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資料 2-1 粒子状物質の特性について 微小粒子状物質健康影響評価検討会報告を踏まえ 粒子状物質の特性 ( 粒径分布 化学組成 生成機構 発生源 ) について 整理を行った 粒子状物質は 他の大気汚染物質 (SO 2 NO 2 CO 及び有害大気汚染物質等 ) とは異なり 単独の化学物質ではなく 例えば硫酸塩 硝酸塩 有機化合物等から構成される混合物である このため 物理的 化学的な性質や発生源も様々であり 粒径や組成は広い範囲に亘る 粒子状物質の物理 化学的な特性として 粒径分布 化学組成 生成機構 発生源について述べる 1. 粒径分布環境大気中に存在する粒子は 燃焼で生成するもの 機械的な破砕で生成するもの 気体から粒子に変化したもの等 様々な生成過程を経たものの混合体であるため 広い範囲に粒径が分布し 大気中の粒子状物質の幾何学的粒径は 大部分が 0.001~100μmの範囲内にある 大気粒子は様々な密度や形状を有するので 粒径に関しての統一的取り扱いが必要となる 大気汚染粒子の粒径を表す単位として空気動力学径がある これは 対象粒子と同一の終末沈降速度を有する単位密度 (1g/cm 3 ) の球形粒子径をいう しかし 実際の粒子の形状と密度は様々であるため 粒径分布を考える場合 一般に単位密度 (1g/cm 3 ) の球形粒子と仮定して議論することが多く ここでもその様に仮定している PM 2.5 は 空気動力学径が 2.5μm 以下の粒子のことをいう 粒径分布にはモードと呼ばれる 3 つのピークが存在し 一般に 破砕過程において生成され 粗大粒子領域である 5~30μmにピークを持つ粗大粒子モード 凝縮や凝固によって形成され 0.15~0.5μmにピークを持つ蓄積モード また 主に燃焼過程から出る粒子で 微小粒子領域である 0.015~0.04μmにピークを持つ核形成モードがある ( 図 1.1.1) 個数濃度分布では 粒径が空気動力学径で 0.01μm 程度の所にピークを持つ単峰型分布を示す また 表面積濃度分布では 0.1μm 程度の所にピークを持つ単峰型分布を示し 質量 ( 体積 ) 濃度分布では 粒径が空気動力学径で1μm 付近に谷を持つ二峰型を示す ( 図 1.1.2) なお 質量 ( 体積 ) 濃度分布において 二つの峰のうち 粒径の大きい方が粗大粒子 小さい方が微小粒子に相当する 微小粒子よりさらに小さい粒子の定義については 研究領域により異なるが 道路沿道等を対象とした大気環境に関する分野 1

では 微小粒子のうち粒径が 0.1μm 以下の粒子を超微小粒子 ( Ultra-fine particles) さらに 0.05μm 以下の粒子をナノ粒子 ( Nano-particles) としている 図 1.1.1 大気粒子の粒径分布及び代表的な組成例 (Whitby (1978) に基づき作図 ) 2

体積 V/logDp(μm 3 /cm 3 ) 表面積 S/logDp(μm 2 /cm 3 ) 粒子数 N/logDp(N/cm 3 10 4 ) 粒径 D p (μm) 図 1.1.2 粒子状物質の粒子数 表面積濃度 体積 ( 質量 ) 濃度分布 (Whitby (1978)) 2 化学組成環境大気中に存在する粒子の化学組成は 無機成分 ( 硫酸アンモニウム ((NH 4 ) 2 SO 4 ) 硝酸アンモニウム(NH 4 NO 3 ) 塩化アンモニウム(NH 4 Cl) 等 ) 炭素成分 ( 有機炭素 (OC) 元素状炭素(EC) 炭酸塩炭素(CC) 等 ) 金属成分 土壌成分等に分類される 微小粒子 ( 超微小粒子 + 蓄積モード ) 及び粗大粒子それぞれの生成過程 成分 発生源等の比較について 表 1.2.1 に記す 3

表 1.2.1 微小粒子 ( 超微小粒子 + 蓄積モード粒子 ) と粗大粒子の比較 微小粒子 超微小粒子 蓄積モード粒子 粗大粒子 生成過程 燃焼 高温処理 大気反応 大きな固体 / 小滴の破壊 生成方法 核形成凝縮凝集 凝縮凝集粒子内又は粒子上での気体の反応気体が溶けて反応した霧と雲滴の蒸発 機械的崩壊 ( 破砕 粉砕 表面の擦過 ) しぶきの蒸発粉じんの浮遊粒子内外における気体との反応 成分 硫酸塩元素状炭素金属化合物大気温度での飽和蒸気圧がきわめて低い有機化合物 硫酸塩 硝酸塩 アンモニウム塩 酸性大気粒子元素状炭素多岐にわたる有機化合物金属 :Pb, Cd, V, Ni, Cu, Zn, Mn, Fe 等の化合物粒子結合水 浮遊土壌や街路の粉塵石炭 油 木材の非管理状態の燃焼によるフライアッシュ HNO 3 /HCl/SO 2 と粗大粒子の反応からの硝酸塩 / 塩化物 / 硫酸塩地殻元素の酸化物 (Si, Al, Ti, Fe) CaCO 3 CaSO 4 NaCl 海塩花粉 カビ 真菌胞子植物や動物の断片タイヤ ブレーキパット 道路摩耗破片 水への溶解度 おそらく蓄積モードより溶けない きわめてよく溶ける 吸湿性 融解性 ほとんど溶けない 非吸湿性 発生源 燃焼大気での SO 2 と一部の有機化合物の変化高温による変化 石炭 オイル ガソリン ディーゼル燃料 精錬 製鉄等の人為起源生物由来有機物 ( 例 : テルペン ) 等の自然起源 工場のばいじんと道路や街路土壌の再浮遊廃棄した土からの浮遊 ( 例 : 農業 鉱山 舗装してない道路 ) 生物起源 大気中での半減期数分から数時間数日から数週間数分から数時間 除去過程 蓄積モードに成長雨滴に拡散 雲滴を形成し 雨を降らす乾性沈着 落下による乾性沈着雨滴による洗浄 移動距離 < 1 km から数 10 km 数 100 km から数 1000 km < 1 km から数 10 km 出典 :Wilson と Suh (1997) から引用和訳 一部修正 無機粒子の代表的なものとして 硫酸塩粒子 硝酸塩粒子が挙げられる これと共に 海塩粒子や炭酸塩粒子がある 硫酸塩粒子 硝酸塩粒子は微小粒子領域に 海塩粒子や炭酸塩粒子は粗大粒子領域に多く含まれる 硝酸塩粒子は 温度 湿度に依存し ガス状と粒子状との間に異なった平衡状態が成立する 4

硫酸アンモニウム((NH 4 ) 2 SO 4 ) (NH 4 ) 2 SO 4 及び H(NH 4 )SO 4 の生成については SO 2 が大気中で水と反応するとともに 気相では OH ラジカルと反応し H 2 SO 3 や H 2 SO 4 となる 更に NH 3 と反応し 硫酸アンモニウム塩を形成する 大気粒子には H 2 SO 4 と硫酸塩が共存する NH 3 は SO 2 よりも 60 倍近く水に溶け易いので SO 2 が無ければ 水との反応などにより大気中から除去されるが H 2 SO 4 粒子がある場合には 硫酸アンモニウム塩となって長距離輸送される 硝酸アンモニウム(NH 4 NO 3 ) NO x は SO x に比べ 水との反応が 1/100 程度であるため 硫酸粒子とは挙動が異なる NO は O 3 や RO 2 ラジカルと反応し NO 2 になる 日中には 光解離して O 3 を発生させるが これと共に OH ラジカルと反応して NO 3 を形成する HNO 3 は 日中ばかりではなく夜間にも生成する この HNO 3 は NH 3 と反応して硝酸アンモニウム塩を形成する 硝酸アンモニウム塩は粒子であるが 温度が上がると再び HNO 3 と NH 3 になり ガスと粒子の間で可逆的に変化する 大気中に NaCl が存在する時は HNO 3 が反応して NaNO 3 粒子が生成し Cl は HCl となり沈着除去されるので粒子中にクロルロス ( ナトリウムに比べて塩素の比率が少ない粒子 ) が発生する 炭素成分には 化石燃料等の燃焼に伴って発生するほとんど炭素のみから構成されている炭素粒子と 未燃の燃料や潤滑油及びその不完全燃焼物質から構成される一次生成有機粒子 ならびに人為起源 ( トルエン等 ) 及び自然起源 ( テルペン類等 ) の揮発性有機化合物 (VOC) から光化学反応等に伴って形成される二次生成有機粒子 土壌やアスファルトの破砕 磨耗成分に含まれている炭酸塩に分類される 元素状炭素は主として微小粒子に 有機体炭素は燃焼起源の一次生成有機粒子ならびに光化学反応等による二次生成有機粒子として微小粒子に また 有機体炭素を含むタイヤ磨耗成分や花粉等は粗大粒子として存在している また ディーゼル排気粒子等に含まれている多環芳香族炭化水素やそのニトロ体等は炭素粒子等に付着して微小粒子や超微小粒子として存在している 粒子状物質に含まれる金属成分には Al Na Fe K Cu Pb Zn V Mn 等がある このうち Al は土壌粒子 Na は海塩粒子 Mn は鉄鋼工場 K は廃棄物焼却及び植物燃焼 V は石油燃焼の指標元素として知られており Zn は潤滑油の添加物に由来するとされている 土壌粒子や海塩粒子に含まれている成分は その成因から粗大粒子に分布しているが K や V 等の燃料燃焼起源の金属成分は 高温で揮発した後に凝縮粒子化したものであり 球形の微小粒子として存在している 5

微小粒子は 元素状炭素 有機体炭素 硫酸アンモニウム 硝酸アンモニウム 塩化アンモニウム 水溶性や吸湿性の高い成分との結合水等から構成されており その濃度や存在割合は都市部 後背地 交通量 季節等により大きく変化する しかし 粒子と気体との平衡が存在しない元素状炭素 硫酸塩等は 大気中での滞留時間が長いため微小粒子成分として普遍的に存在している 3. 生成機構排ガス中や発生源近傍では高濃度に存在するガス状物質 ( 分子 ) は 熱運動による衝突付着により 数個の分子が合体した集合体をつくる この集合体はその濃度に応じて さらに他の分子や集合体と衝突を繰り返し 次第にその大きさを増し 微小粒子へと変換する 反応の初期段階にあっては 粒子数は増加していくが やがて見かけ上新たな粒子生成はなくなり 粒子数のピークを迎え 粒子表面への分子の拡散付着や吸収による粒子成長へと変化していく この粒子生成機構には 気体からの新たな粒子生成である核形成 ( 均一核形成 ) 超微小粒子同士の凝集による粒子成長 既存粒子上の低揮発性物質の凝縮による粒子成長 ( 不均一核形成 ) 等あり 粒子数の増加 粒子数の減少 表面積の増加 粒子体積 ( 質量 ) の増加という粒子の発生から成長過程への変化と考えられる 一次粒子は 堆積物等の破砕や研磨等の細粒化や物の燃焼に伴って排出される 堆積物の破砕や研磨等による発生は粒径約 6μm を中心とした粗大粒子領域に分布している 一方 物の燃焼に伴って排出される場合は 粒径が約 2μm 以下の微小粒子領域に分布している 二次粒子は 固定発生源 移動発生源等における燃焼に伴って発生する SO x NO x HCl VOC 等のガス状物質が 主として大気中での化学反応により蒸気圧の低い物質に変化して粒子化したものである 二次粒子の前駆物質としては SO x NO x Cl 化合物 NH 3 VOC が挙げられる VOC は OH ラジカル O 3 等と化学反応を起こし 揮発性の低い含酸素有機化合物を生成し それらが自ら凝縮して新しい粒子が生成されたり または大気中にある既存粒子上に凝縮したりして 既存粒子が成長していく また VOC そのもの または上記の反応生成物質が既存の微小粒子に吸着または吸収され 粒子の表面上や粒子内部で化学反応を起こし さらに揮発性の低い有機化合物を生成することにより粒子を形成したり 既存粒子を変質させたりする 4. 発生源発生源としては 人為起源と自然起源に大別され 人為起源には 固定発生源 ( 工場 事業場等 ) と移動発生源 ( 自動車 船舶 航空機等 ) がある ( 図 1.4.1) 6

( 出典 : 国立環境研究所提供 ) 図 1.4.1 粒子状物質の発生源 固定発生源としては ボイラー 焼却炉等のばい煙を発生する施設や コークス炉 鉱物の堆積場等の粉じんを発生する施設等が挙げられる 移動発生源としては 自動車 船舶 航空機等が挙げられる 自然発生源としては 土壌粒子 海塩粒子 火山噴煙等がある 特に 四方を海に囲まれ 海岸線に沿って都市が発達しているわが国では 季節特有の風系により飛散する海塩粒子の影響に留意する必要がある 国外より越境移流する代表的な粒子状物質として 黄砂が挙げられる 中国内陸部のタクラマカン砂漠 ゴビ砂漠や高度高原等の乾燥 半乾燥地域で風によって巻き上げられた鉱物 土壌粒子は偏西風によって運ばれ しばしば日本にまで飛来する 日本においては 黄砂は一般的に 3 月 ~4 月に多く観測され 11 月にも観測される場合がある なお 長距離輸送過程において汚染気塊と混合され 黄砂粒子上に大気汚染物質を付着して運ばれる場合もある 7

参考文献 Whitby, K.T. (1978) The physical characteristics of sulfur aerosols Atmospheric Environment, 12, 135-159. Wilson, W.E. & Suh, H.H. (1997) Fine particles and coarse particles: concentration relationships relevant to epidemiologic studies. Journal of Air & Waste Management Association, 47, 1238-1249. 環境省. (2008) 微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書. 8