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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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博第265号

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解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

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2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

報道関係者各位

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第6号-2/8)最前線(大矢)

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博士学位論文 内容の要旨及び論文審査結果の要旨 第 11 号 2015 年 3 月 武蔵野大学大学院

平成 2 3 年 2 月 9 日 科学技術振興機構 (JST) Tel: ( 広報ポータル部 ) 慶應義塾大学 Tel: ( 医学部庶務課 ) 腸における炎症を抑える新しいメカニズムを発見 - 炎症性腸疾患の新たな治療法開発に期待 - JST 課題解決型基

ヒト胎盤における

骨形成における LIPUS と HSP の関係性が明らかとなった さらに BMP シグナリングが阻害されたような症例にも効果的な LIPUS を用いた骨治癒法の提案に繋がる可能性が示唆された < 方法 > 10%FBS と 抗生剤を添加した α-mem 培地を作製し 新生児マウス頭蓋骨採取骨芽細胞を

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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 21 年 6 月 2 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :26 ~ 28 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 炭酸ガスおよび半導体レーザーによるオーラルアンチエイジング 研究課題名 ( 英文 ) Oral an

結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

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ス化した さらに 正常から上皮性異形成 上皮性異形成から浸潤癌への変化に伴い有意に発現が変化する 15 遺伝子を同定し 報告した [Int J Cancer. 132(3) (2013)] 本研究では 上記データベースから 特に異形成から浸潤癌への移行で重要な役割を果たす可能性がある

Peroxisome Proliferator-Activated Receptor a (PPARa)アゴニストの薬理作用メカニズムの解明

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長期/島本1

平成14年度研究報告

ウシの免疫機能と乳腺免疫 球は.8 ~ 24.3% T 細胞は 33.5 ~ 42.7% B 細胞は 28.5 ~ 36.2% 単球は 6.9 ~ 8.9% で推移し 有意な変動は認められなかった T 細胞サブセットの割合は γδ T 細胞が最も高く 43.4 ~ 48.3% で CD4 + T 細

4. 発表内容 : 1 研究の背景超高齢社会を迎えた日本では 骨粗しょう症の患者数は年々増加しつつあり 1300 万人と 推測されています 骨粗しょう症では脊椎や大腿骨を骨折しやすくなり その結果 寝たきり に至ることも多く 患者の生活の質 (QOL) を著しく低下させるため その対策が重要な課題

平成24年7月x日

第一章自然免疫活性化物質による T 細胞機能の修飾に関する検討自然免疫は 感染の初期段階において重要な防御機構である 自然免疫を担当する細胞は パターン認識受容体 (Pattern Recognition Receptors:PRRs) を介して PAMPs の特異的な構造を検知する 機能性食品は

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

研究の背景 1 細菌 ウイルス 寄生虫などの病原体が人体に侵入し感染すると 血液中を流れている炎症性単球注と呼ばれる免疫細胞が血管壁を通過し 感染局所に集積します ( 図 1) 炎症性単球は そこで病原体を貪食するマクロファ 1 ージ注と呼ばれる細胞に分化して感染から体を守る重要な働きをしています

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

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現し Gasc1 発現低下は多動 固執傾向 様々な学習 記憶障害などの行動異常や 樹状突起スパイン密度の増加と長期増強の亢進というシナプスの異常を引き起こすことを発見し これらの表現型がヒト自閉スペクトラム症 (ASD) など神経発達症の病態と一部類することを見出した しかしながら Gasc1 発現

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学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 論文題目 主査 荒川真一 御給美沙 副査木下淳博横山三紀 Thrombospondin-1 Production is Enhanced by Porphyromonas gingivalis Lipopolysaccharide in THP-1 Cells ( 論文の内容の要旨 ) < 要旨 > 歯周炎はグラム陰性嫌気性細菌によって引き起こされる慢性炎症性疾患であり 特に Porphyromonas gingivalis(p. gingivalis) は主要な歯周病原細菌として知られている 本研究では DNA マイクロアレイによる網羅的解析により P. gingivalis LPS 刺激によりヒト単球系細胞 THP-1 から Thrombospondin-1(TSP-1) の発現が亢進することに注目した TSP-1 は多機能な細胞外マトリックスタンパク質であり 炎症過程において発現が上昇することが知られている また過去の研究から TSP-1 がリウマチ性関節炎 糖尿病 破骨細胞形成などに関与し 炎症部位における免疫応答調節を担うことが報告されている しかし歯周炎における TSP-1 発現や 単球系細胞における TSP-1 発現には不明な点が多い そこで 本研究では歯周炎組織における TSP-1 の発現を調べるとともに THP-1 における P. gingivalis LPS 刺激による TSP-1 産生機構に関する研究を行った その結果 歯周炎における炎症性歯肉組織と P. gingivalis LPS で刺激した THP-1 において TSP-1 mrna の有意な発現上昇が認められた また この TSP-1 発現は TLR2 に依存し NF-κB シグナルを活性化した さらに IL-17F により相乗的な発現亢進がみられた 以上の結果より TSP-1 が歯周炎の進行および慢性化に関与している可能性が示され 歯周治療における新たなターゲット分子となる可能性が示唆された < 緒言 > 歯周炎はグラム陰性嫌気性細菌によって引き起こされる慢性炎症性疾患である 歯周炎局所では細菌性刺激からの免疫応答により炎症が生じ 歯周支持組織破壊や歯槽骨吸収を経て 歯の喪失を招く 歯周病原細菌の中でも P. gingivalis は慢性歯周炎と強い関連が報告され 疾患進行において重要な役割を担っている P. gingivalis は線毛 ジンジパイン 外膜タンパクなどの病原性因子を保持しているが 特に P. gingivalis LPS は歯周炎の疾患進行における重要な刺激因子であり TLR2 や TLR4 を介して自然免疫系の活性化を促すことが報告されている 歯周炎では 歯周ポケットにおいて好中球が最初の防御を行うが 細菌の侵入に続いて単球やリンパ球が動員され 疾患が重症 慢性化する 歯周炎では歯周病原細菌に対する宿主応答の過程において 単球が重要な役割を担っている TSP-1 は多機能細胞外マトリックスタンパクであり トロンビン感受性タンパクとしてヒト血小板から最初に単離された TSP-1 は血管内皮細胞 線維芽細胞 好中球 単球 マクロファージなどから分泌され 細胞表面受容体 特異的ドメインとの相互作用により 様々な生物学的効果を持つ CD36 と結合すると血管新生抑制などの抗炎症性作用を呈する また インテグリンや CD47 と結合することで T 細胞を活性化し 炎症性サイトカインと RANKL 発現を誘導し 局所の炎症と骨破壊を引き起こす さらに TGF-β 活性調節を介して 創傷治癒 細胞増殖 細胞分化 サイトカイン応答を制御している これらの現象は 歯周炎の特徴である組織炎症や歯槽骨吸収に関連している可能性が高い TSP-1 が炎症過程に関与する報告は多くあるが 歯周炎における発現や P. gingivalis との関連は不明である 本研究では P. gingivalis LPS で刺激した単球における mrna 発現変動を網羅的に解析し その結果 発現亢進がみられた TSP-1 に着目した この TSP-1 の歯周炎歯肉組織における発現を評価し 歯周病原細菌による TSP-1 発現調節について検討することを目的とした -2 -

< 方法 > 細胞はヒト白血病患者由来単球系細胞のセルラインである THP-1 と PMA で処理しマクロファージ化した THP-1 を用いた 刺激因子として P. gingivalis LPS Pam2CSK4(TLR2 ligand) E. coli LPS (TLR4 ligand) 共刺激因子として IL-4, IFN-γ, IL-17A, IL-17F を用いた また TLR2 中和抗体 TLR4 中和抗体 NF-κB 阻害剤である MG-132 を用いた ヒト歯肉組織は歯周病外来における歯周外科手術時に切除された炎症性歯肉組織および炎症のない口蓋歯肉組織を用いた DNA マイクロアレイを使い P. gingivalis LPS で刺激した THP-1 から mrna を抽出し 解析した また細胞と歯肉組織からの TSP-1 発現について real-time RT-PCR によって mrna 発現を ELISA によってタンパク産生を調べた いずれも本学歯学部倫理審査委員会の承認を得て行われた < 結果 > P. gingivalis LPS で刺激した THP-1 の DNA マイクロアレイを行った結果 25,369 の遺伝子のうち 134 の遺伝子がコントロールと比べて 10 倍以上の発現亢進が認められ その中で TSP-1 に着目した TSP-1 mrna 発現を歯周炎の局所組織で調べたところ 歯周ポケットの深い歯肉組織では ポケットの浅い歯肉組織や健康歯肉組織に比べて有意な発現上昇が認められた THP-1 とマクロファージ化した THP-1 に対し P. gingivalis LPS で刺激したところ 濃度依存的な発現亢進と刺激 4 時間後での発現ピークが認められた 次に THP-1 を TLR2 ligand と TLR4 ligand で刺激したところ いずれでも TSP-1 産生が認められた P. gingivalis LPS 刺激時に TLR2 中和抗体を使用したところ TSP-1 産生は抑制された さらに MG-132 でも TSP-1 産生は抑制された これらの結果から THP-1 からの P. gingivalis LPS 刺激による TSP-1 産生は TLR2 を介し さらに下流の NF-κB シグナルに依存していることが示された また P. gingivalis LPS とともに IL-4, IFN-γ, IL-17A, IL-17F で刺激したところ いずれの場合も P. gingivalis LPS 単独に比べて TSP-1 産生が有意に亢進し 特に TL-17F 共刺激により TSP-1 発現増加が認められた < 考察 > 本研究では DNA マイクロアレイの解析結果から 歯周炎において過去に報告のない TSP-1 に着目し研究を行った 歯周炎局所での TSP-1 発現は 歯周ポケットの深い炎症性歯周組織において高発現が認められた一方 健康な組織ではほとんど認められなかった また P. gingivalis LPS が濃度依存的に TSP-1 産生を亢進していたことから 炎症性歯肉組織においては P. gingivalis の増加に従い TSP-1 の発現亢進が促されている可能性が考えられる 過去には 損傷組織や炎症部位で TSP-1 が発現亢進しているという報告がある TSP-1 は強い抗血管新生作用を持ち 慢性炎症に影響を与えると考えられている 一方 TSP-1 欠損マウスの研究では 肺炎が継続化することや 自己免疫性ぶどう膜網膜炎モデルでも疾患が重症化することが報告されている これは TSP-1 に抗炎症性 炎症性の両メカニズムが存在していることを示している TSP-1 は CD36 CD47 インテグリンなどの受容体と結合することで 多機能性を持つとされる 歯周炎局所においても P. gingivalis LPS による TSP-1 産生は 歯周組織の炎症や RANKL 関連歯槽骨吸収の調節に関与している可能性がある 本研究では P. gingivalis LPS だけでなく Pam2CSK4 や E. coli LPS 刺激でも THP-1 において TSP-1 発現を促進した TSP-1 発現は TLR2 中和抗体で抑制され TLR4 中和抗体では抑制されなかった P. gingivalis LPS はその特有なリピド A 構造によって TLR2 と TLR4 の両経路を用いるという報告もある また P. gingivalis LPS に関しては E. coli LPS に比べ TLR4 に依存しないという報告もある 今回の結果から P. gingivalis LPS の THP-1 における TSP-1 発現に関しては TLR2 が主要な経路であり TLR2 の下流の NF-κB 経路に依存していると考えられる 本研究では P. gingivalis LPS と特に IL-17F との共刺激が THP-1 における TSP-1 発現を亢進させた TSP-1 は TGF-β 活性化作用を有することから Th17 分化に密接に関与している しかし TSP-1 発現は IL-17F 単独では増加しなかったことから IL-17F は TLR2 の下流経路に作用する可能性が考えられる 歯周組織においては サイトカインとの相互作用により TSP-1 は炎症増悪に相乗的な効果を持つ可能性がある これは 歯周組織の破壊のメカニズムを知る上で重要な情報になり得る < 結論 > P. gingivalis LPS 刺激における THP-1 また歯周炎における炎症性歯肉組織において TSP-1 産生 -3 -

が亢進することが明らかとなった TSP-1 が歯周炎の進行において 病態を修飾する因子として 重要な役割をもつ可能性が示唆された -4 -

論文審査の要旨および担当者 報告番号甲第 4960 号御給美沙 論文審査担当者 論文題目 主査 荒川真一 副査 木下淳博 横山三紀 Thrombospondin-1 Production is Enhanced by Porphyromonas gingivalis Lipopolysaccharide in THP-1 Cells ( 論文審査の要旨 ) 歯周炎はグラム陰性嫌気性細菌により惹起される慢性炎症性疾患であり P. gingivalis は疾患進行において病原性の高い歯周病原細菌として知られる 歯周炎局所では 細菌に対する免疫応答により歯周組織破壊や歯槽骨吸収が起きる この過程において単球は主要な役割を担う TSP-1 は多機能な細胞外マトリックスタンパクであり 炎症過程で発現が上昇する 細胞表面受容体との結合により 様々な生物学的効果を持つ 炎症性疾患において様々な研究が行われているが 歯周炎に関しては報告がない 本研究では 歯周炎組織における TSP-1 発現 単球系細胞における P. gingivalis LPS 刺激による TSP-1 産生機構の解明を目的とした 歯周炎における TSP-1 発現メカニズムに焦点を当てることは 新しい着眼点による優れた研究目的であることが高く評価できる 本研究では ヒト白血病患者由来単球系細胞株である THP-1 とマクロファージ化した THP-1 刺激因子として P. gingivalis LPS Pam2CSK4 E. coli LPS 共刺激因子として IL-4, IFN-γ, IL-17A, IL-17F TLR2 および TLR4 中和抗体 NF-κB 阻害剤である MG-132 を用いた ヒト歯肉組織は歯周外科手術時に切除された炎症性歯肉組織および炎症のない口蓋歯肉組織を用いた P. gingivalis LPS で 4 時間刺激した THP-1 から mrna を抽出し DNA マイクロアレイによる解析を行った 細胞と歯肉組織からの TSP-1 発現について real-time RT-PCR により mrna 発現を ELISA によりタンパク産生を定量した いずれも歯学部倫理審査委員会の承認を得て行われた 主たる結果をまとめると以下の通りである DNA マイクロアレイの結果 TSP-1 の著明な発現亢進が認められた 歯周炎の歯肉組織において 歯周ポケットの深い歯肉組織では有意な TSP-1 mrna 発現上昇が認められた THP-1 とマクロファージ化 THP-1 に対し P. gingivalis LPS で刺激した結果 濃度依存的な TSP-1 mrna 発現亢進と刺激 4 時間後での発現ピークが認められ タンパク発現に関しては 濃度および時間依存的な亢進が認められた THP-1 に対し Pam2CSK4 と E. coli LPS で共刺激した結果 いずれも TSP-1 mrna の有意な発現亢進が認められた P. gingivalis LPS 刺激時に TLR2 中和抗体を使用した結果 TSP-1 mrna 発現は有意に抑制された THP-1 に対し P. gingivalis LPS と共刺激因子を用いた結果 いずれも P. gingivalis LPS 刺激に比べて TSP-1 mrna 発現が有意に亢進した THP-1 に対し P. gingivalis LPS 刺激時に MG-132 を使用した結果 TSP-1 mrna 発現は有意に抑制された -5 -

これらの結果から 以下のことが考察される 炎症性歯肉組織では P. gingivalis の増加に従い TSP-1 発現が亢進されること 歯周炎局所でも P. gingivalis LPS による TSP-1 産生は 歯周組織の炎症や RANKL 関連の歯槽骨吸収の調節に関与する可能性があること TSP-1 は TGF-β 活性化作用を有することから Th17 分化に密接に関わっており Th17 から産生される IL-17 との相互作用は TLR2 の下流経路に作用し NF-κB 経路の活性化に関与する可能性が考えられること これらの考察が理論的に実施されており 論文中に明確に記載されている 本研究では THP-1 での P. gingivalis LPS からの TSP-1 誘導に関して TLR2 が主要な経路であると示された P. gingivalis LPS は一般的な細菌 LPS と構造が異なり TLR2 または TLR4 を介するとされており 本研究では単球系細胞における P. gingivalis LPS の作用機序が TLR2 経路に依存すると明らかとした点で 高く評価できる また P. gingivalis LPS と T 細胞性サイトカインとの共刺激により いずれも TSP-1 mrna 発現は亢進し 特に粘膜免疫で防御的な機能を持つとされる IL-17F で発現が亢進したことは 大変興味深い結果となっている サイトカインとの相互作用により発現亢進機構が働くことは 歯周組織における破壊のメカニズムを知る上で有用な知見となり得る これらの結果は 歯周炎における疾患進行メカニズムを解明する上で重要なものであり 歯周炎治療における新規の標的分子となる可能性があり 本研究を発展させることで 新たな治療戦略の構築に大きく貢献するものと考えられる よって本論文は 医歯学研究の発展に広く寄与すると考えられ 博士 ( 歯学 ) の学位申請を行うにあたって十分価値のあるものと認められた -6 -