水素エネルギー社会形成研究会平成 27 年度第 2 回セミナー SPERA 水素は運びやすいぞ ~ 常温 常圧で大量に水素を運ぶ 貯める技術 ~ 千代田化工建設株式会社 2015 年 10 月 13 日 千代田化工建設 : 会社概要 名 称 千代田化工建設株式会社 資本金 461 億円 設 立 1948( 昭和 23) 年 1 月 20 日 ( 三菱石油工務部門を母体として設立 ) 社 長 澁谷 省吾 業務内容 総合エンジニアリング 従業員数 7,600 名 ( グローバルベース ) ( 企画 ~ 設計 ~ 調達 ~ 建設工事 ~ 試運転 ) 事業内容 拠 点 横浜本社 : 横浜市西区みなとみらい 子安オフィス : 横浜市神奈川区守屋町 海外拠点 駐在員事務所 : 中国 シンガポール タイ マレーシア インドネシア インド フィリピン ミャンマー アメリカ オーストラリア UAE サウジアラビア カタール イタリア オランダ ブラジル他 2 1
千代田化工建設 : 中期経営計画骨子 時代を捉え時代を拓く エネルギーと環境の調和を目指し 持続可能な社会の発展に貢献する 日本の産業再生と当社成長をシンクロさせる 基本戦略 コア事業 (LNG) の更なる強化 FLNG, 北米シェールカ ス対応 極寒地等 事業の多様化オフショアアップストリーム 水素 太陽熱利用 メタンハイドレート 社会インフラ 地産地消型の推進成長地域で地域に根付いたオペレーション体制の確立 事業投資の加速 3 本日お話させて頂く内容 Ⅰ. なぜ 今 水素なのか? 日本のエネルギーに何が求められているのか? 水素 とは? 水素に対する政府方針は? Ⅱ. 水素を社会に届けるためのチャレンジ 水素供給システムへ求められる要件は? SPERA 水素 とは? 水素サプライチェーンの事業化に向けて Ⅲ. 水素社会の実現に向けて 水素をどのように社会へ展開するか? 実現に向けた取り組み 4 2
Ⅰ. なぜ 今 水素なのか? 日本のエネルギーに何が求められているのか? 水素 とは? 水素に対する政府方針は? 5 日本のエネルギーに何が求められているのか? 増加する GHG/CO2 排出への対策 日本の温室効果ガス排出量は 世界経済の停滞に伴う減少が一時的に見られたものの 近年 発電部門やエネルギー消費の増加に伴い CO2 排出量が大幅に増加 出典 : 環境省 日本の温室効果ガス排出量の算定結果 (2015 年 4 月 ) 6 3
日本のエネルギーに何が求められているのか? 増加する GHG/CO2 排出への対策 ( 発電部門 ) 発電部門では 2011 年の原子力発電の停止に伴う 石炭 石油および LNG 火力発電の増大に伴い CO2 排出量が大幅に増加しており 削減策は急務 出典 : 環境省 日本の温室効果ガス排出量の算定結果 (2015 年 4 月 ) 7 日本のエネルギーに何が求められているのか? 激しく変動するエネルギー市場 / 価格への対応 世界の経済動向 / 政治情勢 シェールガス オイル開発の進展など 様々な外部環境の変化に伴い エネルギー価格は大きく変動し 需要国として更なる対策強化が求められている 原油価格 天然ガス価格 出典 : 各種統計データより弊社作成 8 4
日本のエネルギーに何が求められているのか? エネルギー供給リスクへの対応 ( カントリーリスク ) 国際情勢の不安定を背景とした燃料供給の途絶リスクや 我が国の中東依存度の高さ等を踏まえ 供給源の多角化 上流権益の獲得 資源外交の積極展開等 対応が進められている 主要資源調達国のカントリーリスク 出典 : 総合資源エネルギー調査会資料 (2014 年 7 月 ) 9 日本のエネルギーに何が求められているのか? エネルギー供給リスクへの対応 ( 災害対応 ) 東日本大震災の教訓を踏まえ 首都直下型地震 南海トラフ地震等の災害に備え 備蓄等による緊急時の自給 / 供給体制構築 エネルギー供給設備の耐震強化などが進められている 巨大地震等による石油製品の国内供給障害ケース 出典 : 総合資源エネルギー調査会資料 (2014 年 7 月 ) 10 5
日本のエネルギーに何が求められているのか? エネルギー資源制約への対応 エネルギー資源は 技術革新等により当面のエネルギー消費を支える上で大きな制約条件とならないが 有限であり また環境面の制約等から 代替エネルギーシフトが進められている サウジアラビア ヤマニ元石油鉱物資源相の発言 (2009 年 7 月 4 日日本経済新聞 ) 世界的な環境意識の高まりもあり 代替エネルギー開発が本格的に動き出した 原油価格高騰がそれを促したが 価格が低落しても代替エネルギー開発の動きは止まらない グリーンエネルギー志向は続く 石油の時代は終わりに近づいている 原油はまだまだ地下に眠っているし コストをかけて新技術を使えば採掘はできる だが 時代は技術で変わる 石器時代は石が無くなったから終わったのではない ( 青銅器や鉄など ) 石器に代わる新しい技術が生まれたから終わった 石油も同じだ 出典 : 関西電力 HP ほか 11 日本のエネルギーに何が求められているのか? 長期エネルギー需給見通し から 長期エネルギー需給見通し (2015 年 7 月 ) では 原子力依存度を下げ 石油危機後並みの徹底した省エネの推進 再エネの最大限の導入 火力発電の効率化を進める方針 出典 : 長期エネルギー需給見通し (2015 年 7 月 ) 12 6
日本のエネルギーに何が求められているのか? 約束草案 から 日本政府は 2030 年度の温室効果ガスの排出量を2013 年度比 26% 削減 することを掲げた温室効果ガス削減目標の政府原案 ( 約束草案 ) を決定 2015 年 7 月 27 日に 日本政府として本草案の内容を正式決定した エネルギー起源 CO2 の各部門の排出量目安 ( 21.9%) ( ) 内は 2013 年度比の削減率 出 : 日本の約束草案 (2015 年 7 月 ) 13 水素 とは? 水素の特徴 水素は 無色 無臭で 地球上最も軽い気体であり 水などのように他の元素との化合物として 地球上に大量に存在する 燃焼しても水しか排出しないため 究極のクリーンエネルギーと言われている 水素の特徴 宇宙で最も豊富にある元素 ( 質量では宇宙全体の約 70%) 水素単体では自然界にほとんど存在しない 無色 無味 無臭の気体 最も軽い気体 拡散速度が速い 燃えても火炎が見えにくい 燃焼すると水になる -252.6 で液化する 出典 : NEDO 水素エネルギー白書 (2015) 横国大太田教授資料 等を参照 14 7
水素 とは? 水素の利用先 水素エネルギーの利用先は 既に実用化段階にあるFCVや定置式燃料電池システムだけでなく 船舶や鉄道などを含む他の輸送分野や 水素発電など 幅広い これら利用を推進することにより 大幅な省エネや環境負荷低減 エネルギーセキュリティ向上に大きく貢献すると共に 新たな市場を開拓できる可能性あり 出典 : NEDO 水素エネルギー白書 (2015) 15 水素 とは? 水素の製造方法 水素は多様なエネルギーや資源から製造することが可能であるが 安定性や環境性 経済性などのメリット / デメリットを勘案しながら 導入展開を考える必要がある 天然ガス LPG/ ナフサ 重油 褐炭など 太陽光 風力 地熱 波力 / 潮力など エチレン メタノール 苛性ソーダ 製鉄所など 木材チップ 畜産系廃棄物 下水汚泥 廃プラなど 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 16 8
水素 とは? 水素の製造方法 ( 将来技術 : 光触媒 ) 光触媒を利用し 光によって水を直接分解して水素を製造する方法 ( 人工光合成 ) で 現状では変換効率が低いが 2021 年度末までに 10% 前後にする目標を立てて開発を推進中 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 17 水素 とは? 水素の製造方法 ( 将来技術 :IS プロセス ) 間接的に水を熱分解する方法で 水にヨウ素と酸化硫黄を反応させてヨウ化水素 (HI) と硫化水素 (H2SO4) を合成 熱分解することにより水素を製造 熱源確保および経済性が課題 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 18 9
水素に対する政府方針は? 水素エネルギー導入の意義 出典 : 資源エネルギー庁 エネルギー利用の多様化について (2015 年 4 月 ) 19 水素に対する政府方針は? エネルギー基本計画 2014 年 4 月に閣議決定された新たな エネルギー基本計画 において 水素が将来の二次エネルギーの中核として位置づけられ 水素社会の実現に向けた取組を加速することが明記 出典資源エネルギー庁 水素社会の幕開け (2015 年 2 月 ) 20 10
水素に対する政府方針は? 水素 燃料電池戦略ロードマップ 2014 年 6 月に 水素 燃料電池戦略ロードマップ が公表され 水素エネルギーの製造 輸送 貯蔵 利用の各段階で目指すべき目標とその実現のための産官学の取り組みが示された 出典資源エネルギー庁 水素社会の幕開け (2015 年 2 月 ) 21 Ⅱ. 水素を社会に届けるためのチャレンジ 水素供給システムへ求められる要件は? SPERA 水素 とは? 水素サプライチェーンの事業化に向けて 22 11
水素供給システムへ求められる要件は? 拡大する水素需給への対応 水素が発電に導入され本格普及期を迎えた場合 国内の供給ポテンシャルでは賄いきれず 海外からの本格的な水素輸入が必要となる < 水素需給の将来見通し ( 試算の一例 )> 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 23 水素供給システムへ求められる要件は? 世界各地の水素源からの供給 海外から水素を輸入する場合 化石燃料由来 また再エネ由来の水素は 世界各地に点在しており これら供給源から需要地まで 大量の水素を効率的に輸送することが求められる 世界の石炭可採埋蔵量 世界のシェールオイル ガス資源量 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 他資料参照 24 12
水素供給システムへ求められる要件は? 安全面への配慮 ガス状態の水素は 着火し易く 燃焼速度が速く 金属脆化を起こしやすい など 他の危険物ガスと同様に 取扱いには十分注意が必要となる < 水素と他燃料の物理的性質の比較 > 出典 : NEDO 水素エネルギー白書 (2015) 25 水素供給システムへ求められる要件は? 水素供給システムに求められる要件 大量の水素を取り扱う水素社会を支える水素供給システムは 既存の少量 ローカル輸送 貯蔵システムに加え 安全 安心 大量 長期間 長距離の水素輸送 貯蔵が可能なシステム < 既存の水素供給システム > < 今後 求められる要件 > 安全 / 安心 + 大量輸送 貯蔵 長期間貯蔵 長距離輸送 経済性 26 13
水素供給システムへ求められる要件は? ( 参考 ) 将来的な水素の輸送 貯蔵技術の開発 将来的な水素の輸送 貯蔵技術として アンモニア 水素吸蔵合金 メタン化など 様々な手法の検討 技術開発が進められている 出典 : 水素 燃料電池戦略協議会ワーキンググループ資料 (2014 年 4 月 ) 27 SPERA 水素とは? SPERA 水素 1/500 常温 常圧でハンドリングが容易 長距離 大量の貯蔵輸送が可能 既存の石油インフラが利用可能 28 14
SPERA 水素とは? 基本的な仕組み 水素のキャリアにトルエンを使用 ( 溶剤などに使用される一般的な化学物質 ) トルエン メチルシクロヘキサンとも常温常圧で液体 寒冷地でも固化しない 消防法上の危険物 ( 第 4 類石油 1 類 ) に分類され 安全基準が確立している 水素化反応 (Hydrogenation) 水素熱量の約 3 割を発熱する 発熱反応 熱 トルエン (C7H8) 3H2 (C7H14) 熱 脱水素反応 (Dehydrogenation) 同約 3 割の熱を吸熱する 吸熱反応 29 SPERA 水素とは? SPERA 水素技術の実証 SPERA 技術のデモプラントを建設し 2013 年 4 月 ~2014 年 11 月の間 実証運転を実施 約 1 年半 ( 述べ10,000 時間 ) の運転で 所定の能力と触媒寿命を検証し技術を確立済み 非常に高い収率 (>99%) トルエンを10 回以上再利用 触媒の安定性能を確認 内外 30 団体 3,000 人を超える視察者 千代田化工建設子安リサーチパーク ( 横浜市神奈川区 ) 30 15
水素サプライチェーンの事業化に向けて SPERA 水素サプライチェーン構想 SPERA 水素技術をベースに 国内外の水素源から水素を大量に輸送 貯蔵し 既存の原材料需要から新たなエネルギー向けの需要を支える水素サプライチェーン 供給 需要 再生可能エネルギー H2 水電解 副生 改質ガス化など 炭化水素 HGN 水素化 CCS CO2 媒体となるトルエン / は常温常圧で液体 大量かつ長距離の輸送を効率的に実現 大量のエネルギーを長期間貯蔵可能 新しいクリーンエネルギーサプライチェーン 貯蔵 備蓄 トルエン CH3 TOL +3H2 CH3 註 は メチルシクロヘキサンの略 トルエンを水素化して製造 貯蔵 備蓄 発電 都市ガス車両 FC/FCV DHG 脱水素 エネルギー 原材料 H2 石油精製 石油化学 水素還元製鉄 CO2 リサイクル 供給源は炭化水素から再生可能へ 需要先は原材料からエネルギーへ 31 Ⅲ. 水素社会の実現に向けて 水素をどのように社会へ展開するか? 実現に向けた取り組み 32 16
水素をどのように社会へ展開するか? コンビナートから地域水素ネットワークへ 水素の大消費地である臨海部のコンビナートで 大規模水素サプライチェーンの基盤を確立 SPERA 水素が潤滑油 ( 貯蔵 輸送 ) となり 臨海部から地域へ水素利用を展開 地域水素供給ネットワークへ グローバル水素供給ネットワーク 水素 水素供給 ( 大型脱水素 ) コンビナート 石油精製 発電 ( 混焼 ) 水素還元製鉄工業部門 未利用熱利用 エネルギー部門 化学原料 エネルギー戦略備蓄 都市ガス CO2 再資源化 エネルギー貯蔵 余剰電力貯蔵 非常用発電 空港 港湾 物流施設 電解水素化太陽光発電 バス トラック 風力発電 船舶 鉄道 物流部門 水素 熱電気 集合住宅 オフィスビル商業施設 熱循環 分散型水素コジェネ地域冷暖房熱源 定置型燃料電池など分散型水素コジェネ 家庭部門 燃料電池車 商業部門 33 実現に向けた取り組み自治体との連携 : 川崎市 2013 年 5 月 川崎市と千代田化工建設は 川崎臨海部に存する石油化学 エネルギー関連の産業資源を活かし 低炭素社会の構築に向けた包括連携協定を締結 川崎市と水素社会実現に向けた取り組みに関する連携協定 出典 : 千代田化工建設プレスリリース等 34 17
実現に向けた取り組み自治体との連携 : 秋田県 2014 年 8 月 秋田県と千代田化工建設は 連携協定を締結し 再エネ水素の利用など 水素社会の実現に資する取組みに関し ともに連携することを約している 秋田県と水素社会実現に向けた取り組みに関する連携協定 出典 : 千代田化工建設プレスリリース等 35 ご清聴ありがとうございました All Right Reserved. CHIYODA 2013 36 18