4. 形態コ - ド - 卵巣腫瘍取扱い規約第 1 部 第 1 版 病理組織名 ( 日本語 ) 英語表記形態コード 漿液性腫瘍, 境界悪性 Serous tumors of borderline malignancy 対象外 漿液性腺癌 Serous adenocarcinoma 8441/3 漿液

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がん登録実務について

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子宮頚部異型上皮および0-Ia期治療方針

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1)表紙14年v0

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43048腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1版 追加資料

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卵巣癌の治療

院内がん登録集計報告

ける発展が必要です 子宮癌肉腫の診断は主に手術進行期を決定するための子宮摘出によって得られた組織切片の病理評価に基づいて行い 組織学的にはいわゆる癌腫と肉腫の2 成分で構成されています (2 近年 子宮癌肉腫は癌腫成分が肉腫成分へ分化した結果 組織学的に2 面性をみる とみなす報告があります (1,

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 の相対生存率は 1998 年以降やや向上した 日本で

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

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9章 その他のまれな腫瘍

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5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

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原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

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外来在宅化学療法の実際

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2)N 分類 Nの入力に際し 画像診断 (CT MRIなど ) より腫大リンパ節の有無を加味した以下の分類細目に従って報告する N0 所属リンパ節腫大 (-) N1 所属リンパ節腫大 (+) NX 画像診断をしなかった 3)M 分類 M0 遠隔転移なし MA 傍大動脈リンパ節の腫大 M1 その他の遠

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する

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8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

7. 脊髄腫瘍 : 専門とするがん : グループ指定により対応しているがん : 診療を実施していないがん 別紙 に入力したが反映されています 治療の実施 ( : 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 集学的治療 標準的治療の提供体制 : : グループ指定により対応 ( 地域がん診療病

4 月 20 日 2 胃癌の内視鏡診断と治療 GIO: 胃癌の内視鏡診断と内視鏡治療について理解する SBO: 1. 胃癌の肉眼的分類を列記できる 2. 胃癌の内視鏡的診断を説明できる 3. 内視鏡治療の適応基準とその根拠を理解する 4. 内視鏡治療の方法 合併症を理解する 4 月 27 日 1 胃

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目次 全部位の概要 - 部位別登録数 - 年齢階級 部位別登録数 - 来院経路 部位別登録数 - 患者住所 部位別登録数 - 症例区分 部位別登録数 - 発見経緯 部位別登録数 部位別詳細

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

cstage,, CQ1-5 cstage a CQ2-1,9 CQ4-1 cstage b CQ5-1 CQ4-2~6 CQ5-2~4 CQ2-2~9 CQ3-1~4 CQ6-1~4 CQ4-7 cstage JPS 6 図 2 膵癌治療アルゴリズム 表 1 勧告の強さの分類 A B C1 C2

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卵巣腫瘍 Ovarian tumor

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同


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院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

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参考文献 1. Hampe, J.F. and Misdorp, W. (1974) Tumours and dysplasias of the mammary gland. Bull WHO 50: Moulton, JE, (1990) Tumors of the Mamma

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

1. 部位別登録数年次推移 表は 部位別に登録数の推移を示しました 2015 年の登録数は 1294 件であり 2014 年と比較して 96 件増加しました 部位別の登録数は 多い順に大腸 前立腺 胃 膀胱 肺となりました また 増加件数が多い順に 皮膚で 24 件の増加 次いで膀胱 23 件の増加

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

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スライド タイトルなし

A 2010 年山梨県がん罹患数 ( 全体 )( 件 ) ( 上皮内がんを除く ) 罹患数 ( 全部位 ) 5,6 6 男性 :3,339 女性 :2,327 * 祖父江班モニタリング集計表から作成 * 集計による主ながんを表示

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

小児 AYA 世代のがん罹患 国立がん研究センター がん対策情報センター がん統計 総合解析研究部 1

Microsoft Word - 肺癌【編集用】

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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第103回日本病理学会総会コンパニオンミーティング

婦人科がんの手術療法

5. 病 期 分 類 と 進 展 度 TNM 分 類 (UICC 第 7 版 2009 年 ) T- 原 発 腫 瘍 TX T0 Tis T1 T2 T3 T4 原 発 腫 瘍 の 評 価 が 不 可 能 原 発 腫 瘍 を 認 めない 上 皮 内 癌 ボーエン 病 高 度 扁 平 上 皮 内 病

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配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

背部痛などがあげられる 詳細な問診が大切で 臨床症状を確認し 高い確率で病気を診断できる 一方 全く症状を伴わない無症候性血尿では 無症候性顕微鏡的血尿は 放置しても問題のないことが多いが 無症候性肉眼的血尿では 重大な病気である可能性がある 特に 50 歳以上の方の場合は 膀胱がんの可能性があり

Ⅰ. 女性性器の超音波検査 一般目標子宮 卵巣 卵管 腟 外陰の超音波検査における基本事項と正常および病的状態の超音波所見を理解し, 診断および治療に結び付けることができる. 解剖 生理 [ 子宮 ] (a-1) 経腹走査による子宮の超音波像を説明できる. (c-2) 経腟走査による子宮の超音波像を

各医療機関が専門とするがんに対する診療機能 1. 肺がん 治療の実施 (: 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 当該疾患を専門としている 開胸 胸腔鏡下 定位 小線源治療 1 呼吸器内科 8 2 呼吸器外科 3 3 腫瘍内科 放射線治療科 1 グループ指定を受ける施設との連携 昨年

柴田, 鈴木, 木村 図 1. 腹部 CT 検査所見 : 骨盤内の右側に境界明瞭 単房性で石灰化を伴う 50mm 大の腫瘤を認めた ( 矢印 ) 図 2. 腹部 MRI 検査所見 a) 骨盤内右側に境界明瞭 単房性 T1 強調像で低信号の 50mm 大の嚢胞性腫瘤を認めた ( 矢印 ) b)t2 強

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一般内科

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

Transcription:

卵巣 Ovary (C56.9) 卵巣に原発する悪性腫瘍は ICD-O 分類の場合 局在コード C56.9 に分類される UICC 第 7 版においては 境界病変 低悪性度を含む 上皮性 間質性両方の悪性新生物の場合 卵巣 の項で病期分類を行うこととなった 上記以外の悪性腫瘍が原発した場合 リンパ腫は Ann Arbor 分類に従った病期分類を行う 1. 概要 卵巣がんの罹患率 (2006 年 ) は 10 歳代から増加し 最も罹患率の高い年齢階級は 85 歳以上であるが 50 歳代前半の罹患率は 55-84 歳罹患率より高い 死亡率 (2010 年 ) は 30 歳代後半から増加し 高齢になるほ ど高い 罹患率の年次推移を年齢階級別にみると 1975 年以降では 30 歳代後半以上で緩やかな増加傾向を示している 年齢階級別の死亡率は 30 歳以上 60 歳未満において 1990 年前後から増加傾向がみられ 60 歳以上 80 歳未満では 1980 年代から減少傾向 80 歳以上では 1990 年代後半から減少傾向がみられる 年齢調整 罹患率は 1975 年以降緩やかな減少傾向を示し 死亡率は 1990 年代半ばまで増加 以降横ばいである 国際比較では年齢調整罹患率 死亡率ともに欧米先進国で高く 日本を含む中国 インド等アジアでは低い 卵管がんは 60 歳代が最も高い 卵巣がんの組織型は多様であり 表層上皮性 間質性腫瘍 性索間質性腫瘍 胚細胞腫瘍の 3 群に大別され 悪性腫瘍の 90% 以上が表層上皮性 間質性腫瘍である 病理分類には国際的に組織発生を重視した WHO 分類が広く用いられ わが国でもこの分類と変換可能な組織分類 ( 卵巣癌取扱い規約 ) が用いられる それぞれの腫瘍で 良性腫瘍 (ICD-O 組織コードで 5 桁目が /0) 境界悪性腫瘍 (/1) 悪性腫瘍 (/3) に区分される 2. 解剖原発部位卵巣 ovary は母指頭大の扁平楕体円状である 長さ約 3cm 幅約 1.5cm 厚さ約 1cm 重さ 4~10gで 骨盤 pelvis 側壁の卵巣窩 ovarian fossa という浅いくぼみに存在する 卵巣はほぼ全面を子宮広間膜 (broad ligament of uterus, 腹膜 ) の一部の卵巣間膜 mesovarium で被われており 子宮広間膜の背面につく 卵巣の頭側には卵管 Fallopian (uterine) tube が走り 外側に接して卵管采 fimbriae がある 遠隔転移卵巣がんの転移形式は 広範な腹膜内播種 リンパ行性転移が主で 当初 血行性転移は少ない 3. 亜部位と局在コード ICD-O 局在 部位 C56.9 卵巣

4. 形態コ - ド - 卵巣腫瘍取扱い規約第 1 部 第 1 版 病理組織名 ( 日本語 ) 英語表記形態コード 漿液性腫瘍, 境界悪性 Serous tumors of borderline malignancy 対象外 漿液性腺癌 Serous adenocarcinoma 8441/3 漿液性嚢胞腺癌 Serous cystadenocarcinoma 8441/3 漿液性乳頭状腺癌 Serous papillary adenocarcinoma 8460/3 漿液性乳頭状嚢胞腺癌 Serous papillary cystadenocarcinoma 8460/3 漿液性表在性乳頭状腺癌 Serous surface papillary adenocarcinoma 8461/3 漿液性腺癌線維腫 Serous adenocarcinofibroma 9014/3 漿液性嚢胞腺癌線維腫 Serous cystadenocarcinofibroma 9014/3 粘液性腫瘍, 境界悪性 Mucinous tumors of borderline malignancy 対象外 粘液性腺癌 Mucinous adenocarcinoma 8480/3 粘液性嚢胞腺癌 Mucinous cystadenocarcinoma 8470/3 粘液性腺癌線維腫 Mucinous adenocarcinofibroma 9015/3 粘液性嚢胞腺癌線維腫 Mucinous cystadenocarcinofibroma 9015/3 類内膜腫瘍, 境界悪性 Endometrioid tumors of borderline malignancy 対象外 類内膜腺癌 Endometrioid adenocarcinoma 8380/3 類内膜腺癌線維腫 Endometrioid adenocarcinofibroma 8381/3 類内膜嚢胞腺癌線維腫 Endometrioid cystadenocarcinofibroma 8381/3 腺肉腫 Adenosarcoma 8933/3 腺肉腫, 同所性 Adenosarcoma, homologous 8933/3 腺肉腫, 異所性 Adenosarcoma, heterologous 8933/3 中胚葉性混合腫瘍 Mesodermal mixed tumor 8951/3 ミューラー管混合腫瘍 Mullerian mixed tumor 8950/3 癌肉腫 Carcinosarcoma 8980/3 癌肉腫, 同所性 Carcinosarcoma, homologous 8980/3 癌肉腫, 異所性 Carcinosarcoma, heterologous 8980/3 類内膜間質肉腫 Endometrioid stromal sarcoma 8930/3 明細胞腫瘍, 境界悪性 Clear cell tumors of borderline malignancy 対象外 明細胞腺癌 Clear cell adenocarcinoma 8310/3 明細胞腺癌線維腫 Clear cell adenocarcinofibroma 8313/3 明細胞嚢胞腺癌線維腫 Clear cell cystadenocarcinofibroma 8313/3 ブレンナー腫瘍, 境界悪性 Brenner tumor of borderline malignancy 対象外 増殖性 Proliferating ブレンナー腫瘍, 悪性 Brenner tumor, malignant 9000/3 移行上皮癌 Transitional cell carcinoma 8120/3 混合型上皮性腫瘍, 境界悪性 Mixed epithelial tumor of borderline malignancy 対象外 混合型上皮性腫瘍, 悪性 Mixed epithelial tumors, malignant 8323/3 未分化癌 Undifferentiated carcinoma 8020/34 顆粒膜細胞腫 Granulosa cell tumor 対象外 成人型 Adult 対象外 若年型 Juvenile 対象外 線維肉腫 Fibrosarcoma 8810/3 僅少な性索成分を伴う間質性腫瘍セルトリ 間質細胞腫瘍, 中分化型 Stromal tumor with minor sex cord elements Sertoli-stromal cell tumor of intermediate differentiation 対象外 対象外

アンドロブラストーマ Androblastomas 対象外 異所性成分を伴う With heterologous elements 対象外 セルトリ 間質細胞腫瘍, 低分化型 Sertoli-stromal cell tumor, poorly differentiated 8630/3 セルトリ 間質細胞腫瘍, 類肉腫 Sertoli-stromal cell tumor, sarcomatoid 8630/3 異所性成分を伴うセルトリ ライディッヒ細胞腫瘍, 低分化型 Sertoli-Leydig cell tumor, poorly differentiated, with heterologous elements 8634/3 セルトリ 間質細胞腫瘍, 網状型 Sertoli-Leydig cell tumor, retiform 対象外 セルトリ 間質細胞腫瘍, 混合型 Sertoli-Leydig cell tumor, mixed 対象外 輪状細管を伴う性索腫瘍 Sex cord tumor with annular tubules 対象外 ギナンドロブラストーマ Gynandroblastoma 対象外 分類不能性索間質性腫瘍 Unclassified sex cord/stromal tumor 対象外 胚細胞腫瘍 Germ cell tumors 9064/3 未分化胚細胞腫 Dysgerminoma 9060/3 卵黄嚢腫瘍 Yolk sac tumor 9071/3 内胚葉洞腫瘍 Endodermal sinus tumor 9071/3 胎芽性癌 ( 胎児性癌 ) Embryonal carcinoma 9070/3 多胎芽腫 Polyembryoma 9072/3 絨毛癌 Choriocarcinoma 9100/3 悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形 Mature cystic teratoma with malignant transformation 9084/3 腫 未熟奇形腫 Immature teratoma 9080/3 未熟奇形腫, 第 1 度 Immature teratoma, Grade 1 9080/31 未熟奇形腫, 第 2 度 Immature teratoma, Grade 2 9080/32 未熟奇形腫, 第 3 度 Immature teratoma, Grade 3 9080/33 カルチノイド Carcinoid 8240/3 甲状腺腫性カルチノイド Strumal carcinoid 対象外 粘液性カルチノイド Mucinous carcinoid 8243/3 神経外胚葉性腫瘍 Neuroectodermal tumors 9364/3 脳室上衣腫 ependymoma 9391/3 未分化神経外胚葉性腫瘍 primitive neuroectodermal tumor 9473/3 膠芽腫 glioblastoma 9440/3 皮脂癌 Sebaceous carcinoma 8410/3 混合型胚細胞腫瘍 Mixed germ cell tumors 9085/3 性腺芽腫 Gonadoblastoma 対象外 純粋型 pure 対象外 未分化胚細胞腫または他の胚 with dysgerminoma or other form of germ cell tumor 対象外 細胞腫瘍を伴う型 胚細胞 性索間質性腫瘍 Germ cell-sex cord/stromal tumor 対象外 卵巣網の癌腫 Carcinoma of rete ovarii 9110/3 小細胞癌 Small cell carcinoma 8041/3 ウォルフ管起原と考えられる腫瘍 Tumor of probable wolffian origin 対象外 類肝細胞癌 Hepatoid carcinoma 8576/3 扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma 8070/3 妊娠性絨毛性疾患 Gestational trophoblastic diseases 絨毛性疾患のコード参照 非特異的軟部腫瘍 Soft tissue tumors not specific to ovary 軟部組織のコ ード参照

肉腫 Sarcoma 8800/3 悪性リンパ腫 Malignant lymphomas 9590/3 5. 病期分類と進展度 TNM 分類 (UICC 第 7 版 2009 年 ) T- 原発腫瘍 TNM 分類 TX T0 T1 T1a T1b T1c T2 T2a T2b T2c T3 T3a T3b T3c 原発腫瘍の評価が不可能 原発腫瘍を認めない 両側卵巣に限局する腫瘍 一側の卵巣に限局する腫瘍 ; 被膜破綻なく 卵巣表面に腫瘍がない 腹水または腹腔洗浄液に悪性細胞なし 両側卵巣に限局する腫瘍 ; 被膜破綻なく 卵巣表面に腫瘍がない 腹水または腹腔洗浄液に悪性細胞なし 一側または両側の卵巣に限局する腫瘍で 以下のいずれかを伴う ; 被膜破綻 卵巣表面の腫瘍 腹水または腹腔洗浄液の悪性細胞 一側または両側の卵巣にあり 骨盤に浸潤する腫瘍 子宮 および / または卵管に進展し および / または播種する腫瘍 腹水または腹腔洗浄液の悪性細胞なし 他の骨盤組織に進展し 腹水または腹腔洗浄液に悪性細胞なし 骨盤内に進展 (2a または 2b) し 腹水または腹腔洗浄液に悪性細胞 一側または両側の卵巣に浸潤する腫瘍で 顕微鏡的に確認された骨盤外の腹膜転移 骨盤外の顕微鏡的腹膜転移 骨盤外に肉眼的腹膜転移があり その最大径が 2.0cm 以下 最大径が 2.0cm をこえる骨盤外腹膜転移 注肝被膜転移は T3/III 期であり 肝実質転移は M1/IV 期である 胸水は M1/IV 期とするには細胞診陽性でなければならない N- 所属リンパ節 NX N0 N1 所属リンパ節は 所属リンパ節転移の評価が不可能 所属リンパ節転移なし 所属リンパ節転移あり 1. 傍大動脈リンパ節 (#326, 腹部大動脈周囲リンパ節 ) paraaortic nodes 2. 総腸骨リンパ節 (#413) common iliac nodes 3. 外腸骨リンパ節 (#403) external iliac nodes 9. 鼠径リンパ節 (#401) inguinal nodes 6. 閉鎖リンパ節 (#410) obturator nodes 7. 仙骨リンパ節 (#412) sacral nodes 註 :8. 基靱帯リンパ節 (#405) parametrical nodes 5. 内腸骨リンパ節 (#411) internal iliac nodes は遠隔転移に入れる ( リンパ節名の前の数字は卵巣癌取扱い規約の記載順の番号 # は日本癌治療学会のリンパ節番号 )

M- 遠隔転移 MX 遠隔転移の評価が不可能 M0 遠隔転移なし M1 遠隔転移あり pt- 原発腫瘍 pt 分類は T 分類に準ずる pn- 所属リンパ節 pn 分類は N 分類に準ずる 骨盤リンパ節を郭清した標本を組織学的に検査すると 通常 6 個以上のリンパ節を組織学的に検索する 通常の検索個数を満たしていなくても すべてが転移陰性の場合は pn0 とに分類する (FIGO ではこのような症例を pnx とする ) pm- 遠隔転移 pm 分類は M 分類に準ずる G 病理組織学的分化度 GX 分化度の評価が不可能 G1 高分化 G2 中分化 G3 低分化または未分化 病期分類 N0 N1 T1 I IIIC T1a IA IIIC T1b IB IIIC T1c IC IIIC T2 II IIIC T2a IIA IIIC T2b IIB IIIC T2c IIC IIIC T3 III IIIC T3a IIIA IIIC T3b IIIB IIIC T3c IIIC IIIC M1 IV IV

進展度 ( 臨床進行度 ) 分類 N0 N1 T1 限局 所属リンパ節転移 T1a, b 限局 所属リンパ節転移 T1c 隣接臓器浸潤 隣接臓器浸潤 T2 隣接臓器浸潤 隣接臓器浸潤 T2a, b, c 隣接臓器浸潤 隣接臓器浸潤 T3 隣接臓器浸潤 隣接臓器浸潤 T3a, b, c 隣接臓器浸潤 隣接臓器浸潤 M1 遠隔転移 遠隔転移 6. 取扱い規約 ( 卵巣腫瘍取扱い規約第 2 部 1997 年 8 月 改訂第 2 版 ) 進行期分類 国際的な比較を可能にするために FIGO 分類と TNM 分類を採用している 卵巣腫瘍の進行期決定においては 開腹所見がその基本となる 1) 国際進行期分類 (FIGO 1988) I 期卵巣内限局発育 Ia: 腫瘍が一側の卵巣に限局し 癌性腹水がなく 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの Ib: 腫瘍が両側の卵巣に限局し 癌性腹水がなく 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの Ic: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが 被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり 腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの II 期腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し さらに骨盤内への進展を認めるもの IIa: 進展ならびに / あるいは転移が 子宮ならびに / あるいは卵管に及ぶもの IIb: 他の骨盤内臓器に進展するもの IIc: 腫瘍発育が IIa または IIb で被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり 腹水または洗浄液の細胞診にて 悪性細胞の認められるもの III 期腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し さらに骨盤外の腹膜播種ならびに / おるいは後腹膜または 鼡径部のリンパ節転移を認めるもの また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を 認めるものや 肝表面への転移の認めるものも III 期とする IIIa: リンパ節転移陰性で腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが 腹膜表面に顕微鏡的播種を認める IIIb: リンパ節転移陰性で 組織学的に確認された直径 2cm 以下の腹腔内播種を認めるもの IIIc: 直径 2cm をこえる腹腔内播種ならびに / あるいは後腹膜または鼡径リンパ節に転移の認められるもの IV 期腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し 遠隔転移を伴うもの 胸水の存在により IV 期とする場合には 胸水中に悪性細胞を認めなければならない また肝実質への転移は IV 期とする 分類における注意事項は 取扱い規約を参照のこと 2) TNM 分類 (UICC) 1.TNM 臨床分類 T: 原発腫瘍の進展度 (T 分類は FIGO の進行期分類に適合するように定義されている ) TX: 原発腫瘍の広がりの検索が行われなかったとき T0: 原発腫瘍を認めない

T1: 卵巣内限局発育 T1a: 腫瘍が一側の卵巣に限局し 癌性腹水がなく 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの T1b: 腫瘍が両側の卵巣に限局し 癌性腹水がなく 被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの T1c: 腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが 被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり 腹水または 洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの T2: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し さらに骨盤内への進展を認めるもの T2a: 進展ならびに / あるいは転移が 子宮ならびに / あるいは卵管に及ぶもの T2b: 他の骨盤内臓器に進展するもの T2c: 腫瘍発育が IIa または IIb で被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり 腹水または洗浄液の細胞診にて 悪性細胞の認められるもの T3: 腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し さらに骨盤外の腹膜播種を認めるもの また腫瘍は小骨盤に限局して いるが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや肝表面への転移 T3 とする T3a: 腫瘍は小骨盤に限局し 腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの T3b: 組織学的に確認された直径 2cm 以下の腹腔内播種を認めるもの T3c: 直径 2cm をこえる腹腔内播種の認められるもの N: 所属リンパ節 NX: 所属リンパ節転移を判定するための検索が行われなかったとき N0: 所属リンパ節に転移を認めない N1: 所属リンパ節に転移を認める M: 遠隔転移 MX: 遠隔転移を判定するための検索が行われなかったとき M0: 遠隔転移を認めない M1: 遠隔転移を認める 2. 術後病理学的 TNM(pTNM) 分類 pt pn pm については TNM 臨床分類に準ずる 根治度の評価 卵巣腫瘍取扱い規約に規定なし 7. 診断検査 1) 検診 ( スクリ - ニング )- 超音波検査や CA125 測定などが試みられているが 現在のところ卵巣がんの検診は制度としては存在しない 2) 臨床症状 - 早期の症状は乏しい 腹膜播種による腹水 癌性腹膜炎や後腹膜リンパ節転移による腹囲の増大 膨満感 異常な下腹部痛 下部背部痛などが症状として起こることがある 3) 診断に用いる検査 (1) 画像検査 超音波検査 : 経膣 ( 経腹 ) 超音波検査にて腫瘤の存在診断 腫瘤内部構造を確認する CT MRI 検査 : 腫瘍の発生側や良 悪性の鑑別に加えて 隣接臓器への浸潤 骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節への転移 さらには肝臓実質など遠隔転移の所見の有無を確認する 胸部 X 線撮影 : 胸水の有無の確認 腹部 X 線単純撮影 静脈性腎盂造影 (IVP): 腹腔内 後腹膜の病変の広がりを調べる 内視鏡 : 腫瘍発生臓器の鑑別や直接腫瘍表面を観察するために 腹腔鏡や骨盤腔鏡 ( クルドスコ - プ ) を 使用することがある (2) 腫瘍マーカー

表層上皮性卵巣腫瘍 :CA125 は漿液性腺癌を中心に表層上皮性卵巣悪性腫瘍で高い陽性率を示すが 粘液性腺癌ではやや低く 子宮内膜症や内膜症のう胞でもしばしば偽陽性となる その他 CA19-9 CA724 な どが用いられる 胚細胞腫瘍 :AFP は卵黄嚢腫瘍 胎芽性癌 一部の未熟奇形腫 混合型胚細胞腫瘍などで高値を示し hcg は絨毛癌 胎芽性癌 一部の未熟奇形腫 混合型胚細胞腫瘍などで陽性になることが多い LDH,ALP( 特に胎盤型 ALP) は未分化胚細胞腫で高値を示すことがある (3) 病理 細胞診検査 子宮内膜組織診 : 卵巣癌の子宮や腹膜への浸潤の情報が得られることがある 腹水細胞診 : 腹水が多量なときには腹壁穿刺により 少量のときにはダグラス窩穿刺により行う 迅速組織診 : 体外からの腫瘍穿刺細胞診は被膜破綻をきたすので禁忌とされており 開腹術中の迅速組織診により 確定診断を得ることが多い 注 : 代表的な病型 組織分類 漿液性腺癌 : 最も多いタイプ 卵巣癌の 70~80% をしめる 類内膜腺癌 : 時に子宮体癌 子宮内膜症の合併例がある 粘液性腺癌 :CA125 が高値を示さないことが多い 予後不良とされる 明細胞腺癌 : 化学療法に対する感受性が低く 特に予後不良とされている 8. 治療治療方針 - 卵巣癌治療ガイドラインより (1) 表層上皮系卵巣腫瘍

(2) 胚細胞腫瘍 1) 観血的な治療 (1) 外科的治療手術の目的は1 卵巣腫瘍の確定診断すなわち悪性腫瘍か否かを知ること 2 悪性腫瘍ならばその組織型と進行期の確定 (surgical staging) 3 病巣の完全摘出または最大限の腫瘍減量 (maximum debulking) 4 後療法のための情報を得ること である 初回手術では 以下の術式を組み合わせて施行する 基本術式: 両側付属器 ( 卵巣 卵管 ) 摘出術 子宮摘出術 大網切除術 staging laparotomy( 病期決定のための開腹術 ): 腹腔細胞診 腹腔内各所の生検 後腹膜リンパ節 ( 骨盤 傍大動脈 ) 郭清術 ( または生検 ) cytoreductive surgery( 遺残癌細胞減少のための手術 ): 腹腔内各所の播種病巣の切除 保存手術: 妊孕性を温存する根治術で 通常 患側付属器摘出術 大網切除術が行われる second look operation: 初回手術後 臨床的寛解と判断され術後化学療法の効果判定と化学療法の打ち切りの判断として行われる手技 予後に対する効果が疑問視されており 最近はあまり行われない (2) 体腔鏡的治療 - 卵巣癌の手術としては通常行われない ( 開腹手術に代わる標準手術ではない ) 2) 放射線治療 - 手術および化学療法との積極的な集学的治療における局所照射 転移巣の局所コントロ-ルに行われる程度である 3) 薬物治療 ( 単剤または併用で使用される薬剤名 略語 商品名 ) (1) 化学療法 ( 表層上皮系卵巣がん ) carboplatin (CBDCA, パラプラチン ), paclitaxel (PTX, タキソール ), cisplatin (CDDP, ランダ, ブリプラチン ), docetaxel (DOC, タキソテール ), irinotecan (CPT-11, カンプト, トポテシン ), doxorubicin (Adriamycin, ADM, アドリアシン ), cyclophosphamide (CPA, エンドキサン ), epirubicin (EPI, ファルモルビシン ), pirarubicin (THP-ADR, テラルビシン, ピノルビン ), gemcitabine (GEM, ジェムザール ) ( 胚細胞性腫瘍 ) cisplatin (CDDP, ランダ, ブリプラチン ), bleomycin (BLM, ブレオ ), etopiside (VP-16, ベプシド ), ifosphamide (IFX, イホマイド ), paclitaxel (PTX, タキソール ), vinblastine (VBL, エクザール ), Actinomycin D (Act-D, コスメゲン )

4) その他の治療 (1) 症状緩和的な特異的治療 バイパス手術 ( 吻合術 )( 手術 体腔鏡的 ): 腫瘍による通過障害部をバイパスして 胃や腸を吻合する 腎瘻造設術 ( 手術 その他 ): 皮膚より腎実質を貫通させ 腎盂にカテーテルを留置する 尿管カテーテル法 ( 内視鏡的 ): 膀胱鏡下に尿管口から逆行性にカテーテルを腎盂と膀胱間に留置する 9. 略語一覧 TJ 療法 taxol (paclitaxel) and JM-8 (carboplatin) 療法 CJ 療法 cyclophosphamide and JM-8 (carboplatin) 療法 BSO bilateral salpingo-oophorectomy 両側付属器切除 10. 参考文献 1) 日本産科婦人科学会編卵巣腫瘍取扱い規約 1997 年 8 月改訂第 2 版 ( 金原出版 ) 2) 日本臨床腫瘍学会編新臨床腫瘍学 ( 南江堂 ) 3)UICCTNM 悪性腫瘍の分類第 7 版日本語版 ( 金原出版 ) 4)SEER Summary Staging Manual 2000 5)AJCC Cancer Staging Atlas (Springer) 6) 国立がんセンタ - 内科レジデント編がん診療レジデントマニュアル ( 医学書院 ) 7) 解剖学講義改訂 2 版 ( 南山堂 ) 8) 日本婦人科腫瘍学会編卵巣がん治療ガイドライン 2010 年版 ( 金原出版 )