素の髄空内投与療法 ( ムコ多糖症 II 型 異染性白質ジストロフィーなど ) シャペロン療法 ( ファブ リー病 ) などが臨床治験中である 異染性白質ジストロフィー ムコ多糖症 III 型などでは 遺伝 子治療が臨床研究として行われており良好な結果が得られている 7. 研究班ライソゾーム病 (

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代謝疾患分野 ライソゾーム病 1. 概要ライソゾーム病は ライソゾーム内の酸性分解酵素 その活性化因子などの遺伝的欠損により ライソゾーム内に大量の脂質 糖質 などを含む多種の物質が蓄積し 肝臓 脾臓の腫大 骨障害 中枢神経障害 腎障害 心障害などを含む種々な症状を呈する疾患群である 治療を行なわなかった場合は症状は進行性である 欠損酵素により分類されており 主なライソゾーム病は 30 疾患あるが 極めてまれなものまで含むと 60 疾患以上あるとされている 2. 疫学正確な頻度は分かっていないが新生児マススクリーニングを行ったポンぺ病 ファブリー病などでは それぞれ 3 万 数千人に 1 人とのデータがある 稀な疾患であるため見逃されているケースが多いと思われる 我々の研究班で平成 13 年に行った調査では全てのライソゾーム病患者の合計が約 600 例であったが ファブリー病はこの時点では 100 例であったが 現在 600 名以上の患者さんが治療を受けている 現在患者数はこれよりかなり多いと思われる 我々が平成 13 年に行った調査の結果は http://www.japan-lsd-mhlw.jp/lsd_qa.html に記載されている 3. 原因ライソゾーム内の水解酵素 ( 所謂ライソゾーム酵素 ) 酵素の活性化因子 酵素の修復因子などの遺伝的欠損により発症する 遺伝性があり常染色体劣性遺伝 X 連鎖性劣性遺伝の疾患がある 4. 症状疾患により症状は大きく異なる 肝臓 脾臓の腫大 骨変形 神経障害 ( けいれん 知能障害 末梢神経障害など ) 眼障害 腎障害 心障害 聴力障害 皮膚症状など種々な症状を呈し また 重症度も様々である 同一家系内でも重症度が異なる場合がある 5. 合併症心臓 腎臓 中枢神経の合併症を伴うことが多く これらの有無が予後を左右する 6. 治療法酵素補充療法がゴーシェ病 ファブリー病 ポンペ病 ムコ多糖 (Ⅰ Ⅱ Ⅵ 型 ) で施行されている 骨髄移植法も以前はゴーシェ病 異染性白質ジストロフィー ムコ多糖症などを対象に行われていたが現在酵素補充療法が開発されたので 近年は行われる事が少なくなった しかしながら酵素補充療法が中枢神経系に効果がないため 中枢神経障害の発症が強く予測される場合はムコ多糖症など試みられることもある 基質合成抑制薬がニーマンピック病 C 型で承認されている その他 他の疾患への酵素補充療法 ( 酸性リパーゼ欠損症 ムコ多糖症 IV 型など ) や基質合成阻害薬 ( ゴーシェ病 ) 酵

素の髄空内投与療法 ( ムコ多糖症 II 型 異染性白質ジストロフィーなど ) シャペロン療法 ( ファブ リー病 ) などが臨床治験中である 異染性白質ジストロフィー ムコ多糖症 III 型などでは 遺伝 子治療が臨床研究として行われており良好な結果が得られている 7. 研究班ライソゾーム病 ( ファブリ病含む ) に関する調査研究班

代謝疾患分野 ペルオキシソーム病 1. 概要ペルオキシソーム病は細胞内ペルオキシソームに局在する酵素 タンパクの単独遺伝子異常症と それらのタンパクをペルオキシソームに局在させるために必要なPEXタンパクの遺伝子異常症 ( ペルオキシソーム形成異常症 ) の2つに分けられる これらの遺伝子異常により様々なペルオキシソーム代謝系が障害され 中枢神経系を中心に対象となる臓器に障害をきたして多岐にわたる臨床像を呈する これまでに最も頻度の高い副腎白質ジストロフィーや 最も重篤かつペルオキシソーム病の極型であるZellweger 症候群など15の疾患が知られている 2. 疫学副腎白質ジストロフィーのみがX 連鎖性遺伝で 他の疾患は常染色体劣性遺伝である 副腎白質ジストロフィーの発生頻度は出生男子 2~3 万人に1 人とペルオキシソーム病の中で最も多いが 他の疾患は極めて稀である 最も重篤なZellweger 症候群は国内では毎年 2~3 例が診断されている 3. 原因ペルオキシソームには極長鎖脂肪酸のβ 酸化やフィタン酸 α 酸化 プラスマローゲン合成系 過酸化水素分解系 グリオキシル酸解毒系など生体に必要な多くの代謝系の酵素 タンパクが存在している それら酵素 タンパクの単独遺伝子異常症では これまで10 個の疾患と原因遺伝子が解明されており それぞれの遺伝子異常に起因する様々な代謝障害と多岐にわたる臨床像を呈している 一方 それらのタンパクのペルオキシソームへの輸送に関わるPEX 遺伝子異常によるペルオキシソーム形成異常症では これまで13 個の原因となるPEX 遺伝子が知られており 臨床的にはペルオキシソーム代謝機能全般の障害により重篤な症状をきたす最重症のZellweger 症候群から より軽症の臨床型まで存在している 4. 症状ペルオキシソーム病の極型であるZellweger 症候群では 出生直後からの筋緊張低下や異常顔貌を呈し 脳肝腎など全身に重篤な障害をきたす ペルオキシソーム病に共通する症状は認めないが 疾患ごとに発達障害から神経障害 ( けいれん 知能障害など ) 視覚 聴覚の異常から肝臓 腎臓 骨など全身に様々な症状がみられる 発症時期や臨床経過も疾患ごとに異なり 同じ疾患でも重症度には幅がある 5. 診断臨床症状からペルオキシソーム病を疑い ペルオキシソーム代謝産物の異常を確認し 最終的には遺伝子診断で確定される ペルオキシソーム病で最も有力な診断マーカーは血中極長鎖脂肪酸の増加で ペルオキシソーム形成異常症 副腎白質ジストロフィー β 酸化系酵素欠損症などがスクリ

ーニングされる それ以外にはフィタン酸やプリスタン酸 胆汁酸 プラスマローゲン シュウ酸 などが それぞれのペルオキシソーム代謝異常症における診断マーカーとなる 6. 治療法多くのペルオキシソーム病では根治療法としての治療法は確立しておらず 対症療法が中心となっている その中でも副腎白質ジストロフィーの大脳型に対する発症早期の造血細胞移植と副腎不全へのステロイド補充療法 Refsum 病へのフィタン酸制限食 原発性高シュウ酸尿症では肝移植や腎移植の有効性が示唆されている いずれにしても稀少疾患であるペルオキシソーム病の治療の第一歩は 早期に正確に診断することにある 7. 研究班ライソゾーム病 ( ファブリ病含む ) に関する調査研究班

代謝疾患分野 副腎白質ジストロフィー 1. 概要副腎白質ジストロフィー (Adrenoleukodystrophy; ALD) は副腎不全と中枢神経系の脱髄を主体とするX 連鎖形式の遺伝性疾患である 小児大脳型からadrenomyeloneuropathy(AMN) など多彩な臨床型が存在し 臨床経過や予後も多様である 女性保因者も加齢とともに軽度のAMN 症状を呈することがある 生化学的特徴としてC24:0 C25:0 C26:0の極長鎖飽和脂肪酸の増加が 中枢神経系だけでなく 血漿 赤血球膜などでも見いだされ 有力な診断マーカーとなる 2. 疫学発症頻度は米国では出生男児 21,000 人に1 人が患者 出生女児 14,000 人に1 人が保因者との報告がある 我が国では1999 年の全国調査にて男性 3 5 万に1 人との報告があるが 後方視的なアンケート調査のため 恐らく 欧米並みの発症頻度と考えられている 病型別頻度は1999 年の全国調査にて小児大脳型が29.9% と最も多く 次いでAMN(25.3%) 成人大脳型 (21.4%) 思春期大脳型(9.1%) 小脳 脳幹型 (8.4%) であった 3. 原因病因はXq28に存在するALDP(ABCD1) 遺伝子異常による このタンパクはC 末にATP 結合カセット領域を有するペルオキシソーム膜タンパクで 極長鎖脂肪酸の膜輸送に関与していると考えられている 従って生化学的な異常として 患者の血液や組織に極長鎖脂肪酸の蓄積を認める しかしその病態はほとんど解明されておらず 脱髄の機序や極長鎖脂肪酸蓄積の病態への関与も不明である また遺伝子型と病型には相関がなく 同一家系内でも異なる表現型を呈する例は多く ABCD1 遺伝子異常以外に臨床型を規定する因子 ( 遺伝学的もしくは環境要因 ) の存在が想定されている 一方 女性保因者の一部でも中年以降に軽度の脊髄症状を認めることがある また発端者の3 10% 前後はde novoの変異と考えられており 男性患者の母親が必ずしも保因者とは限らない 4. 症状臨床症状は以下の病型に分類される 小児大脳型 (10 歳以下発症 ):5~10 歳に好発し視力 聴力障害 学業成績低下 痙性歩行などで発症することが多く 発症後比較的急速に進行する 2. 思春期大脳型 (11~21 歳発症 ): 小児大脳型と同様の臨床症状を呈するが やや緩徐に進行する 3. AMN:20 歳代から中年期に下肢の硬直や筋力低下で発症し 進行は比較的緩徐だが 半数近くは成人大脳型に移行する 4. 成人大脳型 (22 歳以上発症 ): 性格変化や知能低下 精神症状で発症し 急速に進行する例もある 認知症や精神疾患の鑑別として重要である 5. 小脳 脳幹型 : 小脳失調を主症状として日本人に多く 大脳型に移行する例もみられる 6.Addison 型 :2 歳から成人期に原因不明の嘔吐や元気のなさ 体重減少 色素沈着等の副腎不全症状で発症するが 7 歳ごろの発症が多い その後 小児大脳型やAMNなどに進展する

こともあり 注意を要する 7. 発症前男性 : どの病型をいつ発症するかも現時点では予測ができな い 8. 女性発症者 : 中年以降に加齢とともに AMN に似た症状を呈する 5. 合併症男性患者ではAddison 型以外でも副腎不全 AMNでは知覚障害 インポテンツ 尿失禁 軽度の末梢神経障害などを伴う 6. 治療法大脳型の唯一の治療法は発症早期の造血細胞移植だが 重篤な合併症の存在や 進行例では無効例もしくは増悪例が多く 適応についてはMRIによる進行度スコア (Loes score)9 点以下とPerformance IQ80 以上の発症早期例において効果が期待されている 副腎不全にはステロイド補充療法 AMNや女性発症者の痙性対麻痺症状には対症治療として抗痙縮薬内服や理学療法が行われる 最近レンチウイルスベクターを用いて患者本人の造血細胞に正常 ABCD1を導入し戻す遺伝子治療 (exo-vivo gene therapy) が行われ造血細胞移植と同等の効果を挙げている 7. 研究班ライソゾーム病 ( ファブリ病含む ) に関する調査研究班