入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

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通常の市中肺炎の原因菌である肺炎球菌やインフルエンザ菌に加えて 誤嚥を考慮して口腔内連鎖球菌 嫌気性菌や腸管内のグラム陰性桿菌を考慮する必要があります また 緑膿菌や MRSA などの耐性菌も高齢者肺炎の患者ではしばしば検出されるため これらの菌をカバーするために広域の抗菌薬による治療が選択されるこ

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

は減少しています 膠原病による肺病変のなかで 関節リウマチに合併する気道病変としての細気管支炎も DPB と類似した病像を呈するため 鑑別疾患として加えておく必要があります また稀ではありますが 造血幹細胞移植後などに併発する移植後閉塞性細気管支炎も重要な疾患として知っておくといいかと思います 慢性

胸部単純写真での間質影陰影の読影:XP-CT対比

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

平成20年度 大学院シラバス(表紙)

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

耐性菌届出基準

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

<34398FAC8E998AB490F55F DCC91F092CA926D E786C7378>

に 真菌の菌体成分を検出する血清診断法が利用されます 血清 βグルカン検査は 真菌の細胞壁の構成成分である 1,3-β-D-グルカンを検出する検査です ( 図 1) カンジダ属やアスペルギルス属 ニューモシスチスの細胞壁にはβグルカンが豊富に含まれており 血液検査でそれらの真菌症をスクリーニングする

  36 特発性間質性肺炎 臨床調査個人票     (1

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

スライド 1

第 88 回日本感染症学会学術講演会第 62 回日本化学療法学会総会合同学会採択演題一覧 ( 一般演題ポスター ) 登録番号 発表形式 セッション名 日にち 時間 部屋名 NO. 発表順 一般演題 ( ポスター ) 尿路 骨盤 性器感染症 1 6 月 18 日 14:10-14:50 ア

2012 年 11 月 21 日放送 変貌する侵襲性溶血性レンサ球菌感染症 北里大学北里生命科学研究所特任教授生方公子はじめに b 溶血性レンサ球菌は 咽頭 / 扁桃炎や膿痂疹などの局所感染症から 髄膜炎や劇症型感染症などの全身性感染症まで 幅広い感染症を引き起こす細菌です わが国では 急速な少子

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2009年8月17日

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

2011 年 11 月 2 日放送 NHCAP の概念 長崎大学病院院長 河野茂 はじめに NHCAP という言葉を 初めて聴いたかたもいらっしゃると思いますが これは Nursing and HealthCare Associated Pneumonia の略で 日本語では 医療 介護関連肺炎 と

結核発生時の初期対応等の流れ

割合が10% 前後となっています 新生児期以降は 4-5ヶ月頃から頻度が増加します ( 図 1) 原因菌に関しては 本邦ではインフルエンザ菌が原因となる頻度がもっとも高く 50% 以上を占めています 次いで肺炎球菌が20~30% と多く インフルエンザ菌と肺炎球菌で 原因菌の80% 近くを占めていま

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5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ


抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性


Microsoft Word - 【要旨】_かぜ症候群の原因ウイルス

48小児感染_一般演題リスト160909

結核 第 84 巻 第 8 号 2009 年 8 月 586 肺結核 経気道散布性病変 の鑑別診断 ) 2) 臨床現場で診断を急がなければならない症例は活動性 結核である 滲出期の肺結核は一般細菌による肺炎と同 有無に対する問診が重要となる 表 2 次の増殖期で は融合傾向のある小葉中心性の粒状陰影

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

心臓腫瘍の1例

2.7.3(5 群 ) 呼吸器感染症臨床的有効性グレースビット 錠 細粒 表 (5 群 )-3 疾患別陰性化率 疾患名 陰性化被験者数 / 陰性化率 (%) (95%CI)(%) a) 肺炎 全体 91/ (89.0, 98.6) 細菌性肺炎 73/ (86

1 研究の背景市中肺炎は我が国はもちろん 世界中で死亡の主要な原因となっている (1) 市中肺炎患者は発熱 胸部レントゲン写真での浸潤陰影 白血球や CRP の上昇を示すが 特発性器質化肺炎 特発性肺線維症急性増悪 薬剤性肺炎などの急性非感染性炎症性肺実質疾患も同様な所見を呈し 鑑別に難渋することも

て 弥生時代に起こったとされています 結核は通常の肺炎とは異なり 細胞内寄生に基づく免疫反応による慢性肉芽腫性炎症であり 重篤な病変では中が腐って空洞を形成します 結核は はしかや水疱瘡と同様の空気感染をします 肺内に吸いこまれた結核菌は 肺胞マクロファージに貪食され 細胞内で増殖します 貪食された

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「             」  説明および同意書

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症例 70 歳 性 主訴 現病歴 発熱 倦怠感 咳嗽重喫煙歴 糖尿病の既往がある ADL した70 歳 性 来院 3 前から発熱 倦怠感 咳嗽あり 改善に乏しいため当院受診

Microsoft Word - 届出基準

緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa グラム陰性桿菌 ブドウ糖非発酵 緑色色素産生 水まわりなど生活環境中に広く常在 腸内に常在する人も30%くらい ペニシリンやセファゾリンなどの第一世代セフェム 薬に自然耐性 テトラサイクリン系やマクロライド系抗生物質など の抗菌薬にも耐性を示す傾

改訂の理由及び調査の結果直近 3 年度の国内副作用症例の集積状況 転帰死亡症例 国内症例が集積したことから専門委員の意見も踏まえた調査の結果 改訂することが適切と判断した 低カルニチン血症関連症例 16 例 死亡 0 例

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で言われています このような 副鼻腔炎と喘息の合併のことを 同一の気道で起こるので One airway one disease と呼ばれ久しくなっています それぐらいに 上気道と下気道の関連が密接であることが 広く認識されています また 副鼻腔炎に下気道の慢性炎症を合併する疾患としては 副鼻腔気管

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

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85 特発性間質性肺炎 概要 1. 概要間質性肺炎とは 胸部 X 線写真や CT 画像にて両側びまん性の陰影を認める疾患のうち 肺の間質を炎症や線維化病変の場とする疾患の総称である 間質性肺炎の原因は多岐にわたり 職業 環境性や薬剤など原因の明らかなものや 膠原病 サルコイドーシスなどの全身性疾患に

平成 28 年度感染症危機管理研修会資料 2016/10/13 平成 28 年度危機管理研修会 疫学調査の基本ステップ 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース (FETP) 1 実地疫学調査の目的 1. 集団発生の原因究明 2. 集団発生のコントロール 3. 将来の集団発生の予防 2 1

2015 年 7 月 8 日放送 抗 MRS 薬 最近の進歩 昭和大学内科学臨床感染症学部門教授二木芳人はじめに MRSA 感染症は 今日においてももっとも頻繁に遭遇する院内感染症の一つであり また時に患者状態を反映して重症化し そのような症例では予後不良であったり 難治化するなどの可能性を含んだ感

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

085 特発性間質性肺炎

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

改訂後改訂前 << 効能 効果に関連する使用上の注意 >> 関節リウマチ 1. 過去の治療において 少なくとも1 剤の抗リウマチ薬 ( 生物製剤を除く ) 等による適切な治療を行っても 疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与すること 2. 本剤とアバタセプト ( 遺伝子組換え ) の併用は行わな

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

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2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

2012 年 7 月 18 日放送 嫌気性菌感染症 愛知医科大学大学院感染制御学教授 三鴨廣繁 嫌気性菌とは嫌気性菌とは 酸素分子のない環境で生活をしている細菌です 偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌があります 偏性嫌気性菌とは 酸素分子 20% を含む環境 すなわち大気中では全く発育しない細菌のことで 通

2005 年 9 月 30 日 特集肺癌画像診断 2005 年一肺結節の良悪性鑑別の進歩 図 1 肺過誤腫 70 歳代女性 HRCT 肺野条件 右下葉肺底部に 15mm 大 辺縁整で一部わずかに分葉状の形態を呈する結節あり b,c: HRCT 縦隔条件 結節内に明らかな石灰化は見られないが 内部の

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年呼吸器系の疾患 (Respiratory Disease) 責任者 : 木島貴志主任教授 長谷川誠紀主任教授 内科学呼吸器科 木島貴志主任教授 栗林康造准教授 横井崇特任准教授 三上浩司講師 南俊行講師 柴田英輔助教 金村晋吾助教 袮木芳樹助教 藤本英利子助教 外科学呼吸器外科 長谷川誠紀主任教授

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

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褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

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市中肺炎に血液培養は必要か?

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

関節リウマチ(RA)に対するIL-6阻害療法施行ガイドライン

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されており これらの保菌者がリザーバーとして感染サイクルに関与している可能性も 考えられています 臨床像ニューモシスチス肺炎の 3 主徴は 発熱 乾性咳嗽 呼吸困難です その他のまれな症状として 胸痛や血痰なども知られています 身体理学所見には乏しく 呼吸音は通常正常です HIV 感染者に合併したニ

公開情報 2016 年 1 月 ~12 月年報 院内感染対策サーベイランス集中治療室部門 3. 感染症発生率感染症発生件数の合計は 981 件であった 人工呼吸器関連肺炎の発生率が 1.5 件 / 1,000 患者 日 (499 件 ) と最も多く 次いでカテーテル関連血流感染症が 0.8 件 /

Transcription:

2016 年 1 月 13 日放送 肺炎画像診断のコツとピットフォール 大分大学呼吸器 感染症内科教授門田淳一はじめに今回は肺炎画像診断のコツとピットフォールについてご紹介します わが国は超高齢社会に突入し 肺炎は悪性疾患 心疾患に次いで死因の第 3 位になりました 高齢者は感冒やインフルエンザなどのウイルス感染症に罹患した後に 肺炎球菌性肺炎をはじめとする細菌性肺炎にかかりやすく 容易に重症化します また 高齢になればなるほど肺炎全体に占める誤嚥性肺炎の頻度は高くなることが報告されています 従って このような肺炎を早期に診断し 治療することが臨床上極めて重要になります 肺炎を診断する上で重要になるのが臨床症状に加えて胸部エックス線や CT による画像診断です 特に胸部の高分解能 CT HRCT は その陰影の分布や性状および特徴を把握 理解することによって 肺炎の診断に必要な多くの情報をもたらします 胸部 CT 画像の読み方まずはじめに胸部 CT 画像上みられる異常所見の基本的パターンについてお話しします ( 図 1 2) 経気道的に病原微生物などの異物を吸

入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物あるいは器質化によって充満している所見で これも呼吸器感染症で生じます 汎小葉性病変が連続すると区域性あるいは大葉性病変として認識され 肺炎球菌性肺炎 レジオネラ肺炎およびクレブシエラ肺炎などでみられます 一方 小葉辺縁性病変あるいは小葉間隔壁肥厚や気管支血管周囲束肥厚はリンパ経路に沿った分布として認識され 基本的にこれらの所見がみられた場合は呼吸器感染症は考えにくくなります これらの分布に規則性がない場合は ランダムな分布として認識され 主に血行性散布による病変を疑う所見で 血行性に肺に感染病巣あるいは腫瘍の転移性病変を形成した所見と考えられます 小葉中心性病変を見た場合の鑑別のポイントそれでは それぞれのパターンについてさらに話を進めます 小葉中心性病変の中でも特に tree-in-bud を伴う粒状 斑状影をみた場合には 感染症を疑う所見として極めて重要です 急性呼吸器感染症では 原因微生物としてインフルエンザ菌やマイコプラズマが疑われ 気管支肺炎の像としてみられることが多く また黄色ブドウ球菌やモラクセラ カタラーリスによる肺炎も考慮しておく必要があります 亜急性から慢性呼吸器感染症のなかでは 肺結核 非結核性抗酸菌症 特に肺 Mycobacterium

avium complex (MAC) 症 肺アスペルギルス症が鑑別として挙がります 肺炎に対する初期治療でレスピラトリ キノロン系抗菌薬を使用する場合には 耐性菌誘導の観点から肺結核症との鑑別を常に意識しておく必要があります その他にこの様な画像所見を呈する疾患は びまん性汎細気管支炎 関節リウマチ関連細気管支炎 成人 T 細胞白血病ウイルス関連細気管支炎などの慢性気道感染症が挙げられます ( 図 3) 一方で 小葉中心性病変でも明瞭な小葉中心性粒状 斑状影を見た場合には 過敏性肺炎 じん肺 肺胞出血 ルポイド肺炎 転移性石灰化症などが鑑別として挙がり 感染性疾患は考えにくい所見になります ( 図 3) 汎小葉性病変次に汎小葉性病変についてお話します 先ほど述べましたように 汎小葉性病変も呼吸器感染症ではよくみられる画像パターンであり 汎小葉性病変が連続すると区域性あるいは大葉性病変として認識され consolidation あるいは浸潤影と表現されます 陰影内部に気管支透亮像を伴うとさらに感染症を疑う所見として重要視され 肺炎球菌性肺炎 レジオネラ肺炎およびクレブシエラ肺炎などが鑑別として挙がります ( 図 4) このような浸潤影を呈する疾患の中で 非感染性疾患として細菌性肺炎と最も鑑別を要する疾患として 特発性器質化肺炎が重要です 当初は細菌性肺炎と診断し 抗菌薬を投与して経過を観察すると 一見抗菌薬の効果で浸潤影が消失あるいは減少したように見えますが その後に再度浸潤影が他の区域に移動 出現し この経過を繰り返すことがあります ( 図 5)

浸潤影を呈する陰影における肺炎との鑑別ポイントまた 浸潤影を呈する陰影における肺炎との重要な鑑別ポイントとして 胸部エックス線上の Kerley の B line や HRCT 上のすりガラス影 小葉間隔壁の肥厚像が挙げられます 注意深くこれらの所見を観察することで ニューモシスチス肺炎などの一部を除いて感染性疾患かどうかの鑑別が可能です Kerley の B line やすりガラス影 小葉間隔壁の肥厚像がみられた場合には 肺水腫や急性好酸球性肺炎 薬剤性肺炎などが鑑別として挙がります ( 図 6) 特発性器質化肺炎 急性好酸球性肺炎 あるいは薬剤性肺炎と診断できれば副腎皮質ステロイド薬投与の適応となることもあるため これらの所見の把握が重要になります 肺炎が重症化すると急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) に進展することがありますが この場合には全肺野に浸潤影とすりガラス影がみられ 心原性肺水腫との鑑別が必要となります 両者は合併することもありますので鑑別は容易ではないですが 胸部 CT の肺野条件で 上葉優位のすりガラス影 気管支血管周囲束の肥厚 右優位の胸水 そして縦隔条件では 上大静脈の横径が 18.5mm 以上 下大静脈の縦径が 21.5mm 以上 が心原性肺水腫を抽出するのに優位な所見であることが報告されています 一方 MRSA などによる septic emboli や播種性カンジダ血症のように血流感染あるいは敗血症に伴って肺野に病変を来す場合があり 胸部 CT 所見としては汎小葉性病変を伴うこともありますが 基本的には一定の傾向を認めないランダム すなわち血行性の分布を呈します また 結節影の周囲に出血性梗塞を反映してすりガラス影 ハローサインと呼びますが septic emboli 以外の細菌感染で認められる頻度は低いとされています 誤嚥性肺炎の画像 最後に高齢者肺炎に多い誤嚥性肺炎の画像についてご説明します 誤嚥性肺炎の定義 には定まったものはなく 胸部画像所見に関しても明確な基準はありません 我々は

誤嚥の危険因子があり 臨床的に嚥下障害が疑われる患者さんに発症した肺炎の胸部 CT 所見を解析しました その結果 多くは気管支血管周囲束に沿って斑状 粒状 すりガラス影が認められ 約 70% に気管支肺炎パターンが認められました また ほぼ全例に肺底部および背側の領域に陰影が認められ 日常生活活動レベルが良いほど肺底部に 寝たきり状態に近づくほど 背側全域に陰影が分布する傾向が認められました すなわち 嚥下障害のある患者さんの肺炎は胸部画像上 重力方向に陰影が分布することが明らかとなりました 従って 高齢者において 胸部画像上このような分布を呈する肺炎を見た場合には 誤嚥性肺炎の可能性を考慮し 口腔内連鎖球菌や嫌気性菌に抗菌力のある抗菌薬を選択する必要があります おわりに最後に簡潔にまとめますと 1)tree-in-bud を伴う小葉中心性斑状 粒状影は呼吸器感染症のサインである 2) 汎小葉性病変では呼吸器感染症の可能性が低いと考えられる Kerley の B line や小葉間隔壁の肥厚所見を見逃さない 3) ランダム分布とハローサインは septic emboli を疑う ということになるかと思います 当然 胸部画像上 多くの性状と特徴 および分布が混在した陰影を呈する疾患も多くあり 必ずしも本日ご説明したような特徴的な画像ばかりではありませんが 肺炎をはじめとする呼吸器感染症を疑う画像の特徴を十分理解した上で 臨床症状や臨床検査を加味し鑑別を進めていただければと思います 本日のお話が日常診療のお役に立てれば幸いです