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スライド 1

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熱効率( 既存の発電技術 コンバインドサイクル発電 今後の技術開発 1700 級 ( 約 57%) %)(送電端 HV 級 ( 約 50%) 1500 級 ( 約 52%

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2007年12月10日 初稿

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内の他の国を見てみよう 他の国の発電の特徴は何だろうか ロシアでは火力発電が カナダでは水力発電が フランスでは原子力発電が多い それぞれの国の特徴を簡単に説明 いったいどうして日本では火力発電がさかんなのだろうか 水力発電の特徴は何だろうか 水力発電所はどこに位置しているだろうか ダムを作り 水を

表1-4

亜臨界微粉炭火力発電所に設置する CCS コストは ( $143.5-$82.1= ) $61.4/MWh($0.06/kWh) o 2011 年ドル換算で約 4.96 円 /kwh 2 現行ドル換算 3 で約 6.96 円 /kwh 超臨界微粉炭火力発電所に設置する CCS コストは ($142.

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世界の CCS の動向 :2016 サマリーレポート

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別添 4 レファレンスアプローチと部門別アプローチの比較とエネルギー収支 A4.2. CO 2 排出量の差異について 1990~2012 年度における CO 2 排出量の差異の変動幅は -1.92%(2002 年度 )~1.96%(2008 年度 ) となっている なお エネルギーとして利用された廃

平成 28 年度エネルギー消費統計における製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) のエネルギー消費量を部門別にみると 製造部門で消費されるエネルギーは 1,234PJ ( 構成比 90.7%) で 残りの 127PJ( 構成比 9.3%) は管理部門で消費されています 平成 28 年度エ

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界の大規模プロジェクトの開発状況は 運転中のものが15 件 建設中のものが6 件 全体で38 件となっている 昨年に比べ 建設中のものが1 件 全体のプロジェクトは7 件減っている ( 図 3 参照 ) 図 2 ゼロエミッションに向けた対策技術の概念 図 2に ゼロエミッションに向けた対策技術の概念

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The Global Status of CCS: 2011

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CCSの現状と課題

けた取組が重要である 米国 カナダ 欧州諸国が UNFCCC へ提出した 2050 年に向けた長期戦略においても 濃淡はあるものの 各国ともゼロエミッション化 電化の重要な手段として CCS/CCUS を位置付けている これまで 将来的に CO2 削減にかかるコストについては 様々な報告がなされてい

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正誤表 ( 抜粋版 ) 気象庁訳 (2015 年 7 月 1 日版 ) 注意 この資料は IPCC 第 5 次評価報告書第 1 作業部会報告書の正誤表を 日本語訳版に関連する部分について抜粋して翻訳 作成したものである この翻訳は IPCC ホームページに掲載された正誤表 (2015 年 4 月 1

第 1 四半期は好調なスタートとなり 通年でも好調を維持する見通しです 主要製品の販売量を高水準で維持しながら 他の主な指標すべてにおいても 非常に好調であった前年同期からさらに大幅に向上しました と コベストロのチーフ コマーシャル オフィサー (CCO) であり 次期最高経営責任者 (CEO)

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DOCSIS 3.0( 単独 ) LTE WiMAX 衛星ブロードバンド 各技術を統合した算出基準 : ブロードバンド総合カバレッジ - 衛星ブロードバンドを除いた上記の接続技術を対象 固定ブロードバンド総合カバレッジ - 衛星 HSPA LTE を除いた上記の接続技術を対象 NGA カバレッジ -

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報道関係各位

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第2回アジア科学技術フォーラム

Transcription:

世界の大規模統合 CCS プロジェクトの動向 2011 年 12 月更新版

GLOBAL STATUS OF LARGE-SCALE INTEGRATED CCS PROJECTS: December 2011 update has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of the Report. 世界の大規模統合 CCS プロジェクトの動向 :2011 年 12 月更新版 は 利用者の便宜のために GLOBAL STATUS OF LARGE-SCALE INTEGRATED CCS PROJECTS: December 2011 update を英語から日本語に翻訳したものです グローバル CCS インスティテュートは日本語版のいかなる内容についてもその正確性 信頼性又は完全性について保証しません

序文及び及び目的 グローバルCCS インスティテュートは 世界各地の当インスティテュートの代理人 (representatives) から得られる報告や最新情報を定期的に確認することにより 世界の大規模統合 CO 2 回収貯留 (CCS: Carbon Capture and Storage) プロジェクト (LSIP: Large-Scale Integrated Project 1 ) の動向について追跡調査を行っている LSIP に関する一連の公開データは当インスティテュートが管理しており プロジェクトの状況及びプロジェクトの詳細の変更を反映するため 週 1 回更新されている さらに 当インスティテュートは 現在 2012 年のLSIP 年次調査の準備をしている 一連の公開データはこちらから入手可能である また CCS プロジェクトの地図はこちらから閲覧できる 本報告書は LSIP の現状をまとめ 2011 年 10 月に当インスティテュートが公表した報告書 世界の CCS の動向 :2011 年 (Global Status of CCS: 2011) の結果との比較を示すことを目的とする 最新のプロジェクト開発に関する概要 グローバルCCS インスティテュートは 全世界で 74 件のLSIP を特定した このうち 15 件は 現在操業又は建設段階にあり 確認済み CO 2 回収能力は合計で年間 3,540 万トン (35.4Mtpa) である さらに 59 件のLSIP が開発の計画段階にあり 122Mtpa を超える潜在的回収能力をもつ 世界のCCS の動向 :2011 年 の公表以降 LSIP の総数に変化はないが 2011 年度の第四四半期に当インスティテュートのLSIP リストに大幅な変更が加えられた 比較的進展していた二件の欧州のプロジェクトの中止が決定的となり 一方で 二件の新規プロジェクトが中国と米国で特定された また 世界の CCS の動向 :2011 年 に記載されていなかった一件の LSIP は 建設が開始された このプロジェクトは 2010 年以降に建設が開始された四番目のプロジェクトである 2011 年の終盤において 操業又は建設段階の LSIP の確認済み CO 2 回収能力は 2010 年時点と比較して 7.6Mtpa 増加しており わずか一年間で確認済み CO 2 回収能力が 25% 増加したことは注目に値し 記念すべき事実である 欧州でのプロジェクト中止について 一般市民による支持の重要性 Longannet プロジェクト ( スコットランド ) の建設費用を助成しないという英国政府の決定を受けて 2011 年 10 月にLongannet プロジェクトの中止が発表された 基本設計 (FEED: Front End Engineering Design) 調査の結果は英国エネルギー 気候変動省 (Department of Energy and Climate Change) のウェブサイトに公開された また Vattenfall Jänschwalde プロジェクト ( ドイツ ) も ドイツ国内における CCS をめぐる規制問題 特に CO 2 の恒久的地層隔離に関わる問題の解決に進展が見られないため 2011 年 12 月に中止された これらの決定はいずれも想定外ではなかったが これらのプロジェクトの中止は欧州における CCS の技術展開を後退させた また これらの中止にはいくつかの共通点がある Longannet プロジェクト及び Vattenfall Jänschwalde プロジェクトはいずれも 開発の後期段階にある先駆的な発電プロジェクトであり これまで多くの技術的障害を克服してきた 両プロジェクトは 開発の後期段階に到達するまでに相当額の公的資金援助を受けていた (Longannet プロジェクトは 第一回英国 CCS 実証のためのコンペ (UK CCS Demonstration competition) において英国エネルギー 気候変動省によって選ばれた二件のプロジェクトのうちの一つで 4,500 万英ポンドが授与された 一方 Vattenfall Jänschwalde プロジェクトは 回復のための欧州エネルギープログラム (European Energy Programme for Recovery) の一環として欧州委員会から1 億 8,000 万ユーロの援助を受けた ) 1 LSIP は 石炭火力発電所については年間 800,000 トン以上又は ( 天然ガス火力発電所などの ) その他の排出量が多い産業 施設については年間 400,000 トン以上の規模で CO 2 を回収 輸送及び貯留するプロジェクトと定義する

両プロジェクトは CO 2 排出量の多い大型発電所の更新を計画していたもので 従来型の石炭火 力発電所への低排出技術の適用可能性の実証中であった それぞれのプロジェクトからは多くの教訓を学ぶことができる 英国エネルギー 気候変動省は Longannet プロジェクトの FEED 調査の結果を既に公開している また 明らかな相違点もある Longannet プロジェクトでは 資金的問題がプロジェクト中止の原因となっ た 一方 Vattenfall Jänschwalde プロジェクトは 選定した貯留サイトが地元自治体から反対され さらに 政策に基づく明確な規制枠組みが欠如していたため事態が悪化した 英国政府が CCS プロジェクトに対する支援を講じ続けるという姿勢に変わりはない 英国エネルギー 気候変動省によると 同省は Longannet プロジェクトの中止 を決断したが 代わりに Longannet プロジェクトに割り当てられた 10 億英ポンドを他の CCS 実証プロジェクトに充てることを決定した CCS が 英国の長期エネルギー計画に必要な主要技術 であることを再確認する一方で 可能な限り 最も効率 的な方法 で必要な資金を投入すれば 10 億ポンドでこの極めて重要な新技術を英国で十分実証できる とエネルギー 気候変動省の Chris Huhne 大臣は述べている 現在 ドイツには LSIP は存在しない 企業は ドイツ内での新たな CCS プロジェクトへの投資の前に 政策及び規制環境の好転を求めていくと考えられる しかし 多くのドイツ企業は 様々な役割で CCS プロジェクトの開発に関与しており 特にオランダでの LSIP に対する投資を本格的に検討している企業もある 現在の事例として E.ON 社が Rotterdam Opslag en Afvang Demonstratieproject (ROAD) プロジェクトに LindeGas 社が Pegasus Rotterdam プロジェクトにそれぞれ投資を検討している EOR の発展と拡大 米国で推進されるプロジェクト Air Products 社の水蒸気メタン改質 EOR プロジェクトは 2011 年 8 月に建設を開始したことによって プロジェクトライフサイクルの実施段階に移行した Air Products 社の発表によると 新設の水素発電所 は早ければ 2012 年に操業が開始され 石油増進回収 (EOR: Enhanced Oil Recovery) 事業者に約 1Mtpa の CO 2 を提供可能である NRG Energy 社の Parish 発電所における当初の CO 2 回収計画が最近拡張されたため このプロジェクト は現在 当インスティテュートの LSIP リストに追加される条件を満たしている CO 2 回収処理される排ガ ス量が 60Mwe 相当から 240Mwe 相当へ拡張され 発電所で回収される CO 2 量は 375,000tpa から 1.5Mtpa に増加した NRG Energy 社がこのプロジェクトの規模を拡大したのは 大量の CO 2 を使用する EOR 市場の需要に対応するためである 比較的進展しているこのプロジェクトは精査段階にあり FEED 調査が間もなく終了し 許認可手続が現在行われている 最終投資判断 (FID) は 2012 年末までに行われる見込みである また 本プロジェクトにおいては 2015 年前半に回収された CO 2 の EOR への利用が開 始される予定である 両プロジェクトは共に 成熟して将来を見越せる EOR 市場が主要な決定要因となっている米国の CCS 市場の動向 ( 特に Air Products 社と NRG Energy 社の両プロジェクトが位置するテキサス州ではこれが顕 著である ) を表している Air Products 社のプロジェクトは Boundary Dam 統合 CO 2 回収隔離実証プロジェクト Lost Cabin ガス施 設 ADM 社のイリノイ州産業向け CO 2 回収隔離 (ICCS: Illinois Industrial Carbon Capture and Sequestration) プロジェクトに続く 2010 年以降に建設が開始された 4 番目の LSIP である これらすべての新たに確認されたプロジェクトは北米で実施されている また ADM 社の ICCS プロジェクト以外のプロジェクトは EOR 事業にもリンクしている 世界全体の大規模 CCS プロジェクトによる確認済み CO 2 回収能力のうち 80% 以上を北米が占めており 米国内だけで約 68% を占めている 開発中の LSIP の潜在的 CO 2 回収能力は 北米が 50% 以上 米国内 だけで 44% を占めるため 北米の CO 2 回収能力の割合が高い状態は中期的に続くと考えられる

中国で新たに特定された LSIP Datang Daqing 酸素燃焼 CCS 実証プロジェクトが 2011 年 12 月に当インスティテュートの LSIP リス トに追加された Datang Heilongjiang Power Generation 社 (China Datang 社の子会社 ) は 黒竜江省大慶市近郊に新 設の超臨界石炭火力発電所を計画中である この発電所の 350MWe 級の熱電併給ユニット 2 機のうちの 1 機から 酸素燃焼によって約 1Mtpa の CO 2 が回収される予定である CO 2 貯留の選択肢には 深部塩水層への貯留及び近郊油田での EOR への CO 2 の利用がある Datang 社及び Alstom 社は 酸素燃焼ユニットの開発に向けたフィージビリティスタディに関する協定 を 2011 年 11 月に締結した このプロジェクトは 2015 年に操業開始予定である その他 SCS Energy 社は 2011 年 9 月に米国の Hydrogen Energy California (HECA) プロジェクトの買収を決定し た HECA プロジェクトの要素はほとんど変更されていない中で 当初の計画からの主な変更点は 肥料生産が追加されたことである この新しいポリジェネレーション ( 電力 水素 合成ガス 液体燃料などの併産 ) システムは 石炭ガス化複合発電 (IGCC: Integrated Gasification Combined Cycle) で生成された水素を使用してピーク時には発電し それ以外の時間帯には肥料を生産することを可能にする 操業開始予定時期は 1 年遅れの 2017 年となったが この IGCC プラントから回収される CO 2 量は 約 2Mtpa から 2.3Mtpa 以上へ微増となった 2014 年に操業が開始される Sleipner CO 2 圧入プロジェクトにおける CO 2 の回収及び圧入量は 1Mtpa から 1.1~1.2Mtpa に拡大される予定である 2 現在開発中の Gudrun ガス田から生産される天然ガスは 余剰 CO 2 を除去するために既存の Sleipner T プラットフォームへ送出される予定である Sleipner West 地 域の未処理の天然ガスには通常約 9% の CO 2 が含まれており 天然ガス中の CO 2 濃度レベルは輸出仕様 や顧客仕様を満たすため Sleipner T プラットフォームで 2.5% に削減される その後 回収された CO 2 は貯 留層上部の深部塩水層に再圧入される 2011 年 10 月 Texas クリーンエネルギープロジェクトに配分された資金についての決定記録 (ROD: Record of Decision) が米国エネルギー省 (Department of Energy) から発行された この ROD は 国家環境 政策法 (NEPA: National Environmental Policy Act) の許認可手続きにおける最終段階に相当し これにより 事前にプロジェクトに割り当てられた公的資金を工学調査や設計調査以外にも投入することができる こ れは プロジェクトが最終投資判断を行う直前であることを意味しており 2012 年初めにはプロジェクトの建 設が行われる見込みである 2011 年 12 月 5 日に スペインの Fundación Ciudad de la Energía (CIUDEN) 社は 30MWth の循環流動 層 (CFB) ボイラーを用いた酸素燃焼試験に初めて成功したと発表した これは 酸素燃焼技術の商業規模 での利用を進展させる上で画期的な出来事であり CIUDEN 社の大規模な OXYCFB 300 Compostilla プロジ ェクトにとって非常に大きな進展である CIUDEN 社の酸素燃焼試験に関するプレスリリースはこちらで公開 されている 2 12 月の掲載では 1.7Mtpa まで拡大されるとしていたが その後 当インスティテュートは 1.1~1.2Mtpa に訂正するよう指示された

添付 1 2011 年のプロジェクトの進捗概要 確認済み回収能力は 25% 増 現在操業又は建設段階にある LSIP は 15 件あり CO 2 回収能力の総計は 35.4Mtpa である これは スロバキア共和国やノルウェーの現在の年間 CO 2 排出量にほぼ等しい この確認済み CO 2 回収能力は グローバル CCS インスティテュートの 2010 年調査以来 7Mtpa 以上増加しており わずか 1 年の間に 25% 増加し ている 一方 2011 年に中止されたプロジェクトにより 開発中のプロジェクトに関する潜在的 CO 2 回収能力は約 25Mtpa 減少した 精査 (Define) 段階にあった 5 件のプ ロジェクト (CO 2 量 10Mtpa) が中止され 評価 (Evaluate) 段階にあった 4 件の小規模プロジェクト (CO 2 量 6Mtpa) 及び特定 (Identify) 段階にあった 3 件の大規模プロジ ェクト (CO 2 量 9Mtpa) も中止された CO 2 回収能力が 24Mtpa を上回る 10 件の LSIP が新たに特定されたことによって 中止分の CO 2 回収容量は概ね相殺された

添付 2 大規模統合 CCS プロジェクト一覧の主な変更点 (2011 年 12 月改訂版と 世界の CCS の動向 :2011 年 (Global Status of CCS: 2011) との比較 ) 中止されたプロジェクト欧州地域 Longannet プロジェクト 2 Mtpa 中止と判断 英国エネルギー 気候変動省が CO 2 回収施設の建設を支援しないとの発表を受けてプロジェクトは中止された 特定 Vattenfall Jänschwalde プロジェクト 新たに特定特定されたプロジェクト 1.7 Mtpa 中止と判断 政府の支援及び明確な規制枠組 みがないため計画は中断された 中国 米国 Datang Daqing 酸素燃焼 CCS 実証プロジェクト NRG Energy 社 Parish CCS プロジェクト > 1 Mtpa 酸素燃焼技術で CO 2 を回収すると同時に電気と熱を生成する超臨界石炭火力発電所が新たに建設される 2015 年の操業開始が見込まれる 1.5 Mtpa テキサス州の火力発電所での燃焼後 CO 2 回収設備の追設 (retrofit) が行われた ここで回収されたCO 2 は 2015 年からEOR に利用される予定である プロジェクトの進捗 米国 Air Products 社水蒸気メタン改質 EOR プロジェクト 1 Mtpa 2011 年 8 月に建設が開始され 実施段階に移 行した 新設される水素発電所は 2012 年に操 業開始予定である その他の主な変更点 欧州地域 Sleipner CO 2 圧入 米国 (HECA) 水素エネルギーカリフォルニアプロジェクト 1.1~1.2 現在開発中のGudrun ガス田で生成されるガス Mtpa に含まれる CO 2 が0.1~0.2Mtpa 増加することにより 回収及び圧入される CO 2 の量は 2014 年には1.1~1.2Mtpa に増えると見込まれる 2.3 Mtpa SCS Energy 社がプロジェクトを買収 水素発電所がポリジェネレーションプラントとして改修され 今後 尿素の製造も行われる 操業開始は 1 年遅れて 2017 年と見込まれる