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Challenges in Maintenance Quality Innovation あらまし 複雑化するお客様システムの安心 安全 安定は, お客様の重要な経営課題の一つである 中でも, トラブルの未然防止の取組みと, 万一のトラブル時にも早く正確に対応する技術力は, お客様がITサービスベンダを選択する際の最重要ポイントである 富士通グループの中で,ITインフラ サービスの中核を担う富士通エフサスでは, お客様システムの安定稼働を実現するために保守技術革新に関する様々な取組みを推進している 具体的には, 保守方式の改革による保守品質向上の活動で, お客様システムを構成するハードウェア, ソフトウェアやネットワークなどへ保守方式を作り込む活動を推進している また, 現場の保守技術者を巻き込んだ保守改善活動で保守プロセス自体とそれを支援するサポートインフラの改善活動を推進している 本稿では,CE 作業の変革に向けた保守技術革新の具体的な取組み状況や成果について紹介する Abstract One of the biggest challenges for customers is to ensure the safety, security, and stability of their information technology (IT) systems. When they choose an IT service vendor, the key deciding factor is a proactive approach to IT system safety, security, and stability combined with prompt recovery in the event of a system failure. As a key player in IT infrastructure services within the Fujitsu Group, Fujitsu FSAS faces two challenges in trying to improve maintenance quality and efficiency. One is to adapt the maintenance methodology to ever changing environments and the other is to improve the maintenance process in a cost effective manner. This paper introduces activities and results related to its efforts to achieve maintenance quality innovation. 中村隆文 ( なかむらたかふみ ) ( 株 ) 富士通エフサスサポート技術本部所属現在, サポート技術の企画 開発業務に従事 中村純郎 ( なかむらすみお ) ( 株 ) 富士通エフサスシステムサポート企画統括部所属現在, 保守技術設計 開発業務に従事 北須賀千晶 ( きたすがちあき ) ( 株 ) 富士通エフサスフィールド品質技術部所属現在,CE 作業標準の企画および品質管理業務に従事 156 FUJITSU. 60, 2, p. 156-161 (03, 2009)

まえがき企業が持続的な成長を続け, 競争力を強化していくためのお客様の経営課題は, 新規投資に費やす余裕がない ( 予算 人 ), システムと業務両面を理解できる人材不足 や システム運用 管理コストの削減 など, 多岐にわたり, お客様ごとに異なる しかし, 経営課題の解決に向けた, お客様の ITサービスベンダの選択基準は, 価格, 対応の早さ, 信頼感, 導入後のサポートに重点が置かれている ( 図 -1) また, お客様のITインフラは, マルチベンダ化, 仮想化などの新技術によりますます複雑化しており, 安定稼働を実現することは富士通グループに課せられた最重要課題の一つである 上記の背景のもと, 本稿は保守品質向上, 効率化に焦点を絞り, 富士通エフサスが推進している保守の装置産業化活動 ( 保守の自動化, 効率化に向けた取組み ) を紹介する 保守品質に関しては,1 点目は, 保守方式の改革による保守品質向上の取組みと, 万一の障害時に迅速に復旧する技術の取組みであり, 2 点目は, 現場の技術者と一体となった保守品質改善活動 (M2P:Mind Maintenance and Product) の取組みである 保守効率化の取組みに関しては, CEの作業プロセスを可視化して間接作業を自動化する取組みを紹介する ( 図 -2) 現場 CE 保守品質向上の取組み コンピュータシステムの信頼性を評価する項目として, 信頼性:Reliability 可用性: Availability 保守性:Serviceability 保全性: Integrity 機密性:Security が挙げられる これらの頭文字をとりRASIS( レイシス ) と称される ( 図 -3) とくに, 最初の RAS ( 信頼性 可用性 保守性 ) は, より故障しにくく, 稼働率を高く維持でき, 仮に故障したとしても迅速に復旧できることである このことは, 社会システムやミッションクリティカルシステム, および企業基幹システムで重要視されており, コンピュータ製造メーカが技術を競って実装反映してきた (1)-(4) 富士通エフサスは, お客様システムの 安心 安全 安定の提供 追求 と お客様にとって価値あるサービスの創造 を基調として, 企画 導入 運用 保守に至るライフサイクルマネジメント (LCM) サービスを提供している (5) お客様システムの安定稼働の観点から見ると 運用フェーズ から得られる情報が重要であり, 富士通エフサスでは, 現場の 気づき や実際に発生し 要望 改善報告 M2P 新規施策提示 意見 サポート技術本部 装置保守性 装置産業化 作業プロセス 企画 開発部門 製品事業部 IS 事業本部 図 -2 M2P 活動体制 Fig.2-Organization for M2P activities. Availability 可用性 Reliability 信頼性 Security 機密性 出典 :IDC Japan 2008 年国内 CIO 調査 :IT サービス利用実態, (2008 年 6 月,J8460105) Serviceability 保守性 Integrity 保全性 図 -1 IT ベンダ選択基準 Fig.1-Selection standard of IT vendor. 図 -3 RASIS の概要 Fig.3-Outline of RASIS. FUJITSU. 60, 2, (03, 2009) 157

技術保守技術の革新 -CE 作業の変革 - プロセス 業務フロー 新方サ式ー設計レビュー実装 検証 保守設計 開発 保守運用 新書 活動のポイント Internet,Mobile,PC, ビス➀ 保守性改善商品仕装置保守設計 既装置の問題点を分析し, 改善施策を立案し実行する 他社動向, 既出荷装置と比較, 分析を行い, 改善を実施する 改善項目については,DR チェックシートで確実にフォローを実施する 保守工具開発 設計 開発品質分析 改善 ➁ 保守性改善保装装保保傾向分析 CHECK 機能守置置守地守マ仕ニ工部個開調様ュ品別発整アリ➀インシデント工手ル定ス➀インシデント程順2 生 気づき対G開2 生 気づき発3MQCレポート策3MQCレポート 4Qfinity 4Qfinity 設計レビュー 5 安定稼働委員会 5 安定稼働委員会 6そのほか 6 そのほか様保守設計実装 検証 対策検討 (DR) 保守資材ト保守資材 ➂ 保守作業の効率化を目指す 現広報(TR/緊急通達 EC製品品質会議保守方式設計新機種別W具選製品品質の向上とフィールドの体感に合わせた改善施策を立案し実行する 保守原価の改善を目指す 障害会議品質改善ほか)製品品質分析 図 -4 保守設計プロセス Fig.4-Design process for maintenance. た問題を深耕し, 製品への改善反映 ( または防止 ) を図っている 以降の章では, これらの具体的な活動を紹介する 製販一体活動お客様に販売された製品に保守活動を実施する過程で生まれる様々な気づき情報を製品にフィードバックする活動について説明する まず, ハードウェア保守設計のプロセスを図 -4に示す 設計 開発フェーズでは, システム保守効率化シナリオを定め, 保守に関する以下の事項を設計部門 評価部門とレビューする保守 DR( デザインレビュー ) を行う 1ハードウェア製品へ保守機能 (REMCS,HRM など ) の組込み 2 現場の保守性改善の提案を製品に反映 3 保守情報 ( 工具, 部品, 対応マニュアルなど ) の開発 とくに 2 現場保守改善提案の反映 は, お客様の声を代弁する事項やミス防止に関するものであり, とら保守性改善の最重要事項として捉えている つぎに, 具体的な現場の声を吸い上げる仕組みを紹介する (1) 生 気づき システムお客様と直接接する部門 ( 営業,SE,CE) がお客様先で感じた問題 提案を富士通全社で共有する仕組み 製品問題だけでなく, 保守支援 ITインフラ (esupport ( 注 1 )) の改善を含む (2) Qfinity ( 注 2 ) 提案品質改善テーマに向けたグループ活動から派生する改善提案 (3) M2P 活動 FUJITSU Wayの三現主義に基づき, 技術部門の幹部社員が全国 CE 部門主催品質会議に出席し, 広く現場意見を集める活動 (4) MQC ( Maintenance Quality for the Customer) レポート CE 作業ミス情報 ( ヒヤリハットを含む ) の登録 ミス調査委員会 推進会議で, ミスの根本原因を現場 サポートで検討し対策を講じる 以上のような活動を通し開発した 保守設計 で計画した事項は, チェックリストを作成し, 装置の量産審査の段階で実機による評価を行い確認をして ( 注 1) サポートサービスに関する情報および支援システムを集約した Web サイト ( 注 2) Quality( 質 ) と Infinity( 無限 ) を合体させた造語で, 無限に Quality の追求 を意味する 158 FUJITSU. 60, 2, (03, 2009)

いる また, 現行モデルについても, 問題切分け支援を容易にする保守支援プログラムやeSUPPORTシステムの開発, 保守マニュアルの改善を図り, 保守作業品質向上を図っている 具体的な改善施策と成果 ハードウェアの保守性改善を測る指標として, 交換時間の短縮がある 交換時間短縮のための装置構造の改善として, 部品の活性ユニット化, ネジレス化, ラック製品の背面保守, 組込み型診断プログラムなどがあり, 順次展開している 本章では, 交換に時間を要する部品の代表である, サーバ製品のマザーボードについて, いかにして時間短縮を図ったかを説明する (1) ファームウェアのユニット化 ( 図 -5) エンタープライズサーバでは, マザーボード交換の際にファームウェア版数を交換前版数に改版していた ファームウェアをマザーボードから独立したユニットにし, ファームウェアユニットの載換えだけでお客様への引渡しが可能となった マザーボード交換のプロセス ( 従来比 ) ファームウェア版数控え ファームウェア媒体準備 交換 ファームウェアの適用 ファームウェア ROM 交換後再搭載 図 -5 ファームウェアのユニット化 Fig.5-Unitization of firmware. (2) 設定情報の退避 復元 ( 図 -6) PCサーバでは, マザーボード交換前に,BIOS 設定情報を外部媒体に退避, あるいは目視でチェックシートに記録し, 交換後に復元しなければならなかったが, 筐体内にバックアップ専用フラッシュメモリを用意し自動復元を実現した (3) リモート機能の基本実装と通報情報の活用 ( 図 -7) 富士通が提供するサーバ ストレージ製品には標準でリモート通報サービス機能 (REMCS : REMote Customer Support system) を実装している とくに基幹系サーバは, 専用プロセッサを有する独立したボード上にREMCS 専用のポートを用意し,REMCSサービスの導入 設定を容易にしている 専用プロセッサを実装することにより, システム起動できない問題でも通報可能であり, 通報されたログ情報は, 富士通サポートデスクのシステム上で解析され, 交換対象部品の発送手続きを自動化し, 早期復旧を促している 本章では, ハードウェアの単体保守設計改善の事例について述べた しかし, お客様システムは, オープン化 仮想化の波を受けて, サーバ ストレージ ネットワークの複合製品の組合せで構築されており, 耐故障性もハードウェア機構ではなく, クラスタリングソフトやディスクミラーソフトで実現される傾向にある これにより, ハードウェア故障によって業務停止に陥ることは少なくなる反面, 障害の切分けや故障修理後のソフト組込み操作が必要になる 組込み操作は, 組込むリソースの順番など考慮しなければならない事項もあり, システム管理者にとっても簡単 マザーボード交換のプロセス ( 従来比 ) ツール 手書きによる設定退避 設定情報退避用フラッシュメモリ内蔵 お客様 エラー 修 ログ コード 部品送付 富士通サポートセンター REMCS センター 自動解析 交換 ツール 手書きによる設定復元 理 CE OSC:One-stop Solution Center OSC 図 -6 BIOS 設定情報の退避 復元 Fig.6-Save and restore of BIOS setting information. 図 -7 リモート通報情報の自動解析 Fig.7-Automated analysis of remote information. FUJITSU. 60, 2, (03, 2009) 159

ではないだろう こうした背景から, お客様のエンジニアへの期待は, ますます増加すると考えており, クラスタリングソフトと連携した保守支援ツールを開発することに加え, 技術者の作業領域の拡大とより安全で確実な操作ができる作業品質向上活動が重要である 次章では, 現場の技術者と一体となった保守品質改善活動の取組みを紹介する CE 作業領域の拡大お客様の業務を支えるシステムを安定稼働させ続けることはCEの使命である それには 装置の定期的な点検 と 障害時の迅速な復旧作業 が不可欠であり, 保守においての重要な2 本の柱となっている 昨今, お客様のニーズは装置復旧の迅速な対応にはとどまらず, 業務システム全体の運用サポートに範囲が拡大している これを受け,CEは従来の保守作業を行いつつも更にお客様の業務システムの構成を把握し, 簡単なソフト保守作業も手掛けるなど, 新たな作業領域に足を踏み入れている (5) このような作業領域の拡大に伴いCEの作業項目 が増え続ければ, 作業時間が逼迫し, 作業品質の 低下は免れない 次章以降で, 既存の作業項目を自動化することにより作業プロセスの改善を図る取組みを述べる CE 作業プロセスの把握 CE 既存作業項目を自動化するためには,CEの作業プロセスを把握し, 改善ポイントを現場起点で見出す必要がある その活動について述べる (1) CEの作業時間 CEはお客様先到着時間, 作業開始時間, 作業終了時間をMR(Maintenance Report) によって報告している この時間はeSUPPORTのインシデンクリムスト管理システム (CRMS :Customer s Request Management System) によって収集され, 品質管理などに利用されている CEがお客様先で直接作業をしている平均時間は 1 件あたり点検保守作業で約 2 時間, 障害復旧作業では約 1 時間である 従来の作業プロセスの改善においては, この直接作業時間を重視し, お客様先で ひっ の作業時間を1 分でも減らすことを意識して活動していた しかし, お客様先での作業時間はCE 作業表に表れる数字に過ぎない CEは出動前の準備と出動後の報告作業などの間接作業に多くの工数を割いており, これまでその時間は正確には把握されていなかった (2) M2Pによる間接作業の見える化 2007 年 10 月より, 技術部門の幹部社員が全国の品質会議に出席し, 広く現場の意見を集めるM2P 活動を開始した M2P 活動とは, 現場 現物 現実 を意識した施策作りをするための現場との接点である M2P 活動では, 新規施策の提示だけではなく,CEからの要望も直接幹部社員がヒアリングし, 関係部門と一緒になって改善を図り効率化を推進する こうした取組みの中で,CEの作業プロセス把握のため全国 10 拠点のCEに1 週間程度の行動記録を依頼し, 後日記録に基づき直接ヒアリングを行った 結果を分析したところ, 直接作業である 作業 や 移動時間 と並んで, これまでMRでは見えてこなかった間接作業の 事前準備 が全体の28% を占めていることが分かった ( 図 -8) 事前準備には, お客様の装置構成の確認, 必要部品の手配, 保守マニュアルの確認などの作業がある 次章で間接作業の削減を図る装置産業化の取組みを紹介する 装置産業化による間接作業の自動化 装置産業化とは,ITインフラを利用して一部の作業を自動化することにより,CEの作業自体を効率化する施策である 以下に装置産業化による保守の自動化で, 作業プロセスが効率化できる仕組みの一例を挙げる 28 26 24 9 7 6 事前準備作業移動 入館手続き社内向け報告 挨拶 準備 報告 待機 0 20 40 60 80 100 (%) 図 -8 CE 作業工数の分布 Fig.8-Breakdown of CE working contents. 160 FUJITSU. 60, 2, (03, 2009)

お客様 8 日程調整 9 出動 1OSCへのメール通報 2 自動メール連絡 < 顧客インシデント監視 > 5オンサイト発行 ( 障害対応 ) <PARRAGE> REMCS センター 3 通報内容分析 前 作業指示 部品確認 部品手配 納期確認 納品 日程調整 作業 報告 10 完了登録 CE 4お客様へ説明 7 部品配送 6 部品手配 部品 OSC 後 作業指示 自動化 納品 日程調整 作業 報告 図 -9 リモート通報時の OSC 作業プロセス Fig.9-Working process including OSC to remote information. 図 -10 CE 作業プロセスの変化 Fig.10-Change of CE working process. (1) REMCS 通報情報の解析自動化富士通が提供するサーバやストレージ製品に標準搭載しているソフトウェア REMCSエージェント を導入することで, 部品状態の監視が可能となる REMCSエージェントが故障を発見した際には SMTP(Simple Mail Transfer Protocol) により故障メッセージがOSCにメール通報される OSCは esupportを活用し, お客様先の装置から通報された内容を分析し, 部品の特定とCEへの出動指示を行っている ( 図 -9) この通報情報を体系化し, 部品の自動選定を可能とすることで,OSCでの分析および部品特定時間を短縮させた (2) CE 作業プロセスの自動化特定された部品は, 定期点検管理システムに情報を取り込み,CEがお客様先に訪問する日程に合わせて配送を可能とした これより, 部品確認 手配と納期確認のプロセスが自動化され,CEの間接作業時間を削減させた ( 図 -10) 上記の定期点検管理システムでの部品手配自動化においては,CEから工数削減になるとの評価をもらっているが課題は残されている 例えば, REMCS 通報以外の寿命部品 ( 富士通の保証する動作環境下で5 年未満で寿命となる部品ユニット ) では交換のタイミングを把握することができず,CE の手入力による設定に頼っている この課題に対しては,CEと討論を重ね, 定期点検時に必要な部品はすべて自動手配されるよう, 情報と仕組みを整えていく さらに,ITインフラ サービスにおいては, 新しい運用サービスが, 逐次生み出されている CE は従来の保守に加え, 新たな運用サービスもお客様 に提供する役割を担っている この新たな運用サービスを提供する時間を作るためには, 従来の作業プロセスを徹底的に自動化し作業プロセスの改善を進めていく必要がある むすび本稿では, 保守方式の改革による保守品質向上の取組み, 万一の障害時に迅速に復旧する技術の取組みと, 現場の技術者と一体となった保守品質改善活動の取組みの一端を紹介した SaaS, クラウドコンピューティング,IPv6などの次世代技術や仮想化でお客様のIT 投資の選択肢が拡大するとともに, お客様システムはますます多様化, 複雑化する このような環境変化の中でお客様システムの安定稼働を実現する取組みはますます重要な位置付けとなっている 今後も, 富士通エフサスは製販一体化活動, CEの作業領域拡大, 間接作業の自動化などの活動を中心にして保守方式の改革を推進していく 参考文献 (1) 小野寺勝重 : 保全性設計技術. 日科技連出版社, 1989. (2) ISO homepage. http://www.iso.org/iso/home.htm/ (3) IEC homepage. http://www.iec.ch/ (4) IEC 60300-1,2003.Dependability management - part 1:Dependability management systems. (5) T. Nakamura et al.:a methodology for Learning from System Failures and its Application to PC Server Maintenance.Risk Management,Vol.10. Issue1,p.1-31(2008). FUJITSU. 60, 2, (03, 2009) 161