「第2回小児薬物療法検討会議」

Similar documents
未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

(別添様式)

資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

アセトアミノフェンお知らせ文書_案_ _ver09.doc

要望番号 ;Ⅱ-24 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 8 位 ( 全 33 要望中

要望番号 ;Ⅱ-183 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者学会 ( 該当する ( 学会名 ; 日本感染症学会 ) ものにチェックする ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 1 位 ( 全 8 要望中 ) 要望する医薬品

スライド 1

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全

DRAFT#9 2011

(別添様式1)

減量・コース投与期間短縮の基準

審査結果 平成 25 年 9 月 27 日 [ 販売名 ] アナフラニール錠 10 mg 同錠 25 mg [ 一般名 ] クロミプラミン塩酸塩 [ 申請者名 ] アルフレッサファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 5 月 17 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 4 月 26 日開

(別添様式)

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

会社名

スライド 1

2008年10月2日

(別添様式1)

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

<4D F736F F D2082A8926D82E782B995B68F E834E838D838A E3132>

<4D F736F F D B A814089FC92F982CC82A8926D82E782B95F E31328C8E5F5F E646F63>

資料 2-4 イソプロピルアンチピリン製剤の安全対策について 平成 23 年 6 月 23 日平成 23 年度薬事 食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会 ( 第 2 回 ) 1. イソプロピルアンチピリン製剤の安全性に係る調査結果報告書 ( 別紙 ) 1 ページ

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

データの取り扱いについて (原則)

13

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

DRAFT#9 2011

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

5_使用上の注意(37薬効)Web作業用.indd

緒言

301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

医療機器添付文書の手引書第 5 版 第 3 章第 3 節 < テンプレート > についての補足解説 1. パルスオキシメータ (WG2 6.1から6.4) テンプレートを利用する場合 以下 5 点の解説を参照すること パルスオキシメータ ( 本体 ) 6.2 パルスオキシメータ ( 一体

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

用法・用量DB

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

<4D F736F F D2092E18F6F90B691CC8F648E998F6F90B682CC919D89C182CC94778C692E646F63>

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

Microsoft Word - 第14回定例会_平田様_final .doc

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

Microsoft Word - sa_niflec_ doc

医薬品の添付文書等を調べる場合 最後に 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 特定の文書 ( 添付文書以外の文書 ) の記載内容から調べる場合 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 最後に 調べたい医薬品の名称を入力 ( 名称の一部のみの入力でも検索可能

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 本資料の作成日 :2016 年 10 月 12 日商品名 : ビフィズス菌 BB( ビービー ) 12 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) による食経験の評価ビフィズス菌 BB-12

ダラツムマブってどんな薬? 初発の患者さん ( 初めて治療を受ける患者さん ) の治験募集についてー 米国で承認された ダラツムマブ という新薬について Q&A 形式でご紹介します Q&A の監修は 名古屋市立大学病院血液 腫瘍内科診療部長飯田真介先生です Q1 ダラツムマブという薬が米国で承認され

Ⅲ-1-7 ( 別添様式 1) 未承認薬 適応外薬の要望 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 日本小児救急医学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 4 位 ( 全 4 要望中 ) 成 分 名 ( 一般名

日本内科学会雑誌第98巻第12号

抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

<4D F736F F D CB48D655F94928D95445F90488E9690DB8EE68AEE8F802E646F63>

た 18 歳以上の AD/HD 患者を対象に 日本人を含むアジア人によるプラセボ対照二重盲検比較試験及びその長期継続投与試験が現在実施されており 本剤の製造販売者によれば これらの試験成績に基づき 本剤の成人期 AD/HD 患者への追加適応に関する承認事項一部変更承認申請が行われる予定とされている

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

相互作用DB

試験デザイン :n=152 試験開始前に第 VIII 因子製剤による出血時止血療法を受けていた患者群を 以下のい ずれかの群に 2:2:1 でランダム化 A 群 (n=36) (n=35) C 群 (n=18) ヘムライブラ 3 mg/kg を週 1 回 4 週間定期投与し その後 1.5 mg/k

Microsoft Word - 茬çfl�宛玺0618第1å‘·_æŠ¥èŒ¬é•£å®łã†¦é•ıç�¥ï¼‹ã…¡ã…‹ã…łã…«ã…�ㅳ;.doc

4 耐性ウイルス添付文書によれば, タミフルを投与した患者の1.4%( 小児では4.5 %) に耐性ウイルス, つまりタミフルが効かないウイルスが出現しています ( 1) また, 後述のように, 乳幼児の場合は18~33% と報告されています ( 4) 2 タミフルの副作用はタミフルが承認されるまで

用法 用量 発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制 mg mg mg mg kg 30kg 40kg 20kg 30kg 10kg 20kg 5kg 10kg 1900mg mg mg mg

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

の状態により適宜減量する 成人 A 法 : 他の抗悪性腫瘍剤との併用において ブスルファンとして 1 回 0.8 mg/kg を生理食塩液又は 5% ブドウ糖液に混和 調製して 2 時間かけて点滴静注する 本剤は 6 時間毎に 1 日 4 回 4 日間投与する なお 年齢 患者の状態により適宜減量す

2 抗インフルエンザウイルス薬と異常行動の議論と今後の予定 平成 21 年に取りまとめられた報告書以降の知見を改めて報告書にまとめ 以下の議論がなされた 平成 21 年以降の非臨床研究及び 10 年に及ぶ疫学研究の科学的な知見を総括し 以下の事実から タミフル服用のみに異常行動と明確な因果関係がある

クラリチンドライシロップ 1% クラリチン錠 10mg クラリチンレディタブ錠 10mg 第 1 部申請書等行政情報及び添付文書に関する情報 (7) 同種同効品一覧 シェリング プラウ株式会社

Microsoft Word - DI News 2011 No 51

別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

医科_第20次(追加)審査情報提供(広報用)

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

( 別添 ) 御意見 該当箇所 一般用医薬品のリスク区分 ( 案 ) のうち イブプロフェン ( 高用量 )(No.4) について 意見内容 <イブプロフェン ( 高用量 )> 本剤は 低用量製剤 ( 最大 400mg/ 日 ) と比べても製造販売後調査では重篤な副作用の報告等はない 一方で 今まで

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

改訂後 ⑴ 依存性連用により薬物依存を生じることがあるので 観察を十分に行い 用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること また 連用中における投与量の急激な減少ないし投与の中止により 痙攣発作 せん妄 振戦 不眠 不安 幻覚 妄想等の離脱症状があらわれることがあるので 投与を中止する場合には 徐々に

Untitled

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

審査報告 (1) 別紙 平成 29 年 4 月 3 日 本申請において 申請者が提出した資料及び医薬品医療機器総合機構における審査の概略等は 以下 のとおりである 申請品目 [ 販売名 ] ジャドニュ顆粒分包 90 mg 同顆粒分包 360 mg [ 一般名 ] デフェラシロクス [ 申請者 ] ノ

づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

15 第1章妊娠出産子育てをめぐる妻の年齢要因

<4D F736F F D A835E838A F8B7982D18AC48DB85F20534F A68CEB8E9A E9A8F4390B38DCF2

<4D F736F F D208C9F8DF58C8B89CA82CC90E096BE2E646F6378>

PowerPoint プレゼンテーション

「             」  説明および同意書

未承認の医薬品又は適応の承認要望に関する意見募集について

Microsoft Word - P11~19第2部② 母子保健の現状

ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL・2g/10mL・4g/20mL

審査結果 平成 26 年 1 月 6 日 [ 販 売 名 ] ダラシン S 注射液 300mg 同注射液 600mg [ 一 般 名 ] クリンダマイシンリン酸エステル [ 申請者名 ] ファイザー株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 8 月 21 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 7

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちで

<4D F736F F D2089BB8A7797C C B B835888E790AC8C7689E6>

Epilepsy2015

④資料2ー2

医療連携ガイドライン改

食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

Transcription:

アセトアミノフェンの 小児科領域における解熱 報告書作成中間サマリー 本サマリーは報告書作成の中間段階のものであり内容は確定していない 今後の検討を経て最終的な報告書が確定される予定である 1. 医療上の必要性について 子どもの発熱や痛みは その子どもにとって大きな肉体的 精神的ストレスとなるのみならず 家族にとっても大きな負担をもたらす 必要に応じて適切に解熱 鎮痛をはかることは 子どもの医学的ケアに必須であるのみならず 子どものストレスと家族の負担を大きく軽減することにも繋がる 今回の報告書作成のための文献調査でも明らかになったことであるが アセトアミノフェンにより適切に解熱もしくは鎮痛をはかるためには 後述する用法 用量が必要であり 実際に我が国でも多くの小児科医はすでにこの用法 用量で投与を行っている しかしながら 我が国のアセトアミノフェンの多くの剤形の添付文書では その記載内容が統一されていないのみならず 製剤によって 小児の用量についての記載がないもの 原則として 1 日 2 回 と記載されているもの等があり また座剤の場合は 1 日 1 回 と記載されており その用法 用量の記載は明らかに不適切である 臨床現場では 小児科医以外がアセトアミノフェンを処方する状況も多いが 現行の添付文書の記載内容を忠実に守った投与がなされた場合 患児に対してアセトアミノフェンの十分な薬理学的効果は得られず 不必要に子どもとその家族が高熱や痛みのストレスにさらされるということになる また 製剤によって記載内容が異なるため 臨床現場に混乱をまねく可能性もある 以上により 我が国で第一選択として一般的に子どもに対して使用されている解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンについて その効能 効果 用法 用量を整備することは 我が国の小児医療のすべての領域で 子どもに適切な解熱 鎮痛を得るためにきわめて重要であり 医療上の必要性は高いと判断した 現在 小児についての記載がほとんどない末等の製剤についても 実際に小児に処方されていることから 細粒 ドライシロップやシロップ 坐剤のみならず すべての小児に処方される可能性のある製剤に 十分な小児に関する記載が必要である 今回 学会からの当初の要望は 小児科領域の解熱 についてのみであったが 実際には臨床現場では鎮痛を目的にも使用されている 海外での添付文書や正書においても 解熱 鎮痛の両方を目的とすることが明記されていることから 今回の検討の結果 小児科領域の鎮痛 も適応として追加するべきであると考えた 海外の添付文書の記載内容を主に参考とし 教科書や適切と考えられる論文情報を集約し 臨床現場で適切な使用を行うことができるよう 効能 効果 用法 用量 のみならず 1

使用上の注意 等の記載も総合的に整備されることが妥当であると考える 2. 小児医療を行うに当たり必要と考えられる処方等に関する概要 以下を 小児に使用される可能性のあるすべての剤形 ( 末 細粒 ドライシロップ シロップ 錠 坐剤 ) の 効能 効果 用法 用量とすることが適当である 効能 効果小児科領域における解熱及び鎮痛用法 用量通常 小児にアセトアミノフェンとして 体重 1kg あたり 1 回 10 mg~15 mg を使用する 使用間隔は 4~6 時間以上とし 1 日総量として 60 mg/kg を限度とする 年齢や体重ごとの 投与量の目安も欧米の添付文書を参考に 具体的に記載することが好ましい 新生児への薬用量等も含めて 現在さらに整理中である 現行の添付文書の使用上の注意欄には 低出生体重児, 新生児及び 3 カ月未満の乳児に対する使用経験がなく, 安全性は確立していない との記載がある 確かに 3 カ月未満の乳児に対して解熱を目的として安易にアセトアミノフェンを投与することは厳に慎むべきであるが 低出生体重児 新生児 乳児に対する使用方法が正書にも記載され 実際に臨床現場でも使用されていることから 使用上の注意欄から 低出生体重児, 新生児及び 3 カ月未満の乳児に対する使用経験がなく, 安全性は確立していない という記載は削除あるいは修正するべきであろうと現時点では考えている ( 内容については検討中 ) アセトアミノフェン過量投与による肝障害は 非常に重篤であり時に致死的である上に 早急に処置を行えば治療可能であることから 十分に注意喚起し 過量投与した際の対応などについても添付文書に付記するべきである 3. 文献情報などについて 1 欧米 4カ国での承認状況アメリカ合衆国 フランス ドイツ 英国 カナダ オーストラリアなど世界 80 ヵ国以上で承認されている 適応 ( 効能 効果 ) 米国 発熱 及び軽度の疼痛 頭痛の一時的な緩和 英国 軽度から中等度の疼痛 発熱に フランス 軽度から中等度の疼痛 及び/ 又は発熱の緩和 2

ドイツ 軽度から中等度の疼痛 発熱に 用法 用量 米国 英国 添付文書そのものの入手が極めて困難 現在さらに調査中 フランス 推奨される 1 日量はおよそ 60 mg/kg/day で これを 4 回ないし 6 回に分けて投与する すなわち 1 回 10 mg/kg を 4 時間ごとに投与 もしくは 1 回 15 mg/kg を 6 時間ごとに投与 する 警告 : 1 日の最高用量 : 体重 37 kg 以下の小児では paracetamol の 1 日総投与量は 80 mg/kg を超えないこと 体重 38 ~50kg の小児では 1 日 3 g を超えないこと 成人及び 体重 50kg を超える小児では 1 日 4g を超えてはならない 使用上の注意 : 60 mg/kg/day を超えて小児に paracetamol を使用することは その効果 が不十分な場合に限る (Le Dictionnaire VIDAL 2006, DOLITABS 添付文書より抜粋 ) ドイツ 1 回 10~15 mg/kg 4~8 時間あけて 1 日 3~4 回 1 日総投与量は 50 mg/kg/day( 坐剤 ) または 60 mg/kg/day( カプセル 液 錠 ) を超えない Enelfa 添付文書では以下のような用量が示されている 年齢 体重のめやす 1 回量 1 日最高用量 6 ヵ月まで 7 kg 70-100 mg 350 mg 1 歳まで 10 kg 100-150 mg 500 mg 3 歳まで 15 kg 150-200 mg 750 mg 6 歳まで 22 kg 200-300 mg 1000 mg 9 歳まで 30 kg 300-500 mg 1500 mg 12 歳まで 40 kg 400-600 mg 2000 mg 12 歳以上 40 kg 以上 500-1000 mg 4 g 坐剤 : 年齢 体重のめやす 1 回量 1 日最高用量 6 ヵ月まで 7 kg 125 mg 375 mg 1 歳まで 10 kg 125 mg 500 mg 1~3 歳 10~15 kg 250 mg 750 mg 6 歳まで 22 kg まで 250 mg 1000 mg 6~9 歳 22~30 kg 500 mg 1000~1500 mg 10~12 歳 40 kg 500 mg 1500 mg 12 歳以上 40 kg 以上 500-1000 mg 4000 mg 坐剤の用法については とくに 使用は 6~8 時間あけて 1 日 (24 時間 ) に 3~4 回まで 3

と指定されている (Rote Liste 2006 Arzneimittelverzeichnis für Deutschland) 2 無作為化比較試験 薬物動態試験等の公表論文としての報告状況 3 Peer-review journal の総説 メタ アナリシス等の報告状況 2002 年に行われたコクランレビュー (Meremikwu M, Oyo-Ita A: Paracetamol for treating fever in children (Review). The Cochrane Database of Systematic Reviews 2002; 2. Art No.: CD003676) によって 小児の感染症による発熱に対するアセトアミノフェンの有効性 安全性について 既報のランダム化あるいはランダム化類似の比較試験の評価が詳細に行われている このレビューでは12 試験 (1509 症例 ) について評価が行われた レビューの結果 熱性痙攣のリスクを減少するかどうかの十分なエビデンスはないと評価された また 十分に信頼できるデータが不足しているために アセトアミノフェンの解熱効果について結論づけはできないとしているが これは十分な症例数を有する科学的な比較試験データが少ないためであり アセトアミノフェンの小児に対する解熱の有効性を否定するものではない 安全性については 有害事象の頻度についてプラセボ群との比較のために 3 試験のメタアナリシスが行われたが プラセボ群との間に差がなく すべて軽度で 具体的には眠気や消化器症状等であったとしている スポンジ使用による冷却群との比較が可能であった 2 試験でも有害事象の頻度に有意差はなかった その他の試験で報告された有害事象としては 震え 鳥肌 不快感などがあったとしている このコクランレビューで評価された個々の試験のうち 投与後 2 時間までの解熱を評価したプラセボ対照比較試験 (J Ped., 1970;77:824-9) については アセトアミノフェン投与群では 25 例中 17 例が解熱したのに対し プラセボ群では 15 例中解熱をしたのは 0 例であった (RR: 21.54 [1.39 333.99]) その他の試験についても現在詳細を確認中である 鎮痛については 小児の偏頭痛に対してアセトアミノフェン イブプロフェンの有効性を証明したプラセボ対照ランダム化クロスオーバー試験 (Neurology, 1997;48:103-7) 等があるが さらに情報収集中であり それらを整理した上で 最終的に報告書に記載する 低出生体重児 新生児については 28 週 ~32 週の早産児では半減期が延長しているため アセトアミノフェンを繰り返し投与する場合には少なくとも 8 時間以上の間隔をあける必要があるのではないかという論文 (Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed 1999; 80: F59-F63.) 新生児に対して 20 mg/kg を 6 時間毎に経直腸投与した場合には鎮痛目的の有効血中濃度 (10~20 mg/l) に達しなかったことから 初回投与量を 30 mg/kg とし 以後 6~8 時間毎に 20 mg/kg を追加投与するのが妥当ではないかとする論文 (Clin Pharmacol Ther 1999; 66: 509-515.) 平均在胎週数 33 週の早産児に 20 mg/kg のアセトアミノフェンを経直腸投与したが 血中濃度は十分に上昇しなかったとの論文 (Paediatr Aneaesthesia 1997; 7: 457-459.) があり 適正な用法 用量についての評価がさらに必要であることが示唆されて 4

いる 日本国内での文献では 1) アセトアミノフェン細粒を 1 回 15 mg/kg で投与し 投与後 3~4 時間で最大効果 約 2 の体温下降が認められ その効果は 6 時間持続したとの報告 ( 小児科 1986; 27: 241-245.) 2) アセトアミノフェン細粒 1 回 8~10 mg/kg 投与では 3 時間目に約 1.5 解熱し 11 mg/kg 以上では約 1.8 の解熱があったとの報告 ( 基礎と臨床 1984; 18: 403-409.) 3) アセトアミノフェンシロップ 10 mg/kg/ 回では 4 時間以降に体温は再び上昇し始めたが 15 mg/kg/ 回では投与後 6 時間まで効果が持続したとの報告 ( 小児科臨床 1994; 47: 190-197) 4) アセトアミノフェンシロップ 5 mg/kg, 10 mg/kg, 15 mg/kg 投与群の比較で 有効用量は 10~15 mg/kg の間にあるものと考えられたが 15 mg/kg 投与での低体温の副作用を考慮すると 10 mg/kg が適当と結論付けている論文 ( 小児科診療 1993; 56: 1640-1649.) 等がある 現在 PubMed 医中誌等による検索の詳細( 検索式 検索時期 その中で重要と考えられる論文 その選択方法など ) とその結果について整理中であり 最終の報告書に記載する予定であるが 本中間サマリーの結論の骨格を覆すものではないと考えている 4 教科書等への標準的治療としての記載状況 1)Nelson Textbook of Pediatrics 第 17 版 (2004 年 ) には アセトアミノフェン 10-15 mg/kg 4 時間毎経口投与では 深刻な有害事象は生じない しかし 長期的に用いると腎障害を起こすおそれがあり 大量に投与すると肝障害を生じることがある と書かれている 用法 用量については 発熱 ( 視床下部の温熱調節中枢を阻害する ) 及び軽度から中等度の疼痛 ( 中枢神経系におけるプロスタグランジン合成と末梢での疼痛インパルスの発生を阻害する ) に対して 乳児及び 12 歳未満の小児には 1 回 10-15 mg/kg を 4~6 時間毎に 12 歳以上の小児と成人については 1 回 325-650 mg を 4~6 時間毎に 経口または経直腸投与 小児では 1 日に 5 回を超えないこと 成人では 1 日 4g を超えないこと との記載がある 鎮痛に対する用法 用量は表に 経口 10-15 mg/kg 4 時間毎 ; 経直腸 20-30 mg/kg 4 時間毎 ; 経直腸 35 mg/kg 6~8 時間毎 1 日最大用量 : 小児 90 mg/kg/24hr; 乳児 60 mg/kg/24hr; 新生児 30~45 mg/kg/24hr と示されている 2)Oski s Pediatrics Principles and Practice 第 4 版 (2006 年 ) には アセトアミノフェンを正しい用量で投与する場合には ほとんど副作用がないといってよい アセトアミノフェンは年齢に応じて処方されることもあるが 体重に応じた用量のほうが正確である 一般にアセトアミノフェンは 1 回 10~15 mg/kg を 4~6 時間あけて投与する 1 日の投与回数は 5 回を超えてはならないとする典拠もある 数日間にわたる過量投与によって急性肝障害が生じることを危惧する報告がある 新生児や乳児期早期には多くの薬剤の半減期は延長しているので この年代の患者に対しては解熱薬を注意深く用いるか あるい 5

は用量を減らす必要がある と記載されている 3)Primary Pediatric Care 第 4 版 (2001 年 ) には 解熱を目的とするなら その長きにわたる安全な使用成績からアセトアミノフェンが便利である アセトアミノフェンは アレルギー反応を除けばほとんど副作用がない 140 mg/kg を超えると中毒量となるが これは治療量の 1 回 10~15 mg/kg の 10 倍以上に相当する もっともよく発熱を生じる 6 歳未満の小児は 年長の小児や成人に比べて肝障害を起こしにくい アセトアミノフェン中毒例の大多数は年長の小児や成人である と記載されている 4)Pediatric Dosage Handbook 第 12 版 (Taketomo 他 2005 年 ) の記載内容は以下の通り 軽度から中等度の疼痛及び発熱に対して 新生児 : 経口 経直腸 : 10~15 mg/kg/ 回 必要に応じて 6~8 時間毎に投与 28~32 週の早産児 : 経口 : 10~12 mg/kg/ 回 6~8 時間毎 最大 1 日 40 mg/kg 経直腸 : 20 mg/kg 12 時間毎 最大 1 日 40 mg/kg 32~36 週の早産児と生後 10 日未満の正期産児 : 経口 : 10~15 mg/kg/ 回 6 時間毎 最大 1 日 60 mg/kg 経直腸 : 初回 30 mg/kg 以後 1 回 15 mg/kg 8 時間毎 最大 1 日 60 mg/kg 生後 10 日以降の正期産児 : 経口 : 10~15 mg/kg/ 回 6 時間毎 最大 1 日 90 mg/kg 経直腸 : 初回 30 mg/kg 以後 1 回 20 mg/kg 6~8 時間毎 最大 1 日 90 mg/kg 乳幼児 12 歳未満の小児 : 経口 : 10~15 mg/kg/ 回 必要に応じて 4~6 時間毎に投与 但し 24 時間で 5 回を超えないこと 以下の用量を用いてもよい 6-11 lbs: 0-3 months: 40 mg 12-17 lbs: 4-11 months: 80 mg 18-23 lbs: 1-2 years: 120 mg 24-35 lbs: 2-3 years: 160 mg 36-47 lbs: 4-5 years: 240 mg 48-59 lbs: 6-8 years: 320 mg 60-71 lbs: 9-10 years: 400 mg 72-95 lbs: 11 years: 480 mg ( 用量設定には体重を用いるのが望ましい 体重が不明の場合には年齢を用いる ) 経直腸 : 10~20 mg/kg/ 回 必要に応じて 4~6 時間毎に投与 6

12 歳以上の小児 成人 : 経口 経直腸 : 1 回 320-650 mg を 4-6 時間毎に または 1 回 1000 mg を 1 日 3~4 回投与する 但し 1 日量は 4g を超えない 5) 新生児の標準教科書とされる Avery s Disease of the Newborn 第 8 版 (2005 年 ) には 本文中に Review article(acta Anaesthesiol Scand 2001; 45: 20-29) からの情報を含めて アセトアミノフェンは 鎮痛のために すべての年齢層で広く使用されている 新生児では クリアランス時間が緩徐であることを考え 経口投与 8~12 時間毎 また 吸収が低下するため 経直腸投与は大目の量が推奨されている 通常は 新生児経口投与で 1 回 10 ~15mg/kg 6~8 時間毎 乳児経口投与で 1 回 10~15mg/kg 4~6 時間毎 研究から得られた解熱のための 10 mg/kg という量は 鎮痛に対しては 不適切 ( 不十分 ) であるかもしれない 最大量は 乳児で 24 時間に 75 mg/kg 在胎 32 週以上の児では 24 時間に 60 mg/kg 28~32 週の早産児では 24 時間に 40 mg/kg である 経直腸投与では半減期は長くなるが 吸収はよくなる とあり 巻末の表には 初回投与量は経口 24 mg/kg 経直腸 30 mg/kg 以降 それぞれ 12 mg/kg 20 mg/kg 投与間隔は 32 週未満の早産児で 12 時間毎 32 週までの早産児は 8 時間毎 正期産児は 6 時間毎 と書かれている 6) 小児薬物療法ハンドブック ( 吉田一郎 2001) では 通常 1 回に 10 mg/kg を投与する 10 mg/kg の投与量で 1 以上の解熱効果は 4 時間持続する 投与量を増やす場合には最大で 1 回に 15 mg/kg までとする その根拠は 15 mg/kg を超えると低体温が出現しやすくなること (15 mg/kg 以下でも出現しうる ) 15 mg/kg までの反復投与では致死的肝障害の報告がないことである 投与間隔は 4~6 時間とし 1 日の投与回数は 4 回以内とする 5 回以上は肝毒性のため投与すべきでない 通常は 5 日以上の連用も好ましくない Goodman & Gilman の薬理学書の 8 版 (1990) には 医師の勧告がないかぎり 4 時間ごとの 10 日以上の連続投与はすべきでないと記載されていたが 9 版 (1996) からこの一文は削除されている アセトアミノフェンの副作用はほとんどが用量非依存性である したがって常用量 (1 回 10 mg/kg) でも皮疹がみられる 皮疹は紅斑のことも蕁麻疹のこともあるし 発熱を伴い 粘膜疹がみられることもある まれに好中球減少 血小板減少 汎血球減少がみられることもある 低体温もみられることがあるが インドメサシンやメフェナム酸使用時の低体温とは異なり 重篤感がない 中毒量 / 治療量の比が 10~15 倍と比較的小さいため 連続投与では注意が必要である と記載されている 5 学会または組織機構の診療ガイドラインへの記載状況 1996 年に日本小児科学会薬事委員会は 小児に対する解熱剤投与法に関する見解 として解熱薬に対する小児薬理学的な検討を行った結果を報告した アセトアミノフェンについては以下の2 点を指摘している すなわち 第一に わが国では小児用解熱薬の適応が 7

急性上気道炎のみに限定されているが 適応範囲を限定する理由が不明である点 第二に 臨床薬理学的な立場からアセトアミノフェンの半減期を考慮すると その投与間隔は 6 時間ごとに 1 日 4 回もしくは 4 時間ごとに 1 日 6 回までは使用可とする方法が一般的であるが わが国ではアセトアミノフェンの坐剤は 1 日 1 回 末 顆粒は 1 日 2 回の使用とされ 欧米の一般的見解とは大きく異なる用法が示されている点 である ( 日本小児科学会薬事委員会 : 小児に対する解熱剤投与法に関する見解 日本小児臨床薬理学会誌 1996; 9: 101-103,) 海外のガイドラインの記載等について現在さらに調査中である 4. 国内での使用実態 国内論文の検索結果は現在纏めている 上述の我が国の教科書 論文等の記載をみても 日本での使用状況は 海外と大きく違わず 今回提案している用法 用量にほぼ一致している 海外では問題とされていない低体温が副作用として懸念されているようである 第一回小児薬物療法検討会議においては 本薬について新たな使用実態調査の必要はないという方向で議論された 国内での使用実態調査の必要性や低体温についての調査の必要性については 第二回検討会議でご議論いただきたいと考えているが 処方は 5 回 -10 回分を屯用で処方するスタイルであることから処方実態から調査をしても明確な使用についての情報は得られないこと また日本中の小児科医が日常的に使用している医薬品であることから 既存の国内論文に加えて 臨床経験が豊富な検討会議構成委員による用法 用量や効能 効果についての判断と 我が国における使用実態についての議論の結果をまとめるのみでも十分な情報ではないかと考えている 5. 有効性の総合評価 前述の評価の結果 体重 1kg あたり 1 回 10 mg~15 mg を使用する 使用間隔は 4~6 時間以上とし 1 日総量として 60 mg/kg を限度 とする用量において 小児において適切な解熱 鎮痛 ( 軽度及び中等度の頭痛に対する ) を得ることができることは 海外添付文書の記載 代表的教科書の記載 国内外の論文の記載から総合的に判断して 医学 薬学上の公知であると判断した 6. 安全性の総合評価 国内外の文献では アセトアミノフェンの副作用が成人と比べて 小児で特に重篤 あるいは頻度が高いと危惧されるデータは一切無い コクランレビューで取り上げられてい 8

る比較試験においても軽微な有害事象しか報告されておらず プラセボ投与群やスポンジなどを用いた冷却法と差がないとされている その他の文献情報を含めて総合的に判断すると アセトアミノフェンは本報告書で規定された用法 用量の範囲内であれば 小児に対して極めて安全性が高い薬物であると考えられる 小児薬物療法ハンドブックでは 肝障害を理由に 投与回数を 1 日 4 回までと制限する記載がある 15mg/kg4 回であれば 1 日総量 60mg/kgとなり妥当であるが 10mg/ kgで上限 1 日 4 回では十分な解熱が得られない可能性が高い 海外での教科書では 5 回を超えない ( 最大 1 日 5 回 ) との記載が散見される 日本人で特にアセトアミノフェンの肝障害が起きやすいという科学的根拠もないことから 海外と同様 1 日総量 60mg/kg までの投与は問題ない ( 従って最大 1 日 5 回投与はかまわない ) と判断した 過量投与によってもっとも危惧すべき肝障害は致死的なことがあるため 肝障害を起きやすくする併用薬剤や病態その他については十分に注意喚起し 過量投与した際の対応などについても添付文書により詳しく記載するべきであろう 国内論文では 海外では問題とされていない低体温が副作用として懸念されているように見受けられるが 委員の先生からのご意見も参考とし その臨床的重要性や重篤度などを十分に評価した上で 最終的に添付文書へどの程度反映させるべきか等を結論したい 7. 用法 用量の妥当性について 前述のように 海外添付文書の記載 代表的教科書の記載 国内外の論文の記載等から総合的に判断して 体重 1kg あたり 1 回 10 mg~15 mg を使用する 使用間隔は 4~6 時間以上とし 1 日総量として 60 mg/kg を限度 という投与量は 我が国の小児に対しても妥当であると判断した 本薬品については 細粒 ドライシロップ シロップ 坐剤と小児に必要とされるすべての剤形がそろっており 新たな剤形開発の必要性はないであろう これらの剤形にとどまらず 末なども実際に臨床現場で小児に処方されていることから すべての小児に処方される可能性のある製剤について 添付文書の記載整備は必要であると考えている 坐剤については用量を変更すべき ( 減量 あるいは増量 ) との海外文献の記載もあるが 一定の結論が出ているといえず 現時点では添付文書上で用量を変更するに足る十分なエビデンスがあるとは言い難いため 他の剤形と同量でよいと判断した 新生児における用量について 使用上の注意に反映できるほどのエビデンスがあるかどうかについてはさらに検討した上で報告書に纏めたい 9