地質ニュース

Similar documents
日本海地震・津波調査プロジェクト

自然地理学概説

スライド 1

陦ィ邏・3


新潟県中越沖地震を踏まえた地下構造特性調査結果および駿河湾の地震で敷地内の揺れに違いが生じた要因の分析状況について

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

強化プラスチック裏込め材の 耐荷実験 実験報告書 平成 26 年 6 月 5 日 ( 株 ) アスモ建築事務所石橋一彦建築構造研究室千葉工業大学名誉教授石橋一彦

‡P†|ŠéŒØ.ec4

実験題吊  「加速度センサーを作ってみよう《

Microsoft PowerPoint - H24全国大会_発表資料.ppt [互換モード]

亮녔닇22亮담��?덀��??

第 6 回最終処分関係閣僚会議資料 科学的特性マップの提示と今後の取組について 平成 29 年 7 月 28 日経済産業省

Microsoft Word - 第5章.doc

スライド 1

Microsoft Word - 概要版(案)_ docx

1. 空港における融雪 除雪対策の必要性 除雪作業状況 H12 除雪出動日数除雪出動回数 H13 H14 H15 H16 例 : 新千歳空港の除雪出動状況 2. 検討の方針 冬季の道路交通安全確保方策 ロードヒーティング 2

Microsoft PowerPoint - 知財報告会H20kobayakawa.ppt [互換モード]

13章 回帰分析

目 次 1. 想定する巨大地震 強震断層モデルと震度分布... 2 (1) 推計の考え方... 2 (2) 震度分布の推計結果 津波断層モデルと津波高 浸水域等... 8 (1) 推計の考え方... 8 (2) 津波高等の推計結果 時間差を持って地震が

2 図微小要素の流体の流入出 方向の断面の流体の流入出の収支断面 Ⅰ から微小要素に流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅰ は 以下のように定式化できる Q 断面 Ⅰ 流量 密度 流速 断面 Ⅰ の面積 微小要素の断面 Ⅰ から だけ移動した断面 Ⅱ を流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅱ は以下のように

() 実験 Ⅱ. 太陽の寿命を計算する 秒あたりに太陽が放出している全エネルギー量を計測データをもとに求める 太陽の放出エネルギーの起源は, 水素の原子核 4 個が核融合しヘリウムになるときのエネルギーと仮定し, 質量とエネルギーの等価性から 回の核融合で放出される全放射エネルギーを求める 3.から

<4D F736F F D BE289CD8C6E93E082CC835F C982E682E98CB88CF582C982C282A282C42E646F63>

津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

z w? z w- w-2 w-1 w w1 w2 w z @5 @8 (9c) z (9d) - @8 (9e) - z (9f)? - - -

線積分.indd

<4D F736F F F696E74202D C CC89C88A B8CDD8AB B83685D>

目的 2 汚染水処理対策委員会のサブグループ 1 地下水 雨水等の挙動等の把握 可視化 が実施している地下水流動解析モデルの妥当性を確認すること ( 汚染水処理対策委員会事務局からの依頼事項 )

西松建設技報

(Microsoft PowerPoint - \216R\223c\221\262\230_2011 [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

- 14 -

Microsoft Word - NJJ-105の平均波処理について_改_OK.doc

京都大学博士 ( 工学 ) 氏名宮口克一 論文題目 塩素固定化材を用いた断面修復材と犠牲陽極材を併用した断面修復工法の鉄筋防食性能に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 本論文は, 塩害を受けたコンクリート構造物の対策として一般的な対策のひとつである, 断面修復工法を検討の対象とし, その耐久性をより

Microsoft Word - t30_西_修正__ doc

機械式ムーブメント 機械式時計の品質とメンテナンス なぜロンジンは機械式ムーブメントを搭載した時計をコレクションに加えているの でしょうか 答えは単純です 最新式の手巻ムーブメントもしくは自動巻ムーブメントを搭載している時計に優る満足は 他のムーブメントを搭載している時計からは得 られないからです

はじめに 100 円ショップの おたま を使った球面鏡の実験と授業展開 by m.sato ご存知のように 一昨年から導入された新しい学習指導要領の 物理 の内容は 標準単位が1つ増えたことに伴い 剛体やドップラー効果 波の干渉などが ( 物理 Ⅰから ) 上がってきました ところが 教科書を見ると

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

土砂災害警戒情報って何? 土砂災害警戒情報とは 大雨警報が発表されている状況でさらに土砂災害の危険性が高まったときに, 市町村長が避難勧告等を発令する際の判断や住民の方々が自主避難をする際の参考となるよう, 宮城県と仙台管区気象台が共同で発表する防災情報です 気象庁 HP より :

構造力学Ⅰ第12回

火山活動解説資料平成 31 年 4 月 14 日 17 時 50 分発表 阿蘇山の火山活動解説資料 福岡管区気象台地域火山監視 警報センター < 噴火警戒レベルを1( 活火山であることに留意 ) から2( 火口周辺規制 ) に引上げ> 阿蘇山では 火山性微動の振幅が 3 月 15 日以降 小さい状態

火山活動解説資料平成 31 年 4 月 19 日 19 時 40 分発表 阿蘇山の火山活動解説資料 福岡管区気象台地域火山監視 警報センター < 噴火警戒レベル2( 火口周辺規制 ) が継続 > 中岳第一火口では 16 日にごく小規模な噴火が発生しました その後 本日 (19 日 )08 時 24

Microsoft Word - 05_第3_2_1深部地盤のモデル化 docx

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

ホームシアター固定フレームカーブドスクリーン リュネット (Lunette) シリーズ ユーザーガイド重要 : 安全に使用するための注意事項 ご使用前に このユーザーガイドをご一読ください 正しく使用することで長くお使いいただけます 1. スクリーンは 照明スイッチ コンセント 家具 窓などの障害物

Microsoft PowerPoint - 科学ワインバー#2

資料 4 第 1 回被害想定部会 深部地盤モデル作成結果 平成 27 年 3 月 24 日 1

Microsoft Word - 中村工大連携教材(最終 ).doc

<4D F736F F D D082B882DD90AC89CA95F18D908F F312D385F895E896388CF2E646F63>

泊発電所 地盤(敷地の地質・地質構造)に関するコメント回答方針

様々なミクロ計量モデル†


全地連 技術 e- フォーラム 2008 高知 2008 年 10 月 16 日 巨大地震発生帯への掘削 ー ちきゅう の挑戦ー 独立行政法人海洋研究開発機構理事 地球深部探査センター長 平朝彦

(4) ものごとを最後までやりとげて, うれしかったことがありますか (5) 自分には, よいところがあると思いますか

< F2D94AD90B68CB992B28DB895F18D90955C8E E9197BF8254>

Microsoft Word - Stattext07.doc

Chapter 1

図 1 平成 19 年首都圏地価分布 出所 ) 東急不動産株式会社作成 1963 年以来 毎年定期的に 1 月現在の地価調査を同社が行い その結果をまとめているもの 2

諸外国の火山防災体制

B. モル濃度 速度定数と化学反応の速さ 1.1 段階反応 ( 単純反応 ): + I HI を例に H ヨウ化水素 HI が生成する速さ は,H と I のモル濃度をそれぞれ [ ], [ I ] [ H ] [ I ] に比例することが, 実験により, わかっている したがって, 比例定数を k

えられる球体について考えよ 慣性モーメント C と体積 M が以下の式で与えられることを示せ (5.8) (5.81) 地球のマントルと核の密度の平均値を求めよ C= kg m 2, M= kg, a=6378km, rc=3486km 次に (5.82) で与えら

RSS Higher Certificate in Statistics, Specimen A Module 3: Basic Statistical Methods Solutions Question 1 (i) 帰無仮説 : 200C と 250C において鉄鋼の破壊応力の母平均には違いはな

Microsoft PowerPoint - 口頭発表_折り畳み自転車

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

Microsoft PowerPoint - 01_内田 先生.pptx

             論文の内容の要旨

<4D F736F F D2091E E8FDB C588ECE926E816A2E646F63>

相対性理論入門 1 Lorentz 変換 光がどのような座標系に対しても同一の速さ c で進むことから導かれる座標の一次変換である. (x, y, z, t ) の座標系が (x, y, z, t) の座標系に対して x 軸方向に w の速度で進んでいる場合, 座標系が一次変換で関係づけられるとする

火山防災対策会議の充実と火山活動が活発化した際の協議会の枠組み等の活用について(報告)【参考資料】

go.jp/wdcgg_i.html CD-ROM , IPCC, , ppm 32 / / 17 / / IPCC

Microsoft Word _九州大学

Microsoft PowerPoint - DigitalMedia2_3b.pptx

原子力規制委員会 東通原子力発電所敷地内破砕帯の調査に関する有識者会合 でのご意見を踏まえた地質調査の概要 ( プレスレク資料 ) 平成 25 年 2 月 18 日 東北電力株式会社 東北電力株式会社 All rights Reserved. Copyrights 2012, Tohoku Elec

<4D F736F F D208D5C91A297CD8A7793FC96E591E631308FCD2E646F63>

Microsoft PowerPoint - 科学ワインバー#6

.( 斜面上の放物運動 ) 目的 : 放物運動の方向の分け方は, 鉛直と水平だけではない 図のように, 水平面から角 だけ傾いた固定した滑らかな斜面 と, 質量 の小球を用意する 原点 から斜面に垂直な向きに, 速さ V で小球を投げ上げた 重力の加速度を g として, 次の問い に答えよ () 小

目 次 本 編. 地 価 公 示 価 格 一 覧 表 ページ. 地 価 公 示 価 格 選 定 替 廃 止 等 一 覧 7ページ 3. 地 価 公 示 地 価 調 査 共 通 地 点 の 価 格 一 覧 表 8ページ 資 料 編 4. 宇 都 宮 市 ( 用 途 地 域 別 ) 均 価 格 変 動

Taro-地震防災マップQ&A集.jtd

表1-表4-2


Microsoft PowerPoint - システム創成学基礎2.ppt [互換モード]

総合的な探究の時間 は 何を 何のために学ぶ学習なのか? 総合的な探究の時間 は与えられたテーマから みなさんが自分で 課題 を見つけて調べる学習です 総合的な探究の時間 ( 総合的な学習の時間 ) には教科書がありません だから 自分で調べるべき課題を設定し 自分の力で探究学習 ( 調べ学習 )

< F2D838F815B834E B B>

バックチェック計画書

4

<4D F736F F D FCD B90DB93AE96402E646F63>

Taro-プレミアム第66号PDF.jtd

Microsoft PowerPoint - 静定力学講義(6)

研修シリーズ

基礎化学 Ⅰ 第 5 講原子量とモル数 第 5 講原子量とモル数 1 原子量 (1) 相対質量 まず, 大きさの復習から 原子 ピンポン玉 原子の直径は, 約 1 億分の 1cm ( 第 1 講 ) 原子とピンポン玉の関係は, ピンポン玉と地球の関係と同じくらいの大きさです 地球 では, 原子 1

Xamテスト作成用テンプレート

PowerPoint プレゼンテーション

ことを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建物等がない場合は 物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください 屋内にい

417-01

Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

図 東北地方太平洋沖地震以降の震源分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 ) 図 3 東北地方太平洋沖地震前後の主ひずみ分布図 ( 福島第一 第二原子力発電所周辺 )

(Microsoft Word - \221\262\213\306\230_\225\266_\213\321\220D_\215\305\217I.doc)

<835A E E A B83678F578C768C8B89CA E786C7378>

<4D F736F F F696E74202D B7B967B836C C668DDA2E B93C782DD8EE682E890EA97705D205B8CDD8AB B83685D>

<4D F736F F D2091E6358FCD31328B438FDB A5182F08ADC82DE816A2E646F6378>

デジカメ天文学実習 < ワークシート : 解説編 > ガリレオ衛星の動きと木星の質量 1. 目的 木星のガリレオ衛星をデジカメで撮影し その動きからケプラーの第三法則と万有引 力の法則を使って, 木星本体の質量を求める 2. ガリレオ衛星の撮影 (1) 撮影の方法 4つのガリレオ衛星の内 一番外側を

Transcription:

一 16 一面ドイツの超深部ボーリング計画 KTB 世界一深い 夢 を目指して浦辺徹郎 ( 鉱物資源部 ) TetsuroURA 舳 1. はじめに西ドイツ ( ドイツ連邦共和国 ) は10 年余の歳月と400 億円の巨費を投じて中部ヨー回ツバの基盤岩に深さ14kmの世界最深のボーリングを行う計画に着手している. 大陸深部掘削計画 (Kontinenta1esTiefbohrprogramm;l1 名称 KTB) と呼ばれる国家的科学研究プロジェクトがそれである. 明目の経済効果を目指した技術開発プロジェクトが目白押しの我が国に対し西ドイツがこのようた科学的た夢を語ろうとしたのはたぜか. このたび科学技術庁が派遣した専門家による調査団 * に参加して掘削現場を訪間する機会を得たのでその報告を兼ねてKTBの実情を紹介したい ( 写真 1). 2. なぜホーリンケなのか私達が住んでいる宇宙船 地球号 " には厚さ5~70kmユの地殻 29001mmのマントルそれに半径 3500kmユの核がある. 地殻は地球全体の質量のわずかO.4% を占めるにすぎたいが ドラエモソの四次元ポケット " のように人類の必要とする資源のほとんどを生み出してくれる宝の山でもある. しかし我々の地殻に対する知識は深さとともに急激に減少し下部地殻 ( 以前シマと呼ばれていた ) についての情報はきわめて断片的にたってしまう. 浅発地震はどうして起こるのか火山の下はどうなっているのか巨大た花こう岩体には 根 " があるのか変成作用はどこで起こるのか鉱床をもたらした熱水はどこから上がってきたのか. この様た基本的た疑問に対し地球科学者達は満足に答えるすべを持っていない 皮肉たことにその様た様々た現象が起こっている下部地殻より更に下に有るマントルの方がより研究が進んでいるとさえ言われている. 下部地殻に直接帰因する写真 1KTB 計画のポスター. 現象のあまりの多様さがマントルについては普通に受け入れられている一般化単純化を防げているからである. この多様な下部地殻の実態を明らかにするためには直接地下深部に観察窓を開けそこの岩石や流体を採取して調べる方法が最も直接的である. 超深部ポーリングはその究極の手段として世界で同時多発的に計画が進んでいる. 中でも西独の計画は周到た事前調査と掘削技術の開発体制とを組み合わせて世界一の穴に挑戦している点で群を抜いている. その経験を学び技術の進歩を調べ我が国が将来検討している超深部ポーリング計画との問で何らかの科学技術協力協定があり得ないか話し合ってこようというのが今回の調査団の目的であった. 3. ヴィンディッシュエッシェンバッハ村へ脚淫 * 東京大学工学部田中彰一教授 国立防災科学技術センター塚原弘昭博士 科学技術庁海洋開発課近藤敏和専門職 在独日本大使館小田公彦一等書記官 ( 現地参加 ) および筆者. 期間は昭和 63 年 5 月 28 日 ~6 月 5 日 Windischeschenbach.KTBの現場のある村の名である. どこでどう切って発音するのか分からたいままこう書いた紙片を前日飛行機で降り立ったフランクフルトの中央駅の切符案内へ差 L 出したところ係の人カミ路地質ニュース419 号

超深部ボーリング計画 KTB 一 17 一写真 2 ユーロシティ列車ヨハンシュトラウス号 ランクブルトからニュルンベルクまで行きローカル線に乗り継いだ. これでフあと3 回写真 3KTBボーリングサイトから見おろしたヴィソディッシュエッシェ : バッハ村の遠景. 山なみの向こうはチェコスロバキアである. 線図の索引とにらめっこを始めた. しぽらくしてそこへは列車を4 回乗り継ぐ必要があり4 時間余りかかると言う ( 写真 2). 目指すボーリングは相当た田舎で行なわれているらしい. バイエルン州オーベルプファルツ郡にあるこの村 ( 写真 3) はチェコ国境から20kmしか離れておらず横向けに超深部ポーリングを打つと隣国に突入しそうなところにある ( 第 1 図 ). 地質学的には中部ヨーロッパの基盤岩をたすボヘミヤ地塊の西端部に位置し古生代末に地塊同士の衝突により片麻岩よりたるモルグニューブ帯がやや変成度の低い堆積岩よりたるサクソチューリンゲン帯の上に斜めに衝上している所に当たる. ボーリングはこの衝上帯を突っ切るように計画されており上から横倒しのLゆう曲の先がちぎれて残ったナップモルダニューブ帯の下都地殻もみ込まれてきたマソドノレの破片とサクソチューリンゲン帯の上部地殻を順に串ざしにする予定である ( 第 2 図 ). つまりポーリングの最深部が衝上運動以前の位置ではもっとも地表に近かったことになる. ここでは上部 下部地殻の境界面であるコンラッド面は見られず両地塊の衝上後は上部 下部地殻を再び作る活動 ( 例えば変成作用 ) が起こらたかったことを推定させる ここに見られる岩石は地質学の教科書に必ず登場するバリスカン造山運動 ( 古生代 ;2.6 億年前ごろ ) の 化石 " なのである. ライフチッヒ 4 0!/' \ 一 1\ 8 〆\ 今ゲ \ 炉濡ペアプフノと ノハイロイド洲納 鱗! 桁 B 夢 θ : 二 リットル一 /1 弾励三卿一 / 船 8 磁. ぺ 0100!00 止而亨 10 AlPin6つロソト ( アルパイン \ 口膿瀦絆匿劃花醐拷獺第 1 図画ドイツの基盤岩類の概略分布とKTBボーリ1 グの位置 ライン地溝帯の方は地温勾配が高いので取り上げられずボヘミア地塊西縁に位置するオーベルプファルツに決定された 1989 年 7 月号回一カル線の車窓には緑におおわれたなだらかた丘や畑が5 月の風の中でゆったりと波打つように展開している. 所々に見られる数十戸の集落. その中心にそびえる教会の塔. ドイツの列車の旅は時刻の正確さと心安らぐ農村風景ゆえに非常に快 ' 適であった. やがて列車は定刻にヴィソディッシュエッシェソバッハ駅に到着した ( 写真 45). その日の宿であるホテルイグル ( ハリネズミのこと ) は駅から車で!5 分ほどの街道ぞいの林の中に立っていた. 羽根布団に白いシーツが清潔で気持ちがいい. 夕食のメニューには通常のドイツ料理のほか鹿イノシシウサギの肉川魚だとの地方料理が並んでいる. 今回の会合のためポソから車を飛ほして来られた小田公彦一等書記官やKTB 関係者もや

一 18 一浦辺徹郎 NWサクソチューリンゲン帯 KTBモルグニユーブ帯 卅秒 11'" 11 1, I,ol11 'oコ ' `, 1 一 賂 1 鑑葦一 一へ. 一一トン. 一一 ' ミ1 一 ^ゴヘ } 一 1 二. 一キロ`. 11 一 ' 一生一一 ' 一 一且.1 二' 一く一 一一復定時 SAXOTHuRlNG1Ku 州 Fmn wdd 舳 r 舳 1g 舳 g 〆 { へ \ 婅嘀一 10 一 20 一 30 歭 MO[DANU6I 匡 um O 岬佑 1= 町 Wold! 一一一 } キロ \ \ づ \ ミ度 \\ m \ 第 2 図反射法地震探査および地質調査などから推定されたこの地域の地殻断面. 録下 2 葉はそれに基づく解釈. 上が反射法の配って来て早速ビアパーティとなった. ム顔をそろえたキーパーソンたちビアパーティの翌朝掘削現場実施本部で我々を迎えてくれた人々に改めて会って私の二目酔いも吹き飛んでしまった.KTB 所長 H. リッジュミュラー教授 KTB 研究プロジェクト選定評価委員会委員長 R. エマーマソ教授 KTB 運営本部地球科学部長 H.J. べ一ル教授同坑井地質部長 P. ケーラー博士それに研究技術省 KTB 関連予算担当課長 D. レンツ博士とKT Bを総括運営しているキーパーソソ連がすべて顔をそる写真 4ヴィソディッシュエッジェソバッハ駅. 写真 5 駅の壁に取り付けてあった水準点 (?). 何と0.2mm まで表示してある. 葺質ニュース419 号

超深部ポーリング計画 KTB 一 19 一写真 6KTB 写真を支える人々と調査団メンバー. 石よりリッジュミュラー教授べ一ル教授近藤専門職工マーマソ教授塚原博士田中教授ケーラー博士レンツ博士浦辺小田一等書記官 KTB 現場実施本部横にて. 第 1 表 KT 盈略史西暦事項 1977ドイツ研究協会 (DFG) が超深部掘削を初めて提案. 1981 事前調査開始 40ケ所の候補地点が4ケ所に絞られた. 1982 事前調査の主要な項目である反射法地震探査の開始 1983 掘削技術の現状と開発課題が検討された 候補地が2 ケ所に絞られた. 1984KTB 実施の母体組織としてローワーサクソニー州地質調査所 (NLfB) が選ばれた. 1985KTB 計画を連邦研究技術省 (BMFT) が正式に承認 1986 掘削地がオーベルプファルツ地方に決まる. 19875000メートル深の浅部調査坑井掘削開始 (9 月 ) 1988 現場研究施設の完成 (2 月 ) 1989~1990 本掘削の開始.6~7 年で完了予定. えていたからである ( 写真 6). またワーキンググループ3のリーダーで塚原さんと顔見知りのF. ルソメル教授もにこやかにパイプの煙をくゆらせていた. これは日本大使館がKTBの現場会合の日程を配慮してこの会を設定して下さったこともあるもののドイツ側の日独科学技術協力協定への熱意の表れと言えるであろう. 会はまず各々の責任者がKTBの概要を紹介することから始まった. 予算体制技術開発だと我六が知りたい点は質問書として事前に発送しておいたので最大漏らさず聞くことができ非常に能率が良かった. そうして話を聞いている内に彼らが限られた予算の中で実に合理的に計画を立てそれに従って着実に前進していることが分かり不思議た感動を覚えた. ビッグプロジェクトにあり勝ちな硬直した運用や予算の無駄使いたどとは無縁のケレン味の無さが伝わってきたからである. 5.KT 遍が決まるまでここで少しKTBの歴史を振り返ってみよう ( 第 1 表 ) 約 10 年前ドイツ研究協会 (DFG) は深海底掘削計画 (D SDP) の成功を見て新しいアイデアに基づいた大陸ポーリングを始める時期がきていると考えた. これは地球科学分野においてもビッグサイエンスとビッグテクノロジーが必要にたって来ているという認識によるものである.DFGが1981 年に研究技術省に提出した意見書は幸運にも受け入れられまず候補地選びが開始された. ついで掘削技術のアセスメントが始まり事前調査と技術開発が同時進行することになる.4ケ所挙げ 1989 年 7 月号られていた候補地も1983 年にはライン地溝 ( ライン凹地 ) 東側のジュバルツバルト ( 黒い森 ) とボヘミア地域内のオーベルプファルツの2ケ所に絞られた. ツユバルツバルトもモルグニューブ帯に属する基盤岩地域であるがここは新生代に到るまで活動的で約 5000 万年前に変成作用を受けている. 地質学の立場から言えぼこちらの方が面白いターゲットであると言えるが残念だがら深度 7~8kmで孔底温度が300 を越えることカミ推定されたため技術的た理由から採択されたかった. 後に述べるように超深部掘削における最大の技術的困難はその深さよりむしろ高い温度にあるからである. 6.K 且 Bの推進体制 KTB 計画が連邦研究技術省の正式た承認を受けたのは1985 年になってからである.KTBの予算はすべて研究技術省から出ており科学研究費はドイツ研究協会を通じて大学その他の研究者に分配され掘削費 技術開発費 運営費 人件費はKTBの運営母体であるローワーサクソニー州地質調査所に配分されている. このローワーサクソニー州地質調査所は連邦地質調査所と同じ敷地内にあり一心同体の組織と言える. プロジェクトの総予算 ( 上限値 ) は45,000 万マルクで毎年 5 年先までの計画を立てた上で次の年 1 年分の予算額を決めるという方法を取っておりその責任者がレンツ博士だそうである. 大まかた各予算項目の割合を第 3 図に示してある. ただしこれはあくまで予定であり研究費と掘削に要する費用との配分はリッジュミュラー教授の裁量によるところが大きいようであった. KTBを取り巻く組織体制 ( 第 4 図 ) は大まかには科

一 20 一浦辺徹郎運営経費 呂 技術開発費総予算 (NLfB) 深部調査坑井 45000 万マルク ( 本坑 ) 掘削費 (315イ意円) 科学研究費 (DFG) 浅部調査坑井疑った. 後のリッジュミュラー教授の説明によるとこのリグは第二次世界大戦後ドイツが最初に自前の技術で作ったもので今回それを部分改良して使っているとのことであった. この様た所にも節約できる点はとことんそうして本掘削に資金を温存しておこうというしたたかた合理精神が感じられた. さらに重要なポイントとしてKTBがProventechnique( 実証済の技術 ) のみを用いるという基本方針を持っていることを見逃してはたらないだろう. これはドイツの鉱山会社で長年探査ボーリングに携わって来たリッジュミュラー教授自身の実証主義的考え方の反映のように思われた. 第 3 図 KTBの総予算 ( 約 10 年分の合計 ) に占める各項目の割合 ( 概数値 ). 連邦研究技術省 ( 予算の支出 配分 ) 学研究を支えるドイツ研究協会と技術開発 運営を行うKTB 本部に分かれておりその間の調整と研究技術省への勧告を顧問委員会が担当している. この顧問委員会には民間企業の重鎮学者隣国の専門家と言ったメンバーも含まれており全体の基本方針を承認する場とたっている. これら3 組織は有機的に組み合っておりたとえぱワーキンググループ1で設計制作した各種の測定装置が掘削現場研究施設でルーチン測定に使用されているといったく あいである. さらに地方分権の国西ドイツらしいところは各々の組織が散在している点である. 研究技術省と研究協会は首都ホソにローワーサクソニー州地質調査所とKT B 本部はドイツ北部の工業都市ハノーバーに掘削現場は南部のヴィソディッシュエッシェソバッハとお互い数百 km 離れており最初訪間調査の日程をどうやりくりするか迷ったほどであった. なお現地のバイエルン州政府も数億マルクをかけて用地取得道路電力だとインフラストラクチャーの整備を行ってKTBを側面から支えているそうである. 7. 掘削の進む浅部調査坑井 (V 彊 ) ドイツ研究協会 ( 個々の研究への科学研究費の調整 配分 ) ローワーサクソニー州地質調査所 (KTBの運営母体) KTB 研究プロジェクト選定 評価委員会研究分野ごとのワーキング グループ (WG) 1. 現場研究施設 WG 2. 関連研究 WG 3. 応力 坑壁安定性 WG 4. 岩石の物理的性質 WG 5. 岩石の構造 変形 WG 6. 岩石学 地球化学 岩石年代学 鉱床学 WG 7. 流体 ガスWG 8. 坑井内技術 WG 9. モデリングWG 顧問委員会 ( 左右の調整 勧告) KTB 運営本部 ( 上記の一音晴門 ノ ノーノく一 ) 浅部調査坑井 ( パイロットホール ) のリグはヴィソディッシュエッツェソバッハ村をはるかに見下ろす丘の上に立っている ( 写真 7). 特徴的た2 本足のヤグラは私第 4 図の眼には新奇に映ったが専門家の田中先生がずいぶん旧式のものを使っていますねとおっしゃったので我耳を地球科学部 坑井地質部 掘削技術部一管理部掘削現場実施本部 ( オーベルプファルツ ) 技術管理部門 科学調査部門 坑井内物理検層部門掘削現場研究施設 ( 泥水の分析コアの記載と物性測定コアの保存データ出版 ) KTBを取り巻く組織体制と資金の流れ.() 内に各々の役割を示してある. 地質ニュース419 号

超深部ボーリング計画 KTB 一 21 一写真 7KTB 写真の浅部調査坑井のリグ遠景. ただらかな牧場の向こうの丘の上に立っている 写真 8 敷地内にある本掘削予定点 片麻岩が露出している. 向こうに見えるのが浅部調査坑井のリグと現地研究施設. この浅部調査坑井は通常の意味でのパイロットホールとは異たり同一敷地内の200m 離れた所に掘られる予定の本坑井の浅所部分であると言える ( 写真 8). 掘削は6インチのダイヤモンドピットを用いたワイヤーライン方式でオールコアで行われておりルーチン観測特殊た坑井内計測ボーリング泥水および削り屑の分析等も本坑井で予定されているメニューと同一である. この浅部調査坑井は深度 5000mを目指して掘れるところまで掘り代わりに本坑井はその深度までノンコアでまっすぐに穴を開けそれ以深のコア掘削を容易にする計画にたっている. 1988 年 5 月現在浅部調査井は深度 2200,6mに達していた. ビット径 15cm 坑底斜度 0.28 度坑底温度 58 で坑底の岩石はモノレダニューブ帯の片麻岩である. 1989 年 3 月に来日されたKTBのB. ボッフアース氏によると3 月現在深度は3890mに達しておりコア回収率 98 劣平均掘削速度 1.7m/ 時ダイヤモンドビットの寿命 101~135mという成績があがっているとのことである. しかし坑底斜度は最大 10 に達しており温度勾配も 30 / kmと予想外に高くこのまま行くと本坑井では 14kmで420 に達してしまう. 先に述べたように最終的にこちらがボーリングサイトとして選ばれた理由の第一は地温勾配が低いということだったのでこれは大きな誤算と言える. 岩石は角閃岩 片麻岩が主で予想通りであったが水平に近いと思われていた地層が急傾斜であることも分かったという. 興味のあるのは3450 m 付近に割れ目があり塩化カルシウムヘリウムおよびメタンを溶存する被圧水のポケットがあったことである. 8. 掘削現場実施本部と現地研究施設現地研究施設 ( フィールドラボラトリー ) は掘削現場実施本部と同一の建物の申にあり浅部調査坑井から50 mの至近距離にある ( 第 5 図 ). ここは西ドイツ唯一の総合地球科学研究ラボだと担当者が自慢するだけあって種々の分析 計測装置とコア ライブラリー ( コアを整理 分配 保管する場所 ) カミ完備している ( 写真 9). 更に重要た点は博士号を取りたての若い研究者が沢山居てそれぞれ助手を使ってルーチン分析 計測をする体制ができていることである. 少し細部に亘るがここでやられている研究 作業を第 2 表にまとめてある. (1) 泥水分析 : ボーリングをする際掘削に伴い発生する熱と切り屑を地表に捨てるために液体を循環させる必要がある.KTBでは超深部掘削用に新しく開発し第 2 表現地研究施設で行われている科学研究とルーチン業務 1 泥水分析 (mud1ogging) イ ボーリング泥水の化学分析 ( アトミックエミッション分光分析装置 ;12 成分について ) 口. ガス分析 ( 気体質量分析装置 ;14 成分について ) ハ 泥水中の切り層の化学分析 (X 線蛍光分析装置 ;17 元素について ) 二. 切り層の鉱物分析 ( 岩石頭徴鏡 ) 2コア解析 (corelogging) イ. 物性測定 ( 圧縮試験, アコースチックエミッションだと ) 目 地球物理学的測定 ( 岩石磁化率, 残留磁気, 地震波速度 ) ハ 地質学的解析 ( 鉱物同定, 化学分析, 岩石記載 ) 3コアの方位づけ ( 坑井内音波テレビ画像との比較 ) 4コアの整理保管分配 6データベース作成 6データ集の出版 (2ケ月に1 回 ) 1989 年 7 月号

白 22 一浦辺徹郎 OC1ψ... 11o 鰍卒 =' ト ル士展望台 弩現地研究施設繍セント亀潜 ' 一. 一琴 地賃の小径劇. インワ才一メーション 1 1 ㄱ 雨水溜池二三...δ 亀変絡二蒲溝事深部調査坑引 : 一音一フ儀二 ' ポンプ所 o'= 一... ノ 䄀ヒ コ 第 5 図施設の平面図と2 本のボーリングの位置 一は完成していたい. 現在深部調査坑井とイ : フォメーショソセンタたデバイドリルHTというゾル状の無機質液体をこのポーリング泥水に用いている. これは揺らすと液状になり動かさたいとシャーベット状にたるという不思議な物性を持った液体である ( 口絵 5)1これを用いると泥水ポンプを止めた時デバイドリルHTが固まり切り屑が坑井の途中にホールドされ下に溜らないという利点がある. さらにこれが無機質であることからメタン等の炭化水素ガスの噴出があったときにもそれを正確に分析することができる. 坑井のヘッドの部分には新しく開発されたガスコレクター ( 口絵 4) が取り付けられておりここで分離したガスを直接現地研究施設にパイプ流送している. このガス分析は地球科学者のみたらず多くの人々の注目を集めている. と言うのも地球の核には地球カミ生成 Lたときに封じ込められたメタンガスカミ大量に存在 L それが深部亀裂を伝って上昇してくるのでたいかとするゴールドの説 ( 六号星野論文参照 ) の妥当性が実証できるからである. (2) コア解析 : 回収されたコアはまず圧力の解放にともたう変形と微小割れ目の発生によるアコースチックエミッションが計られる ( 写真 10). これは地下の応力の方向と大きさをコアから推定しようとする試みの一つである. 次に地震波速度だとの地球物理学的測定が行われる ( 口絵 7). これにより地表から地震探査法など写真 9 西ドイツKTB 現地研究施設の全景. 向かって右半分は掘削現場実施本部になっている 手前は請負業者のプレハブ. 写真 10 回収されたコアの圧力解放にともなうアコースチックエミッションを計っているところ 地質ニュース419 号

超深部ボーリング計画 KTB 一 23 一写真 11 本掘削用のリグの模型.1990 年に建設される予定. これで14kmを目指す. を用いて推定されていた地下の構造が更に正確に分かるようになる. と言うのも地震波の解析をする際に岩石の地震波速度を仮定せざるを得たかったのがコアの実測により実際の値を用いることができるようにたるからである. 最後にこれらのコアは切断され鉱物の同定岩石の記載化学組成の分析だとの地質学的解析が加えられる.'= れを地表調査のデータと併せて検討することによって地下構造を3 次元的に求める. (3) コアの方位つげ : コアは丸いものたのでもともとどの方向を向いていたのか分からたい. そこでボーリング孔内に下ろされた超音波テレビュアーの画像とコアの表面の模様とを比較して方位を決める. ここではこれらの作業を管理職 2 名研究員 15 名技術職員 18 名作業員 10 名計 45 名で行っている. 通常の坑井内測定や泥水管理は民間の請負業者にまかされているのでより特殊ないし科学的た研究を担当 Lていると言える. (4) コアの保管 : このような計画でともすれぽないがしろにされがちな作業にコアの管理と保管がある. ここでは小さたコアの破片に到るまで完全に番号が振られており台帳に記録されている ( 口絵 6). それが余りにも完全主義なので外部の研究者がサンプルリクエストを出しづらくなるのではと要らたい心配をするほどであった. コア倉庫も8000mまで収容できるスペースがあり足らたくたったら増設するとの事であった. 写真 12 敷地の外側にある仮設のインフォメーションセンター 既に15 万人もの人がここを訪れているとのことでドイツ国民の関心の高さを伺わ壱る 9. 技術開発の重要さ世界一の穴を掘りたいという熱意と未知のヨーロッパの基盤岩に対する科学的興味それに人類に残された最後のフロンティアである地球内部へのロマン. これらの夢もそれを可能にする技術的裏付けがなげれぱ実現したい.KTBでは先に紹介した耐熱ボーリング泥水やダイヤモンドピットの開発 改善を行っているほか本掘削坑井 ( 写真 11) 用の昇降管装置の技術開発を重点的に行なっている. もちろんそれだげでは十分ではたくこれからも掘りながら同時に技術開発を進めていくことになろう. 第 6 図に現在彼らがたいし他の国カミ持っている技術レベルをまとめてある. この図からも分かるように深部掘削にとって最大の難関はその深さにあるのではたくてむしろ高くだる温度にあるのである. そのためKTBでは耐熱 耐圧の孔内計測機器および掘削装置の研究開発について国際協力を強く望んでいた. 田中教授が紹介 Lた日本の地熱弁用の而立熱計測装置にリッジュミュラー教授は強い関心を示し各々が. 開発した技術をお互いに公開し合う事によって開発費の節約を計るべきと強調していた. もしそのようた装置を開発 LテストをしたいたらKTBの孔をお貸しするのにやぶさかでないとのことである ( 写真 12). この小文では技術的な問題にはこれ以上触れたい. ただ一つ強調しておきたいのは超深部掘削は昇降管装置のロボット化自重のために引きちぎられない強度と軽さを持った掘り管の素材の開発ターボドリル ビットの改良耐熱 耐圧の孔内計測機器用高温半導体の開発などを含んだ一つの総合システム工学であるということである. 宇宙開発カミかつてそうであったように広範囲の企業大学国立研究所が一致協力して初めて 1989 年 7 月号

一 24 一浦辺徹郎温度 [ ] ボーリング ビットと補助的な機器ビントタウノホールモータ而 圧力 11oセメノホ _1 ノ土几内口 1 封入型開放型ダイヤモノトPDMタ _ ヒノ容恭制御ト ク泥水 則機器ケー " ク 1 靱 3000 蝸 o E 三ヨ現花の機器 技術で可能口近い 発可能第 6 図超深部掘削技術の現状と現在の技術の延長上で開発可能と思われる技術.300. Cが一つの壁であることが分かる. できる大事業であると言えよう. この意味で西ドイツのシステムは我々にとって多いに参考になる. 予算を運営費技術開発費科学研究費に振り分け官民学すべての研究者 技術者がこの国家的プロジェクトに参加できるようにして有るからである. またプロジェクトに直接たずさわっている人々がその予算配分に関与できるのも実質本意の計画を立てるのに役立っているように思われた. リッジュミュラー教授というマネージメントにたけた殻高責任者を得ることができたのがKTB の成功の秘法であるようである. 最近日本でも超深層ボーリングに対する人六の関心が高まってきており航空 電子等技術審議会 ( 地球科学技術部会 ) 測地学審議会において超深部ボーリング ( 学術ボーリング ) を日本でも取り上げるべきとの建議がだされている. これに呼応して最近官民学の協力でr 超深部コアボーリング技術開発研究会 ( 代表 ; 平塚保明氏 ) が旗揚げされるたどの動きがある. わが国においてもKTBとの密接た国際協力のもとにオールジャバソでこの超深部掘削計画を推進したいものである. 10. お才 ) り一こ現在 (1989) 米国の海底掘削船ジョイデスレゾルーション号が小笠原海域および日本海で学術ポーリングを行なっている. これは海洋底掘削計画 (ODP) という扇際共同研究の一環として行われているものでDSDP の延長上にあるプロジェクトである. 小笠原航海の乗船者の情報によると小笠原島弧では事前にまったく予想していなかった岩石がコアとして続々上がってきたそうである. 小笠原弧東北日本弧に限らず島弧の推定地質断面図は数多く描かれておりそれらを見るとなんとたくすべて分かったようだ気持ちにさせられてしまう.Lかし今回のように実際に掘ってみるとそれらの先入観がいかに不完全たものかが直ちに分かってしまう. 日本のようだ島弧は地殻中で起こっている現象の多様さで他の地域を凌駕している. 安定大陸と異なり 切れば血の出る " 活動的なところでもある. プレートテクトニクス説の残された弱点も大陸と大洋がせめぎ合う島弧に集中している. この島弧を超深部ボーリ. ゾグにより直接観察することは地球全体に対する我々の知識に質的た革新をもたらすであろう事は疑う余地が無い. 21 世紀にたると先進諸国でどこが最初にマントルに到達するかが欠きた関心を集めることにたろう. 現在の技術レベルでは下部地殻が限度であるものの将来高温高圧の極限状況下での総合工学システムを発展させ得た国が人類初のマントルの石を手にすることになる. わが国がその技術力を活かしてその夢にチャレンジする目のくることを祈って筆をおきたい. 地質ニュース419 号