症例報告 1 C2-1. 環指の屈筋腱癒着と小指の回旋変形を呈した環小指基節骨骨折の 1 例金沢大学附属病院リハビリテーション部堀江翔金沢大学医薬保健研究域医学系多田薫 菅沼省吾 土屋弘行金沢大学医薬保健研究域保健学系西村誠次 目的 基節骨骨折後に生じた屈筋腱癒着と回旋変形に対し 段階的な手術とハンドセラピィを行い良好な結果を得た 1 例を経験したので報告する 方法 症例は 12 歳の女児で 跳び箱にて左中指 環指 小指の基節骨骨折を受傷した 前医にて経皮的鋼線刺入術を施行されたが 術後に環指の屈曲制限と小指の回旋変形を生じたため 受傷後 3 か月に当科を紹介受診された 環指は他動運動では可動域制限を認めなかったが 自動運動では DIP 関節は屈曲 25 PIP 関節は屈曲 20 に制限されていた 小指には可動域制限を認めなかったが 約 20 の回旋を認め環指と交叉していた 以上から環指の屈筋腱癒着と小指基節骨の回旋変形と診断した まず屈筋腱癒着に対するハンドセラピィを施行し 受診後約 2 か月で環指の屈筋腱剥離術を施行した 術後は夜間屈曲位固定を行った 環指の自動可動域が回復したことを確認し 屈筋腱剥離術後 6 か月時に小指基節骨の回旋変形に対し矯正骨切り術を行った 結果 初診より 2 年の現在 環指の可動域制限や指の交叉は認めず 小指 DIP および PIP 関節に 10 の伸展制限を認めるのみとなっている 考察 本例においては 1 矯正骨切り術に先んじて屈筋腱剥離術を施行した 2 屈筋腱剥離術後に夜間屈曲位固定を行った 点が議論の対象となる 起床時の訓練などについて十分に指導を行うことで 夜間屈曲位固定は治療の選択肢になり得ると考えられる C2-2. 小菱形骨無腐性壊死の1 例兵庫医科大学整形外科常深健二郎 田中寿一 高木陽平 大井雄紀兵庫医療大学リハビリテーション学部藤岡宏幸 目的 小菱形骨に生じた稀な無腐性壊死を経験したので報告する 症例 41 歳 女性 主訴は右手背部痛である 交通事故で受傷 近医を受診した 単純 X 線像で骨折は指摘されなかったが症状続いていたので他院を受診した 単純 X 線像で異常認めず経過観察となり 受傷後 3 ヶ月の単純 X 線像で異常を指摘され 当科紹介受診となる 右手舟状骨やや遠位に圧痛と腫脹を認め 単純レントゲン像では小菱形骨に骨硬化像を認めていた MRI は T1 T2 強調像ともに低輝度を認め 骨シンチで小菱形骨に集積を認めていた 以上より小菱形骨無腐性壊死と診断 壊死部の搔爬と血管柄付き骨移植術を行った 術中所見で小菱形骨は一部正常な海綿骨が残存していたが 全体的に骨硬化し 出血は見られなかった 壊死部を可及的に搔爬し 第 2 中手骨基部から牧野法に則り血管柄付き骨移植を行った 病理組織検査では骨壊死像を認めた 考察 キーンベック病やプライサー病は知られているが 小菱形骨の無腐性壊死は極め
て稀である 小菱形骨は栄養血管が掌背側に数本ずつ存在しており骨壊死が起こりにくいとされている しかし 何らかの原因で背側の血行が阻害されれば本症例のように壊死は起こりうると考える 小児例ではリモデリング能が旺盛なため保存的治療で可能と報告されているが成人では血管柄付き骨移植術が有用と考える まとめ 外傷を転帰に生じた小菱形骨無腐性壊死を報告した C2-2. 左橈骨遠位端骨折後に肘関節 手関節 指関節に拘縮を呈した一例社会福祉法人函館厚生院函館五稜郭病院リハビリテーション科小池拓馬 目的 左橈骨遠位端骨折後に重度の拘縮を呈した症例に対するセラピィを経験したので報告する. 方法 症例は 70 歳代前半女性.X-1 年 12 月に路上で転倒し受傷. 以後近医で cast 固定し保存的に加療していた.X 年 6 月に左肘関節 手関節 指関節拘縮の診断で当院紹介受診, 作業療法処方となった. セラピィ開始時の自動関節可動域 (ROM) は肘関節伸展 / 屈曲 =-45 /90, 手関節背屈 / 掌屈 =20 /25, 指の Total Active Motion(TAM) は平均 26 で健側比 %TAM は平均で 10.5% であった. 疼痛の訴えは無く,ADL 評価では HAND20 で 83 点であった. セラピィでは肘関節に対して屈曲位保持目的の夜間 splint, 指に対して MP 関節の屈曲矯正を図る目的で掌側 Cock-up splint にカフを付属したものを作製し装着を指導した. 渦流浴と超音波を用いた温熱療法を併用し, 肘関節から指の ROM-ex, ペグのつまみ練習を主として介入を継続した. 自宅での運動は簡便に出来る内容を厳選して指導し, 積極的な運動を促した. 結果 セラピィ開始後 10 か月で終了となり, セラピィ期間, 介入回数, 頻度はそれぞれ 42.3 週,195 回,4.6 回 / 週であった. セラピィ終了時の自動 ROM は肘関節伸展 / 屈曲 =-35 /115, 手関節背屈 / 掌屈 =30 /30, 指の TAM は平均 67 で %TAM は 27.3% であった. HAND20 では 47 点であり, つまみ動作や食事動作で改善が認められた. 考察 重度の拘縮を呈した症例に対する介入は, ニーズを詳細に調査し焦点を絞って介入する事で満足度の高い結果が得られると考えられる. しかし最も大切なのは重度の拘縮を呈さぬよう, 適切な初期治療により拘縮を予防する事である. C2-3.36 年前の熱傷後皮膚瘢痕拘縮手に対する瘢痕形成術後のセラピィ市立奈良病院リハビリテーション科藤末隆 雲丹亀直希市立奈良病院四肢外傷センター矢島弘嗣 河村健二 林智志 症例 70 歳女性 :36 年前に左手背部に熱傷を受傷し重度の皮膚性関節拘縮を来たした 母指以外ほぼ不動で MP 関節は 80~100 過伸展位 PIP 関節 90~100 屈曲位という異常な肢位で対立運動は不可であった 皮膚瘢痕部から有棘細胞癌 (SCC) を疑われた 手術は 1 期目に SCC 疑いのある部位の切除と関節授動術を行い 各 MP 関節を 20 屈曲位で鋼線固
定された 皮膚欠損部に対しては人工真皮を貼付された 2 期目は全層植皮術を施行された 初回手術から 6 週後に MP 関節固定の鋼線を抜去され 積極的な ROM 筋力訓練を実施し 同時に MP 関節の再過伸展防止のために MP 関節持続屈曲スプリントを作製した その後 物品把持へ繋げる為に全関節持続屈曲スプリントを作製した 術後 4 か月の時点で MP 関節 0~44 PIP 関節 -50~78 DIP 関節 0~20 と ROM の改善と自動運動が可能である DASH ( 術前 ) は Disability/symptom:30.0(50.8)Work:31.3(81.3) HAND20 は 60.5(81.3) と改善し 母指と示 中指間のつまみが可能となっている 考察 セラピィでは 浮腫を予防し固定関節以外の ROM 腱滑走 筋力訓練を行った 植皮部が安定し抜釘後からはスプリントを作製し 訓練と併用したことで ROM の拡大と軟部組織の短縮を防げたと考える 今まで物を押さえるだけの補助手からつまみ動作を獲得し ADL 家事動作への参加 効率化につながった 今後もセラピィを継続し useful hand の獲得に努めていきたい C2-4. 外側大腿回旋動脈横行枝からの穿通枝を血管柄とした前外側大腿皮弁京都大学医学部整形外科野口貴志 柿木良介 太田壮一 貝澤幸俊 秋吉美貴 松田秀一 目的 我々は 外側大腿回旋動脈横行枝より分枝した穿通枝を血管茎とした前外側大腿皮弁を2 例経験したので報告する 方法 症例 1は 58 才女性 交通事故外傷後の右前腕の筋挫滅と植皮による拘縮解除を目的に右前外側大腿皮弁を採取した 血管茎は外側広筋の筋膜上を中枢に走行し 外側大腿回旋動脈横行枝から分岐していた 横行枝を T 字型に採取し 前腕で橈骨動脈に縫合した 症例 2は 40 才男性 機械による左手部挫滅創を受け 近医受診した 直ちに左母指再接着を受け 手背部には植皮術をうけた 術後母指に骨髄炎を起こし また中指から小指の MP 関節の過伸展変形が発生し 当院紹介となった 母指には 第 2 足趾移植を施行した 中指から小指の変形には 手背植皮部を切除し 伸筋腱の切除 骨間筋切離を施行した 左大腿部で穿通枝を中枢にたどったところ 約 10cm 外側広筋の中を走行し 外側大腿回旋動脈横行枝から分岐していることが分かった 横行枝を T 字に採取し 前腕で尺骨動脈に縫合し 手背の皮膚欠損を被覆した 結果 両症例とも 皮弁は問題なく生着した 考察 前外側大腿皮弁の穿通枝は 大腿外側回旋動脈下行枝より分岐することが最も多いが 時に横行枝や 上行枝からの発生の報告が有る 我々は前外側大腿皮弁 14 症例中 2 例に外側大腿回旋動脈横行枝からの発生を経験しており まれではない前外側大腿皮弁の穿通枝と考えられる C2-5. 屈筋腱断裂一次縫合後の治療成績に及ぼす因子 相澤病院 櫻井利康 小林勇矢 山崎宏 小松雅俊
背景 屈筋腱断裂一次縫合後には入院での後療法が一般的だが, 近年は早期退院の要望が強い. 当院では自主訓練獲得を退院の判断材料にしている. 目的 入院期間, 治療成績に及ぼす因子を調査する. 研究デザイン 症例集積研究 対象 zoneⅠ Ⅱ 屈筋腱断裂に対して一時的縫合手術した患者 20 例 ; 平均年齢 41(16~72) 歳, 男 16, 女 4 例の 22 指. 方法 1 入院期間に関連した患者側因子を求めるため, 入院期間を目的変数として重回帰分析を行った. 説明変数は年齢, 性別, 利き手, 指列, 皮膚損傷, 両腱断裂, 労災とした. 方法 2 最終成績に関連した因子を求めるため, 最終評価時可動域 ( 健側比 ) を目的変数として重回帰分析を行った. 説明変数は前記の患者側因子と, 後療法因子としてリハビリ単位数, 後療法獲得時期 (Kleinert もしくは早期自動屈曲法, Duran 法, hook fist/flat fist, place&hold) として重回帰分析した. 結果 1 入院期間の関連因子は両腱断裂(p<0.01, 標準偏回帰係数 β=12), 皮膚損傷 (p<0.05, β=8.6) であった. 結果 2 最終評価時可動域の患者側関連因子は年齢(p<0.01,β=-0.5), 女性 (p<0.05,β =-11), 小指 (p=0.01,β=-12) であった. 後療法関連因子は 3~6 週での単位数 (p<0.05,β=0.5), Duran 法獲得時期 (p<0.05,β=-0.9) であった. 考察 患者因子のなかでも局所状態は, 入院期間に関連していたが成績には関連していなかった.3~6 週は退院後の外来期間にあたり, この期間の単位数が多いと最終成績が良好であった.Duran 法を早期に獲得し行えた症例で, 関節拘縮を防げたのではないかと思われた. C2-6. 小指 ZoneⅡ 屈筋腱損傷修復後の後療法と治療成績について名古屋第一赤十字病院リハビリテーション科清水亜衣 西川智子 志賀茜 堀米麻里子名古屋第一赤十字病院整形外科堀井恵美子 洪淑貴 目的 小指屈筋腱損傷は PIP 関節屈曲拘縮や握力低下をきたしやすく後療法に難渋しやすい. 今回 Synergistic Wrist Motion ex( 以下 SWM) を取り入れることで良好な成績が得られたので報告する. 方法 対象は 2011 年に小指 ZoneⅡ 屈筋腱損傷で腱縫合を行った 4 例 4 指 ( 男 2 例, 女 2 例, 平均年齢 32.5 歳 ), 後療法は術数日後より Kleinert 変法と SWM を実施した.4 7 12 週での小指および手関節可動域,7 12 週での握力を抽出し各々の推移について調べ,12 週での成績を Strickland の評価基準により分類した. 結果 小指平均 TAM(4/7/12) 週は (203/242/266) であり,PIP 関節伸展可動域は (-17.5/-14/-8) だった. 手関節可動域は 4 週で健側比 93.4%,7 週で Full だった. 握力 (7/12) 週は健側比 (65.4/87.2)% だった.Strickland の評価基準は優 4 例で,%TAM は 95.1% だった.
考察 SWM を術数日後に開始することにより, 指長の短い小指屈筋腱により大きな腱滑走を与えることができ, 癒着防止につながり, さらに早期に背屈可動域が改善でき, 効率的な自動屈曲が可能となったため, 良好な可動域および握力の回復につながったと考えられた. C2-7. 血管柄付き筋膜を使った有連続性有痛性神経腫の治療京都大学医学部整形外科貝澤幸俊 柿木良介 太田壮一 野口貴志 秋吉美貴 松田秀一 目的 我々は 外傷により有連続性の有痛性神経腫に対し 神経剥離 筋膜 wrapping により治療し 良好な疼痛の軽減を獲得したので報告する 方法 患者は 男性 4 名 女性 1 名 手術時年齢は 22 才 62 才 ( 平均 40 才 ) 損傷神経は 正中神経が3 例 橈骨神経枝が2 例であった 全例とも 損傷神経支配筋の筋力低下は無いか ごく軽微であり 神経支配域の知覚は正常か軽度低下であった 全例とも神経損傷部に強い Tinel s sign が有り 神経支配域に放散する電撃痛を訴えた 手術は 全例前腕掌側より採取した橈骨動脈からの穿通枝を血管茎とした有茎筋膜脂肪弁を採取した後 神経外剥離を行なった神経腫を筋膜脂肪弁で wrap した 術後の神経腫による疼痛の評価には Herndon の分類 (1976) を用いた 術後経過観察期間は 3-20 ヶ月 ( 平均 7.8 ヶ月 ) であった 結果 3 例で good, 2 例で excellent であった 考察 神経再生が比較的良好で強い Tinel s sign を呈する神経腫の治療には 神経縫合や移植は適応になりにくい 神経腫を周囲組織から剥離し 筋膜脂肪弁で wrap する方法は 神経腫から周囲組織への小径の軸索再生を抑制し 神経腫への機械的刺激を軽減すると考えられ 選択されるべき方法と考える