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悪性リンパ腫 1. 悪性リンパ腫の診断法悪性リンパ腫はリンパ球が癌化したものと考えられており, その由来から多くは T 細胞性あるいは B 細胞性と分類できる 悪性リンパ腫は化学療法や放射線療法の発達により治癒することが可能となってきた疾患であるが, その組織型により予後や化学療法への反応性が大きく異なるため, 個々の悪性リンパ腫の診断を正確に行うことは大変重要なこととなっている 正確な組織型を知る上で, 表面マーカー検査 染色体検査 遺伝子検査は重要な検査であり, これらの検査の正確な理解は臨床上も必須の知識である また, リンパ節は反応性に腫脹することも多く ( 感染症や膠原病等 ), 時として, 悪性リンパ腫との鑑別に苦慮する 悪性腫瘍と良性 ( 反応性 ) リンパ節腫脹の鑑別は最も重要である さらに, 悪性リンパ腫は疾患の進展の程度 ( 病期 ) を正確に把握することも治療法を選択する上で重要である 図 1 血液がんの分類 文光堂血液疾患診療マニュアルから引用 図 2 血液がんの分化と腫瘍正常の造血細胞の各段階で癌化する 文光堂血液疾患診療マニュアルから引用

1. 悪性リンパ腫の診断法悪性リンパ腫には治療への反応性や予後が異なる多くの組織型が含まれており, これらを正確に分類することは, 治療計画を立てる上でも大変重要である 1) リンパ節生検時の検査最も基本的診断手技の一つである. 免疫染色を行うことにより細胞の由来 (T 細胞性,B 細胞性 ) を知ることができる 時として反応性病変 ( 良性 ) と悪性リンパ腫の鑑別が困難な例がある 細胞の微細な構造を知ることができる 表面マーカー検査細胞の由来を知ることができる. また, その発現パターンにより組織型が推測できる場合がある染色体検査 (G バンド法 ) リンパ腫では多くの組織型や治療感受性あるいは予後と相関の高い特異的な染色体異常が知られている 遺伝子検査 ( サザン法 ) リンパ腫細胞は B 細胞由来であれば免疫グロブリン遺伝子の再構成を,T 細胞性であれば T 細胞レセプター遺伝子の再構成を生じており, サザン法で再構成バンドを認める これらの再構成バンドの検出はその細胞集団がこの細胞から増殖してきたこと ( モノクロナリティー ) を意味しており, 多くの場合, 癌組織であることを示唆する この検査は良性 ( 反応性 ) と悪性 ( 悪性リンパ腫 ) の鑑別に大変有用である 図 3 悪性リンパ腫の頻度 B 細胞腫瘍が多く DLBCL が最も多い から引用

2) 病期決定のための検査 悪性リンパ腫は腫瘍細胞の広がりの程度により第 I~IV 期に分類される 悪性リンパ腫は病期によって予後が異なり, 治療法も異なる場合があり, 正確な病期を決定する検査は重要である CT 検査 ( 頭部, 頸部, 胸部, 腹部, 骨盤部 ) 表在リンパ節だけでなく深部リンパ節 ( 縦隔 肺門リンパ節, 腹腔リンパ節等 ) の腫脹が検出できる. 理学的所見では検出できない肝臓 脾臓への浸潤や軽度の肝脾腫を検出できる 超音波検査 PET-CT リンパ腫の存在部位にブドウ糖の取り込みを認める 炎症部位にも取り込みを認めるため, 炎症との鑑別が重要になることがある 骨髄検査 骨髄浸潤の有無を検出する. 骨髄穿刺のみでなく骨髄生検も行う必要がある 髄液検査 髄膜浸潤を検出できる. 髄膜浸潤は頭部 CT や頭部 MRI では検出できないことがある. また, 髄膜浸潤を認める症例には髄腔内への抗癌剤投与も行う 2. 悪性リンパ腫の種類悪性リンパ腫は大きくホジキン病 (HL) と非ホジキン悪性リンパ腫 (NHL) の 2 群に分類される ホジキン病は 4 種のサブタイプに分けられる ホジキン病は大きな核小体を有するホジキン細胞や二核の Reed-Sternberg(R-S) 細胞の出現が特徴的で, それ以外の浸潤しているリンパ球には異型性を認めない ホジキン細胞や R-S 細胞は CD15,CD30 が陽性となることが多い. ホジキン病は欧米では頻度の高い悪性リンパ腫であるが, 日本では欧米に比べて頻度が低い ホジキン病は非ホジキン悪性リンパ腫に比べて一般に予後良好である 非ホジキン悪性リンパ腫は免疫学的特徴から B 細胞性と T 細胞性に分類される B 細胞性悪性リンパ腫では表面マーカー上 CD19,CD20 が陽性となることが多い また T 細胞性リンパ腫では CD2,CD3,CD5,CD4 または CD8 が陽性となることが多い 日本ではび漫性大細胞型 B 細胞リンパ腫 (DLBCL) の頻度が高い また日本では胃に原発する悪性リンパ腫が多く, その多くは MALT リンパ腫と呼ばれる特殊なリンパ腫と考えられている 胃の MALT リンパ腫は胃のピロリ菌感

染などによる慢性炎症が発症の原因と考えられており, ピロリ菌の除菌のみでリンパ腫が消失する場合がある 濾胞構造をとる濾胞性リンパ腫は B 細胞由来で表面マーカー上 CD10 が陽性のことが多く,t(14 ; 18) という特徴的な染色体異常を持つものが多い 癌遺伝子 bcl2 の発現異常が癌化に関与していると考えられている 一般に治療抵抗性で, 標準的抗癌剤治療では治癒させるのは困難である Burkitt( バーキット ) 型リンパ腫はアフリカに多く認められ, 特徴的な t(8 ; 14) という染色体異常を有する 癌遺伝子 c-myc の過剰発現が癌化に関与していると考えられている. 日本での頻度は低い C-MYC と BCL2 または BCL6 または BCL10 などの転座があると DHL と呼ばれ予後不良である 日本では HTLV-I ウイルス感染により発症する成人 T 細胞白血病 / リンパ腫 (adult T cell leukemia/lymphoma;atl) の頻度が高い 感染経路は主に母乳を介した母子感染と考えられている 発症すると難治性で, 同種造血幹細胞移植療法がおこなわれている 図 4 悪性リンパ腫の進行速度低悪性度は進行がよっくりで 高悪性度は速い から引用

表 1 悪性リンパ腫の種類 (WHO 4 版の分類 ) 非ホジキンリンパ腫 (NHL) ホジキンリンパ腫 (HL) 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

表 2 非ホジキンリンパ腫 (NHL) の悪性度悪性度別悪性リンパ腫の分類 から引用 3. 悪性リンパ腫の予後予測と治療悪性リンパ腫はその組織型や染色体異常, 遺伝子異常により予後や化学療法への反応性が推測可能である 最近の各種検査法の進歩により前述した組織型以外にも多くの組織型を特徴的な検査結果のパターンから分類することが可能となった 以下に最近注目されている新たな組織型と表面マーカー, 染色体異常および遺伝子異常と予後について述べる (1) びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫 (DLBCL) DLBCL は B 細胞表面マーカーである CD20 抗原を約 95% 発現している 抗 CD20 抗体が反応すると CD20 抗原陽性 DLBCL が免疫系によって殺傷される 図 5 リツキシマブ ( 商品名リツキサン ) 抗 CD20(B 細胞 ) 抗体 から引用

図 6 リツキシマブ ( 商品名リツキサン ) の作用機序 ADCC(NK 細胞 ) 活性と ( 補体 ) CDC 活性の両方により CD20 陽性 B 細胞腫瘍が殺傷される から引用 表 3 DLBCL の標準治療となった R-CHOP 療法 から引用

図 7 従来の IPI の生存曲線 ( リツキシマブ R の上乗せ効果 ) CHOP vs R-CHOP 図 8 R-IPI R-CHOP 療法の成績 R-IPI とは DLBCL では 1 年齢 (61 歳以上 ) 2 病期 Ⅲ 以上 ( 横隔膜の上下に病変ある ) 3 PS2 以上 ( 日中 50% 以上起きている ) 4 リンパ節外の病変 2 個以上 5 高 LDH 血症 ( 腫瘍の増殖速度速い ) から引用 上記 5 項目から予後推定が可能 (Rivesed-International Prognostic Index)

図 9 改良型国際予後因子 (R-IPI) による生存曲線 かなり改善した 20 人中 19 人が生存 合計 0 個で Very good(5 年生存率約 95%) 5 人中 4 人が生存 合計 1-2 個で Good (5 年生存率約 80%) 2 人中 1 人以上が生存 合計 3-5 個で Poor(5 年生存率約 55%) から引用 最近では NCCN-IPI が考案され R-CHOP 療法でも R-IPI よりも予後不良群が同定可能となった 最新国際予後因子 NCCN-IPI 2013

表 4 図 10 最新の国際予後因子 NCNN-IPI Monthly Hema Topic 2014 年 1 月中外製薬より引用表面抗原 CD20 に対する抗体を用いた抗体療法として R-CHOP は標準治療である 治療法としては R-CHOP 後 再発例には, 抗癌剤の効果が確認されれば 大量抗癌剤投与後自家末梢血造血幹細胞移植療法が施行され治療成績が向上した 大量抗癌剤投与後自家末梢血造血幹細胞移植療法でも難治性の悪性リンパ腫に対しては同種 ( 兄弟間あるいは非血縁者間 ) 骨髄移植や, また骨髄移植時の抗癌剤の投与量を大幅に減らした骨髄非破壊骨髄移植 ( ミニ移植 ) も試みられ始めている

DLBCL の治療方針は 限局期と進行期と再発期で異なる 図 11 限局期 DLBCL の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 12 進行期 DLBCL の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 13 再発期 再燃期 DLBCL 二次治療のフローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

参考 ゲムシタビン (gemcitabine) とは 抗癌剤として用いられる含フッ素ヌクレオシドの一種である シチジンのリボース環の 2' 位がフッ素 2 個で置換された構造を持つ イーライリリー アンド カンパニーが開発し ジェムザール (Gemzar 略号 :GEM) という商品名で塩酸塩 ( 塩酸ゲムシタビン ) を上市している ジェムザールの性状は白色 ~ 微黄白色の結晶性の粉末である そこで これら原料に似た構造の化合物を投与すれば 遺伝子合成の過程に間違えて組み込まれ 結果として DNA 合成を抑制できることが予想できる このような考えにより シトシン (C) に糖が結合した構造 に似せることで DNA 合成を抑える薬がゲムシタビン ( 商品名 : ジェムザール ) である DNA の合成には DNA ポリメラーゼと呼ばれる酵素が必要になる この酵素がシトシンを取り込み DNA 鎖を伸ばしていく しかし ゲムシタビンを投与すると DNA ポリメラーゼが誤ってゲムシタビンを取り込んでしまう これが がん細胞の増殖抑制に繋がる

特殊な DLBCL として 7 種類が代表的である 図 14 CD5 陽性 DLBCL は予後不良である 血液腫瘍科から引用 図 15 加齢に伴う EB ウイルス陽性 DLBCL 高齢者の EBV 陽性リンパ腫は DLBCL が増加し 予後も不良です

図 16 EBV 陽性 DLBCL は中高齢者に多い 図 17 EBV 陽性 DLBCL の方が予後悪い

表 5 節外性リンパ腫の臓器別発生頻度 2 中枢神経原発 DLBCL 中枢神経系原発悪性リンパ腫 (primary central nervous system lymphoma; PCNSL) は, 高齢者や免疫不全状態者に好発し, 近年増加傾向にある 全国集計では原発性脳腫瘍の 2.9% を占める 中高年に多く 50 歳以上が 80% を占める 本邦での現在の標準治療は,high-dose methotrexate(hd-mtx) 療法とそれに続く全脳照射 (whole brain radiotherapy; WBRT) とされ, これらにより治療成績の向上が認められている 現在の PCNSL に対する標準的治療は HD-MTX (3.5 g/m2) を含む化学療法とそれに続く全脳照射 ( 少なくとも 30 Gy/15 17 回 ) である これにより腫瘍縮小率は 80 90% にみられ,MST が 40 か月前後に延長することが示された. しかし全身性悪性リンパ腫の治療成績と比較すると, 依然として予後不良と言わざるをえず, 有害事象に遅発性神経毒性を高率に認め, その結果として機能的側面にも問題は多い 背景にある高齢化, 臓器移植や acquired immune deficiency syndrome (AIDS) 患者の増加とともに, 今後も増加することが予測され, さらなる有効な治療法の確立が早急に必要とされる腫瘍である 一方で メトトレキセート大量療法後の遅発性白質脳症 ( 精神症状 けいれん 進行性痴呆などを呈する ) が 60 歳以上では高頻度に起きることなども分かってきており 高齢者での放射線照射量を変えるなどの工夫がなされるようになってきている 表 6 中枢神経原発リンパ腫 378 例の病変部位とその頻度前頭葉に多い 血液腫瘍科から引用

図 18 中枢神経原発 DLBCL 抗癌剤メソトレキセートが有効だと予後が改善される 大阪大学脳神経外科の報告から引用 図 19 中枢神経原発 DLBCL IELSG 予後 sore 悪いと予後不良である

表 7 CNS 原発 DLBCL 予後因子 (IELSG 予後 sore) 年齢 PS( 元気度 ) 深部病変高 LDH 血症髄液蛋白高濃度の 5 つ

図 20 予後因子の層別化 (IELSG 予後 sore) 図 21 部位別 DLBCL の中枢転移のリスク 節外病変は予後不良

DLBXL の CNS 再発の 7 つの予後不良因子は 文献の総説 (BJH, 2012, 159, 39 49) によると節外病変 60 歳以上 LDH 高値 IPI 高リスク PS2 以上 睾丸原発 Ⅳ 期である 1 下腿原発 DLBCL はリツキサンで予後改善する. 図 22 下腿原発 DLBCL 成績 2 睾丸原発 DLBCL 非ホジキンリンパ腫の 1~2% 節外性リンパ腫の 4% を占める 精巣腫瘍の 1~9% に過ぎない 多くが DLBCL である 遠隔進展 再発が多いため十分な全身的化学療法が必要である 対側精巣再発と中枢神経系再発が多いことが知られており 多剤併用化学療法に加えて中枢神経系再発予防治療と対側精巣への放射線療法組み合わせた治療が推奨されている

図 23 精巣原発 DLBCL は R-CHOP が良い 図 24 精巣原発 DLBCL の 3 人に 1 人は 10 年間再発しやすい

3 縦隔原発 DLBCL 縦隔 : 胸膜によって左右の肺の間に隔てられた部分 心臓 大血管 気管 食道 胸腺 リンパ節 神経節などの臓器が存在する 縦隔腫瘍のうち 悪性リンパ腫は約 5% を占める 前縦隔巨大腫瘤などを呈し 急速に増大し呼吸困難 咳嗽 嚥下障害 上大静脈症候群を認めることがある 悪性リンパ腫としては DLBCL が多い 18-fluoro-deoxyglucose-positron emission tomography (FDG-PET) 検査は以前より存在したが 同一寝台にて CT スキャンの施行が可能となり PET と CT との融合像 (FDG-PET/CT) が安定して得られるようになってから急速に普及してきた FDG-PET 検査において悪性リンパ腫の多くの組織型が集積増加を示すことから その病期診断および治療終了後の効果判定に取り入れられるようになっている 悪性リンパ腫の臨床試験における治療効果判定の国際ワークショップ基準が 2007 年に改訂され DLBCL と Hodgkin リンパ腫について 残存腫瘍径を問わず FDG-PET 陽性病変が消失した場合には CR と判断することを推奨している 図 25 Ga-SPECT 妖精 陰性例の生存曲線の比較 PET-CT がより望ましい 血液腫瘍科から引用

4 CD20 陰性 DLBCL は予後不良である 図 26 CD20 陰性 CD19 陽性 DLBCL は リツキサンが反応悪いので予後不良 5 濾胞性リンパ腫からの DLBCL 転化は予後不良です 図 27 濾胞性リンパ腫 (FL) 性大細胞 B 細胞リンパ腫 (DLBCL) に転化すると予後不良

6 ダブルヒットリンパ腫 double-hit lymphoma (DHL) MYC と BCL2 の転座を両方持っている DLBCL 頻度は DLBCL 全体の 5 % 程度 WHO 分類第 4 版 (2008 年版 ) を見直してみると MYC rearrangement がある DLBCL を取り立てて "B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between diffuse large B-cell lymphoma and Burkitt lymphoma" と分類した項目はあるものの "double-hit" という単語は分類名にも索引にも出てこない ちなみに同書によると DLBCL における MYC と BCL2 の陽性率はそれぞれ 10 % 20-30 % とのことである 図 28 ダブルヒットリンパ腫 (DHL) の形態と転座の関係

図 29 ダブルヒットリンパ腫 (DHL) の予後 図 31 ダブルヒットリンパ腫 (DHL) 形態が DLBCL が予後が良い

図 32 DHL BCL6/MYC リンパ腫は予後不良 7 血管内 DLBCL(IVL) 臨床像から 2 つに分類される Western form (classical IVLBL) - 中枢神経症状を呈するもの 皮膚浸潤も多い Asian Variant - 中枢神経症状や皮膚浸潤が少なく 血球貪食症候群による汎血球減少と肝脾腫を呈するもの [5] なお Western, Asian と名がついているのは もちろん西欧で多いものと東アジアで多いものによるものだが あくまで多いだけで どちらの地域でも両方みられる 本疾患は他の悪性リンパ腫とは症状が著しくことなる まずリンパ節は腫大しないことがほとんどである ( 腫瘍細胞がリンパ節以外の血管内で増殖するため ) このため悪性リンパ腫として診断されにくい 悪性腫瘍の一般的症状として 全身倦怠感 食欲不振 体重低下を示す 多くの場合発熱し 不明熱として診断される 全身の臓器に浸潤しうるため 浸潤した臓器の機能不全を起こす ( 肺であれば呼吸困難 肝臓であれば肝機能障害 など ) 特に中枢神経に病変が生じた場合の中枢神経症状 ( 麻痺 失語症 認知症症状など多彩 ) が特徴的である 一方 上述の通り Asian variant では中枢神経症状が少なく 初期より血球貪食症候群を起こし高熱と汎血球減少を主たる症状とする 自然軽快した報告も無くはないが 多くの場合症状の急激な進行で多臓器不全に至る 組織生検により 血管内のリンパ腫細胞の増殖像を認めるのが確定的診断になる 骨髄の血管内にリンパ腫細胞を認めれば速やかに診断し得るが 認められなければ皮膚生検も行われる しかし 内臓の生検を行わなければ診断できない症例も少なくない この場合は生検部位を決めるのに FDG-PET が有用である 治療はびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫と同様にリツキシマブを加えた抗がん剤化学療法 (R-CHOP) が基本である

表 8 Asian variant of intravascular large B-cell lymphoma(aivl) の診断基準 血液腫瘍科から引用

表 9 IVL の Asian variant(aivl) と Vlassical IVL の所見の対比 血液腫瘍科から引用

図 33 Asian variant of intravascular large B-cell lymphoma(aivl) の予後 表 10 血球貪食症候群 (HPS) の診断基準 (Imajyuku ら ) 血液腫瘍科から引用

表 11 血球貪食症候群 (HPS) の 診断基準 (Tsuda ら ) 血液腫瘍科から引用 表 12 ら ) 悪性リンパ腫関連血球貪食症候群 (LHPS) の診断基準 (Takahashi, Miura 血液腫瘍科から引用

表 13 血球貪食症候群 (HPS) の検査 血液腫瘍科から引用 図 34 血球貪食症候群 (HPS) の鑑別診断法

血液腫瘍科から引用 図 35 血球貪食症候群 (HPS) の原因の頻度 血液腫瘍科から引用 表 14 悪性リンパ腫関連血球貪食症候群 (LHPS) の診断基準

血液腫瘍科から引用 図 36 血球貪食症候群 (HPS) の好発年齢 血液腫瘍科から引用 表 15 血球貪食症候群 (HPS) の重症度スコア

血液腫瘍科から引用 表 16 血球貪食症候群 (HPS) の治療 血液腫瘍科から引用 (2) マントル細胞リンパ腫 &(MCL) B 細胞性で CD5,CD19,CD20 が陽性,CD23 が陰性 t(11 ; 14) という特徴的な染色体異常を有する. 癌遺伝子 bcl1/cyclin D1 の過剰発現が癌化に関与していると考えられている 難治性で標準的な治療では治癒は期待できない 図 37 早期マントル細胞リンパ腫 (MCL) の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 38 進行期マントル細胞リンパ腫 (MCL) の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 図 39 進行期マントル細胞リンパ腫 (MCL) の治療

血液腫瘍科から引用 (3) 濾胞性リンパ腫 (FL) 濾胞性リンパ腫は 病気の進行が比較的遅いタイプ ( 低悪性度 ) に分類され 年単位でゆっくりとした経過をたどることが多いリンパ腫 症状がほとんどないので発見が遅れ かなり大きなリンパ節腫脹になってから見つかり 骨髄にリンパ腫の細胞が浸潤して貧血や血小板減少の症状で見つかることもある 他の種類のリンパ腫に比べて リンパ節以外の臓器 ( 例えば 胃腸 脳 肺等 ) にがんの浸潤を認めることは少ない つまり リンパ節に主な病変があり 診断時より病期 III/IV の進行期が 80% 以上を占めることを特徴としている 日本においては悪性リンパ腫の 10 15% と頻度は低いが 年々増加傾向にある 比較的高年齢者 ( 発生のピークは 60 歳代 ) に多くみられますが 最近は 30 40 歳代の若者にもみられる 経過は緩 ( ゆる ) やかで はじめは治療に反応しますが 何回も再発するのが特徴である 約 15 年後に約 40% が DLBCL へ転化増悪する 図 40 初発濾胞性リンパ腫 (FL) の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 41 再発 FL の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 (3) MALT リンパ腫 (MALT) 節外粘膜関連リンパ腫は NHL の 9% を占め DLBCL に次いで多い しばしば先行する慢性炎症を伴う 慢性炎症としては 胃のヘリコバクタピロリ菌等以下の知見が知られている 記憶できる B リンパ球は 様々な外敵と戦い慢性炎症起こし 一部は形質細胞となり 多くが NF-kappa B を常に活性化され腫瘍となる 1 胃 : ヘリコバクタ ピロリ菌 2 胃以外 1. 脾 :HCV 2. 小腸 : カンピロバクタ菌 3. 皮膚 : ボレリア菌 4. 眼結膜 : クラメデア菌 5. 唾液腺 甲状腺 : 自己免疫疾患 ( シェグレン症候群 橋本病 ) 地理病理的な差が認められる事から 公衆衛生環境が大きく影響しているとも言われている 病理診断においても反応性か腫瘍性かの鑑別が難しいこともあり 施設間での診断率 罹患率にも差があるのが現状である 中高齢者 やや女性に多い傾向がある MALT リンパ

腫の 10-30% は t(11;18)(q21;q21) 染色体転座を有する sub-population がが示されている 先行する感染との関連は認めず 比較的予後良好な疾患群であり 罹患率などには地域差を認めていない 図 42 リンパ節外 MALT リンパ腫 (MALT) の治療フローチャート 図 43 胃限局期 MALT リンパ腫 (MALT) の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 44 胃進行期 MALT リンパ腫 (MALT) 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 図 45 胃以外 MALT リンパ腫 (MALT) 治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 46 脾 MALT リンパ腫 (MALT) 治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 リンパ形質細胞リンパ腫 (LPL) 小型の B リンパ球 形質細胞への分化を示す B リンパ球 形質細胞などの混在した腫瘍である 骨髄ときにリンパ節 脾などを侵す腫瘍であるが 他の形質細胞への分化傾向を示す B 細胞腫瘍を除外して診断する 従来より IgM の M 蛋白血症 (3g/dl 以上 ) を伴うリンパ形質細胞性リンパ球の腫瘍性増殖と定義されていたが WHO.2008 年版では形態学的特徴が重視され IgM の M 蛋白の存在は必須ではないと改訂された 最近になり, 原発性マクログロブリン血症 (WM)/ リンパ形質細胞性リンパ腫 (LPL) において MYD88L265P 変異が 90 100% に認められることが報告された MYD88 は,Toll-like/ インターロイキン 1 受容体の細胞内ドメインに結合するアダプター蛋白で, 二量体を形成することで IRAK4 (interleukin-1 receptor-associated kinase4 ) の自己リン酸化を誘導し,IRAK1, TRAF6 を介して NFkB 経路を活性化する 23 25) ABC-DLBCL の 30 40% 程度の患者に L265P 変異を認め, 一方 GCB においては 10% 未満と報告されている リンパ形質細胞性リンパ腫 (lymphoplasmacytic lymphoma LPL) と Waldenstrom マクログロブリン血症 (Waldenstrom's marcroglobulinemia WM) は WHO 分類では同一の項目に並列して挙げられている WM では腫瘍細胞は通常骨髄で増殖しますが リンパ節 脾臓 肝臓に高頻度に浸潤し 末梢血にも出現することがある 臨床症状としては肝脾腫 (15-20%) リンパ節腫大 (15%) が認められる LPL/WM の腫瘍細胞は小型の B リンパ球であり 様々な程度に形質細胞あるいは形質細胞様リンパ球への分化傾向を示します ( すべて同一クローンであると考えらる ) 表面マーカー解析では表面免疫グロブリンは IgM を発現し 時に IgD を同時に

発現している 表面免疫グロブリン軽鎖は κ か λ どちらかに偏っている CD19 CD20 CD22 CD79 などの汎 B 細胞マーカーを発現し 時に CD11c CD25 FMC7 も陽性の場合があるす CD5 CD23 は通常陰性 (10~20% で陽性 ) であり 慢性リンパ性白血病との鑑別に役立つ 形質細胞への分化傾向が強い場合には CD138 が陽性 CD20 が陰性となる リンパ節においてはリンパ洞を残しながら腫瘍細胞は濾胞間びまん性に増殖し 偽濾胞を形成せずに進展する 腫瘍細胞は小リンパ球 形質細胞様のリンパ球ないしは形質細胞で Dutcher body と呼ばれる PAS 染色陽性の核内封入体を有することがある びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫へ進展することも報告された 現在のところ LPL/WM に頻度が高い染色体異常として 6 番染色体長腕 (6q) の欠失が報告されている その病態的意義は明らかではない 6q- 例は進行が早く生存期間が短いと報告されている 臨床像としては大量の IgM(3g/dl 以上 ) のため 過粘稠症候群を起こします (10-30%) 赤血球凝集に伴って 視力障害 ( ソーセージ様眼底 ) や脳血管障害が合併する 自己免疫疾患の合併も起こり クリオグロブリン血症 末梢神経障害 ( ミエリンに対する抗体活性によりミエリンが融解 ) M タンパクの変性物沈着によるアミロイドーシスを合併することもある 多発性骨髄腫とは異なり IgM 以外の免疫グロブリンの抑制は軽度である IgM が 3000 mg/dl 未満 骨髄中の異常細胞の割合が 10% 未満で特に症状のない場合を IgM monoclonal gammapathy of undetermined significance(mgus) と呼ばれるが 他の MGUS と比較すると進行しやすく 年に 1-5% が LPL/WM に移行する 臨床経過は緩徐であり 全生存中央値は 5 年以上です 臨床症状としては過粘稠症候群 (10-30% の症例 ) が見られ 赤血球凝集のために視力障害 ( ソーセージ様眼底 ) 脳血管障害を生じることがあります M タンパクが自己抗体としての活性を有する場合にはクリオグロブリン血症 末梢神経障害 ( ミエリンに対する抗体活性 ) が生じる その他としてアミロイドーシス 凝固障害 出血症状 (M タンパクが凝固因子 フィブリン 血小板と結合 ) を合併することがある 死因としては原病の悪化 悪性度の高いリンパ腫への進展 感染 治療による二次性白血病が挙げられる 予後をスコアリングシステムで評価する報告も見られる international prognostic scoring system では 1 血小板 10 万以下 2β2 マイクログロブリン 3μg/ml 以上 3 IgM 7,000 mg/dl 以上を予後不良因子として 5 年生存率を算出するとスコア 0 1 が 87% 2 で 68% 3-5 で 36% と報告されている その他の予後不良因子として高齢 汎血球減少 低アルブミン血症 末梢神経障害などがある 治癒することはほぼなく 症状のない場合には未治療で経過観察すべきであるとされている (Ghobrial IM, et al. Lance Oncol 4: 679, 2003) 症状がある場合には次に挙げる治療が施行されます 効果判定については非ホジキンリンパ腫の効果判定を当てはめるのは困難であり (M タンパクが存在するため ) International Workshop(2006) の判定基準が使用される (Kimby E, et al. Clin Lymphoma Myeloma 6: 380, 2006)

図 47 リンパ形質細胞リンパ腫 (LPL/WM) 治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 バーキットリンパ腫 c-myc 遺伝子と免疫グロブリン遺伝子の相互転座によって生じる高悪性度 B 細胞性腫瘍である WHO 分類第 4 版 [1] では 遺伝子異常と 定型的な組織学的形態および免疫学的マーカーを有する という条件をすべて満たすものを BL と定義している 臨床的特徴からは以下のように分類される endemic BL - アフリカ パプアニューギニアで発生する マラリア流行地域に一致する 殆どが小児で発症し 5 歳以下の 70% の症例で顎下部腫瘤を形成する sporadic BL - 日本 欧米で発生する 小児から若年成人で発症する 免疫不全関連 BL(immunodeficiency associated BL) - HIV 感染者に発症する 日本 欧米ともに成人の悪性リンパ腫の 1~2% である [4] 一方小児の悪性リンパ腫の 40~50% を占める

他の非ホジキンリンパ腫で多く用いられる CHOP 療法は 本疾患には歯が立たない ( 長期生存は 10% 程度 ) 高用量抗がん剤を含む治療を行う必要がある 国によって治療方法に違いがある それらを直接比較した臨床試験は無いが各治療方法での成績に大きな差はない 日本で多く行われる治療は以下の通り modified CODOX-M/IVAC 療法 [13] R-Hyper-CVAD 療法 中枢神経浸潤が多いため 上記の治療のいずれも血液脳関門を通過する大量シタラビン メソトレキセート投与と髄注併用を行っている 高年齢 (40 歳以上 ) 骨髄や中枢浸潤 10cm 以上の摘出不能な巨大腫瘤 高 LDH 血症 +7q や del(13) 染色体異常は予後不良因子とされる 図 48 バーキットリンパ腫治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

図 49 DLBCL とバーキットリンパ腫の中間治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 図 50 T 細胞リンパ腫の頻度と予後 血液腫瘍科から引用 (3) 末梢性 T 細胞リンパ腫分類不能 PTCL(NOS) 末梢 T 細胞性リンパ腫といえば 悪性リンパ腫の中の非ホジキンリンパ腫の一種で中悪性度となり T 細部性 NK 細胞性のグループに分類されている病気で末梢 T 細胞性リンパ腫は 皮膚にできるリンパ腫として非常に珍しい 末梢 T 細胞性リンパ腫は 稀なので治療に対する症例も少なく 効果がある治療というものが確立されていない 臨床治療となるケースが多く さまざまな治療を試すことになる 末梢 T 細胞性リンパ腫は B 細胞リンパ腫と比較した場合

通常の化学療法の効果が少なく決定的な治療方法がないの難治性で PNP 阻害剤が T 細胞性リンパ腫の治療効果に期待できると言われている 治療末梢 T 細胞性リンパ腫の治療は 治療症例が稀になり もさまざまな治療を試しながら効果があるかどうか試みている状況である DLBCL の標準治療法であるCHOP 療法や放射線療法 化学療法 骨髄移植などの治療法を使用している 経口 PNP 阻害剤である FORODESINE は 日本人の再発 難治性 T 細胞性リンパ腫や NK 細胞リンパ腫患者に安全に投与できることが 試験で明らかになった事により治療の幅が広がり末稍 T 細胞性リンパ腫のような難治性の高い病気に対する治療に効果が期待できると言われており更に試験を計画している状態となっている 図 51 末梢性 T 細胞性リンパ腫 (PTCL) 治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用

(4) 未分化大細胞リンパ腫 (ALCL) T 細胞由来あるいは由来不明の null cell type からなる 形態は異型性の強い大型細胞でホジキン細胞に似ている しばしば肉腫との鑑別が問題になる CD30 が陽性を示す. 特徴的な t(2 ; 5) という染色体異常を有する症例がある この場合 ALK 遺伝子に異常を生じるために癌化したと考えられている この染色体異常を有する症例の予後は良好である 一方, この異常を有しない症例は予後不良である 図 52 ALK 陽性 陰性 ALCL の予後 血液腫瘍科から引用 MMAE をつけた抗 CD30 抗体療法が再発 難治性のホジキンリンパ腫と未分化だお細胞リンパ腫治療に使用されている

図 53 MMAE をつけた抗 CD30 抗体効能 アドセトリス製品情報から引用 表 17 MMAE をつけた抗 CD30 抗体投与患者の選択基準 表 18 MMAE をつけた抗 CD30 抗体投与基準 アドセトリス製品情報から引用

表 19 MMAE をつけた抗 CD30 抗体投与法 アドセトリス製品情報から引用 表 20 MMAE をつけた抗 CD30 抗体投与後末梢神経障害 アドセトリス製品情報から引用 表 21 MMAE をつけた抗 CD30 抗体投与後好中球減少症 アドセトリス製品情報から引用 表 22 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の作用機序 アドセトリス製品情報から引用

図 54 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の作用機序 アドセトリス製品情報から引用

図 52 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の ALCL への効果 アドセトリス製品情報から引用 図 53 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の ALCL への効果 アドセトリス製品情報から引用 表 23 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の ALCL 使用後副作用

アドセトリス製品情報から引用 表 24 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の ALCL 使用後副作用 アドセトリス製品情報から引用

図 54 血管免疫芽球性 T 志納リンパ腫 (AITL) の臨床像 血液腫瘍科から引用 3. 成人 T 細胞白血病 リンパ腫 (ATLL) [1] ヒトレトロウイルス HTLV-I キャリアのみから発症する成熟 T 細胞の白血病 リンパ腫である したがって, 抗 HTLV-I 抗体は必ず陽性であり, また ATL 細胞には HTLV-I プロウイルス DNA がモノクローナルに組み込まれていることがサザンブロット解析により証明される [2]ATL ではリンパ節腫脹, 肝 脾腫, 多彩な皮膚病変, 高カルシウム血症などが認められ, 臨床像, 経過などから予後の悪い順に急性型, リンパ腫型, 慢性型, くすぶり型 ATL に分けられる [3] リンパ腫型以外では, 末梢血中に切れ込みの著明なクローバー状の核を持つ ATL 細胞が出現する (1) 特徴および病態生理ヒトレトロウイルス HTLV-I 感染後に数十年の潜伏期を経て, キャリア 1,000~ 2,000 人より年間 1 人の割合で発症する成熟 T 細胞の白血病 リンパ腫である. 臨床像, 経過などから, 急性型, リンパ腫型, 慢性型, くすぶり型に分けられ

る (2) 臨床像 ATLL は,HTLV-I キャリアのみから発症し, その平均年齢は 57 歳である わが国の HTLV-I キャリア数は 120 万人で, 半数が九州, 沖縄に在住している HTLV-I は, 母乳を介して母子間, また性交や輸血で感染する ATLL の臨床症状として, リンパ節腫脹, 肝 脾腫, 丘疹 結節などの多彩な皮膚病変, 高カルシウム血症による意識障害などが認められる また免疫能低下によるカリニ肺炎, 真菌症などの合併もみられる 図 55 世界の成人 T 細胞白血病 リンパ腫 (ATLL) の健康保菌者の多い地域 血液腫瘍科から引用 図 56 日本の成人 T 細胞白血病 リンパ腫 (ATLL) の健康保菌者の多い地域

血液腫瘍科から引用 図 57 成人 T 細胞白血病 リンパ腫 (ATLL) の経過 血液腫瘍科から引用 図 58 成人 T 細胞白血病 リンパ腫 (ATLL) の病型と予後

血液腫瘍科から引用 (3) 検査所見末梢血中の白血球数は正常から数十万 /μr までの幅がある 末梢血中に出現する ATL 細胞は, 切れ込みの著明なクローバー状の核を持ち, 通常は CD3 および CD4 陽性,CD8 陰性である 抗 HTLV-I 抗体は必ず陽性であり, またサザンブロット解析により HTLV-I プロウイルス DNA の ATL 細胞へのモノクローナルな組み込みが証明される 典型的な急性型 ATLL では, 高 LDH 血症, 高カルシウム血症などがみられることが多い

図 59 ATL の診断 血液腫瘍科から引用 (4) 病期分類と予後 典型的な ATLL である急性型は予後不良で通常 1 年以内に死亡する リンパ腫型は悪性リンパ腫で, リンパ球数は 4,000/μR 未満であるが, 急性型に転化しやすく予後不良である 慢性型はリンパ球数が 4,000/μR 以上で白血球増多を示すが, 急性型に転化しない限り予後はよい くすぶり型では少数の異常細胞は認めるが白血球数は正常で, 悪性度は低く長期の経過をとる 表 25 ATL の臨床病型

三輪血液病学から引用

(5) 治療 ATLL は治療抵抗性であり, 標準的な治療法はない. ただし, 最近になって造血幹細胞移植療法による成功例が報告され始めている 図 60 ATL の治療フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 表 26 ATL の治療成績

血液腫瘍科から引用 抗 CCR4 抗体療法も再発 難治症例で CCD4 陽性 ATL 例 (90%) に使用され 特に白血病化例に有効です CCR4 は 白血球の遊走に関与するケモカインの受容体の一つです CCR4 は 正常組織中では IL-4 および IL-5 などのサイトカインを産生する (CD4 陽性の ) ヘルパー 2 型 T 細胞に選択的に発現することが知られています また がん細胞では 血液がんの 1 種である T 細胞性リンパ腫において高発現しており 特に 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATL) の 90% 以上 末梢性 T 細胞リンパ腫 (PTCL) の約 30~40% に発現が認められると報告されています 図 61 ポテリジオン技術 ( フコース除去で抗体活性化 ) による抗 CCR4 抗体 より引用 表 27 悪性リンパ腫 (ATL 含む ) の移植適応

造血幹細胞移植ガイドラインから引用 NK リンパ腫 図 62 節外 NK リンパ腫 nasal type の治療フローチャート

造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 図 62 節外 NK リンパ腫 nasal type の予後

血液腫瘍科から引用 ホジキンリンパ腫 ホジキンリンパ腫 ( ホジキンリンパしゅ 英 : Hodgkin's lymphoma; HL) は 悪性リンパ腫の一分類で 病理組織学的にはホジキン細胞 (Hodgkin cell) あるいはリード = シュテルンベルク細胞 (Reed-Sternberg cell) 等を認める事が特徴的である 従来ホジキン病 (Hodgkin s disease; HD) と呼ばれてきた病気である 名前は 1832 年にこの病気を発見したイギリスの医師トーマス ホジキン (Thomas Hodgkin) にちなむ

WHO 分類によれば ホジキンリンパ腫は 古典型 と 結節性リンパ球優勢型 のふたつに大きく分類され 古典型には 4 つの亜分類を持たせている 古典型ホジキンリンパ腫 (Classical Hodgkin's lymphoma : CHL) o リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫 (Lymphocyte rich : LR) o 結節硬化型ホジキンリンパ腫 (Nodular sclerosis : NS) o 混合細胞型ホジキンリンパ腫 (Mixed cellularity : MC) o リンパ球減少性ホジキンリンパ腫 (Lymphocyte depleted : LD) 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 (Nodular lymphocyte predominant Hodgkin's lymphoma : NLPHL) 図 63 ホジキンリンパ腫の病理形態学的関係 東京リンパ腫研究会癌研究会有明病院竹内賢吾博士の講義から引用 まず 古典的ホジキンリンパ腫と結節性ホジキンリンパ腫では治療方針が異なる また 病期により異なる 以下に基本的な治療方針を述べる 古典的ホジキンリンパ腫 ( 限局期 ) 化学療法である ABVD 療法 [ 注釈 1] 4 コースの後 進行例以外では放射線区域照射 (involved field radiation therapy; IFRT) が標準的とされている

予後良好群に対しては化学療法の施行回数や放射線照射量の削減が試みられているが 定まった見解は得られていない 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 ( 限局期 ) 放射線区域照射単独が標準的とされる これは古典的ホジキンリンパ腫と異なり 放射線区域照射単独でも放射線広域照射や化学療法併用放射線照射と治療成績に大差がないことによる 古典的ホジキンリンパ腫 ( 進行期 ) ABVD 療法 6 コースから 8 コースが標準療法となる ただし 6 コースから 8 コース の意味はびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫とは異なり 4 コースまでで完全寛解ならば 6 コースで終了 6 コースで完全寛解ならば 8 コースで終了 の意味である 完全寛解に至った場合 追加治療として放射線照射は推奨されない 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 ( 進行期 ) 標準的治療法は確立していない 古典的ホジキンリンパ腫に準じることが多い 図 64 ホジキンリンパ腫の ABVD 療法 から引用

図 65 限局期ホジキンリンパ腫の治療選択フローチャート 造血器腫瘍ガイドライン 2013 年版日本血液学会金原出版から引用 図 65 進行期ホジキンリンパ腫の治療選択フローチャート

図 66 治療方針 血液腫瘍科から引用

表 28 早期 HL の予後因子 表 29 早期 HL の予後因子 悪性リンパ腫のすべて 血液腫瘍科 特別増刊号

図 67 進行期 HL の国際予後因子 血液腫瘍科から引用 再発 難治性ホジキンリンパ腫 予後 標準的治療法は確立していない 非ホジキンリンパ腫の再発 難治例に用いられる治療法 (ESHAP 療法 [4] など ) が用いられる 若年者であれば大量化学療法併用自己末梢血幹細胞移植も選択肢として挙げられる 日本では 2014 年 1 月に (CD30 陽性の ) 再発 難治性ホジキンリンパ腫に対しての治療薬としてブレンツキシマブベドチンの製造販売が認可された 海外での第 Ⅱ 相試験 (SG035-0003 試験 ) の結果は奏効率 75% であった ブレオマイシンから 4 週間以上明けた方が良い 回数制限はない 年齢 B 症状 ( 発熱 体重減少 盗汗 ( 寝汗のこと )) 巨大縦隔腫瘍などは 予後不良因子とされる

図 68 不応期 再発期 CHL の治療 悪性リンパ腫のすべて 血液腫瘍科 特別増刊号 表 30 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の効能 アドセトリス製品情報から引用

表 31 MMAE をつけた抗 CD30 抗体の用法 図 69 CHL へ MMAE をつけた抗 CD30 抗体療法後の予後 アドセトリス製品情報から引用 図 70 CHL へ MMAE をつけた抗 CD30 抗体後の予後 アドセトリス製品情報から引用

表 32 CHL へ MMAE をつけた抗 CD30 抗体後の副作用 アドセトリス製品情報から引用 図 71 悪性リンパ腫の造血幹細胞移植適応 血液腫瘍科から引用