呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

Similar documents
094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

皮疹が出現するメカニズムは不明のものが多いのですが 後天性魚鱗癬を除き 腫瘍細胞が産生する TGF-aや EGF により表皮細胞の増殖が誘導されることが一因であろうとの推測がなされています Leser trélat 兆候は 有名な病態であり 実際 多くの症例が報告されています 最近は皮膚科以外の診療

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

皮膚の血管炎なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

皮膚の血管炎・結節性多発動脈炎なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト


イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

2017 年 4 月 27 日放送 第 67 回日本皮膚科学会中部支部学術大会 3 教育講演 2 血管炎の診かた 中京病院皮膚科部長小寺雅也 血管炎を疑うべき症例の問診のポイント血管炎の診かたについてお話し致します 最初に 血管炎を疑うべき症例の問診のポイントとしては 原因不明の発熱 体重減少 全身

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

DLST の実際実際に DLST を行う手順を簡単にご説明します 患者末梢血をヘパリンや EDTA 添加の採血管で採取します 調べる薬剤の数によって採血量は異なりますが, 約 10 20mL 採血します. ここからフィコール比重遠心法により単核球を得て 培養液に浮遊し 96 穴プレートでいろいろな薬

成人T細胞白血病・NK/ T細胞リンパ腫・皮膚T細胞リンパ腫なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

ROCKY NOTE クリオグロブリン血症 (140617) クリオグロブリン血症について復習 クリオグロブリンは in virto では 37 以下で析出沈殿し 温めると再溶解する免疫グロブリン (immun

H28_大和証券_研究業績_C本文_p indd

汎発性膿庖性乾癬の解明

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

日本皮膚科学会雑誌第122巻第7号

2015sarco1014.indb

ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

線に及ぶ 4 パッチテスト 光パッチテストで多数の陽性物質が検出されるが それらの抗原によるアレルギー反応は直接原因ではない 5 病理組織学的に湿疹 皮膚炎群の所見を示し 時に真皮内に異型リンパ球の浸潤がみられる などです なお 現在までに本疾患の原因は解明されていません 慢性光線性皮膚炎の臨床像次


cell factor (SCF) が同定されています 組織学的に表皮突起の延長とメラノサイトの数の増加がみられ ケラチノサイトとメラノサイトの増殖異常を伴います 過剰のメラニンの沈着がみられます 近年 各種シミの病態を捉えて その異常を是正することによりシミ病変の進行をとめ かつシミ病変の色調を薄

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

2015 年 4 月 16 日放送 第 78 回日本皮膚科学会東部支部学術大会 3 シンポジウム1-1 Netherton 症候群とその類症 旭川医科大学皮膚科教授山本明美 はじめに Netherton 症候群は魚鱗癬 竹節状の毛幹に代表される毛の異常とアトピー症状を3 主徴とする遺伝性疾患ですが

心房細動1章[ ].indd

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座


Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 5. 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G010. 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク

<4D F736F F D DC58F4994C5817A54524D5F8AB38ED28CFC88E396F B CF8945C8CF889CA92C789C1816A5F3294C52E646



BMP7MS08_693.pdf

2017 年 8 月 31 日放送 第 80 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 5 シンポジウム5-2 片側性やブラシュコ線に沿った分布を示す小児皮膚疾患 ~ 診断と遺伝子検査のポイント~ 慶應義塾大学皮膚科准教授久保亮治はじめに日常の診療では時々 線状に配列する皮疹や 縞々模様を呈する皮疹 体の片

NEWS37-p1.eps

ROCKY NOTE 血球貪食症候群 (130221) 完全に知識から抜けているので基本的なところを勉強しておく HPS(hemophagocytic syndrome) はリンパ球とマクロファージの過剰な活性

アトピー性皮膚炎の治療目標 アトピー性皮膚炎の治療では 以下のような状態になることを目指します 1 症状がない状態 あるいはあっても日常生活に支障がなく 薬物療法もあまり必要としない状態 2 軽い症状はあっても 急に悪化することはなく 悪化してもそれが続かない状態 2 3

Microsoft Word - todaypdf doc

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

第58回日本臨床細胞学会 Self Assessment Slide

臨床No208-cs4作成_.indd

研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

_08長沼.indd

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

2015 年 8 月 27 日放送 第 78 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 3 シンポジウム2 基調講演薬疹の最新動向と今後の展望 昭和大学皮膚科教授末木博彦 はじめに本日は薬疹の最新情報と今後の展望についてお話しさせていただきます 最初に薬疹の概念が変遷しボーダレス化が進んでいるというお話 続

第6号-2/8)最前線(大矢)

EBウイルス関連胃癌の分子生物学的・病理学的検討

59 20 : 50 : : : : : 2 / :20 / 25 GTP /28 5/3 5/4 5/8 6/1 1 7kg 6/9 :178.7cm :68.55kg BMI:21.47 :37.3 :78 / :156/78mmHg 1

類天疱瘡・表皮下水疱症なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

Transcription:

2015 年 10 月 22 日放送 第 114 回日本皮膚科学会総会 2 教育講演 11-5 IgG4 関連皮膚疾患 浜松医科大学 皮膚科 教授戸倉新樹 1.IgG4 関連皮膚疾患とは IgG4 関連疾患は 自己免疫性膵炎と Mikulicz 病に端を発し その他全身至るところの臓器病変が報告され まとめられた疾患概念です 免疫グロブリンは形質細胞によって分泌され IgG IgA IgM IgE IgD があります IgG はさらに IgG1 IgG2a IgG2b IgG3 IgG4 に分かれます IgG4 を産生する形質細胞が集積し 特異な病変を形成することから IgG4 関連疾患と呼ばれています IgG4 関連疾患は炎症ではありますが 形質細胞を中心とするリンパ球の集積と線維化が顕著で 腫瘍性あるいは隆起性病変を形成します ( 表 1) 主に我国から重要な報告がなされ 疾患概念の確立に寄与してきました IgG4 関連疾患の特徴は IgG4 陽性の形質細胞が IgG 陽性の形質細胞全体の 40% 以上であること 通常 105mg/dl 以下の血清 IgG4 が 135 mg/dl 以上であること 多彩な臓器で様々な症状を

呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス 好酸球性肉芽腫性多発血管炎など ) と鑑別する必要があります 2011 年には我国より IgG4 関連疾患包括診断基準が提唱されています IgG4 関連疾患には皮膚病変もあることが明らかになりました そこで私たちは こうした皮膚病変を IgG4 関連皮膚疾患 (IgG4-related skin disease) として できるだけ分類することを試みました この試案は 2014 年の British Journal of Dermatology に総説として掲載されています 1) 2.IgG4 関連皮膚疾患の分類 IgG4 関連皮膚疾患は多彩ですが 我々は 7 つに分けることを提唱しています ( 表 3) 1) すなわち (1) 皮膚形質細胞増多症 (2) 偽リンパ腫 / 木村病 ( 好酸球性血管リンパ球増殖症 (angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia : ALHE) (3)Mikulicz 病 (4) 乾癬様皮疹 (5) 非特異的紅斑丘疹 (6) 高 γグロブリン血症性紫斑 / 蕁麻疹様血管炎 (7) 虚血指です (1)-(3) に関しては IgG4 陽性形質細胞が病変部に多数浸潤することにより形成される直接的な腫瘤としての 原発疹 です その他の (4)-(7) については IgG4 陽性形質細胞あるいは IgG4 による炎症自体が間接的に病変を導く 続発疹 と言えます IgG4 関連皮膚疾患も他の IgG4 関連疾患と同様に 過去において別の名称で診断されてきたため それを踏まえて鑑別診断を明確にすることも重要です ( 表 4) 以下 各病型について概説します 1) 皮膚形質細胞増多症 Cutaneous plasmacytosis 皮膚形質細胞増多症は IgG4 関連皮膚疾患の代表的な病変です 以前から皮膚形質細胞増多症は反応性形質細胞増殖性疾患として 東アジアとくに我国で報告されてきました 典型的には 体幹を中心に円形から楕円形の色素沈着を伴う浸潤性褐色斑が多発します 背部では病変がクリスマスツリー状の分布を示します 浸潤性紅斑は丘疹 結節になることもあ

り 痒疹に似ることもあります 皮膚形質細胞増多症のすべてが IgG4 関連疾患に属するわけではありません 血清 IgG4 が正常域を示し 皮膚に浸潤する IgG4 陽性形質細胞が低率の場合は 通常の皮膚形質細胞増多症と診断されます 皮膚形質細胞増多症は他の IgG4 関連疾患を伴うこともありますが 単独病変のこともあります 鑑別診断には多中心性 Castleman 病があります リンパ節病変を有する場合は 多中心性 Castleman 病の診断となります したがって皮膚形質細胞増多症と多中心性 Castleman 病はオーバーラップしていると考えられます IgG4 関連疾患の除外疾患として多中心性 Castleman 病があるため 多中心性 Castleman 病である場合には IgG4 関連皮膚疾患と呼ぶことはできません 2) 偽リンパ腫 木村病 (ALHE) 皮膚偽リンパ腫は リンパ球の密な浸潤によりリンパ腫のような病理組織像を呈しますが 良性の経過を辿る疾患です T 細胞性と B 細胞性偽リンパ腫がありますが IgG4 関連皮膚疾患の一型となりうるのは B 細胞性偽リンパ腫です IgG4 関連皮膚疾患としての皮膚 B 細胞性偽リンパ腫の臨床像は 頭頸部とくに顔面の浸潤性紅斑や結節 腫瘤です 偽リンパ腫型には 病変が皮膚のみであり 他臓器への形質細胞浸潤を伴わない皮膚原発例があります この点は 皮膚形質細胞増多症と同じで 両病型は原発性皮膚病変の代表となります また IgG4 関連疾患の包括定義に必ずしも合致せず probable IgG4-related disease に相当する例もあります 木村病は 我国から多く報告されています 顔 頭部 とくに耳介後方に腫瘤がみられます 木村病が IgG4 関連皮膚疾患であることが報告されています しかしすべての木村病が IgG4 関連皮膚疾患に属する訳ではありません 3)Mikulicz 病 Mikulicz disease IgG4 関連 Mikulicz 病は 眼瞼腫脹で皮膚科を訪れることもあります 時に眼球突出も伴います 眼瞼腫脹 眼球突出の鑑別診断として 甲状腺機能亢進症 皮膚筋炎 節外性ナチュラルキラー細胞リンパ腫がありますが Mikulicz 病もその一つとなります 涙腺 唾液腺に形質細胞が浸潤し 眼瞼と顎下腺が腫脹します Sjögren 症候群との鑑別を要します 4) 乾癬様皮疹 Psoriasis-like eruption 他臓器の IgG4 関連疾患を有し 皮膚病変として乾癬様皮疹を合併する症例が報告されています とくに IgG4 関連硬化性胆管炎に合併した乾癬様皮疹は 複数報告されている点が注目されます この乾癬様皮疹は通常の尋常性乾癬と診断してよいほど酷似しているため 単なる偶発の可能性も否定できません 病理組織学的にも尋常性乾癬そのものです しかし真皮上層の血管周囲に リンパ球だけでなく通常の尋常性乾癬にはみられない IgG4 陽性の形質細胞浸潤と 血管壁への IgG4 の沈着が認められます

5) 非特異的斑丘疹 局面 Unspecified maculopapular or erythematous lesions 他臓器の IgG4 関連疾患に罹患している患者に 皮膚病変として形質細胞が浸潤する非腫瘤性病変すなわち斑丘疹性皮疹あるいは紅斑性皮疹が出現することがあります 皮膚病変は通常多発し 病理組織学的には真皮上層の IgG4 陽性形質細胞の浸潤を特徴とします 今後このカテゴリーに属する皮疹はさらに細分化される可能性があります 6) 高 γ グロブリン血症性紫斑 蕁麻疹様血管炎 Hypergammaglobulinemic purpura and urticarial vasculitis 他臓器の IgG4 関連疾患の患者において 白血球破砕性血管炎あるいは蕁麻疹様血管炎を生じることがあります 血管壁には IgG4 が沈着しますが IgG4 は補体結合性が非常に弱いため IgG4 による免疫複合体による血管炎を起こすことは考え難く 他の免疫グロブリンのクラスも関与していると想定されます IgG4 の沈着は認めますが 形質細胞浸潤はないため 続発疹です 通常のアナフィラクトイド紫斑 (IgA 血管炎 ) Sjögren 症候群やエリテマトーデスに伴う高 γ グロブリン血症性紫斑との鑑別を要します むしろこれらの疾患を診た場合 IgG4 関連疾患を除外する必要があるでしょう 7) 虚血性指趾 Ischemic digit IgG4 関連疾患は大中動脈の病変を引き起こすことが明らかになっています 炎症はこれら動脈の内腔の拡大も閉塞も誘導します 胸部 腹部大動脈やその分岐動脈より小さい動脈も侵すことがあり 指趾の動脈を傷害した場合は 血行不良になり虚血性指趾となります Raynaud 徴候 指趾の壊疽がみられるため 強皮症 血栓症との鑑別が必要となります 3.IgG4 関連皮膚疾患における病理組織の特徴 IgG4 関連疾患の病理組織上の数値基準は IgG4 陽性細胞が IgG 陽性細胞全体の 40% 以上 かつ IgG4 陽性細胞 >10/HPF です IgG4 関連皮膚疾患でも こうした診断基準を満たすのが適当かもしれませんが 自己免疫性膵炎や Mikulicz 病とは異なり 遍く外界に接している皮膚を舞台とする病変という特殊性があるため 必ずしもこの包括的基準に合致しない例もあります 原発疹は IgG4 関連疾患包括基準に照らして評価することが可能ですが 続発疹は IgG4 陽性形質細胞が基準値以下の浸潤示す場合や あるいは血管壁への IgG4 沈着のみの場合もあります たとえ原発疹であっても IgG4 陽性細胞の細胞数は生検組織標本の場所によりかなり異なるため 必ずしも包括基準を満たしません また線維化は木村病の進展病変では顕著ですが その他の病変では目立ち難いです このように IgG4 関連皮膚疾患の定義はかなりの斟酌を加えた将来的な診断基準が必要と考えられます

4.IgG4 関連皮膚疾患の病態 IgG4 の Fc 領域は補体 (C1q) や Fcγ 受容体への結合が弱く 免疫活性化における役割は少なく むしろ抗炎症作用を示します 従って IgG4 の働きのみから皮膚病変を説明することはできません IgG4 の産生は IgE と同様に Th2 サイトカインである IL-4 や IL-13 によって促進されます また制御性 T 細胞 (Treg) 由来の IL-10 でも IgG4 産生が増加します 一方では Treg の産生する TGF-βは線維化も誘導します 従って IgG4 関連疾患では Th2 と Treg が活性化されており それによって Th2 に変調した形質細胞増多症や木村病が生じると考えられています その意味からすれば 上昇する IgG4 は Th2 や Treg への免疫状態の不均衡を示すバイオマーカーとしての意義があるとも言えるでしょう 文献 1) Tokura Y, et al: IgG4-related skin disease. Br J Dermatol 171: 959-967, 2014.