救急外来に来る 心臓血管外科関連疾患 心臓血管外科 榊原裕
uap,ami Acute MR ( 乳頭筋 腱索断裂など ) AAD (Stanford A,B) PE(Pulmonary Embolism) 大動脈瘤破裂 切迫破裂急性動脈閉塞 ( 多くは下肢 SMA) 状態としてのCPA
uap,ami Acute MR ( 乳頭筋 腱索断裂など ) AAD (Stanford B,A ) PE(Pulmonary Embolism) 大動脈瘤破裂 切迫破裂 急性動脈閉塞 ( 多くは下肢 SMA) 状態としての CPA ステントグラフト治療 4Fr. シースの使い方 PCPSの適応
Menu 1. 急性大動脈解離 (Stanford B 型 ) に対するステントグラフト治療 2. CPA から PCPS へ 4Fr. シースの使い方 PCPS の適応
動脈解離とは 血管は輪状の3 層構造をしているが これが内側から裂けてしまった状態 血栓 亀裂 真腔 血栓閉塞型 この亀裂のことを Tear エントリーという 偽腔 偽腔開存型 真腔
動脈解離が起こす問題 1. 壁が薄くなるため破裂の危険性が高くなる 上行大動脈 弓部大動脈 心タンポナーデ 壁が薄く 拡大 破裂の危険性 偽腔 真腔 2. 偽腔が真腔や動脈分枝圧迫して 閉塞 狭窄を生じる 灌流障害 偽腔が真腔を圧迫して 狭窄 閉塞 偽腔 真腔 特に 冠動脈 弓部 3 分枝 腹部主要分枝 ( 腹腔動脈 上腸管膜動脈 腎動脈 ) 真腔 偽腔 偽腔
急性大動脈解離 Stanford A 上行大動脈 弓部を含む 急性期に生命の危険性高い 緊急手術 Stanford B 上行大動脈 弓部を含まない 急性期には A 程危険性高くない 降圧療法 ステント 血栓閉塞を期待し外来で follow 後に手術 ステントの適応となる時も多い 7
Stanford A 型 頸部動脈 脳虚血意識レベル 動脈解離が起こす問題 Stanford B 型 冠動脈 心筋梗塞 腹部動脈 SMA 腸管虚血 大動脈弁 AR 腎動脈 腎機能低下 心嚢内に破裂 心タンポナーデ 腹部大動脈 下肢動脈 下肢虚血 8
Class Ⅰ 1. 合併症のない偽腔開存型 /ULP 型 / 偽腔閉塞型 B 型解離に対する内科治療 (Level C) 2. 解離に直接関係のある重症合併症 * を持ち, 手術によりそれが軽快するか, または, その進行が抑 えられると考えられる大動脈解離に対する大動脈外科治療 (Level C) * 偽腔の破裂, 再解離, 心タンポナーデ, 意識消失や麻痺を伴う脳循環障害, 心不全を伴う大動脈 弁閉鎖不全, 心筋梗塞, 腎不全, 腸管循環障害, 四肢血栓塞栓症等 3. 大動脈緊急手術適応のない偽腔開存型 B 型解離における下肢血流障害に対する外科的あるいは Class Ⅱa 血管内治療による血行再建術 (Level C) 1. 血圧コントロール, 疼痛 : 薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する大動脈外科治療 (Level C) 2. 血圧コントロールに対する薬物治療に抵抗性の大動脈解離に対する内科治療 (Level C) 3. 緊急手術適応のない急性大動脈解離に伴う腸管灌流異常に対する外科的あるいは血管内治療に よる血行再建術 (Level C) Class Ⅱb 1. 重篤な脳障害を有する症例に対する大動脈外科治療 (Level C) Class Ⅲ Stanford B 型大動脈解離に対する急性期治療 (2011 年ガイドライン ) 1. 合併症のない B 型解離に対する大動脈外科治療 (Level C) 2. 大動脈緊急手術適応がある場合の, 臓器灌流障害に対する血行再建術 (Level C)
急性大動脈解離 (Stanford B) 急性期手術が適応される場合 1. 解離腔拡大, 切迫破裂が懸念される場合 2. 腹部臓器や下肢への血流が阻害された場合 (malperfusion) 治療 安静と降圧療法 高齢者の場合は早めの離床を考慮 Folow up CT ( 入院中 外来 ) 偽腔拡大 ope
B 型解離慢性期 primary entry re-entry re-entry
手術 (open surgery) Intimal flap を切り込み double barrel に吻合 真空 偽腔の両方に流す
大動脈瘤の治療 人工血管置換術 アプローチ 補助手段 上行 Ao 弓部 下行 Ao 胸腹部 正中切開 体外循環 軽度低体温 短時間の循環停止 選択的脳灌流 正中切開 ( まれに左側開胸 ) 体外循環 超低体温 循環停止 選択的脳灌流視野が深くなり手術時間の延長 広範囲側開胸 一時的に短時間の体外循環 広範囲開胸 開腹 体外循環 ( 超低体温 ) 手術時間も長く 輸血の必要性も高い 侵襲は大きい
皮膚切開は大きい 下行大動脈置換 胸腹部大動脈置換
胸腹部大動脈瘤 Ope の創部
ステントグラフト治療 (Endovascular aneurysm Repair)
ステントグラフト治療の原理 ステントグラフトで大動脈瘤をカバーし 瘤内への血流を遮断する Exclusion された瘤部が血栓閉塞することにより 瘤拡大や破裂を防ぐ 時間が経てば瘤の縮小が期待できる
ステントグラフト グラフト ( 人工血管 ) 材質 : ポリエステル PTFE ポリウレタンなどステント材質 : ステンレス ナイチノール ステントグラフトとは ステントとグラフト を組み合わせて作成されたもので デリバリーシース と呼ばれるデリバリーシステムに格納されている
解剖学的適合基準と細くても大丈夫 十分な landing zone 近位 遠位 > 15~20mm 極端な屈曲は不可 実際にはぎりぎりかちょっ 親水性コーティング ( 最近はデバイスの進化が著しい ) 十分な access 可能な血管 femoral/iliac a. > max 24Fr.(9.1) mm 石灰化 血栓などがない
TAA の治療ステントグラフト ステント (TEVAR) 上行 Ao 弓部下行 Ao 胸腹部 対象外 弓部分枝の処理が必要である Debranching+TEVAR(1 枝以外は開胸手術なしで可能 ) 開窓型ステント 枝付きステント Chimuney 法 大動脈の蛇行 屈曲が少なく TEVAR の成功率は高い 腹部分枝の処理が必要である Debranching+TEVAR 開窓型ステント 枝付きステント Chimuney 法
Stent ステント Graft( (TEVAR) 企業製 ) Debranching などの操作が必要な ければ 皮膚切開は片側の鼡径部 2-3cm のみ 手術時間も短く 侵襲は圧倒的に低い
ステントグラフトの合併症 1.Endoleak: 瘤内血流の残存 ( 破裂リスクが残る ) 2.Migration: ステントグラフトの移動 ずれ 3. 血管損傷 : 動脈損傷 解離 4. 血栓性塞栓 : 脳 腎 腸管 下肢 5. 腎機能障害 : 造影剤 腎動脈閉塞 6. 虚血性疾患 : 虚血性腸炎 7. 感染 : グラフト 創部 8. 金属アレルギー 9. 対麻痺 (open surgeryよりは低い 1/2 以下 )
Endoleak Type Ia Type Ib type I : ステントグラフトと血管壁の間を通じた瘤内への血液の漏出 type II は肋間動脈や気管支動脈から瘤内への逆行性血流によるもの type III はステントグラフト接合部を通じた瘤内への血液漏出 type IV はグラフト自身から瘤内への血液の滲み出しによるもの Coiling
症例 1 87 歳女性 以前より胸部下行大動脈瘤 ( 横隔膜直上 ) にて外来 followとしていた ここ1 年で瘤の拡大傾向を認め 最大短径 60mmまで拡大したため TEVARの方針となった
術前
TEVAR 術後 退院時 手術時間 :1h 43 min 無輸血 type Ib endoleak あり
TEVAR 術後 6 ヶ月
TEVAR 術後 1.5 年
TEVAR 術後 6 ヶ月 TEVAR 術後 1.5 年 動脈瘤の縮小が認められる
B 型解離に対するステントグラフト治療 re-entry 吹き上げ
症例 2 43 歳男性 以前から高血圧を指摘されていたが 放置 突然の胸背部痛 呼吸困難 さらに右下肢の不全麻痺にて救外受診 AAD(A 型 ) と診断され 同日上行置換施行 術後経過は良好で 術後 22 日目に退院
術前
術後 9 日目
術後 16 日目
術後 3 ヶ月
術後 1 年
術後 1.5 年
術後 2.5 年 胸部大動脈 :reverse remodeling 完了
症例 3 56 歳男性 高血圧で治療中 突然の胸背部痛を認め 救外受診 CTにてB 型解離と診断 破裂 maiperfusionの所見なく保存的に治療 退院後の外来 follow 中に偽腔拡大し 最大径 40mmを超えるようになり 発症 2 年後に TEVAR 施行
B 型解離発症 2 日目
B 型解離発症 1 年
B 型解離発症 2 年
B 型解離発症 2 年 偽腔拡大 39mm 44mm 発症 1 年発症 2 年
TEVAR 後
TEVAR 後 6 ヶ月 reverse remodeling 傾向あり
症例 4 77 歳男性 H19 年発症の B 型解離 H22 年に紹介され その後 外来 follow H24 年偽腔拡大 最大 径 60mm となったため TEVAR の適応とした
術前
TEVAR 後 7 日目
TEVAR 後 1 年 下行大動脈偽腔内に血流出現
TEVAR 後 1.5 年 偽腔内の血流変化なし ステントグラフトの延長を行いたいが 対麻痺が心配
症例 5 47 歳男性 H16 年発症のB 型解離 その後 外来 follow H20 年偽腔拡大 最大径 58mmとなったため 下行置換施行 ( 末梢は真 偽両腔に吻合 ) 外来 follow 中に吻合部末梢の偽腔拡大 57mmとなり TEVARの方針となる
術前
術後
術後
術後 4.5 年 吻合部末梢の偽腔拡大 TEVAR へ
TEVAR 後
TEVAR 後 1 年
TEVAR 後 1 年 偽腔拡大 70mm SMA 内に大きなre-entry debranching + TEVARへ
手術シェーマ re-entry Large lumbar artery この lumbar a. の中枢で遮断 SEP( 体性感覚誘発電位 ) が低下
TEVAR 後 1.5 年 いつでも容易に追加 TEVAR が可能な状態 胸部の偽腔拡大は半血栓化で 70mm で変化なし TEVAR 後の対麻痺の可能性がある ( 外来 follow 中 )
B 型解離に対する TEVAR TEVARの遠隔成績は不明であるが 圧倒的な低侵襲により 従来 ope 適応でない重症患者にも適応できる 弓部下行大動脈以下は基本的にはTEVAR を第一選択で良いと思われる
B 型解離に対する TEVAR 最新の知見 発症 1 年以内 血管径 40mm 以下の状態で primary entry を閉鎖すると reverse remodeling が生じることが多い 発症数年後の慢性期 血管径 50mm 以上の状態で primary entry を閉鎖すると 1/3 偽腔血栓閉塞 + 縮小傾向 1/3 偽腔半血栓閉塞 + 縮小 (-) 1/3 偽腔半血栓閉塞 + 拡大 さらなる治療が必要
まとめ B 型解離に対する治療 1. 解離腔拡大, 切迫破裂が懸念される場合 2. Malperfusion を呈する場合 ope 3. 安静と降圧療法 Folow up CT ( 入院中 外来 ) 偽腔拡大 ( 発症 1 年 最大径 40mm) を目安に 75 歳以下なら積極的にTEVAR
1. 急性大動脈解離 (Stanford B 型 ) に対するステントグラフト治療 2. CPA から PCPS へ 4Fr. シースの使い方 PCPS の適応
4Fr. シース 10cm
4Fr. シース挿入例
4Fr. シースの応用 <FV> 1. 通常のcentral lineとして使用できる 2. double triple central lineと交換できる 3. 透析用ナイアガラ カテと交換できる 4. PCPS 脱血管を挿入できる <FA> 1. 通常の A line として使用できる 2. IABP を挿入できる 3. PCPS 送血管を挿入できる これらの次の操作が容易になる
PCPS Percutaneous Cardiopulmonary Support 経皮的 V-A Bypass ( 人工心肺による補助循環 ) 定義 原則的に大腿動静脈からのアプローチで右房に挿入したカニューレから遠心ポンプにより脱血し 膜型人工肺で酸素化した血液を大腿動脈より挿入したカニューレにより逆行性に全身に還流する閉鎖回路 ( リザーバーを有さない ) による補助循環である 最後の心肺脳蘇生手段 (PCPS 研究会 )
PCPS の適応 1) 緊急心肺蘇生 ( 心停止状態で心肺蘇生無効例 ) a 心停止状態 b 心原性ショック状態 2) 循環補助使用 c 重症心不全に対する補助手段心筋梗塞 心筋炎 心筋症 開心術後 Los d 一時的な体外循環 Supported PTCA 大血管手術時の補助手段 3) 肺補助使用 e 重症呼吸不全 f 肺塞栓症 g 呼吸器外科への応用
PCPS の適応 1) 緊急心肺蘇生 ( 心停止状態で心肺蘇生無効例 ) a 心停止状態 b 心原性ショック状態 2) 循環補助使用 c 重症心不全に対する補助手段心筋梗塞 心筋炎 心筋症 開心術後 Los d 一時的な体外循環 Supported PTCA 大血管手術時の補助手段 3) 肺補助使用 e 重症呼吸不全 f 肺塞栓症 g 呼吸器外科への応用
PCPS の適応 基本的にはわからないが それでも助かる見込みのある人 助かるかもしれない人 CPR を継続しながら搬送された患者のうち 生存退院できる患者 % 脳血流が停止してから 脳死状態になるまでの時間はおおよそ 分 男の平均寿命 女の平均寿命は 才
PCPS の適応 基本的にはわからないが それでも助かる見込みのある人 助かるかもしれない人 CPR を継続しながら搬送された患者のうち 生存退院できる患者 脳血流が停止してから 脳死状態になるまでの時間はおおよそ 1% 未満 5 分 男の平均寿命 女の平均寿命は 80.2 才 86.6 才
症例 70 歳男性 18 時ごろ ホテルのサウナから出て 浴室内のベンチに座っていた 時に意識消失 転倒 救急要請 bystanderなし 18:21 (15 分 ) 救急隊到着 心肺停止状態 直ちに心マ 挿管 18:27 当院へ搬送依頼 救急車の中で 1 回 VFとなるが その後 心停止状態? 来院時 JCS 300 両側瞳孔散大 6.5mm 対光反射なし DC 施行 アドレナリン 1A 投与 /3 分 x5 回 心マ継続し 心室波形 (+) 拍動(+) しかし 間もなく心停止
症例 70 歳男性 18 時ごろ ホテルのサウナから出て 浴室内のベンチに座っていた 時に意識消失 転倒 救急要請 bystander なし 18:21 (15 分 ) 救急隊到着 心肺停止状態 直ちに心マ 挿管 18:27 当院へ搬送依頼 救急車の中で 1 回 VF となるが その後 心停止状態? 来院時 JCS 300 両側瞳孔散大 6.5mm 対光反射なし DC 施行 アドレナリン 1A 投与 /3 分 x5 回 心マ継続し 心室波形 (+) 拍動 (+) しかし 間もなく心停止 PCPS 装着 PCI 施行
PCPS の開始 開始するにも 行わないとするにもその決断には勇気が必要 自分の信念をもって 後悔のないように 精一杯努力する