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1 大腸菌から真核細胞へのハイス ループット直接遺伝子導入法 広島大学大学院理学研究科生物科学専攻講師守口和基 1

2 研究背景 (1) 生物間の相互作用の究極の形 遺伝子のやり取りこのシステムを理解することは 1) 生物進化のあり方への理解 ( 基礎面 ) 2) 遺伝子導入技術としての理解 ( 応用面 ) へつながる では我々の研究室が着目する遺伝子伝達機構は? 2

3 研究背景 (2) 接合 ( 又は接合類似 ) システムによる遺伝子伝達 1) バクテリアの接合伝達 2) アグロバクテリアから植物へのT-DNA 移行 これらは遺伝子導入法として実用化されている これらの応用範囲を拡げることが実用面でのテーマ 遺伝子導入試薬の国内市場は約 15 億円 ( 日経産業新聞 2006 年 8 月 24 日記事より引用 ) 細胞レベルでの遺伝子導入実験市場は世界で約 200 億円 ( 日東電工株式会社 2003 年 12 月 1 日ニュースリリースより引用 ) では我々のグループが今回紹介する遺伝子導入技術は? 3

4 生物界間接合 T-DNA Transfer (Agrobacteria) (E. coli) Proteobacteria Domain Bacteria Trans-Kingdom Conjugation Gram-Positive Bacteria Animals (S. cerevisiae) Fungi Plants Diplomonads Domain Eukarya Domain Archaea 4

5 生物界間接合をベースにした遺伝子導入システム 大腸菌 ( バイオ研究者の誰もが使う生物 ) 真核細胞 ( 現在は出芽酵母を使用して開発中 ) Chromosome oriv 接合 Chromosome tra URA3 pay205 orit URA3 prh210 ARS1 mob 遺伝子導入用ベクター 真核細胞へのベクターの移動に必要な遺伝子を持つプラスミド 本来バクテリア間でおこなわれる接合を真核生物に対しておこなわせる System 5

6 従来の遺伝子導入法の長所 短所 汎用性 コスト 手間 多サンプル処理 リポフェクション法 エレクトロポレーション法 ウイルスベクターを用いた方法 マイクロインジェクション法 アグロバクテリアを用いた方法 パーティクルガン法 6

7 生物界間接合による遺伝子導入の長所 短所 ( これまで ) 長所 1) 特別な試薬を必要としない 2) 特別な機器を必要としない = 低コスト短所 1) 導入効率が低い ( 酵母で10-4 から10-5 ) 2) 遺伝子導入系としての信用度がまだ低い 遺伝子導入効率を上げさえすれば, 長所を生かして既存の方法と充分戦える 7

8 どのようにして導入効率を上げるか? 1) 反応条件の検討 ( 温度 時間 菌数など ) 2) 接合効率上昇変異体を単離 1) はこれまでの研究でも検討されている 大幅な効率上昇は難しい 2) を採用理由 : 原因遺伝子の特定により, A) 阻害剤添加による導入効率の上昇法 B) 他の生物種への応用法の確立が可能になる また C) 高受容能力株として用いることもできる 出芽酵母ゲノムワイド遺伝子破壊株キットを使う どうやって? 8

9 Screening strategy cells ~ cells WT (BY4742: α-type) S. cerevisiae mutants YPD agar E. coli HB101 Conjugation 28, 1 hr mutants WT 1/2 1/5000 mutants WT Spread by a plastic loop 28, 3 days 28, 2 days Selection medium (SC-URA agar) Complete medium (YPD+Cm agar) Screening 9

10 スクリーニング途中の例 ( 2nd screening) WT mutants 上昇変異体 途中経過 10

11 22 株の生物界間接合効率上昇変異株 3.5E E E E E E fold 16-fold in 2nd and 3rd screening 16-fold in 3rd screening 16-fold in 2nd screening 5.0E E 株 11 生物界間接合効率 WT ssd1é far1é sgf29é pho85é rml2é bem2é rtf1é msy1é atp14é ylr374cé atp2é hek2é mdm12é alg3é hap3é mrf1é gdh1é asi2é ybl062wé vid28é mrpl49é mhr1é mt mt mt mt mt mt mt mt > 0.1% Mutants 野生株に比べ最高 75 倍の導入効率 4 変異株は 0.1% 以上の導入効率 8 株の核コードミトコンドリアタンパク質遺伝子変異株 ミトコンドリアの機能が関与?

12 ミトコンドリアゲノム欠失株では? 2.5E-04 生物界間接合効率 TKC Efficiency 2.0E E E E E+00 BY4741 BY4742 BY4741EB1 BY4741EB2 BY4742EB1 BY4742EB2 WT rho 0 (mtdna cured) ミトコンドリアゲノムを欠失させても生物界間接合効率を上昇させられる n=3 ミトコンドリア機能阻害剤は接合誘導剤になり得るか? rho 0 12

13 ミトコンドリア機能阻害剤処理による接合効率の変化 (I) Erythromycin (prokaryotic translational inhibitor) BY4742 BY 生物界間接合効率 生物界間接合効率 Concentration (mg/ml) Concentration (mg/ml) 最大約 7 倍の生物界間接合効率の上昇が誘導された n=3 呼吸鎖を阻害すれば生物界間接合効率は上昇するのか? Erythromycin 13

14 ミトコンドリア機能阻害剤処理による接合効率の変化 (II) Antimycin A (Complex III inhibitor in oxidative phosphorylation) BY4742 BY 生物界間接合効率 生物界間接合効率 Concentration (μm) Concentration (μm) 最大約 5 倍の生物界間接合効率の上昇が誘導された n=3 ミトコンドリア機能阻害剤は接合誘導剤になり得る Antimycin A 14

15 今回の技術での到達点 従来法と遺伝子導入効率を比較する場合, 大腸菌数とそこから得られるプラスミド DNA 量を対比させる必要がある もし 2 ml 培養液が約 2.5 x 10 8 の大腸菌を含み, そこから 2 μg プラスミド DNA が得られるとすると, 遺伝子導入効率は, 6.7 x 10 4 transformants / μg DNA (highest mutant) 7 x 10 3 transformants / μg DNA (Erythromycin treated WT cell) 現在, 最も一般的な LiAc-PEG 法 : 約 x 10 4 transformants / μg DNA 出芽酵母においては, 薬剤処理により従来法並みに, 上昇変異株使用により従来法を上回る遺伝子導入効率を達成 = 実用レベルに達している 今回の到達点 15

16 新技術の特徴 従来技術との比較 (1) 一般的な 遺伝子導入システム 大腸菌にクローン化した遺伝子 プラスミド DNA 調製, DNA の前処理など 多くのステップが必要 ( 時間, 資金, 労力 ) 真核細胞への遺伝子導入 大腸菌にクローン化した遺伝子 生物界間接合による遺伝子導入システム 直接導入 (2 種の生物を混合するだけ ) 真核細胞への遺伝子導入 今回のスクリーニングのノウハウを利用すれば, ハイスループット化が容易である 16

17 新技術の特徴 従来技術との比較 (2) 生物工学で誰もが使用する大腸菌という材料を用いて 従来の試薬, 機器等を用いずに安価かつ簡便に遺伝子導入をおこなう 原理的に従来法と全く異なる為に, 酵母以外にも従来法では導入が難しい生物種に対しての新たな遺伝子導入ツールになり得る 17

18 想定される用途 ゲノムワイドな有用遺伝子のスクリーニングをおこなう際の遺伝子導入法 通常の研究室レベルでの日常的な遺伝子導入法 従来の方法では遺伝子導入が難しい生物種への遺伝子導入における新たな選択肢 具体例 : 酵母 two-hybrid 系での a) 高 independencyのライブラリー作製 b) Interactome 解析 18

19 想定されるビジネスモデル 商品として 生物界間接合誘導剤生物界間接合用コンピテントセル専用ベクター高導入効率株 研究開発の効率化の手段として 少ステップ化 自動化によるハイスループット化 従来の試薬からの脱却によるコストダウン 受託研究の武器として 上記のアドバンテージを生かした, 迅速 低価格な受託研究 19

20 想定される業界 想定されるユーザー バイオ関連試薬メーカー製薬 食品関連メーカーの研究開発部門一般の大学 研究所 想定される市場規模遺伝子導入試薬の国内市場は約 15 億円 ( 日経産業新聞 2006 年 8 月 24 日記事より引用 ) 細胞レベルでの遺伝子導入実験市場は世界で約 200 億円 ( 日東電工株式会社 2003 年 12 月 1 日ニュースリリースより引用 ) 20

21 実用化に向けた課題 現在, 出芽酵母の遺伝子導入法として実用化が可能な段階まで開発済み しかし, 汎用ベクターのレパートリーを充実させる点が課題である 今後, 酵母を用いた生物界間接合における真核細胞の受容メカニズムについて解析を進め, 動物 植物細胞に適用していく場合の条件設定をおこなっていく 従来法と比較した場合の, 更なるアドバンテージ獲得に向けて, 生物界間接合誘導剤の性能を接合効率上昇変異株レベルまで向上できるよう, 引き続き薬剤の探索と条件設定をおこなう必要もある 21

22 企業への期待 ラージスケール解析におけるハイスループット化の実証実験の共同研究を希望 生物界間接合誘導剤のスクリーニングの共同研究を希望 応用範囲を拡げる基礎研究のために, 菌類 動物 植物細胞の培養と遺伝子導入技術を持つ 企業との共同研究を希望 応用範囲を拡げる基礎研究のために, 遺伝子導入過程を 観る 技術を持つ 企業との共同研究を希望 22

23 本技術に関する知的財産権 発明の名称 : 生物界間接合を利用した真核細胞への遺伝子導入方法およびその方法から得られた真核細胞, ならびにその遺伝子導入用キット 出願番号 : 特願 出願人 : 国立大学法人広島大学 発明者 : 守口和基, 田中克幸 23

24 お問い合わせ先 広島大学産学連携センター産学連携部門コーディネーター榧木高男 TEL FAX kayaki@hiroshima-u.ac.jp 24

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