特別企画コンファレンス

Size: px

Start display at page:

Download "特別企画コンファレンス"

こうざぶろうらぶり
5 years ago
Views:

1 地方の資源の再発見と活用地方での再エネ普及をいかに拡大するかドイツの事例分析を踏まえて 2014 年 10 月 6 日富士通総研経済研究所上席主任研究員世界バイオエナジー協会常任理事梶山恵司 Kajiyama.his-01@jp.fujitsu.com

2 再生可能エネルギーのチャンスとチャレンジ莫大な日本の再生可能エネルギー資源制度整備 ( 固定価格買い取り制度 ) や技術革新により眠れる資源から使える資源に地方に豊富に存在するエネルギー源であるがゆえに地方再生の原動力になりうるその代表例としてのドイツ再エネはドイツ経済地方経済に多大な恩恵日本のポテンシャルはドイツ以上ドイツの再エネの実際を分析し日本と比較することは日本の地方再生を考えるうえで参考になるところ大 1

3 1. ドイツの再生可能エネルギーの実際

ドイツの再生可能エネルギーの推移 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 GW

4 ドイツの再生可能エネルギーの推移 GW 160,000 熱利用 140, , ,000 木質バイオマスバイオガス木質廃棄物太陽熱ジオサーマル 80,000 60,000 40,000 20,

5 エネルギーは発電熱総合的にとらえるべき最終エネルギー消費の 5 割は熱電力は 26% 発電は大型になりがち地域への還元をどうするかが課題熱利用は地産池消の典型熱の供給者も利用者もメリット

6 経済成長とエネルギー消費 CO2 のデカップリングエネルギー効率の向上再エネこそ成長の源泉 1990 年 = ドイツ年 =100 日本実質 GDP 実質 GDP 一次エネルギー一次エネルギー温室効果ガス温室効果ガス ( 出所 ) ドイツエネルギー統計連邦経済技術省 ( 出所 ) 資源エネルギー庁エネルギー需給実績地球環境研究センター内閣府 5

7 2. 地方個人における利用

8 個人地方が主体のドイツ 2/3 が個人小規模事業主

9 再生可能エネルギーの雇用と投資再生可能エネルギーの雇用投資の多くは地方再生可能エネルギー雇用者数の推移万人バイオマス風力太陽光水力地熱その他 ( 出所 ) 再生可能エネルギー統計 2011 連邦環境省 40,000 35,000 30,000 25,000 20,000 15,000 10,000 5,000 ドイツの再生可能エネルギーと日本の自動車産業の設備投資額の推移億円 0 26,000 13,390 28,400 27,000 26,000 14,300 19,890 ドイツ再エネ 34,580 30,160 13,352 14,110 日本自動車産業 25, ( 出所 ) ドイツ連邦環境省財務省法人企業統計調査 ( 注 )1 ユーロ =130 円で計算 8

10 バイオガス利用に見る農村のビフォアアフター before 100 軒の集落の事例灯油代 2400 万円 3600 万円の流出電気代 1200 万円 9

11 バイオガスを軸に農村に新しい富が創造 600 万円 after 木材チップ 1 億円を超える経済効果熱供給エネルギー作物 1800 万円熱供給 1200 万円電力 400 万 Kwh バイオガス 700kW 7000 万円畜産糞尿 10

12 ドイツではバイオガスは農家が主体 11

13 バイオガス利用の本格化は 2005 年技術が確立した2005 年を境に導入が急増現在では 8000 以上のプラント農村に新しい富をもたらす担い手はほとんど農民誰もが参入できるシステムドイツのバイオガスプラント (2011 年末 ) 2005 年 12

14 もっともポテンシャルが高いバイオマスドイツの再エネに占めるバイオマスの比率は熱の 9 割発電の 3 割日本も潜在的には同じ 160,000 GWh ドイツの再生可能エネルギー構成 (2013 年 ) 140, , ,000 80,000 60,000 40,000 20,000 バイオマス地熱太陽熱太陽光風力水力廃棄物系バイオマスバイオガス木質バイオマス - 発電熱 ( 出所 ) ドイツ再生可能エネルギー統計

15 3. ドイツの再エネ利用を支えるシステム

16 再エネ普及拡大を支える制度組織 FIT のきめ細かな制度設計 + 柔軟な改定などによる運用そのベースとなる再エネ研究機関の研究モニタリング成果応用科学 (applied science) に特化した大学 (Hochschule) が各地に存在市民への普及啓発再エネサポートを担うエネルギーエージェンシーが自治体レベルで存在地域密着のサービスを提供する自治体出資のエネルギー会社エネルギー協同組合地域密着の再エネコンサル会社最近では運営も手掛ける事業会社的性格も大手コンサル会社 juwi 15

17 システムにより普及を加速化再生可能エネルギーは新しい分野小規模分散型でありその担い手は個人や中小企業それぞれの自助努力に委ねるだけでは限界再生可能エネルギー普及のための原理原則を整理共有化誰もが参加できるシステムどこにでも存在する資源でありシステムで支えれば普及を加速化することができるスター不要 16

18 4. 日本の再生可能エネルギーの実際

19 日本の再エネの膨大なポテンシャルすべての再生可能エネルギー源が豊富に存在風力の潜在量は約 39,000 億 kwh(cf. 日本の総発電量 9,500 億 kwh) 太陽光発電の平均稼働時間は 1,200 時間 ( ドイツ 1,000 時間 ) 地熱の潜在量は世界第 3 位世界有数の森林蓄積バイオマスの潜在性が最大そのほとんどが地方に存在地域再生の起爆剤に 18

20 大型案件中心太陽光風力ともに大規模で地域外資本になりがちその場合地元は場所貸し ( 地代固定資産税 ) 中心木質バイオマス発電も 100 件を超える FIT 認定もそのほとんどが 5000 kwを超える大型現状では地域で自律的に発展するメカニズム個人が主役とはなりにくく従来の企業誘致工場誘致と似た状況 FIT が終了する 20 年後をにらんだ対応は? 19

21 バイオマス発電のリスクバイオマスは太陽光風力に比べリスクが大きい FIT により売上は 20 年間固定他方で燃料代が 20 年間上がらないことはあり得ない燃料調達の問題と並んで燃料代上昇リスクにどう備えるか現状ではチップ価格を低めに設定して内部留保を厚くして体力を温存? 日本のバイオマス技術では製紙用チップに相当する良質のチップしか使えず余計に資源に過剰な負担欧州の技術を使えば多様な燃料を使うことが可能しかし発電用ボイラーの輸入は規制の関係で事実上困難 ( 規制見直しを検討中 ) 林業のメリットは? 20

22 バイオマスの基本はごみを宝に工場残材林地残材デザイナーチップ剪定枝バーク 21

23 ゴミを宝にできない現状 5700 kwのバイオマス発電の事例発電用バイオマス燃料を乾燥するためのバイオマス乾燥機エネルギー効率 26% をうたっているがチップ乾燥に多くのエネルギーを消費しているため実質は 20% 以下貴重なバイオマス資源の 8 割が未利用チップも安くしか買えない 22

24 使えば使うほど地域が潤うバイオマス熱利用ホテル温浴施設温水プール公共施設クリーニング工場産業プロセス熱等で化石燃料を大量に消費熱用チップ価格は発電製紙用チップの 4 割増しそれでも石油に比べ半分以下熱は地元での需要であり地産地消の典型使えば使うほど皆が幸せになれる林業に恩恵 23

25 日本のバイオマスボイラーの実態体育館の床暖房用熱需要が小さく変動も激しいためバイオマス利用には不向き複雑な燃料供給装置本来ならありえない設計燃料貯蔵とボイラーの距離が 50m! 園芸用で微妙な温度制御が必要なのに貯湯槽なし 24

26 その背景バイオマスは連続運転が基本オフピーク時に貯湯槽に蓄熱熱需要に合わせたボイラー規模の決定が重要ボイラーによって対応できる水分が異なる小型の場合一定以下の水分管理されたチップしかしボイラーメーカーは熱需要にかかわりなく大きいものを売りつける生チップ用ボイラーと称して販売するなどバイオマスの特性を十分に理解したうえでの設計が不可欠欧州にはそのためのマニュアルが存在ボイラーメーカーも適切な施工メンテナンスのため施工会社に研修を行うのが一般的欧州製ボイラーメーカーの日本代理店にはそうした訓練を受けた人材はいないのでは?

27 5. 富士通総研の地方における再エネ利用の試み

28 富士通総研としてできることは何か FIT 改定やシステムの構築は主として行政政策提言働きかけ民間研究機関の役割としての成功事例づくりメガソーラー風力の地域貢献モデル事例バイオマスの成功事例ホテルや温浴施設公共施設での小型事例蒸気などを使う産業プロセス熱などの大型事例サプライチェーンの構築林業再生を含めた総合的なアプローチ地域のポテンシャルと諸条件 ( 需要と供給人材等 ) を分析のうえコンセプトづくり提案実現コンセプト : 再エネ + 地域資源のポテンシャルを最大限引き出す 27

29 地方の現状とチャンス再エネ + 林業農畜産業の莫大なポテンシャルがあるが活用せず FIT をきっかけとして投資すれば莫大なポテンシャルを最大限引き出し地域経済が成長地域自律型 : 基幹産業による安定収入無抵抗型 : ジリ貧へ制度 (=FIT) 依存型 : 一時しのぎ高齢化率 14.7% 市人口 36,312 人 22.9% 32.2% 33,898 人 31,402 人 29,219 人 35.4% 41.4% 25,428 人 FIT 買取期間 ( 最長 20 年間 )

30 その実現に向けてのプラン (T 市 +S 町にて展開 ) 地域資源に立脚した自律的で安定した地場産業の創生経済効果民間収入雇用行政収入景気に左右されにくい恒常的ニーズが高い空洞化リスクが少ない林業活性化バイオマス地域資源に立脚した地場産業群林業農畜産業の 6 次産業化地権者行政収入 ( 地代税 ) 太陽光風力信頼できるパートナーの発掘基金高付加価値化再エネ創生による資金化 (1-2 年 ) 基幹産業創生 (3-5 年 ) 自律的発展 (10 年 )

31 林業のチャンス戦後日本は木を伐りつくす 8 割が50 年以下しかし植林した木が成長し今や世界有数の森林資源国森林はどこにでもある資源どこにでもチャンス人材路網林業機械などこれから資源を活かすには投資が必要森林資源の国際比較日本ドイツスウェーテン森林面積 ( 万 ha) 2,500 1,000 2,300 森林蓄積 ( 億 m3) 年間成長量 ( 万 m3) <1,800 12,500 10,000 木材生産量 ( 万 m3) >2,000 5,000-6,000 6,200 30

32 バイオマス熱利用ホテル温泉関東 S 市製材工場では大量のチップ生産製紙用だが需要減価格低迷バイオマス用燃料として販売すれば製紙用チップの 5 割以上の価格 10 キロ圏内に温泉街年間数百万円数千万円の石油消費もっとも大きいところでは年間 1 億 2000 万円の重油を消費従来のバイオマス導入失敗原因 1 乾燥チップの供給が困難 2 適切なボイラー規模の選定がない 3 バイオマスの基本を理解しないで導入 4 現地で施工メンテナンスできずボイラー会社任せでコスト高対応 1 製材工場における乾燥チップ製造供給方法の構築 2 熱需要に見合った能力が高く使い勝手の良いボイラーの発掘選定 3 バイオマスの基本を導入するホテルに十分に理解してもらうための研修 4 現地で施工メンテナンスできる会社の発掘欧州での研修まずは個別事例を作り将来は地域熱供給網整備や湯元での加温に

33 バイオマス熱利用工場プロセス熱残材中部 T 市数十万 ha におよぶ広大な森林面積 + 巨大な熱需要 = バイオマスの宝庫現状ではポテンシャルを引き出すには程遠い状態家具工場ではそこででてくる乾燥した高級残材を燃料利用他方地域ではバークなどの低級残材が大量に発生それを利用できない本来なら高級残材はペレットや小型ボイラーでの利用がその付加価値を十分に引き出すことができるプロセス熱用に重油 6 億円を消費する工場も存在どのように市場を開拓していくか家具工場の高級残材とそれを焼却する大型ボイラー 32

34 遠野における試みパネルディスカッションで

35 日独共同シンポジウム日独バイオガスデーのご案内バイオガスに関する政策地域再生バイオエネルギー村などについて日独の政策担当者研究者企業がディスカッション申し込みは弊社ホームページから日時 :2014 年 11 月 7 日 ( 金 ) 10:00~17:00 主催 : 富士通総研エコス日独政府後援会場 : 東京大学弥生講堂 34

36 参考文献 35 国民のためのエネルギー原論共編著日本経済新聞出版社 2011 年 12 月日本林業はよみがえる日本経済新聞出版社 2011 年 1 月再生可能エネルギー拡大の課題富士通総研研究レポート No 年 9 月木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題富士通総研研究レポート No 年 10 月グリーン成長戦略とは何か岩波書店世界 2013 年 2 月号残材と熱を使い尽くせ技術革新促す制度改定を日経エコロジー 2014 年 4 月号エネルギー論壇

バイオマス比率をめぐる現状課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については毎の総売電量のうちそのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている現状各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案

バイオマス比率をめぐる現状課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については毎の総売電量のうちそのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている現状各区分のバイオマス比率については FIT 入札の落札案既認定案件による国民負担の抑制に向けた対応 ( バイオマス比率の変更への対応 ) 2018 12 21 日資源エネルギー庁バイオマス比率をめぐる現状課題と対応の方向性 1 FIT 認定を受けたバイオマス発電設備については毎の総売電量のうちそのにおける各区分のバイオマス燃料の投入比率 ( バイオマス比率 ) を乗じた分が FIT による売電量となっている現状各区分のバイオマス比率については