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えりかさくいし
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1 論文レタスのマット給液栽培における補光の効果 - 生産量増大のための検討 - 池田穣 * 谷口裕史 ** 茨城県農業総合センター園芸研究所野菜研究室で開発されたレタスのマット給液栽培技術を用いたレタス栽培の事業化を茨城県と共同で検討したその一環としてハウス内でのレタスの生長を促進させ, 生産量を増大させるために, 自然光の日照時間が少ない冬季において人工光源で補光を行い, その効果を調べたその結果, 補光しない場合と比較して, 補光したレタスの重量は平均 2% 増加し, 収穫までの日数は平均 9% 低減したことから, 一定の生産量増大効果のあることが確認できたしかし, 本栽培システムにおいては根の伸張が制限されることから補光の効果が抑制されていると考えられる現時点の事業化においてはイニシャルコストとランニングコストを含む費用対効果の点から, 補光装置のコストダウンが必要であるキーワード : レタス, 補光, 成長量, マット給液栽培技術 1. はじめに 2. 実験方法農業の事業化に向けての取り組みの一環として, 茨城県農業総合センター園芸研究所野菜研究室 ( 以下園研 ) 1) で開発されたレタスのマット給液栽培技術を用いた実証試験を茨城県と共同で行った事業化のためには栽培ハウス内で効率よくレタスを生産する必要があるそのために日射の少ない冬季に補光をしてレタスの光合成を促進させ, その生産量増大効果を確認した本実験では, 補光によるレタスの重量増加や収穫日数低減効果を評価するとともに共に費用対効果についても考察した 2.1 園研式マット給液栽培技術の概要マット給液栽培は, 水耕栽培の一種である水耕栽培では, 容器に養液 ( または液肥 ) を湛水させて栽培を行なう方式が主流であるが, マット給液栽培では容器の替わりに給水マットを用い, 養液を毛細管現象により給水マットに浸潤させるそして給水マット上にレタス等を植栽した栽培用ポットを設置する従来の毛細管現象を利用した養液栽培技術では, 図 -1に示すように養液は給水マット上を一方向に流れるこのため養液の流れの下流側では, 養液の濃度が低下し植物の生育が上流側に比べて悪くなるこれに対して園研で開発されたマット園研式の栽培ベンチ図 -1 従来の養液栽培技術と園研式マット給液栽培技術の比較 * 環境事業部 ** 技術研究所ハザマ研究年報 (28.12) 22

給液栽培技術では, 給水マット上の養液の流れを交互に切り替えることにより, 栽培用ポットにほぼ均一な濃度の養液が供給されるさらにこの方法では排液が生じないという利点もある図 -2にマット給液栽培を用いたレタスの播種から収穫パッケージングまでの一連の流れを示す 2.

1Ln/min( 約 16Lux) 以下になると点灯するような区域を設けたそして補光の有無による各種レタスの重量変化を調べたランプは, 高圧ナトリウムランプの電圧をさらに高めレタス等の生長を促す遠赤外線が多く出るように設計された松下電工製のハイカライト (25W)

レタスの種を播種装置で播種する種播装置 3 第 2 ステージ : 鉢上げ栽培用ポットに培養土を 3cc または 4cc 充填する第 1 ステージの株を栽培用ポットに鉢上げする栽培用ポット ( 径 5cm) 4 第 3 ステージ : 移動

2 給液栽培技術では, 給水マット上の養液の流れを交互に切り替えることにより, 栽培用ポットにほぼ均一な濃度の養液が供給されるさらにこの方法では排液が生じないという利点もある図 -2にマット給液栽培を用いたレタスの播種から収穫パッケージングまでの一連の流れを示す 2.2 実験方法補光実験においては, レタス類の補光実験の文献 2) を参考に補光ランプ真下での光合成に必要な光量子束密度を 7μmol/ m2 /sec( 約 38Lux) とし,3: から 17:3 までハウス外の光強度が.1Ln/min( 約 16Lux) 以下になると点灯するような区域を設けたそして補光の有無による各種レタスの重量変化を調べたランプは, 高圧ナトリウムランプの電圧をさらに高めレタス等の生長を促す遠赤外線が多く出るように設計された松下電工製のハイカライト (25W) を用いた写真 -1に補光実験の写真 -1 補光実験の様子写真 -2 秋葉式二酸化炭素発生装置 1 マット給液栽培の準備ハウスの温度日射等の環境を最適に制御し栽培装置を設置し, 給液装置を稼動させる園研のハウス 2 第 1 ステージ : 播種レタスの種を播種装置で播種する種播装置 3 第 2 ステージ : 鉢上げ栽培用ポットに培養土を 3cc または 4cc 充填する第 1 ステージの株を栽培用ポットに鉢上げする栽培用ポット ( 径 5cm) 4 第 3 ステージ : 移動レタスの成長により栽培ベンチ上の 1 株あたりの占める面積が大きくなるため第 2 ステージにある栽培用ポットを第 3 ステージに移動する移動 (2mm 四方 /1 株 ) 5 収穫パッケージング第 3 ステージのレタスが適宜の大きさになった時点で収穫し痛んだ葉等を取り除きパッケージングして出荷するパッケージング図 -2 マット給液栽培の流れハザマ研究年報 (28.12) 23

二酸化炭素発生装置稼動 18 16 14 CO2 (ppm 12 1 8 6 4 大気中二酸化炭素濃度 (37 ppm) 2 : 3: 6:

光が不足する冬季 27 年 11 月は 3: から 8: までの間２回稼動した実験に用いたレタスは写真３に示す６種類のレタ 28

状態になることが多いこの状態を利用してレタスの光培用ポットや培養土も含むレタス１株の全重量を播種か

年３月までプロパンガスので双葉が出て栽培用ポットに鉢上げした段階図２の燃焼により二酸化炭素を発生させる秋葉式二酸化炭素発第２ステージ

1 開始される 3: から 8: までの間二酸化炭素濃度が月 1 日播種のとは播種後 28 日 1ppm 以下になると装置が稼動し

日目からそれぞれ補光した素補給を行なった場合のハウス内の二酸化炭素濃度の日変化の一例を示すハウス内の二酸化炭素濃度は二酸 3 実験結果

3 二酸化炭素発生装置稼動 CO2 (ppm 大気中二酸化炭素濃度 (37 ppm) 2 : 3: 6: 9: 12: 15: 18: 21: : 図３ハウス内の二酸化炭素濃度の日変化 28 年 2 月 4 日様子を示す補光は光が不足する冬季 27 年 11 月は 3: から 8: までの間２回稼動した実験に用いたレタスは写真３に示す６種類のレタ 28 年３月にかけて行なったまた同時期には温度の低下を防ぐためハウスが密閉スとし補光した場合と補光しない場合とにおいて栽状態になることが多いこの状態を利用してレタスの光培用ポットや培養土も含むレタス１株の全重量を播種か合成に必要なハウス内の二酸化炭素濃度も高めた具体ら収穫まで適宜測定した補光は原則播種後１週間ほど的には 28 年１月 28 年３月までプロパンガスので双葉が出て栽培用ポットに鉢上げした段階図２の燃焼により二酸化炭素を発生させる秋葉式二酸化炭素発第２ステージから収穫するまで行ったただし補光装生装置写真２を用いた本実験では冬季の補光が置の準備栽培ベンチのスペースの都合から 27 年 1 開始される 3: から 8: までの間二酸化炭素濃度が月 1 日播種のとは播種後 28 日 1ppm 以下になると装置が稼動し 15ppm 以上にな目播種のリーフ 39 については播種ると装置が停止するように設定した図３に二酸化炭後 35 日目からそれぞれ補光した素補給を行なった場合のハウス内の二酸化炭素濃度の日変化の一例を示すハウス内の二酸化炭素濃度は二酸 3 実験結果化炭素装置が稼動しない場合は大気中の二酸化炭素濃度 37ppm であった１日において二酸化炭素発生装置 3.1 補光条件岡山サラダナレッドフォルダーリーフ39 オークリーフ写真３補光試験に用いたレタスハザマ研究年報

4 7 6 光量子 (μmol/ m2 /sec) 補光ランプ点灯 1 補光ランプ点灯補光ランプ光量 (7μmol / m2 /sec) : 1:3 3: 4:3 6: 7:3 9: 1:3 12: 13:3 15: 16:3 18: 19:3 21: 22:3 : 図 -4 補光ランプの真下における光量子の日変化 (28 年 1 月 15 日 ) 図 -4に補光ランプの真下で栽培面から 15cm 高の光量子の日変化を示す 3: から 17:3 の補光設定時間において実際の補光時間は, 朝が 3: からおよそ 7:3 までの,4.5 時間程度, 夕方は 16:3 から 17:3 の1 時間程度であった日中の太陽光からの最大光量は 7μ mol/ m2 /sec に達したが,1 日の変動は大きく雲や影により 1μmol/ m2 /sec ほどに落ちることもあったものの, 日中はほとんど補光ランプは点灯しなかった 3.2 レタスの重量変化表 -1に実験に用いた各レタスの播種日, 収穫日および収穫日数を, 図 -5に補光の有無での最終全重量を示す 6 種類のレタスの中で, 比較的大きな葉が垂れ下がり, 重なりあうため受光効率の悪いオークリーフを除いて, いずれの場合も補光を行った場合のほうが, 収穫まで全重量が大きくなっている最終全重量の補光の有無での差は最大 53g( 2), 平均 21g であった表 -1 実験に用いたレタスの播種日, 収穫日および収穫日数レタスの種類岡山サラダナレッドフォルダーリーフ 39 オークリーフ上段 : 播種日下段 : 収穫日 27 年 1 月 1 日 27 年 12 月 25 日 27 年 11 月 7 日 27 年 1 月 1 日 27 年 12 月 19 日 27 年 11 月 7 日 27 年 12 月 5 日 28 年 2 月 13 日 28 年 1 月 9 日 28 年 3 月 7 日 28 年 1 月 9 日 28 年 3 月 12 日 28 年 3 月 27 日 27 年 11 月 7 日収穫日数 76 日 71 日 7 日 71 日 7 日 58 日 63 日 7 日 71 日備考播種後 28 日目に補光開始播種後 28 日目に補光開始二酸化炭素補給二酸化炭素補給二酸化炭素補給, 播種後 35 日目に補光開始補光あり補光なし 14 最終全重量 (g) 岡山サラダナレッドフォルダーリーフ 39 オークリーフ図 -5 各レタスの補光の有無での最終全重量ハザマ研究年報 (28.12) 25

5 全重量 (g) 補光あり補光なし 25 収穫日数低減播種からの日数 d c 図 -6 2 の補光の有無による全重量の変化重量増加 a b レタスの種類岡山サラダナレッドフォルダーリーフ 39 オークリーフ平均表 -3 各レタスの収穫日数低減率収穫日数 ( 日 ) c 低減した収穫日数 ( 日 ) d 収穫日数低減率 (c-d)/d 1(%) 考察 4.1 補光の効果図 -6に2の補光の有無による全重量の変化を示す補光の効果としては, 図 -6に示すように重量増加効果と収穫日数低減効果が上げられるここでは収穫日における補光した場合の最終全重量と補光しない場合のそれとの変化率を重量増加率として評価したまた, 補光しない場合の最終全重量が, 補光した場合の全重量と等しくなる日数 ( 図 -6のd) と収穫日までの日数 ( 図 -6のc) との変化率を収穫日数低減率とした表 -2に各レタスの重量増加率を示すオークリーフの-1% から2の 52% の範囲にわたり平均 2% であったまた表 -3に各レタスの収穫日数低減率を示すオークリーフの% から1の 2% の範囲にわたり平均 9% であったこれらの結果からレタスの種類により相違はあるものの, 補光により一定の生産量増大効果が見られることがわかったなお本実験では, 補光開始の時期が遅れたケースもあったものの, これは補光の効果に大きな影響は及ぼさないと考えられる 4.2 費用対効果の検討園研式マット給液栽培技術に補光装置を組み入れたハウスでのレタス栽培の事業化の採算性を検討するため, 補光の効果による売り上げ増加と補光に要した費用とを比較した具体的には, 事業化を想定した 2 m2のハウスにおいてレタスを年約 5 万株 (4~11 月 :4.6 表 -2 各レタスの重量増加率万株 / 月,12~3 月 :3.2 万株 / 月 ) 生産すると仮定し, 補光による収穫日数低減率とそれに要する費用とを比較した補光ランプは本実験に用いたと同様な松下電工製のハイカライト (4W) を 576 基取り付けることとした表 -4に 12 月 ~3 月の未明 4 時間 ( 例 :3:~7:) に補光した場合に必要な電気代や補光ランプの償却費からなる維持管理費用を示すさらにその維持管理費を上回るために最低必要なレタスの収穫増を求め, それに要する収穫日数低減率を示したこの表からコスト増に見合うためには, 補光期間において最低 5 万株の収穫増が必要で, そのためには収穫日数低減率が最低でも 28% 求められるしかし本実験では, 表 -3に示すように収穫日数低減率は平均で9% ほどであったこのことから現時点では園研式マット給液栽培装置を用いての補光は採算に合わないと考えられるこのひとつの理由として, 園研式マット給液栽培技術では, 栽培用ポット内で根の伸張が制限されるため, 補光による光合成促進効果が抑制されていることが考えられるしかし収穫日数低減率が 2% と高いのような品種に対しては, 補光装置のさらなるコストダウンを図ることによって, 生産量増大が可能になると考えられる 5 おわりに本実験により以下のことがわかった園研式マット給液栽培技術に補光装置を組み入れることによりレタスの生産量は補光しない場合に比較して最終全重量は平均 2% 増加し, 収穫日数は平均 9% 低減したレタスの種類岡山サラダナレッドフォルダーリーフ 39 オークリーフ平均補光ありの最終全重量 (g) a 補光なしの最終全重量 (g) b 重量増加率 (a-b)/b 1(%) 事業規模レベルの 2 m2のハウスでのレタスの生産に必要な補光のコストに見合うには, 最低年間 5 万株の収穫増を要し, そのためには最低 28% の収穫日数の低減が必要である現時点では, 園研式マット給液栽培装置を用いての補光は採算に合わないものの, 比較的収穫日数低減率の高いなどの品種に対しては, 補光装置のさハザマ研究年報 (28.12) 26

6 表 -4 事業規模でのレタス生産での補光コストと補光効果の検討結果項目内容備考補光時間 12~3 月未明 4 時間補光補光ランプ ( ハイカライト )4W, 576 基設置 (23kw) 動力基本料金 36 万円 / 年 3kw 契約 1 円 /kw/ 月従量料金 1 万円 / 年 1 円 /kwh 電力小計 46 万円 / 年深夜電力割引 322 万円 / 年.7 償却費用 167 万円 / 年ランプ定格寿命 9 時間補光ランプイニシャルコスト3 万円 1 年償却コスト増 489 万円 / 年コスト増に見合うレタスの最低年間収穫増 5 万株 (12-3 月,4 ヶ月 ) 1 株 =1 円, 収穫増による人件費増は含まず補光期間に求められる最低収穫日数低減率 28% 図 -6 および表 -3 参照らなるコストダウンを図ることによって, 生産量増大が可能になると考えられる謝辞茨城県農業総合センター園芸研究所野菜研究室の中原正一室長には, 園研式マット給液栽培技術に関して様々な面でご指導をいただきましたまた三重大学生物資源学部村上克介教授には, 補光実験を行うにあたって有益なアドバイスをいただきましたここに心より謝意を表します参考文献 1) 中原正一 : 養液栽培装置と方法, 茨城県, 特許第号,28 2) 向阪進一, 洞口公俊, 齋藤直樹, 上條和彦, 村上克介 : 野菜苗の育苗補光による成長の促進, 照明学会誌, Vol.91, No.2, pp.87-93,27 The Effect of Light Supplement for Lettuce Cultivation using Fertilizing Supply System by Mat -Trial for Increasing Production- Yutaka IKEDA and Hirofumi TANIGUCHI Commercialization of lettuce production using devices and methods for hydroponic culture of lettuce developed by Vegetable Laboratory, Horticultural Institute, Ibaraki Agriculture Center was investigated. In order to increase the amount of the production of lettuce, the artificial light was provided in the glass house in winter when day length was short. In some cases, carbon dioxide was simultaneously added in the morning up to 1-15ppm. As a result, the production amount was increased by an average of 2% with light supplement than that without the light supplement. However comparing the initial and running cost for the light supplement to the increment of sales amount, the present light supplement will not be worth the expense on this hydroponic culture system. ハザマ研究年報 (28.12) 27

植物23巻2号

植物23巻2号 (J.SHITA)23(2):37-43. 2011. 37 520-0531 1-13-15 Operation Should be Automated and not so in Plant Factory for Leafy Vegetables Touichi OGURA Goodgoal Inc, 1-13-15 Suimei Otsu-shi, Shiga 520-0531, Japan