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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイルス感染検査のそれぞれの特徴 1. 非侵襲的に施行できるウイルス感染検査 Tzanck テスト ( 図 3A):HSV, VZV 感染症の診断に用いられる検査法で 水疱底部の細胞をぬぐい スライドグラスにスメアを作成し ギムザ染色することにより顕微鏡を用いて確認します 巨細胞 棘融解細胞が確認できれば ヘルペスウイルス感染症と診断できます 診察室内で迅速診断ができるという利点がありますが 古い病変では検査できず また HSV と VZV 感染症の区別ができないという欠点があります 図 2 皮膚病変におけるウイルス感染検査の流れ

特異抗原検出( 蛍光抗体法 )( 図 3B): ヘルペスウイルス感染症の診断に用いられる検査法で Tzanck テストと同様に水疱底部の細胞をぬぐい スライドグラスにスメアを作成し 検査を行います ウイルス特異的抗体を用いて感染細胞を証明しますので HSV-1, 2, VZV 感染症の区別が可能です PCR 法 ( 図 3C): 水疱蓋 痂皮などから抽出した DNA をサンプルとします 特異的プライマーを用いてウイルス遺伝子を増幅させて可視化する検査法です プライマーが用意できれば すべてのウイ 図 3 非侵襲的に施行できるウイルス感染検査 ルス感染症に対応できます 目的とする (A)Tzanck テスト, (B) 特異抗原検出 ( 蛍光抗体法 ), (C)PCR 法 サイズにバンドが検出されたときは陽性 と判断します 非常に微量なサンプルでも検出可能であり 古い病変でも検査できます しかし コンタミネーション ( 偽陽性 ) の可能性があるということを念頭においておかな ければなりません また EB ウイルス感染症では潜伏感染なのか溶解感染なのか判断 するには注意が必要です 2. 皮膚病理組織を用いて調べるウイルス感染検査 HE 染色 ( 図 4A): 皮膚生検を行って確認する検査法です ある程度の疾患を推定することが可能であり 表皮内に巨細胞が認められれば ヘルペスウイルス感染症と診断できます その他に 疾患特異的なウイルス封入体などが確認されればウイルス感染症と診断できます 欠点として 侵襲を伴う検査であり またこの検査法のみで最終的な診断をすることは例外を除いてできません 免疫組織化学染色( 免疫染色 ) ( 図 4B): 皮膚病理組織に ウイルス蛋白特異抗体を反応させ ウイルス感染細胞を確認す 図 4 皮膚病理組織を用いて調べるウイルス感染検査 る検査です 病理組織標本中のウイルス感染細胞に一致して陽性所見が得られ (A)HE 染色, (B) 免疫組織化学染色 ( 免疫染色 ), (C)In situ hybridization 法 (EBER In situ hybridization)

原因ウイルスが病態に関与する証明となります パラフィン切片でも使用可能な抗体が多くあります 欠点として 抗体の種類によって偽陽性 偽陰性がみられることがあり 判定には注意を要します In situ hybridization 法 ( 図 4C): 免疫染色は皮膚病理組織を用いてウイルス蛋白を検出するのに対し In situ hybridization はウイルス遺伝子 (DNA または RNA) を検出する方法です 病理組織標本中にウイルス感染細胞に一致して陽性所見が得られ 原因ウイルスが病態に関与する証明となります パラフィン切片でも使用可能であり プローブが作成できればどのような遺伝子に対しても検出可能です 欠点として 手技が複雑である点が挙げられます EB ウイルス感染細胞内に大量に発現している EBER という RNA を検出する EBER in situ hybridization が最も頻用されており EB ウイルスの証明には免疫染色よりも検出感度 特異度が高いという特徴があります その他に HPV も in situ hybridization 法でウイルスのタイプ別に検出可能です 3. 研究室レベルで行う特殊なウイルス感染検査 サザンブロット法 ( 図 5A): 生検などで得られた皮膚組織より DNA を抽出して 電気泳動を行った後 特異的プローブを反応させて シグナルを検出する方法です 腫瘍性疾患 に対して行われる検査であり EB ウイルスクロナリティ HTLV-I プロウイルス 悪性リンパ腫の遺伝子再構成の確認に用いられます クロナリティが確認されれば腫瘍性増殖していることが証明されますが 大量のサンプルが必要であり 手技が複雑で限られた施設のみ施行可能であるという欠点があります ウエスタンブロット法 ( 図 5B): 生検などで得られた皮膚組織より蛋白を抽出して 電気泳動を行った後 特異的抗体を反応させて シグナルを検出する方法です 腫瘍性疾患 に対して行われる検査であり EB ウイルスの潜伏感染のパターン解析 血液を用いた HTLV-I 抗体 HIV 抗体陽性例の確認検査などに用いられます ウイルス蛋白の発現が認められれば ウイルス感染が証明されますが 手技が複雑で限られた施設のみ施行可能である図 5 研究室レベルで行う特殊なウイルス感染検査という欠点があります (A) サザンブロット法, (B) ウエスタンブロット法, (C) ウイル ウイルス分離 ( 図 5C): ヘルペスウイルス分離, (D) 電子顕微鏡ス感染症に対し 水疱液などを用いて培

養細胞にウイルスを感染させて細胞変性効果の有無をみる方法です 検体中のウイルスが少量の場合でも検出できます ウイルスの活動性を反映するため診断的価値が高く ウイルスの型 疫学調査 伝播経路の追跡 ウイルス変異の確認に有用です しかし 分離同定に数日から 3 週間かかるという欠点があります さらにウイルス分離に特殊な細胞が必要なタイプがあります 電子顕微鏡 ( 図 5D): 細胞内に感染しているウイルスを直接確認できる唯一の検査法です 検体中のウイルスが少量の場合でも検出できるという利点がありますが グルタルアルデヒドなどの特殊な固定が必要であり ごく限られた施設しか検査できません 4. 新しいウイルス感染検査法 LAMP 法 :PCR 法と同様に水疱蓋 痂皮などから DNA を抽出し ウイルス遺伝子を増幅させて可視化する検査法です PCR 法と異なり 一定の温度で反応が進むため 15 分から 1 時間という短時間で結果を得ることができます すべてのウイルス感染症に対応でき HSV-1,2 に関してはすでにキットとして市販されています 欠点としては 一定温度を維持するヒーターが必要で 可視化にあたっては吸光度計などの機器が必要です. まだ実用化には至っておらず 今後一般化してくるものと思われます おわりにウイルス性皮膚疾患は 多彩な臨床症状をもち 似たような臨床症状を呈する他の疾患もあるため ウイルス感染の証明のために検査を行う必要があります 皮膚病変におけるウイルス感染の証明には数分で結果の得られる検査から数週を要する検査まであります また非侵襲検査から侵襲を伴う検査までさまざまです 疾患に応じた検査の選択 サンプルに応じた検査の選択が重要であると考えます 以上 皮膚病変におけるウイルス感染検査と読み方について解説しました