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課題名生体超分子チトクロム酸化酵素の高分解能 X 線構造解析課題番号 2006B1683 利用ビームライン BL41XU 大阪大学蛋白質研究所所属博士後期過程 2 年菅倫寛 目的および背景生物は好気的条件下では呼吸によってエネルギーを得ている ミトコンドリア内では ATP の合成が 40% 以上という極めて高いエネルギー変換効率で行われている チトクロム酸化酵素はミトコンドリア内の呼吸鎖末端に位置する巨大膜蛋白質で このエネルギー産生を担う精密に制御された分子装置である チトクロム酸化酵素は呼吸から得た酸素分子を水分子に還元し それに伴ってプロトンをマトリクス側から膜間空間へとポンプする このプロトンの能動輸送によって形成されるプロトンの濃度勾配は ATP 合成酵素を駆動させ ATP が合成される 本酵素は 1995 年に我々のグループによって世界で初めてその X 線立体構造が解明され 今も精力的に世界中で研究されている 本酵素の現在の最大の争点はそのプロトンパスにある 酸素が水分子に還元される際に消費されるプロトンと能動輸送されるプロトンとがそれぞれどこを通って運ばれてくるのか また本酵素内のヘムで引き起こされる酸化還元反応がどのようにしてプロトンポンプを駆動させるのか これらの問いに対する多くの実験的証拠を我々は X 線構造解析から得ている プロトンポンプのメカニズムを完全に解明するには ポンピングに寄与するカルボキシル基とヒスチジン鎖のプロトン化 脱プロトン化状態を直接判別することが最も直接的で説得力がある ただし分子量限界と蛋白質を構成するサブユニット数の多さから中性子線結晶構造解析や FTIR での判別は不可能である そこで本研究では X 線構造解析を用いて これらのアミノ酸の水素原子の電子密度を直接観測することを目的としている この研究の直面している最大の問題点は その研究内容が X 線構造解析から得られたデータの分解能に律速されてしまうことである 我々は酸化型構造で 1.8A, 還元型構造で 1.9A と膜蛋白質としては高い分解能の構造を得ることに成功しているが 水素原子の電子密度は大変小さいのでこの分解能では不十分である 本課題では X 線データの収集方法と処理方法を検討することによって高分解能 高精度のデータを収集することを目的としている 今回の実験では BL41XU の特性を活かし 波長 0.5A での高エネルギーでデータ収集を行った 高エネルギー下では空気や蛋白質結晶まわりのバッファーによる散乱の効果が小さくなるのでバックグラウンドの低いデータの収集が期待できる また水素原子の原子散乱因子は非水素原子と比べると低分解能側の寄与が大きいため 水素原子の電子密度を観測するためには低分解能データは特に高精度で収集する必要がある そこで本課題では低分解能データの収集方法と処理方法についても検討した - 194 -

実験 解析方法実験は全て BL41XU で行った 初めに波長 0.5A 1.0A の条件化で適切な露光時間をそれぞれ決定した ( 表 1) 続いて同一の結晶を用いてそれぞれの波長を用いてデータを収集し そのデータの統計値を比較した ( 表 2) データの解析は HKL2000/Scalepack と XDS を用いた 低角データの処理方法に関しては HKL2000 を用いて積分したデータのスケーリングにプロファイルフィッティング行う場合と行わない場合でのスケール後の統計値を比較した スケーリングには Scalepack を用いた 結果高エネルギー測定 (0.5Å) 通常測定(1.0Å) の実験条件とその統計値は以下の通りである < 表 1> 高エネルギー実験時の実験条件 high energy standard detector ccd (adsc Q315) ccd (adsc Q315) wavelength / Å 0.5 1.0 oscillation range / degree 0.3 0.3 number of images 450 450 camera distance / mm 550 250 exposure time / s 1.0 1.0 attenuator (µm) 650 150 < 表 2> 高エネルギー実験結果の統計値 high energy (0.5A data) resolution I/sigma Rmerge Completeness Chi*2 reflections Redundancy 200-3.88 26.95 0.069 96.0 2.1 60,388 5.7 3.88-3.08 15.64 0.115 97.3 1.4 60,076 5.6 3.08-2.69 6.82 0.204 97.8 0.8 60,063 5.4 2.69-2.44 3.60 0.362 97.9 0.7 60,062 5.1 2.44-2.27 2.02 0.493 97.1 0.7 59,464 4.0 2.27-2.13 1.27 0.529 84.6 0.7 51,683 2.4 2.13-2.03 0.93 0.527 55.4 0.8 33,817 1.6 2.03-1.94 0.71 0.517 28.5 0.7 17,412 1.3 1.94-1.86 0.52 0.569 13.0 0.8 7,908 1.1 1.86-1.80 0.27 0.742 4.8 0.6 2,923 1.1 200-1.80 8.69 0.120 67.4 1.2 413,796 4.3-195 -

standard (1.0A data) resolution I/sigma Rmerge Completeness Chi*2 reflections Redundancy 200-3.88 30.84 0.041 99.7 0.7 62,672 5.5 3.88-3.08 21.77 0.089 99.9 1.4 61,685 5.4 3.08-2.69 11.19 0.126 99.9 0.7 61,414 5.2 2.69-2.44 6.25 0.212 99.9 0.6 61,258 5.1 2.44-2.27 3.75 0.322 99.9 0.6 61,194 4.8 2.27-2.13 2.30 0.406 98.8 0.6 60,389 3.7 2.13-2.03 1.42 0.466 85.0 0.6 51,864 2.5 2.03-1.94 0.91 0.521 54.6 0.6 33,296 1.7 1.94-1.86 0.66 0.657 27.3 0.6 16,676 1.2 1.86-1.80 0.28 0.000 10.0 0.5 6,097 1.1 11.62 0.087 77.6 0.8 476,545 4.3 高エネルギーで得られたイメージは溶媒やループなどの散乱の効果が減少しているため 1.0Å で測定した通常のデータに比べるとイメージ上のバックグラウンドは低下した 得られたデータの分解能は高エネルギーで 2.2Å 通常データでは 2.0Å であった 高エネルギー下でデータ収集を行うことで分解能の向上させることはできなかった 続いて低角データの実験とスケール後の統計値を示す < 表 3> 低分解能データ収集時の実験条件 low resolution detector ccd (adsc Q315) wavelength / Å 1.0 oscillation range / degree 0.3 number of images 300 camera distance / mm 500 exposure time / s 1.0 attenuator (µm) 1100-196 -

< 表 4> 低分解能データのスケール後の統計値 profile fitting あり resolution I/sigma Rmerge Completeness chi*2 reflections Redundancy 200-10.77 29.5 0.043 86.8 2.2 2,781 4.0 10.77-8.55 30.0 0.034 89.6 1.0 2,729 4.1 8.55-7.47 28.7 0.041 90.5 1.1 2,735 4.1 7.47-6.79 27.1 0.056 91.6 1.5 2,747 4.1 6.79-6.30 25.8 0.060 91.8 1.5 2,733 4.0 6.30-5.93 25.5 0.054 92.3 1.2 2,716 4.0 5.93-5.63 24.5 0.047 92.5 0.9 2,760 4.0 5.63-5.39 25.1 0.042 93.1 0.8 2,753 4.0 5.39-5.18 25.6 0.038 93.1 0.8 2,763 4.0 5.18-5.00 26.1 0.038 93.1 0.7 2,735 4.0 200-5.00 27.5 0.048 91.4 1.2 27,452 4.0 profile fitting なし resolution I/sigma Rmerge Completeness chi*2 reflections Redundancy 200-10.77 27.8 0.027 85.6 0.7 2,743 3.8 10.77-8.55 28.9 0.029 89.3 0.8 2,720 3.8 8.55-7.47 27.7 0.037 90.1 1.0 2,721 3.8 7.47-6.79 26.5 0.048 91.1 1.4 2,733 3.9 6.79-6.30 25.6 0.052 91.5 1.4 2,722 3.9 6.30-5.93 25.1 0.050 91.9 1.3 2,703 3.9 5.93-5.63 23.9 0.047 92.3 1.2 2,753 3.9 5.63-5.39 24.5 0.044 93.0 1.1 2,749 3.9 5.39-5.18 25.0 0.039 92.8 0.9 2,754 3.9 5.18-5.00 25.4 0.038 93.1 0.9 2,734 3.9 200-5.00 26.5 0.038 91.0 1.1 27,332 3.9 Profile fitting を使用しない方が低分解能データの統計は良かった 高分解能データになるにつれて profile fitting を使用した方が統計は良くなった 反射のばらつき (chi*2: Chi**2=SUM ( (I - <I>) ** 2) / (Error ** 2 * N / (N-1) ) ) で定義 ) も統計値と同じ傾向が見られた 観測された反射の数は profile fitting を使用した方が少しだけ多かった - 197 -

考察今回の実験において高エネルギー下でのデータ収集によって分解能を上げることはできなかったがその原因として以下の 2 点が挙げられる 1 つは高エネルギーではフォトンのフラックスが高いために X 線による損傷が顕著に起きていたこと もう 1 つは 0.5Å の波長の場合よりも 1.0Å の波長の場合の方が検出器の感度が高いということである X 線損傷の問題は結晶の冷却に N 2 ガスの代わりに He ガスを用いることで緩和できることを実験的にすでに確認している 今回の実験では波長以外の条件をできる限り揃えて比較するために 1 つの結晶を用いてデータ収集を行ったが 複数の結晶を用いることで X 線損傷の問題を完全に克服できる可能性は十分にある 幸いにも同型性の高い結晶を大量に準備することが可能であるので複数の結晶を用いたデータ収集も検討したい 低角データの収集には profile fitting を使用せずにスケーリングを行う方が有効であることがわかった profile fitting を使用するスケーリングはプログラム側の推奨している方法であるが低角のデータの処理には不向きであることが示唆された その理由として profile fitting は低強度の反射や部分反射の処理には向いているが 強度の強い反射ではプロファイルを合わせる必要がない あるいはプロファイルを合わせてもうまく合わないということが考えられる 今回の実験はプログラム側の推奨する設定を外した方が精度の良いデータを収集できた例の1つである この他にもプログラムの使用方法の工夫次第で今よりも精度の良いデータを得ることができる可能性がある 謝辞本課題は月原冨武教授の指導のもとで行われた 月原冨武教授に感謝します また結晶を準備していただいた伊藤 - 新澤恭子先生 吉川信也教授にも感謝します 実験のサポートをしていただいた BL41XU のビームラインスタッフの方 平田邦夫氏にも感謝します - 198 -