日産婦誌59巻9号研修コーナー

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スライド 1

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

2)HBV の予防 (1)HBV ワクチンプログラム HBV のワクチンの接種歴がなく抗体価が低い職員は アレルギー等の接種するうえでの問題がない場合は HB ワクチンを接種することが推奨される HB ワクチンは 1 クールで 3 回 ( 初回 1 か月後 6 か月後 ) 接種する必要があり 病院の

院内感染対策マニュアル

肉を十分に加熱しないで食べる場合 またはこれらの肉の調理の際に汚染された台所用品を介して別の食品を食べる際にシストを摂取することによって起こります 妊婦が感染すると胎児にも感染が及び 発達過程の多くの臓器が侵され 水頭症や網脈絡膜炎や肝脾腫などの症状を呈し 視力障害や発達障害などの後遺症を残してしま

< HTLV 1 ウイルスについて > HTLV 1 ウイルスはヒト T 細胞白血病ウイルス 1 型と呼 ばれ 成人 T 細胞白血病などの原因であることが分かっています 日本は先進国の中でHTLV 1 抗体の陽性者が最も多く 100 万人を越えています 西日本に多くみられましたが 人口の移動とともに

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します また 血小板減少症などの診断にもなります 血糖糖尿病が妊娠をきっかけに発見されたり 既に糖尿病に罹っていて 妊娠中に発見されることがあります 既に糖尿病と分かっていて妊娠された場合を糖尿病合併妊娠 妊娠中にはじめて対糖能低下 ( 糖尿病の傾向 ) が指摘された場合を妊娠糖尿病といいます 糖尿

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系統看護学講座 クイックリファレンス 2012年 母性看護学

Ⅱ 症候性胎内 CMV 感染症 妊娠初期の CMV 初感染の場合 症候性胎内 CMV 感染症が発生するリスクが高い 再感染例でも異なる CMV 株に感染すると症候性胎内 CMV 感染症が発生する可能性 があると考えられている CMV が胎内で感染する頻度は 全出生の 0.4~1% であり そのうち

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

日産婦誌58巻9号研修コーナー

も 医療関連施設という集団の中での免疫の度合いを高めることを基本的な目標として 書かれています 医療関係者に対するワクチン接種の考え方 この後は 医療関係者に対するワクチン接種の基本的な考え方について ワクチン毎 に分けて述べていこうと思います 1)B 型肝炎ワクチンまず B 型肝炎ワクチンについて

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顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

rubella190828

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ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

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検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

2016 年 12 月 7 日放送 HTLV-1 母子感染予防に関する最近の話題 富山大学産科婦人科教授齋藤滋はじめにヒト T リンパ向性ウイルスⅠ 型 (Human T-lymphotropic virus type 1) いわゆる HTLV-1 は T リンパ球に感染するレトロウイルスで 感染者

とが知られています 神経合併症としては水痘脳炎 (1/50,000) 急性小脳失調症 (1/4,000) などがあり さらにインフルエンザ同様 ライ症候群への関与も指摘されています さらに 母体が妊娠 20 週までの初期に水痘に罹患しますと 生まれた子供の約 2% が 皮膚瘢痕 骨と筋肉の低形成 白

Microsoft PowerPoint 記者懇談会ver0313 [互換モード]

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

危機管理論 リスクとクライシスのマネジメント

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麻しん 2

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公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研究事業 ( 平成 28 年度 ) 公募について 平成 27 年 12 月 1 日 信濃町地区研究者各位 信濃町キャンパス学術研究支援課 公募情報 平成 28 年度日本医療研究開発機構 (AMED) 成育疾患克服等総合研

34 片渕美和子他 表 1 各年度の B 型肝炎, 麻疹, 風疹およびムンプスに対する抗体陽性率 検査年度 HBs 麻疹 風疹 ムンプス 2003 年 3/231(1.3)* 131/217(60.4) 200/217(92.2) 114/217(52.5) 2004 年 0/231( 0) 134

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

Microsoft PowerPoint 最近の性感染症の動向

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 014 年 10 月 1 日版日本小児科学会 乳児期幼児期学童期 / 思春期 ワクチン 種類 直後 6 週 以上 インフルエンザ菌 b 型 ( ヒブ )

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資料1-1 HTLV-1母子感染対策事業における妊婦健康診査とフォローアップ等の状況について

診療のガイドライン産科編2014(A4)/fujgs2014‐114(大扉)

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平成 22 年第 2 四半期エイズ発生動向 ( 平成 22(2010) 年 3 月 29 日 ~ 平成 22(2010) 年 6 月 27 日 ) 平成 22 年 8 月 13 日 厚生労働省エイズ動向委員会

H30_業務の概要18.予防接種

両面印刷推奨 <4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる 全く確認できない D または E のどちらかを選ぶ D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけ

報告風しん

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

あり 一人の感染者が周囲の免疫のないヒトに感染させる数である基本再生産数は 10 流行を抑制するための集団免疫率は 90% 以上です 水痘の潜伏期間は通常 14~16 日間です 水痘ワクチンの定期接種が行われている米国では 1 回定期接種を行っていた 1996 年から 2004 年までの間に 水痘患

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

針刺し切創発生時の対応

出されていますが個人差があります 検査は先天性風しん感染症を疑ったらなるべく 早い方がよいでしょう 2. 2 風しんウイルスの遺伝子を検出する PCR 法という方法で風しんウイルスそのものではなく その遺伝子を検出します 感度が高い方法のため 微量のウイルス遺伝子を検出することができます 咽頭ぬぐい

<4 種ウイルス疾患 ( 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ) フローチャート> 医療機関の記録または母子手帳でワクチンを接種したことが A B C 2 回確認できる 1 回確認できる全く確認できない D E 前回接種より少なくとも 1 ヶ月以上あけて さらに 1 回ワクチン接種を受ける 抗体検査を

染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

第51回日本小児感染症学会総会・学術集会 採択結果演題一覧

始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

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Vol. 32 Suppl.II,2017 麻疹 風疹 水痘 流行性耳下腺炎 ( ムンプス ) に関する Q&A の公開にあたって 日本環境感染学会では 平成 21 年 5 月に 院内感染対策としてのワクチンガイドライン第 1 版 を 平成 26 年 9 月に 医療関係者のためのワクチンガイドライン

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横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

2012 年同期 (~9 月 19 日 ) と比較すると約 8.5 倍となった 2013 年 1 月 1 日 ~9 月 18 日までに報告された地域 ( 報告数 ) は東京都 (3337) 大阪府(3165) 神奈川県(1639) 兵庫県 (1156) 千葉県(698) 埼玉県(599) の 6 都

通知(写入)

妊婦健診 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 3.5 回 ( 助産師外来 ) 第 4 回 第 5 回 第 6 回 時 期 妊娠 12 週前後 妊娠 16 週前後 妊娠 20 週前後 妊娠 22~23 週前後 妊娠 24 週前後 妊娠 26 週前後 妊娠 28 週前後 目 的 妊娠前期検査 基本健

3-2 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値流行状況の年次推移を 全国的な状況と比較するため 全国と札幌市の定点あたり患者報告数の年平均値について解析した ( 図 2) 全国的には 調査期間の定点あたり患者報告数の年平均値は その年次推移にやや増減があるものの大きな変動は認められなかった 札

全な生殖補助医療を含めて, それぞれの選択肢を示す必要がある. 3 種類の HIV 感染カップルの組み合わせとそれぞれの対応 1. 男性が HIV 陽性で女性が陰性の場合 体外受精この場合, もっとも考慮しなければいけないことは女性への感染予防である. 上記のように陽性である男性がすでに治療を受けて

第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

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子宮頸がん死亡数 国立がん研究センターがん対策情報センターHPより

糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

会計 10 一般会計所管課健康推進課款 4 衛生費事業名インフルエンザ予防接種費項 1 保健衛生費目 2 予防費補助単独の別単独 前年度 要求段階 財政課長内示 総務部長 市長査定 最終調整 予算計上 増減 1 当初要求 2 追加要求等 3 4( 増減額 ) 5( 増減額 ) 6=

B型肝炎ウイルス検査

ハイリスク患者 免疫抑制者における播種性水痘 悪性腫瘍患者の死亡率は 7-17% 成人 妊婦 新生児 肺臓炎 年齢による水痘の頻度と死亡率 0~4 5~14 15~44 45~64 >65 頻度 ( 対人口

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2 参考 検体投入部遠心機開栓機感染症検査装置 感染症検査装置 (CL4800)

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第1 入間市の概要

微生物学的検査 >> 6B. 培養同定検査 >> 6B615. 検体採取 患者の検査前準備検体採取のタイミング記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料リグアニジン塩酸塩尿 5 ml 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 ク

検査項目情報 EBウイルスVCA 抗体 IgM [EIA] Epstein-Barr virus. viral capsid antigen, viral antibody IgM 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLA

免疫学的検査 >> 5E. 感染症 ( 非ウイルス ) 関連検査 >> 5E106. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールの主な変更点 2014 年 1 月 12 日 1)13 価結合型肺炎球菌ワクチンの追加接種についての記載を訂正 追加しました 2)B 型肝炎母子感染予防のためのワクチン接種時期が 生後 か月 から 生直後 1 6 か月 に変更と なりました (

免疫学的検査 >> 5F. ウイルス感染症検査 >> 5F560. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時

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別記様式 7-2 感染症発生動向調査 ( インフルエンザ定点 ) 調査期間平成年月日 月日医療機関名 : 性別 歳 歳以上 合計 ( 注 ) *

新たに定期接種ワクチンとされたことから 本邦における HPV ワクチンによる免疫獲得状況を把握 して 将来の子宮頸癌予防計画に役立つ基盤データを蓄積することを目的に 14 年度から本事業にて HPV16 抗体価の測定調査を実施することとなった 2. 感受性調査 (1) 調査目的ヒトの HPV16 に

平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

手術や薬品などを用いて 人工的に胎児とその付属物を母体外に排出することです 実施が認められるのは 1 妊娠の継続又は分娩が 身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害する恐れがあるもの 2 暴行もしくは脅迫によって妊娠の場合母体保護法により母体保護法指定医だけが施行できます 妊娠 22 週 0

感染経路 1. 直接伝播 1 直接接触 ( 接触による径皮感染 ) 例 : 水いぼ 性感染症 HIV 2 飛沫感染 ( 通常 1~2m 以内 ) 例 : おたふく 風疹など多くの感染症 3 母子感染 ( 胎盤 産道 母乳感染 ) 例 : 風疹 B 肝 *HIV 2. 間接伝播 * ヒト免疫不全ウイル

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<B 型肝炎 (HBV)> ~ 平成 28 年 10 月 1 日から定期の予防接種になりました ~ このワクチンは B 型肝炎ウイルス (HBV) の感染を予防するためのワクチンです 乳幼児感染すると一過性感染あるいは持続性感染 ( キャリア ) を起こします そのうち約 10~15 パーセントは

DPT, MR等混合ワクチンの推進に関する要望書

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - ③中牟田誠先生.docx

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( 表 2) 妊婦スクリーニングの対象とな りうる病原微生物 ( 表 1) 妊婦の感染症スクリーニングの適応 1 感染症の母子への影響 2 母体治療の有用性 3 母体の頻度 4 胎内感染診断法 5 母子感染の頻度 6 母子感染の予防効果 7 母子感染児の治療効果 予後 8 費用対効果比? B 型肝炎ウイルス (hepatitisb virus) 梅毒トレポネーマ (Treponemapalidum) ヒト免疫不全ウイルス (HIV) C 型肝炎ウイルス (hepatitisc virus) 風疹ウイルス (rubelavirus) クラミジア トラコマティス (Chlamydia trachomatis) B 群溶連菌 (groupb streptococcus: GBS) トキソプラズマ (Toxoplasmagondi) サイトメガロウイルス (cytomegalovirus: CMV) 成人 T 細胞白血病ウイルス (HTLV-1) 淋菌 (Neisseriagonorhoeae) 単純ヘルペスウイルス (herpessimplexvirus:hsv) ヒトパピローマウイルス (humanpapilomavirus:hpv) 結核菌 (Mycobacterium tuberculosis) Department of Obstetrics and Gynecology, Mitsui Memorial Hospital, Tokyo

( 表 3) 風疹の歴史 1971 年 予研による風疹感受性調査の開始 1976 年 風疹の流行 1977 年 8 月 女子中学生 (12~ 15 歳 ) の定期接種開始 1982 年 風疹の流行 1987 年 風疹の流行 1988 年 12 月 MMRワクチンの使用の認可 1992 年 風疹の流行 1993 年 MMRワクチンの中断 1994 年 10 月 予防接種法の改正 定期集団接種岳個別接種 対象 : 男女年少児 ( 生後 12~ 90 カ月, 標準 :12~ 36 カ月 ) 男女中学生 (2003 年 9 月 30 日まで実施 ) 1999 年 4 月 先天性風疹症候群が 感染症新法 の 4 類感染症 ( 全数把握対象疾患 ) に指 定される 2000 年 ~ 2003 年 CRS の届け出は全国で毎年 1 例のみに減少 2004 年 CRS の届け出は全国で 10 例に著増 9 月 9 日 厚労省から緊急提言発表 2005 年 CRS の届け出 ;2 例 2006 年 CRS の届け出 ;0 例 2006 年 4 月 1 日 麻疹 風疹混合ワクチンによる 2 回接種制度の導入 ( 第 1 期 ; 生後 12~ 24 カ月, 第 2 期 ; 小学校就学の始期の 1 年以内,5 歳以上 7 歳未満 ) ( 表 4) 厚労省の緊急提言のまとめ 1 妊婦風疹感染のリスク因子の問診 1) 妊娠中の発疹 2) 風疹患者との濃厚な接触 ( 家族内に発生, 風疹患者の診療 看病に従事など ) 2 妊娠のできる限り早期に風疹抗体 (HI) を測定する 3 抗体陰性者 低抗体価 (HI 抗体価 16 以下 ) 者に対し 1) 妊娠中の注意指導 a) 人混みや子供の多い場所を避ける b) 風疹患者のいる場所を避ける 2) 夫, 子供及び同居家族へのワクチン接種の推奨 3) 分娩後早期のワクチン接種の推奨 ( 産褥 1 週間以内, あるいは 1 カ月健診時 ) 4HI 抗体価 256 倍以上の場合, 再度 HI 抗体と風疹 IgM 抗体を測定し, 1)HI 抗体が不変で,IgM 抗体が陰性であればリスクなし 2)HI 抗体が抗体が 4 倍以上上昇, あるいは IgM 抗体が陽性であれば,2 次施設にコンサルト

( 図 1) 妊娠女性への対応診療指針風疹流行にともなう母児感染の予防対策構築に関する研究班 2004 年 8 月提言 ( 図 2) 風疹罹患 ( 疑い含む ) 妊婦管理 (*)

( 表 5) 各地区ブロック相談窓口 (2 次施設 ) 北海道北海道大学附属病院産科水上尚典東北東北公済病院産婦人科上原茂樹岩手医科大学周産期母子センター室月淳関東三井記念病院産婦人科小島俊行帝京平成短期大学川名尚横浜市立大学附属病院産婦人科平原史樹国立成育医療センター周産期診療部久保隆彦東海名古屋市立大学病院産科婦人科種村光代 北陸石川県立中央病院産婦人科干場勉近畿国立循環器センター周産期科池田智明大阪府立母子センター産科末原則幸中国川崎医科大学附属病院産婦人科中田高公四国国立香川小児病院産婦人科夫律子九州宮崎大学附属病院産婦人科金子政時九州大学附属病院産婦人科吉村宣純 2006 年 3 月 22 日現在 ( 表 6) トキソプラズマの母子感染の特徴 感染経路 経粘膜感染 ( 経口 経気道 経結膜 ), 臓器移植などの血液媒介, 垂直感染 症状 発熱, 発疹, 頸部リンパ節腫脹. 不顕性感染が多い 感染のリスク因子 不十分な加熱処理肉の摂取習慣 ( 馬刺, 牛刺, レバ刺など ), 土いじり習慣 ( ガーデニング, 畑仕事 ), 海外旅行 ( ヨーロッパ, 特にフランス ) 児への影響児への影響 水頭症, 網脈絡膜炎,IUGR, 胎児死亡 垂直感染率 わが国での頻度 約 30%. わが国での先天感染児の頻度は約 0.05% 妊婦罹患率 5~ 15% ( 表 7) トキソプラズマ IgM 抗体陽性妊婦に対する問診項目 職業 生肉を取り扱う, 土いじり, 猫などとの接触など 家族歴 両親 夫のトキソプラズマ抗体の有無 既往歴 1 不明熱,2 頸部リンパ節腫脹 トキソプラズマ抗体測定歴 日時, 医療機関, 値など 海外渡航歴 ヨーロッパなど場所と時期と期間 出生地 九州, 長野, 栃木, 山梨, 東北, 北海道など ペット飼育歴 猫, 犬 : 時期,( 室内のみ 室内外 室外のみで飼育 ), 子猫 嗜好, 特に生肉など 馬刺, 牛刺し, レバ刺し, 鳥刺し, 生ハム, レアステーキ, その他 ( 熊, 鹿, 猪など ), 摂取期間 井戸水の摂取 摂取期間; 歳 ~ 歳 水洗いの不十分な野菜 果物の摂取 摂取期間; 歳 ~ 歳 土いじり 期間; 歳 ~ 歳

( 表 8) トキソプラズマ抗体値判定の注意点 1)IgG 抗体,HA 抗体,LA 抗体は血清中の濃度を測定しているので, 血液濃縮などの影響を受け,±50% まで変動する. 2)PHA 抗体と IHA 抗体とでは, 基準値が同じでも 4 倍の差を見ることがあり, 急性感染と間違える. 3)IgM 抗体は, 全 IgM 抗体の中のトキソプラズマ特異 IgM 抗体の比率を測定するので, 血液濃縮などの影響を受けない. 4) プラテリアトキソ IgM R 抗体は, 慢性感染状態では 1 カ月間に約 0.1 低下するが, 急性感染状態では 0.3 程度低下することが多い. ( 図 3) アビディティ測定原理感染早期血清では,IgG 抗体は種々の抗原結合部位 ( パラトープ ) から成り, 慢性感染期では抗原特異的な IgG 抗体の割合が増加する.ELISA 法にて抗原抗体反応後, 蛋白変性剤である尿素を反応させると抗原結合力の弱い抗体はウェル壁の抗原から解離してしまう. 例えばこの模式図の上段の感染早期血清の avidityindex は 25%(1/4), 下段は 80%(4/5) となる. ( 図 4) アビディティの感染後の推移

( 表 9) サイトメガロウイルスの感染経路 1) 水平感染 1 接触感染 ( 唾液, 尿など. 唾液の付着した器物からも感染する ) 2 性感染 3 輸血 臓器移植 2) 垂直感染 1 胎内感染 (1) 経胎盤感染 ( 胎盤に感染したウイルスが胎児血液に移行 ) (2) 上行感染 ( 子宮頸部から排出されたウイルスが羊水などを介して児に移行 ) 2 分娩時感染 ( 子宮頸部から排出されたウイルスが産道内で児に移行 ) 3 経母乳感染 ( 母乳中に排出されたウイルスが経口的に児に移行 ) ( 図 5) トキソプラズマ症ハイリスク妊婦の管理法ハイリスク因子として, 頸部リンパ節腫脹, 不明熱, 加熱処理の不十分な肉 ( 豚, 羊, 馬, 鹿, 牛など ) の摂取, 土いじり, 海外旅行 ( 特にヨーロッパ ) などが挙げられる. 過去の感染や未感染では, 治療や検査は必要ない. 最近の感染で妊娠中の感染が否定できない場合, 母子感染の可能性があるので治療, 検査を行う. 一般に微生物に感染した場合, 宿主は初期にはアビディティ ( 抗原に対する結合力 ) の低い IgG 抗体を産生するが, 時間が経過するに従いアフィニティー マチュレーション (affinitymaturation) が起こり, アビディティの高い IgG 抗体を産生する. これを応用し, 初感染からの時期を推定することができる. 小島らは, アビディティが 20% 以上であれば慢性感染状態と診断し,10% 未満であれば急性感染 ( 感染後 4 カ月以内 ) の可能性が高いと診断している. アビディティ測定を希望する場合, 三井記念病院産婦人科小島俊行 (TEL;03-3862-9111,FAX;03-3862-9156) に連絡するとよい ( 表 10) CMV の妊婦スクリーニングの問題点 1)CMV-IgM 抗体測定法では, 偽陽性 偽陰性がある 2)IgM 抗体は, 初感染例でも 1 年間検出されることがある 3)IgM 抗体は, 再活性化でも検出されることがある Guera,B etal.,2007,ajog ( 表 11) CMV の妊婦スクリーニング 1 胎内診断の方法が羊水穿刺による遺伝子診断などで一般的でない 2 胎児の遺伝子診断が陽性でも, 胎児異常の有無が診断できない 3 胎児異常発症予防の方法が確立していない 4 胎児異常が診断されても, 治療法がない 5 ワクチンが完成していないので未感染女性に対する予防法がない

( 表 12) 今後の母子感染への対策 1) 妊娠前の抗体検査 ( 風疹, 水痘帯状疱疹, 麻疹, 梅毒 ) によるワクチン接種, 治療 2) 妊娠初期血清の冷凍保存 ( トキソプラズマ, 風疹,CMV など ) 3) 妊娠中の感染時期の診断 ( トキソプラズマ, 風疹,CMV, それぞれの IgM 抗体測定,IgG 抗体のアビディティ測定 ) 4) 各感染症の専門相談機関の設置 ( 大学 研究機関が病院 医院からの血清や羊水 胎盤の移送による診断支援, インターネットなどによる相談に協力する ) 5) ワクチンの開発 (CMV,HIV,HPV など )