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Transcription:

オーガニック産業発展のための政策提言 ~EU アメリカ 日本を比較して ~ 佐藤有紀, 佐野翔太, 古澤龍之, 水嶋彩絵, 宮川直子 ( 大森正之環境経済学ゼミナール 3 年合同 ) 2013 年 12 月 10 日脱稿 目次 はじめに第 1 章オーガニック産業の歴史と現状 1-1 EU のオーガニック産業の歴史 1-2 アメリカのオーガニック産業の歴史 1-3 日本のオーガニック産業の歴史 第 2 章 EU アメリカ 日本のオーガニック産業の分析と目指すべきモデルの検討 2-1 EU アメリカ 日本のオーガニック産業の比較 2-1-1 生産に関する比較 2-1-2 流通に関する比較 2-1-3 消費に関する比較 2-2 各モデルの特徴とその類型化 2-2-1 政策主導型の EU 2-2-2 市場主導型のアメリカ 2-2-3 市場主導型 ( 発展初期段階 ) の日本 2-3 目指すべきモデルの検討 第 3 章 EU をモデルとした日本のオーガニック産業発展のシナリオ 3-1 日本のオーガニック産業における 選択的拡大 3-1-1 国内生産の拡大 3-1-2 国内生産と輸入の共存共栄 3-1-3 輸入の拡大 3-2 生産 流通 消費の局面からみた日本のオーガニック産業発展のシナリオ 3-2-1 生産に関する目標水準 3-2-2 流通に関する目標水準 3-2-3 消費に関する目標水準 第 4 章シナリオを実現するための政策 4-1 生産に関して行う政策 4-1-1 有機農業への転換補助政策の強化 4-1-2 有機加工食品の認証範囲の拡大 4-1-3 法定外目的税としての農薬 化学肥料税の導入 4-2 流通に関して行う政策 4-2-1 オーガニック公共調達 の促進 4-2-2 有機食品の関税引き下げの検討 4-2-3 有機大豆の競争的調達の拡大 4-2-4 オーガニックコットン コーヒー生産への環境 ODA の実施 4-3 消費に関して行う政策 4-3-1 条例を用いた学校給食への地元産有機農産物の供給促進 4-3-2 消費税における有機食品への軽減税率の適用 おわりに 注釈 参考文献 資料 参考 URL 調査協力企業 はじめにオーガニックとは 有機農法によって生産されたという意味である 有機農法は農薬や化学肥料を原則として使用しない農法であり 農場周辺の水質環境と生物多様性の保全に貢献する 有機食品の購入は環境への負荷が少ない製品の選択であり 一種のグリーン購入である 本稿では有機食品のエコ商品としての側面に注目し 日本と日本向けの有機食品輸出国のオーガニック産業の発展と それに伴う国内外での環境保全のため どのような政策を実施すべきかを述べる なおオーガニック産業とは 有機食品供給に関わる経済活動すなわち生産 加工 流通の総称である 第 1 章では EU アメリカ 日本のオーガニック産業の歴史を振り返り 第 2 章では各々のオーガニック産業を 生産面と流通面とそれらを規定する消費面の 3 つの局面から比較する これらの比較を通し理想的なオーガニック産業のモデルとして EU を選定する 第 3 章では EU をモデルとした日本のオーガニック産業の発展のシナリオを設定する 第 4 章ではこのシナリオを実現するために どのような制度や政策が必要であるかを述べる 主だった具体的な政策として 生産に対し 有機農業への転換補助政策の強化 流通に対し有機食品の 公共調達 1

や 競争的輸入 の促進 そして消費に対し 学校給食での地元産有機農産物の利用の促進 を提言する すでに軌道に乗りつつある日本のオーガニック産業を EU 水準まで発展させるには 有機農業の支援だけでは不十分である 本稿で提言する政策を通じ 有機食品を選好しオーガニック産業をリードするグリーンコンシューマーを鼓舞し 流通での競争を促進する必要がある 本研究は消費と流通がリードする日本のオーガニック産業の発展を展望する 第 1 章オーガニック産業の歴史と現状 EU とアメリカは 合わせて世界の有機食品の市場の 96% 1 を占める EU とアメリカを日本の比較対象とし それらのオーガニック産業の歴史を振り返る 表 1 は EU アメリカ 日本のオーガニック産業の歴史を簡潔に表したものである 表 1.EU アメリカ 日本におけるオーガニック産業と有機食品関連制度の歴史 1960~ 1970 1970~ 1980 1980~ 1990 1990~ 2000 国際的な動向 EU アメリカ 日本 補足 (62) レイチェル カーソン (60) 共通農業政策 (61) 農業基本法の制定 1. 農薬などの化学物質による環境 沈黙の春 が出版され (CAP) の創設 汚染の重大性を初めて訴えたことが る 補足 1 反響を呼んだ (72) 国際有機農業連盟 (IFOAM) の発足 (92)92 年 CAP 改革 補足 2 (92) 有機農業に対する政府支援の開始 補足 3 (93)EU 共通の有機認証制度の開始 (80's) 有機食品ブームが起こる (89) 農水省に有機農業対策室が設置される 2. CAP において有機農業が明確に位置づけられる (92) 有機農産物及び 3. 1992 年のCAP 改革において有特別栽培農産物に係る機農業の導入を促す環境支払い制表示ガイドライン を制定度が新設された (96) イギリスにおいて BSE( 牛海綿状脳症 ) のヒトへの脅威が公表される (99) 有機食品の国際規格ができる ( 有機的に生産される食品の生産 加工 表示及び販売に係るガイドライン が採択される ) 補足 4 ) (90's) 有機食品の市場が 10 億ドル規模に拡大 4. 国連食糧農業機関 (FAO) と世界保健機関 (WHO) の合同委員会で 国際的な食品規格の策定などを行うコーデックス委員会で 99 年に同ガイドラインが採択された 2000~ 2010 (04)04 年 CAP 改革 補足 5 (02)02 年農業法改正で有機農業に対する政府支援の条項が新設される (02) 政府による有機認証制度 (National Organic Program:NOP) の開始 出典 : 蔦谷, 2006, p.p.176-178; 農業環境技術研究所, 2011, p.p.211-219 2 (00) 政府による有機認証制度 ( 有機 JAS) の開始 (05) 有機 JAS に新たに畜産物と飼料が追加 (06) 有機農業の推進に関する法律 制定 以後有機農業に対する政府支援の開始 5. 以降 農業政策における環境保護重視への明確な転換がなされる

1-1 EU のオーガニック産業の歴史 1980 年代から 食料自給率の向上と引き換えに地下水汚染 2 など 農業による大規模な環境破壊が注目された EU の共通農業政策 (CAP) では 環境保全型農業が重視された 有機農業に対する補助金の支援制度が制定されたのは 1992 年と世界に先駆ける 3 1-2 アメリカのオーガニック産業の歴史アメリカでも 1970 年代に農業がもたらす土壌汚染が問題視されて以降 農業法の改正では有機農業が重視された アメリカの有機認証制度は 1990 年代に有機食品市場が 10 億ドル規模に拡大する中 消費者から有機食品と非有機食品の差別化に対する要望を受けて 2002 年に制度化された しかし 有機農家に対する補助政策の制定は 2002 年の農業法改正まで行われなかった 1-3 日本のオーガニック産業の歴史日本政府は 1980 年代後半より環境保全型農業の推進に着手した 1980 年代の有機食品ブームの中で消費者から有機食品と非有機食品の差別化に対する要望があり 2000 年に日本農林規格 (JAS) 法によって有機認証制度である有機 JAS 制度が確立された 2006 年 有機農業の推進に関する法律が制定されて以降ようやく有機農家に対する支援が展開された 表 2. オーガニック産業の比較に用いる指標 A 生産に関する指標 a1 利用農地に占める有機農地の割合 a2 有機農家に対する主な補助金制度の特徴 B 流通に関する指標 b1 各国の食品売り上げに占める 有機食品の割合 b2 総合スーパーマーケットにおける有機食品の 販売の実態 C 消費に関する指標 c1 消費者の有機食品の一人当たり年間平均出費額 c2 有機食品の環境保全性を評価して購入する 消費者の割合 生産に関する指標として a1 は農業生産における有機農業の普及具合を比較するためのものであり a2 は有機農業を取り巻く制度的環境の充実度を比較するためのものである 次に流通に関する指標として b1 は各国の有機食品の市場規模を測るものであり b2 では一般の食料品が購入される現場で有機食品がどれだけ普及しているかを比較する 消費に関する指標として c1 は消費者の有機食品の購入金額を比較するものである c2 は消費者の間で自然環境の保全のためという利他的動機が どの程度有機食品の購入動機とされているかを比較する 第 2 章 EU アメリカ 日本のオーガニック産業の分析と目指すべきモデルの検討 2-1 EU アメリカ 日本のオーガニック産業の比較まず オーガニック産業のうち生産と流通を また それらを根本から規定する消費を取り上げる EU アメリカ 日本を 生産 流通 消費それぞれの局面から比較するため 表 2 に示した指標を設定する 3

2-1-1 生産に関する比較表 3 では 生産に関する指標に基づき各国のデータを整理した 表 3. 生産に関する比較 a1 利用農地に占める有機農地の割合 利用農地に 占める有機 農地の割合 有機農地の面積 イタリア (2010 年 ) 8.74% 1,113,742ha アメリカ (2008 年 ) 0.60% 1,948,946ha 日本 (2009 年 ) 0.23% 9,092ha a2 有機農家に対する主な補助金制度の特徴 EU アメリカ 日本 各国の特徴 開始年 :1992 年 有機農業の維持に対する支払い 有機農業への転換に対する支払い 有機認証 検査費用を負担 ( ドイツ イタ リアなど一部の国で ) 開始年 :2002 年 有機農業の維持に対する支払い 有機農業への転換に対する支払い 有機認証 検査費用を負担 開始年 :2011 年 EU やアメリカと異なり 有機農業を含 む環境保全型農業の転換と維持の区別 なく一律の支払い 出典 :FiBL&IFOAM, 2012, p.p.308-311; 西尾道徳の環境保全型農業レポート a1 では 稲作中心の日本は 有畜畑作を中心とした EU 諸国と農業構造が類似しない そのため 全人口に占める農業従事者の割合が日本と近似するイタリアを EU の代表国とした EU で有機農場面積が拡大した要因として a2 のような補助金制度の充実が挙げられる アメリカで行われる有機農業への支援内容は EU と類似するが 利用農地に占める有機農地の割合は 0.60% と低く アメリカでは EU ほど有機農業への補助金が有機農業生産の推進力になっていない 日本では現在 有機農業支援は 2011 年に開始された 環境保全型農業直接支援対策 に含まれる有機農業への補助金のみである 日本の有機農業への支援制度作りは 80 年代から着手されて いたが推進力は弱い 2-1-2 流通に関する比較表 4 では 流通に関する指標に基づき各国のデータを整理した 表 4. 流通に関する比較 b1 各国の食品売り上げに占める 有機食品の割合 E U 食品売り上げ に占める 有機食品の 割合 有機食品市場 の規模 ドイツ (2009 年 ) 3.40% 約 7,500 億円 フランス (2009 年 ) 1.90% 約 4,000 億円 イギリス (2007 年 ) 2.70% 約 3,300 億円 アメリカ (2008 年 ) 3.50% 約 2 兆 2,900 億円 日本 (2009 年 ) 0.32% 約 1,300 億円 b2 総合スーパーマーケットにおける有機食品の 販売の実態 一般食料品の売上高が国内上位の総合スーパー マーケット イギリス アメリカ 日本 総合スーパー マーケットの名称 Tesco( テスコ ) Asda( アズダ ) 4 Sainsbury s ( セインズベリー ) Wal-Mart Stores ( ウォルマート ) Costco( コストコ ) Kroger( クローガ ) イオン セブン & アイ ホールディングス ユニーグループ ホールディングス 国内売上高 (2012) 約 6 兆 8,500 億円 約 3 兆 5,800 億円 約 4 兆 8,300 億円 約 26 兆 4,700 億円 約 7 兆 7,600 億円 約 5 兆 9,100 億円 約 5 兆 6,900 億円 約 3 兆 5,000 億円 約 8,600 億円 総合スーパーマーケットの有機食品の販売にみられる 各国の特徴 イギリス アメリカ 日本 各国の特徴 競争の激化 巨大資本の参入による市場の集中 競争も寡占も起きていない 4

出典 :FiBL&IFOAM, 2010, p.187; 2011, p.p.158-159; 2012, p.66; European Commission, 2010, p.41; Costco Wholesale Corporation, 2012, p.1; Kroger, 2012, p.38; Sainsbury s Supermarket Ltd., 2013, p.27; Tesco, 2013, p.21; Walmart Stores, inc., 2013, p.14; p.52; イオン株式会社, 2013, p.22; セブン & アイホールディングス, 2013, p.14; ユニーグループ ホールディングス, 2013, p.2 ばに有機食品業界に参入し 市場はウォルマートによ る独占に近い状態にある イギリスをはじめ EU にお いてはアメリカよりも有機食品市場が競争的であると 推定できる 一方 b1 を見ると 日本の有機食品市場は EU やアメリカよりも未発達である EU やアメリカでの有機食品市場の発達を見ても GMS における流通の一層の拡大が望ましい 図 1 によるとアメリカと EU 諸国が多くのシェアを占める 図 2. イギリスの GMS における有機食品の販売シェア (2011 年 ) 図 1. 国別の有機食品の売上高 (2010) Tesco( テスコ ) 1% 2% 4% 7% 8% 27% Sainsbury's( セインズベリー ) Waitrose( ウェイトローズ ) Asda( アズダ ) 9% Morrisons( モリソン ) 出典 :FiBL&IFOAM, 2012, p.66 19% 23% Co-operative( コーオペレーティブ ) Marks&Spencer( マークス & スペンサー ) Lidl( リドル ) EU では ドイツ フランス イギリスの有機食品の市場規模が大きい 5 特にイギリスは 有機食品の販売経路として総合スーパーマーケット ( 以下 GMS: General Merchandise Store) が発達している 6 また日本の有機食品市場は 生活協同組合や会員制グループなどの閉鎖的な市場から専門小売店やごく少数の GMS などの開放的な市場に移行しつつある 7 そこで今後の有機食品市場の発展には GMS の有機食品取り扱いによる流通拡大が不可欠だと考える 8 そのため GMS の品揃えに有機食品の浸透が進むイギリスを b2 で用いる EU の代表国とした イギリスとアメリカは ともに GMS での有機食品の 販売が進んでいる イギリスでは 各社は輸入により 店頭の有機食品の品揃えを充実させつつ競争を激化さ せた 図 2 はイギリスの GMS における有機食品の販 売シェアを表す アメリカでは 特に一般食料品市場 でも圧倒的な業績を誇るウォルマートが 2000 年代半 その他 出典 :Soil Association, 2012, p.10 5

2-1-3 消費に関する比較表 5 では 消費に関する指標に基づき各国のデータを整理した 表 5. 消費に関する比較 c1 消費者の有機食品の一人当たり年間平均出費額 EU(2010 年 ) アメリカ (2010 年 ) 日本 (2009 年 ) 割合 4,766 円 8,450 円 1,040 円 c2 有機食品の環境保全性を評価して購入する消費 者の割合 ( 複数回答可のアンケート調査より ) 割合 EU(2004 年 ) 43.0% アメリカ (2010 年 ) 24.0% 日本 (2012 年 ) 27.5% 出典 :Hanne Torjusen, 2004, p.73; Organic Trade Association, 2010, p.4; 2011, p.5; 特定非営利活動法人 IFOAM ジャパンオーガニックマーケット リサーチプロジェクト, 2010, p.24; 日本有機農業研究会, 2012, p.25 c1 によると アメリカにおける一人当たり出費額が多いことがわかる EU においてはドイツやデンマークではアメリカよりも一人当たり出費額が多いが 他の EU 諸国では少ない国もある c1 の数値は EU のうち 25 か国の平均である EU やアメリカに比べると 日本の消費者は有機食品の出費額が少ない c2 によると EU では自然環境の保全という利他的動機 9 が有機食品の購入動機のうち高い割合を占める どの地域においても有機食品の購入動機として最も多いのは 健康のため であるが 同時に 環境保全のため という理由も選ぶ消費者は EU に特に多い つまり EU の消費者は有機食品の環境保全性を評価している 2-2 各モデルの特徴とその類型化 2-2-1 政策主導型の EU EU のオーガニック産業は 政策主導型 である 充実した生産支援制度が有機食品の安定した供給をもたらし市場を活性化させ イギリスの GMS 間で の有機食品の販売競争も 2000 年代に始まった 2-2-2 市場主導型のアメリカアメリカのオーガニック産業は 市場主導型 である 市場の発展を受けて有機認証や関連制度が整備された また有機食品市場は 大手 GMS のウォルマートが有機食品を取り扱うことでその規模をより一層拡大させた 有機食品市場の拡大が生産支援制度の充実を後押しした 2-2-3 市場主導型 ( 発展初期段階 ) の日本日本のオーガニック産業は EU やアメリカに比べ発展途上のため特徴づけが難しい 有機農家への支援制度は不十分だが 有機食品の売り上げの成長率は高い 2004 年に約 400 億円だった市場規模は 2009 年には約 3 倍の約 1,300 億円に成長した 10 しかし 2-1-2 で述べた通り 有機食品の GMS での流通は十分に進まず 市場は発展初期段階に留まる 2-3 目指すべきモデルの検討次章で日本のオーガニック産業発展のシナリオを設定するにあたり 日本が目指すべき先行モデルが EU 型とアメリカ型のどちらであるかを検討する 生産に関しては 有機農業の普及と支援制度の充実という観点から EU に優位性がある 流通に関しては 食品売り上げに占める有機食品の割合という観点からアメリカに優位性がある しかしアメリカの独占的な市場と異なり イギリスでは GMS 間での有機食品の販売競争が盛んであることから EU 型が望ましいと判断した 11 消費に関しては 消費者が有機食品の環境保全性を評価することから EU に優位性がある 今日まで有機食品の市場規模の拡大には消費者自身の健康や安全といった利己的動機に基づく消費が最も貢献した しかし有機食品の栄養面での優位性が否定されつつある現在 12 今後の有機食品市場の拡大のためには消費者が利他的動機から有機食品を購入するようになる必要がある 以上の理由から生産と消費の局面で優位性が認められる上に 流通の局面でも競争的な市場を有する EU 型のオーガニック産業を日本が目指すべきモデルに選定する 6

第 3 章 EU をモデルとした日本のオーガニック産業発展のシナリオ 3-1 日本のオーガニック産業における 選択的拡大 農業生産において特定の品目を選択し その生産を伸ばす 選択的拡大 は 1961 年の農業基本法の 1 つの柱であった 今後 国内外におけるオーガニック産業の発展とそれに伴う国内外の農業環境の保全を行うためには 有機農産物の国内生産の拡大に加え 輸入の拡大も検討する必要がある そこで 選択的拡大 という手段をオーガニック産業にも適用するべきだと考え この産業における 選択的拡大 とする 工品畜産は 有機 JAS 規格の制定が 2005 年と他の農産物より 5 年遅れており 支援制度が未だに存在しない 今後 国内の有機畜産の発展には 生産支援制度の新設が不可欠である 特に国産の牛肉は高い国際競争力を有する 14 生産支援制度の新設により 生産者が国際競争力を一層高める手段として有機農法を選択しやすくなると考える 現在 国内で格付けされている有機畜産物は 牛肉 牛乳 鶏肉 卵だが 15 支援制度の新設により 豚肉にまで拡大すると考える 一方 広い牧草地や乾燥した気候などの地理的な好条件からオーストラリアやニュージーランドでは有機畜産が盛んである 16 有機畜産物の輸入は現在 牛肉に限りわずかに行われている 17 4 章で提言する政策により 国内の有機食品の需要が拡大すれば 輸入は増加すると考える 3-1-1 国内生産の拡大 : 野菜 米 果物 緑茶図 3 は国内で格付けされた有機農産物の内訳を表している 野菜と米は 国産の有機農産物の中でそれぞれ約 7 割 約 2 割を占める 3-1-3 輸入の拡大 : 大豆 コットン コーヒー大豆は企業の有機商品戦略に利用される主要品目である 表 6 に海外から有機の大豆 コットン コーヒーを調達する日本の代表的な企業をまとめた 図 3. 国内で格付された有機農産物の内訳および格付量 (2011 年 ) 2% 2% 4% 3% 3% 17% 69% 出典 : 農林水産省, 2012, p.p.1-2 野菜 (40,288 トン ) 米 (10,018 トン ) 果物 (2,275 トン ) 緑茶 (1,986 トン ) 大豆 (1,132 トン ) 小麦 (1,079 トン ) その他 (1,666 トン ) 野菜と米は 農薬や化学肥料の使用を地域の慣行レベルから 50% 以上削減する特別栽培制度が各自治体で整備されており 他品目に比べ有機農業への参入が容易だといえる また他の国産農産物に比べ輸出が盛んな果物 緑茶 13 も 国際競争力を一層高めるために今後有機農法が多く選択されると考える 3-1-2 国内生産と輸入の共存共栄 : 畜産物とその加 表 6. 海外から有機の大豆 コットン コーヒーを調達する日本の代表的な企業 企業名 大豆 業種 主な取扱商品と備考 主な調達先 イオン ( 株 ) 小売 豆乳など アメリカ 中国 ( 株 ) マルサンアイ 名古屋製酪 ( 株 ) 製造 豆乳 アメリカ 中国 製造 豆乳 アメリカ カナダ ヤマサ醤油 ( 株 ) 製造しょうゆ不明 コットン 伊藤忠商事 ( 株 ) 卸売 ( 株 ) 良品計画小売 コーヒー ( 株 ) モスフードサービス 外食 生産支援活動も展開 レインフォレスト アラ インド中国など コロンビア インドネシア 7

UCC 上島珈琲 ( 株 ) 製造 イアンス認証 18 も同時に取得 レインフォレスト アライアンス認証も同時に取得 グアテマラ ブラジル など 出典 : トップバリュ (http://www.topvalu.net/:2013 年 10 月 19 日閲覧 ) 商品情報マルサンアイ株式会社 (https://www.marusanai.co.jp/lineup.html: 2013 年 10 月 19 日閲覧 ) スジャータめいらくグループ : 豆乳 大豆飲料 (http://www.sujahta.co.jp/item/soymilk/soy milk.html: 2013 年 10 月 19 日閲覧 ) 商品情報ヤマサ醤油株式会社 (http://www.yamasa.com/products/: 2013 年 10 月 19 日閲覧 ) 伊藤忠商事株式会社 CSR (http://www.itochu.co.jp/ja/csr/activities/poc/ :2013 年 11 月 11 日閲覧 ) 良品計画株式会社無印良品くらしの良品研究所 (http://www.muji.net/lab/report/100505-org anic.html:2013 年 11 月 11 日閲覧 ) 株式会社モスフードサービス MOS BURGER 新着トピックス 2009/05/15 (http://www.mos.co.jp/news/2009051502.ht ml:2013 年 11 月 13 日閲覧 ) UCC 上島珈琲株式会社 UCC の環境活動 (http://www.ucc.co.jp/company/eco/certificat ed/index.html:2013 年 11 月 12 日閲覧 ) 図 4. 一般大豆の輸入先の割合 (2012) 20% アメリカ 3% カナダ 16% 61% 出典 : 農林水産省, 2013, p.1 中国 その他 図 4 は一般大豆の輸入先の割合を表している 一般大豆の輸入先の割合はアメリカとカナダが多く 中国は少ない しかし企業による中国での有機大豆の契約栽培は増加しており その輸入先の割合は中国が多いと推察する 有機食品や有機原材料の輸入拡大は海外の農地環境の保全に繋がるため 国内生産を脅かさない限り 世界規模での環境保全を考えれば望ましい したがって大豆のような国内生産がそれほど適さない作物は輸入拡大も必要である 一方 オーガニックコットン コーヒーの調達は 生産地の労働環境の改善を目的とした CSR 活動の側面が重視される 以上のように 企業が海外から有機原材料を調達する目的は二分され 4 章で提案する政策の実現により このような目的で輸入有機原材料を調達する企業がさらに増えると考える 3-2 生産 流通 消費の局面からみた日本のオーガニック産業発展のシナリオ私たちは 日本のオーガニック産業が 20 年後に現在の EU 水準に達するシナリオを設定した 20 年という期間を設定した理由は以下の 2 点である 第一に私たちは自身の子供たちの世代までに日本で有機食品の購入が環境保全への貢献として周知されるようになることである 具体的には GMS の品揃えや給食において EU のように有機食品が日常的に選択されることである 第二に EU での有機農業への環境直接支払の開始が 1992 年であるのに対し 日本では 2011 年であり 有機農業の推進制度の導入が EU より約 20 年遅れているからである 日本のオーガニック産業がこの先 EU のような発展を遂げるためには 20 年で現在の EU 水準に到達する必要がある 以下では 日本のオーガニック産業における 20 年後の目標水準を以上の議論を踏まえて設定する 3-2-1 生産に関する目標水準全農地面積に占める有機農地面積の割合はイタリアと同水準の 9.0% に到達する 選択的拡大により野菜 米 果物 緑茶は国内生産が拡大する 野菜と米については特別栽培から有機栽培への移行が進む また国際競争力の高い果物と緑茶の農家に有機栽培が選択されることで更なる国際競争力の向上が見込まれる 畜産においても支援制度の新設により有機畜産物の生産が拡大し 国内生産と輸入とが共存共 8

栄する 以上を簡潔にまとめたものが以下の図 5 である 図 5. 生産に関する目標水準 現在 20 年後 利用農地に占める有機農地の割合 0.23% 9.00% 野菜 米 果物 緑茶 畜産 3-2-2 流通に関する目標水準食品売り上げに占める有機食品の割合がイギリスと同水準の 2.7% に上昇した場合 日本の有機食品の市場規模は約 1 兆 2,000 億円となる 19 GMS における有機食品の品揃えが充実し 野菜 米 果物 緑茶 畜産物は国産品が流通し 大豆は輸入品の流通が拡大する 以上を簡潔にまとめたものが以下の図 6 である 図 6. 流通に関する目標水準 現在 有機食品の市場規模 20 年後 1,300 億円 1 兆 2,000 億円 有機食品の流通 野菜 米 慣行 特別栽培から 有機栽培への移行の増加 生産拡大 国際競争力 のさらなる向上 支援制度の新設により生産拡大 国産品の流通拡大 ら EU と同水準の 65.0% に増加し 自然環境の保全を目的として有機食品を購入する消費者の割合も現在の 27.5% から 45.0% に増加する 第 4 章シナリオを実現するための政策 4-1 生産に関して行う政策 4-1-1 有機農業への転換補助政策の強化慣行農業から有機農業への転換には完了までに 2 年間 20 必要である 転換を開始した当初には作物の収穫量は減り 投下労働量が増えるため収入が減少する しかし転換完了後 農産物に表示できる有機 JAS マークの持つ付加価値により 生産量の減少分と追加労働に要する費用が補填されることで有機農家の経営は成り立っている 転換期間は有機 JAS マークの持つ付加価値による利益を享受できないため 農家が経営を成り立たせることは困難である 以上が有機農業への転換を妨げる要因である そのため転換期間に限り 農家の金銭的な損失を補填する補助政策が必要である 現在 有機農業への転換とその継続に対する補助政策が実施されているが 転換期間中のみならず転換後も引き続き定額の補助金が支給されている 2-1-1 で述べた EU やアメリカのように 転換期間中に収入の減少分を十分に補うような補助金制度に改善すべきである また有機農業が生物多様性と水質環境の保全をもたらすことから 慣行農業に対し有機農業の社会的便益は大きいといえる したがって有機農業の転換期間中に補助金を増額することは妥当である 果物 緑茶 畜産物 大豆 国産品の流通拡大輸出拡大国産品の流通拡大輸入品の流通拡大輸入品の流通拡大 4-1-2 有機加工食品の認証範囲の拡大表 7 に示す通り 2013 年時点で日本の加工食品の有機 JAS 規格では有機原材料を 95% 以上含有するものだけが 有機 と記載できる 一方 アメリカでは有機原材料を 70~94% 含有するものにも Made with organic 原材料 と記載できる 3-2-3 消費に関する目標水準消費者が EU と同様に環境保全への貢献という利他的動機から有機食品を選好するように意識改革がなされる そのためには第 4 章で述べる生産 流通 消費に関する政策を実施する必要がある 定期的に有機食品を購入する消費者の割合は現在の 21.4% か 9

表 7. アメリカと日本の加工品における有機認証範囲の違い 有機 原料 含有 率 100% 95% 以上 70% 以上 アメリカ 有機認証 マーク の貼付 有機の記載 に関する 規定 100% organic と表示可能 organic と表示可能 Made with organic 原材料 と表示可能 日本 有機認証 マーク の貼付 有機の記 載に関す る規定 有機と 表示可能 有機の 表示は 原則 不可能 出典 : Joel Forman, Janet Silverstein, 2012, p.e1407 そこで有機加工食品の認証範囲を 70% 以上まで拡大することを提案する これにより企業が有機加工食品の製造や販売に参入しやすくなると考える 有機加工食品のうち菓子類は雑貨店などで陳列され始めている そのため一般消費者の目につきやすく 有機食品の周知に貢献する重要な品目だと私たちは考える 現在 輸入は多いものの国内の製造が未開拓の有機の菓子類は この認証範囲の拡大により国内製造の増加が見込める 4-1-3 法定外目的税としての農薬 化学肥料税の導入農薬 化学肥料税の導入により それらの価格が上がるため過剰な使用を抑制することができる しかし 国税として農薬 化学肥料税を導入した場合 生産への影響は大きい 21 そこで私たちは法定外目的税としての農薬 化学肥料税の導入を提案する 2000 年 4 月に施行された地方分権一括法により 自治体独自の目的税を条例で設けることが可能になった 目的税では税収の使途が特定される 農薬 化学肥料税に賛同する自治体が独自に導入し 使用を抑制すべきである さらに その税収を有機農業の補助に充て その普及を促進できる 一部の毒物 劇物に指定される農薬は 購入の際に購入者情報の登録が必要である その情報は自治 体が管理するため 購入に応じて課税することができる しかし 化学肥料に関しては購入者情報の登録が必要ないため 現時点では化学肥料税の導入は難しい 化学肥料の購入の際にも購入者情報の登録を義務付けることで化学肥料に対しても課税することが可能になる 4-2 流通に関して行う政策 4-2-1 オーガニック公共調達 の促進 EU ではグリーン公共調達 ( 以下 GPP: Green Public Procurement) が推進されている これは政府が調達する物品を率先してグリーン化することによって生産を刺激し 価格を引き下げ 民間企業への波及効果を狙うものである GPP の対象品目には食べ物とケータリングが含まれ 第一条件として有機食品であることが挙げられる 日本では 国等による環境物品等の推進等に関する法律 ( 以下 グリーン購入法 ) により 政府が調達を促進すべき環境物品を定めている そのうちグリーン調達が十分に実施されているものは 92.8% に上る 22 しかし 現在環境物品リストに有機食品は含まれていない そこでグリーン購入法の環境物品に有機食品を含めることを提案する 具体的には 学校給食のほか役所の食堂や病院食などで 有機食品の使用を促進すべきである 有機食品の公共調達が進めば 有機食品に対する需要と供給が拡大し 価格が引き下げられ 私立の教育機関や民間企業への波及を狙うことができる 4-2-2 有機食品の関税引き下げの検討一般的に有機食品は生産コストが高く それに伴い価格も慣行のものよりも高くなる 有機食品の貿易促進のためには 有機食品に特別の低額関税を課し ( または撤廃し ) 慣行のものとの価格差を縮める方法が考えられる そのためには国際的に 有機 の共通の定義がなされ 有機認証を受けたもの という項目が HS コード 23 に新設されることが前提である しかし 国内外を問わずこのような要請は起きておらず実現は難しい 24 が 長期的には可能である 2011 年の APEC 首脳会議において環境物品 25 の関税を 2015 年末までに 5% 以下に引き下げることが合意された この環境物品は HS コードで分類 10

されているが 有機食品は含まれない しかし 環境配慮型製品の自由貿易の進展は明白である HS コードに 有機認証を受けたもの という項目が導入されれば 同時にその自由貿易交渉も可能になるだろう ここで 2013 年時点において交渉中の環太平洋連携協定 ( 以下 TPP 協定 ) を 有機食品の貿易拡大に貢献する重要な協定だと位置づけたい 日本が TPP 協定に加盟した場合 加盟国からの有機食品の輸入が容易になる 私たちが注目した菓子類についても関税率は 20% 水準の高さである 26 ため 関税の撤廃による価格低下から輸入が拡大する また菓子類の製造に使用する原材料には 麦 甘味資源作物 乳製品など TPP 協定の重要 5 品目 27 に含まれるものが多い そのため輸入有機原材料を使用した国内での菓子類の製造拡大には課題が残る 重要 5 品目に関して慎重かつ積極的な議論が必要だと考える 4-2-3 有機大豆の競争的調達の拡大 3-1-3 で述べた通り 日本の有機大豆製品の市場は競争状態にあり 多くの企業が有機大豆の調達を輸入に頼っている 有機大豆の輸入が多い理由として 大豆は関税が非課税であることが挙げられる 元来 生産コストが高い有機食品はその価格も高く 関税による影響を受けやすい アメリカ カナダ 中国から有機大豆を調達する企業は多く 特に中国からは契約栽培による調達が拡大しつつある 日本への輸出に関して一般の大豆は中国産の割合が低いものの 有機大豆ではその割合は高い 例えば 納豆に使用される有機大豆の 90% 以上は中国産である 28 そこで有機大豆の競争的調達の拡大には 政府による有機食品の消費促進キャンペーンの実施が必要である 有機食品全般の需要が拡大すれば 現在有機大豆を扱わない企業も競争に参入するだろう 特に中国産大豆に関して 日本に対し積極的に輸出できるよう企業の競争的調達の土台作りを行うべきである 4-2-4 オーガニックコットン コーヒー生産への環境 ODA の実施 3 章で CSR 活動の一環としてのオーガニックコットン コーヒーの調達が拡大するシナリオを述べた これらの CSR 活動のうち 労働環境の改善と自然環境の保全は ODA の取り組みの意義と一致す る内容である また CSR 活動は企業の事業戦略の一環でありながら公共性が高く ODA によって CSR 活動を促進することが可能であると考える 最近 オーガニックコットン コーヒーは CSR 活動の一環として調達する企業が増えつつある コットン コーヒーの原産国における有機農業に対し 環境 ODA を実施することを提案する 以下では コットンの主要原産国であるインドに対する環境 ODA について述べる インドは世界第 2 位のコットン生産国であり 日本の ODA( 政府開発援助 ) の拠出額が最も多い 29 インドでは現在 コットン農家の労働環境の悪化と 農薬使用による土壌環境の悪化が深刻である ODA 事業にオーガニックコットン生産への支援を加え インドのコットン生産への環境配慮型支援を行うべきであると考える 具体的な取り組みとして 有機種子の配布 有機農業の指導などが挙げられる 伊藤忠商事株式会社と株式会社クルックが行う プレオーガニックコットンプログラム 30 は海外への生産支援を企業が行う先進的な例である CSR 活動としてのオーガニックコットン コーヒーの調達が 環境 ODA の実施によってより容易になるであろう 同時に 企業が自ら環境 ODA の実施に参加 協力できるシステムを作ることが必要である 4-3 消費に関して行う政策 4-3-1 条例を用いた学校給食への地元産有機農畜産物の供給促進学校給食に地元産有機農畜産物を積極的に取り入れることは地産地消の取り組みと並行した有機農業の推進策である よって 地方自治体や教育機関は 食料自給率の向上に加え環境負荷の低減により社会的責任を果たすことができる 学校給食での地元産の有機農畜産物の使用は 環境教育の推進の観点から実施されるため 授業による教育活動と一体的に行われるべきである かかる経費についても 教育の実施に必要な経費であることから 授業料との一体化が望ましい イタリアでは有機食品の卸先の 3 割が給食である エミリア ロマーニャ州など 20 の州や市では 州法をもって学校給食における有機農産物の使用を推進している 日本における成功例では 愛媛県今治 11

市が 2005 年から 今治市食と農のまちづくり条例 において学校給食における有機農産物の使用を推進している 以上の例から 学校給食への地元産の有機農畜産物の供給促進のためには 条例を用いた推進が実態に即しているといえる 日本の首都圏地域においても 市町村単位で有機農畜産物の供給が困難な場合は都道府県単位での実施が期待できる 4-3-2 消費税における有機食品への軽減税率の適用表 8 によると EU 諸国では食料品に軽減税率を課しているが 日本では課されていない 2014 年 4 月に日本の消費税は 現行の 5% から 8% へと引き上げられることが決定した 2013 年 10 月時点では 日本の消費税率は一律 5% である 表 8. 各国の消費税率と食料品の軽減税率 標準税率 消費税率 食料品 イギリス 17.5% 0.0% フランス 19.6% 5.5% イタリア 20.0% 10.0% ドイツ 17.0% 6.0% 日本 5.0% 5.0% 出典 : WEB 金融新聞世界各国の消費税の税率一覧 (http://www.777money.com/torivia/syouhizei_worl d.htm: 2013 年 10 月 20 日閲覧 ) 日本での有機食品の消費を増加させるには 有機食品に軽減税率を課すことが望ましい そこで日本の消費税率が 8% に引き上げられる際に 有機食品の消費税率を現行の 5% のまま据え置くことを提案する しかし軽減税率を採用している EU 諸国では 2013 年現在 全ての国の標準税率が 15% 以上である さらに日本の税制調査会によれば 食料品に対する軽減税率の適用は標準税率が EU 並みの 2 桁となった場合の検討課題だとされている 31 有機食品への軽減税率を 2014 年に即時に導入することは難しいと考えられるが 長期的に議論が継続されれば実現可能である れた政策が主導するオーガニック産業を目指すには 以上の政策の実施が望ましい オーガニック産業の発展に資する EU の政策のポイントは オーガニック産業をリードするグリーンコンシューマーを鼓舞した点にある 農業生産の拡大は 食料自給率の向上と引き換えに水質環境の汚染を引き起こし 消費者の生活不安を招いた 消費者から政府に対して 環境保全への取り組み要請が高まった その高まりを 政策をもって有機農業への支持と大衆の有機食品への需要の喚起に繋げた さらにイギリスにおける GMS での有機食品の販売を巡る流通業界の競争が 有機食品の品揃えの充実と低価格化を引き起こし 需要拡大を誘導した このような需要拡大と流通業界の競争促進の循環が 今後の日本の政策において必要である 有機食品への需要拡大のために欠かせない政策は 学校給食での地元産有機農産物の利用促進 と 消費税における有機食品への軽減税率の適用 である さらに流通業界の競争促進のために 有機食品の関税引き下げの検討 企業の有機大豆の輸入における競争的調達の拡大 オーガニック公共調達の促進 が必要となる その他として生産に関する諸政策 ( 有機農業への移行補助政策の強化 加工食品の認証範囲の拡大 法定外目的税としての農薬 化学肥料税の導入 ) の実施も必要である 本稿に残された課題は以下である 生産 流通 消費に関する目標水準を EU のまま適用するに留まり 日本の特性を反映させ得なかった また各政策についてマクロ視点での検証に留まり ミクロ視点での検証が行われていない これらの課題にも今後取り組みたい 最後に 様々な形でご協力いただいた全ての企業の方々へ感謝の意を示し この論文を結ぶ おわりに EU に倣い 生産 流通 消費へのバランスの取 12

注釈 1FiBL and IFOAM, 2012, p.66 2 福士正博, 四方康行, 北林寿信, 1992, p.p.22-54 3 蔦谷栄一, 2006, p.p.176-178 4アズダは 1999 年よりウォルマートの傘下になった ( your ASDA [http://your.asda.com/about-asda/the-history-ofasda: 2013 年 10 月 20 日閲覧 ]) 5イギリスは 2008 年まで有機食品の売上高を伸ばし続けてきたが 社会情勢の変化による景気下降の影響で 2009 年に初めて 12% の大幅な減少を記録した 以降 図 1 にある通り 2010 年も売上高は 2,600 億円まで減少した (Soil Association, 2010, p.10) 6 74% 以上の有機食品が GMS で購入される この割合は ドイツでは 57% フランスでは 45% である (SIPPO and FiBL, 2011, p.17) 7 小川孔輔, 青木恭子, 2006, p.124 8こうした考え方に対して 顔の見える関係 における農産物流通として生活協同組合の産直事業や地産地消運動による消費者 農業者間の情報伝達に着目して その環境保全型農業のサポート機能を重視する考え方も有力である 例えば生源寺, 2006, p.188 を参照されたい 9 利他的動機とは動物福祉も含む 動物愛護の歴史が古いドイツでは特に 有機食品の購入動機に家畜の正当な扱いを挙げる消費者が多い 10FiBL&IFOAM, 2006, p.71, FiBL&IFOAM, 2012, p.66 11 独占的な市場はその企業が価格を操作することが可能なため望ましくない 122009 年 英国食品基準庁は 有機食品の栄養学的優位性を否定するレビューを発表した 現在イギリスでは 有機農業を根拠として 栄養面で優れているという内容を商品に表示することは禁止されている 13 日本から海外への果物 緑茶の輸出は近年急増している 2000 年から 2004 年にかけて りんごの輸出額は 482% みかんは 105% 梨は 77% 緑茶は 146% 増加した ( 阮蔚, 2005, p.43) 142005 年に発表された日豪両国政府による共同研究 日豪貿易経済枠組みに基づく共同研究 に基づくと 仮にオーストラリアからの牛肉の輸入関税を即時に撤廃したとしても国内の牛肉生産量は 2020 年までに 1.6 パーセント増加すると推計されている 152011 年 牛肉 5.0 トン 生乳 1,701.1 トン 鶏 22.6 トン 卵 50.1 トンが国内で生産された ( 農林水産省, 2012, p.2) 16Biological Farmers of Australia, 2012, p.p.20-27 172012 年 海外からの有機畜産物の輸入は牛肉加工食品 1 トンのみである ( 農林水産省, 2012, p.p.1-2) 18 労働環境の改善や自然環境の保全に取り組む農家に対する認証制度である 19 農林水産省, 2011, p.20 より 食品製造業の売上高を 44.8 兆円とし計算した 20 転換期間とは 農薬 化学肥料を避けることを基本とした農法を開始した時点から 有機 JAS 認証を取得するまでの 2 年間 ( 多年生作物については 3 年間 ) のことである 21スウェーデンでは 1990 年代初頭に農薬 化学肥料税を導入したが 農産物の価格が高騰し国際競争力が著しく低下した そのため 2010 年に同制度は廃止された 22グリーン調達を 95% 以上実施している品目は 2001 年度の 44.4% から 2011 年度には 92.8% に増加した ( 環境省, 2011, p.1) 23HS とは Harmonized Commodity Description and Coding System の略で HS コードは国際貿易商品の分類を世界的に統一するために規定されたものである このコードを適用している国は 200 か国以上あり 貿易において不可欠なものである 24 農林水産省国際部国際経済課貿易関税等チームからの回答を参考に述べた 25 環境配慮型の製品を指す際に用いられる用語である APEC の会議で用いられる環境物品リストには 2013 年現在機械製品を中心に 54 品目が規定され 食料品は含まれない 26チョコレート菓子の関税は 10~30% クッキー ビスケットは 13~20.4% シリアルは 20% である ( 実行関税率表 (2013 年 4 月版 ) : http://www.customs.go.jp/tariff/2013_4/index.ht m: 2013 年 10 月 20 日閲覧 ) 27TPP 交渉において日本が関税撤廃の対象外と主張する主要な 5 品目 ( 米 麦 牛肉 豚肉 乳製品 甘味資源作物 ) である 28 財団法人日本特産農産物協会, 2009, p.20 29 2010 年現在のデータである ( 参考 : 外務省の Web サイト ) 30 伊藤忠商事株式会社はオーガニック認証を受け 13

る前のコットンを プレオーガニックコットン としてプレミアをつけて買い取り 大手アパレルメーカーに販売している そのほかに 現地での有機農法の指導や有機種子の配布などを行っている 31 高田具視, 2004, p.156 参考文献 資料 1. Biological Farmers of Australia (2012) Australian Organic Market Report 2012 2. Costco Wholesale Corporation (2012) Annual Report 2012 3. European Commission (2010) An analysis of the EU organic sector 4. European Commission (2011) Buying green!: A handbook on green public procurement 5. FiBL and IFOAM (2006) The world of organic agriculture: Statistics and emerging trends 2006 6. FiBL and IFOAM (2010) The world of organic agriculture: Statistics and emerging trends 2010 7. FiBL and IFOAM (2012) The world of organic agriculture: Statistics and emerging trends 2012 8. Hanne Torjusen, Lotte Sangstad, Katherine O'Doherty Jensen, Unni Kjærnes (2004) European consumers' conceptions of organic Food: A review of available research 9. Joel Forman, Janet Silverstein (2012) Organic foods: Health and environmental advantages and disadvantages Pediatrics, 130, p.e1406-e1415 10. Kroger (2012) Fact Book 2012 11. Organic Trade Association (2010) US families organic attitudes & beliefs: 2010 tracking study 12. Organic Trade Association (2011) 13. Sainsbury s Supermarket Ltd.(2013) Annual Report and Financial Statements 2013 14. SIPPO and FiBL (2011) The organic market in europe: Overview and market access information 15. Soil Association (2010) Organic market report 2010 16. Soil Association (2012) Organic market report 2012 17. Tesco(2013) Annual Report 2013 18. イオン株式会社 (2013) 有価証券報告書 19. 小川孔輔, 青木恭子 (2006) 有機農産物の生産流通システムに関する調査研究 講演および調査視察の要約 イノベーション マネジメント 第 3 号 p.p.123-160 20. 小川孔輔, 酒井理 (2007) 有機農産物の流通とマーケティング 農山漁村文化協会 21. 環境省 (2011) 国等によるグリーン購入の実績及びその環境負荷低減効果等 22. シュムペーター ( 塩野谷祐一, 中山伊知郎, 東畑精一訳 ) 経済発展の理論 岩波文庫, 1977 年 (Joseph A. Schumpeter, Theorie der wirtschaftlichen Entwicklung, 2. Aufl., 1926) 23. 生源寺眞一 (2006) 現代日本の農政改革 東京大学出版会 24. 生源寺眞一 (2011) 日本農業の真実 筑摩書房 25. セブン & アイホールディングス (2013) 有価証券報告書 26. 高田具視 (2004) 食品等に関する軽減税率の導入問題 税務大学校論叢 46 号 p.p.152-266 27. 蔦谷栄一 (2006) オーガニックなイタリア農村見聞録 家の光協会 28. 財団法人日本特産農産物協会 (2009) 平成 20 年度大豆の品質に関する調査報告書 29. 財務省 (2013) 日本貿易統計 30. 東畑精一 (1968) 日本農業の変革過程 岩波書店 31. 特定非営利活動法人 IFOAM ジャパンオーガニックマーケット リサーチプロジェクト (2010) 日本におけるオーガニック マーケット調査報告書 IFOAM ジャパン 32. 特定非営利活動法人日本有機農業研究会 (2012) 有機農業への消費者の理解増進調査報告 消費者意識アンケートと生産者 消費者の交流事例 日本有機農業研究会 33. 独立行政法人農業環境技術研究所 (2011) 農業環境研究 2001-2010 独立行政法人農業環境技 14

術研究所 34. 農林水産省 (2011) 食品産業動態調査 35. 農林水産省 (2012) 平成 23 年度認定事業者に係る格付実績 36. 農林水産省 (2013) 日本の大豆の年次別国別輸入状況 37. 福士正博, 北林寿信, 四方康行 (1992) ヨーロッパの有機農業 家の光協会 38. ユニーグループ ホールディングス (2013) 有価証券報告書 39. 阮蔚 (2005) 日本の農林水産物輸出促進の動き 競争力強化をねらう 攻め への方向転換 農林金融 2005 年 6 月号 p.p.36-54 農林中央金庫 参考 URL 1. FAOSTAT (http://faostat.fao.org/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 2. ORGANIC FARMING - EUROPA (http://ec.europa.eu/agriculture/organic/splash_ en:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 3. United States Department of Agriculture (http://www.usda.gov/fundinglapse.htm:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 4. 外務省 (http://www.mofa.go.jp/mofaj/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 5. 環境省 (http://www.env.go.jp/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 6. 国税庁 (http://www.nta.go.jp/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 7. 西尾道徳の環境保全型農業レポート (http://lib.ruralnet.or.jp/nisio/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 8. 農林水産省 (http://www.maff.go.jp/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 9. プレオーガニックコットンプログラム (http://www.preorganic.com/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 10. 在日オーストラリア大使館 (http://www.australia.or.jp/:2013 年 11 月 6 日閲覧 ) 調査協力企業 訪問企業 1.MIEPROJECT 株式会社 ( 訪問日 2013 年 5 月 24 日 ) 2. 松本牧場 ( 訪問日 2013 年 5 月 25 日 ) 3. 株式会社ナチュラルマート ( 訪問日 2013 年 5 月 27 日 ) 4. オーサワジャパン株式会社 ( 訪問日 2013 年 5 月 28 日 ) 5. 株式会社ナチュラルハウス ( 訪問日 2013 年 6 月 14 日 ) 6. 内外食品株式会社 ( 訪問日 2013 年 6 月 15 日 ) 7. 特定非営利活動法人日本オーガニック & ナチュラルフーズ協会 (JONA) ( 訪問日 2013 年 6 月 20 日 ) 8. 特定非営利活動法人 IFOAM ジャパン ( 訪問日 2013 年 7 月 2 日 ) 9. 伊藤忠商事株式会社 ( 訪問日 2013 年 7 月 22 日 ) 質問票回答企業 10. 株式会社鎌倉ハム村井商会 ( 質問票への回答 2013 年 5 月 13 日 ) 11. オーストラリア大使館 ( 質問票への回答 2013 年 5 月 22 日 ) 12. 農林水産省国際部国際経済課貿易関税等チーム ( 質問票への回答 2013 年 6 月 18 日 ) アンケート回答企業 13. 株式会社ノヴァ ( アンケート回答 2013 年 6 月 21 日 ) 14. 株式会社ミトク ( アンケート回答 2013 年 6 月 19 日 ) 15. 株式会社むそう商事 ( アンケート回答 2013 年 6 月 24 日 ) 16. 株式会社オーガニックス ( アンケート回答 2013 年 6 月 20 日 ) 15