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最高裁○○第000100号

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

最高裁○○第000100号

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求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

医療事故防止対策に関するワーキング・グループにおいて、下記の点につき協議検討する

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

硝子体手術を受けられる方へ

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

原告は, 昭和 33 年 12 月 6 日生まれ ( 本件手術当時 24 歳 ) の男性である 被告 B 市は, 被告病院を開設し, これを運営している ア原告は, 被告病院を受診して十二指腸潰瘍との診断を受け, 昭和 58 年 9 月 2 9 日, 被告病院において, 本件手術を受けた ( 甲 A

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

110 川崎医学会誌 登場などにより, 眼内レンズを挿入しても眼内炎症がコントロール可能な程度に抑えられるようになったため, 生後 1ヶ月未満という若年期の手術であっても眼内レンズを挿入する施設もある 1). 白内障術後には, 成人であっても小児であっても, 眼内レンズを挿入している水晶体嚢が術後に

長期家族介護者援護金 2 補償の内容 (1) 療養補償負傷又は疾病が治ゆするまでの間 必要な治療を行い 又は療養の費用を支給します 療養の範囲は次に掲げるもので 認定された傷病又は疾病の療養上相当と認められるものに限ります ア診察イ薬剤又は治療材料の支給ウ処置 手術その他治療エ居宅における療養上の管

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

白内障について 白内障は虹彩 ( 瞳 くろめ ) の後ろにある 眼のレンズ ( 水晶体 ) が濁る病気です 加齢によりこの水晶体が濁ると 眼の奥に光が届きにくくなるため ものがぼやける 視力が低下する などの症状が出現します 白内障の治療は? 白内障は年齢とともに次第に進行します 初期であれば 多少

11総法不審第120号

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平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

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平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

日本の糖尿病患者数約 890 万人糖尿病の可能性が否定できない人約 1320 万人合わせて約 2210 万人 (2007 年厚生労働省による糖尿病実態調査 ) 糖尿病の患者様の約 40% に網膜症発生 毎年 3000 人以上が糖尿病網膜症で失明 2

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

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1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

KUSA1 基本契約書

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

1 A 所有の土地について A が B に B が C に売り渡し A から B へ B から C へそれぞれ所有権移転登記がなされた C が移転登記を受ける際に AB 間の売買契約が B の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で 当該登記の後に A により AB 間の売買契約が取り消された

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

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1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

2 障害厚生年金障害厚生年金は次の1~3の条件すべてに該当する方が受給できます 1 障害の原因となった病気やケガの初診日 ( 1) が 厚生年金保険の被保険者である期間にあること 2 障害の原因となった病気やケガによる障害の程度が 障害認定日 ( 2) に法令により定められている障害等級表 ( 3)

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

平成  年(オ)第  号

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

標準契約書

臨床研究の概要および研究計画

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

11総法不審第120号

糖尿病網膜症診療の現状


原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

第1 総 括 的 事 項

眼科学 責任者 コーディネーター 眼科学講座黒坂大次郎教授 担当講座 学科 ( 分野 ) 担当教員 眼科学講座 黒坂大次郎教授 町田繁樹准教授 木村桂講師 後藤恭孝助教 菅原剛助教 橋爪公平助教 対象学年 4 期間前期 区分 時間数 講義 17 時間 学習方針 ( 講義概要等 ) 視機能の回復 改善

01_認定基準通知(鑑)

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

別紙 常勤医師等の取扱いについて 1. 一日平均患者数の計算における診療日数 (1) 入院患者数ア通常の年は 365 日である イ病院に休止した期間がある場合は その期間を除く (2) 外来患者数ア実外来診療日数 ( 各科別の年間の外来診療日数で除すのではなく 病院の実外来診療日数で除すこと ) イ

保険金支払事例

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1. はじめに 1 日常生活や事業活動をめぐる様々なリスクに対応する損害保険の中で 賠償責任保険の存在は 我が国の損害賠償制度において今や欠かすことができないものとなっています 損害保険業界では 数多くの種類の賠償責任保険をご提供することを通じて損害賠償制度にのっとった被害の回復に向けたお手伝いをす

表紙@C

年管管発 0928 第 6 号平成 27 年 9 月 28 日 日本年金機構年金給付業務部門担当理事殿 厚生労働省年金局事業管理課長 ( 公印省略 ) 障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて 厚生年金保険法施行規則等の一部を改正する省令 ( 平成 2

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

300426_07-1合同委員会 表紙文

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

個人情報の保護に関する規程(案)

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

( 参考 ) 国民年金法施行令別表 厚生年金保険法施行令別表第 及び第

スライド 1

一身体障害認定基準 1 総括的解説 (1) 視力の屈折異常がある者については 眼科的に最も適当な矯正眼鏡を選び 矯正後の視力によって判定する () 視力表は万国式を基準とした視力表を用いるものとする () 視野はゴールドマン視野計及び自動視野計又はこれらに準ずるものを用いて測定する ゴールドマン視野

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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Microsoft Word - 療養補償給付又は療養給付.doc

最高裁○○第000100号

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後遺障害別等級表・労働能力喪失率

深夜勤務の制限 5 妊産婦の時間外 休日 妊娠中の女性が 母体または胎児の健康保持のため 深夜勤務や時間外勤務等の制限を所属長に請求できます 病院助手専攻医臨床研修医 6 妊娠中の休息 妊娠中の女性は 勤務時間規程に規定する 職務に専念する義務の免除 を利用して 母体または胎児の健康保持のため 勤務

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眼内レンズの添付文書の見直しについて 資料 No.1-6

訪問介護標準契約書案

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平成 15 年 5 月 7 日判決言渡平成 12 年 ( ワ ) 第 11649 号損害賠償請求事件主文 1 被告は, 原告に対し,2734 万 2179 円と, これに対する平成 10 年 9 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 2 原告のそのほかの請求を棄却する 3 訴訟費用は,10 分の3を被告の負担とし, そのほかを原告の負担とする 事実及び理由第 1 原告の請求被告は, 原告に対し,9769 万 7805 円と, これに対する平成 10 年 9 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要原告は, 被告が設置する病院で右眼の白内障手術を受けたが, 手術後に網膜剥離を発症し視力が著しく低下したことについて, 被告病院の医師に,1 白内障手術中に毛様体を損傷した過失,2 手術後の検査を怠って網膜剥離を見逃した過失,3 網膜剥離発見後に緊急手術を怠った過失,4 白内障手術の危険性を説明しなかった過失があったと主張して, 被告に対し, 医療契約上の債務不履行, 国家賠償又は不法行為 ( 使用者責任 ) に基づき, 損害賠償を求めた 1 前提となる事実 ( 証拠を記載したもの以外は争いがない ) (1) 当事者被告は, 埼玉県所沢市並木三丁目 2 番地に防衛医科大学校病院 ( 以下 被告病院 という ) を設置し, 平成 10 年 8,9 月当時, 眼科においてA 医師,B 医師,C 医師,D 医師を任用していた 原告 ( 大正 9 年 10 月 7 日生まれ ) は, リハビリテーションを専門とする医師であったが, 平成 10 年 8 月 18 日, 右眼の白内障手術を受ける目的で被告病院に入院し, 被告との間で, 白内障手術に関し適切な医療を受けることを内容とする医療契約を締結した (2) 原告の診療経過ア原告は, 平成 5 年 2 月 24 日から, 左眼の視力低下と視野欠損を訴えて被告病院に通院し, 原発開放隅角緑内障と診断された 9 月 2 日には, これに対する手術を受けたが, 左眼に視野狭窄が残った 原告は, 平成 10 年 6 月 2 日, 被告病院で, 右眼の白内障が少しずつ進行しているとの診断を受けた 6 月 3 日の検査により水晶体皮質混濁が認められたので, これに対する手術を受けることとなり,8 月 18 日, 被告病院に入院した 入院時の右眼視力は0.6であり, 視野は正常であった イ原告は, 平成 10 年 8 月 20 日,A 医師の執刀で右眼の白内障手術を受け,8 月 30 日に退院した この手術中, 毛様体上皮が剥離し, 硝子体出血による硝子体混濁が生じたが, 眼底後極部の網膜剥離には至らなかった ウ原告は, 退院後, 平成 10 年 9 月 2 日にB 医師の,9 月 9 日にA 医師の診察を受けたが,9 日の診察で, 右眼に網膜剥離 ( 裂孔原性網膜剥離 ) が発見された 右眼視力は,2 日が0.1,9 日が0.2であった 原告は,9 月 11 日に被告病院に再入院し,9 月 14 日, 右眼の網膜剥離に対する手術を受け,10 月 2 日に退院した 右眼視力は, 入院時が0.4, 退院後の 10 月 7 日の検査では0.1であった 原告は, 平成 11 年 1 月 13 日まで被告病院に通院したが, 右眼視力は0.1のままで回復せず, その後, 東京大学医学部附属病院へ転院した (3) その後の原告の状況原告は, 東京大学病院において, 平成 11 年 4 月 15 日の検査で右眼にも視野狭窄が認められ, 平成 12 年 5 月 22 日には, 右眼視力は0.04で矯正不能, 網膜剥離後の網膜変性により視力回復は不能と診断された ( 甲 B4の1 2) 原告は, 平成 14 年 11 月 21 日, 東京都から, 視野障害により身体障害程度等級 2 級 ( 両眼の視野がそれぞれ10 度以内で, かつ, 両眼による視野について視能率による損失率が95パーセント以上のもの ) の認定を受けて, 身体障害者手帳の交付を受けた ( 甲 C2,3) 現在の右眼視力は0.02 程度である ( 甲 B 12, 原告本人 ) (4) 医学的知見ア白内障手術 ( 甲 B3の1, 乙 A2,B8,14) 白内障とは, 眼球内の水晶体が加齢などにより白濁する疾患である これに対する手術的療法としては, 白濁した水晶体を摘出し, 代わりに眼内レンズ ( 人工

水晶体 IOL) を挿入する方法がとられる 水晶体を摘出するにあたっては, 水晶体前嚢を部分的に切除して水晶体核を摘出した後, 残った軟らかい水晶体皮質を吸引除去して水晶体嚢を保存する術式が広く行われている ( 水晶体嚢外摘出術 ) 水晶体核を摘出する方法には, 圧出法などにより核を一塊として摘出する方法 ( 計画的嚢外摘出術 ) と, 超音波発振チップにより核を破砕して吸引する方法 ( 超音波水晶体乳化吸引術 ) とがある 原告に対しては, 核を一塊として摘出する水晶体嚢外摘出術と, 眼内レンズ挿入術が実施された イ裂孔原性網膜剥離 ( 甲 B2,3 の 2) 網膜に孔が生じ, この孔から眼球内の水 ( 液化した硝子体 ) が網膜の下へ入り込んで, 網膜が剥離する疾患である いったん網膜剥離が進行しはじめると, 自然治癒の可能性は極めて小さく, 全網膜が剥離して失明に至る 初期には飛蚊症を伴うことが多く, 進行すると剥離部位に相当する視野欠損の形で自覚症状が現れる 一般に, 眼底上方から始まる剥離のほうが進行が速く, 数日か数週間で黄斑部 ( 網膜中央部 ) に至ることが多い 剥離が黄斑部に達すると, 視力が著しく低下する 手術により剥離した網膜を復位させ, 光凝固などにより裂孔を閉鎖する以外に有効な治療法はないが, 手術によっても治癒するとは限らない 特に陳旧化したものでは剥離した網膜に線維膜形成が起こり, 網膜が剥離したままの形で器質化するため, 手術の成功率は著しく低くなる また, 剥離が黄斑部に達する前に手術をしないと, 剥離が治っても良い視力は得られない 2 争点 (1) 被告病院の医師の過失ア白内障手術中に毛様体を損傷した過失の有無イ 9 月 2 日の外来診療時に網膜剥離を見逃した過失の有無ウ 9 月 9 日に網膜剥離を発見した後, 緊急手術を実施しなかった過失の有無エ白内障手術の危険性を説明しなかった過失の有無 (2) 原告の損害 3 当事者の主張 (1) 争点 (1)( 過失 ) についての当事者の主張は, 別紙 争点 (1) に関する当事者の主張 に記載のとおりである (2) 争点 (2)( 損害 ) についての原告の主張ア休業損害 525 万 1394 円原告は, リハビリテーションの専門医として病院に勤務していたが, 右眼視力が低下し視野狭窄も生じた結果, 職務を果たすことができなくなったため, 平成 11 年 3 月 31 日, やむなく勤務先の病院を退職した この間, 被告病院に再入院した平成 10 年 9 月 11 日から退職した平成 11 年 3 月 31 日までの 202 日間は, 休業を余儀なくされた 原告の医師としての平成 10 年の年収は 948 万 9070 円であったから (1 日当たり 2 万 5997 円 ),202 日分の休業損害は 525 万 1394 円である イ逸失利益 6744 万 6411 円原告は, 医師としての収入の道を絶たれ, 労働能力を 100 パーセント喪失した 原告は, 本件の医療事故に遭わなければ, 平均余命に相当する 9 年間, 医師として稼働することができた 年収 948 万 9070 円に 9 年に対応するライプニッツ係数 7.1078 を乗じて中間利息控除をすると, 逸失利益は 6744 万 641 1 円となる ウ慰謝料 2000 万円エ弁護士費用 500 万円第 3 争点に対する判断 1 白内障手術に関する事実経過証拠 ( 甲 B12, 乙 A2,B13, 証人 A, 原告本人 ) によれば, 原告の右眼の白内障手術について, 次の事実が認められる (1) 平成 10 年 8 月 20 日の手術ア A 医師が執刀医となり, 午後 0 時 35 分に局所麻酔を行って, 午後 0 時 45 分, 白内障手術 ( 水晶体嚢外摘出術と眼内レンズ挿入術 ) を開始した まず, 上下直筋の付着部に制御糸を施したうえ, 四面切開という方法で結膜と強角膜を階段状に 4 つに分けて切開し, 水晶体前嚢は輪状に切開して除去した 次いで, 水晶体嚢と水晶体皮質との間に水を注入して両者を分離し, また, 硝子体

脱出などが生じた場合に切開創を閉じるための強角膜前置縫合を施した イ A 医師は, 午後 1 時 10 分ころ, 娩出器を使用して水晶体核を摘出したが, その際, 硝子体圧が高かったために水晶体後嚢が破損して, 硝子体が眼外に脱出してきた そこで, 強角膜前置縫合を結紮して切開創を閉じたうえで, しばらく経過観察をしたが, 硝子体の脱出が進行する徴候は認められなかったので, 手術を続行することとした 強角膜前置縫合を緩めて切開創を開き,MQA スポンジとウェッケル剪刀で脱出した硝子体を切除し, 次に, 眼内レンズを装着する空間を作るために, 硝子体切除器で前部硝子体を切除した ウ A 医師は, 次いで, 洗浄吸引器を使用して水晶体の残存皮質を吸引したが, その吸引時に, 上耳側の毛様体上皮が鋸状縁の部位から剥離した そこで,A 医師は, 眼底検査を行って, 手術助手の C 医師とともに眼底後極部を調べたが, 後極部に網膜剥離は認められなかったので, 手術は続行可能と判断し, 午後 2 時 12 分, 眼内レンズの挿入に取りかかった 眼内レンズは当初は保存した水晶体嚢に挿入する予定であったが, 後嚢が破損して眼内レンズの支持が不可能となったので, 上鼻側毛様溝と下耳側毛様溝の 2 点で支える形で縫着固定した そして, 縮瞳薬オビソートを注入し, 再度, 眼底に網膜剥離が発生していないことを確認したうえで, 清水式吸引器で前房を洗浄し, 切開創から房水の漏出がないことを確認して結膜を縫合し, 後処置をして午後 2 時 37 分に手術を終了した (2) 8 月 30 日の退院までの経過ア A 医師は,8 月 21 日, 原告に対し 昨日の手術が長引いたのは, 水晶体核の娩出後, 残存皮質の吸引時に弱かった毛様体の一部がはがれたことから, 眼底検査をしながら網膜に異常がないことを確認したためです 右眼の鈍痛の原因は, 神経の過敏な毛様体に傷が付いたためです 明日から, ステロイド眼注 ( 朝 夕 ) とオフラ ( 赤外線温罨法器 目を温めて消炎する器具 ) で消炎を図りましょう との説明をした その際, 駆逐性出血があったという説明はしなかった イ 8 月 21 日から 30 日の退院までの間, 原告には, 硝子体出血や硝子体混濁が見られ, フィブリン ( 眼内に炎症が起こった場合に前房あるいは硝子体に生じる炎症性混濁物 ) も認められた 28 日の右眼視力は 0.1 であったが,29 日の眼底検査でも網膜剥離は認められず, 硝子体混濁も徐々に消失していった 2 白内障手術中に毛様体を損傷した過失の有無 ( 争点 (1) ア ) について (1) 被告は, 毛様体の損傷について, 上耳側に向かう長後毛様動脈から不可抗力による駆逐性出血が発生し, その出血に随伴して毛様体に損傷が生じたと主張する また, 証人 A は, まず毛様体に駆逐性出血が発生して眼内の容積が増大し, そのために硝子体が押し上げられ, その押し上げられた硝子体が切開創から脱出しようとして水晶体後嚢を破損し, 水晶体核もそれに押されて自然娩出したと供述する しかし, 手術記録を含む診療録のどこにも, 駆逐性出血が発生したという趣旨の記載はなく ( 乙 A1~3), 原告に対しても駆逐性出血があったという説明はされていない むしろ, 診療録には, 手術記録中に 核娩出 硝子体圧が高く, 後のうが r apture し, 硝子体脱出, 残存皮質吸引 上耳側に毛様体が鋸状縁のところより Detatch という記載があり,8 月 21 日の原告に対する説明内容についても 水晶体核娩出後, 残存皮質吸引時に, 弱かった毛様体が一部はがれ という記載がされているのであって ( 乙 A2), 事実経過がこの記載と異なることを認めるべき理由は見当たらない ( 水晶体核の 娩出 という用語は, 文献や A 医師の陳述書でも 摘出 の意味を含むものとして使用されているし ( 乙 B 8,13,14), Detatch という用語を 剥離を確認した という意味に解釈すべき合理的根拠もない ) したがって, 毛様体の損傷が駆逐性出血に随伴して発生したものと認めることはできない (2) 前記 1 で認定したとおり, 原告に対する白内障手術中には, 水晶体核の摘出時に後嚢が破損して硝子体が脱出してきたり, 残存皮質の吸引時に上耳側の毛様体上皮が鋸状縁の部位から剥離するという異常事態が発生した しかし, これらの異常事態が,A 医師が手術器具の操作を誤るなどしたことによって発生したものと認めるに足りる証拠はなく, 毛様体の損傷について A 医師

の過失を認めることはできない (3) 原告は,A 医師が毛様体の損傷部位の修復をしないで白内障手術を続行したために, 後日の網膜剥離を招いたとも主張する しかし,A 医師は, 硝子体の脱出に対しては, 強角膜前置縫合を結紮して切開創を閉じたうえで経過観察を行い, 硝子体脱出が進行する徴候がないことを確認してから手術を続行し, 毛様体上皮の剥離に対しては, 眼底検査を行って, 後極部に網膜剥離の発生がないことを確認してから再び手術の続行を決定している このように, 白内障手術中に生じた異常事態に対し,A 医師は手術の続行に支障がないことをその都度確認したうえで, 慎重な対応をしているということができるから, 毛様体損傷部位の修復をせずに手術を続行したことを, 過失と評価することはできない 3 網膜剥離の発見と手術に関する事実経過証拠 ( 甲 B12,17,18, 乙 A1,3,B13, 証人 A, 原告本人 ) によれば, 原告の右眼の網膜剥離とそれに対する手術について, 次の事実が認められる (1) 平成 10 年 9 月 2 日の診察 B 医師は,9 月 2 日の診察で, 眼底検査により周辺部に膜様物の立ち上がりがあることを認めたが, 後極側に網膜剥離が生じていないことを確認し, 膜様物については検査をしなかった ( 原告は, 当日の診療録にある 網膜ディタッチメントない との記載 ( 乙 A1) は他の記載と明らかに筆跡が異なると主張する しかし, この部分は, 当日に臨床実習中の医学科学生がB 医師の指示に基づき記載したものと考えられる ( 乙 A4)) この時の原告の右眼視力は0.1であり, 原告は白内障手術の後, 飛蚊症に悩まされているとか, 多重複視の症状があるなどと訴えたが, これに対し,B 医師は 飛蚊症は徐々に吸収されます, 多重複視は術後の角膜等前眼部の浮腫のためで, 炎症症状が治まって浮腫がとれれば, 乱視眼鏡で回復するでしょう という説明をした (2) 9 月 9 日から9 月 13 日までの経過ア A 医師は,9 月 9 日の診察で, 眼底検査の結果, 上耳側周辺部に限局性の網膜剥離を発見した B 医師とC 医師も原告を診察し, 中間周辺部まで及ぶ上耳側胞状剥離と, 下方の巨大裂孔を認めた この時の原告の右眼視力は0.2であった A 医師は, 原告に対し, 網膜剥離が発見されたので手術を実施する必要があるとの説明をし, 翌日の9 月 10 日か11 日に入院することを勧めた しかし, その際, 緊急手術を実施しなければ網膜剥離が進行して視力が著しく低下し, 場合によっては失明の危険もあるというような説明は行わなかった 原告は,9 月 9 日の時点ではまだ網膜剥離の自覚症状である視野欠損がなく,A 医師の説明からは切迫性や緊急性を感じなかったため, 自分の勤務の都合で9 月 12 日 ( 土曜日 ) に入院したいと希望した これに対し,A 医師は, もっと早くしなければ手遅れになるおそれがあるというような反論や説得は行わず,9 月 11 日 ( 金曜日 ) 入院,14 日 ( 月曜日 ) 手術という予定をした イところが,9 月 10 日, 右眼に視野欠損が自覚されてきたため, 原告は被告病院に電話をかけ, 急に病状が悪化したので入院を早めてほしいとの連絡をして, 翌 11 日午前 9 時 30 分に入院した 原告は, 入院時から右眼の飛蚊症と視野欠損を訴えていたが, 当日は医師が後記の日本緑内障学会に出席していたため, 学会が終わってD 医師が帰院した夕方まで, 医師による診察は行われなかった D 医師は, その診察において右眼周辺部に強い網膜剥離を認め, 右網膜剥離, 巨大裂孔網膜剥離, 増殖性硝子体網膜症 ( 増殖組織が硝子体基底部に増殖して網膜を牽引する症状 ) との診断をした この時は, 剥離はまだ黄斑部に達しておらず, 原告の右眼視力は0.4であった ウ 9 月 12 日には, 原告の網膜剥離はさらに悪化し, 黄斑部にも剥離が及んで, 右眼のほぼ全視野について欠損が生じた C 医師は, 原告に対し 白内障手術中に毛様体上皮がはがれて, 硝子体出血が起こり, 硝子体混濁となって見えにくくなった それが落ち着いて右眼視力が 0.4くらいまで回復したが, 今度は毛様体の裂孔から水が入って, 網膜剥離が起こった 本日の段階では, 黄斑部に剥離が生じている 全剥離にならないうちに, 9 月 14 日に硝子体手術をする予定である という説明をした 硝子体手術後の目標視力は0.4 程度であった 原告の網膜剥離が黄斑部に達したことは,C 医師からA 医師にも伝えられた

が, 両医師とも, 予定どおり9 月 14 日に手術を実施すれば視機能を回復させることができると判断し, 緊急手術実施の決定をしなかった エ 9 月 13 日には, 右眼に上方 2 分の1ほどの胞状網膜剥離と黄斑部の剥離, 下方 2 分の1ほどの巨大裂孔が認められた 原告は,C 医師から網膜剥離に対する硝子体手術の内容などについての説明を受けたうえで, 手術の実施に同意をした (3) 網膜剥離に対する手術 C 医師が執刀医となり,9 月 14 日午前 9 時 16 分から午後 0 時 40 分まで, 網膜剥離に対する硝子体手術が実施された 手術内容は, 硝子体切除, パーフルオロカーボンの注入, 眼内レーザー光凝固, 輪状締結,SF6ガスの注入などにより, 網膜の復位と裂孔の閉鎖を図るというものであった なお,9 月 11 日 ( 金曜日 ) から13 日 ( 日曜日 ) までの間, 被告病院と道路を挟んで斜め向かいに位置する所沢市民文化センターにおいて, 日本緑内障学会が開催された 主催者は被告病院の眼科学教室であり,A 医師がその責任者となっていた A,B,C,Dの各医師は, 開催期間中を通じて, いずれもこの学会に出席していた 4 9 月 2 日の外来診療時に網膜剥離を見逃した過失の有無 ( 争点 (1) イ ) について (1) B 医師は,9 月 2 日の診察で, 周辺部に膜様物の立ち上がりがあることを認めたが, その膜様物に対する検査を実施しなかった 飛蚊症と多重複視の訴えがあり, 視力の低下 (0.1) も見られたが, この時点で網膜剥離の発生を疑わなかったものと考えられる しかし, 多重複視を網膜剥離の症状と認めるべき証拠はない 飛蚊症は網膜剥離の初期症状の1つに数えられるが, 硝子体出血や水晶体皮質の混入などによる硝子体混濁も飛蚊症の原因となる ( 甲 B13) 本件においては, 白内障手術中に水晶体後嚢の破損が起こり, 硝子体出血や硝子体混濁が発生して, 原告は手術の直後から飛蚊症の症状を訴えていたのであるから ( 甲 B12), この時点でもその飛蚊症が残存していると考える余地があった したがって,9 月 2 日の時点で直ちに網膜剥離の発生を疑うことは困難であったというべきであり,B 医師に網膜剥離を見逃した過失があったということはできない (2) E 医師の陳述書には B 医師は正常な眼底には存在しないはずの膜様物を認めたのであるから, その異常所見の内容や実態を徹底的に検査すべきであった, 硝子体脱出の場合には後極側の網膜剥離ではなく, 周辺部の網膜の裂孔や毛様体と網膜の間の解離が生じ, 網膜剥離に進行する可能性が考えられるにもかかわらず, 周辺部の状態について検査所見がない理由が不明である という趣旨の記載がある ( 甲 B13) しかし, 膜様物の立ち上がりが網膜剥離を疑わせる所見であるということはできないし, そのほかに,9 月 2 日の時点で網膜剥離を疑わせる症状や徴候があったものと認めるべき証拠もない 5 9 月 9 日に網膜剥離を発見した後, 緊急手術を実施しなかった過失の有無 ( 争点 (1) ウ ) について (1) 9 月 9 日の事実経過は前記 3で認定したとおりであり,A 医師が原告に対し, 当日直ちに入院して翌 10 日に緊急手術を受けるよう指示をしたとは認めることができない ( 仮にいったんはそのように告げたとしても, 原告が勤務の都合で入院を遅らせることを希望したのに対して, すぐに11 日入院,14 日手術という予定を立てているのであるから, それは1つの提案をしたというにすぎない ) しかし, この時点では, 原告の右眼視力は0.2で, 視野欠損などの自覚症状はなく, 剥離は上耳側周辺部に限局されて黄斑部に達していたわけでもなかったから, 原告の右眼に生じた網膜剥離は, まだ重症には至っていなかったと考えられる したがって, 一般に眼底上方から始まる剥離の進行は速いという医学的知見を考慮しても,A 医師が9 月 11 日に入院させて14 日に手術を実施すると予定したことには, 過失があるとはいえない (2) しかし, その後, 原告の症状は急速に悪化し,9 月 12 日には, 網膜剥離が黄斑部に達した 裂孔原性網膜剥離は, いったん発生すると自然に治癒する可能性は極めて小さく, 放置すれば剥離が黄斑部に達して視力の著しい低下を招き, 失明に至ることもある疾患であり, 陳旧化すると剥離した網膜に線維膜が形成されて, 網膜が剥離したままの形で器質化するおそれもある したがって, 症状が急速に悪化した場合には, 緊急手術を実施して, 剥離した網膜を早期に復位させる必要がある

そうすると, 被告病院の医師としては, 原告の症状が急速に悪化して網膜剥離が黄斑部に達したことが判明した9 月 12 日の時点では,14 日に予定していた手術を繰り上げて, 直ちに緊急手術を実施すべき義務があったといわなければならない 良い視力の回復が得られるようにするためには, 本来なら, 剥離が黄斑部に達する前に手術をすべきものであった ところが,C 医師やA 医師は, 原告の網膜剥離が黄斑部に達したことを認識しながら, 直ちに緊急手術を実施せず,9 月 14 日まで網膜剥離の進行を放置した したがって, この点において, 被告病院の医師には過失が認められる (3) C 医師やA 医師らは,9 月 11 日から13 日までの間, 被告病院眼科学教室主催の学会に出席していたが, この学会は被告病院のすぐ近くの会場で開催されていたから, 被告病院へ戻って緊急手術を実施することも可能であったと考えられる 仮に学会への出席を優先するのであれば, 当直医に執刀させるなどの応急措置を講じることが, 当然の義務である 被告は, その時点で原告を転院させるとかえって症状の悪化を招く危険があったと主張するが, そうであればなおさら, 被告病院において応急措置を講じる必要があった (4) 原告の網膜剥離の進行状況を考慮すると, これに対する手術の実施が9 月 14 日まで遅れた結果, 原告の右眼視力は著しく低下し, 網膜剥離後の網膜変性により回復不能になったと認めることができる したがって, 医療契約上の債務不履行又は過失による不法行為の使用者責任に基づき, 被告には, 原告に生じた損害を賠償すべき義務がある 6 原告の損害 ( 争点 (2)) について (1) 休業損害原告は, 財団法人 F 財団が設置するG 病院に勤務し, 平成 11 年 3 月 31 日に退職するまでその名誉院長の地位にあった ( 甲 B12, 乙 A1,3, 弁論の全趣旨 ) そして, 原告は, 平成 10 年中にG 病院から1043 万 8043 円の給与を得ており ( 甲 C1), この給与が休業によって減額されたとの主張はない したがって, 原告は退職時まで給与の支給を受けていたと考えられ, 休業による損害の発生を認めるべき証拠はない (2) 逸失利益 1684 万 2179 円ア原告の右眼視力は, 退院から5 日後の平成 10 年 10 月 7 日が0.1, 被告病院で最後に受診した平成 11 年 1 月 13 日も0. 1であったが, 平成 12 年 5 月 22 日には0.04まで低下し, 視野狭窄も認められた 原告の視力低下, 視野狭窄はその後も回復せず, むしろ進行しており, 矯正も不能と診断されている 原告は, 平成 14 年 11 月 21 日, 東京都から視野障害により身体障害程度等級 2 級の認定を受けた そうすると, 原告の後遺障害は, 平成 10 年 9 月から平成 12 年 5 月までの約 2 年間は自賠法施行令別表に定める後遺障害等級 10 級の 1 眼の視力が0.1 以下になったもの に該当し, その後は9 級の 1 眼の視力が0.06 以下になったもの と1 3 級の 1 眼に視野狭窄を残すもの ( 併合 8 級 ) に該当すると考えられる イ平成 10 年 9 月当時, 原告は満 77 歳であり, 平成 10 年簡易生命表によると平均余命は9.26 年であったから, 就労可能年数は5 年と考える 労働能力喪失率は, 後遺障害等級に従って, 初めの2 年は27パーセント, その後の3 年は45パーセントと認めるのが相当である そうすると, 原告の逸失利益は, 次のとおり, 基礎収入を1043 万 8043 円とし, ライプニッツ係数により中間利息を控除して,1684 万 2179 円と算定される 10,438,043 0.27 1.8594 + 10,438,043 0.45 (4.3294-1.8594) = 16,842,179 (3) 慰謝料 800 万円原告の視力障害や視野障害の程度, 高齢ではあったが現役の医師として勤務していたことなどを考慮すると, 本件について原告が被った精神的苦痛を慰謝するに足りる額は,800 万円と認めるのが相当である (4) 弁護士費用 250 万円事案の内容, 訴訟活動の難易度, 認容額などを考慮し, 相当因果関係のある損害として, 弁護士費用 250 万円を認める 第 4 結論

以上によれば, 原告の請求は, 被告に対し, 損害賠償金 2734 万 2179 円と, これに対する不法行為後の平成 10 年 9 月 14 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある 仮執行宣言は, 必要がないから付さない 東京地方裁判所民事第 35 部 裁判長裁判官片山良広 裁判官松田典浩 裁判官釜田ゆり ( 別紙 ) 争点 (1) に関する当事者の主張 原 告 被 告 ア白内障手術中に毛様体を損傷した過失の有無 1 A 医師は, 白内障手術中, 水晶体の核をし, 水晶体核の摘 1 A 医師が強角膜を切開 摘出する際か, 洗浄吸引器を用いて水晶体の耳側部に向かう長後 出を行おうとした際, 上 残存皮質を吸引する際に, 手術器具を使用すが発生し, その出血 毛様動脈から駆逐性出血 る力加減を誤って水晶体後嚢を破るなどしてした に随伴して毛様体が損傷 毛様体を損傷し, あるいは, 手術器具などに長後毛様動脈があ 駆逐性出血は, 原告の より毛様体を直接損傷した しかも, その修化していたところ らかじめ壊死などで脆弱 復を十分に行わなかったために, 後日の網膜影響で鬱血が生じた へ, 原告の高血圧などの 剥離を招いた たことにより発生し ため, 壊死血管が破綻し したがって,A 医師には, 手術中に毛様うな出血は極めてま たと考えられる このよ 体を損傷した過失がある 力により発生したも れな症例であり, 不可抗 することはできない のであって, これを予見 2 この点につき,A 医師は, 手術後に, 原原告に対し, 自ら 2 A 医師は, 手術後に, 告に対し, 水晶体の残存皮質を吸引する際にったという説明はし のミスで水晶体後嚢を破 自らのミスで水晶体後嚢を破ってしまい, そ ていない の結果毛様体から出血を引き起こしたとの説 剥離 という記 手術記録に原告指摘の 明をしている が,A 医師の認識では, 載があることは認める

また, 白内障手術の手術記録には 残存 この部分は 剥離を確認 した という意味で 皮質吸引 上耳側に毛様体が鋸状縁のところ ある より剥離 との記載がある 一方, すべての 診療録中に, 駆逐性出血が生じたという記載 はない 3 仮にA 医師が毛様体を損傷したのではなには, まず保存的 3 毛様体が損傷した場合 いとしても,A 医師には, 損傷が生じたことり, その後に網膜剥 に消炎に努めるべきであ を認識した時点で, 手術を中止して毛様体の化が現れた場合に 離の徴候など何らかの変 修復をし, 損傷部位の回復を待つべき義務が置を検討することに は, その変化に応じた措 あった ところが,A 医師は, 損傷部位を放 なる 置したまま手術を続行し, 後日の網膜剥離を行って脈絡膜剥離 A 医師は, 眼底検査を 招いた どがないことを確認 や網膜裂孔, 網膜剥離な したがって,A 医師には, 毛様体に損傷し, 手術直後から消炎 したうえで手術を続行 が生じた後, その修復をしないで手術を続行っている のための適切な措置を行 した過失がある イ 9 月 2 日の外来診療時に網膜剥離を見逃した過失の有無 1 原告は,9 月 2 日,B 医師の診察を受けの診察の際に, 原 1 診療録には,9 月 2 日 た際, 網膜剥離の初期症状である飛蚊症のほ訴えたとの記載は存 告が飛蚊症などの症状を か, 視力の低下, 多重複視の症状を訴えた を網膜剥離の初期症 在しない また, 飛蚊症 したがって,B 医師には, 網膜剥離を疑い, ないから, 原告主張 状と限定することはでき 直ちに検査をしてこれを発見すべき義務があも, 網膜剥離を疑って の訴えがあったとして った ったとはいえない 早期発見をする義務があ ところが,B 医師は 飛蚊症は徐々に吸において, 原告の B 医師は, 当日の診察 収されます, 多重複視は術後の角膜等前眼部細隙灯顕微鏡検 屈折検査, 視力検査, 前 眼部の浮腫のためで, 炎症症状が治まって浮圧検査を行った そ 査, 眼底倒像鏡検査, 眼 腫がとれれば, 乱視眼鏡で回復するでしょう 結果, 上耳側周辺部 して, 眼底倒像鏡検査の と述べただけで, それ以上の検査を行わなか認めたが, 後極部網 に膜様物の立ち上がりを った ので, 原告に対し, 膜に剥離は認めなかった したがって,B 医師には, 網膜剥離を見の自覚時の早期来院 できるだけの安静と異常

逃した過失がある を指示して,1 週間後の 受診の予約を入れて なお,B 医師が, 原告に対し, できるだ訴えに対して検査も いるのであって, 原告の けの安静と異常の自覚時の早期来院を指示しい せずに放置したことはな たことはない 2 この日の診療録には 網膜ディタッチメィタッチメントな 2 診療録にある 網膜デ ントない との記載があるが, その筆跡は同臨床実習をしていた い との記載は, 当日に 記載位置も不自然である ほかにも目的不明従って記載したもの 医師の所見をその指示に なスタンプが 網膜ディタッチメントない 跡が異なっても不自 である したがって, 筆 という記載のすぐ左に押されている 当日, 然ではない 原告の診察をしたのはB 医師だけであり, 研 修医なども同席していなかったから, この部 分は診察時に記載されたものとは考えられな い そもそも, 原告の硝子体はまだ相当混濁 していたはずであり, 網膜ディタッチメン トない と言い切ることが可能な状態ではな かった ウ 9 月 9 日に網膜剥離を発見した後, 緊急手術を実施しなかった過失の有無 1 A 医師は,9 月 9 日, 網膜剥離を発見しは学会の関係で当 1 A 医師は,9 月 11 日 たにもかかわらず, 原告に対し, これが緊急になるので, 原告に 直医を除き眼科医が不在 事態であることの説明を行わず, 直ちに入院して翌 10 日に緊急 対し,9 日当日に入院を するよう指示もしなかった そのため, 原告た 手術を受けるよう指示し の入院が2 日も遅れた さらに, 入院翌日のの都合で12 日の ところが, 原告が仕事 9 月 12 日の朝には, 視野欠損範囲が鼻側下医師は, 原告が医師 入院を希望したので,A 部から急速に拡大して, 一刻を争う状況にな自らの患者を優先し として自分の身体よりも った 11 日の入院,14 たものと理解して,9 月 ところが, 被告病院では, スタッフがそたのであり, そのと 日の手術という計画をし ろわないとか, 学会のために医師が不在である おり手術は実施されてい るなどとして, 原告の訴えを無視し, 緊急手

術の実施を怠った 学会は被告病院のすぐ近 くで開催されていたから, 医師を呼び戻すこ とも可能であり,9 月 12 日には緊急手術が 実施されなければならなかったのに,14 日 まで実施されなかった 2 仮に9 月 14 日までの間, 被告病院の眼医師は,9 月 11 2 原告の受持医であるD 科医が不在であったのであれば, 転院措置を院に帰院して原告の 日の学会終了後, 被告病 とるなどして, 原告が適切な治療を受けられ巨大裂孔網膜剥離, 診察をし, 右網膜剥離, るように配慮すべきであった 診断をした この状 増殖性硝子体網膜症との ところが, 被告病院では, 原告を自らのに伴う負荷で症状の 態で転院させると, 移動 病院に入院させたまま, 緊急手術を実施せずし, 転院させたとし 悪化を招く危険があった に放置し, 原告の視力回復の機会を永久に失術が実施できたとは ても, 転院先で即時に手 わせた させる義務があった 考えられないから, 転院 とはいえない に手術が実施され そもそも,9 月 14 日 復不可能になったの たために原告の視力が回 前に手術が実施され か, また,9 月 14 日以 復可能であったのか ていれば原告の視力が回 は, 明らかでない エ白内障手術の危険性を説明しなかった過失の有無 1 原告は, 左眼に緑内障による視野狭窄が術であり, 手術に 1 白内障手術は基本的手 あったので, 右眼の白内障の手術が失敗したの危険性について手 伴って起こりうるすべて ら両眼とも不自由になるとの危惧感を抱いてい また, 手術方法 術前に説明する義務はな いた したがって, 被告病院には, 原告が手であるから, 合理的 の選択は医師の裁量事項 術を受けるかどうかを適切に判断できるよう説明義務違反には当 な範囲を逸脱しない限り に, 事前に手術に伴う危険の存在や, 選択可 たらない 能な治療方法とその利害得失, 手術の予後な成 10 年 6 月 3 日 A 医師とB 医師は, 平 どについて十分な説明をすべき義務があっ内障手術の適応があ に原告を診察した際, 白 た される合併症や手術 ること, その術式, 想定

ところが,A 医師は, 原告に対し, 白内 の予後などについて説明 を行った また,A 障手術の危険性について, 手術前に 200 内障患者の皆様へ 医師は, 原告に対し 白 分の1から800 分の1の確率でレンズを落て, よく読んでおくよ という小冊子を交付し とすなどの失敗をすることがある と説明し うに指示をしている ただけで, 合併症などの危険については何も 1から800 分の A 医師が 200 分の 説明をしなかった 交付を受けた 白内障患具体的数字をあげて 1の確率 というような 者の皆様へ という小冊子にも 白内障手術 説明したことはない はごく稀にですが, 手術後に合併症を起す場内障手術について 原告は医師であり, 白 合があります との記載があるのみであった 有している 仮に説 の説明を理解する能力を 原告がその他の医師から白内障手術につ得がいくまで説明を 明が不十分であれば, 納 いて説明を受けたことはない が不十分であったの 求めたはずであり, 説明 のは不自然である に手術を決意したという 2 原告には, 白内障手術の選択可能な術式術も水晶体嚢外摘 2 超音波水晶体乳化吸引 の1つとして, 駆逐性出血などの術中合併症摘出術の説明は原告 出術の一種であり, 嚢外 の危険性が減少するとされている超音波水晶されている に交付した小冊子に記載 体乳化吸引術の手術適応があったにもかかわ術式を選択するか 嚢外摘出術のうちどの らず,A 医師は, 原告に対してその説明を行から, 術式について は医師の裁量事項である わなかった しなかったからとい それ以上の詳しい説明を いえない って, 説明義務違反とは