公益社団法人日本環境教育フォーラム インドネシア事業のご紹介 2016 年 12 月 6 日 JEEF インドネシア事務所長矢田誠
ジャワ島西部国立公園住民参加型環境保全推進事業 (JICA 草の根技術協力 2009~2012) 事業の背景 首都ジャカルタから最も近い国立公園であるグヌン ハリムン サラック国立公園では 自然保護区域内に 10 万人の住民が居住し 保護政策と住民の生活との間で大きな軋轢が発生 行政と地域住民との対立を解消し 住民参加による国立公園管理が必要とされていた 活動内容 JEEF は公園管理事務所と地域住民との間の橋渡し役となり 重要保全地域と住民の里山利用の境界線を策定 居住地や耕作地の無秩序な拡大を防止すると共に 既存の里山では伝統的知識を活用した資源利用のルールを策定した 国立公園レンジャーと地域住民の協働による地図作成 国立公園内の目的別ゾーンの明確化 ( 原生自然保全ゾーン 緑化ゾーン 活用ゾーンなど ) 里山 ( 活用ゾーン ) における林産物の持続的利用促進 国立公園利用のルールの明確化と 政府 - 住民による MoU の策定
官民協働による国立公園の地図作成とルールの明確化 対立関係にあった国立公園レンジャーと地域住民の協働の実現 ハンディGPSを用いた公園内の現状確認と地図作成 保全するゾーン 緑化が必要なゾーン 里山利用が可能なゾーンなど 生態系にあわせたゾーンを策定 公園管理が明確化される 政府 地域住民双方の役割が定められ 住民参加による環境保全が実現
アグロフォレストリーによる持続可能な林産物利用 里山住民が利用可能なゾーン テナガザルやヒョウが生息する奥山は原生自然として保全を義務化 奥山原生自然を保全するゾーン 地すべりなどで荒廃した林地では住民による植林を実施 里山では地産の林産物生産を推奨し 住民の収入向上に貢献 ヤシ砂糖カルダモンコーヒー
事業の成果 公園レンジャーと住民による国立公園管理が実現 ( 対立から共生へ ) 里山の林産物を利用した収入の向上 ( 耕作地の拡大に代わる収入源の確保 ) 寄付金や現地スタディツアーなど 日本の一般市民も巻き込んだ支援活動として現在も活動継続中
フェリス女学院大学による社会企業プログラムと連携 日本国内の洋菓子店やパン屋さんでの ジャワのヤシ砂糖を用いた商品開発 販売
天然ハチミツ生産支援プロジェクト ( 経団連自然保護基金助成事業 2010~2018) ( 三井住友銀行ボランティア基金助成事業 2015) 事業の背景 ジャワ島の西端に位置するウジュン クーロン国立公園は絶滅危惧種のジャワサイの生息地であり UNESCO により世界自然遺産認定される貴重な生態系を有している 地域住民の一部は 違法な森林伐採や野鳥など希少な野生生物の捕獲と販売などに従事しており 持続可能な森林利用の体勢確立が急務となっていた 活動内容 国立公園内に自生する野生ミツバチから 天然ハチミツの収穫と販売を推進 持続可能なハチミツ収穫方法を指導すると共に 加工技術トレーニングを実施し商品価値の向上を支援
天然ハチミツの採集
プロジェクト開始以前は... 違法伐採の副収入としてのハチミツ採集 ハチの巣を採り尽くしてしまう非持続的方法 不衛生な環境下での作業と低品質の商品 場当たり的な訪問販売 低価格
プロジェクトの実施を通じて... 衛生面に配慮し高品質な製品生産 首都圏ショッピングモールでの高額販売 商品価格は従来の5 倍に向上 違法伐採に頼らずとも収入の確保が実現
事業の成果 以前の収奪的なハチミツ採集から 持続可能な商品生産への転換が実現 地域住民に環境保全の重要性が認識され 自主的な植林活動などに発展 かつての違法伐採従事者が 森林パトロールを実施するなど国立公園保全に参加 本プロジェクトがモデルとなり全国ハチミツ生産者ネットワークが形成され 国内 8 箇所で同様の活動が進行中
トヨタ車体グループの森マングローブ再生プロジェクト トヨタ車体グループ CSR 事業 (2011~2015) 事業の背景 トヨタ車体株式会社 および 現地法人 3 社からの寄付金による植林事業 エビ養殖ブームによって荒廃したジャカルタ湾岸のマングローブ林の再生 トヨタ車体は社員参加の植林を含む インドネシア国内拠点近隣での緑化活動を希望 JEEF からは緑化だけでなく 植林地の維持管理を託す為の人づくりとして地域住民への環境教育や収入向上支援も併せて実施することを提案 活動内容 放棄されたエビ養殖池を活用し 5 年間で 100Ha 100 万本の植林 マングローブ再生 漁業資源の回復 をテーマとした環境教育の実施 地域住民による森林管理グループが結成され 植林作業や植林地の管理に従事 政府要人や社員の参加による年 1 回開催の記念植樹式の開催
プロジェクト開始以前エビ養殖の為に切り開かれるマングローブ林
プロジェクト開始以前放棄されたエビ養殖池が広がる
プロジェクト開始直後 2011 年 7 月
2 年後の様子 2013 年 8 月
4 年後の様子 2015 年 6 月
記念植樹式典 年 1 回開催の植樹式には 地元政府要人やグループ各社の社員が参加
事業の成果 マングローブの再生に伴い エビ カニ 魚などの漁業資源の回復が見込まれることから 地域住民はプロジェクトに積極的に参加 住民の提案により植林と並行した海草の養殖に発展 水質浄化と収入向上の両立が実現 本事業をモデルに 県内各地で植林 CSR 活動が開始されるようになっている
植林によって回復する漁業資源 2014 年 8 月
植林によって回復する漁業資源 2015 年 12 月
大塚環境保全モデル村 Amerta Indah Otsuka 社 CSR 事業 (2011~2015) 事業の背景 大塚製薬現地法人 Amerta Indah Otsuka 社による住民参加型環境保全活動 ポカリスエット生産工場のあるスカブミ県にて 水源の確保を目的とした植林を実施 JEEF は事業の企画 運営と 地域住民に対する環境教育の実施を担当 活動内容 自社製品の生産に必要な水資源の保全を目的とした 40Ha の植林実施 地域住民グループを組織し 植林地の維持管理は住民グループに委託 AIO 社は 育林にかかる賃金支払いを行わない代わりに グループが実施する有機農業などへの資金を提供
事業の成果 5 年間の事業終了後には住民が自立できることを目指した活動の実施 有機農業による野菜生産や家畜飼育による循環型農業の実施体勢が確立 県知事より青年環境リーダー育成についての表彰を受けるなど 企業ー住民連携の環境保全活動優良モデルとして当初の計画どおり 5 年間の活動を終了 CSR 事業終了後は住民グループ独自の活動として周辺村落を巻き込みながら現在も発展中
国立公園エコツーリズム推進プロジェクト (JICA 草の根技術協力 2014~2017) 事業の背景 首都圏近郊に位置するグヌン ハリムン サラック国立公園におけるエコツーリズム推進事業 ジャワ島に残された貴重な生態系の保全と地域住民の暮らしの両立を目的に 観光事業の実施を通じて持続可能な開発を目指すモデル事業 JEEF 介入以前は 住民 国立公園管理事務所 県政府 地元企業などのステークホルダー間の調整がなされないまま事業計画が進行 無秩序な観光開発が行われてしまう前に 各関係者間の意見調整を行い 持続可能な事業実施体制の構築が望まれている 活動内容 ステークホルダー間の役割分担の取り決め ツアーガイドやホームステイなど 住民が担当する役割に対してのトレーニングの実施 魅力的なアクティビティの開発など 地元の観光資源の価値の向上 都市部の一般市民や学校が環境保全について学ぶための自然学校などのプログラム開発
ジャワ島に残された貴重な生態系の保全首都ジャカルタから 100Km 県内にある豊かな自然環境
事業の成果 ( 実施 3 年目 ) 各ステークホルダーが 各々の専門性を生かした役割を担うエコツーリズム協議会の設立 伝統文化に根ざしたアクティビティの開発 地元の自然環境を熟知した地域住民によるツアーガイドの養成 将来的には地域の自然 文化を提示するエコミュージアムの設立を模索
エコツーリズム事業を活用した企業との連携 NEC 世界子ども自然クラブ事業とのコラボレーション
NEC インドネシア社による 都会の子どもたちへの自然体験学習機会の提供
アジア 6 カ国の子どもたちによるインターネットを通じた体験報告会