第 19 回 免疫系のシグナル伝達 1. 抗原受容体を介したシグナル伝達 2. T 細胞の活性化と CD28 シグナル 3. B 細胞の活性化シグナル 4. 免疫抑制剤の作用機序 附属生命医学研究所 生体情報部門 (1015 号室 ) 松田達志 ( 内線 2431) http://www3.kmu.ac.jp/bioinfo/ 2014 年 11 月 12 日 免疫系 ( 異物排除のためのシステム ) 自然免疫 顆粒球 マスト細胞 マクロファージ 樹状細胞 ゲノムにコードされた情報に基づく異物認識 獲得免疫 T 細胞 B 細胞 後天的に 獲得した 情報に基づく異物認識 参考文献 : 免疫生物学 ( 南江堂 ) 1 2 獲得免疫系におけるクローン選択 リンパ球前駆細胞は 様々な特異性を持つリンパ球を生む 獲得免疫系のシグナル伝達 抗原受容体を介したシグナル伝達 自己反応性のクローンは除去される T 細胞の活性化と CD28 シグナル 外来抗原に反応しうるクローンが末梢で維持される B 細胞の活性化シグナル 外来抗原に反応したクローンのみが選択的に増殖 3 免疫抑制剤の作用機序 4 1
T 細胞による抗原認識機構 ITAM と抗原受容体 T 細胞受容体 (TCR) B 細胞受容体 (BCR) マウスのクラス I MHC の一つである H-2K b と抗原ペプチドとの複合体 ならびにそれを認識する TCR との相互作用を示した図 抗原結合部位 CD3 CD3 軽鎖 抗原結合部位 重鎖 Garcia, K. C. et al. (1996) Science 274, 209-219 ITAM 5 シグナル伝達部位 シグナル伝達部位 6 ITAM モチーフの構造 ITAM (immunoreceptor tyrosine-based activation motif) CD3ζ-1 YNELNLGK-REEYDVL! CD3ζ-2 YNALQKDKMAEAYSEI! ユニーク部位 SH3ドメイン SH2ドメイン キナーゼ部位 活性化 チロシン残基 阻害的 チロシン残基 Src ファミリー分子の構造と活性制御機構 SH2 ドメイン リン酸化チロシンに結合 チロシン残基のC 末端側の配列が特異性を決定 刺激に依存した結合 CD3ζ-3 CD3ε FcεRIγ YQGLSTAT-KDTYDAL! YEIRKGQ-RDLYSGL! YTGLNTRN-QETYETL! * このスペースが重要 7 Csk CD45 SH3 ドメイン プロリン残基に富んだ配列を認識 結合は多くの場合 刺激に依存しない *Lckの場合にはY505が阻害的チロシン残基であり F505 変異体では恒常的な活性が認められる 8 2
TCR による抗原認識 ITAM を介した ZA-70 の活性化 CD4/CD8 CD4/CD8 MHC- ペプチド複合体 active ZA-70 CD4/CD8 ( 共受容体 ) α" β" Lck L Lck L kinase Lck" γ" ε" δ" ε" L L ζ" ζ" 9 kinase inactive ZA-70 * このスペースが重要 10 活性化した ZA-70 は LAT のリン酸化を 介して下流にシグナルを伝える kinase LAT Y136 Y175 Y195 Y235 Grb2 LCγ1 Gads Gads SL76 11 CD4/CD8 MHC- ペプチド認識 Lck γ ε α β δ ε ζ ζ TCR complex ZA-70 NFAT LAT I 2 : ホスファチジルイノシトール 2 リン酸 I 3 : イノシトール 3 リン酸 LCγ1 I 2 I 3 + ジアシルグリセロール (DG) LC- γ 1 I 2 I 3 [Ca 2+ ] i 上昇 カルシニューリン活性化 NFAT DG RasGR Raf -1 MEK1/2 ERK1/2 Elk-1 Ras 12 3
カルシニューリン /NFAT 経路の活性化 catalytic AI 不活性型カルシニューリン NES NLS リン酸化型 NFAT DB CnB CaM [Ca 2+ ] i catalytic CnB CaM AI 活性型カルシニューリン 細胞質 核 Ras による MAK 経路の活性化 GD-GT 交換反応による Ras の活性化 不活性型 Ras 活性化した Ras は Raf を膜へとリクルートして活性化 活性型 Ras 不活性型 Raf 制御領域 (N 末端側 ) 14-3-3 活性型 Raf キナーゼ領域 (C 末端側 ) 活性化した MEK は ERK をリン酸化して活性化 活性化した Raf は MEK をリン酸化して活性化 活性型 MEK 不活性型 MEK NFAT kinase(s) catalytic NES CnB CaM AI NLS 脱リン酸化型 NFAT DB 13 * このようなシグナルの流れをカスケードと呼ぶ 活性型 ERK 活性化した ERK は二量体を形成して核内へ移行 不活性型 ERK 14 MAK は核内にシグナルを伝える 活性型 ERK( 二量体 ) 活性型 p90 RSK 不活性型 p90 RSK NFAT NFAT 経路の活性化は IL-2 遺伝子の発現に必須である カルシニューリン NFAT JNK Jun ERK1/2 Elk-1 Fos 転写 Jun NFAT Fos IL-2 遺伝子発現 c-fos 遺伝子 15 16 4
T 細胞の増殖は 2 段階の制御を受ける 細胞周期 (cell cycle) と CDK/Cyclin 異物の認識 IL-2 産生 IL-2Rα naïve T IL-2 産生 p27" naïve T 17 *CDK: cyclin-dependent kinase( セリン / スレオニンキナーゼ ) 18 IL-2 受容体からのシグナル伝達 β 鎖 α 鎖 γ 鎖 T 細胞の増殖には Cdk inhibitor である p27 の分解が必要である JAK1 JAK3 MHC-peptide p110 p85 STAT5 naïve T p27 の分解 細胞周期の進行 mtor Akt I3K STAT5 STAT5 IL-2Rα p27 分解 核移行 19 20 5
獲得免疫系のシグナル伝達 CD28 を介した共刺激 (co-stimulation) MHC-peptide CD80/CD86 抗原受容体を介したシグナル伝達 TCR complex α β T 細胞の活性化と CD28 シグナル B 細胞の活性化シグナル γ ε δ ζ ζ ε SOS Grb2 M N M M N M p85 p110 I3K 免疫抑制剤の作用機序 21 [Ca 2+ ] i influx ERK activation JNK activation NF-κB activation 22 CD28 シグナルの生理的な役割 1.IL-2の遺伝子発現の増強 (NF-κB 経路 ) 2.IL-2のmRNAレベルの安定性の上昇 (JNK 経路 ) 3. 抗アポトーシス作用 (Bcl-x L の発現誘導 ) 局在変化 IKKγ IKKα CARD11/Bcl10/MALT1 による NF-κB 活性化経路 IKKβ IKKγ IKKα IKKβ Ub Ub Ub Ub IκB NF-κB NF-κB CARD11 CARD11 Bcl10 Bcl10 MALT1 MALT1 CARD11 KCθ/β 局在変化 Bcl10 MALT1 局在変化 KCθ/β CARD11 * いったん活性化した細胞は その後の抗原認識の際に CD28 からのシグナルを必要としない NF-κB NF-κB IκB 23 核移行 分解 24 6
JNK 経路による IL-2 の発現制御機構 CD28 シグナルとアナジー (anergy) SOS Rac1 MLK3 HK1 MKK7 JNK JI? CD28 依存性シグナル アナジー 5 UTR 3 UTR IL-2 gene c-jun Fos 25 26 獲得免疫系のシグナル伝達 B 細胞の活性化機構 抗原受容体を介したシグナル伝達 Lyn Syk T 細胞の活性化と CD28 シグナル kinase LAB" LCγ2 Btk B 細胞の活性化シグナル 免疫抑制剤の作用機序 Igα/Igβ BLNK 27 28 7
B 細胞における共刺激分子 CD19 Btk や I3K は cyclin D の発現を介して B 細胞の増殖を促す 29 30 CD40 CD40 を介した共刺激 CD40L: 活性化 T 細胞上に発現 獲得免疫系のシグナル伝達 TRAF6 抗原受容体を介したシグナル伝達 TAB2 IKKα IKKβ TAK1 IKKγ T 細胞の活性化と CD28 シグナル IκB NF-κB NF-κB B 細胞の活性化シグナル JNK p38 活性化 NF-κB NF-κB 核移行 IκB 分解 31 免疫抑制剤の作用機序 32 8
コルチコステロイド アルキル化剤 代謝拮抗薬 カルシニューリン阻害剤 免疫抑制剤 メチルプレドニゾロン : メドロール シクロフォスファミド : エンドキサン アザチオプリン : イムラン ミゾリピン : プレディニン ミコフェノール酸モチフェル : セルセプト メトトレキセート : リュウマトレックス シクロスポリン : ネオーラル FK506( タクロリムス ): プログラフ デオキシスパーガリン : スパニジン 免疫抑制剤の構造 その他 rapamycin( シロリムス ) FTY720 33 34 FK506 シクロスポリンと ラパマイシンの作用機序 FKB12-FK506 による カルシニューリンの活性阻害機構 MHC-peptide ラパマイシン (rapamycin) naïve T IL-2Rα FK506 ならびにシクロスポリン p27 の分解 細胞周期の進行 35 36 9
Immunophilin と免疫抑制作用 カルシニューリン mtor FK506 カルシニューリン ( 別名 :2B) 神経系で同定された分子 神経細胞の細胞死に関与 運動負荷にともなう 心肥大の過程に関与 虚血性脳疾患の阻害 心肥大の阻害 FKB12 ラパマイシン 他の組織を標的とした 場合の至適濃度 >> 免疫抑制剤としての 至適濃度 シクロスポリン シクロフィリン 37 高い カルシニューリンの 発現レベル 低い 38 FTY720 の作用機序 確認問題 T 細胞が抗原を認識すると 抗原受容体の細胞内領域に存在するITAMと呼ばれるモチーフが ( ) され そこに ( ) 領域を2つタンデムに持つ ( ) がリクルートされる その後 膜タンパク質である ( ) のチロシンリン酸化が引き金となってLCγ1などの分子が膜近傍にリクルートされる LCγ1は膜の構成成分である ( ) を ( ) とI 3 と に加水分解し 前者はRasGRの活性化を介してRas/MAK 経路の活性化を 後者は ( ) に存在するI 3 受容体に結合して細胞内のカルシウム濃度を上昇させる ( ) は細胞内のカルシウム濃度の上昇にともない活性化されるセリン / スレオニンホス ファターゼであり 転写因子である ( ) の脱リン酸化とそれに引き続く核内移行を制御する 免疫抑 制剤であるFK506( 別名タクロリムス ) は ( ) と同様に この経路を阻害することでT 細胞 の活性化を抑制する 一方 FK506と構造上類似している ( ) は ( ) 受容体の下流 で活性化されるmTORの活性化を阻害することで T 細胞の増殖を抑制する 39 Science 309: 1682-1683 (2005) より転載 T 細胞の共刺激 ( 注 : 副刺激とも呼ばれる ) は主として ( ) と呼ばれる分子を介して細胞内に伝えられ このシグナルがない状態でT 細胞受容体からのシグナルが入った場合は ( ) と呼ばれる不応答状態に陥る 一方 B 細胞においては CD19や ( ) が共刺激を細胞内に伝える 特に後者は 活性化したT 細胞からのシグナルを伝えるという特徴を持ち 自己抗体によって引き起される各種疾患の治療を考える上で注目を集めている 10