見れば得する! セミ分取システムの実用的な使い方
内容 1. セミ分取 HPLC システム 応用例 留意点 2. 超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) を使用した分取の紹介
医薬品や天然物質などから 目的の化合物を高純度で単離 精製することを目的とした HPLC セミ分取 HPLC: 分取 HPLC とは カラム内径が 10mm 以上 50mm 未満のカラムを用いた分取 HPLC 分取 HPLC: カラム内径が 50mm 以上のカラムを用いた分取 HPLC フラクションコレクター リサイクルバルブなどと組合わせて用いる スケールに対する各パラメータの関係 ( 計算値 ) ポンプラインアップ スケール 分析 セミ分取 カラム内径 (mm) 3 4.6 10 20 充填剤粒子径 (µm) 3~10 5~10 基準流量 (ml/min) 0.4 1 4.7 18.9 基準注入量 (µl) 5~10 10~25 50~200 200~500 ポンプ名 PU-2080 PU-2086 PU-2087 流量範囲 (ml/min) ~10 ~20 ~50
分取クロマトグラフィーシステム
セミ分取 HPLC システムの流路例 (1) セミ分取 HPLC システムの流路図 2 4 1 3 5 2 6 7 廃棄 1 8 システム構成装置 1. 溶媒 2. 溶媒ポンプ 3. ダイナミックミキサー 4. オートサンプラー 5. カラム 6. 検出器 (UV PDA RI CD 検出器 ) 7. フラクションバルブユニット or 3WAY バルブ 8. フラクションコレクター
セミ分取 HPLC システムの流路例 (2) リサイクル分取の流路図 3 4 2 5 6 廃棄 1 7 システム構成装置 1. 溶媒 2. 溶媒ポンプ 3. オートサンプラー 4. カラム 5. 検出器 (UV PDA RI CD 検出器 ) 6. フラクションバルブユニット 7. フラクションコレクター
フラクションコレクター対応 ChromNAV Chromatography Data System Fraction Collector Controller FC-2088-30 ADVANTEC CHF122SC Gilson 223 Sample Changer
フラクションコレクター分画の方法 ADVANTEC CHF 122SC の場合 (1) 時間分画 (2) 条件分画 1 レベル ( 絶対値 ) スロープ ( 傾き ) レベル and スロープレベル or スロープ (3) 条件分画 2 複数 CH で得られたクロマトグラムの値の論理演算 レベルによる分画 スロープによる分画 (4) ディスカード (5) 手動での分取 (1)-(3) の単独もしくは組み合わせにより分画する 条件分画で 分画条件が不成立の区間を回収するときに設定します ディスカードの例
フラクションコレクターの条件設定 ソフトウェアの充実 使いやすさ ~ シミュレーション機能 ~ シミュレーション機能を使うことで 設定ミスなどによる取り逃しを回避
コレクション結果表示 分画結果とクロマトグラムの関連付け フラクションコレクターと ChromNAV を併用することで皆様の分析をより良くサポート
分取 HPLC 応用例
リサイクル分取クロマトグラフィー 一度カラムから溶出した不分離ピークを カラムに繰り返し通すことで 長いカラムを使用した場合や あるいはカラムを数本連結した場合と同等の効果を得ることができます これにより 得られた高分離能ピークを分取することで 効果的な分取精製が可能になります リサイクル分取システムの流路図 ポンプリサイクルキット オートサンプラー カラム 検出器 リサイクルバルブ 廃液 例えば フラクションコレクター
リサイクル分取応用例 必ず 目的成分の部分のみをリサイクルさせる これ以外の部分は 排出または 一回目に分取する 測定条件 Column: Megapak GEL 201C (20mm I.D. x 500mmL, 5µm) Eluent: Chloroform Flow rate: 3.0mL/min Wavelength: 254nm リサイクル1 回目 Sample: Polystyrene oligomer 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 6 回目 n=6 n=5 n=4 分取 1~3 リサイクル ポリスチレンオリゴマ (n=4,5,6) の リサイクル分取
リサイクル分取の留意点 サンプルループでの広がり 5mL サンプルループ使用 ( 内径 1.0mm) リサイクルモード 通常測定 AS-2058 の機能 : リサイクルモードリサイクルモードは ある一定の時間が経過した後 バルブを Inject 側に切り替えることにより ピークの広がりの要因を減らす役割をする
分取時の留意点
試料負荷量 ( 注入容量 濃度 ) のピーク形状への影響 分離する程度に試料負荷量 ( 容量 濃度 ) を増加させる Analytical Sample Z inj 容量と濃度の overload 時のピーク形状は一般的に右図のようになる * 右図中段は サンプル溶解溶媒が移動相溶媒よりも溶出力が小さい場合 分取においては ピークが分離されていれば overload によるピーク形状の変化は問わない なるべく多くの量を処理したいため Z inj Z inj Z inj Z inj Volume Overload Concentration Overload
サンプル溶解溶媒の影響 (1) セミ分取 HPLC 2mL 注入の場合 N: 理論段数 Acetonitrile N=1478 N=3592 Acetonitrile/Water(85/15) 移動相と同じ N=10172 N=14617 Acetonitrile/Water(50/50) N=10920 N=14861 Acetonitrile/Water(25/75) 1: Naphthalene, 2: Fluorene, 3: Anthracene, 4: Pyrene, 5: Chrysene, 6: Benzo[a]pyrene (0.01mg/mL each) Column: CrestPak C18( 10mm I.D. x 250mmL, 5µm ), Eluent: Acetonitrile/ Water (85/15)
サンプル溶解溶媒の影響 (2) セミ分取 HPLC 移動相 0.1% TFA in Methanol/Water (30/70) サンプル溶解溶媒 及び注入量 10mg/mL in 100% Methanol 1mL 注入 注入した絶対量は同量 2mg/mL 上記試料を超純水で 5 倍希釈 (in 20% Methanol) 5mL 注入
感度と注入量に適当なセルの選択 セミ分取 HPLC の場合 ( 等量注入 ) 標準セル : Path 10mm, Volume 17µL 分取セル : Path 1mm, Volume 21µL 標準セル 分取セル Column: CrestPak C18(10mm I.D. x 250mmL, 5µm), Eluent: Acetonitrile/Water(85/15), Flow rate: 4.7mL/min, Injection volume: 80µL, Wavelength: UV254nm, Sample: PAHs (0.2mg/mL)
超臨界流体クロマトグラフィー (SFC)
Green and Clean Separation 超臨界流体クロマトグラフィー (SFC) とは 移動相に超臨界 CO 2 を用いた 高速高分離を実現できる分離分析法 シリカゲルカラムを使用した場合 順相クロマトグラフィーに似た保持挙動を示します 1 ハイスループット HPLC と比べて 分析時間 1/2~1/10 へ短縮可能 2 低コスト HPLC と比較すると 安価な CO 2 を移動相として利用することや 分取の場合 溶出後の後処理が簡便になることで トータルコストを大幅に削減 3 安全かつ環境にやさしい SFC の特長 CO 2 は引火性が無いため安全です また CO 2 はリサイクル品を使用
Green and Clean Separation HPLC HPLC, SFC による分析データの比較 Mobile phase: Hexane/EtOH (75/25) Flow rate: 0.5mL/min Column: CHIRALPAK AD-H (4.6mmI.D. x 150mmL) Column temp.: 40ºC Wavelength: 250nm 5µm 11min Flavanone O O SFC 3.5min CO 2 : 1.2mL/min Modifier: EtOH 0.8mL/min Column: CHIRALPAK AD-H (4.6mmI.D. x 150mmL) Column temp.: 40ºC Pressure: 20MPa Wavelength: 250nm 5µm 3µm 1min CO 2 : 5.0mL/min Modifier: EtOH 2.5mL/min Column: CHIRALPAK AD-3 (4.6mmI.D. x 150mmL) Column temp.: 40ºC Pressure: 20MPa Wavelength: 250nm
Green and Clean Separation SFC システム 分析用 SFC 流量 : 1~8 ml/min カラム : 2~4.6 mmi.d. セミ分取用 SFC 流量 : ~20 ml/min カラム :4.6~10.0 mmi.d. 分取用 SFC 流量 : ~120 ml/min カラム :10.0~30.0 mmi.d. 安全弁 SFC 基本流路図 カラムオーブン 自動圧力調整弁 CO 2 ポンベ CO 2 送液ポンプ ミキサ オートサンプラ カラム 検出器 モディファイア溶媒 モディファイア送液ポンプ ストップバルブ 回収ビンまたは フラクションコレクタ
分取効率を向上させるための工夫スタックインジェクション (SF-NAV 使用時 ) 1 2 3 Inj. Inj. Inj. 1 2 3 注入のイメージ Inj. Inj. Inj. 大幅に短縮 サンプルの注入間隔を短くし クロマトグラムをオーバーラップさせることにより効率的に分取することがでる
CD スタックインジェクションによるフラバノンの分離 100000 Intensity [μv] O 0 O UV μv 1000000 900000 800000 700000 600000 500000 400000 300000 200000 100000 0-100000 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 Retention Tim e [m in] 0 20 40 60 80 100 Time (min) カラム : CHIRALPAK IA (20mmI.D.x250mmL) CO 2 流量 : 34mL/min モディファイア : CH 3 OH 6mL/min カラム温度 : 40ºC 圧力 : 20MPa 波長 : 310nm サンプル : フラバノン 31.1mg/mL, 1000 L
フラバノンの回収率と光学純度 Fraction1 Fraction2 光学純度 : 99.9±0.1% 光学純度 : 99.9±0.1% 回収率 : 82.1% 回収率 : 85.5% カラム : CHIRALPAK IA (4.6mm I.D.X250mmL) CO 2 流量 : 3.2mL/min モディファイア : MeOH; 流量 : 0.8mL/min カラム温度 : 40ºC 圧力 : 20MPa 24 時間運転すると精製量各 4.8g
ワルファリンの分離回収における効率とコスト比較 分取 SFC 分取 HPLC 5 min 20min 運転時間 溶媒コスト 溶媒廃棄コスト 分取 SFC/ 分取 HPLC 1/4 1/7 1/4 < 算定方法 : 何れも CHIRALPAK-IA φ20 x 250mm を用いた場合 > 分取 SFC 条件 : CO 2 / MeOH = 35 ml/min / 10.5 ml/min, Warfarin (10mg Inj.), 20MPa, CD 240nm 分取 HPLC 条件 : Hexane / Ethanol = 12mL/min / 3mL/mmin, Warfarin (10mg Inj.), CD 254nm 溶媒コスト : 試薬ベース 溶媒廃棄コスト : 10,000 / 180L 制御ソフト : SF-NAV
まとめ 分取を行う場合 適切なシステムを選択することが必要流速 注入量 検出器 ( セル容量 ) など 機能が充実したソフトウエアを使用することで 作業効率が向上 セミ分取クロマトグラフィーにおける留意点を理解することで より効率的な分取精製が可能 リサイクル分取などの手法や SFC を有効に用いることで 分取精製の効率化だけでなく コスト削減や環境負荷の低減も可能