176 日本 東 洋 医 学 雑 誌 第44巻 第3号 (1994) (438) 図1症 例1の 外陰部所 見 左側の先天性形成異常 と約1ヵ 月後 に生 じた血 管腫 (潰瘍形 成) がみ られ る 図は紫雲膏塗布中 のものである 図2症 例2の 紫雲膏 治療後 塗布は約2週 間で中止 したが良好 に経過 している 退 院 後 に は1日3, 4回 の 塗 布 と した 図1は 治 療 開 始 後 ま もな くの 状 態 で あ るが, 塗 布 後 早 期 に 乾 燥 しは じめ, 潰 瘍 も改 善 した 約2週 再 発 はみ られ ず, 血 管 腫 が 消 槌 し始 め て い る (図 2) 間 で乾 燥 状 態 とな り, 以 後 潰瘍 の形 成 は み られ ず, また 搬 症例2: 9歳 痕 形 成 もみ られ な か った 8ヵ 家 族 歴 既 往 歴: 特 記す べ き こ とは な い 月経 過 した 現 在, 男児
(439) 日本 東 洋 医学 雑誌 図3症 第44巻 第3号 (1994) 177 例2の 使 用前局所所見 薬浴後の状態 図4症 例2の 紫 雲 膏 塗 布 中 の局 所 所 見 壊 死 状 部 分 は 排 除 され つ つ あ り, 血 流 も よ く, 赤 味 を増 して き て い る 現病 歴: 入浴 の際 の お湯 を沸 か しす ぎ て浴 室 が が, 疼 痛 は 当 初 は ほ とん どみ られ な か っ た 補 熱 くな り, 換気 扇 を まわ そ う と浴 槽 の蓋 の上 に の 液, 抗 生剤 の 投 与 を 行 い, 局 所 に は ス ル フ ァジ ア って 熱 湯 の 中 に 転 落, 両 下肢 に 第2度DDBの 熱 ジ ン銀 ク リー ムの塗 布 を 行 った 壊 死 状 と な った 傷 を 負 った 翌 日に な っ て シ ョッ ク状 態 とな り当 水 疸 部 を除 去 し薬 浴 な どを 併 用 した が, シ ー ツを 科 に紹 介 され た か な り濡 らす ほ ど湿 潤 が 著 し く, ク リー ム と分 泌 現症 お よび経 過: 大 腿 下 部 以下 全 体 の熱 傷 で, 物 が混 ざ って どろ どろ した ゾル 状 の 悪 臭 を 伴 った 褐 色 調 の厚 い壁 を有 した 水 庖 形 成 が 著 し か っ た 状 態 に変 化 して きた しか し局 所 の 改 善 は ほ と ん
178 日本 東 洋 医 学 雑 誌 第44巻 第3号 (1994) 図5症 (440) 例2の2ヵ 月 後 の状 態 搬 痕 形 成 もみ られ ず 良 好 で あ る どみ られ な か った 局所 の疼 痛 が 強 くな り, 両 下 膏 の豚 油 の乾 燥 した もの に も関 係 が あ る と 思 わ 肢 が 約90度 で拘 縮状 態 とな り他動 的 に も全 く伸 展 れ, させ る こ とが で きな くな った (図3) そこで 抗 生 剤 入 り軟 膏 の 塗 布 を 考 慮 した が 水 庖 除 去 後 の 状 態 は 一 種 の 潰瘍 や び らん で あ る と考 え, また 搬 痕 形 成 も必発 と考 え られた た め そ の 改善 も意 図 して 紫 雲 膏 (ツ ム ラ501) 次 第 に落 屑 した (図5) 搬 痕拘 縮 や ケ ロイ ドは み られ ず 走 る こ とも 可能 とな つた こ の状 態 まで 紫 雲 膏 塗 布 後 約2ヵ 考 月 を要 した 案 を 塗 布 す る こ と と した こ 熱 傷 の局 所 に 塗 布 す る軟 膏 や保 護 剤, あ るい は の時の患児の脈証や舌証は特に異常で は な か っ 代 用 皮 膚 に は種 々な もの が存 在 す る わ れ わ れ の た 軟 膏 の 塗 布 部 が 湿 潤 な 部 位 で あ るの で 紫 雲 膏 施 設 では これ ま で熱 傷 の局 所 療 法 と して は スル フ は Melolin ァジ ア ジ ソ銀 ク リー ム (ゲ ー ペ ソ ク リー ム), ガ ーゼ に 塗 布 しヘ ラで 数 回 ひ き のぼ す よ うに して柔 らか く し, 創 部 に な じみ や す く して か らま きつ け る よ うに した な くな り, Melolin ピ ドン ヨー ド軟 膏 (イ ソジ ン ゲル), あ る い は 抗 生 剤 を基 剤 に配 合 し塗 布 した dressing 塗 布 後 は 浸 出液 に よる ガ ー ゼ の汚 染 が 極 端 に 少 ポ (ソ フ ラ チ ュ ール ガ ー ゼ) な ど を使 用 して き た 多 くの場 合 ガ ーゼ の 固 定 の た め に 巻 い た は これ らに よ り充 分 に 目的 を達 す る こ とが で き る 包 帯 を わず か に濡 らす 程 度 とな った 白 く, 壊 死 が, 熱 傷 の深 度 が 深 い も の で は癩 痕 や ケ ロイ ドを 状 とな った 部 分 も縮 小 し, 局 所 の血 流 も良 くな り 形 成 し, 後 日植 皮 を 行 っ た り修 正 手術 を 必 要 とす 乾 燥 状 態 とな つた 部 分が 増 加 して き た (図4) る場 合 が 多 い この 癩 痕 や ケロ イ ドを 少 しで も少 た だ軟 膏 塗 布 後 は特 に夜 間 の頻 尿 が み られ る よ う な くす るた め に 局 所 の管 理 法 に工 夫 した り, 他 動 に な り排 便 回数 も増 加 した 約2週 間後 に は疼 痛 運 動 を 加 え るな どの 努 力 が 行 わ れ て い るが, 紫 雲 は な くな り, また 膝 関 節 上 を 他 動 的 に強 く押 す こ 膏 に これ らの 抑 制 作 用 が あ る こ とが 古 書 に も示 さ とに よ り下 肢 を伸 展 させ る こ とが 可 能 とな り (伸 れ て お り, 研 究報 告 や 症 例 の 報 告 が な さ れ て い 展 時 に は痛 み あ り), 次 第 に 自動 的 に も動 か せ る る1)-5) よ うに な った 乾 燥 し始 め た 局 所 は 初 めは 褐 色調 のか さか さ した 魚 鱗 癬 状 に な った が, これ は 紫 雲 紫 雲 膏 は 外科 正 宗6)の 巻 の 四 白禿 瘡 の潤 肌 膏 (麻 油, 紫 草, 当 帰, 黄 蝋 で構 成) を華 岡青 州
Abstract An Experience of Shiun-ko for Wet Wound of Children Tsuneo CHIBA and Yuriko KIKUCHI M. D., Department of Pediatric Surgery, Sendai National Hospital, Miyagi Shiun-ko has proved to be eff cctive in burns and hemorrhoids. However, it is not frequently used in children because it has a disagreeable smell, stains clothes, and is indicated only for dry lesions. This formulation, however, has several advantages including its bactericidal activity and its inhibition of cicatrization without forming keloids. We therefore used Shiun-ko in children with vulvar hemangioma or burns. Although the lesions were wet, they dried quickly and healed without keloid formation. This formulation appears to be applicable even to wet wounds if it is kneaded and stretched when applied.