平成 24 年度感染対策委員会職員研修会 施設で起こりやすい感染症 ~ 感染症のキホンとおむつ交換時の危険 ~ 日時 : 平成 24 年 10 月 12 日 ( 金 ) 17 時 40 分 ~19 時 00 分 場所 : サンシャインつくば研修会議室 感染対策委員会 赤津友美 飯浦裕和 松木ユキ子 松葉恵美子 山口一彦
はじめに 高齢者施設等で抵抗力が低い利用者をケアするには 介護スタッフの感染予防が必要です 施設は重度の利用者が中心になり さまざまな基礎疾患を抱えているため 感染しやすい状態の方が急増しています 介護スタッフが感染源にならないための予防策と 介護スタッフ自身の安全なケアの方法が重要となってきます また 乳幼児においても同様で 抵抗力が低いためさまざまな感染症にかかりやすい状態があります スタッフの感染症や予防策についての十分な知識が必要とされます 1 感染症とは 感染症が発生する要素には 病原体 病原体を媒介する宿主 病原体が生育しやすい環境 といった3つの要素があり これらが絡み合って感染が起こると考えられています また 感染症が成立するメカニズムには 病因 病原巣 排出門 感染経路 浸入門 感受性宿主 があり このうちのどれかひとつでも阻止できれば予防することが可能で 中でも 感染経路 を遮断することが最も容易で効率的な方法だと考えられています 2 感染予防策とスタンダードプリコーション 感染症の予防には 介護スタッフがケアを通じて利用者に媒介しない 利用者から感染しないようにすることが基本です そのためには 感染源は何か? その感染経路は何か? そして 感染した場合の症状はどのようなものか? を知ることが大切です 皆さんは 標準予防策 ( スタンダードプリコーション ) を知っていますか? 全ての人の血液 体液 分泌物 排泄物 創傷のある皮膚 粘膜は感染性があるもの として行う対策です 感染症の方ではないから大丈夫!! ではなく あらゆるものから感染症は起こるという考えのもと 日々のケアを行うことが大切です
3 知っておきたい感染症 施設で流行しやすい感染症 感染症にはさまざまなものがあります ここでは 施設等で特に発生 拡 大しやすい感染症を紹介します 1) インフルエンザ 症状 : インフルエンザウィルス潜伏期間は1 日 ~2 日 流行時期が12 月 ~3 月なので ワクチン接種は11 月中旬頃までにしておく 感染経路 : 飛沫感染だが ウィルスが付着した環境を介する接触感染もありうる 感染防止のポイント : ワクチンの予防接種 十分な手指衛生 湿度管理や換気 咳エチケットなど 2) ノロウィルス 症状 : ノロウィルス秋 ~ 春にかけて多く 症状は主に吐気 嘔吐や激しい水様性の下痢 腹痛であるが 発熱 頭痛等の軽い風邪に似た症状を起こすこともある 潜伏期間は 1 日 ~2 日 症状が治まってもノロウィルスは1 週間程度 ( 長い時には1カ月程度 ) 便の中に排泄されるため 他の人に感染させる可能性がある 感染経路 : 食品を介してや保菌者の吐物や糞便からの経口感染 ウィルスが付着した環境を介する接触感染もありうる 感染防止のポイント : 十分な手指衛生 ケア時の使い捨て手袋の着用 嘔吐や排泄物の処理時には 手袋やマスクを着用する 使用した紙オムツやパット類は ビニール袋に入れて密封するなど 3) 乳幼児嘔吐下痢症 ( ロタウィルス ) 症状 : ロタウィルス小児下痢症の最も多い原因はロタウィルスである 嘔吐から始まり 半日後には下痢や発熱を呈する 潜伏期間は1 日 ~3 日 感染経路 : 感染患者の糞便からの経口感染 感染防止のポイント : 十分な手指衛生 ケア時の使い捨て手袋の着用 次亜塩素酸ナトリウムやアルコールでの消毒など
まとめ 感染予防 は 誰のために行うものでしょうか? 十分な医療の発達や衛生的な環境が整っていても 毎年多くの人々が感染症が原因で亡くなっています 施設内では利用者の人数が多いため 感染症が発生すると 適切な感染予防対策を行わなければ 集団発生 つながることもあります 十分な知識がないままケアを行い 知らず知らずのうちにスタッフの手指を介して病原菌が他の利用者に移ったり またスタッフ自身が感染してしまう場合もあるのです つまり 感染予防 は利用者 スタッフともに健全で安全な介護サービスを行うために欠かせない考え方なのです 介護スタッフとしての基本の心構え 5か条 1 介護スタッフ自身の健康管理が感染予防の第一歩 2 利用者に感染させないためには 消毒が効果的 3 おむつ交換は使い捨て手袋を使用してお互いを感染から守ろう 4 全ての利用者に 標準予防策 を行ないましょう 5 介護スタッフの自覚と責任感が大事 参考文献 ケアワーク スキルアップ5 感染症 衛生管理の知識と心構え 薬剤師がアドバイスする在宅介護者のための感染防止マニュアル かんたんマスター感染対策
~ ロタウィルス感染症とは ~ ロタウィルス感染症の特徴 乳幼児の冬の急性下痢症の最も主要な原因が ロタウィルスによる感染症 主に 1 月 ~4 月にかけて流行し生後 6ヶ月から2 歳の乳幼児に多くみられ5 歳までにほとんどの小児が経験する 通常 1 歳を中心に流行がみられ 保育所 幼稚園 小学校などの小児や 病院 老人ホーム 福祉施設などの成人でも集団発生がみられる 感染経路 患者の便 1g 中には10~100 億個ものウィルスが排出される ロタウィルスは感染力が非常に強く 10 個以下のウィルスで感染が起こる この為 患者の便中のウィルスがなんらかの形でほかの人の口に入って感染する ウィルスは環境中でも安定なので 汚染された水や食物を介して あるいは汚染された物の表面 ( ドアノブ 手すり等 ) を触った手などから口に入り感染する 症状 嘔吐 下痢 発熱が主な症状 潜伏期間は約 2 日で 激しい嘔吐 (1 日 5~6 回 ) 激しい下痢が特徴だが 3~8 日程度で治まる 発熱は 半日 ~1 日で終わる場合が多く 2 日を超える例はあまりない 激しい嘔吐や下痢により急激に水分を失うので 特に乳幼児では脱水症状に気を付ける必要がある 一般に 年長児や成人では感染しても発症しない ( 不顕性感染 ) 場合が多い 予防方法及び二次感染を防ぐ為に 食事前やトイレの後などにおいて 石鹸を使ってしっかりと手を洗うことが大切 患者の便や嘔吐物には大量のウィルスが含まれているので その処理には十分注意する必要がある また 下痢の症状がなくなった後も 患者の便にはしばらくウィルスの排出が続くと考えられている 殺菌には 熱湯あるいは0.05~0.1% の次亜塩素酸ナトリウムを使用する アルコールや逆性石鹸には あまり殺菌効果はみられない 調理器具 おもちゃ 衣類 タオル等は熱湯 (85 以上 ) で1 分以上の加熱が有効 市販の塩素系漂白剤 ( 通常は5~10% 次亜塩素酸ナトリウム ) なら 50 倍 ~100 倍に薄めて使用する ( 例えば 原液 10mlを1L の水で薄める )
研修当日の流れ はじめに 時間になりましたので 平成 24 年度感染対策委員会職員研修 施設で起こりやすい感染症感染症のキホンとおむつ交換の危険 を始めたいと思います あいさつ それでは レジメの研修に移ります 山口さんお願いします * レジメの研修に入る 皆さん 感染症について分かったでしょうか? 簡潔ではありますが 感染症発生のメカニズムやスタンダードプリコーションについて 流行しやすい感染症と集団で生活している方々や 介護などに携わっている職員の皆さんには必要な知識ですので 日々の業務にこのレジメ研修を活かしていきましょう また 質問や感想など皆さんたくさん!! あるかとおもいますが 質疑応答の時間は後ほどたっぷり用意してありますので その際に発表して下さい それでは 続いて おむつ交換の危険 の演習に入りたいと思います 皆さん 隣のベッドの周りに集まって下さい * 松木 飯浦の実演開始 * 山口 赤津 鈴木は写真撮影やフォローに入る * 担当 2 人のおむつ交換を見ての問題点の確認 ( この際 赤津が撮影に入る ) 保育園 特養側に分かれての演習開始 特養側 大塚 保育園側 演習終了
皆さん いかがだったでしょうか? 普段 何気なく行っているおむつ交換でも いたる所に汚れは付着してしまいます 汗以外の全てのものを感染性のものとして取り扱う というスタンダードプリコーションの考えにもあるように排泄物には様々な菌が混ざっています そうした物の広がりが 介護者の行動ひとつで大きくも小さくもなるのだ という事が分かってもらえたらと思います 質疑応答 何名か指して感想や質問などを聞く まとめ * レジメのまとめと五箇条を話す 副施設長より総評 おわり これで 平成 24 年度感染症対策委員会職員研修を終了します 皆さん 貴重なお時間の中 参加していただき本当にありがとうございました 最後にお手数ではありますが 使用した椅子の片付けにご協力下さい 本日はお疲れ様でした