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口腔 顎顔面領域の検査と疾患 パノラマ X 線撮影と単純撮影 ( 読影に必要な知識 ) 丸橋 他 ) 一 一墨 一技師が書く技師のための読影講座一 パ 口腔顎顔面領域の検査と疾患ノラマ X 線撮影と単純撮影 ( 読影に必要な知識 ) 丸橋 日本大学歯学部付属歯科病院放射線室 一夫 本城谷孝 里見智恵子 1まじめに今回は 口腔 顎顔面領域の検査と疾患 における基礎編の 2 回目として, パノラマ X 線撮影と顎顔面領域の単純撮影について解説する. ただし, パノラマ X 線撮影法には口内線源方式と回転断層方式の二つの撮影法があるが, 前者の装置は, 現在市販されておらず一般的ではない 後者のみを対象とする. ため, ここでは 1.:_ lc. ノラマ X 線撮影. 1 1 撮景彡目白勺 パノラマ X 線撮影は, すべての歯ならびに顎関節部 Fig.1 ドイツ水平面を基準にしたパノラマ x 線写真咬合面は下方にやや凹んだ状態で写し出され, 下顎枝後縁はやや逆ハの字型になる. 標準的なパノラマ X 線写真であり, 歯と周辺組織および上下顎骨 上顎洞 顎関節 鼻腔などが明瞭に写し出されている, を含んだ上. ド顎骨および上顎洞, 鼻腔などを 1 枚の フィルム上に展開して総覧できるため, これらの領域 で発生する病変を把握する目的で歯科 凵腔外科 耳 鼻科領域で多用される. 特に, 歯に出来する嚢胞 ( 含歯性嚢胞など ) や腫瘍 ( エナメル上皮腫など ) および歯に由来しない裳胞や腫 瘍などの病変の大きさ, 部位,X 線透過性 ( または不 透過性 ) など病変の構造, 正常骨との境界などの診断に使用される. また, この撮影法では患者を中心にして X 線管と フィルム ( または IP,CCD ) を配置し, それらを回転移 動しながら撮影を行うため断層域が生ずることになる が,X 線管の回転速度とフィルムの移動速度を調整す ることで任意の部位の断層域を得ることができる. そのため, 最近の装置ではそれぞれの速度をコンピュー タ制御することにより, 成人 小児など種々の顎骨形 態に合わせた撮影や顎関節の側方および前後方向撮影など複数の断層域形態を撮影可能にした装置が多い. レ 2 基準面 パノラマ X 線撮影で最も一. 般的に用いられる基準面 は, 正中矢状面とドイツ水平面 ( 眼耳平面 ) である. し かし, それらの傾きの程度により基準面からずれて撮 るため, 読影の際にはどのような位置づけで撮影され ているかを X 線写真から判断できなければならない. 撮影時に用い 者の左右の られる基準面として, 正面から見た患 ズレや傾きを防ぐ目的で正中矢状面が用い られ, 側面から見た患者の前後の傾きは撮影日的に合 わせて次の三つの基準而が用いられる. ドイツ水平面 : パノラマ X 線撮影時に用いられる基 準平面のうち, 最も 般的に用いられているものであ る. この面を水平にして得られた画像は, 解剖学的構 造を総覧的に観察するのに適している (Fig.1). 眼窩耳孔面 面であり, この : 外眼角と外耳孔中心を結ぶ線を含む平 面を水平にして得られた画像は, 特 に, 上顎前歯部や鼻腔などを観察するのに適するが,. ド顎前歯部は断層域から外れやすいためぼけた像にな りやすい (Fig,2 ). 鼻棘耳孔面 ( 鼻聴道線 ): 前鼻棘と外耳孔中心を結ぶ 線を含む平面であり, この面を水平にして得られた画 像は, 特に, 下顎骨や下顎前歯部を観察するの に適す るが, 顎前歯部や鼻腔などはぼけた像になりやすい ( Fig.3 ). パノラマ X 線撮影装置では, 前歯部領域の断層域が 影されると, 描出される部位もその形態も異なってく 狭い ため, 患者頭部を前後させ, 上下の前歯部を断層

834 1 一日本放射線技術学会雑誌 Fig.2 眼窩耳孔面を基準にしたパノラマ x 線写真 咬合面は下方に凹んだ状態で写 はややハ し出され, 下顎枝後縁 の字型になる. 特に, 上顎前歯部や鼻腔など の観察時に用い るが, 下顎前歯部は不明瞭になっ てし まう. Fig,3 鼻棘耳孔面を基準にしたパノラマ X 線写真 咬合面は直線かやや上方に膨らんだ状態で写し出され, 下顎枝後縁は逆ハの字型になる. 特に, 下顎骨や 下顎前歯部の観察時に用い るが, 上顎前歯根尖部は不 明瞭になり, 骨口蓋も横に長く引き延ばされ, 読影の妨げになっている. 域に今わせる必要がある. しかし, 患者の 上下顎の形 態や前歯部歯軸の傾斜角度などは個人差が大きいた一め, 上ドの前困部を断層域に合わせるために患者一人一人の状態に合わせた位置づけが必要となる. 例えば, 下顎前突症患者の易合には, 下顎が上顎よ りも前方に突出してい るため, 眼窩耳孔面を水平また は前方をより下げた状態で位置づけすることにより上下の前歯部が明瞭に描出される. 1 3 パノラマ X 線撮影における解剖 パノラマ X 線撮影では, 撮影目的部位に対して X 線管側にある骨や人工物 ( 補綴物や装飾品 ) などの X 線吸収体ばかりでなく, 気管や口腔内にある空気までもが 描出されるため, 読影をより難しくしている. 二売影をする際には正常像の X 線解剖を正 このため, Fig.4 パノラマ X 線撮影における下顎頭の写り方パノラマ X 線撮影は, 右側斜め前方から右側後方に向 かって撮影が開始されるので, まずはじめに顎関節の 内側が写し出され ( 印, 次に外側が写し出される ( 印 ). このため, 顎関節内側部が X 線写真の外側に写し出されることになる. 確に把握しておく必要がある. この項では, 正常像の X 線解剖と撮影時の患者什位との関連も併せて解説する. 1 3 1 正常像の X 線解剖 パノラマ X 線写真で描出される歯は, 墓本的に正放線投影で撮影された全顎口内法 X 線写真を隙間なく並べた画像と同様である. しかし, 撮影範囲は, 上ド方向では下顎骨下縁から眼高中央部まで, 左右方向では両側の顎関節まで描出される (Fig.1). 画像全体を見ると, 中央部上方には鼻腔 ( 洋梨状の X 線透過像 ) が措出され, その中央部には鼻中隔 ( 鋤骨 ) とド鼻甲介が認められる. また, その左右両側に上顎洞が描出されている. その上顎洞内側壁は, 鼻腔壁と重複像を呈しながら眼窩ド部まで達し, 眼窩下部に沿って横に延び, 上顎洞後壁が上顎骨後壁に沿って下降する. 卜顎洞々底部は, 上顎の歯根部に近接 ( または重複 ) して描出される. また, 上顎洞内の外側部に頬骨突起と頬骨後壁の断面像が認められる. この線はパノラマ無名線とも旺ばれるが, 上顎洞後壁あるいは 隔壁と間違えやすいので注意が必要である. 鼻腔下部から 1 i 頁洞下部にかけて横一文字に描出さ れてい る X 線不透過像は硬口蓋であるが, その形態は 患者体位により大きく変化する ( 後述 ). 硬口蓋上部に 帯状に認められる X 線透過像は, 今気空洞 ( 気道内の 空気 ) が形成する像である. 下顎骨では, ド顎孔からオトガイ ( 頤 ) 孔まで走行する下顎管が認められる. 顎関節部は,. 下顎頭とト顎窩との関係が不明瞭であ るが, 下顎頭部は比較的明瞭に描出されるため骨折な どの刎釿に有効である. ただし, パノラマ X 線娵影で はその機構上, 顎関節内側部が画像の外側に, 外側面 が内側に描出されるので読影時には注意が必要である (Fig.4 ). 1 3 2 患者体位の位置づけと画像の特徴 1) 歯列弓と断層域との位置関係 患者の歯列弓が断層域より前方過ぎる ( フィルムに 第 64 卷 第 7 号

Japanese Soolety Society of Radiological Radlologloal Teohnology Technology 口腔 顎顔面領域の検査と疾患 パノラマ X 線撮影と単純撮影 ( 読影に必要な知識 ) 丸僑 f 些上一一一一一一 835 Flg 5 (a ) 断層域よりも患者を前方に位置づけたパノラマ X 線写真上下とも前歯は縮小して描出されている, 下顎骨体の骨折などの診断に有効な場合もある. (b) 断層域よりも患者を後方に位置づけたパノラマ X 線写真上下とも前歯は拡大して描出されている. 前歯部の診断には適さない画像である. a b Flg 6 (a ) 顎を引き過ぎた撮影体位 患者の立つ位置が装置に近づきすぎているために, 顎を引き過ぎた状態になっ ている. (b) 顎を引き過ぎたパノラマ X 線写真顎を引き過ぎたため, 舌骨が下顎骨体に近づき, 重複して描出され障害陰影になっ ている. 近い ) と前歯部は縮小されるが, 前歯を支える骨体部 の診断には有効な場合もある (Fi9.5a). 逆に, 後方過ぎると前歯部は拡大され診断には不向きである (Fig. 5b ). 2) 頸椎と舌骨の状態頭部の位置づけを正確に行っても瓜者を立たせる位置が前後すれば, 頸椎の状態が変化し, その状態の違いにより障害陰影の描出のされ方も変化する. 患者を前方に立たせすぎた場合, 頸椎下部が前に迫 り出し, 顎を極端に引いた体位になる (Fig.6a). この 場合, 入射 X 線に対し頸椎の幅が見かけ上狭くなるので, 前歯部における頸椎の障害陰影が出にくくなる が, 舌骨や頸椎が下顎骨 E に描出され, 障害陰影と なってしまう (Fig.6b ). 患者の立つ位置が後方過ぎた場合, 顎を突き出した 状態になり, 頸椎下部を後方に引い た体位になる (Fig. 7a). この場合, 入射 X 線に対し頸椎の幅が見かけ上 広くなるので, 前歯部に頸椎の障害陰影が出やすくな るが, 舌骨は断層域から遠ざかるため下顎骨とは重複 しない (Fig.7b ). また, 顎を突き出した状態にするこ とで下顎枝と頸 椎との間隔が広がり, 耳下腺に唾石 ( それ自休まれで ある ) が疑われるような特殊な場合には有効である. しかし, チンレス トの高さに比べ肩の位置が相対的に 上がるので装置と接触する可能性が高くなるため, 通 常この ような体位は用い られない. 3 ) 舌の 位置 撮影時, 患者が舌を口蓋 ヒ部に密着させてい ない 場 合, 硬冂蓋下部に横長の X 線透過像が描出され,. ヒ顎 歯根尖部の読影に支障をきたすこ とがある (Flg.8a). NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library

836 L 一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一日本放射線技術学会雑誌 a b 一 Fig,7 (a ) 顎を突き出し過ぎた撮影体位患者の立つ位置が後方過ぎるために, 顎を突き出した状態になってしまう. (b ) 顎を突き出し過ぎたパノラマ X 線写真頸椎下部を後方に引いた状態で X 線が頸椎を斜めに通過することになり 前歯部が濃度不足になっている. 一 _. 一一 Fig,8 (a ) 舌の位置が不適切なパノラマ X 線写真撮影時に舌を口蓋上部に密着させずに撮影されたため, 上顎前歯根尖部にある病巣の読影に支障が生じている t a b (b > 舌の位置が適切なパノラマ X 線写真撮影時に舌を口蓋上部に密着させて撮影されたため, 上顎前歯根尖部にある病巣の診断がしやすくなっている. これは口腔内に含まれる空気による透過像であり, 舌 を口蓋 ヒ音 ll に密着させることで防ぐことがで きる (Fig. 8b ). 1 4 障害陰影につい て パ ノラマ X 線撮影では, 原理 L, X 線が 1 度しか通 過しない部位 ( 前歯部など ) と複数回通過する部位 ( 左 右顎関節 頸椎など ) があり,2 度以上通過する部位 に存在する骨や人一 i 物は, ほかの 部位に対して障害陰 影の原因となり得る. 機種の違い や選択した軌道に よっ てもX 線の通過位置や角度が異なるため, こ れら の投影位置や形状は変化する (Fig.9 ). また, 気管内にある空気などによっ て も障害陰影が 生ずるため, 口腔 顎顔面領域の解剖学的構造物がパ ノラマ 写真上で どの位置に, どのよ うにっ写 てい るか 把握しておく必要がある. 次に, 臨床写真 (Fig.lo ) を用い 解説する. て種々の障害陰影を 図巾 a は, 反対側の下顎骨の障害陰影であり,X 線 が少し下方から入射しているため実際の位置よりもや や lt 方に描出されている. また, 正中部に認められる 不透過像 (b ) は頸椎による障害陰影で, その上部の上 顎前歯根尖部分に ハの字型の透過像 (c ) が認められ る. これは軸椎と環椎の椎間による陰影である. その 上部に横に伸びてい る障害陰影 (d ) は硬口蓋の不透過 像である. さらにその上部にある鼻腔や上顎洞を含み 左右の下顎枝を経て頸椎前縁部に及ぶ幅広い 透過像 ( 黒化帯 :e ) は含気空洞による障害陰影である. その 黒化帯下部に内側に向かっ め て突出した透過像 (f) が認 られるが, この像は口腔内後方下部の含気による陰 第 64 卷 第 7 号

口腔顔顔面領域の検査と疾患 パノラマ x 線撮影と単純撮影壟一型一一一一 837 影である. また, ド顎骨一. ド部両側に横に伸びている障 害陰影 (g ) は舌骨である コ 1 5 その他の注意点 撮影目的により 2 種類の る. 咬合状態が使用されてい 患者の通常の咬合状態を観察したい 場合は中心咬合 位で咬ませ るが, 上下の前歯が前後にズレるため, そ のままでは断層域内に上 F 前歯が人らない場合などは前歯の切端で咬んだ状態 ( 切端咬合位 ) で撮影する, 次に, パノラマ X 線撮影装置の自動露出機構を使用する場合の注意点について述べる. 患者通過後の X 線を効率的に検出するため,. 般的には自動露出機構に使用されている検出器はフィルムやグリッドよりもX 線管側に設置されている. しかし, パノラマ x 線撮影装置では, カセッテの裏側に設置されているため, 裏面に鉛が貼り付けてあるカセッテを使用した場合には, 鉛で吸収された後の X 線を検出することになり, 患者に対して余分な被曝をさせてしまうことになる. 特に, CR 用カセッテはメーカにより鉛 ( または, 他の金属 ) 使用の有無や分布が異なるため, 使用前に確認し, 場合によっては自動露出機構そのものの使用を中止しなければならない. L _ Fig.9 パノラマ X 線撮影時の X 線の通過回数 パノラマ X 線撮影では,X 線管を回転させて撮影を行 うため, 顎顔面領域の部位により X 線の通過回数が異なる, それに伴い, その部位は通過回数分 X 線写真上に描出される. 1 6 パノラマ X 線写真の読影の基本 パノラマ X 線写真を読影するにあたり, 最低限観察 を要する項目を列挙する. 1 6 1 上顎骨 1)1 顎洞の輪郭に異常がないか. 洞底部と歯との関係はどうか. Fig.10 解剖学的構造物や含気により現れる種々の障害陰影 a : 反対側の下顎骨の陰影,b : 頸椎,c : 椎間による陰影,dl 硬口蓋,e : 含気空洞による陰影,f : 口腔内含気による陰影,g ; 舌骨 洞底部の形態と白線の状態はどうか. 全体の輪郭を見て断裂, 消失, 対称性はどうか. 2 ). ヒ顎骨の輸郭に異常がないか. 3) 上顎洞内の左右濃度差に異常がないか. 濃度差がある ( または, ない ) 場合でも, 他の部位のボケ像により差が出る ( 出ない ) 場合もあるので注意 が必要である. 1 6 2 下顎骨 1) 下顎骨の輪郭に異常がないか. 下顎下縁の連続性が損なわれていないか. 下顎下縁の皮質骨が菲薄化や消失していないか. 3) 骨梁模様や全体の透過性に異常がないか. 1 6 3 歯 1) 本数に異常がないか. 埋伏歯や過剰歯がないか. 先天欠如はないか. 2 ) 歯冠部に異常がないか, 齲蝕の状態. 3 ) 歯槽骨の骨吸収程度に異常がないか. 4 ) 根尖病巣などがないか. 卜顎下縁の皮質骨の幅が顕著に狭くなっていない か. 下顎骨の左右対称性はどうか. 下顎頭と一ド顎窩の形態や大きさおよび相対的な付 : 置関係はどうか. 2 ) 下顎管やオトガイ孔 下顎孔に異常がないか. 2. 顎顔面領域の単純撮影 微細な骨や副鼻腔などが複雑に絡み合う歯 顎顔面領域の診断には, 多方向から撮影した画像が必要とされる. それらの中で, 代表的な撮影法を次に述べる.

838 L 一一一一一一日本放射線技術学会雑誌 製 鑼 Fig.11 顔面骨後前方向 X 線写真外耳孔にイヤロッドを挿入して左右の偏位を防いでいる, Fig.12 ウォーターズ法 X 線写真左側上顎洞に液面形成が認められる. 2 1 顔面骨後前方向撮影法 (postero anterior projection : P A 法 ) 2 1 1 撮景彡目白勺 顎 顔面骨の [E 面概観像であり, 顎 顔面骨骨折や 副鼻腔の炎症 嚢胞, 骨の膨隆 破壊など腫瘍の存在 診断に使用される. また, 歯科では他に顎変形症の診 断および, 開口位にて下顎頭の形態や外傷による下顎 頭の骨折や偏位などの観察に用いられる. 2 1 2 撮影方法と基準面 被検者は, 坐位または立位とし, 正中矢状面 眼窩 耳孔面をそれぞれカセッテに垂直にする. 中心線は, 副鼻腔 ( 蝶形骨洞は除く ) の炎症や嚢胞などの病的 形 態的変化の診断に使用される. また, ヒ ド顎骨や頬 骨弓の骨折や炎症, 腫瘍性病変の観察や眼窩, 正円孔, 下顎骨筋突起などの観察にも用いられる. 2 2 2 撮影方法と基準面 セッ 被検者は, 坐位または立位とし, 正中矢状面をカ テに乖直にする. オトガイ部を突き出し, ドイッ 水平而とカセッテとの角度が 45 となるようにする. 中心線は正中矢状面を通り前鼻棘に向け垂直に入射する. 2 2 3 注意点 正中矢状面と左右上顎洞中央を結ぶ線の交点に向けカ セッ テに対して垂直に入射する. 通常は閉口位で撮影 上顎洞と錐体 L 縁, 頭蓋底が重複しない する. ように注意 するが, 顎関節部 ( 下顎枝 ) の観察を目的とする場合は 開口位で撮影する, 2 1 3 注意点 顎顔面領域では, 上顎洞 上顎骨 下顎骨の観察が 主体となるため後頭前頭 (P A ) 方向で撮影する. 撮影条件は頭蓋骨よ り低く設定する ( 特に下顎枝が 対象の場合は よ り低く設定する ). また, 左右差や偏 位を観察する場合が多い ため, 撮影時には, 頭部の左 右の偏位には注意を要する (Fig.11). 2 2 ウォーターズ法 (Waters projection ) 2 2 1 ま最景彡目白勺 卜顎臼歯根尖および歯周組織の炎症や抜歯などが原 因で起こる歯性上顎洞炎は比較的多く,P A 法同様, 上顎洞炎の場合, 洞内の貯留物が漿液性であれば, 液面が水平に描写される液面形成が観察で きる (Fig. 12 ). このため, 坐位または立位で撮影することが望 ましい. また, ヒ顎洞の炎症像が片側のみの場合, 鼻 性よりも歯性上顎洞炎の可能性が高い と推測されるの で, 患者位置づけ時には左右の偏位に注意する. 2 3 頭部 X 線規格撮影法 ( セファログラフィ :Cephalo graphy) 歯科領域における単純撮影の中で して頭部 X 線規格撮影がある. も特殊な撮影法と この撮影法は, 再現性が特に重視されるため, 規格 化された X 線装胥により常に一定の幾何学的条件で撮影できるように考案されている. 第 64 卷 第 7 号

口腔 顎顔面領域の検査と疾患 パノラマ X 線撮影と単純撮影 ( 読影に必要な知識 ) ( 丸僑 他 ) 839 通常, 評価の対象となるのは側面像 ( 側方向撮影 ) で あるが, 後前方向撮影も併用して用い られることが多 い. また, 診断目的によっては斜位方向撮影 (Fjg.13) や頤下頭頂方向撮影も用いられる. 2 3 1 撮影目的 主に歯科矯正や凵腔外科領域, 小児歯科で 多用さ れ, 成長発育, 頭骸の形態, 治療の術前術後の診比 較, 成長予測, 治療予測や補綴学での総義歯作成の補助手段として用いられる. 2 3 2 撮影方法と基準面 こ の撮影法は, 再現性が要求されるため焦点一被写 体中心, 被写体中心一フ ィルム間距離および X 線の入 射点を幾何学的に一定とし, 専用の頭部固定装置 ( セ ファロスタット ) を用いて撮影する. 簡易型として, パノラマ X 線撮影装置に頭部岡定装置を取り付けた装 置もある. 画像拡大率を 1.1 倍とするため, 焦点一被写体中心 問距離を15.Ocm, 被写体中心一フィルム問距離を15Cm に固定するのが. 般的であるが, 患者の肩とフ ィルム Fig.13 頭部規格斜位方向 X 線写真 (4SD) ドイツ水平面を水平にして, 左右に 3ぴまたは 45 回転させて撮影する, 臼歯の 萌出方向や咬合状態などの診断に用いられる. 受けとの干渉を避けるため, それぞれ 2 )Ocm, 20cm としている施設もある. 側方向撮影の場合, 患者は坐位または立位とし, ドイツ水平面を水平, 患者の咬合は中心咬合位とするの が一般的であるが, 必要に応じて最大開口位や安静位での撮影もある.X 線の中心はイヤロッド中心を通り, カセッテに垂直に入射する. 2 3 3 注意点あらかじめ定められた人類学上の計測ポイントから基準平面や基準線を求め, それらの距離や角度から分析する. そのため, 側方向撮影では硬組織だけではな く用いられている (Fig.16a,b). このため, この項では両方の撮影法について述べる. 2 4 1 シュラー変法 1) 撮影目的顎関節疾患 ( 下顎頭の形態変化 発育異常 運動量など ) や骨折および偏位などの診断や経過観察のために主に用いられる. く軟組織を含めた顔面プロフィールが描出される必要 下顎頭 下顎窩 上顎骨関節結節部の 相対的な位置 がある (Fig.14a,b ). このため, x 線照射凵に軟組織 描出用補償フィルタを使用するか, 感度補償増感紙を 使用して硬 軟両組織を描出する.. 異常や形態異常の観察ならびに開閉口時におけるド顎頭の移動状態から運動量などが観察される. 2 ) 撮影方法と基準面 近年は CR や DR の 普及により, 階調処理や周波数処 治療の経過観察を行えるように規格性を重視し, 専 理を行うことによっ て軟組織像の描出も容易に行える 用の規格装置を使用して撮影が行われる. 患者の 外耳 ようになったが, 計測上重要なポイントである A 点 ( 上顎歯槽基底最深部 ) は最も描出しにくい部位である ため特に注意が必要である. 2 4 顎関節撮影法 (temporomandibular joint : TMJ ) 従来, 顎関節側斜立方向の撮影法としてシュラー変 法を用いて, 顎関節診断や治療の経過観察などを行っ ていた (Fig.15a,b ). しかし近年, パノラマ X 線撮影の軌道を変化させて 孔にイヤロッドを挿人して左右の動きを固定し, ドイツ水平面を水平に位置づける. シュ ラー変法は, 上下方向の角度は水平而に対し上 方 25 から入射するが, 水平方向の角度は下顎頭長軸に対して平行に近づけるため後方 3 10 から人射する. 3) 注意点顎関節部に対し上方から25 の角度で X 線を入射する ので, 下顎頭および下顎窩とも外側 3 分の 1 程度し 顎関節部の描写を可能にした装置の普及にともない, か描出されない. そのため, 下顎窩に対する下顎頭の パノラマ X 線撮影装置を使用した左右顎関節開閉 畤 の 4 分割撮影 ( 以下, パノラマ 4 分割撮影と略す ) が広 正確な位置関係は把握で る. きないので注意が必要であ

Japanese Soolety Society of Radiological Radlologloal Teohnology Technology 840 1 日本放射線技術学会雑誌 e [ e : a ト a ra 勘 fac / ai r):ane Fi9.14 (a ) 頭部規格側方向 X 線写真硬組織だけではなく. 軟組織を含めた顔面のプロフィールが描出されることが必要である. a b (b) 頭部規格側方向 X 線写真の計測点とトレース図譜分析方法は,2 点問の距離計測や二つの直線がなす角度の計測などにより行う. [ 主な計測点 ] N : 鼻前頭縫合の最前点,S : トルコ鞍の中心点,Or : 左右の眼窩骨縁最下点,Po : イヤロッドの金属陰影の最上縁点, ANS : 前鼻棘の最尖端点,PNS : 後鼻棘の最尖端点,Pog : 下顎頤隆起の最突出点,Me : 頤の正中断面像長軸方向の最下点 Ar : 下顎関節突起の後縁と後頭 骨基底部線との交点,Go :Ar から下顎角後縁部にいたる左右の接線と下顎平面とが 交わる点からの二等分線が下顎角骨縁部と交わる点の中点 Flg.15 (a ) シュラー変法による顎関節側斜位方向撮影体位経過観察のため, 専用の固定装置を用いて規格撮影が行われる. (b ) 顎関節側斜位方向 X 線写真 ( 左側 ) 下顎頭移動量の観察のため中心咬合位と最大開口位で撮影する. ab Fig.16 (a ) パノラマ 4 分割撮影の撮影体位通常, ドイツ水平面を水平にして位置づける, (b ) パノラマ 4 分割撮影による顎関節 X 線写真撮影時間が長いため, 開口時にはバイトブロックを咬ませるとよい. ab 第 64 卷 第 7 写 NII-Electronic N 工工一 Eleotronlo Llbrary Library

ロ腔 顎顔面領域の検査と疾患 パノラマ X 線撮影と単純撮影 ( 読影に必要な知識 ) 丸橋 他 ) 一一一一 L 麭 2 4 2 パノラマ 4 分割撮影 D 撮影目的 パノラマ X 線撮影装置を使用した顎関節側面像の撮 影法であり,1 顎頭の骨形態, 開閉凵時におけるド顎 頭と下顎窩ないし関節結節との位置的関係および外傷による骨折などの診断に使用される. 2) 撮影方法と基準面 この顎関節撮影モードはパノラマ軌道を顎関節部に 合わせたものであり, 患者の位置づけの基準面は, パ ノラマ を用いる. X 線撮影時と同様に正中矢状面とドイツ水平面 1 回転で 2 度の分割照射により左右の顎関節を撮影 するため, はじめに閉凵位 ( 中心咬合位 ) で撮影し, 頭 部はそのまま固定した状態で最大開口位にして, 再度 回転させ撮影する. パノラマ 4 分割撮影では, 足頭方向 5 8, 側 ( 後 ) 方 0 ]5 で入射されてい る. 下顎頭長軸は, 両外耳孔 を結ぶ線に対して平均約 15 の角度をなしてい る ( 外側 極が内側極より前方 ) ため, パノラマ 4 分割撮影の方 がシュラー変法より真の側面像に近い画像が得られ, 顎関節の骨変化をより精度良く観察することが可能で ある. 3) 注意点 撮影時間が長いため, 開口位ではバイトブロック ( 開口位保持具 ) を咬ませて撮影すると顎の動きを抑制 できる. また, イヤロッドが装備されていない装置で は, 患者が左右に偏位すると顎関節長軸に対する X 線 の入射角度が左右で違っ てしまうため, 左右下顎頭の 骨形態や開閉口時における下顎頭と下顎窩および関節 結節との位置的関係が異なってくるので注意が必要で ある. また, 入射角度が水平に近い ので, 下顎頭上部が下 顎窩を構成する骨と重なりやすく, 下顎頭上部を描出 するために撮影条件 ( 管電圧 ) を高めに設定する必要が ある. 関節 li 版 を含めた顎関節の診断には,MRI や顎関節 腔造影検査が用いられる. おわりに 撮影に関する基本や詳細, 注意点は, 今回使用した. 参考図書 (1 10 ) に記載されているので, そちらも参考にしていただきたい. 次回は, 口腔 顎顔面領域の 特殊撮影 について解 説する. 最後に, 今回執筆に際しご助言いただきました日本 大学歯学部歯科放射線学講座の本田和也教授, 橋本光 二准教授, ならびに執筆にご協力いただきました 全 国歯科大学 歯学部附属病院診療放射線技師連絡協議会 (http: /1jort.cooJ.ne.jp/) に深謝いたします 参考図書 D 中村實監, 金森勇雄, 片木喜代治, 田中守, 他編. 診断画像検査法歯 顎顔面検査法. 東京 : 医療科学社, 2002. 2) 古本啓, 岡野友宏, 小林馨, 他編. 歯科放射線学第 4 版. 東京 : 医歯薬出版,2006. 3 >Manson Hing LR 著, 黒柳錦也訳. パントモ撮影法第 2 版.. 東京 : 医学書院,1984, 4 ) 西連寺永康, 渕端孟, 野井倉武憲, 他. 慓準歯科放射線学. 東京 : 医学書院,2000. 5) 片木喜代治. 回転パノラマ X 線撮影法. 6 ) 宮下邦彦. 頭部 X 線規格写真法の基礎. 東京 : クインテッセンス出版,1999. 7 ) 中村止, 芝崎初江, 神田重信. 歯科放射線診断図譜. 東京 : 大崎エンタープライズ社, 1973. 8 ) 佐野司, 荒木和之, 勝又明敏, 他. 歯科放射線マ ニ ュ ア ル改訂 4 版. 東京 : 南山堂,2006. 9 ) 篠田宏司, 僑本光 1. 歯 顎顔面領域の画像診断法改訂版, 東京 : 口腔保健協会,2003. 10 ) 川本達雄, 葛西一 貴, 亀田晃, 他. 歯科矯正学第 4 版. 東京 : 医歯薬出版,2001.