ビジネスメールの基礎知識

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(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

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2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

事業承継税制の概要 事業承継税制は である受贈者 相続人等が 円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において その非上場株式等に係る贈与税 相続税について 一定の要件のもと その納税を猶予し の死亡等により 納税が猶予されている贈与税 相続税の納付が免除される

2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

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土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

2 b. 廃業 3) 事業承継計画 1 現状の把握 a. 事業承継に係る関係者の状況 中小家の親族関係 その他の関係者 氏名 年齢続柄 備考 氏名年齢 備考 中小太郎 60 歳 本人 T 社の創始者 ( 代表取締役社長 ) A 63 歳 T 社の専務取締役 ( 太郎の右腕 最近病気がち ) 中小花子

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

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給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

第 5 章 N

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

1 検査の背景 (1) 租税特別措置の趣旨及び租税特別措置を取り巻く状況租税特別措置 ( 以下 特別措置 という ) は 租税特別措置法 ( 昭和 32 年法律第 26 号 ) に基づき 特定の個人や企業の税負担を軽減することなどにより 国による特定の政策目的を実現するための特別な政策手段であるとさ

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

事業承継税制の全体像は ( 図表 1) の通りである ( 図表 1) 事業承継税制の全体像 経営者 1 代目 経営者 2 代目 一括贈与 大臣認定 贈与税の課税 贈与税の納税猶予の適用 相続税の納税猶予制度と同様 雇用確保を含む 5 年間の事業継続を行い その後も株式を継続保有 生前贈与により株式の

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

金庫株を活用した事業承継対策 1. 概要 非上場株式を相続して相続税が発生する場合は 相続で取得した自社株を相続税の申告期限後 3 年以内に金 庫株すればみなし配当課税しない (= 譲渡所得とする ) 特例があります ( 措置法 9 条の 7) 所得税の特例の内容 ( 自己株式をみなし配当課税しない

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

相続税 贈与税の基本がよくわかる! 誰が相続人になるの? 税額はどのようにして求めるの? 土地 建物の評価はどうするの? 住宅取得資金の贈与は最大 3,000 万円が非課税に? 教育資金や結婚 子育て資金の贈与は非課税に? 新しくできる配偶者居住権ってどんなもの? etc.

目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

プルータスセミナー 新株予約権の税務について 株式会社プルータス コンサルティング 平成 18 年 12 月 7 日

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

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平成19年12月○日

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暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

参考. 改正前の制度概要 ( 改正対象は太字 ) (1) 税の納税猶予の全体像 ( 概要 ) の要件 会社の代表者であったこと 時には代表権を有していないこと と同族関係者で決議数の 50% 超の株式を保有かつを除いた同族内で筆頭株主であったこと 認定対象会社の要件 の要件 会社の代表者であること

平成16年版 真島のわかる社労士

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相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

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2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

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Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

[2] 財務上の影響 自己株式を 取得 した場合には 通常の有価証券の Ⅰ. 株主資本 ように資産に計上することはせず 株主との間の資本取 1. 資本金 引と考え その取得原価をもって純資産の部の株主資本 2. 資本剰余金 (1) 資本準備金 から控除します そのため 貸借対照表上の表示は金額 (2

ストックオプション(新株予約権)の発行に関するお知らせ

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2011年税制改正のポイント

事業承継関連税制について 関東経済産業局 平成 30 年 6 月 中小企業金融課

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

(1) 改正の内容 内容 現行制度 特例制度 納税猶予対象株式 納税猶予税額 発行済議決権株式総数の 3 分の 2 に達するまでの株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係る贈与税の全額 相続の場合 : 納税猶予対象株式に係る相続税の 80% 取得した全ての株式 贈与の場合 : 納税猶予対象株式に係

株式併合、単元株式数の変更および定款の一部変更に関するお知らせ

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1. 相続税 (1) 基礎控除額の引き下げ 1) 改正の趣旨現在 ( ) の相続税の仕組みは 下図の通りです すなわち 合計課税価格から 基礎控除額を除いた課税遺産総額が相続税の計算の対象となるため 合計課税価格が基礎控除額の範囲内である場合には 相続税が課税されません その結果として 現状の相続税

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速報!  平成27年度税制改正セミナー

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

Japan Tax Newsletter

コピー又は web からダウンロードしてご使用ください 答案用紙 Chapter1 問題 1 個人とみなされる納税義務者 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 遺贈財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額 2 生前贈与加算される贈与財産の額の計算 ( 単位 :

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12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

スポンサー企業 増減資により 再生会社をスポンサー企業の子会社としたうえで 継続事業を新設分割により切り分ける 100% 新株発行 承継会社 ( 新設会社 ) 整理予定の事業 (A 事業 ) 継続事業 会社分割 移転事業 以下 分社型分割により事業再生を行う場合の具体的な仕組みを解説する の株主 整

原稿4.xls

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

手続が不要となるため キャッシュ アウト完了までのスケジュールを短縮することができるようになると見込まれています また 全部取得条項付種類株式の取得では新株予約権を強制的に取得することができないのに対し 株式等売渡請求制度では新株予約権をも対象とすることができるため 新株予約権の処理に関して個別の保

所令要綱

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経 [2] 証券投資信託の償還 解約等の取扱い 平成 20 年度税制改正によって 株式投資信託等の終了 一部の解約等により交付を受ける金銭の額 ( 公募株式投資信託等は全額 公募株式投資信託等以外は一定の金額 ) は 譲渡所得等に係る収入金額とみなすこととされてきました これが平成 25 年度税制改

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Microsoft Word 常発041号 改正相続税法等の周知について(・

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

20年度「応用課程・ビデオ問題」

課税遺産総額 = 各人の課税価格 ( ア ) の合計額 - 遺産に係る基礎控除額ウ相続税の総額の計算 1 課税遺産総額を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものと仮定し 各人ごとの取得金額を計算する 2 1に税率をかけ 各人の税額を合計する (= 相続税の総額 ) エ各人の相続税額の計算相続税の総

相続税に関するチェックリスト

き一 修正申告 1 から同 ( 四 ) まで又は同 2 から同 ( 四 ) までの事由が生じた場合には 当該居住者 ( その相続人を含む ) は それぞれ次の 及び に定める日から4 月以内に 当該譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し かつ 当該期限内に当該申告書の提出により納付

服部法律事務所ニュース 遺言書について その4(相続税)

役務提供のご案内

A は 全ての遺産を社会福祉施設に寄付すると遺言に書き残し死亡した A には 配偶者 B と B との間の子 C と D がある C と D 以外にも A と B との子 E もいたが E は A が死亡する前にすでに死亡しており E の子 F が残されている また A には 内妻 G との子 (

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

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特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

将来 = 何年後 どのような状況になった時を明確に 誰に = 親族とは限らない どのように = 相続や提携や合併などの方法 どのような事業 = 既存事業とは限らない他事業との連携や転換も 自分や従業員 = 将来の家族も含めた生活保障重要な要素である 戦略を立て それを課題ごとに 時系列的に落とし込ん

定款の一部変更に関するお知らせ

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

(2) 青色申告書を提出する中小企業者等 ( 平成 3 年 4 月 日以後開始する事業年度については 適用除外事業者 ( 注 4) を除く ) が 平成 30 年 4 月 日から平成 33 年 3 月 3 日までの間に開始する各事業年度において 国内雇用者に対して給与等を支給する場合に継続雇用者給与

2018年度税制改正大綱 - 資産税関連の主な改正点

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2015 年 8 月 経営 Q&A 回答者 株式会社日本財産コンサルタンツ 代表取締役社長和田壮司 事業承継対策のポイントと具体的手法 ~ 円滑な事業承継を実現するために必要な対策 ~ 第 5 回 : 事業承継対策の具体的手法 ( 親族内承継 ) Question 相談者: 小売事業従業員 20 名代表取締役 TF 氏 58 歳 当社は 約 20 年前に創業した地元でスーパーを営む会社です 息子が 10 年前に入社し そろそろ事業承継を検討しようと思います 従業員や第三者へ譲渡する可能性もあります まずは親族内で承継する場合にどのような方法があるのか またどのような対策をしていく必要があるのかを知った上で判断したいと思います よろしくお願いします Answer 事業承継は 会社の現状を把握した上で 事業承継計画を策定する必要があります ここで 最も慎重に検討する必要があるのが承継の方法です 事業承継の方法には 大きく分けて親族内承継と親族外承継があります 親族内承継は現経営者の親族に事業を承継することで 親族外承継は従業員や第三者への譲渡など親族以外に事業を承継することです 近年 経営者の高齢化に伴い 企業の休廃業や解散件数は増加傾向にあります その中でも 事業を何らかの形で他者に引き継ぎたいと考える経営者は少なくありません 事業承継の形態としては 親族外承継の割合が増加してきているものの 依然として親族内承継の割合が多いのが実態です 今回は 親族内承継の具体的手法として 親族内承継のメリットやデメリットのほか 留意すべき事項 承継の方法 また 各方法における税務上や法務上の対策などを解説します 1

1. 親族内承継のメリット デメリット親族内承継とは 現経営者の子息子女 妻 娘婿 兄弟姉妹等の親族に対して事業を承継させることです 親族内承継においては 必ずしも親族内に経営の資質と意欲を併せ持つ後継者候補がいるとは限りません また 相続人が複数いる場合は 後継者の決定や経営権の集中が難しいというデメリットはあるものの 一般的には企業内外の関係者から理解を得やすく 後継者育成のための長期準備期間を確保することも可能です そして 後継者となる親族自身にとっても 現経営者の経営理念を理解しやすい状況にあるため 円滑な事業承継対策が可能となります 現経営者が創業者の場合には 創り上げた会社を子供に継がせたいと思うことは自然であり 内外の関係者にとっても違和感なく事業を承継できる点で 最も多く選択される方法です 2. 親族内承継の留意事項親族内承継の主な課題は 後継者の経営者としての資質や能力の不足 相続税や贈与税の負担です したがって 親族内承継を選択して事業を引継ぐ場合には 関係者の理解 後継者育成 株式や財産の分配について留意が必要となります (1) 関係者の理解後継者が選定された後は 後継者や新体制の経営方針を周知するタイミングや 周知方法の段取りなど 後継者への経営移行計画を定めて 関係者の理解を得ていく必要があります 特に 承継後の現経営者による経営への関与度合は 従業員や取引先などの利害関係者にとっては重要な関心事です 関係者の理解を得るためには 現経営者と後継者候補が密にコミュニケーションをとりながら 社内や取引先 金融機関へ事業承継計画や方針を説明するとともに 後継者のみならず 将来の経営陣の構成を視野に入れて 役員や従業員の世代交代を準備していくことが重要です (2) 後継者育成後継者を選定する際には 求められる経営者の役割を明確にするとともに その役割を果たすために必要となる要件に該当する候補者をリストアップし これまでの経験や実績を踏まえて総合的に判断する必要があります また 後継者を選定した後は 事業承継の目標時期の設定や経営者の資質を後継者に考えさせるための後継者育成計画が必要です 育成といっても 現経営者が一方的に後継者を育成するのではなく 現経営者と後継者が承継に関する時期や経営方針などについて摺合せを行いながら 後継者のモチベーションを高めることが目的です 承継までに後継者が経験を積む必要がある項目は 自社の決算書や税務申告書 人事制度 強みや商流 営業方法などについて理解すること 及び自社の課題を把握することなどが挙げられます なお 経営者として必要な資質としては 自社の経営に対する熱意と意欲 大局観 決断力 コミュニケーション能力 洞察力 リーダーシップ 誠実性 客観的視野 チームワーク力 戦略策定能力などが挙げられます 2

後継者育成計画については 社内教育として 各部門をローテーションし 経験と知識を習得させることや 経営幹部などの責任ある地位に就けて 重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与えるとともに 現経営者が直接指導して経営理念を引継がせることなどが挙げられます また 社外教育として 人脈の形成や新しい経営手法の習得のために他社での勤務を経験させることや 子会社 関連会社などの経営を任せ 責任感や経営者としての資質を確認するとともに 外部機関のセミナーを受講して知識の習得や幅広い視野を育成することなどが挙げられます (3) 後継者以外の相続人への配慮親族内承継においては 後継者へ株式や事業用資産を集中させる一方で 後継者以外の相続人に対して遺留分の配慮が必要となります 遺留分とは 遺族の生活の安定や最低限の相続人間の平等を確保するために 民法で定められた相続人 ( 兄弟姉妹を除く ) の相続に関する権利のことです 現経営者 ( 被相続人 ) の遺言や生前贈与によって遺留分よりも相続資産が少なくなった相続人は 遺留分を侵害している相続人に対して請求することで 取り戻すことができます ( 遺留分減殺請求権 ) 遺言や生前贈与によって現経営者が株式や事業用資産を後継者に集中させようとしても 相続財産の多くが株式や事業用資産である場合には この遺留分減殺請求権の行使によって相続紛争の原因となったり 株式や事業用資産が分散してしまうという問題が生じてしまいます 相続がいわゆる 争続 にならないように 後継者以外の相続人への配慮が必要不可欠となります 遺留分の配慮の方法については後述します 3. 親族内承継の方法親族内承継の方法は 相続による承継 生前贈与による承継 売買による承継と大きく分けて 3 つあります (1) 相続による承継相続による承継は 現経営者の死亡 ( 相続開始 ) 時に後継者への承継が行われる事業承継の方法です 相続による承継のメリットは 会社の株式や事業用資産の取得にかかる資金の準備が 生前贈与による承継や売買による承継より少ない点にあります 一方 デメリットは 1 基礎控除額を超えると相続税がかかり 相続財産のうち株式や事業用資産が多くを占める場合に 納税資金の準備が必要となること 2 遺言は遺言者である現経営者は自由に撤回することができるため 生前贈与と比べて後継者の地位が不安定となること 3 現経営者が遺言を作成することなく相続になった場合は 後継者が取得できる財産は遺産分割協議次第であり 株式が分散して後継者の地位が不安定となってしまうこと 4 遺言書が作成されていても 遺言の内容が遺留分を侵害するものであった場合は 遺留分を侵害する部分の効力は否定され 後継者の地位が不安定になってしまうことなどが挙げられます 3

したがって 相続による承継方法を選択する場合には 相続税に関する税務上の対策や経営権の集中に関する法務上の対策を事前に行う必要があります (2) 生前贈与による承継生前贈与による承継は 現経営者の存命中に後継者へ株式等を贈与することで承継させる事業承継の方法です 生前贈与による承継のメリットは 1 遺言と異なり現経営者は自由に撤回することができないため 後継者の地位が安定すること 2 後継者が現経営者の存命中に経営に対して早くから影響力を持つことができること 3 相続による承継と同様に 会社の株式や事業用資産の取得にかかる資金の準備が必要ないこと などが挙げられます 一方 デメリットは 1 相続税と比べて基礎控除額が少なく税負担が重いため 贈与税にかかる納税資金の準備が必要となること 2 生前贈与は特別受益となり遺留分の制約を受けるため 生前贈与が遺留分を侵害するものであった場合は 遺留分を侵害する部分の効力は否定され 後継者の地位が不安定となってしまうこと などがあります したがって 生前贈与による承継方法を選択する場合にも 贈与税に関する税務上の対策や経営権の集中に関する法務上の対策を事前に行う必要があります (3) 売買による承継売買による承継は 現経営者の存命中に後継者へ株式等を売却することで承継させる事業承継の方法です 売買による承継のメリットは 生前贈与と同様に後継者が現経営者の存命中に経営に対して早くから影響力を持つことができるとともに 遺留分の制約を受ける心配がないため後継者の地位が安定する点にあります 一方 デメリットは 後継者が会社の株式や事業用資産の取得にかかる資金の準備が必要である点にあります 一般的に 後継者は十分な資金を有していないことが多く資金調達がポイントになります 4. 税務上の対策事業承継においては 承継の方法によって税負担が異なる上 税務上の支援策もあるため 必ず税務上の対策を検討する必要があります なお 自社株式評価に関しては 前回 ( 第 4 回 ) の 資産 の承継対策ポイントで解説しておりますので ご参照ください (1) 相続による承継相続による事業承継がなされた場合 株式や事業用資産の相続を受けた後継者に対して相続税が課税されます 相続税額の計算は 以下の 3つの手順で算出します 1 正味の遺産総額 ( 課税価格の合計 ) の算出相続人各人が実際に取得した遺産の額に 必要な加算分 ( 生前贈与 みなし相続財産 ) をプラスし 差引分 ( 債務 非課税財産 葬式費用 ) をマイナスします 4

この各人の課税価額の合計が 正味の遺産総額 です 2 遺産の相続税総額を算出正味の遺産総額から基礎控除 (3,000 万円 +600 万円 法定相続人の数 ) を差し引いて 課税される遺産総額 を算出した後 相続人が法定相続割合で分割すると仮定して各人の相続財産を出し その相続財産に対して相続税の速算表 ( 下表参照 ) を使って各人の相続税を算出します その各人の相続税の合計が 遺産の相続税総額 です 相続税速算表 基礎控除後の課税価格 税率 控除額 1,000 万円以下 10% なし 3,000 万円以下 15% 50 万円 5,000 万円以下 20% 200 万円 1 億円以下 30% 700 万円 2 億円以下 40% 1,700 万円 3 億円以下 45% 2,700 万円 6 億円以下 50% 4,200 万円 6 億円超 55% 7,200 万円 3 各人の相続税負担額 遺産の相続税総額を 実際に取得した各人の相続財産の比率で配分し 相続人に よって加算分や税額控除の調整をして各人の相続税負担額を算出します このような相続税負担に対する税務上の対策として まず 非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度があります これは 相続開始後 後継者が相続した非上場株式等について一定の要件を満たし かつ 申告期限までに経済産業大臣の認定を受けた場合 申告後も引き続き特例の適用を受けた非上場株式等を保有すること等により 納税が猶予される制度です ただし 申告期限後 5 年間は毎年 5 年経過後は 3 年ごとに引き続きこの特例の適用を受ける旨や会社の経営に関する事項等を記載した 継続届出書 を提出する必要があります 次に 小規模宅地の特例の活用があります 仮に 後継者が相続又は遺贈により取得した財産のうち その相続の開始の直前において現経営者 ( 被相続人等 ) の事業用に供されていた宅地等又は現経営者 ( 被相続人等 ) の居住用に供されていた宅地等のうち 一定の選択をしたもので限度面積までの部分 ( これを 小規模宅地 といいます ) については 相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上 一定の割合を減額します ( 下表参照 ) また 非上場株式を相続した後継者が非上場株式を株式発行会社へ譲渡する場合には 売却価格の一部が配当所得とされ みなし配当課税 ( 総合課税 ) されますが 1 相続等により非上場株式を取得して相続税を納付し 2 相続税の申告期限の翌日から3 年経過日までに対象株式を発行会社に売却すれば 配当課税ではなく譲渡益課税 ( 申告分離課税 ) の適用を受 5

けることができます 限度面積と減額割合 相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額割合 現経営者 ( 被相続人等 ) の居住の用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等に 1 330m2 80% 該当する宅地等 現経営者 ( 被相続人等 ) の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 貸付事業用の宅地等 2 3 特定事業用宅地等に該当する宅地等 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 ( 一定の法人の事業の用に供されていたものに限定 ) 特定事業用宅地等 400 m2 80% 400 m2 80% 貸付事業用宅地等に 4 200m2 50% 該当する宅地等 (2) 生前贈与による承継 生前贈与による事業承継がなされた場合 株式や事業用資産の贈与を受けた後継者に対し て贈与税が課税 ( 基礎控除年間 110 万円 ) されます ( 下表 贈与税の速算表参照 ) 相続税速算表 ( 特別税率 ) 20 歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた場合 贈与金額 税率 控除額 200 万円以下 10% なし 400 万円以下 15% 10 万円 600 万円以下 20% 30 万円 1,000 万円以下 30% 90 万円 1,500 万円以下 40% 190 万円 3,000 万円以下 45% 265 万円 4,500 万円以下 50% 415 万円 4,500 万円超 55% 640 万円 6

相続税速算表 ( 一般税率 ) 上記以外 贈与金額 税率 控除額 200 万円以下 10% なし 300 万円以下 15% 10 万円 400 万円以下 20% 25 万円 600 万円以下 30% 65 万円 1,000 万円以下 40% 125 万円 1,500 万円以下 45% 175 万円 3,000 万円以下 50% 250 万円 3,000 万円超 55% 400 万円 贈与税負担に対する後継者としての対策には 暦年贈与による基礎控除 ( 年間 110 万円 ) の活用 後継者が配偶者 (20 年以上の婚姻期間 ) の場合には居住用不動産又はそれを取得 するための金銭を贈与したときに 2,000 万円の控除を受けられる特例や相続時精算課税制 度があります 相続時精算課税制度は 生前贈与を受けた後継者で一定の要件を満たすもの については 選択によって 贈与時に贈与財産に対する贈与税を支払い その後の相続時に その贈与財産と相続財産とを合計した価額をもとに計算した相続税額から すでに支払った 贈与税を控除することができる制度です 当該贈与財産は 相続時に贈与時の時価を利用す るため 将来株価の上昇が見込まれるような場合には 相続時精算課税の活用は有効です ただし 一度相続時精算課税制度を選択したら 以後その現経営者 ( 贈与者 ) からの贈与に 関して暦年課税制度を選択することはできなくなります また 4(1) で説明した相続税の納税猶予制度と同様に 非上場株式等に係る贈与税の 納税猶予制度もあります (3) 売買による承継売買による事業承継がなされた場合 株式や事業用資産の売却により対価を得る現経営者に対して所得税が課税されます 売却価格と取得価格 ( 必要経費含む ) の差額である譲渡益に対して課税されます 非上場会社の株式の場合は税率 20.315%( 所得税 15.315% 住民税 5%) です また 不動産の場合 所有期間が 5 年間を超える不動産は税率 20.315% ( 所得税 15.315% 住民税 5%) 所有期間が 5 年以下の不動産は税率 39.63%( 所得税 30.63% 住民税 9%) となります その他売買による承継の場合 不動産取得税 登録免許税 印紙税も課税されることに留意が必要です 5. 法務上の対策 親族内承継において どのような事業承継の方法を選択しても 円滑な事業承継を行い 後継者 7

が安定した経営を行うためには 現経営者が所有している株式や事業用資産を後継者に集中させることが重要です 経営権の完全承継という観点からは 発行済株式全部やその議決権を後継者に承継することが理想的ですが 既存株主との関係や資金調達の制約等により全部を承継することができないこともあります しかし 円滑な事業承継とその後の安定経営のためには 過半数の議決権 中小企業の場合であれば定款変更を伴う事項や 組織再編に関する事項のような重要事項を単独で決議することができる 3 分の2を超える議決権を承継することが重要です (1) 株式の集中及び分散防止次のような方法を用いて 後継者へ株式を集中させるとともに 好ましくない者への株式の分散を防止することができます 1 分散した株式の買取り現経営者や後継者個人による買取りのほか 会社による自社株式の取得も可能です 例えば 普通株式を全部取得条項付種類株式に転換し 種類株式 1,000 株につき 1 株の普通株式を交付した上で 端数株主から現金で買い取るスクイーズアウト ( 全部取得条項付種類株式 会社法 171 条 ) や 議決権 90% 以上を持つ株主 ( 特別支配株主 ) が少数株主から強制的に株式を買い取るスクイーズアウト ( 株式等売渡請求制度 会社法 179 条 ) があります また 社員や役員の持ち株会が少数株主から買い取る方法 少数株主対策や現経営者一族の株式の受け皿として一般社団法人や一般財団法人を活用する方法もあります 2 株式譲渡制限条項の設置会社にとって好ましくない者への株式の譲渡を制限することが可能です 例えば 株式を譲渡する場合には会社の承認を必要とする旨を定款に定めることにより 株式の分散を一定程度防止することができます 3 相続人に対する売渡請求条項の設置株式を相続した者が会社にとって好ましくない場合 会社が株式の売渡請求を行うことが可能です 例えば 定款に相続人等に対する売渡しの請求に関する定めがある場合には 相続人等に対して株式を会社に売り渡すことを請求することができます (2) 議決権の制限新会社法の制定により 会社は定款に規定することで多様な株式 ( 種類株式 ) の発行が可能となり この種類株式を利用して議決権の集中に効果を持たせることができます また 次のように議決権を制限する方法もあります 1 議決権制限株式株主総会において議決権の全部または一部が制限されている株式で 後継者に議決権付株式を取得させ それ以外の相続人には議決権制限株式を取得させることで 後継者に議決権を集中させることが可能となります 8

2 拒否権付株式 ( 黄金株 ) あらかじめ定めた一定の事項について 拒否権付株式の株主総会決議を必要とする株式で 一株であっても決議を拒否できる効力の大きさから黄金株とも呼ばれています この株式を現経営者が保有することで後継者の経営に関与する余地を残しておくということが可能となります なお 拒否権付株式は強い効力を有するため 現経営者の生前に償却する 遺言で後継者に相続するなど万が一にも後継者以外の者の手に渡ることのないよう細心の注意が必要です 3 その他の方法一定数の株式を一単元として 一単元について議決権の行使を認める制度 ( 単元株制度 会社法 188 条 ) や 複数の株式を合わせて一つの株式にすることにより単元株制度と同様の効果を得る方法 ( 株式併合 180 条 ) があります (3) 経営承継円滑化法の活用従来型の遺留分の放棄という方法は容易ではなかったため 中小企業の事業承継を円滑に進めることを目的として成立した経営承継円滑化法 ( 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律 ) に基づき 遺留分に関する民法の特例が施行されました この特例の措置として 後継者に生前贈与 遺贈等された株式について 遺留分算定の基礎財産から除外可能となり ( 除外合意 ) また 基礎財産に参入する際の価格を贈与時の時価に固定可能となりました ( 固定合意 ) なお この特例は 後継者を含む総ての推定相続人の合意に加えて経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要となるものの メリットを享受する後継者が単独で手続を行うことが可能である点で 遺留分の放棄より手続の実効性があるといえます 6. その他の対策親族内承継を選択する場合には 現経営者は 世代交代の準備として後継者候補を選び 後継者を育成することが必要ですが 後継者育成以外にも 事業承継後に後継者が円滑に経営をすることができるように 現経営者は 以下のようなことを実施する必要があります (1) 古参の役員の処遇を決める (2) 後継者のバックアップ体制の構築 (3) 複数の子供がいる場合に 後継者以外の子息の処遇を決める (4) 財産関係の整理 (5) 従業員や取引先との関係を構築するための協力 (6) 後継者を尊重し 後継者の意見に対して聞く耳を持つ姿勢を持つ M&Aによる第三者への譲渡の場合は 買い手側から成長のための購入申出がなされる等 売り手側に主導権がある場合が多く 買い手は売り手である現経営者の意見に同調することがほとんどです しかし 親族内で事業承継を行う場合には 事業を譲り渡す現経営者と事業を譲り受ける子息等とは同等の立場であることを理解し 現経営者が子息の意見に同調する部分を持つくらいの姿勢が円滑な承継には必要といえます 9

参考文献 資料 みずほ総合研究所編者 オーナー社長と後継者のための事業承継入門 TOMA コンサルタンツグループ著者 ヒト モノ コトを次代へつなぐ事業承継の教科書 事業承継ガイドライン 20 問 20 答中小企業庁 執筆者紹介 和田壮司 / Takeshi Wada 公認会計士 税理士 行政書士 経営学修士 ( 慶応ビジネススクール MBA) 株式会社日本財産コンサルタンツ代表取締役 (http://nzc.co.jp/) 行政書士法人日本財産コンサルタンツ代表 株式会社 audience 代表取締役 (http://www.audinet.co.jp/) 税理士法人 audience 代表 ドリームゲートアドバイザー (http://profile.dreamgate.gr.jp/pr_user_advisor_search/search) 中央青山監査法人 ( 現 新日本有限責任監査法人 ) にて 上場企業会計監査 内部統制監査 上場準備サポートに従事した後 PwC アドバイザリー株式会社 ( 現 プライスウォーターハウスクーパース株式会社 ) や株式会社 KPMG FAS にて 事業再生 金融機関交渉 M&A アドバイザリー業務に従事 また ベンチャー企業に役員として参画し 財務 管理会計の基礎 規程等の作成 内部統制や資金繰り管理など内部管理体制構築に携わる 2012 年に株式会社日本財産コンサルタンツ ( 不動産コンサルティングを柱としたコンサルティング会社 ) の代表取締役就任と同時に 株式会社 audience( クラウドソーシング型アドバイザリー会社 ) を設立 その後も 行政書士法人 税理士法人を設立するなど創業 事業拡大 事業再生 事業承継など企業の各ステージをワンストップでサポートする職業専門家集団を運営する その他 複数社の顧問や上場会社の社外取締役を務める 10