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がん登録実務について

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病


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呼吸器外科雑誌24巻2号

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

1)表紙14年v0

呼吸器外科雑誌25巻7号

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

原発不明がん はじめに がんが最初に発生した場所を 原発部位 その病巣を 原発巣 と呼びます また 原発巣のがん細胞が リンパの流れや血液の流れを介して別の場所に生着した結果つくられる病巣を 転移巣 と呼びます 通常は がんがどこから発生しているのかがはっきりしている場合が多いので その原発部位によ

9 2 安 藤 勤 他 家族歴 特記事項はない の強い神経内分泌腫瘍と診断した 腫瘍細胞は切除断端 現病歴 2 0 1X 年7月2 8日に他院で右上眼瞼部の腫瘤を に露出しており 腫瘍が残存していると考えられた 図 指摘され精査目的で当院へ紹介された 約1cm の硬い 1 腫瘍で皮膚の色調は正常であ

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

呼吸器外科雑誌24巻5号

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 大道正英 髙橋優子 副査副査 教授教授 岡 田 仁 克 辻 求 副査 教授 瀧内比呂也 主論文題名 Versican G1 and G3 domains are upregulated and latent trans

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の特性と


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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

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外来在宅化学療法の実際

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

1. 来院経路別件数 非紹介 30 他疾患経過 10 自主受診観察 紹介 20 他施設紹介 合計 患者数 割合 12.1% 15.7% 72.2% 100.0% 27.8% 72.2% 100.0% 来院経路別がん登録患者数 がん患者がどのような経路によって自施設を受診し

094 小細胞肺がんとはどのような肺がんですか んの 1 つです 小細胞肺がんは, 肺がんの約 15% を占めていて, 肺がんの組 織型のなかでは 3 番目に多いものです たばことの関係が強いが 小細胞肺がんは, ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため, 手術 可能な時期に発見されることは少

70% の患者は 20 歳未満で 30 歳以上の患者はまれです 症状は 病巣部位の間欠的な痛みや腫れが特徴です 間欠的な痛みの場合や 骨盤などに発症し かなり大きくならないと触れにくい場合は 診断が遅れることがあります 時に発熱を伴うこともあります 胸部に発症するとがん性胸水を伴う胸膜浸潤を合併する


イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

実地医家のための 甲状腺エコー検査マスター講座

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院内がん登録における発見経緯 来院経路 発見経緯がん発見のきっかけとなったもの 例 ) ; を受けた ; 職場の健康診断または人間ドックを受けた 他疾患で経過観察中 ; 別の病気で受診中に偶然 がん を発見した ; 解剖により がん が見つかった 来院経路 がん と診断された時に その受診をするきっ

9章 その他のまれな腫瘍

第58回日本臨床細胞学会 Self Assessment Slide

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

第71巻5・6号(12月号)/投稿規定・目次・表2・奥付・背

院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

するものであり 分子標的治療薬の 標的 とする分子です 表 : 日本で承認されている分子標的治療薬 薬剤名 ( 商品の名称 ) 一般名 ( 国際的に用いられる名称 ) 分類 主な標的分子 対象となるがん イレッサ ゲフィニチブ 低分子 EGFR 非小細胞肺がん タルセバ エルロチニブ 低分子 EGF

の主要な治療薬として日本ならびに世界で広く使用されている MTX の使用により 関節リウマチの臨床症状の改善 関節破壊進行抑制 QOL 改善のみならず 生命予後の改善や心血管合併症リスクが軽減されることが示されており 現在の関節リウマチ治療においては必要不可欠な薬剤である 1990 年前後から MT

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

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核医学分科会誌

小児神経芽腫の一例

Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

子宮頸がん 1. 子宮頸がんについて 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんです ( 図 1) 約 80% は扁平上皮がんであり 残りは腺がんですが 腺がんは扁平上皮がんよりも予後が悪いといわれています 図 1 子宮頸がんの発生部位 ヒトパピローマウイルス (HPV) 感染は子宮頸がんのリスク因子です

核医学画像診断 第36号

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

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付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

付表 登録数 : 施設 部位別 総数 1 総数 口腔咽頭 食道 胃 結腸 直腸 ( 大腸 ) 肝臓 胆嚢胆管 膵臓 喉頭 肺 骨軟部 皮膚 乳房 全体

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

日本内科学会雑誌第97巻第7号

入した場合には 経気道的な散布巣として臓側胸膜から 2-3mm 離れた内側に小葉中心性粒状影や tree-in-bud といわれる小葉中心性病変を呈しますが この所見をみた場合には呼吸器感染症を強く疑います 汎小葉性病変は 小葉間隔壁に囲まれた ほぼ 1, 2cm 四方の小葉内が細胞浸潤や滲出物ある

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医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

094.原発性硬化性胆管炎[診断基準]

Taro-01 胃がん内視鏡検診手引き

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31(615) 症例 肺 結膜および耳下腺に同時発生した MALT リンパ腫の1 例 藤原俊哉, 西川敏雄, 片岡和彦松浦求樹 要 旨 症例は61 歳, 女性. 検診の胸部 X 線で右肺野の異常陰影を指摘された. 胸部 CT で右肺に多発する腫瘤影を認めたため, 当院へ紹介となった. 初診時, 眼瞼結膜に腫瘤を発見した.PET-CT では右肺上葉の腫瘤に高集積とすりガラス陰影に低集積を認めた. その他, 右耳下腺にも低集積を認めた. 気管支鏡検査を施行し, 右肺上葉の腫瘤の擦過細胞診で, 悪性リンパ腫が疑われた. 眼科紹介し, 結膜腫瘤を生検したところ,MALT リンパ腫と診断された.MALT リンパ腫の多発病変が疑われたが, 組織分類の確定診断には十分な組織の採取が必要と考え, 手術の方針とした. 胸腔鏡補助下右上葉切除, 下葉部分切除を施行した. 病理組織検査の結果, すべての病変において MALT リンパ腫と診断された. また, 耳下腺腫瘍を摘出したところ,MALT リンパ腫と診断された. 結語. 肺 結膜および耳下腺に同時発生した MALT リンパ腫の1 例を経験したので文献的考察を加えて報告する. 索引用語 :MALT リンパ腫, 悪性リンパ腫, 肺, 胸腔鏡下手術 mucosa-associatedlymphoidtissue(malt)lymphoma,malignantlymphoma,lung video-assistedthoracicsurgery(vats) はじめに Mucosa-associatedlymphoidtissue(MALT) リンパ 腫は低悪性度のリンパ腫で, 悪性リンパ腫の 0.3% に 認められ, 比較的稀な疾患である 1,2). 胸腔内病変と 胃を除いた複数臓器に発生した症例の報告は少ない. 症 症例 :61 歳, 女性. 主訴 : 無症状. 現病歴 : 毎年検診を受けていたが, 異常を指摘されたことはなかった.1ヵ月前, 検診の胸部 X 線で右肺野の異常陰影を指摘された. 胸部 CT では右肺に多発する腫瘤影を認めたため, 当院へ紹介となった. 初診時, 両側眼瞼結膜に腫瘤を認めた. 例 広島市立広島市民病院呼吸器外科原稿受付 2011 年 2 月 7 日原稿採択 2011 年 3 月 28 日 既往歴 家族歴 : 特記事項なし. 初診時現症 : 貧血 黄疸なし. 胸腹部に異常なし, 体表リンパ節を触知せず. 両側眼瞼結膜に腫瘤を認めた (Fig.1). 血液 生化学検査成績 : 血算, 白血球分類および生化学上, 明らかな異常を認めなかった. 腫瘍マーカーは正常範囲で, 可溶性 IL-2 受容体も367 U/ml で上昇を認めなかった. 胸部 X 線 : 右上肺野に辺縁不明瞭な約 30 mm 大の腫瘤影を認めた. 胸部 CT(Fig.2-a-c): 右 S 1 に 33 mm 大の辺縁不整な腫瘤を認めた. また右 S 2 に 25 mm 大のすりガラス陰影と右 S 8 に 12 mm 大の不整形結節を認めた. PET-CT(Fig.2-d): 右 S 1 腫瘤部に SUVmax5.1, 右 S 2 のすりガラス陰影に SUVmax1.4 の FDG 集積を認めた. 右肺下葉の結節には異常集積を認めなかった. また, 右耳下腺に SUVmax1.9 の集積を認めた. 頚部 MRI: 右耳下腺腫瘤に軽度の造影効果を認めた.

32(616) 日呼外会誌 25 巻 6 号 (2011 年 9 月 ) Fig.1 Atumorwasseeninthebilateralconjunctiva. a) b) c) d) Fig.2 ChestCTandpositronemissiontomographyshowedmultipletumors.a)AnildefinedsolidnoduleintherightS 1.b)Aground-glassopacityintherightS 2.c) AsmalnoduleintherightS 8.d)Thetumorsintherightlungandrightparotid glandshowedtheaccumulationoffluorodeoxyglucose. 気管支鏡所見 : 気管支内腔に異常はみられず. 右 B 1 より擦過したところ, 出血したため生検はしえなかった. 細胞診の結果, カルチノイドの疑いであったが, 免疫染色を追加したところ, 悪性リンパ腫が疑われた. 治療経過 : 眼科により眼瞼腫瘤を生検した. 組織所見では MALT リンパ腫と診断された. 肺病変も MALT リンパ腫の多発病変が疑われたが組織分類の確定診断の目的で手術の方針とした. 胸腔鏡補助下右上 葉切除術 +1 群郭清および下葉部分切除を行った (Fig.3-a). また, 後日, 耳下腺腫瘍摘出術を施行した. いずれも術後経過は良好であった. 病理所見 : 切除した3 病変ともに, 気管支周囲を主体としてリンパ濾胞の形成を伴い, 小型のリンパ球の増生を認めた (Fig.3-b,c). 細気管支は著明に変形し, 一部に lymphoepitheliallesion(lel) を呈していた

多臓器に同時発生した MALT リンパ腫 33(617) a) b) c) Fig.3 a)resectedspecimen.microscopic findingsshowed MALT lymphoma. b) 40,c) 200. (Fig.4-a). 免疫染色を追加したところ,LCA(+), CD20(+),CD3(-),UCHL-1(-),CD10(-) であった (Fig.4-b,c). さらに, イムノグロブリン軽鎖である Igλ,Igκ を免疫染色したところ,Igκ>>Igλ であり,monoclonality が示された (Fig.4-d,e). また, MIB1 の発現が低く, 増殖能の低い腫瘍であった (Fig.4-f). 以上より,MALT リンパ腫と診断された. 眼瞼, 耳下腺の腫瘤についても同様の組織所見および免疫染色パターンを認めた. 本人の希望により術後化学治療は行わず, 経過観察をしているが,2 年経過し再発を認めていない. 考察 Mucosa-associatedlymphoidtissue(MALT) リンパ腫は1983 年, Isaacson らによって提唱された概念で, MALT のリンパ濾胞の marginalzone の Bリンパ球が腫瘍化した低悪性度のリンパ腫である 1).REAL 分類では extranodal,marginalzoneb-cellymphomaに分類されている. 悪性リンパ腫の0.3%, 肺原発悪性腫瘍の0.3~0.45% に認められ, 比較的稀な疾患であるが 2), 近年報告例がよくみられるようになった. 病理組織像では, 胚中心の centrocyte に類似する細胞が増殖すること, リンパ濾胞には胚中心が存在すること, および, 小型のリンパ腫細胞が粘膜上皮に浸潤 し,LEL を形成することなどが特徴としてあげられる 3,4). 免疫組織染色では CD20(L-26),CD22,bcl-2 が陽性を示し,CD5,CD10,CD45RO が陰性を示すことが多いとされている. また, 免疫グロブリンは軽鎖の κまたは λの一方のみを発現することとし, 単クローン性であることが示されている 3,4). 以前の報告ではほとんどの MALT リンパ腫は限局性で他部位への浸潤や転移は比較的まれであるとされてきたが 5),Thieblemont らによれば,154 例の MALT リンパ腫の解析で, 多臓器発生例が18 例 (11%) にみられ, そのうち17 例は診断時に骨髄浸潤やリンパ節病変を認めたと報告している 6). さらに, 長期の観察においては3 分の1の症例が播種をきたすと報告している 6). 今回の症例においては, 肺, 結膜と耳下腺という, いずれも粘膜上皮を有する臓器に発生しており, 同時性多発の可能性があるが, 播種によるものも考えうる.Raderer らの報告でも胃 MALT リンパ腫よりも胃外 MALT リンパ腫のほうが, 播種しやすいと示している 7). また,Yoshino らは多臓器発生の MALT リンパ腫の多くは単一クローンから成ると示している 8). それについては, それぞれの臓器の病変間のクローナリティーの有無を検討する必要がある. しかし, 一方 Konoplev らは, 多臓器に MALT リンパ腫が発生した場合に, それぞれの病変にクローナリティーの有無を

34(618) 日呼外会誌 25 巻 6 号 (2011 年 9 月 ) a) b) c) d) e) f) Fig.4 Immunohistochemicalstainings.a)CK (AE1/AE3),alymphoepithelial lesion(arow)wasobserved.b)cd3,c)cd20,d)igκ,e)igλ,f)ki-67 (MIB-1). 検索すると, 異なる抗原刺激によって発症したために, 独立した病変であることが多いと報告している 9). 本症例では検索しえたすべての病巣において形質細胞へ分化を示す腫瘍細胞は軽鎖 Igκ のみを発現していた. このことから単一クローンから発生した MALT リンパ腫であることが示唆されるが, それを証明するにはより詳細な遺伝子検索を要する. ただし, 播種であっ たとしても, 治療の反応性に差はなく, 予後にも差はないとされている 6). 治療については胃以外の臓器で限局型であれば, 手術療法, 放射線治療あるいは化学療法が選択されるが, 一定の見解はない. 播種型の場合は抗 CD20 モノクローナル抗体である rituximab を中心とした化学療法を選択されることが多い. 肺病変の場合, 確定診断が

多臓器に同時発生した MALT リンパ腫 35(619) 得られず診断目的で手術がなされる場合が多く 10-13), 文献的には, 約 82% に手術が施行されている 14). 術後 療法として,CHOP,rituximab などが用いられるが, 報告によれば手術で完全切除がなされた場合は経過観察を行っている例が多い 10,11,13). 完全切除不能多発例, 再発例においては化学療法を考慮していく必要があるが 13), 年齢, 症状, 他の悪性腫瘍との鑑別を要する場合など, 症例毎に検討する必要がある 13). 予後については,5 年生存率, 約 84~90%,10 年生存率, 約 70~ 80% であり, 一般に良好である 12,15). また, 多発病変例においても単発例との間に予後に差がないという報告がある 7). 本症例においても厳重に観察し, 再発を認めた場合には化学療法を検討する予定である. 結 肺 結膜および耳下腺に同時発生した MALT リンパ腫の1 例を経験した 文 1.IsaacsonP,WrightDH.Malignantlymphomaofmucosaassociatedlymphoidtissue.A distinctivetypeofb-cel lymphoma.cancer1983;52:1410-6. 2.MilerDL,AlenMS.Rarepulmonaryneoplasms.Mayo ClinProc1993;68:492-8. 3. 横井豊治, 中村栄男. 肺のリンパ増殖性疾患. 肺の MALT リンパ腫 (BALT リンパ腫 ). 病理と臨床 1999;17: 154-60. 4. 太田聡, 深山正久. 肺リンパ腫 肺リンパ増殖性疾患の病理. 日胸 2007;66:181-9. 語 献 5. 川又紀彦. 悪性リンパ腫 - 正しい診断と最高の治療を目指して - 内科医による病理診断の検証と治療法の選択 - MALT リンパ腫. 内科 2000;86:511-4. 6.ThieblemontC,BergerF,DumontetC,etal.Mucosaassociatedlymphoidtissuelymphomaisadisseminated diseaseinonethirdof158patientsanalyzed.blood2000; 95:802-6. 7.RadererM,WöhrerS,StreubelB,etal.Assessmentof disease dissemination in gastric compared with extragastric mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma using extensive staging: a single-center experience.jclinoncol2006;24:3136-41. 8.YoshinoT,IchimuraK,MannamiT,etal.Multipleorgan mucosa-associated lymphoid tissue lymphomas often involvetheintestine.cancer2001;91:346-53. 9.KonoplevS,LinP,QiuX,MedeirosLJ,YinCC.Clonal relationshipofextranodalmarginalzonelymphomasof mucosa-associated lymphoid tissue involving diferent sites.am JClinPathol2010;134:112-8. 10. 永島明, 下川秀彦, 竹之山光広. 肺原発 MALT リンパ腫切除例の検討. 日臨外会誌 2004;65:3157-60. 11. 中川誠, 大崎敏弘, 出水みいる, 南貴博, 末次彩子. 肺 気管支に多発した MALT リンパ腫の 1 例. 肺癌 2007; 47:119-23. 12. 小野田雅彦, 竹中博昭, 田中俊樹, 林雅規, 濱野公一. 原発性肺癌との鑑別が困難であった BALTlymphoma の 1 例. 日呼外会誌 2005;19:145-9. 13. 臼杵憲祐, 浦部晶夫. 肺リンパ腫の治療. 日胸 2007;66: 198-209. 14. 鷲尾一浩, 西英行, 和田佐恵, 玄馬顕一. 肺 MALT リンパ腫の 1 手術例. 肺癌 2005;45:729-33. 15.LiG,HansmannML,ZwingersT,LennertK.Primary lymphomasofthelung:morphological,immunohistochemical andclinicalfeatures.histopathology1990;16:519-31.

36(620) 日呼外会誌 25 巻 6 号 (2011 年 9 月 ) A caseofmultiplemucosa-associatedlymphoidtissue(malt)lymphoma ofthelung,conjunctiva,andparotidgland ToshiyaFujiwara,ToshioNishikawa,KazuhikoKataoka MotokiMatsuura DepartmentofThoracicSurgery,HiroshimaCityHospital A61-year-oldwomanwasreferedtoourhospitalwithanabnormalchestshadowonamedicalcheckup.Atthe firstmedicalexamination,atumorwasnotedinherbilateralconjunctiva.chestctshowedanil-definedmultiple tumorshadow intherightlung.onpositronemissiontomography,theaccumulationoffluorodeoxyglucosewas observedinthepulmonarytumorsandrightparotidgland.bronchoscopyrevealedanormalbronchialsurface. Brushing cytology examination suggested a malignantlymphoma.we performed video-assisted rightupper lobectomyandpartialresectionoftherightlowerlobeforadefinitivediagnosis.thepathologicdiagnosiswasmalt lymphomainalspecimens.theparotidglandtumorwasresectedanddiagnosedasamaltlymphoma.thepatient wasdoingwel2yearsaftertheoperationwithoutrecurence.conclusion.wereporthereinararecaseofmultiple MALTlymphomaofthelung,conjunctiva,andparotidgland,andprovideareviewoftheliterature.