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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

情報解禁日時の設定はありません 情報はすぐにご利用いただけます 基礎生物学研究所配信先 : 岡崎市政記者会東京工業大学配信先 : 文部科学記者会 科学記者会 報道機関各位 2017 年 7 月 25 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所国立大学法人東京工業大学 遺伝子撹拌装置をタイミング良く染色体か

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

生物時計の安定性の秘密を解明

報道発表資料 2007 年 8 月 1 日 独立行政法人理化学研究所 マイクロ RNA によるタンパク質合成阻害の仕組みを解明 - mrna の翻訳が抑制される過程を試験管内で再現することに成功 - ポイント マイクロ RNA が翻訳の開始段階を阻害 標的 mrna の尻尾 ポリ A テール を短縮

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

Microsoft Word - 研究報告書(崇城大-岡).doc

< 用語解説 > 注 1 ゲノムの安定性ゲノムの持つ情報に変化が起こらない安定な状態 つまり ゲノムを担う DNA が切れて一部が失われたり 組み換わり場所が変化たり コピー数が変動したり 変異が入ったりしない状態 注 2 リボソーム RNA 遺伝子 タンパク質の製造工場であるリボソームの構成成分の

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

Microsoft Word CREST中山(確定版)

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平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

研究の背景 ヒトは他の動物に比べて脳が発達していることが特徴であり, 脳の発達のおかげでヒトは特有の能力の獲得が可能になったと考えられています この脳の発達に大きく関わりがあると考えられているのが, 本研究で扱っている大脳皮質の表面に存在するシワ = 脳回 です 大脳皮質は脳の中でも高次脳機能に関わ

背景 私たちの体はたくさんの細胞からできていますが そのそれぞれに遺伝情報が受け継がれるためには 細胞が分裂するときに染色体を正確に分配しなければいけません 染色体の分配は紡錘体という装置によって行われ この際にまず染色体が紡錘体の中央に集まって整列し その後 2 つの極の方向に引っ張られて分配され

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

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2016入試問題 indd

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 7 月 12 日 独立行政法人理化学研究所 生殖細胞の誕生に必須な遺伝子 Prdm14 の発見 - Prdm14 の欠損は 精子 卵子がまったく形成しない成体に - 種の保存 をつかさどる生殖細胞には 幾世代にもわたり遺伝情報を理想な状態で維持し 個体を

長期/島本1

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報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

図 1. 微小管 ( 赤線 ) は細胞分裂 伸長の方向を規定する本瀬准教授らは NIMA 関連キナーゼ 6 (NEK6) というタンパク質の機能を手がかりとして 微小管が整列するメカニズムを調べました NEK6 を欠損したシロイヌナズナ変異体では微小管が整列しないため 細胞と器官が異常な方向に伸長し

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

記 者 発 表(予 定)

CiRA ニュースリリース News Release 2014 年 11 月 20 日京都大学 ips 細胞研究所 (CiRA) 京都大学細胞 物質システム統合拠点 (icems) 科学技術振興機構 (JST) ips 細胞を使った遺伝子修復に成功 デュシェンヌ型筋ジストロフィーの変異遺伝子を修復

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

クワガタムシの大顎を形作る遺伝子を特定 名古屋大学大学院生命農学研究科 ( 研究科長 : 川北一人 ) の後藤寛貴 ( ごとうひろき ) 特任助教 ( 名古屋大学高等研究院兼任 ) らの研究グループは 北海道大学 ワシントン州立大学 モンタナ大学との共同研究で クワガタムシの発達した大顎の形態形成に

核内受容体遺伝子の分子生物学

れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

いることが推測されました そこで東京大学医科学研究所の氣駕恒太朗特任研究員 三室仁美 准教授と千葉大学真菌医学研究センターの笹川千尋特任教授らの研究グループは 胃がんの発 症に深く関与しているピロリ菌の感染現象に着目し その過程で重要な役割を果たす mirna を同定し その機能を解明しました スナ

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

論文の内容の要旨

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

平成18年3月17日

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

新規遺伝子ARIAによる血管新生調節機構の解明

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

博士学位論文審査報告書

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

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大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

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Microsoft Word - 最終:【広報課】Dectin-2発表資料0519.doc

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

妊娠認識および胎盤形成時のウシ子宮におけるI型IFNシグナル調節機構に関する研究 [全文の要約]


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研究の背景 B 型肝炎ウイルスの持続感染者は日本国内で 万人と推定されています また, B 型肝炎ウイルスの持続感染は, 肝硬変, 肝がんへと進行していくことが懸念されます このウイルスは細胞へ感染後,cccDNA と呼ばれる環状二本鎖 DNA( 5) を作ります 感染細胞ではこの

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受精に関わる精子融合因子 IZUMO1 と卵子受容体 JUNO の認識機構を解明 1. 発表者 : 大戸梅治 ( 東京大学大学院薬学系研究科准教授 ) 石田英子 ( 東京大学大学院薬学系研究科特任研究員 ) 清水敏之 ( 東京大学大学院薬学系研究科教授 ) 井上直和 ( 福島県立医科大学医学部附属生

リアルタイムPCRの基礎知識

染色体の構造の異常 Chromosomal structural changes

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( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

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研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

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ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

平成16年6月  日

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

細胞外情報を集積 統合し 適切な転写応答へと変換する 細胞内 ロジックボード 分子の発見 1. 発表者 : 畠山昌則 ( 東京大学大学院医学系研究科病因 病理学専攻微生物学分野教授 ) 2. 発表のポイント : 多細胞生物の個体発生および維持に必須の役割を担う多彩な形態形成シグナルを細胞内で集積 統

平成14年度研究報告

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平成 23 年 2 月 12 日筑波大学 不要な mrna を選択的に分解するしくみを解明 医療応用への新規基盤をめざす < 概要 > 真核生物の遺伝子の発現は DNA のもつ遺伝情報をメッセンジャー RNA(mRNA) に写し取る転写の段階だけでなく 転写の結果つくられた mrna 自体に対しても様々な制御がなされています 例えば mrna を細胞内の特定の場所に引き留めておくことや 正確につくられなかった mrna を素早く分解するようなことが知られています 筑波大学大学院生命環境科学研究科の杉山智康助教らは モデル実験生物の一つである分裂酵母 ( 注 1) を実験対象に用いて 減数分裂期に特異的に発現する mrna の分解に必要不可欠なタンパク質 Red1 を新たに発見し これまで詳細な機構が不明であった減数分裂期 mrna 分解機構のしくみを解明しました このような研究成果は 減数分裂期 mrna 分解機構の理解を深めると同時に 他の高等生物においても同様のシステム すなわち mrna 分解による分化抑制機構の存在を示唆するものといえます 本研究は ( 独 ) 科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業個人型研究 ( さきがけ ) の RNA と生体機能 研究領域 ( 研究総括 :( 財 ) 微生物化学研究会微生物化学研究所野本明男所長 ) における研究課題 RNA による染色体分配制御機構の解析 ( 研究代表者 : 杉山智康 ) の一環として行われました また本研究は 文部学省科学研究費 科学技術振興調整費 住友財団基礎化学研究助成の助成も受けています 本研究成果は 2011 年 2 月 11 日 ( 英国時間午後 3 時 = 日本時間 12 日午前零時 ) に科学誌 The EMBO Journal のオンライン速報版で公開されました < 研究の背景 > 減数分裂は 接合あるいは受精に先立ち正しく染色体数を半減させると同時に 相同染色体間に高頻度の組換えを誘発して遺伝情報の交換 多様性をもたらす極めて重要なステップになっています したがって 減数分裂機構の解明は 生殖細胞あるいは配偶子 ( 注 2) の形成不全や染色体異常などの疾病を理解するために不可欠な課題となっています しかしながら 減数分裂については そのメカニズムが複雑なことや 高等生物では生殖細胞というごく一部の細胞でしか起こらないことから その解明は体細胞分裂と比較し未解の点が多く残されているのが現状です 我々はモデル真核生物の一つである分裂酵母を用い 遺伝子発現制御機構の解明に取り組んでいます 分裂酵母における性分化 つまり減数分裂の開始および実行に必要な遺伝子群のmRNA( 減数分裂期 mrna) は 通常の増殖状態では殆ど存在していません 以前は このような低レベルの発現状態は転写を行わせないことによってなされ 1

ていると考えられていました しかし 減数分裂期 mrnaは増殖期にも転写されているのにもかかわらず 積極的に分解されていることが近年報告されました この分解機構には減数分裂期 mrna 上に存在するDSRと名付けられた特殊な分解シグナル ( 注 3) と Mmi1と呼ばれるRNA 結合タンパク質 ( 注 4) が必要であることが分かっていましたが 詳細なメカニズムは不明でした < 研究の内容 > 今回我々は 核内でドット状の構造体を形成する新規因子 Red1の機能解析から 以下の成果を得ました 1. Red1 遺伝子を欠損した分裂酵母は 増殖速度が低下していました また 減数分裂を誘導しても接合 ( 注 5) や配偶子の形成能が低下していました 2. Red1 遺伝子を欠損させた分裂酵母は 増殖中にもかかわらず多くの減数分裂期 mrna が細胞内に蓄積してしまうようになっていました 3. Red1タンパク質は Mmi1タンパク質やmRNAにポリA 鎖 ( 注 6) を付加する酵素 Pla1 などと物理的に相互作用するとともに これらのタンパク質群は核内でドット状に共局在していた ( 図 1) 4. Red1タンパク質は DSRを含むmRNAの分解を促進する (Red1あり: 半減期 ( 注 7) 5 分 ;Red1なし: 半減期 30 分以上 ) 5. 減数分裂を誘導すると 核内のRed1ドットは消失するが 減数分裂が完了した後は配偶子で増殖期と同じように 核内でドットを形成した ( 図 2) このような局在様式を示すタンパク質はこれまで知られていなかった 以上から 次の様な結論が導かれた 1. 減数分裂期遺伝子が発現してしまうと細胞増殖に有害であるため 増殖期にはこれらの発現が厳密に抑制されなければならない 2. 減数分裂を正常に開始 完了させるには 減数分裂期 mrna が発現すればよいのではなく 秩序だって発現していくことが必要不可欠である 3. 増殖期に減数分裂期 mrna が存在しないようにするためには 遺伝子の転写を開始させないようにするだけでは不完全で これら mrna を Red1 や Mmi1 の働きによって選択的に分解することも必須である ( 図 3) 4. 減数分裂が始まると Red1 の特徴的な局在は消失する この結果 選択的 mrna 除去機構が働かなくなり 減数分裂期 mrna は分解されずに発現するようになると予想される ( 図 3) 2

< 今後の展開 > 1. Red1およびMmi1は高等生物にも保存されたタンパク質であるため 同様の減数分裂期 mrna 除去機構があると考えられる 実際 線虫では体細胞において生殖細胞特異的な遺伝子が発現してしまう現象が知られている 今後 様々な生物において mrna 分解による分化抑制機構の存在を明らかにすることや それらの理解が進むことが期待される 2. mrna 分解による分化を抑制するということが 性分化のみならず他の分化 ( 神経に分化する ) をも抑制する可能性も考えられる ips 細胞などのように 異なる細胞に分化する能力を持つ細胞は 分化能をもつということと同様に 分化すべき時までは分化しないという能力を持つ必要もあることが予想される このように 様々な分化の抑制に mrna 分解が関与するかどうかも明らかにしていきたい 3. カポジ肉腫関連ウイルス (KSHV, 注 8) は宿主の攻撃から逃れるために 宿主のmRNA を分解するシステムをもっている このmRNA 分解機構とDSRによるmRNA 分解機構には共通点がいくつも存在する したがって 本研究を発展させることで KSHVに対する治療法の手がかりが得られる可能性も考えられる < 参考図 > Red1 Mmi1 重ね合わせ +DNA 図 1 Red1 は Mmi1 と同じようにドット状で存在する Red1 と Mmi1 にそれぞれ異なる蛍光を発するタンパク質を融合させそれぞれの局在を観察した DNA を青く染色している 増殖期接合減数分裂期配偶子 図 2 Red1 の局在の変化 Red1 に赤色の蛍光を発するタンパク質を付加し その局在を増殖期 減数分裂期 配偶子の各段階で観察した Red1 の局在は減数分裂期 mrna が発現する時期には消失していた 3

図 3 減数分裂期 mrna 分解のモデル DSR を含む mrna は 増殖期には Red1 や Mmi1 の働きにより RNA 分解装置 (RNase) により除去される 一方 減数分裂期には Red1 および Mmi1 の機能が阻害され その結果 mrna は分解されずにタンパク質を合成するために利用される < 用語解説 > ( 注 1) 分裂酵母 : 実験的に用いられている酵母は その増殖型式によって出芽酵母 ( パン酵母 ) と分裂酵母に分けられる 分裂酵母はヒトの細胞と同じように分裂して増殖する いずれの酵母も真核生物のモデル生物として古くから用いられている ( 注 2) 配偶子 : 高等動物の卵や精子のように 受精あるいは接合によって個体発生の元となる細胞を生み出す生殖細胞のこと ( 注 3)DSR:determinant of selective removal と呼ばれるmRNA 上の領域 DSRを含むmRNAを不安定化させる機能を持っているが 特定の配列や構造 長さなどは一切不明である ( 注 4)Mmi1: 減数分裂に必要とされるmRNAを増殖中の細胞から取り除くのに必須なタンパク質 mrnaのdsr 領域に直接結合する能力を持っている ( 注 5) 接合 : 減数分裂に先立ち 異なる性別 ( プラスとマイナス ) の分裂酵母が融合する過程のこと 接合した後 減数分裂を開始する ( 注 6) ポリ A 鎖 : 通常 mrna の末端には 100 から 200 程度 A が連続する配列が付加される これをポリ A 鎖と呼んでいる ポリ A 鎖が存在することで mrna は安定化させることや mrna から効率よくタンパク質を合成できるようにすることが知られている またこれとは逆に mrna を含めた各種 RNA の分解を促進するような例も多く報告されている ( 注 7) 半減期 : ある一定量の RNA やタンパク質が 半分量に減少するのに必要な時間のこと RNA の半減期は数分から 24 時間など その時間は様々である ( 注 8) カポジ肉腫関連ウイルス (Kaposi s sarcoma-associated herpesvirus, KSHV): ヘルペスウイルスに分類されるウイルスで 特に免疫機能が低下している患者において カポジ肉腫と呼ばれるがんや リンパ系で発生するがんの原因となることがある 現在 KSHV の増殖に対して直接作用する有効な薬は見つかっていない 4

< 論文名 > Red1 Promotes the Elimination of Meiosis-Specific mrnas in Vegetatively Growing Fission Yeast ( 分裂酵母 Red1 は増殖期における減数分裂期特異的 mrna の除去を促進する ) < 発表者 > 筑波大学大学院生命環境科学研究科助教杉山智康 ( スギヤマトモヤス ) < 取材に関する窓口 > 筑波大学広報室 Tel:029-853-2040 Fax:029-853-2014 5