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4. 釜鳴りの再現釜鳴り現象は 図 3 のように身近にあるもので簡単に再現できる 蚊取り線香のような大きめの缶を 2 つ繋げ 少量の湯 ( 水位約 1[cm]) を入れた ガスコンロで缶の下部を加熱し沸騰させ 缶中央部に設置した真鍮網の上へ 冷やした白米 2 合をすばやく入れた その直後 唐突に ボー という大きな低音が 1 分程度鳴り響いた この釜鳴りの再現で採取した音は 以下のファイルを参照 ( ファイル名 : 釜鳴りの再現 ) 図 3 釜鳴り再現装置 5. 基礎実験釜鳴りの発生条件で重要な要素はなんだろう? それを調べるため いくつかの基礎実験を行った 原則として投入する材料は 実験前に冷凍庫で冷やしたものを用いた これは 釜鳴り現象が温度勾配によって発生する自励振動であるから 温度差が大きい程 釜鳴りの継続時間が長くなると考えたからである 5.1 様々な材料での実験 & 寸法の影響 5.1.1 身近にある様々なもので釜鳴りに挑戦してみた基礎実験装置で用いた蚊取り線香の缶の他に スチール缶とアルミ缶を用いて実験を行った 各缶で作成した装置と寸法は 表 1 と図 4 に示す 投入する材料は米のみとした 32.7 20.6 24.2 表 1 各缶の寸法 (1 個分 ) 蚊取り線香スチール缶アルミ缶 管径 [cm] 16.0 4.9 4.9 高さ [cm] 15.5 10.5 12.2 図 4 基礎実験装置 1 結果実験の結果 蚊取り線香の缶とスチール缶 アルミ缶のすべての缶から音が発生した 2

この実験では 3 種類それぞれ音の高さが違って聞こえた そこでそれぞれの寸法の影響をより詳しく調べるために以下の実験を行った 5.1.2 管の寸法による影響釜鳴りをマイクロホンと PC を用いて録音し 周波数解析 (FFT) を行う これにより 条件ごとのピークとなる周波数を比較し 管の寸法の影響を調べる 管長と網の位置 材質を統一した 管径が異なる装置での影響スチール缶を切り足しし 蚊取り線香 2 缶の場合 ( 図 5) と高さを揃え 同様の実験を行った すると表 2 に示すように管径のみが異なるとき 得られる周波数は大きく異なる したがって 釜鳴りによって発生する音の高低は管径の影響を受け 管径が太いほうが低い音が鳴ることが分かった 16 cm 4.9cm 表 2 管長が同じ場合の周波数ピーク 32.7 cm 網位置 32.7 cm 周波数 [Hz] ( 加熱時ピーク ) 蚊取り線香の缶 スチール缶 280 325 図 5 基礎実験装置 2 管長の影響また管長を変え実験した所 音の高さはそれぞれ異なっていた 釜鳴りが発生しているときに 管上部に缶を置くことで管長を伸ばすと 総じて音が低くなった この結果から 管長が長いほど音は低くなると考えられる 結果釜鳴りの音の高低は管径 管長に影響を受け 管径が大きいほど また管長が長いほど音は低くなる 一般的に 周波数 f [Hz] は 波長 λ [m] と音速 v[m/s] から v f = [Hz] λ で求まる ここで片側開管における波長 λ [m] は 管長を l [m] 管半径 r [m] とすると λ = 4 ( l + 0. 61r) 0.61r は開口端補正となる よってこの式から 釜鳴りの音の周波数 ( 高低 ) は 管長 l 管半径 r 音速 v によって求まることが分かる 3

5.2 投入する材料を変える蚊取り線香の缶を用い 米以外の材料でも実験を行った 投入する材料の種類と各材料の寸法を表 3 と図 6 に示す 表 3 材料の種類と寸法シリカゲル BB 弾アルミ粒米スズ 形状球球円筒楕円球直径直径直径 高さ長さ 厚さ直径寸法 [cm] 0.3 0.59 0.63 0.51 0.35 0.2 0.3 質量 (1 粒あたり ) [g] 0.2 2.2 8 0.2 1.7 シリカゲル BB 弾アルミ粒米スズ 図 6 投入材料の種類 結果 BB 弾 米 スズ 音が鳴ったシリカゲル アルミ粒 鳴らなかった BB 弾と米 スズの音の持続時間は それぞれ異なっていた 一番長く音が持続していたのは米で 安定感のある音を鳴らしていた その次にスズ BB 弾と続き 音の持続時間が短くなる傾向があった 音の持続時間は 温度勾配と材料の熱容量が関係していると考えられ 熱伝導性が良いスズや 熱容量の大きな米などは長く大きな音を出せたものと考える シリカゲルで音が鳴らなかった原因として 実験中にシリカゲル自体が熱によって割れてしまい粒がさらに細かくなったことが挙げられる また アルミ粒が鳴らなかった原因として 形状が円筒状のため 粒同士の間の隙間がうまく作れず ( 不均一 ) 温度勾配よる気体振動が発生しづらかったのではないかと推測できる さらにアルミ粒の場合は投入量が他よりも少なかった 5.3 冷却材の量を変えるこれまでは 冷却材が厳密に同じ量ではなかった 5.2 で音が出た米 スズ BB 弾を用い その量を変えることで音に変化があるのかどうかの実験を行った そのときの冷却材の量は 200 300[cc] とした 今回は缶内部に入れるお湯の量も音に影響があると考え 各実験前に計量して底面から 2[cm] 一定とした また ここからの実験装置は一番音が出る蚊取り線香の缶と似た大きさの缶で新たに製作し その缶を用いた その缶を図 7 に示す 30.3 cm 図 7 新しい基礎実験装置 4

結果冷却材の量を変えた実験の結果を表 4 に示す この結果から冷却材量を変化させても音の周波数はほぼ変わらないことがわかった 音の持続時間に関しては 冷却材が多いときの方が少ないときよりも長く鳴り続けることがわかった これは 量が多いほど冷却材内の温度勾配が長時間保たれ その結果 音の持続時間が長くなると考えられる 音の大きさに関しては 投入量による違いはあまり見られなかった また 全ての材料において 釜鳴りが止まり 火を消した後 熱を加えていないにも関わらず再び釜鳴りが鳴りだす現象が起きた そこで 本論文では加熱時のピーク周波数を 1 次ピーク 消火後のピーク周波数を 2 次ピーク と呼ぶ 米 300[cc] の時間ごとの周波数解析のデータを図 8~11 に示す これは横軸に周波数 縦軸にデシベルをとった図である 図 8 9 は加熱中の周波数であり 図 10 11 は消火後に再び起きた釜鳴りの音を表している 図 8 9 をみると 加熱していくとピークの値が 右に変遷 していき 図 9 で第 1 次ピークを迎えた その後 加熱を止めた後に再度音が鳴り出した そのときの図 10 11 をみてみると ピークの値が 左に変遷 していき 第 2 次ピークから徐々に低い方向に変遷していくのがわかる これらの結果をより詳しく考察を行ったものを後に示す 表 4 各冷却材とその量の関係 管長 :30.3[cm] 条件 測定項目 米 スズ BB 弾 冷却材による違い 冷却材 300 [cc] 冷却材 200 [cc] 周波数 [Hz] (1 次ピーク ) 周波数 [Hz] (2 次ピーク ) 290.7~ 301.5 290.7~ 280 280~ 290.7~ 301.5 290.7 280~ 290.7 280~ 269.2 音圧 [db] -10-11.5-13.5 持続時間 ( 加熱中 ) [sec] 37 23 14 持続時間 ( 消火後 ) [sec] 56 15 28 周波数 [Hz] 290.7~ 290.7~ (1 次ピーク ) 301.5 301.5 301.5 周波数 [Hz] (2 次ピーク ) 290.7~ 280 290.7~ 280 290.7~ 280 音圧 [db] -10-8.5-18 持続時間 ( 加熱中 ) [sec] 30 16 5 持続時間 ( 消火後 ) [sec] 41 23 8 5

図 8 周波数解析 釜鳴り直後 図 9 周波数解析 1 次ピーク 図 10 周波数解析 2 次ピーク 図 11 周波数解析 完全消音直前 6

1 次ピーク周波数 ( 加熱時の釜鳴り ) が 徐々に高い方に変遷していく原因熱電対を使用し 管内 4 点の中央部の温度を計測した その結果を表 5 に示す こ v れより 時間と共に管内平均温度が上がっているのが確認できる 周波数は f = で λ 求められ 音速 v [m/s] は 1atm 乾燥空気の場合 空気の温度をt とすると v = 331.5 + 0. 61t [ ] で表される これから 同じ波長の場合 空気の温度が上がると周波数が高くなるということがわかる つまりこの現象は 加熱を続けるにつれ管内温度が上昇し 釜鳴りの起こる周波数が高く変遷したことによるものと考えられる 表 5 管内の各点における温度 各点の時間における温度の変化 [ ] 管底からの長さ (cm) 鳴り始め鳴り終わり 網下 [ ] 13 96 119 冷却材中 [ ] 15 25 103 冷却材上部 [ ] 16.5 88 75 出口付近 [ ] 38 78 75 各点平均 [ ] 71.75 93 火を止めた後に釜鳴りが起きる原因ガスコンロで釜鳴りを起こす場合 強火よりも中火にした方が 1 次ピーク持続時間は長くなるが 2 次ピーク持続時間は減少する傾向にあった 冷却部下部と上部の温度差 ( 傾き : 図 12 中赤線 ) が少なくなり 自励振動を起こせなくなったために音が止んだのだとすれば その温度差がまた一定以上になれば自励振動が再開するはずである 火を止めた後 網下部は 120 近い状態になっており 冷却材中も 100 を越えていた しかし その後ほぼ閉じた系に近い網下は 熱が中々下がらないのに対し 網上は開いた系なので熱の下がり幅が網下よりも大きい ( 表 6) よって火を消して数秒後に また冷却部上下で自励振動を起こす温度差が生まれ ( 図 13) 再度釜鳴りが鳴り始めたのではと考えられる 表 6 各点における温度 1 次ピーク終わり 2 次ピーク終わり 網下 [ ] 119 95 冷却材中 [ ] 103 66 冷却材上 [ ] 75 52 出口付近 [ ] 75 50 温度降下 図 12 釜鳴り止んだ直後 図 13 火を消した後の温度変遷 7

2 次ピーク周波数 ( 消火後の釜鳴り ) が 徐々に低い方向に変遷していく原因 1 次ピークの理由と同じで 火を止めたことにより 管内温度が下がっていき 釜鳴りの起きる周波数が低く変遷していったものと考えられる 5.4 お湯の量 ( 水位 ) 変える沸騰させるお湯の水位の影響を調べるために いくつかの実験を行った その時の実験条件と結果を表 7 に示す 表 7 各水位における冷却材への影響 管長 :30.3[cm] 条件測定項目米スズ BB 弾 水位による違い 周波数 [Hz] 269.2~ 269.2~ 水位 1 [cm] (1 次ピーク ) 280 280 280 持続時間 ( 加熱中 ) [sec] 71 47 30 ( 冷却材 300 [cc]) 持続時間 ( 消火後 ) [sec] 50 16 17 水位 4 [cm] 周波数 [Hz] (1 次ピーク ) 301.5~ 312.2~ 323 312.2 312.2 持続時間 ( 加熱中 ) [sec] 28 44 10 ( 冷却材 300 [cc]) 持続時間 ( 消火後 ) [sec] 33 8 13 周波数 [Hz] 水位 8 [cm] (1 次ピーク ) 336.1 366.1 鳴らない 持続時間 ( 加熱中 ) [sec] 17 5 ( 冷却材 300 [cc]) 持続時間 ( 消火後 ) [sec] 19 2 水位を上昇させていくと どの冷却材においても周波数が高くなる傾向があった 釜鳴りにおける片側閉管の波長は 管底面からではなく 図 14 のように液面からの長さによって決まるということが分かった また 水位が上昇するにつれて音の持続時間が短くなる傾向がある BB 弾は 水位 8[cm] で音が鳴らなかった これは水位の上昇に伴い 網下内部の圧力上昇が早まり 冷却材に伝わる熱流束が増えたためと考えられる BB 弾は熱容量が小さいため温度勾配がすぐになくなってしまったと考えられる また伝熱量の増加について 水の量が多いために 発生する蒸気量も多くなる これは 水が少ないとコンロの火のエネルギーのほとんどが 蒸発熱 や缶への熱損失として放出されてしまう このとき 蒸発熱は 水の質量 蒸発潜熱 で表され その最大量は水の質量に依存している つまり水が多いと蒸気量が増え 冷却材への伝熱量が増えると考えられる 5.2~5.4 よると釜鳴りには 材料の種類 材料の大きさ 材料密度 投入量 水位 の 4 つの要素が重要になってくると考えられる 0.6r X 2r λ/4 h 図 14 液面を考慮した片側閉管の波長 8

5.5 網 ( 冷却部 ) の位置の影響冷却部の位置によっても 周波数は変化した その結果を図 15 に示す それぞれ対応した色の直線よりも点が右にいくほど管全長に対する網下の割合は小さい 直線よりも右側では比較的乾燥空気の理論値と一致しているのだが 直線付近 ~ 左側では 理論値よりも大きく下がっている これは 自励振動の発生源となっている冷却部の位置が そこで励起する周波数の値を左右しているからだと考える つまり 網の位置を変えると 同じ管長でも得られる周波数は異なる可能性がある 文献 (2) でも 気柱の振動において 低温熱源の位置が周波数に影響を与えると述べている 400 実験条件冷却材 :BB 弾,300[cc] 水位 :2[cm] 周波数 [Hz] 350 300 250 200 理論値 ( 乾燥空気,90[ ]) 網位置,17.5[cm] 網位置,12.5[cm] 網が中央に来る管長 150 100 10 20 25 30 35 40 50 60 70 液面からの管長 [cm] 図 15 網の位置による周波数の影響 5.6 管接続部の隙間の影響ソアルミ薄板をそれぞれ1 音分の幅にカットして 両端をリラベット止めして円筒を作った 図 16 のようにこの円筒を使いシ管長を変化させ 音階を作る これにより音調のコントロールが可能になり 演奏することができると考えた しかし 管長が伸びて周波数は低くなるも その減少幅は不規則であり 理論値とは全く一致していなかった そこで 図 16 円筒の装着イメージ理論値との比較をするために 積み重ねた円筒をアルミテープで互いに固定することで剛体にし 同様に周波数を測定した すると ほぼ理論値通りの結果となった したがってこの現象は 円筒と円筒の間に生じる隙間が原因と考えられる 笛に代表される管楽器は 同じ指使いでも穴の塞ぎ方で微妙な違いを生むことができる 同じように釜鳴りでも微小な隙間によって目的の音とズレが生じたものと考える 9

今回円筒間の隙間を減らす方法として 1 円筒の上下端にガムテープを巻き付け 鍔 ( つば ) を作る 2 全て 1 音ずつ円筒を作るわけではなく 3 音毎にそれまでの 2 つの輪を取り除き その長さを含めた長い円筒を被せるの 2 つを考えた 1 円筒の上下端に鍔を作る図 17 のように 円筒の上下端にガムテープをきつく巻き付け鍔を作り 乗せられる面積を増やすとともに 重量の増加による安定化も図った 図 17 ガムテープによる厚みの増加 2 音階の輪の設計全てを 1 音ずつ作ると 1 オクターブを出すために 7 つの輪を重ねることになり 不安定になる そこで図 18 のような流れで音調を調節できるようにした この方法により 円筒間の隙間は最大で 3 ヶ所になり 隙間の影響を抑えることができると考えた 図 18 音調調節方法案 さらに 配置した円筒の上から力を加えて 円筒同士を密着させることで 隙間の影響をほぼ無くすことができた 本実験でもそれを採用した 10

6. 本実験本実験では これまでに行ってきた基礎実験を参考にして 1 オクターブ出す装置の製作を行った 6.1 各音調における管長を求めるまず始めに 音階の周波数から管長を求める計算を行った この計算によって実験装置の全体像を把握すると同時に 正確な音を発生させる為である そこで私たちは表 8 に示した各音調の周波数を参考にした 管長の計算方法を以下に示す また 表 8 で示した音階をピアノの鍵盤範囲で表したものを図 19 に示す 表 8 二音階の周波数音周波数 [Hz] 周波数 [Hz] ド 130.8 261.6 レ 146.8 293.7 ミ 164.8 329.6 ファ 174.6 349.2 ソ 196.0 392.0 ラ 220.0 440.0 シ 246.9 493.9 ド 261.6 523.3 130.8 [Hz] 261.6 [Hz] 523.3 [Hz] 図 19 ピアノの鍵盤全体図乾燥空気と仮定した場合 周波数 f [Hz] は 波長 λ [m] と音速 v[m/s] から v f = [Hz] (1) λ で求まる ここで 音速 v[m/s] は 1atm 乾燥空気の場合 空気の温度を t [ ] とし 波長 λ [m] は液面からの高さを l [m] 管半径 r [m] とすると v = 331.6 + 0. 6t [m/s] (2) λ = 4 ( l + 0. 61r) (3) これより 式 (2) と (3) を式 (1) に代入して液面からの高さ l [m] を求めると 331.6 + 0.6t l = 0. 61r [m] (4) 4 f となり 液面からの高さが求められる また 管底面からの高さ x [m] を求めるには 液面の高さを h[m] とすると x = l + h [m] (5) となる この計算によって求めた音と管長の関係を表 9 に示す 11

表 9 音と管長の関係 ( 乾燥空気 90 の場合 ) 必要長さ [cm] 液面考慮 (+2cm) [cm] 音階 周波数 [Hz] 乾燥空気 乾燥空気 ド 130.8 66.8 68.9 レ 146.8 59.0 61.1 ミ 164.8 52.0 54.1 ファ 174.6 48.8 50.9 ソ 196.0 43.0 45.1 ラ 220.0 37.8 39.9 シ 246.9 33.2 35.3 ド 261.6 31.0 33.1 レ 293.7 27.1 29.2 ミ 329.6 23.7 25.8 ファ 349.2 22.1 24.2 ソ 392.0 19.1 21.2 ラ 440.0 16.5 18.6 シ 493.9 14.2 16.3 ド 523.3 13.1 15.2 湿り蒸気と仮定した場合 気体を湿り蒸気として仮定した場合は 音速 v [m/s] の式が変わってくる 音速 v[m/s] は 湿り蒸気の場合 比熱比をγ(=1.33) 気体定数を R(=461.4992)[J/(kg K)] 蒸気の絶対温度をT [K] とすると v = γ RT [m/s] (6) となり この式 (6) を式 (4) に代入して液面からの高さ l [m] を求めると RT l = γ 0. 61r [m] (7) 4 f となる この計算によって求めた音と管長の関係を表 10 に示す 表 10 音と管長の関係 ( 湿り蒸気 95 の場合 ) 必要長さ [cm] 液面考慮 (+2cm) [cm] 音階 周波数 [Hz] 湿り蒸気 湿り蒸気 ド 130.8 86.1 88.2 レ 146.8 76.2 78.3 ミ 164.8 67.4 69.5 ファ 174.6 63.3 65.4 ソ 196.0 55.9 58.0 ラ 220.0 49.3 51.4 シ 246.9 43.4 45.5 ド 261.6 40.7 42.8 レ 293.7 35.7 37.8 ミ 329.6 31.3 33.4 ファ 349.2 29.3 31.4 ソ 392.0 25.6 27.7 ラ 440.0 22.3 24.4 シ 493.9 19.3 21.4 ド 523.3 18.0 20.1 12

混合空気と仮定した場合気体を網上では乾燥空気 網下では湿り蒸気の混合気体と仮定した場合について計算する 管全長を x[m] 液面から網までの高さを l (=0.12)[m] とし その高さ管長を繰り返し法によって求める またこのとき使用する乾燥空気 湿り蒸気のみでの長さの値は 前述で求めた値を用いて それぞれ x D x W と定義する l l x = xw + 1 x D (8) x x 右辺の管全長を x[m] の値を変化させて 左辺と等しくなるように求める この計算によって求めた音階と管長の関係を表 11 に示す 表 11 音階と管長の関係 ( 混合空気 70 の場合 ) 必要長さ l [cm] 液面考慮 (+2cm) [cm] 音階 周波数 [Hz] 混合空気 混合空気 ド 130.8 70.1 72.2 レ 146.8 62.3 64.4 ミ 164.8 55.4 57.5 ファ 174.6 52.2 54.3 ソ 196.0 46.3 48.4 ラ 220.0 41.2 43.3 シ 246.9 36.5 38.6 ド 261.6 34.4 36.5 今回は基礎実験のデータと一番よく一致した 乾燥空気 ( 管内平均温度 90 ) を採用して装置を作ることにした この結果に基づいて アルミ薄板をそれぞれ 1 音分の音の幅にカットして 両端をリベット止めして円筒を作った この円筒を管上部に重ねたり 取り除いたりすることで管長を変化させ 音階を作る 13

6.2 本実験装置基礎実験で得られた結果から 実験装置 ( 図 20) を考案した 実験装置は管径 15.5[cm] 管長 14.5cm の缶の上部に網を固定し 基準となるド (261.6[Hz]) を出す装置を製作する その後 音階を変化させる為に上部に管を付け足していくという構成になっている その付け足す管は特定の音を出す為 様々な高さの管を製作する この付け足す円筒の一部を図 21 に示す この高さを決定する計算は 6.1 で求めた乾燥空気 ( 管内平均温度 90 ) を採用した 今までの基礎実験で得られた結果を考慮し 冷却材を米 500[cc] とし お湯の水位を 2[cm] として実験を行った その実験と結果を次節の 6.3 に示す また図 20 において管外周部の網下の位置に配管用シリコンラバーヒーターを取り付けた それにより 消火時の管下部の温度の減少速度が遅くなり 温度勾配を長く保つことができると思われる 図 20 実験装置全体図 図 21 円筒状の管 6.3 理論値と実測値の比較 6.2 で示した実験装置で複数の音 (1 オクターブ ) を出す実験を行った 実験では 周波数の低いドから周波数の高いドまでの各音を順に鳴らした また 6.1 で説明した通り乾燥空気 ( 管内平均温度 90 ) を理想値とし 本実験結果と比較したものを図 22 に示す この図 22 からわかるように 実測値が理想値とほぼ重なっており 見事 1 オクターブ分の音を出すことに成功した しかし 周波数が高い範囲においてみてみると ド と シ において理論値と実測値に多少の誤差が見受けられる この理由を以下に示す 周波数が低くなる ( 管長が長くなる ) ほど 誤差が少なくなる理由周波数 f [Hz] は 波長 λ [m] と音速 v [m/s] から v f = [Hz] λ で求まる 音速 v [m/s] を定数とすれば 周波数と波長 ( 管長 ) は反比例の関係にある よって 波長 λ [m] の値が大きくなればなるほど 定数 ( 音速項 ) の差による周波数 f [Hz] の値の差は小さくなる つまり 低音の方が 理論値に近い音が出せるということになる また 5.5 に示したが 網の位置によっても影響が出てくる これにより 理論値と実測値に差異が出ていると考えられる 14

この釜鳴りの実験の動画と採取した音は 以下のファイルを参照 ( ファイル名 : 釜鳴り -1 オクターブ -( 動画および音楽ファイルの両方 動画は 2 つ添付 )) 300 理想値 ( 乾燥空気,90[ ]) 実測値 ( 米,500[cc]) 250 周波数 [Hz] 200 ド シ ラ ソ 150 ファ ミ レ ド 100 20 30 40 50 60 70 80 液面からの管長 [cm] 図 22 理想値と実測値の比較 7. まとめ釜鳴り現象の発生条件を様々な観点から明らかにして 本実験の目的である 1 オクターブの音を出すことに成功した 明らかになった条件を以下にまとめる 音の周波数は 管の寸法や網の位置 水位によって変化する 釜鳴りの持続時間は 冷却材の種類 管内の温度分布によって変化する 管の接続部などに隙間があると 周波数の理論値と大きな差異を生じる また 1 オクターブの音を出せたことで音楽演奏の可能性を感じました 試しに曲を演奏してみました 添付しますのでぜひお聞きください! ( ファイル名 : 何という曲でしょう?) 15

8. 装置製作のアドバイス今回実験した釜鳴り現象は 簡単な装置で再現することができるので ぜひ自分で作って音の迫力を肌で感じてみては? うまくいかない時は 下のアドバイスを参考にしてみて下さい 音を鳴らすには? 管は 隙間ができないような大きく重い材料を使用する 冷却材は 冷やした米 または球形状に近く小さめなもの (2~3[mm]) をたくさん使用する 水位は低めに設定する 熱源の加熱量を上げてみる 音を変えるには? 隙間を減らす為に 管同士の継ぎ目を極力減らす 管長 管径を変える 水位 または網の位置を変えてみる 謝辞本実験は ( 株 ) 八光および ( 株 ) 八光電機製作所より助成を賜りました 加えて 実験器具を販売 そして知識を高める貴重な場を提供して頂き ここに深謝の意を表します また 本実験におけるテーマ考案の際 アドバイスを下さった先生方に心より感謝申し上げます 参考文献 (1) 富永昭, 日本物理學會誌, 55(5) (2000), pp.326-331 (2) 斉藤孝基, 日本機械学会論文集,Vol.31-221(1965),pp.143-153 (3) 甲藤好郎他, 日本機械学会論文集,Vol.43-365(1977),pp.211-216 (4) 斑目春樹, 日本機械学会論文集,Vol.47-413(1981),pp.10-19 16

備考 冷却装置を用いて 釜鳴りの継続時間を延ばす冷却材と蒸気 ある寸法の菅のバランスによって釜鳴りが成り立っていることは これまでの考察により明らかとなった これを踏まえて 1 オクターブを作る際に問題となるのは その釜鳴りの継続時間である ここまでの本論文における釜鳴りの継続時間は 消火後も加味してせいぜい 2 分弱であった ( これはコンロの火を最も強くした場合であり 加熱量のコントロールによってもう少し長くできると思われる ) これは 1 オクターブを作ったり 演奏を行ったりするのに十分な時間ではない 釜鳴りの継続時間の増加の妨げとなるのは 次の 2 つの事象である 1 蒸発における水位の減少水位が減ると 音の高さが変化する 加熱の状態によっては数分で 0.5cm も水位が減少することもよくあるので注意が必要 2 冷却材の温度上昇冷却材が蒸気にさらされ 温度が上昇すると 温度勾配ができにくくなる 特に影響を受けるのが 2 である これは冷却材の量の増加による対策では十分でない (5.3 参照 ) 冷却材が常に冷えた状態になるように 冷却装置を作成する 本実験では 伝熱性能を高めるために 銅パイプの冷却路を作成した その諸元を表 12 に 冷却路を図 23 に示す パイプ内に流す冷媒は取り扱いの観点からよく冷えた水を用いた 銅パイプの寸法について 流路面積や冷却対象の材料の寸法を考えて 外径 4mm の管を用いた これを図のように渦巻き状に曲げる 冷却水を貯めたポンプに お風呂のお湯を吸い上げるポンプを入れて水を吸い上げ 遠心ポンプで多くの水を送った 表 12 冷却装置の諸元設計項目設定した値 銅パイプ内径 [mm] 3.0 銅パイプ外径 [mm] 4.0 冷媒 水 (0~10 ) 流量目安 [ml/sec] 約 5 遠心ポンプ型番 イワキ製 MD-15 図 23 冷却路の様子 (2 本のラインに分岐する場合穴あきめくら栓にパイプを溶接 ) 17

結果作成した冷却装置の銅パイプ ( 以下 冷却パイプ ) を冷却材中へ挿入することで 釜鳴りの継続時間の延長を試みた 結論から言えば 冷却パイプの位置取りが難しく 成功したのはスズと米の場合であった スズの場合 スズを網の上に一粒分の厚さだけ薄く広げ その上に冷却パイプ さらにスズをまんべんなく載せた この場合 加熱時から音は鳴り続け 約 10 分音を持続させることができた 米の場合同様の配置で 火を止めた場合のみ音を持続させることに成功した しかし いずれの場合も釜鳴りが終わったあと もう一度加熱を行おうとしても釜鳴りが発生しない したがって ただ冷却するだけでは半永久的な釜鳴りを生み出すことができないということがわかった 考えられる理由として 冷却材下部 網の部分に水の膜が溜まったからということが考えられる しかし 正確な検証方法が見つからなかったため 理由は定かではない 冷却パイプの配置場所について 5.3 に示したように冷却材の温度は その位置によって様々である したがって 釜鳴りを発生させるための温度勾配を与えるために シビアな冷却パイプの位置取りが必要である なお 以下は平面状の銅パイプの場合であり 形状によっては改善できる可能性がある まず 冷却材の最上部に置いた場合 この場合は必ず釜鳴りを持続できなかった 冷却パイプの伝熱方法は熱伝導であるから 接している冷却材を通して 冷却材全体を冷やさなくてはならない したがって よほど冷却材の層が薄くない限り 冷却材の下部まで冷却できず釜鳴りを継続できない 次に 冷却材の最下部に置いた場合 この場合は釜鳴りの発生を妨げてしまった おそらく 最下部にある場合 一旦冷やされた蒸気 ( 相変化した場合 熱湯 ) によって 冷却部が温められる したがって 冷却材が得る熱量は小さく 釜鳴りを発生させるには至らなかったのだと考えられる 以上から冷却パイプの位置は 冷却材の最下部 最上部を避けるべきである また 冷却材の種類によって 冷却に関する熱伝導の能力が変わってくると考えられる したがって冷却材の種類の選択も重要になってくるだろう 冷却パイプのみで冷却を行う場合これまでに本文では 釜鳴りを生じさせるためには温度勾配が重要である と何度も記述している しかし ただ 温度勾配が大きければ釜鳴りが発生する というわけではない ここでは それを実験で確認してみた 釜鳴りが発生する条件を満たした管を用いて 冷却材を使用せず 冷却密度が非常に高い投げ込みクーラー ( 型番 :EYELA 製 ECS-30) を管内に挿入した しかし 目視できるほど凝縮量が多いにもかかわらず 釜鳴りが発生 またはその兆候が起きることはなかった 加熱量とのバランスについても調整してみたが 本実験では釜鳴りを発生させることができなかった すなわち釜鳴りは温度勾配が重要であるが 冷却材が層の状態になっていることも重要である ここからは推測になるが 5.3 のような温度勾配をつくるためには 蒸気を閉じた空間が必要である また もしも粒が平面状に並ぶことによって 各々が生み出す小さな音を増幅しあっている性質があるとすれば なおのこと層の存在が重要になってくると考えられる 18