て稀である 小菱形骨は栄養血管が掌背側に数本ずつ存在しており骨壊死が起こりにくいとされている しかし 何らかの原因で背側の血行が阻害されれば本症例のように壊死は起こりうると考える 小児例ではリモデリング能が旺盛なため保存的治療で可能と報告されているが成人では血管柄付き骨移植術が有用と考える まとめ

Similar documents
Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

m A, m w T w m m W w m m w K w m m Ⅰはじめに 中手指節関節 以下 MP関節屈曲位でギプス固定を行い その直後から固定下で積極的に手指遠位指 節間関節 以下 DI P関節 近位指節間関節 以下 PI P関節の自動屈伸運動を行う早期運動療法 以下 ナックルキャストは

手指中節骨頚部骨折に対する治療経験 桐林俊彰 1), 下小野田一騎 1,2) 3), 大澤裕行 1) 了德寺大学 附属船堀整形外科 了德寺大学 健康科学部医学教育センター 2) 3) 了德寺大学 健康科学部整復医療 トレーナー学科 要旨今回, 我々は初回整復後に再転位を生じた右小指中節骨頚部骨折に対

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

(Carpus. Wikipedia Kienbock は外傷後の月状骨軟化症の X 線所見と臨床症状を詳細に報告した 彼は 外力により月状骨の血行が途絶 軟化 圧壊すると考えた 以来 Kienbock 病の病因に関しては大き

< AE8C608A4F89C836372D322E696E6462>

原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

結果 上記の運動の概念を得た 2010 年 10 月以降に治療を行った PIP 背側脱臼損傷 19 指のうち 6 指に ORIF を施行した 結果 PIP 関節伸展平均 -2 度 屈曲平均 96 度であった 考察 掌側板と側方支持機構や伸筋腱は吊り輪状に連結しており リンクした運動をしている PIP

となった 感染があり 手掌部の縫合部は変性していた 移植腱は今回も周囲との癒着はなかった 環指の FDS 腱を移行して現在術後 4 週程度で 自動屈曲はまずまず ケナコルトの副作用で腱断裂がある ケナコルト注射前には断裂の可能性をいっておいた方がよい ケナコルトの量や 頻度と断裂についてのエビデンス

Ⅰはじめに 中節骨基部掌側骨折掌側板付着部裂離骨折 はPI P関節の過伸展によって生じる外傷で 日常でしばし ばみられるPI P関節背側脱臼に合併して発生することや単なる捻挫と判断されるなど 見逃されること が多く 骨癒合不全による掌側不安定性 運動痛および関節拘縮を起こすことがあるこの骨折に対する

Microsoft PowerPoint - 【逸脱半月板】HP募集開始150701 1930 2108 修正反映.pptx

手関節骨折治療CI_f.indd

保存療法に抵抗する上腕骨内側上顆炎に対し手術療法を行った 3 例 表 1 症例のまとめ 症例 No 手術時年齢 患側 ( 利き腕 ) 右 ( 右 ) 両側 ( 右 ) 右 ( 右 ) 職業雑貨販売郵便局員運送業 スポーツ活動ゴルフ野球水泳 既往歴 高血圧症高脂血症 高

5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

整形外科手外科疾患診療の紹介 治療は軽症では手根管ブロック 装具治療 重症では手術を行います 手術には手根管開放術と母指対立再建術があります ほとんどの場合 神経の圧迫を取り除く 手根管開放術を行います 母指球筋の委縮があり つまみ動作が不自由な場合は母指対立再建術を同時に行います 手根管開放術 :

岐部の release で症状は消失した まとめ 1 矢状索の損傷を伴わない MP 関節における外傷性伸筋腱脱臼の 2 例症例を 報告した 2 示指伸筋腱の症例で診断のポイントは 示指の運動に伴い MP 関節背側 尺側に触れる弾発現象および MRI 所見であった 治療においては 側々縫合で 良好な成

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

TheShoulderJoint,2005;Vol.29,No.3: はじめに a 転位骨片を伴う関節窩骨折に対しては直視下に整復, 内固定を施行した報告が多いが, 鏡視下での整復固定の報告は比較的稀である. 今回我々は転位骨片を伴う関節窩骨折に腋窩神経麻痺を合併した1 例に対し,

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

rihabili_1213.pdf

27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

短縮転位 尺側転位が軽度であるが改善され た ( 写真 5) 2 週後短縮転位が確認された [ 症例 3 左橈骨遠位端骨折 ] 14 歳女性負傷日 H Pm01:00 初検日 H Pm05:20 原因 : 柔道大会で相手を投げた際 道着に巻き込み 相手に乗られ負傷 腫脹中

図表 リハビリテーション評価 患 者 年 齢 性 別 病 名 A 9 消化管出血 B C 9 脳梗塞 D D' E 外傷性くも幕下出血 E' 外傷性くも幕下出血 F 左中大脳動脈基始部閉塞 排尿 昼夜 コミュニ ケーション 会話困難 自立 自立 理解困難 理解困難 階段昇降 廊下歩行 トイレ歩行 病

第 26 回日本ハンドセラピィ学会学術集会プログラム 2014 年 4 月 19 日 ( 土 ) メイン会場 特別講演 Ⅰ 8:50 9:50 座長 : 渡邊政男 ( 特定医療法人誠仁会大久保病院リハビリテーション科 ) 末梢神経障害の保存療法の適応と限界 名古屋大学大学院運動形態外科学手外科 平田

がん登録実務について

000-はじめに.indd

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>

6PRS5-6-1_1210

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

第 43 回日本肩関節学会 第 13 回肩の運動機能研究会演題採択結果一覧 2/14 ページ / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学会 ポスター 運動解析 P / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

形成外科って何? 整形外科と同じ??? 美容外科のこと??? 形成外科とは 身体に生じた組織の異常や変形 欠損 あるいは整容的な不満足に対して あらゆる手法や特殊な技術を駆使し 機能のみならず形態的にもより正常に より美しくすることによって みなさまの生活の質 "Quality of Life" の

一般演題 ( 口述 )Ⅰ 橈骨遠位端骨折 14:40 15:40 メインホール 座長 : 井部光滋 ( 札幌徳洲会病院 ) O-Ⅰ-1 O-Ⅰ-2 O-Ⅰ-3 O-Ⅰ-4 O-Ⅰ-5 O-Ⅰ-6 橈骨遠位端骨折患者への視覚的フィードバックを用いた Dart-throwing motion の効果 -

両手 X 線のオーダー スクリーニング 両手正面 + 両手斜位


リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

018_整形外科学系

外傷性肩関節前方脱臼に対する理学療法の一例 外旋位固定による保存療法 松平兼一 1) 風間裕孝 1) 1) 富永草野クリニックリハビリテーション科 キーワード : 外傷性肩関節前方脱臼 外旋位固定 肩関節後上方組織 はじめに 外傷性肩関節脱臼では前方脱臼が 95% を占めており 受傷時に前下関節上腕

PDF_Œ{ٶPDF.pdf

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

の内外幅は考慮されず 側面像での高さのみで分類されているため正確な評価ができない O Driscoll は CT 画像を用いて骨片の解剖学的な位置に基づいた新しい鉤状突起骨折の分類を提案した この中で鉤状突起骨折は 先端骨折 前内側関節骨折 基部骨折 の 3 型に分類され 先端骨折はさらに 2mm

シンポジウム ハンドセラピィにおけるパフォーマンスの獲得 ~ 評価 分析における一考察 ~ 14:30~16:00 座長 : 岡野昭夫 ( 中部大学 ) 飯塚照史 ( 星城大学 ) S1 手のパフォーマンス評価の現状と課題新潟医療福祉大学藤目智博 S2 橈骨遠位端骨折術後の上肢パフォーマンスの向上に

<955C8E862E657073>

札幌鉄道病院 地域医療連携室だより           (1)

パンフレット

1)表紙14年v0

問題 5 55 歳の女性.5 年前に右肩関節周囲炎の既往がある. 約 1か月前に階段を踏みはずし右肩を強打した. 以来, 運動痛, 夜間痛が持続している. 肩関節は他動的に挙上可能であるが, 自動的には外側挙上は45 度までにとどまる 最も考えられる疾患名はどれか. 1. 五十肩 2. 上腕骨骨頭骨

1 8 ぜ 表2 入院時検査成績 2 諺齢 APTT ALP 1471U I Fib 274 LDH 2971U 1 AT3 FDP alb 4 2 BUN 16 Cr K4 O Cl g dl O DLST 許 皇磯 二 図1 入院時胸骨骨髄像 低形成で 異常細胞は認め

整形外科手外科センター長岡㟢真人先生に 手指の脱臼骨折に対する私の治療方針 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座形成再建外科学教授田中克己先生に Dupuytren 拘縮に対する薬物療法の変遷と酵素注射療法の現状 北海道大学大学院整形外科学教授岩崎倫政先生に RA 手関節に対する手術戦略


P26 3. 肩関節複合体の関節運動肩複合体の関節運動 P27 図 15 P28 4. 肩関節複合体の運動に関与する筋肩複合体の運動に関与する筋 P28 (2) 下制 3 行目 鎖骨下神経 鎖骨下筋神経 P28 下から 1 行目長筋神経長胸神経 P29 図 17 ( 誤 ) 2

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

< AE8C608A4F89C836362D322E696E6462>

肩関節第35巻第3号

頭頚部がん1部[ ].indd

小児大腿骨骨幹部骨折

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

PowerPoint プレゼンテーション

一般演題口述発表 Ⅰ QOL 14:40~15:30 座長 : 茶木正樹 ( 中日病院名古屋手外科センター ) O-Ⅰ-1 手外科疾患における疾患特異的 QOL 評価表の開発 - 橈骨遠位端骨折 - 一般社団法人日本ハンドセラピィ学会機能評価委員会桂理 O-Ⅰ-2 手外科疾患における疾患特異的 QO

syndrome と呼んだ 4) 典型的な神経所見から診断が比較的容易な症例もあるが 軽症例から重症例まで神経所見は多彩であり 臨床症状からだけでは診断に苦慮する症例も少なくない 3) 親指から薬指半分までの手のひらのシビレや痛みで特に夜間や手を使用した後に悪化する しびれは手を振ると改善するようで

本文/開催および演題募集のお知らせ

PowerPoint プレゼンテーション

2015 年度手術のうちわけ ( 実績 ) セキツイ脊椎 ナンブソシキ軟部組織 椎間板摘出術 35 アキレス腱断裂手術 40 内視鏡下椎間板摘出 4 腱鞘切開術 ( 関節鏡下によるものを含む ) 0 シュコンカン 脊椎固定術 椎弓切除術 椎弓形成術 ( 多椎間又は多椎弓の場合を含む )( 椎弓形成

3. 肘関節 屈曲 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩に近づく動き 伸展 : 基本軸は上腕骨 移動軸は橈骨 前腕が肩から遠ざかる動き 前腕は回外位で検査 肘関節伸展位 前腕回外位で前腕が橈側に偏位する ( 生理的外反肘 肘角 ) 他覚所見として外反( 内反 ) ストレス時疼痛 屈曲 ( 伸展

性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

第 129 回北海道整形外科外傷研究会 一般演題 14:30~14:45 座長 : 札幌徳洲会病院辻英樹先生 (1) 左下腿遠位部開放骨折 GustiloⅡ を受傷し 長期間の創外固定が施行された 症例の理学療法介入 札幌徳洲会病院理学療法士村田聡先生 主題 1: 橈骨遠位端骨折 14:45~15:

681 早期自立が望まれる,2) 積極的なリハビリの遂行は現実的でなく, 長期の固定は拘縮を誘発する危険性が高い,3) 骨脆弱性が術式選択に影響する, 等高齢者特有の問題を考慮しなければならない. 私達は matched ulna 変法による形成術を行っている. 対象 2003 年より現在まで同法を

BMP7MS08_693.pdf

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム


Transcription:

症例報告 1 C2-1. 環指の屈筋腱癒着と小指の回旋変形を呈した環小指基節骨骨折の 1 例金沢大学附属病院リハビリテーション部堀江翔金沢大学医薬保健研究域医学系多田薫 菅沼省吾 土屋弘行金沢大学医薬保健研究域保健学系西村誠次 目的 基節骨骨折後に生じた屈筋腱癒着と回旋変形に対し 段階的な手術とハンドセラピィを行い良好な結果を得た 1 例を経験したので報告する 方法 症例は 12 歳の女児で 跳び箱にて左中指 環指 小指の基節骨骨折を受傷した 前医にて経皮的鋼線刺入術を施行されたが 術後に環指の屈曲制限と小指の回旋変形を生じたため 受傷後 3 か月に当科を紹介受診された 環指は他動運動では可動域制限を認めなかったが 自動運動では DIP 関節は屈曲 25 PIP 関節は屈曲 20 に制限されていた 小指には可動域制限を認めなかったが 約 20 の回旋を認め環指と交叉していた 以上から環指の屈筋腱癒着と小指基節骨の回旋変形と診断した まず屈筋腱癒着に対するハンドセラピィを施行し 受診後約 2 か月で環指の屈筋腱剥離術を施行した 術後は夜間屈曲位固定を行った 環指の自動可動域が回復したことを確認し 屈筋腱剥離術後 6 か月時に小指基節骨の回旋変形に対し矯正骨切り術を行った 結果 初診より 2 年の現在 環指の可動域制限や指の交叉は認めず 小指 DIP および PIP 関節に 10 の伸展制限を認めるのみとなっている 考察 本例においては 1 矯正骨切り術に先んじて屈筋腱剥離術を施行した 2 屈筋腱剥離術後に夜間屈曲位固定を行った 点が議論の対象となる 起床時の訓練などについて十分に指導を行うことで 夜間屈曲位固定は治療の選択肢になり得ると考えられる C2-2. 小菱形骨無腐性壊死の1 例兵庫医科大学整形外科常深健二郎 田中寿一 高木陽平 大井雄紀兵庫医療大学リハビリテーション学部藤岡宏幸 目的 小菱形骨に生じた稀な無腐性壊死を経験したので報告する 症例 41 歳 女性 主訴は右手背部痛である 交通事故で受傷 近医を受診した 単純 X 線像で骨折は指摘されなかったが症状続いていたので他院を受診した 単純 X 線像で異常認めず経過観察となり 受傷後 3 ヶ月の単純 X 線像で異常を指摘され 当科紹介受診となる 右手舟状骨やや遠位に圧痛と腫脹を認め 単純レントゲン像では小菱形骨に骨硬化像を認めていた MRI は T1 T2 強調像ともに低輝度を認め 骨シンチで小菱形骨に集積を認めていた 以上より小菱形骨無腐性壊死と診断 壊死部の搔爬と血管柄付き骨移植術を行った 術中所見で小菱形骨は一部正常な海綿骨が残存していたが 全体的に骨硬化し 出血は見られなかった 壊死部を可及的に搔爬し 第 2 中手骨基部から牧野法に則り血管柄付き骨移植を行った 病理組織検査では骨壊死像を認めた 考察 キーンベック病やプライサー病は知られているが 小菱形骨の無腐性壊死は極め

て稀である 小菱形骨は栄養血管が掌背側に数本ずつ存在しており骨壊死が起こりにくいとされている しかし 何らかの原因で背側の血行が阻害されれば本症例のように壊死は起こりうると考える 小児例ではリモデリング能が旺盛なため保存的治療で可能と報告されているが成人では血管柄付き骨移植術が有用と考える まとめ 外傷を転帰に生じた小菱形骨無腐性壊死を報告した C2-2. 左橈骨遠位端骨折後に肘関節 手関節 指関節に拘縮を呈した一例社会福祉法人函館厚生院函館五稜郭病院リハビリテーション科小池拓馬 目的 左橈骨遠位端骨折後に重度の拘縮を呈した症例に対するセラピィを経験したので報告する. 方法 症例は 70 歳代前半女性.X-1 年 12 月に路上で転倒し受傷. 以後近医で cast 固定し保存的に加療していた.X 年 6 月に左肘関節 手関節 指関節拘縮の診断で当院紹介受診, 作業療法処方となった. セラピィ開始時の自動関節可動域 (ROM) は肘関節伸展 / 屈曲 =-45 /90, 手関節背屈 / 掌屈 =20 /25, 指の Total Active Motion(TAM) は平均 26 で健側比 %TAM は平均で 10.5% であった. 疼痛の訴えは無く,ADL 評価では HAND20 で 83 点であった. セラピィでは肘関節に対して屈曲位保持目的の夜間 splint, 指に対して MP 関節の屈曲矯正を図る目的で掌側 Cock-up splint にカフを付属したものを作製し装着を指導した. 渦流浴と超音波を用いた温熱療法を併用し, 肘関節から指の ROM-ex, ペグのつまみ練習を主として介入を継続した. 自宅での運動は簡便に出来る内容を厳選して指導し, 積極的な運動を促した. 結果 セラピィ開始後 10 か月で終了となり, セラピィ期間, 介入回数, 頻度はそれぞれ 42.3 週,195 回,4.6 回 / 週であった. セラピィ終了時の自動 ROM は肘関節伸展 / 屈曲 =-35 /115, 手関節背屈 / 掌屈 =30 /30, 指の TAM は平均 67 で %TAM は 27.3% であった. HAND20 では 47 点であり, つまみ動作や食事動作で改善が認められた. 考察 重度の拘縮を呈した症例に対する介入は, ニーズを詳細に調査し焦点を絞って介入する事で満足度の高い結果が得られると考えられる. しかし最も大切なのは重度の拘縮を呈さぬよう, 適切な初期治療により拘縮を予防する事である. C2-3.36 年前の熱傷後皮膚瘢痕拘縮手に対する瘢痕形成術後のセラピィ市立奈良病院リハビリテーション科藤末隆 雲丹亀直希市立奈良病院四肢外傷センター矢島弘嗣 河村健二 林智志 症例 70 歳女性 :36 年前に左手背部に熱傷を受傷し重度の皮膚性関節拘縮を来たした 母指以外ほぼ不動で MP 関節は 80~100 過伸展位 PIP 関節 90~100 屈曲位という異常な肢位で対立運動は不可であった 皮膚瘢痕部から有棘細胞癌 (SCC) を疑われた 手術は 1 期目に SCC 疑いのある部位の切除と関節授動術を行い 各 MP 関節を 20 屈曲位で鋼線固

定された 皮膚欠損部に対しては人工真皮を貼付された 2 期目は全層植皮術を施行された 初回手術から 6 週後に MP 関節固定の鋼線を抜去され 積極的な ROM 筋力訓練を実施し 同時に MP 関節の再過伸展防止のために MP 関節持続屈曲スプリントを作製した その後 物品把持へ繋げる為に全関節持続屈曲スプリントを作製した 術後 4 か月の時点で MP 関節 0~44 PIP 関節 -50~78 DIP 関節 0~20 と ROM の改善と自動運動が可能である DASH ( 術前 ) は Disability/symptom:30.0(50.8)Work:31.3(81.3) HAND20 は 60.5(81.3) と改善し 母指と示 中指間のつまみが可能となっている 考察 セラピィでは 浮腫を予防し固定関節以外の ROM 腱滑走 筋力訓練を行った 植皮部が安定し抜釘後からはスプリントを作製し 訓練と併用したことで ROM の拡大と軟部組織の短縮を防げたと考える 今まで物を押さえるだけの補助手からつまみ動作を獲得し ADL 家事動作への参加 効率化につながった 今後もセラピィを継続し useful hand の獲得に努めていきたい C2-4. 外側大腿回旋動脈横行枝からの穿通枝を血管柄とした前外側大腿皮弁京都大学医学部整形外科野口貴志 柿木良介 太田壮一 貝澤幸俊 秋吉美貴 松田秀一 目的 我々は 外側大腿回旋動脈横行枝より分枝した穿通枝を血管茎とした前外側大腿皮弁を2 例経験したので報告する 方法 症例 1は 58 才女性 交通事故外傷後の右前腕の筋挫滅と植皮による拘縮解除を目的に右前外側大腿皮弁を採取した 血管茎は外側広筋の筋膜上を中枢に走行し 外側大腿回旋動脈横行枝から分岐していた 横行枝を T 字型に採取し 前腕で橈骨動脈に縫合した 症例 2は 40 才男性 機械による左手部挫滅創を受け 近医受診した 直ちに左母指再接着を受け 手背部には植皮術をうけた 術後母指に骨髄炎を起こし また中指から小指の MP 関節の過伸展変形が発生し 当院紹介となった 母指には 第 2 足趾移植を施行した 中指から小指の変形には 手背植皮部を切除し 伸筋腱の切除 骨間筋切離を施行した 左大腿部で穿通枝を中枢にたどったところ 約 10cm 外側広筋の中を走行し 外側大腿回旋動脈横行枝から分岐していることが分かった 横行枝を T 字に採取し 前腕で尺骨動脈に縫合し 手背の皮膚欠損を被覆した 結果 両症例とも 皮弁は問題なく生着した 考察 前外側大腿皮弁の穿通枝は 大腿外側回旋動脈下行枝より分岐することが最も多いが 時に横行枝や 上行枝からの発生の報告が有る 我々は前外側大腿皮弁 14 症例中 2 例に外側大腿回旋動脈横行枝からの発生を経験しており まれではない前外側大腿皮弁の穿通枝と考えられる C2-5. 屈筋腱断裂一次縫合後の治療成績に及ぼす因子 相澤病院 櫻井利康 小林勇矢 山崎宏 小松雅俊

背景 屈筋腱断裂一次縫合後には入院での後療法が一般的だが, 近年は早期退院の要望が強い. 当院では自主訓練獲得を退院の判断材料にしている. 目的 入院期間, 治療成績に及ぼす因子を調査する. 研究デザイン 症例集積研究 対象 zoneⅠ Ⅱ 屈筋腱断裂に対して一時的縫合手術した患者 20 例 ; 平均年齢 41(16~72) 歳, 男 16, 女 4 例の 22 指. 方法 1 入院期間に関連した患者側因子を求めるため, 入院期間を目的変数として重回帰分析を行った. 説明変数は年齢, 性別, 利き手, 指列, 皮膚損傷, 両腱断裂, 労災とした. 方法 2 最終成績に関連した因子を求めるため, 最終評価時可動域 ( 健側比 ) を目的変数として重回帰分析を行った. 説明変数は前記の患者側因子と, 後療法因子としてリハビリ単位数, 後療法獲得時期 (Kleinert もしくは早期自動屈曲法, Duran 法, hook fist/flat fist, place&hold) として重回帰分析した. 結果 1 入院期間の関連因子は両腱断裂(p<0.01, 標準偏回帰係数 β=12), 皮膚損傷 (p<0.05, β=8.6) であった. 結果 2 最終評価時可動域の患者側関連因子は年齢(p<0.01,β=-0.5), 女性 (p<0.05,β =-11), 小指 (p=0.01,β=-12) であった. 後療法関連因子は 3~6 週での単位数 (p<0.05,β=0.5), Duran 法獲得時期 (p<0.05,β=-0.9) であった. 考察 患者因子のなかでも局所状態は, 入院期間に関連していたが成績には関連していなかった.3~6 週は退院後の外来期間にあたり, この期間の単位数が多いと最終成績が良好であった.Duran 法を早期に獲得し行えた症例で, 関節拘縮を防げたのではないかと思われた. C2-6. 小指 ZoneⅡ 屈筋腱損傷修復後の後療法と治療成績について名古屋第一赤十字病院リハビリテーション科清水亜衣 西川智子 志賀茜 堀米麻里子名古屋第一赤十字病院整形外科堀井恵美子 洪淑貴 目的 小指屈筋腱損傷は PIP 関節屈曲拘縮や握力低下をきたしやすく後療法に難渋しやすい. 今回 Synergistic Wrist Motion ex( 以下 SWM) を取り入れることで良好な成績が得られたので報告する. 方法 対象は 2011 年に小指 ZoneⅡ 屈筋腱損傷で腱縫合を行った 4 例 4 指 ( 男 2 例, 女 2 例, 平均年齢 32.5 歳 ), 後療法は術数日後より Kleinert 変法と SWM を実施した.4 7 12 週での小指および手関節可動域,7 12 週での握力を抽出し各々の推移について調べ,12 週での成績を Strickland の評価基準により分類した. 結果 小指平均 TAM(4/7/12) 週は (203/242/266) であり,PIP 関節伸展可動域は (-17.5/-14/-8) だった. 手関節可動域は 4 週で健側比 93.4%,7 週で Full だった. 握力 (7/12) 週は健側比 (65.4/87.2)% だった.Strickland の評価基準は優 4 例で,%TAM は 95.1% だった.

考察 SWM を術数日後に開始することにより, 指長の短い小指屈筋腱により大きな腱滑走を与えることができ, 癒着防止につながり, さらに早期に背屈可動域が改善でき, 効率的な自動屈曲が可能となったため, 良好な可動域および握力の回復につながったと考えられた. C2-7. 血管柄付き筋膜を使った有連続性有痛性神経腫の治療京都大学医学部整形外科貝澤幸俊 柿木良介 太田壮一 野口貴志 秋吉美貴 松田秀一 目的 我々は 外傷により有連続性の有痛性神経腫に対し 神経剥離 筋膜 wrapping により治療し 良好な疼痛の軽減を獲得したので報告する 方法 患者は 男性 4 名 女性 1 名 手術時年齢は 22 才 62 才 ( 平均 40 才 ) 損傷神経は 正中神経が3 例 橈骨神経枝が2 例であった 全例とも 損傷神経支配筋の筋力低下は無いか ごく軽微であり 神経支配域の知覚は正常か軽度低下であった 全例とも神経損傷部に強い Tinel s sign が有り 神経支配域に放散する電撃痛を訴えた 手術は 全例前腕掌側より採取した橈骨動脈からの穿通枝を血管茎とした有茎筋膜脂肪弁を採取した後 神経外剥離を行なった神経腫を筋膜脂肪弁で wrap した 術後の神経腫による疼痛の評価には Herndon の分類 (1976) を用いた 術後経過観察期間は 3-20 ヶ月 ( 平均 7.8 ヶ月 ) であった 結果 3 例で good, 2 例で excellent であった 考察 神経再生が比較的良好で強い Tinel s sign を呈する神経腫の治療には 神経縫合や移植は適応になりにくい 神経腫を周囲組織から剥離し 筋膜脂肪弁で wrap する方法は 神経腫から周囲組織への小径の軸索再生を抑制し 神経腫への機械的刺激を軽減すると考えられ 選択されるべき方法と考える