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388 日眼会誌 116 巻 4 号 緑内障診療ガイドライン ( 第 3 版 ) 補遺緑内障チューブシャント手術に関するガイドライン 緑内障手術の中で, 濾過手術は房水を非生理的流出経路で結膜下に導き眼圧を下降させる術式であり, 線維柱帯切除術に代表されてきた. しかしながら, 複数回の濾過手術によっても眼圧下降が得られない, あるいは濾過手術が実施困難な症例も多数存在し, このようないわゆる難治緑内障に対する治療手段として, 海外では人工物 (glaucoma drainage devices:gdd) の眼内挿入によって房水流出促進経路を確保し眼圧下降を図る手術が行われてきた. これに対して我が国では長い間,GDD が医療器具として承認されず難治緑内障の治療に困難があったが, 今回, 従来の緑内障手術の実施が困難な症例, 従来の緑内障手術では奏功が期待できない, あるいは重篤な合併症が予測される症例など,GDD の使用が従来の緑内障手術にまさると考えられる症例に限っての使用が認められると同時に, 海外で使用されている GDD の一部 が医療器具として承認された. 本ガイドラインでは今回承認された GDD を含めた代表的 GDD についてその原理, 適応, 術式, 成績, 合併症について解説する. なお,GDD を使用する術式は英文では tube-shunt surgery,drainage-device surgery, あるいは drainage implant surgery などさまざまに呼称されるが, 本ガイドライン補遺では日本緑内障学会による緑内障診療ガイドライン ( 第 3 版 ) に従い チューブシャント手術 の呼称を用いる. また,GDD は aqueous shunts とも呼称されるが適切な邦訳がない. 本邦では一般に単に インプラント の語が用いられているが, インプラント は GDD あるいは aqueous shunts を特定する言葉ではないため, 本ガイドラインでは英文のまま GDD(glaucoma drainage devices) を用語として用いる. 日本緑内障学会チューブシャント手術ガイドライン作成委員白土城照, 鈴木康之, 谷原秀信, 千原悦夫, 布施昇男 ( 五十音順 ) 転載問い合わせ先 :270-2218 松戸市五香西 3 24 3 日本緑内障学会電話 047-710-4670 FAX 047-710-4671 E-mail:jgs@g-jimukyoku.jp

平成 24 年 4 月 10 日 389 Ⅰ チューブシャント手術実施の留意点 海外では近年, チューブシャント手術の適応が拡大し, 難治緑内障以外の通常の緑内障に対しても手術療法の選択肢として認知されつつある. しかしながら我が国では未だその使用経験に乏しく, 現時点ではチューブシャント手術の適応には慎重でなければならない. したがって, チューブシャント手術の実施にあたっては人工物を眼内に移植する手術であることを認識し, 従来の緑内障手術では治療困難であること, ならびにチューブシャント手術に伴う短期, 長期合併症について説明をし, 十分なインフォームドコンセントを行うことが必要である. また, 施術にあたって術者は従来の緑内障手術, ならびにその合併症への対処法に習熟しているだけではなく, チューブシャント手術を見学する, 補助を行う, あるいは手術ビデオを参照するなど, その手技に精通することが不可欠である. Ⅱ 各 GDD の原理, 適応, 術式, 成績, 合併症. プレートを用いる GDD a. バルベルト緑内障インプラント (Baerveldt Glaucoma Implant)( エイエムオー ジャパン社 ) ) 原理シリコーン製のチューブとそれに接続するやはりシリコーン製のプレートで構成された GDD で, 房水をチューブに通してプレートに流出させ, プレート周囲に形成される結合織の被膜を通して周囲組織に房水吸収させることで眼圧を下げる仕組みである. 現在,3 種類の製品 (BG103-250,BG101-350,Pars Plana BG102-350) があり,BG103-250 およびBG101-350 は基本的にチューブを角膜輪部より前房内に挿入して使用するモデルであり, 限られた症例に対しては後房に挿入して使用することもできる ( ただし, 前房用をこのように使うことは本邦における承認範囲外である ). 一方,Pars Plana BG102-350 は硝子体切除術後もしくは硝子体切除同時手術の症例に対して毛様体扁平部よりチューブを硝子体腔内に挿入して使用するモデルである.BG103-250 は面積 250mm 2 の馬蹄形のプレート,BG101-350 およびPars Plana BG102-350 は面積 350 mm 2 の楕円形のプレートを持ち, チューブ外径は0.61 mm, 内径は 0.30 mm である. プレートには眼球壁へ固定するための縫合穴が開いており, 強膜に縫着して固定できるようになっているほかに, プレート中央部にも穴が 4つ開いており, その部分を通して結膜下結合織と強膜を癒着させることで, よりプレートを強膜に密着させて固定させるようになっている. なお, 後述するアーメド緑内障バルブと異なり, チューブに調圧弁はついていない. ) 適応従来, 海外では代謝拮抗薬を併用した線維柱帯切除術 が不成功に終わった症例, 結膜の瘢痕化が高度な症例, 線維柱帯切除術の成功が見込めない症例, 濾過手術が技術的に施行困難な症例に行われてきた 1)2). 近年では初回手術への適応を含めて積極的な使用も検討されているが, 本邦における使用経験は少なく, 通常の線維柱帯切除術ではみられない合併症である術後の GDD の露出 感染, 長期的な角膜内皮障害などが生じる可能性があることより, 少なくとも当面は通常の線維柱帯切除術の施術が困難である, 奏功が期待できない, あるいは従来の線維柱帯切除術では重篤な合併症が予測される症例に適応を限定すべきと考えられる. また, 角膜内皮が既にある程度以上障害されている症例や強膜上でのチューブの被覆が困難と考えられる症例にチューブの前房内留置は行うべきではない. さらに, 硝子体の除去が十分でない症例に対するチューブの硝子体腔内留置も行うべきではない. また, 禁忌とはいえないが赤道部付近にバックル材料などが置かれて瘢痕の強い眼では手術が難しいことが知られている. 浅前房, 高度の虹彩前癒着眼, 角膜内皮減少例, 硝子体手術既往眼, 硝子体手術が必要な網膜硝子体疾患では硝子体腔内に挿入するチューブが選択され, それ以外では前房内に挿入されることが多い. ) 術式 (1) 前房内チューブ挿入法原則として上耳側に円蓋部基底の結膜弁を作製し, 強膜を十分に露出させ目的とするプレートを置くスペースを確保する. 症例によっては, 上耳側以外の場所を用いたり, 輪部基底結膜弁で施術する場合もある. 上鼻側へのプレートの設置は眼球運動障害を来しやすく, 下方への設置は術後の整容上の問題や感染の危険性からできる限り避けるべきである. プレートを輪部から 8 10 mm の位置の直筋の下に設置し ( 直筋上にプレートを置くのは眼球運動障害を来しやすいため, なるべく避ける ), 縫合穴に通糸して強膜に縫着する. 次にチューブを一時的に閉塞するためにプレートの 2 4mm 前でチューブを結紮する. 適宜チューブの一部に注射針やメスなどで一時的な漏出孔を開けておくことでチューブ結紮に伴う術直後の高眼圧を予防することができる. このように準備したチューブを前房内に 2 3 mm 挿入できるよう長さを調整する. チューブ先端はベベルアップで斜めにトリミングする. 結紮した縫合糸は過剰濾過の可能性がなくなったと考えられる時点で切糸もしくは抜糸するが, 吸収糸を使用した場合は, そのままでよい. 次いで, 輪部近傍強膜に直接もしくは強膜半層弁作製後に23ゲージ (G) 針で前房へ穿刺し, それを通してチューブを前房内に挿入する. その際, チューブ先端が角膜内皮および虹彩に接触しないように注意する. チューブが術後眼外へ露出することを防ぐために適当なパッチ材料 ( 海外では保存強膜, 保存角膜, 保存心膜などが用いられている ), あるいは自己強膜半層弁でチューブを覆う

390 ことが必要である. 最後に結膜を縫合被覆する. (2) 硝子体腔内チューブ挿入法前房内にチューブを挿入する場合と同様にプレートを強膜に縫着し, チューブ結紮および術直後の眼圧上昇予防のためにチューブへの穴開けをした後, 角膜輪部より 3.5 mm の毛様体扁平部の位置に 23G 針で穿刺し, それを通して Hoffmann elbow をつなげたチューブを硝子体腔内に挿入する. チューブの挿入部をパッチ材料 ( あるいは自己強膜弁 ) で被覆し, 結膜を縫合被覆する. ) 成績難治性緑内障や小児例を対象とした成績は, 成人の原発開放隅角緑内障よりやや劣るものの眼圧コントロールの成功率が 70 90% と良好であったと報告されている 3) 9). 近年, 以前に白内障手術もしくは / および線維柱帯切除術を施行されたことのある緑内障患者を対象とした多施設無作為化臨床研究による線維柱帯切除術との比較結果が発表された 10). それによると術後 3 年の時点におけるバルベルト緑内障インプラントによる眼圧コントロール成績 (85%) は線維柱帯切除術のそれ (69%) を上回り, また術後合併症の発生率も線維柱帯切除術の 60% に対し,39% と有意に少なかった. また, 後述するアーメド緑内障バルブとの多施設無作為化臨床研究の結果 11) でも 1 年後の成績で 86% とアーメド緑内障バルブの 84% に比べて有意差はないものの, やや良好な成績を示している. なお, 代謝拮抗薬の併用, 副腎皮質ステロイドの内服, テノン囊の除去などに効果があるという確かな証拠はない 1)2). ) 合併症 GDD ではいずれも類似の合併症が報告されており, 以下のようなものが挙げられる. (1) チューブに関連した合併症 a. 術後閉塞 ( フィブリン, 出血, 虹彩, 硝子体, 製品の不良 ) b. チューブ ( プレート ) の露出 c. チューブの偏位, 後退 d. 房水漏出 e. 術後感染, 眼内炎 (2) 術後低眼圧 (3) 術後高眼圧 a. 被囊濾過胞 (encapsulation) b. チューブ閉塞による眼圧上昇 c. プレート周囲の瘢痕形成による眼圧上昇 (4) 角膜 a. 内皮減少, 機能不全 b. 角膜混濁 c. 角膜移植片の混濁 d. 凹窩 (dellen) 形成 e. 眼内上皮増殖 日眼会誌 116 巻 4 号 (5) 前房 a. 浅前房 b. 悪性緑内障 c. 前房出血 d. 前房蓄膿 (6) ぶどう膜に関連する合併症 a. 慢性虹彩炎 b. フィブリン反応 c. 虹彩癒着, 萎縮 d. 瞳孔偏位 (7) 白内障 (8) 網膜硝子体 a. 脈絡膜剝離 ( 漿液性, 出血性 ) b. 減圧網膜症 (decompression retinopathy) c. 囊胞状黄斑浮腫 d. 硝子体出血 e. 低眼圧黄斑症 f. 網膜剝離 (9) 複視, 斜視, 眼球運動障害, 眼瞼下垂 (10) 違和感 (11) 眼球癆 b. アーメド緑内障バルブ (Ahmed TM Glaucoma Valve)(New World Medical 社 ) ) 原理アーメド緑内障バルブ (Ahmed TM Glaucoma Valve: AGV) は調圧弁を持つ GDD で, 眼内に挿入するシリコーン製のチューブ ( 内径 0.305 mm, 外径 0.635 mm) と内圧 8 12 mmhg で開く調圧弁 ( ベンチュリー弁 ) を持つプレートからなる. 眼圧を下げるためにチューブを眼内に差し込み, 流出する房水をプレート部分でその周囲に形成される結合織の被膜を通して周囲組織に吸収させることで眼圧を下げる仕組みである.AGV は調圧弁を持つので術直後の低眼圧が起こりにくいという特徴を持つ. プレートの材質はポリプロピレン (S シリーズ ) のものとシリコーンゴム (FP シリーズ ) のものがあり, それぞれ大人用 (S2,FP7: 巾 13 mm, 長さ 16 mm, 表面積 184 mm 2 ) と子供用の小型のもの (S3,FP8: 表面積 96mm 2 ) が販売されている. この GDD は種々の状況に対応するために, 付属部品を追加して設置できるようになっており, 硝子体腔内に挿入するためにチューブに毛様体クリップ (pars plana clip) をつけて硝子体用に変換することが可能 (PC7,PC8) である. また, 眼圧下降をより強力にするために別売の連結用のチューブをつけたうえでプレートをもう 1 枚設置して房水吸収部分を倍の面積に拡大することもできる (B1,FX1: 表面積 368 mm 2 ). ) 適応バルベルト緑内障インプラントに準ずる. 近年, 初回手術への適応を含めて積極的な使用が検討されているが, 本邦における使用経験は少なく, 術後の GDD の露

平成 24 年 4 月 10 日 391 出 感染, 長期的な角膜内皮障害などが生じる可能性があるため, 当面は難治で通常の線維柱帯切除術の施術が困難である, 奏功が期待できない, あるいは従来の線維柱帯切除術では重篤な合併症が予測される症例に適応を限定すべきと考えられる. また, 角膜内皮が既にある程度以上障害されている症例や強膜上のチューブの被覆が困難と考えられる症例にチューブの前房内留置は推奨できない. さらに, 硝子体の除去が十分でない症例に対するチューブの硝子体腔内留置も行うべきではない. ) 術式 (1) 前房内チューブ挿入法 AGV を挿入するために適切な象限を選び, その部位で約 120 度の輪部切開を行う. 症例によっては, 輪部基底結膜弁で施術する場合もある. 必要な場合は 2 直筋に牽引糸を置いて術野を確保する. 自己強膜弁を使用する場合はここで強膜弁を作製する.AGV の弁の動作を確認するためにチューブ先端から灌流液を注入して通水確認 ( プライミング ) を行う. 次に術野を十分に広げて AGV のプレートに付随する固定用の穴に通糸し輪部から 8 9 mm の距離で強膜に縫着して固定する. 次に23Gの針で前房に穿刺しチューブを適当な長さにトリミング ( ベベルは前方を向くようにする ) して角膜と虹彩に接触しないように挿入するが, チューブの安定性を担保するために斜めに入れることが多い. チューブが適当な位置に固定されたことを確認した後, チューブの露出を防ぐためにパッチ材料あるいは強膜弁でチューブを覆い縫合する. さらに, 結膜を縫合閉鎖する. (2) 硝子体腔内チューブ挿入法硝子体手術が完了していない場合はチューブシャント手術の前に硝子体を十分に除去する, 特に扁平部の硝子体が残存しないように注意が必要である. 硝子体手術が終了すると AGV を設置しようとする象限の輪部に 6 6mmの大きめの強膜弁を作製し, 前房内に挿入する場合と同じようにプレートを強膜に固定してチューブに毛様体クリップをつけチューブを硝子体腔内に挿入後, 強膜弁下で毛様体クリップを縫着固定し, さらに強膜弁を縫合したうえで結膜を縫合閉鎖する. ) 成績いわゆる難治緑内障に対する治療成績では, 術後眼圧 5 21 mmhg を成功とすると成功率は1 年で76 87%, 2 年で68 77%,4 年で76% 程度と報告されている 12) 14). マイトマイシン C の術中塗布によって成績の改善がみられるかについては否定的な見解が多い 1)2). シリコーンゴムプレートとポリプロピレンのプレートでの成績を比べるとシリコーンゴムの方が優れるという報告もある 15). 小児の難治性緑内障に対しても外国では 1 年で70 93%, 2 年で 58 86% の成功率という報告がなされている 16). バルベルト緑内障インプラントとの比較試験で術後合併症はアーメド緑内障バルブの方が有意に少ないが, 術後 平均眼圧はアーメド緑内障バルブの方が 2.2 mmhg 高いと報告されている 11). ) 合併症プレートを持つ GDD ではいずれも類似の合併症が報告されており, バルベルト緑内障インプラントと同一のものが挙げられる.. プレートを用いない GDD( ミニチューブ ) a.ex-press Glaucoma FiltrationDevice(Alcon 社 ) ) 原理 EX-PRESS は調圧弁を持たないステンレス製の GDD で, 線維柱帯切除術と同様の強膜弁下で前房内に挿入し, 房水を結膜下へ導き濾過胞を形成させる 線維柱帯バイパス である. 他の GDDとは異なり, 結膜下に房水貯溜空間を形成するためのプレート部分を持たない. 構造は,GDD の眼内迷入あるいは眼外突出を防ぐ目的で GDD の強膜側には扁平な鍔 ( つば ) が, また前房側には突起 ( 釣り針の かえし に相当 ) がつけられている. さらに GDD 先端部が虹彩などで閉塞した場合に備えて前房側上面, 側面に開放ポートが開けられている. 専用のデリバリーシステム (EX-PRESS delivery system:eds) に装着された状態で販売されており, 全長と内径の大きさから R-50PL,P-50PL,P-200PL の3 種類がある. 全長は Rタイプが 2.9±0.1 mm,p タイプが 2.6±0.1 mm である. また内径について,50シリーズは 50 mm,200 シリーズは 200 mm となっており, 日本では P-50 タイプのみが承認発売予定である.EX-PRESS の長所は, 挿入が比較的容易なこと, 流出路の大きさが標準化できること, 虹彩切除が不要であることが挙げられる. 虹彩切除を行わないため, 炎症による濾過胞の瘢痕化や, 出血による流出路の栓塞が少なくなる可能性がある.EX-PRESS はステンレス製であり, 組織反応, 炎症反応が少なく, 通常の MRI 撮影であれば偏位せず安全とされている. ) 適応初回手術ならびに, 白内障, 緑内障手術既往眼, 硝子体手術既往眼, 角膜移植術既往眼などでも奏功することが報告されている. 狭隅角眼, ぶどう膜炎, 眼感染症などでは術後合併症のリスクが高いことが想定される. 術後角膜内皮の減少は検討されていないが, 長期間では内皮が減少する可能性が否定できないためある程度以上の角膜内皮減少例での使用に際し注意が必要である. 本邦における使用経験が少なく, 通常の線維柱帯切除術ではみられない GDD の露出, 術後感染, 長期的な角膜内皮障害などが生じる可能性があることから, 少なくとも当面は, 通常の線維柱帯切除術の施術は可能ではあるが,EX-PRESS 使用による前房開放時間の短縮, あるいは虹彩切除の回避が従来の線維柱帯切除術よりも明らかにまさると考えられる症例に適応を限定すべきと考

392 日眼会誌 116 巻 4 号 えられる. また, 発達緑内障早発型に対しては使用報告も少なく,EX-PRESS の位置ずれなどの可能性もあることから, 使用は推奨できない. ) 術式線維柱帯切除術に準じる. 術式は, まず原則として上方の象限に円蓋部基底, もしくは輪部基底の結膜輪部切開を行う. 次に, 輪部基底の半層切開強膜弁を作製し, 症例によっては結膜下に適量のマイトマイシン C を塗布する必要が出てくる 17).25 G 針にて, 強膜岬前方から前房に穿刺する. その孔を通して,EDS に装着した EX-PRESS を前房側へ押し込み,EDS を引き抜いて EX-PRESS を強膜弁下に留置する. 排出口についている鍔の位置を確認し, 強膜弁および結膜弁を各々縫合する. ) 成績 (1) 線維柱帯切除術との比較術後早期の眼圧値は EX-PRESS 群の方が有意に高いが, 術後 3か月ではほぼ同等であり, 生命表解析では術後 15 か月の時点において, 両者に有意差を認めなかったと報告されている 17). 眼圧下降率に関しても同等とする報告が多い 18) が,EX-PRESS 群の方が眼圧をより下降させるとする報告もある 19). (2) 水晶体乳化吸引術との同時手術 20) 術後 3 年での成功率 ( 眼圧 21 mmhg) は 77% と報告 されている. また, 同時手術と EX-PRESS 単独手術では両者に差がなかったと報告されている 21). (3) 線維柱帯切除術後の難治症例結膜が瘢痕化した症例での報告は少数例 (11 眼 ) ではあるが成功率 ( 術後眼圧 5 mmhg, 21 mmhg) が 64%, 成功例での術後平均眼圧は約 14 mmhg であったと報告されている 22). また, 再手術などの重篤例での成績も少数例 (24 眼 ) の検討ではあるが成功率 ( 術後眼圧 21 mmhg) が 83%( 術後平均眼圧は約 15 mmhg) と報告されている 23). (4) 合併症 EX-PRESS では, 線維柱帯切除術と類似の合併症が報告されており, 以下のようなものが挙げられる. ただし, 虹彩切除に伴う合併症は回避できる. (1) GDD 自体に関連した合併症 a. 術後閉塞 ( フィブリン, 血液 )(YAG レーザーで修復可能 ) b.gdd 強膜側部露出 c. 前房内への迷入 d. 位置ずれ (2) 過剰房水流出, 術後低眼圧 a. 結膜からの房水漏出 b. 脈絡膜剝離 c. 脈絡膜出血 d. 低眼圧黄斑症 e. 網膜剝離 (3) 術後高眼圧 a. 被囊濾過胞 (encapsulation) b. 結膜瘢痕化, 濾過胞平坦化 (4) 前房 a. 浅前房 b. 悪性緑内障 c. 前房出血 (5) 術後感染, 炎症 a. 術後感染, 濾過胞炎, 眼内炎 b. 慢性虹彩炎 c. フィブリン反応 d. 囊胞状黄斑浮腫 文 1) Minckler DS, Vedula SS, Li TJ, Mathew MC, Ayyala RS, Francis BA:Aqueous shunts in glaucoma. Cochrane Database Sys Rev:CD004918, 2006. 2) Minckler DS, Francis BA, Hodapp EA, Jampel HD, Lin SC, Samples JR, et al:aqueous shunts for glaucoma. A report by the American Academy of Ophthalmology. Ophthalmology 115:1089-1098, 2008. 3) Krishna R, Godfrey DG, Budenz DL, Escalona- Camaaño E, Gedde SJ, Greenfield DS, et al: Intermediate-term outcomes of 350-mm 2 Baerveldt glaucoma implants. Ophthalmology 108:621-626, 2001. 4) Seah SK, Gazzard G, Aung T:Intermediate-term outcome of Baerveldt glaucoma implants in Asian eyes. Ophthalmology 110:888-889, 2003. 5) Wang JC, See JL, Chew PT:Experience with the use of Baerveldt and Ahmed glaucoma drainage implants in an Asian population. Ophthalmology 111:1383-1388, 2004. 6) Rolim de Moura C, Fraser-Bell S, Stout A, Labree L, Nilfors M, Varma R:Experience with the Baerveldt glaucoma implant in the management of pediatric glaucoma. Am J Ophthalmol 139:847-854, 2005. 7) van Overdam KA, de Faber JT, Lemji HG, de Waard PW:Baerveldt glaucoma implants in paediatric patients. Br JOphthalmol 90:328-332, 2006. 8) Banitt MR, Sidoti PA, Gentile RC, Tello C, Liebmann JM, Rodriguez N, et al:pars plana Baerveldt implantation for refractory childhood glaucomas. J Glaucoma 18:412-417, 2009. 9) Witmer MT, Tiedeman JS, Olsakovsky LA, Conaway MR, Prum BE:Long-term intraocular pressure control and corneal graft survival in eyes with a pars plana Baerveldt implant and corneal transplant. J Glaucoma 19:124-131, 2010. 献

平成 24 年 4 月 10 日 393 10) Gedde SJ, Schiffman JC, Feuer WJ, Herndon LW, Brandt JD, Budenz DL;Tube Versus Trabeculectomy Study Group:Three-year follow-up of the Tube Versus Trabeculectomy Study. Am JOphthalmol 148:670-684, 2009. 11) Budenz DL, Barton K, Feuer WJ, Schiffman J, Costa VP, Godfrey DG, et al;ahmed Baerveldt Comparison Study Group:Treatment outcomes in the Ahmed Baerveldt Comparison Study after 1 year of follow-up. Ophthalmology 118:443-452, 2011. 12) Coleman AL, Hill R, Wilson MR, Choplin N, Kotas-Neumann R, Tam M, et al:initial clinical experience with the Ahmed glaucoma valve implantation. Am JOphthalmol 120:23-31, 1995. 13) Topouzis F, Coleman AL, Choplin N, Bethlem MM, Hill R, Yu F, et al:follow-up of the original cohort with the Ahmed glaucoma valve implant. Am JOphthalmol 128:198-204, 1999. 14) Ayyala RS, Zurakowski D, Smith JA, Monshizadeh R, Netland PA, Richards DW, et al:a clinical study of the Ahmed glaucoma valve implant in advanced glaucoma. Ophthalmology 105:1968-1976, 1998. 15) Ishida K, Netland PA, Costa VP, Shiroma L, Khan B, Ahmed II:Comparison of polypropylene and silicone Ahmed glaucoma valves. Ophthalmology 113:1320-1326, 2006. 16) Chen TC, Bhatia LS, Walton DS:Ahmed glaucoma valve surgery for refractory pediatric glaucoma:a report of 52 eyes. J Pediatr Ophthalmol Strabismus 42:274-283, 2005. 17) Maris PJ Jr, Ishida K, Netland PA:Comparison of trabeculectomy with Ex-PRESS miniature glaucoma device implanted under scleral flap. J Glaucoma 16:14-19, 2007. 18) Good TJ, Kahook MY:Assessment of bleb morphologic features and postoperative outcomes after Ex-PRESS drainage device implantation versus trabeculectomy. Am J Ophthalmol 151:507-513, 2011. 19) de Jong L, Lafuma A, Aguade AS, Berdeaux G: Five-year extension of a clinical trial comparing the EX-PRESS glaucoma filtration device and trabeculectomy in primary open-angle glaucoma. Clin Ophthalmol 5:527-533, 2011. 20) Traverso CE, De Feo F, Messas-Kaplan A, Denis P, Levartovsky S, Sellem E, et al:long term effect on IOP of a stainless steel glaucoma drainage implant (Ex-PRESS) in combined surgery with phacoemulsification. Br JOphthalmol 89:425-429, 2005. 21) Kanner EM, Netland PA, Sarkisian SR Jr, Du H: Ex-PRESS miniature glaucoma device implanted under a scleral flap alone or combined with phacoemulsification cataract surgery. J Glaucoma 18:488-491, 2009. 22) Wamsley S, Moster MR, Rai S, Alvim HS, Fontanarosa J:Results of the use of the Ex- PRESS miniature glaucoma implant in technically challenging, advanced glaucoma cases:a clinical pilot study. Am JOphthalmol 138:1049-1051, 2004. 23) Dahan E, Carmichael TR:Implantation of a miniature glaucoma device under a scleral flap. J Glaucoma 14:98-102, 2005.