ レッドトップを示す ) 8 カイタック乳剤 [PL-10] -H7 9 カイタック細粒剤 F [PL-10] -H8 ヘ ンテ ィメタリン 15% リニュロン 10% ヘ ンテ ィメタリン 1.5% リニュロン 1.0% は種直後 ~ は種後

1 課題 目標 山陽小野田市のうち 山陽地区においては 5 つの集落営農法人が設立されている 小麦については新たに栽培開始する法人と作付面積を拡大させる法人があり これらの経営体質強化や収量向上等のため 既存資源の活用のシステム化を図る 山陽地区 水稲 大豆 小麦 野菜 農業生産法人 A 新規 農業

軽症 : 入院を要しないもの中等症 : 生命の危険はないが 入院を要するもの重症 : 生命の危険が強いと認められたもの重篤 : 生命の危険が切迫しているもの 図 2 初診時程度別の救急搬送人員 ( 平成 29 年 6 月 ~9 月 ) ⑶ 年齢区分別の救急搬送状況年齢区分別の救急搬送状況を見ると 6

Taro-農業被害の概要

図 2 水稲栽培における除草剤処理体系 追肥による充実不足 白粒対策 ~ 生育後半まで肥切れさせない肥培管理 ~ 図 3 追肥作業は 水稲生育中 後期の葉色を維持し 籾数及び収量の確保と玄米品質の維持に重要な技術です しかし 高齢化や水田の大区画化に伴い 作業負担が大きくなり 追肥作業が困難になりつ

元高虫防第 139 号令和元年 7 月 4 日 各関係機関長様 高知県病害虫防除所長 病害虫発生予察情報について 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報及び令和元年度予報 4 号 (7 月 ) を送付します 令和元年度病害虫発生予察 6 月月報 Ⅰ. 気象概況半旬 (6 月 ) 平均気温最高気温最低気

山形県における 水稲直播栽培の実施状況 平成 28 年 8 月 26 日 ( 金 ) 山形県農業総合研究センター 1 1 山形県における水稲直播栽培の現状 1 (ha) 2,500 2,000 1,500 1, 乾田直播 湛水 ( 点播 ) 湛水 ( 条播 ) 湛水 ( 散播 )

平成 30 年 6 月 5 日奈良県消防救急課消防救急係担当 : 倉田 中村直通 : 内線 : 熱中症による救急搬送状況について 直近一週間の熱中症による救急搬送は 7 人でした 熱中症は適切な予防をすれば防ぐこともできます 一人ひとりが 熱中症予防の正しい

どうして GAP を導入するの? 産地や農家が安定した経営を続けるためには 次のような取組が必要です 産地の信頼を守るための体制を作りましょう 安全な農産物の生産は農家の責務です また 産地の農家のうち 1 人でも問題を起こせば 産地全体で出荷停止や商品回収を行わなければならず その後の取引にも影響

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日照不足技術対策資料 H18,5.26

(3) 都道府における適応策の取組状況 1 事例 都道府で取り組まれている地球温暖化適応策の事例を紹介する ( ) 高温登熟性に優れた新品種 おいでまい の普及 ( 香川 ) 近年温暖化傾向が強まり 白未熟粒等の発生が増加し 産一等米比率が著しく低下している このため の主要品種である ヒノヒカリ

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

4 パイプ埋め込み部分が水で緩くならないよう ハウス周囲の排水溝を点検して手直しする 5 強風により 資材 木片 小石等が飛来して被覆資材が破損しないように 施設周辺を清掃しておく 6 生育中の野菜がない簡易パイプハウスなどでは被覆資材を巻き上げて軒の部分にくくり付ける 7 鉄道沿線や幹線道路沿いの

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表 30m の長さの簡易ハウス ( 約 1a) の設置に要する経費 資材名 規格 単価 数量 金額 キュウリ用支柱 アーチパイプ ,690 直管 5.5m 19mm ,700 クロスワン 19mm 19mm ,525 天ビニル 農 PO 0.1mm

**************************************** 2017 年 4 月 29 日 日本植物病理学会殺菌剤耐性菌研究会 耐性菌対策のための DMI 剤使用ガイドライン 一般的な耐性菌対策 1. 薬剤防除だけに頼るのではなく 圃場や施設内を発病しにくい環境条件にする 1)


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Ⅰ ミニトマトの袋培地栽培マニュアル 1 ミニトマト袋培地栽培システムの設置 ア ほ場の準備 袋培地を用い 地床と完全に分離した隔離栽培を実現します 下敷シートと発泡スチロールにより根の土壌への侵入を防ぎ 土壌病害をシャットアウトします 下敷シート 発泡スチロール板 ほ場を整地し 土ぼこりや雑草を防

5月の病害虫発生予想と防除のポイント

作業別の留意事項 ここに紹介します留意事項は りんごを栽培する際に特に留意すべき内容を列記したものです また 栽培方法によっては該当しない内容も含まれます 実際の栽培にあたっては 地域の普及指導センターや JA 等に問い合わせいただき 園地条件や品種に適した施肥設計 栽培方法等に基づき栽培してくださ

Ⅳ 花き

メラレウカ苗生産技術の検討 供試品種は レッドジェム, レボリューションゴールド を用い, 挿し木を行う前日に枝を採取し, 直ちに水につけ持ち帰り, 挿し穂の基部径を 0.8~1.2mm,1.8~2.2mm,2.8~3.3mm で切り分けた後, 長さ約 8cm, 基部から 3cm の葉を除いた状態に

3 月 3 月は本格的なクリスマスローズのシーズンで 全てのクリスマスローズの花が咲き誇ります 育成者が最も充実し 1 年間育ててきた成果と春の喜びを実感できる季節です 莢が出来た花がらは 株が弱らないうちに摘み取ります 莢のみを摘み取り 花びら ( がく ) は残してもよいでしょう 3 月は秋とと

チャレンシ<3099>生こ<3099>みタ<3099>イエット2013.indd

果樹の生育概況

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高温に対する農作物管理について 平成 27 年 8 月 5 日岐阜県農政部農業経営課 7 月下旬の梅雨明け以降 厳しい暑さが続いています 今後も気温の高い状態が続くと予想されます 農作物等への影響が懸念されますので 下記対策を参考に生産者等への指導をお願いします 水稲 水稲は本来 高温を好む植物であるが 近年 高温化傾向が顕著になっており 白未熟粒などの多発をもたらし米の品質を大きく低下させる原因となっている 水稲に対する高温の影響は 主として呼吸量の増大とそれに伴う茎葉からの蒸散量の増加による乾物生産量の低下が大きく 管理に当たっては 次の点に留意して稲の生育の維持を図る (1) 穂肥の適正施用穂肥は 登熟期間の稲体の体力を維持させるものであるから これまで育てられた稲体に適した量と時期を守って穂肥を施用することが重要である 登熟期が高温の場合には 籾数が過剰になると乳白粒の発生が多くなることが知られている また 穂肥の不足により背白粒や基白粒が多発することや 被覆尿素などの緩効性窒素肥料を穂肥に使用することで白未熟粒の発生が低下することが知られている 適切な穂肥の施用により籾数を適正な範囲に制御し 登熟期の窒素供給を一定程度確保する (2) 冷水の通水夜間の気温が高いと呼吸量が多くなり せっかく昼間に蓄積した養分も消耗してしまう 植物の体力消耗を少しでも減らすために 夜間通水により地温 気温を低下させ 植物体の温度を下げる 気温より低い水温の用水で直接稲を冷やすかけ流しは 出穂後 20 日間の実施により白未熟粒や胴割粒の発生を抑制する効果が高いが 用水量が増えるので水利慣行の制約に注意する 用水量に問題がある地域では常時湛水で対応する (3) 早期落水防止登熟期の早期に落水を行うと根の活力が低下して 体力維持が困難となるので注意する 生育後半まで稲体の活力を維持するためには 根系の活力維持が不可欠であり 早期落水を避ける必要がある ただし 軟弱な土壌では やむを得ない場合もあるので 立地条件

に応じて適切な時期に落水し その後は走り水等により飽水状態をできるだけ収穫間際ま で維持することが重要である (4) 適期収穫登熟期が高温になると成熟までの期間が短くなり 刈り遅れとなりやすいが 刈り遅れは白未熟粒の他 茶米や胴割粒が増えるので注意する また 収穫後の過乾燥は 胴割粒だけでなく白未熟粒も増加するので注意する (5) 土づくり ( 次年度以降の対策としての下地づくり ) 生育後半まで稲体の活力を維持するためには 堆肥の施用による地力窒素の向上 根が十分に生育できるための作土深の確保が効果的であることが知られている 作土深については 地力増進基本指針や栽培指針においても15cm 以上の深耕を勧めている 農業機械が大型化する中 深耕すると機械が安定走行しにくくなり 作業効率が下がるため 近年は浅耕化傾向にあるが 田畑輪換の畑地期間で地力低下が進み 稲体の活力低下を招きやすくなっていると考えられている 平成 22 年度高温適応技術レポートでは 根系の生育につながる堆肥の施用や深耕の実施等 土づくりの徹底で高い効果が得られるとされており 土づくりは典型的な高温障害対策の予防的技術と考えられる 近年 有機物施用が減り 地力低下が進んでいると言われているので これを機に対策を進める (6) 病害虫管理飛騨地域では斑点米カメムシ類の病害虫発生予察注意報 (H27.7.22 付け ) が発表されている 斑点米カメムシ類の生息密度を低減させるため 畦畔 農道ぎわ 水路ぎわ 休耕田 および水田周辺などの除草を地域全体で一斉に行う 特に イネ科雑草は好適な餌植物となるため出穂させないように管理する 出穂 10 日前までの除草が被害軽減に有効とされているが 出穂直前および出穂後の除草は 斑点米カメムシ類を水田内に追い込み 被害を助長する恐れがあるため 高温により出穂時期が早まる場合は実施時期に注意する 大豆 転換畑で栽培されている大豆は 高温に伴う少雨 ( 干ばつ ) の影響が発生しやすい 高温による呼吸と茎葉からの水分蒸散が増加し 干ばつにより茎葉の萎凋が発生する 発芽時や出芽後の干ばつは 出芽遅延が発生するため ほ場の乾き具合に注意する 花芽分化期 ~ 開花期の干ばつは 雌ずい 雄ずいの退化による不稔が発生し 落花 落莢とつながる 茎葉の生育量が最大となる開花後 40~50 日間が水要求量は最大となるので この時期は特に注意する 水分不足は 大豆よりも根粒に強く作用し 開花期以降 (~ 子実肥大期にかけて ) 水分不足になると窒素固定能力が大きく低下することから 子実肥大に影響する (1) 中耕培土中耕培土は一時的に断根させ 干ばつ被害を助長する場合もあるため 前後の天候を考慮して実施する 培土した後に稲わらなどの被覆物で地表を覆い土壌水分の蒸発を防ぐことも考慮しておく

中耕培土を省略する技術もあるが 通常畦幅で播種されていると 後の降雨によっては雑草の生育が大豆を上回り 収穫時の作業に支障をきたし 或いは大豆が大型化して倒伏し収穫を困難にする場合もあるため 極力開花 10 日前までに中耕培土を実施するか 除草剤の畦間処理による雑草管理や摘心処理による倒伏軽減対策を行う (2) 畝間潅水開花期以降に乾燥が続き 土が白く乾き 日中に最頂葉の中央個葉が50% 以上反転したら 畝間潅水を行う 目安は無降雨日数 7~10 日である ただし 潅水した水が停滞すると逆効果になるので 確実に排水できるよう準備した後 10アールあたり2 時間以内の滞水を目途に行う 潅水は温度の低い朝夕または夜間に行い 潅水間隔は6~7 日とする (3) 排水対策と耕盤管理 ( 次年度以降の対策としての下地づくり ) 梅雨の多湿や耕盤形成によって 根が深く張れないことが干ばつの被害を増大させる原因となっている 梅雨期の徹底した排水対策や深耕 心土破砕等による耕盤管理によって根を発達させることで 干ばつを軽減することができる (4) 病害虫管理高温の影響による害虫の多発化 特にカメムシ類による吸汁やハスモンヨトウによる食害が多発生することで結莢不良 被害粒の増加が懸念されるため 適切な防除を行なう 各地域に設置されているハスモンヨトウのフェロモントラップへの誘殺数やほ場での発生に十分に注意し 若齢幼虫の発生が認められた場合は防除を実施する 野菜 野菜の生育適温はそれぞれ異なり 高温の被害としては 品質低下 収量低下 また 害虫の発生による被害がある 高温耐性には 根の活動が大きく関与しているので 安定した土壌水分の維持と地温の上昇抑制が必要である また 単一の技術のみでは その効果が不十分であることから 複数の技術を組み合わせて実施することがより重要となる さらに 高温対策は 高温期のみの技術対策だけでは 十分効果が上がらないことから 下記の事前対策をあらかじめ実施し 対策の効果を上げることも必要である (1) 対策技術 1 遮光資材の利用により ハウス内気温 果実温 葉温等の上昇抑制を図る しかし 遮光期間や展張時の天候によっては 光量が低下し収量や品質の低下を招くこともあることから注意が必要となる 2 敷わらや地温上昇抑制資材を被覆することにより 土壌表面温度の上昇と 土壌水分低下の抑制を図る 地温低下は高温性土壌病害である青枯病等の発病抑制にも効果的である 3 高温により蒸散量が増加することから朝 夕を中心に複数回に分けてかん水を行い 適正な土壌水分管理に努める

4 曇雨天後に晴れ上がる日は特に萎凋しやすいので 早期かん水を実施するとともに 特に萎れる場合は葉水の実施により葉の焼けを防ぐ 5 高温乾燥状態で発生しやすいアザミウマ類 ハダニ類 ヨトウムシ類等の害虫の早期防除を徹底する また 薬害が発生しやすいため 高温時の薬剤散布は避ける 6 収穫は品温が十分に低下してから行うとともに 品温を低く保つことにより品質低下を防ぐ (2) 事前対策 1 良質なたい厩肥を投入して地力増進を図る 2 排水対策を徹底することにより根域の拡大を図る 3 土壌病害対策を行い 根を健全に発根させる 4 高軒高ハウスや強制換気 天窓 遮光資材 細霧冷房などの導入により温度環境の改善を図る 5 地温上昇抑制マルチ ( タイベックマルチ等 ) などを利用する 6 養液栽培では遮熱資材などの導入により根圏温度を適正に管理する 7は種前や定植前に予め十分かん水して 土壌水分を適正に保つとともに は種や定植後にも十分かん水を行い 発芽勢の向上や活着促進を図る 花き 花きの高温対策については 次の点に留意する ( 1 ) 施設 ハウス内の温度管理施設栽培では高温障害を受けやすいため 換気を十分に行い 日中の施設内気温の上昇を極力抑えることが大切である 以下の対策により高温障害の回避に努める 草丈にもよるがサイドはできるだけ高い位置で開放すると効果が高い また サイドの開放に合わせて肩面や谷面 ツマ面も開放し換気の効率をあげる パッド & ファン ヒートポンプ冷房 細霧冷房などの装置が整備されていれば活用を図る 寒冷紗や遮熱シートの活用や石灰乳のガラス面塗布などにより遮光する 遮光率は種類によっても異なるが 30~50% 遮光を目安とする 遮光方法としては ハウス外遮光やハウス内の平張りの効果が高い また 遮光する時間は最大で10~16 時までとする ( 2 ) 病害虫対策 高温 乾燥時にはハダニ類 スリップス類が多発しやすいので防除を徹底する ( 日中の防除は薬害などの恐れから避け 早朝または夕方以降に実施する ) ( 3 ) 品目別対策 1 キク彼岸出荷作型では高温のため花芽の発達が抑制され 開花の遅延を招く 高温に乾燥が伴うと開花の遅延だけでなくブラインドが発生して開花しなかったり 奇形花が発生して品質の著しい低下を招くため 以下の対応を行う サイドの解放部を大きく採り 通風を図る また天井部にたまりやすい熱気を

排除するため循環扇などを利用する 寒冷紗などで遮光 ( 5 0 % 程度 ) を行い葉温の低下を図る 高温と乾燥が伴う場合は 早朝または 夕方に灌水を行って吸水を促し 蒸散による葉温の低下を図る 薬害発生の恐れから 薬剤散布は日中を避け 気温の低い早朝か夕方に行う シェード栽培の場合 夜間シェード内の温度が上昇し 奇形花が発生する恐れがあるため夜間一時シェードを開け温度の上昇を防ぐ 2 バラ高温と強光により葉焼けを起こす 換気に努め 寒冷紗等を日中の高温時の数時間展張して室温を調節する 高温乾燥によりハダニ類の発生が助長されるので発生初期から防除を行う 3 ユリ類抑制栽培のうち 今後出荷を迎える 9 月から 1 0 月出荷作型においては 定植後の管理時期となっている 高温 強光による葉焼けに注意して 5 0 % 程度の遮光につとめ 葉温低下のため日に 2 ~ 3 回茎葉に軽く散水する 4 トルコギキョウ高温によるロゼットの打破 回避をするため 7 月に播種した苗は 8 月下旬から 1 0 で 3 5 日間低温処理 ( 2 4 時間照明 500lx 以上 ) を行い 定植する また 8 月下旬以降に播種するものは 1 0 で30 日間以上の低温処理を行った後に育苗を行い 定植をする 果樹 県内主要果樹において 気温が高温で推移すると 樹全体の呼吸量が増加し光合成生産物等の養分の消耗が増えるため 果実肥大が抑制される また 日中における直射光は果実表面温度を上げ 日焼けを助長する さらに 成熟期に入る樹種 品種 ( リンゴ カキ 黒色 赤色系ブドウなど ) においては 色素の生成が抑制され 着色不良の原因となるので 対策を十分取る必要がある (1) かん水真夏の晴天時の葉 土壌表面から蒸発散量は 1 日当たり4~5mm と言われている 10 日以上降雨がない場合には 1 回のかん水量を30mm で7 日置きを目安にかん水を行う 土質が粗粒の場合には1 回のかん水量を減らし間隔を狭くし 黒ボク土では かん水量を増やし間隔を広くする スプリンクラーやポンプ等を利用して散水するか 用水等を利用できる場合は畝間かん水を行う 水は横に浸透しにくいので 散水幅を狭くしたり畝数を多くしたりして 全体に行き渡るように留意する また 炎天下での滞水は根の活動を弱めるので かん水は気温の低い時間に滞水しないよう行う (2) 土壌管理 草生園での蒸発散量は清耕園に比べて一般的にはかなり多くなることから 草生園では 草との水分競合を防ぐため 草刈りを行い 刈草をマルチとして利用する また清耕園に

おいても 敷きわらや不織布を利用したマルチを行い 土壌水分の保持に努める (3) 日焼け防止日焼けは 果実表面に日光が当たり果実温が上がることで発生する 樹体内の水分が少なくなると発生しやすいため 対策はかん水が基本となる なお 摘果時に 直射日光の当たらない横向きや下向きの果実を残す 新梢を適度に残し影となる部分を残すことで被害が軽減できる (4) 適期収穫成熟期が近づいたら食味を確認しながら収穫時期を判断し 適期に収穫できるようにする 特に高温の影響で着色が遅延することに伴い収穫時期が遅れ 果実が過熟とならないよう注意する 更に 日持ち性を良くするため 高温時の収穫は避け 収穫後の果実温度が高くならないよう 涼しい場所で選別し出荷するよう努める (5) 防除 高温 干ばつ時に発生しやすいハダニ類については 発生動向に十分注意し 適期防除 を実施する 畜産 (1) 畜舎環境の改善寒冷紗 すだれ 日陰植物等による日よけの設置 屋根等への石灰の塗布 屋根材の変更及び屋根裏への断熱材設置等 太陽熱が畜舎内に伝わりにくい環境を作る また 窓の解放や換気扇等による換気 扇風機での送風を行い 畜舎内から畜舎温度を下げる さらに畜体へ直接送風 散水 散霧を行い 家畜の体から熱を奪い体感温度を下げる (2) 飼養管理の改善密飼いを避けて体感温度の低減を図るとともに 暑熱ストレスを受けやすい家畜 ( 泌乳牛 子牛 肥育牛など ) を畜舎内の比較的涼しい場所へ移動する また 牛においては 毛刈りを実施することも効果的である 良質で消化率の高い飼料を与え 冷たい水を十分に飲めるようにする 飼料給与は涼しい時間帯に行い 給与回数を増やす また 必要に応じてビタミンやミネラルを給与し 栄養不足を補う 作業者の健康管理 ~ 農作業中の熱中症に注意 ~ 熱中症は適切な予防をすれば防ぐことができる 熱中症を正しく理解し 予防に努める (1) 熱中症の予防法熱中症の予防には 水分補給 と 暑さを避けること が大切である 1 水分補給 こまめな水分補給 気温の高い時間は作業をしない

こまめな休憩 2 暑さをしのぐ服装 帽子の着用 通気性の良い衣類の着用 3 熱中症になりにくい室内環境 ハウスや畜舎等の換気 遮光や断熱材の施工等による温度上昇の防止 (2) 熱中症になったときの処置 1 涼しい場所に避難させる 2 衣服を脱がせ 身体を冷やす 3 水分を補給する 4 自力で水を飲めない 意識がない場合は 直ちに救急隊を要請する (3) 注意する点熱中症にならないよう以下の点に注意するほか まわりが協力して熱中症予防を呼びかけ合うことも大切である 1 人での作業を極力避け 2 人以上で作業することを心がけるなど 熱中症の予防を呼びかけあうことで 熱中症の発生を防ぐことができる 1 暑さの感じ方は人によって異なる のどの渇きを感じていなくてもこまめな水分補給をしたり 暑さを感じなくても日陰等を利用し こまめな休憩をとるよう心がける 2 節電を意識するあまり 熱中症予防を忘れない気温が高い日や湿度の高い日には 決して無理な節電をせず 適度に扇風機やエアコンを使用するようにする