市場調査部レポートウィークリー アウトルック 米ドル / 円 喫緊の重要ポイント 2018 年 5 月 11 日 ( 金 ) 発行 No.177 相場環境 米ドル堅調の背景は主要国の金融政策見通しか 米ドル 米ドル / 円 喫緊の重要ポイントは? ユーロ ユーロ / 米ドル 昨年 4 月以来となる 200 日 MA 割れ 英ポンド 英ポンド / 円 反発フローの準備段階か NZ ドル RBNZ は利上げ予想時期を後ズレ 加ドル 原油高に支えられて堅調に推移 トルコリラ TCMB の利上げは実現するか ********************* 相場環境 米ドル堅調の背景は主要国の金融政策見通しか 足もとで米ドルが堅調です 5 月 10 日までの 1 か月間に 米ドルは他の主要通貨に対して全面高でした 南北首脳会談やイラン核合意問題などイベントもありましたが 底流には金融政策見通しの差があったと思われます 5 月 10 日時点の OIS( 翌日物金利スワップ ) に基づけば 主要中央銀行のなかで年内の利上げが有力視されているのは FRB BOC( カナダ中銀 ) BOE( 英中銀 ) です ( 下表参照 ) ただし FRB は年内に 6 月 9 月 (+12 月?) と着実なペースでの利上げが想定されているのに対して BOC や BOE の利上げは後ズレしているとの印象です とりわけ 次回 6 月 13 日の (FRB の )FOMC での利上げが確実視される一方で 数週間前まで確実視されていた 5 月 30 日の BOC の会合での利上げや 6 月 21 日の BOE の会合での利上げの確率は大きく低下してきました ( 下図 ) OIS に基づいた 18 年末時点での政策金利予想は FRB が 2-2.25% です これは ECB や日銀だけでな く BOC や BOE さらにはかつて 高金利 とされていた RBA( 豪中銀 ) や RBNZ(NZ 中銀 ) をも上回ります 今後 経済情勢の変化等によって 上述の金融政策見通しがどう変化するかに注意は必要ですが 現時 点では金融政策面から米ドルの優位は続くと判断できそうです 1 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
国 地域中央銀行 金融政策の市場予想 18 年 12 月までの見通し政策金利利下げ据え置き利上げ現在 18 年末 * 米国 FRB 0.0 0.3 99.7 1.50-1.75% 2-2.25% カナダ BOC 0.0 3.7 96.3 1.25% 1.75% 英国 BOE 0.0 32.7 67.3 0.50% 0.75% 豪州 RBA 0.0 70.6 29.4 1.50% 1.50% NZ RBNZ 0.0 82.2 17.8 1.75% 1.75% 日本 BOJ 0.0 73.8 26.2-0.10% -0.10% ユーロ圏 ECB 6.6 81.6 11.8-0.40% -0.40% OIS( 翌日物金利スワップ ) に基づく確率 % 5/10 時点 18 年末 は OIS で確率が最も高いケース出所 :Bloomberg 等より作成 (%) 100 次回会合での利上げ確率 80 60 40 20 0 米国 6/13 英国 6/21 カナダ 5/30 2018/1 2018/2 2018/3 2018/4 2018/5 5/10 時点の OIS より算出出所 :Bloomberg より作成 来週 (5/14-18) の相場材料週明け 14 日はイスラエルの建国 70 周年にあたり 米国の駐イスラエル大使館がエルサレムへ移転します イラン核合意からの米国の離脱もあって 中東情勢は不安定化しつつあるため 地政学リスクの高まりには要注意でしょう 同じく 14 日 イタリアでポピュリスト政党 五つ星 と反ユーロ 反移民の 同盟 との連立政権が誕生する可能性があります 両党による連立政権は 3 月の総選挙前に最も懸念されたシナリオでした イタリアの政治情勢への市場の関心は高くないかもしれません しかし ユーロ圏で第 3 位の経済規模を持つイタリアで反ユーロ政権が誕生すれば 市場の潜在的なかく乱要因とみるべきでしょう 14 日の週には 中国の劉鶴副首相が訪米して米政府と協議する予定です 米中通商問題に関して何らかの進展がみられるかもしれません <チーフエコノミスト西田明弘 > 2 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
米ドル 米ドル / 円 喫緊の重要ポイントは? 以下 米ドル / 円 日足チャート +200 日 MA( 移動平均線 )+DMI( 方向性指数 ) についてご覧ください 5 月に入って以来 米ドル / 円は 110 円台手前で押し戻される相場展開が継続しており いわば 110 円 の壁 で行く手を阻害されているような形となっています ( 上図黄色矢印 ) 米ドル / 円の喫緊の注目テクニカルラインは 200 日 MA( 移動平均線 ) 11 日時点における同線の基準レートは 110.16 円となっており 同線の上抜けブレーク成否が今後の米ド ル / 円相場の趨勢を左右する重要ポイントとなりそうです そんな中 相場の方向性やトレンドの勢いを見る上で有用なメルクマールである DMI( 方向性指数 ) を見てみると 11 日時点では +DI>-DI となっており プラスの方向性優位の状態となりつつあることが視認できます その一方で ADX が右肩下がり形状となっていることから 3 月後半を起点とする米ドル / 円の上昇トレンドの勢いがやや一服する時間帯に入っていると捉えて良さそうです ( いずれも上図赤色点線丸印 ) DMI が示唆するトレンドシグナルを基に勘案すると 足もとでは 200 日 MA( 110.16 円 ) が上値抵抗ラ インとなる可能性が高そうです ( 5/11 時点 Bid 値 ) 以上を総合すると 足もとの米ドル / 円は 200 日 MA を意識するレンジワーク主体の相場展開となりそう です < チーフアナリスト津田隆光 > 3 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
ユーロ ユーロ / 米ドル 昨年 4 月以来となる 200 日 MA 割れ 以下 ユーロ / 米ドル 日足チャート +200 日 MA( 移動平均線 )+DMI( 方向性指数 ) についてご覧ください 4 月後半のレンジ下抜けブレーク以来 下押しフローが続くユーロ / 米ドルですが 足もとでは重要メルクマ ールである 200 日 MA( 1.2016 ドル ) を割り込む動きとなっています ( 上図赤色点線丸印 5/11 時点 Bid 値 ) このことは 昨年 4 月 23 日に実施された仏大統領選挙 ( 第 1 回投票 ) においてマクロン候補 ( 当時 ) が得 票多数となった翌 24 日に ローソク足が同線を上抜きブレークする いわゆる マクロン ラリー がスタート ( 上図黄色矢印 ) して以来継続した上昇トレンド期が 足もとでは一旦終息していると捉えるべきでしょう その一方で 相場のトレンド強弱を示唆する ADX が 11 日時点で 80.70 となっており ( 上図青色点線丸 印 ) ADX における傾向 パターンを考察すると 同数値が 80 近辺まで上昇し その後右肩下がりとなったケ ースでは トレンド一服 (or 一旦の逆転 ) となっていることが見て取れます ( 上図青色矢印 ) 以上を総合すると 現在のユーロ / 米ドル相場は ローソク足が重要メルクマールである 200 日 MA を割り 込んだことでトレンド転換を探る時間帯であること その一方で 足もとではトレンドの 行き過ぎ ( ここでは 下がり過ぎ ) が修正される可能性を考慮すべきでしょう これからの時間において 仮に ADX が右肩下がり推移となった場合は 200 日 MA( 1.2016 ドル ) 近辺 までの一時的な 戻り を想定した方が良いのかもしれません < 津田 > 4 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
英ポンド 英ポンド / 円 反発フローの準備段階か 以下 英ポンド / 円 日足チャート +200 日 MA( 移動平均線 )+DMI( 方向性指数 ) についてご覧ください 10 日に開催された BOE( 英中銀 ) 金融政策委員会とカーニー BOE 総裁会見を材料に 足もとでの利上げ 観測が後退したこともあり 英ポンドが主要通貨全般に対して下押しフローの動きとなりました ( ファンダメ ンタルズ部分詳細は 11 日 スポットコメント をご覧ください ) 英ポンド / 円 日足チャート +200 日 MA+DMI を見ると 以下のようなパターン分析をすることができます 1) 200 日 MA が右肩上がりないしは横向きであるという条件の下 ローソク足が同線近辺での推移ないしはやや下押しオーバーシュートしたケースでは 早晩同線超えのフローとなっていること ( 上図黄色丸印 ) 2) DMI において +DI>-DI となり 同時に ADX が右肩上がりとなっていること これら 2 つのメルクマールが確認できた場合は 早晩 200 日 MA を基点とする反発フロー (= 上昇フロー ) が示現していることが視認できます 11 日時点では 1 ) ローソク足が 200 日 MA( 149.16 円 ) を下回っている ( 上図赤色点線丸印 ) こと そして 2 ) DMI で-DI>+DI となっている ( 上図青色点線丸印 ) ことから 足もとでは DMI の動向に要注目でしょう < 津田 > 5 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
NZ ドル RBNZ は利上げ予想時期を後ズレ RBNZ(NZ 中銀 ) は 5 月 10 日の会合で 政策金利を過去最低の 1.75% に据え置くことを決めました 声明では かなりの期間 政策金利を現在の緩和的な水準に維持すると想定している と表明 次の 措置の方向は上下に均衡している 時間の経過やイベント次第 との文言を今回追加し 次の一手は利上 げと利下げのいずれもあり得ることを明言しました 金融政策報告では 利上げ時期を来年 7-9 月期 CPI( 消費者物価指数 ) 上昇率がインフレ目標中央値 (+2%) に到達する時期を 2020 年 10-12 月期とそれぞれ予想 前回 2 月時点の見通しからいずれも 1 四半期後ズレさせました RBNZ は声明で利下げの可能性もあることを示し また金融政策報告で利上げと CPI 上昇率の 2% 到達時期の予想を後ズレさせました そのことは NZ ドルにとってマイナス材料と考えられます 来週 (5 月 14 日の週 ) は NZ の主要経済指標発表がないため NZ ドルのプラス材料は新たに提供されにくいとみられ NZ ドルは上値が重い展開になりそうです NZ ドルが上昇するには 対米ドルは米ドルの売り材料 対円は円の売り材料が提供される必要があるかもしれません <シニアアナリスト八代和也 > 加ドル 原油高に支えられて堅調に推移 加ドルは 5 月 10 日 対円で約 3 カ月ぶり 対米ドルで約 3 週間ぶりの高値をつけました BOC( 加中銀 ) の利上げ期待のほか WTI 原油先物が今週 (5 月 7 日の週 ) 一時約 3 年 5 カ月ぶりの高値を記録 原油高が資源国通貨である加ドルの支援材料となりました 足もとの原油価格の上昇は 原油の供給が減少するとの懸念が背景にあります トランプ米大統領は今 週 イラン核合意から離脱して イランへの経済制裁を再開すると表明 経済制裁によってイランからの原 油輸出が減少するとみられます 加ドルは来週 (5 月 14 日の週 ) も引き続き 原油価格の変動に影響を受けやすい地合いになりそうです 原油高が続けば 加ドルは一段と上昇する可能性があります ただ 原油価格は約 3 年 5 カ月ぶりの高値圏ということもあって 目先は利益確定売りによって伸び悩むことも想定されます その場合でも 供給減への懸念が根強く残るため 原油価格は底堅く推移するとみられます < 八代 > 6 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
トルコリラ TCMB の利上げは実現するか トルコリラは 5 月 9 日 対米ドルや対円で過去最安値を更新しました トルコリラ安の背景として 主に 3 つが挙げられます (1) 米国の長期金利の上昇を背景に 新興国通貨が全般的に下落したこと (2) トルコのインフレ率の高さへの懸念 (3)TCMB( トルコ中銀 ) はインフレやトルコリラ安に対応するための利上げが難しいとの観測 市場は トルコのインフレ抑制やトルコリラへの下落圧力を緩和するには TCMB の利上げが必要とみています しかし エルドアン トルコ大統領の利下げ圧力に加え 6 月 24 日に大統領選と議会選が行われます そのため TCMB は 6 月 7 日の次回政策会合で利上げを躊躇するとの観測があり それがトルコリラへの下落圧力となっていました トルコリラは 5 月 9 日に過去最安値を更新した後 急反発しました 政府や TCMB に関する報道を受けて TCMB が緊急の政策会合の開催を含め 利上げをするのでは? との期待が浮上したためです エルドアン大統領は 5 月 9 日 為替相場 (=トルコリラ) や経済情勢について協議するために経済会合を開催 翌 10 日には TCMB のチェティンカヤ総裁と経済担当当局者らが会議を行い 為替相場や金利について議論されたようです TCMB への利上げ期待はトルコリラをしばらく下支えするかもしれません ただ これまでエルドアン大統領から利下げ圧力を受け続けてきた TCMB が実際に利上げをしなければ トルコリラはいずれ再び下落圧力に直面する可能性があります < 八代 > 7 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
8 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
< 執筆者 > 西田明弘 ( にしだあきひろ ) 市場調査部チーフエコノミストマクロ経済 マーケット全般 1984 年 日興リサーチセンターに入社 米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て 三菱 UFJ モルガン スタンレー証券入社 チーフエコノミスト シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る 2012 年 9 月 マネースクウェア ジャパン (M2J) 入社 市場調査部チーフアナリストに就任 現在 M2J の WEB サイトで 市場調査部レポート 市場調査部エクスプレス 今月の特集 など多数のレポートを配信する他 TV 雑誌など様々なメディアに出演し 活躍中 津田隆光 ( つだたかみつ ) 市場調査部チーフアナリストマーケット全般 米ドル ユーロ ポンド担当日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト (CMTA) 主に国際商品市況のマーケット業務に従事し 2008 年 1 月マネースクウェア ジャパン入社 シニアテクニカルアナリストとして独自のアレンジを取り入れた各種テクニカル分析レポートを執筆する傍ら セミナー講師やラジオ NIKKEI 番組コメンテーターなどを務める 2016 年 4 月 市場調査部チーフアナリストに就任 八代和也 ( やしろかずや ) 市場調査部シニアアナリスト豪ドル NZドル トルコリラ 南アランド カナダドル担当 2001 年 ひまわり証券入社後 コールセンター 為替関連の市況ニュースの配信 レポートの執筆など FX 業務に携わる 2011 年 12 月 マネースクウェア ジャパンに入社 市場調査部に所属し 豪ドルや NZ ドルといったオセアニア通貨にフォーカスした オセアニア レポート を執筆している FX に携わり 15 年 9 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
店頭外国為替証拠金取引に関しての注意事項 お取引に関しての注意事項 取引開始にあたっては契約締結前書面をよくお読みになり リスク 取引等の内容をご理解いただいた上 で ご自身の判断にてお願いいたします 当社の店頭外国為替証拠金取引は 元本および収益が保証されているものではありません また 取引総代金に比較して少額の資金で取引を行うため 取引の対象となる金融商品の価格変動により 多額の利益となることもありますが お客様が差し入れた証拠金を上回る損失が生じるおそれもあります また 各金融市場の閉鎖等 不可抗力と認められる事由により外国為替取引や株価指数取引が不能となるおそれがあります 店頭外国為替証拠金取引における取引手数料は価格上乗せ方式で 新規および決済取引のそれぞれ に徴収いたします 手数料額は 1,000 通貨単位当たり 10~50 円 ( 対ドル通貨は 0.1~0.5 ドル ) で 通貨ペ アおよび諸条件により異なります 当社が提示するレートには 買値と売値に差 ( スプレッド ) があります 流動性が低くなる場合や 天変地異 または戦争等による相場の急激な変動が生じた場合 スプレッドが広がることがあります 店頭外国為替証拠金取引に必要な証拠金額は 個人のお客様の場合 取引総代金の 4% です 法人のお客様の場合 取引総代金に 金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの証拠金率 ( 為替リスク想定比率 ) を取引の額に乗じて得た額となります 為替リスク想定比率とは 金融商品取引業等に関する内閣府令第 117 条第 27 項第 1 号に規定される定量的計算モデルを用い算出します なお 証拠金率 ( 為替リスク想定比率 ) は変動いたします 当社が提供する トラップトレード リピートイフダン トラップリピートイフダン ダブルリピートイフダン は取引の利益を保証するものではありません 投資判断はお客様ご自身にて行っていただきますようお願いいたします また 同一金融商品で複数の ダブルリピートイフダン を入れる またはすでにポジションを保有する金融商品で新たに ダブルリピートイフダン を注文すると両建て取引となることがあります 株式会社マネースクエア金融商品取引業関東財務局長 ( 金商 ) 第 2797 号 加入協会 日本証券業協会一般社団法人金融先物取引業協会 10 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.