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1 杏林医会誌 22 巻 2 号 年 6 月 ヒトの [ 足の ] 長母指伸筋の動脈分布について 横 山 寿 光 守 屋 厚 神 林隆 幸 斎 川 藤 嘉 島 帝 都 代 夫 五 杏林鮮 竹 楓羅 純治解鮮 教室 高佐 藤豊治藤泰司 (1991,2.27 受付 ) 要 旨 当教室の研究の一環として, ヒトの全身の骨格筋内の栄養動脈の 分布に関する研究を 進めている 本論文では, 目本人成人 10 体 20 体側例の 足の 長母指伸筋にっいて, 栄 養動脈の起始部, 分枝状態および本筋内の分布領域等について検索した 本筋は主に下腿骨間膜 (mic ) を貫通後の前怪骨動脈 (Ta ) の 枝に栄養されるが, 腓骨 動脈 (Pe) からの小枝が mic を貫通後本筋を栄養する例が多 V これらの筋枝には本筋のみを栄養する長母指伸筋枝 (Rehl) と, 他筋との共通枝 (om ) が存在した 栄養動脈の分布状態による分類および頻度は, 工一 a 型 上上部筋束には Ta から分岐した前脛骨反回動脈 (Rta) が分布し, 上下部 中部 下部筋束には Ta (om ),Ta ( Rehl ) および Pe が分布 (5 %), 1 b 型 1 一 a 型から Rta が欠如 (80 %), H a 型 1 a 型 から Pe が欠如 (5 H b %), 型 1 b 型から Pe が欠如 (10%) であった 尚, a 型ではよく発達した上上部筋束に Rta が分布していた Ta ( om > の半数は本筋を貫通後に長指伸筋を栄養する貫通枝 (pb ) であった a 型は同一個体 ( 男性 ) の左右に出現した 栄養動脈の分布面積比では,Ta が96.0% を占め, その中で Ta ( om ) は 58 9% ( うち pb が27ユ %), Ta (Rehl) は 35.8% であった 栄養動脈の総数は 11 本 から 22 本で, もっとも頻度の高かったのは 14 本 (20 % ) とエ 6 本 (20%) であった 緒 言 る所見を得たので考察を加えて報告する 足の 長母指伸筋は下腿伸筋群に属し, 発生 25,53 8 学, 比較解剖学 18,2, } および機能に 材料と方法 研究材料 日本人成入 10 体 20 体側例 ( 男 6 体, つ いての 5 筋電図学 等 に関する興味深い数 女 4 体 ) を用 V た (Table 1) 多くの報告が見られる しかし, ヒトの本筋の栄養血管に関しては, 泉, 等 } の報告があるのみで, 筋内分布の詳細な 検索による分類による頻度等の報告は皆無である 著者らは 足の 長母指伸筋の栄養動脈の筋内 研究方法 ; 10 % ホルマリンで前固定を行った遺体から 足の 長母指伸筋を主幹動脈からの分枝と共に剖出し, 各栄養動脈内に佐藤の 36 方法 37 ) によリァクリル系色素 (Liquitex, Value 3 Red ) を注入し, 重合後, 実体顕微鏡下で本筋の筋束お 分布につ いて詳細に検索し, 同時に本筋の停止腱 よび腱の構成, ならびに筋内の栄養動脈および支 および支配神経の分布等についていささか興味あ 配神経の分布状態等について詳細に検索し, 栄養 Key words 二 Human,Arterialsupply,Extensorhallucislongusmuscle,Anteriortib 三 al artery,peronealartery.

2 104 横山寿光ほか 杏林医会誌 22 巻 2 号 Table l Number,sex, age,and classifled type in each case Refer to Fig.2for nu trient artery data, No. Sex AgeRigh Types 帽 Leff 30 M 62 π 一 bii b 64 M 56 *1 bll b 66 M 72 * 匣一 bl 互一 b 71M 79 レ α 1 o 73 M 45 * 1 bp b 74 M 51 * 1 bii b 17 Funknown1 b! H b 46 F 38 * 五 bil b 52 F 45 * 卜 bi1 b 69 F 68 * 卜 bll b * Bo 山 sides are of same type. 動脈および神経の走行を原寸大でトレースした さらに, 算出した 各動脈の分布領域を定めて面積比 (%) を 所 見 例 1 No.73, 男, 45 歳, 右側 Fig.1 は本例の栄養動脈の起始部の形態 ( 左 ), 本筋内の栄養動脈の分布状態を細動脈の単位まで ( 中央 ), および支配神経 ( 深腓骨神経 N. pero neus profundu s の 足の 長母指仲筋枝 ) の筋内 の分布走行 ( 右 ) のトレースである 6 足の 母指伸筋 (EHL ) は下腿の前面で前腥 骨筋 (TA ) と長指伸筋 (EDL ) に内 外から被 われて, 筋質部の上部および中部は表面からは見 えなかった 本例の起始部は, 腓骨 ( 長さ 370 mm ) の頭尖 Apex capitis fibulae から下方 104 mm と 265mm の間 ( 長さ 161mm ) の骨間縁 Mar go interossus およびこれに接する下腿骨問膜 Membrana interosseacruris ( mic ) から短い起 始腱で起こっていた 停止腱は筋質部の頂点から 134mm 下の筋束の内側寄りの筋中から始まり, 10mm 下 ( 筋質部の頂点から 144mm ) で筋の内 側縁の表面に出て ( 腱 幅 4.8mm, 厚さ 1.6mm, 筋 幅 18.6mm, 厚さ 9.9mm ) 下内方に走る 起始部の最下端の筋束は内下方に延び ( 長さ 126. O mm ), 筋質頂より 272.Omm の停止腱の外側縁に つき, この位置はほぼ下伸筋支帯 Retinaculum mm,extensoru 皿 inferius の上縁に相当した 筋 質部は 140.OX Omln の三角形の半羽 状筋 penniform muscle を呈していた 上 下伸 筋支帯の下を固有の腱鞘 Vagina tendinis m.e h.l にっっまれて通過し, 第 1 中足骨の背面を前進し, 第 1 中足指節関節 Articulatio metatar sophalangea I の関節包に腱の両側から短い線維 束を出し, さらに前進して指背腱膜に移行して第 1 末筋骨底に停止した 本例では副腱は欠如 (1 型, 所見の総括の項参照 ), 停止腱のみの長さは 175 3mm であり, 本筋の重量は 20g, また長指伸 筋および前経骨筋の重量は 64g と 102g であった 支配神経は筋質部の最上端の高さで深腓骨神経 N. peroneus profundus (Npp ) から分岐した 1 本の 足の 長母指伸筋枝が下行して, 筋質部上 部で栄養動脈の Ta ( om 3 ) の枝と共に筋中に侵 入し, すぐに上部枝を出し, さらに筋束内を下行 して中部枝および下部枝に分枝して, それぞれの 部位の筋線維を支配していた 栄養動脈は Fig. 1 の如く, 最上部には Ta ( om 1 ) が分布してい るが, この枝は前腥骨動脈 A.tibialis anterior (Ta ) の本幹から分岐した後に, 2 本の長指伸筋 枝を出し, 最終枝として長 短腓骨筋枝と共通枝 ( om ) の Ta ( om 1 ) となり,Ta (om 1) は本 筋に浸入する前に長指伸筋枝を出していた 本枝の分布面積比は2.7 % であった 同様に Ta ( om 2 ) は 7.3%, Ta ( om 3 ) は 17.4%, Ta ( om 4 ) は 10.7% を占めていた 上下部では本筋固有の長母指伸筋枝 Ta (Rehl 1 ) が 2.3 %, さらに中部では Ta (om 5) が 6.9%, Ta ( om 6 ) が 12.7 %,Ta ( o 皿一 7 ) が 3.4%,Ta ( om 8 ) が 3.4%, また腓骨動脈 A. peronea (Pe) から mic を貫通した Pe (om 1) が 3,3%, Pe ( om 2 ) が 2.5 % 分布していた 下部

3 The KyorinMedicalSociety Medical Society 199!IF 6H t Fo (reo)ftntr("imaoutan"fi}ldvh< 105 Pecf N.pp Tpcytpmic Te p,tpsol M TPPsol sd tp edlta editaed1 Ta(orn-t)pa... sotpeb,pel'taate' ed1 solta(om-2)ta tp '}'ViTa(o ' eb,pel fhltfphl edl fhltpracem-4)ta Tata"N-Ota toth1.tmtpfhl fhl.peb,pelsel tatata(orn-s}ta }tp ed1ta(om-6) tp fhltprw fhtpeb-)eledltacom-7)edl,pet)taforn-e}tata tped] tppe(om-2) ed1 tp Pe{om-r) edl peesoja(orn-50al RcofN. +RpefedlTa(Rch1 tato(orn-9) ) c/ Rce pebml ta }ed1 Pepeb(t)MalMam Cf edl fhl Mal ;MamMIC A. malleolaris anterior medialis Ml,N.ppNtem Pe peb A. peronea pel Po pop (Dorsai) (Ventral) (Medial aspect) Fig. 1 Intramuscular distribution of the arteries te extensor hallueislongus muscle. Case 1 No.73, Male, 45yr., Right (TypeI-b) R, circumflexus fibulae Rco R, communicans to M, extensor digitorumlongus to M. fiexor hallucislongus A. malleolaris anterior lateralis Membrana interossea cruris Rr, malleolares laterales N, peroneus profundus A. nutricia tibiae Branch to other rnuscle to M. peroneus brevls to M. peroneus longus A, poplitea to M, popliteus and nerves supplying Rehl R, extensor halluci longus s Rpef R. perforans Rta A, recurrens tibialis anterior sol to M. soleus (t) tendon Ta A. tibialis anterior ta to M, tibiails anterior tp to M, tibialis posterior Tpc A, tibialis posterior communis Tpp A, tibialis posterier propria A Branch to the M. extensor digitorum longus * anastomosls NII-Electronic Library

4 106 横山寿光ほか 杏林医会誌 22 巻 2 号 では Ta (om 9) が 11.4 %,Ta ( om 10 ) が 1.8 %, Ta (Reh1 2 ) が 7.1% 分布していた 分布面積比を総括すると, Ta は 94.2 % で, その中で Rehl は9.4% を占め, また Pe は5.8% であった Ta (om ) の 10 本の中で本筋を貫通後に長 指伸筋に侵入して分布する貫通枝 (pb ) は 3 本で あり, 栄養動脈の総本数は 14 本であった 本例は栄養動脈の分類で 1 b 型に属する (Fig,2 参照 ) 例 2 No.73, 男,45 歳, 左側 は最も出現頻度の高い 筋質部の腓骨の骨間縁および mic からの起 始部の長さは 164.5mm で, 筋質部は OX280.5mm の長三角形の半羽状筋の形態を呈した 停止腱は出現部より 12.Omm 上方の筋 東中から起こり, 全長は 110.7mm であった 停止腱上端から 154.2mm の部位の腱鞘の内側から, 幅 2.2mm, 厚さ 0.4mm の細い副腱 Nebe nendsehne (NES ) が分枝し, 50.5mm 前走して 第 1 指基節骨底に停止し, 主腱 Hauptendsehne (HES ) はこの分枝点から 80.5mm 前走して第 1 指末筋骨底に停止していた 停止腱 から分岐した副腱を有し,n 型 (HES ) は腱 ( 所見の総括の項 参照 ) に属するので, No.73 は左右異型である 本筋の重量は 18g, 筋の重量は 65g と 108g であった 支配神経は例 1 と同様に, また長指伸筋および前隆骨 筋質部の最上端の高 さで Npp から分岐した 1 本の固有の 足の 長 母指伸筋枝が上上部の筋束から侵入し, 行し, 1 本の上部枝, 2 本の中部枝, 枝を分枝して筋束を支配していた 筋中を下 1 本の下部 栄養動脈の総本数は 15 本 分布面積比は, Ta ( om ) は 9 本で, それぞれ 11.0%,8.8%, 6.4%, 3.1%, 12.7 %, 6.4%,2.3 %, 5.9%,1.4 % で, 合計 58.0 % Ta (Reh1 ) は 5 本で, それぞれ 2.0%, 10.5%, 14.5 %, 4.4 %, 7.4 % で, 合計 38.8% Pe ( om ) は 1 本で, 3.3% を占めていた Ta の 合計は 96.8% であり, Ta ( om ) の中の pb を 9 本中 2 本認めた 栄養動脈の分布形態は 1 b 型 (Fig,2 参照 ) に属したので,No.73 の栄養動 脈の分布式態は左右同型であった 他の例も上記の 2 例と同様に詳細に検索し, そ の結果を事項別に総括し, 報告する 1, 足の 長母指伸筋の形態について 本筋は腓骨の骨聞縁およびこれに隣接する下腿 骨問膜から起始する純粋な半羽状筋である また, 本筋の起始部は腓骨の中央部で, 起始部の最上端はほとんど例 1 の如く腓骨の頭尖 Apex capitis fibulaeから 10cm 前後下方である しかし,No. 71L ( 男 ) では頭尖から 25mm, また反対側の No. 71R では頭尖から 52mm 下方であり, 両者とも 足の 長母指伸筋の上上部筋束が特に発達した 例であった 尚, 全例の検索結果, 本筋の欠如, 前脛骨筋 および長指屈筋との筋束との移行 癒合等の破格 例は認められなかった 停止腱の副腱 (Nebenendsehne NES ) に いて 著者らは副腱の形態について次の 3 型に分類し, それぞれの型の頻度を算出した 1 型 主腱 (Hauptendsehne HES ) のみで NES の欠如するもの 男 ;No.64R,No.66L, No.73R 3 例 (15,0± 7.98 %) H 型 NES が HES から分岐しているもの 男 ;No,30R,No.30L, No.73L, No.74L (4 例 ) 女 ;No.17R, No.17L,No.52R, No,52L (4 例 ) 合計 8 例 (40.0 ± 10.95%) 但し, No.73L は NES が HES の腱鞘から起こ っていた 皿型 NES が固有の筋束を有するのもの ( 筋束分離型, 副長母指伸筋 M.extensor hallucis longus accessorius ) 男 ;No.64L, No.66R,No.71R, No.71L, No.74R ( 5 例 ) 女 ;No.46R, No.46L, No.69R,No.69L, (4 例 ) 合計 9 例 (45.0 ± 10,12%) 1 型は男性のみ, また左右同型 ( 一印 ) は男 2 体, 女は全例であたっ NES の左右の太さを比 較すると, 右側の太いもの 2 体 ( 男, 女 ), 左側 の太いもの 5 体 ( 男 2 体, 女 3 体 ) であった

5 1991 年 6 月ヒトの 足の 長母指伸筋の動脈分布にっいて 107 筋重量につ いて 本筋の重量は最小 11g から最大 34g 左右ほぼ 同重量のもの 1 例 ( 男 ), 左側が重いもの 1 例 ( 男 ), 右側が重いもの 7 例 ( 男 14, 女 4 ) で あった 下腿伸筋群の総重量に対する 足の 長母指伸 筋 (EHL ), 長指伸筋 (EDL, 第 3 腓骨筋を含む ) および前隆骨筋 (TA ) の重量比を算出した 右側 ;EHL EDL TA 17.2 = (% ) 左側 ;EHL EDL TA = (% ) 本筋は右側が左側よりやや発育が良好といえる 2. 支配神経について 本筋の支配神経は深腓骨神経 N, peroneus pro fundus L4 Si, Npp ) からの筋枝であるが, 本筋 のみに分布する固有の長母指伸筋枝 (Nrehl ) と, 長指伸筋との共通枝 (Nom ) が認められたので, 4 型に分類し, その出現頻度を算出した 1 型 Nrehl が 1 本のもの 男 ; 璽 No.30L.No.66R, No.71R. No.71L, No.73R, No.73L ( 7 例 ) 女 ;No.17L,No.46R.No.52L (3 例 ) t 合計 10 例 (50.0 ± 11.18%) 2 型 Nom が 1 本のもの 男 ;No.64L (1 例 ) 女 ;No.69R, No.69L ( 2 例 ) 合計 3 例 (15.0 ± 7.98%) 3 型 Nrehl が 2 本のもの 男 ;No.66L,No.74R, No.74L ( 3 例 ) 女 ;No.17R, No.46L, No.52R (3 例 ) 合計 6 例 (30.0± %) 4 型 Nreh1 と Nom が 1 本ずつのもの 男 ;No.64R ( 1 例 ) (5.0 土 4.87%) 支配神経が 1 本 (1 型と 2 型 ) は 13 例 (65.0 ± %), 2 本 (3 型と 4 型 ) は 7 例 (35.0 ± 10,67%) 認められ, また左右同型 ( 一印 ) のもの は 5 体 (50.0± 15.81%) 出現した 2 型の場合 には全例, 本筋の上端よりも高い位置で Npp の 本幹から共通枝として分岐していた 3. 足の 長母指伸筋の栄養動脈の起始および edi Type [ q Type b Type 囗一 Type [1 b ml 信 Tp じ mic 八 1. 1 IiTpc TPP やTPP やTPP や巴巴 P 已 舗 1 edl I Peed I mic ド旨 1Pe gc migt 詐 毛 ii 1 II 旨ヒ丁 q τoi 111T RehI Rehl Roh1 R 曲 1 IcaseFig.2 Tp edi 1Pe 1 ヨ.Tα 16cqses Icqse 2cases Origins and distribution of arteries Tpc supply 三 ng extensor hallucis 亘 ongus muscle. Type I a Rta,which branchesfrom Ta after itruns lnto mic distributes, in upper upper part of muscle bund les,and Ta (om ),Ta (Rehl) and Pe distribu 亡 e in lower upper,middle and lower parts of musde bundles. Type I b same as I a butiacking Rta. Type H a sanle as I a but lacking Pe. Type H b same as I b but lackingpe. edl to M,extensor digi じ orum longus mic Membrana interossea cruris om Branch to other muscle Pe A. peronea Rehl R.extensor hallucislongus Rta A.recurrens むibialisanterior Ta A.tibialis anterior Tpc A.tibialisposterior communis TpP A,tibialis posteriorpropria 分布状態による分類とその出現頻度 (Fig.2 ) 1 a 型 上上部筋束は下腿骨間膜 ( mic ) 貫 通直後に前経骨動脈 (Ta ) から分岐する前腥骨反 回動脈 A.recurrens tibialis anterior (Rta ) が 分布し, 上下部 中部 下部筋束には Ta ( om ), Ta ( Rehl ) および腓骨動脈 A. peronea (Pe ) か らの小枝が mic を貫通して本筋に分布する 11 列 (5.0 ± 4.87%)o I b 型 1 a 型から Rta が欠如 16 例 (80.0 ± 8.94% ) H a 型 1 a 型から Pe が欠如 1 例

6 108 横山寿光ほか 杏林医会言志 22 巻 2 号 7tR e OO % Type I a TypeI arta CN= 1) ηpel b 17R30L46R46L52R52L64R64L66R66L69R69L73R73L74R74L Type L b N= J6) To 95.8 % Rセu om RehI 79 60Q % 137 % 279 % 丁 ( 953 % om RehI 58.6 % 26 %, 36.1% 丁 ypen ( Rrq om RehI ov 1) % 俗 4.6 %, 42.6 % Tα 10Q % Pe 4.2 % Pe 48 % obo6 % Typell b N = 2 ) om656 丁 α 100 % % C38.3V., Reh 54.4 % 71L [7L30R Type Type 皿一 q I b 驪. P { n1) E] (M m [ 口. m } 団 T CR ) 日 P R hl τ 囓 (M O 図 T 刪 Fig.3 Arterial areas of dis 亡 ribution in extensor ha11ucislongusmuscle Mal A.malleolaris anterior lateralis Mam A,malleolaris anterlor medialis om Branch to other muscle Pe A. peronea Rehl R,extensor hallucislongus Rta A.recurrens tibialis anterior Ta A. 亡 ibialisan 亡 er1or (5.0± 4,87%) ff b 型 1 b 型から Pe が欠如 2 例 (10.0 ± 6.71% ) a 型の例 (No 7 ユ R および No.71L ) では上 上部筋束が非常によく発達し, その部位に Rta が 分布して V た また全例の Ta ( om ) で, 本筋を 貫通後に長指伸筋に侵入して分布する貫通枝 (pb) を有するものが約半数存在した また, No.46L は AdachiD の hohe Teilung 1 型 (O.9± 0.34 %) に該当する稀な破格であるが, 本筋に対 する分布には特に関係がなく, 他の後騒骨動脈や 24 腓骨動脈の欠如または弱小型等の破格例も存在 しなかった 4, 足の 長母指伸筋の各栄養動脈の分布領域 の面積比 (Fig.3 および 4 ) Tq TG ( R α ) (N820 } (N 冒 2} 96,0 % 8.5 % T α (om ) TQ(Rehl } Pe (Nt20 ) N= 2e, (N817) 589 % ta7.1% } 35 β % 4.7 % Fig.4 Area ratios in each type of dlstribution of arteries supplying extensor hallucis longus muscle. ( ) Distribution ; of branches pie rcing through extensor hallucisiqngus muscie tq extensor digitorum longus muscle, ob other branches except om and Rehl Fig.3 om Branch to other muscle Pe A. peronea Rehl R.extensor hallucislongus Rta A.recurrens tibialis anterior Ta A,tibialis anterior は各々の例の栄養動脈の分布領域の面 積比を示し, Fig.4 は Fig.3 の各例を型別に 平均したものである 1 a 型 Ta (Rta) 7.9%,Ta (om ) 60.0%, Ta (Rehl ) 27.9%, Pe 4.2% 1 b 型 Ta ( Om ) 58.6%, Ta ( Rehl ) 36.1%, Ta ( om Rehl 以外の枝 ) O.6 %, Pe 4.8 % H a 型 Ta (Rta ) 9.0 %, Ta ( om ) 48.4%, Ta ( Rehl ) 42.6% ll b 型 Ta ( om ) 65.6 %, Ta ( Reh1 ) 34.4% Ta が全体の 96.0 % を占める Ta ( om ) は全 例に存在し, 平均 58.9% で, その中で pb は 27 % を占め,Ta (Rehl) は 35.8% の分布面積比を有していた 尚, 1 b 型の om および Rell1 以 外の枝は No.46R および No.46L の前外果動

7 199 工年 6 月ヒトの 足の 長母指伸筋の動脈分布について 109 Tab 置 e 2 Numbers Brqnche5Nu of arteria!l ranches supplying extensor hallucislongus muscle 曲 ertype5r qomrehimoim σmomr blto 丁 q Pe olgose5 30R ロー b7 4, 4 Il52L1 b6 3 } R 1452R 46R b7 4i 卜 b 聖 17L ロー bio {7 } 4 50L1. biq 2 2 卜 b R 卜 biq ( 乱卜 b9 こ 2 5 亅 1 17R1 b L1 b6 さ L1 曹 b9 51 旧 71L 口 q1ii 7 ) 4 66 し 1 b9 6 } 7 1F 74L レ bii く 4, R1 b13 こ 7 ) R o11315 ) R b 5 7 } L 69RL b b14 5 } 7 1 Brロ nche5 C 巳 II IQ 37 2ll 215 層 Brqnches ; COS εs 10 [ I I2 り II i 層 i Q I21 2 ( ) Distributionarea of the branches pier cing through 亡 he ex 亡 ensor hallucis Iongus muscle to the extensor digi 亡 oruln longus 皿 uscle Mal A,malleolaris anterior lateralis Mam A.malleolaris anterior medialis om Branch to other muscle Pe A. peronea Rehl R.extensor hallucisiongus Rta ; A.recurrens tibialisanterior Ta A,tibialis an 仁 erior 脈 A.malleolaris anterior lateralis(mal ) と, No.66R の前内果動脈 A.malleolaris anterior medialis (Mam ) である 5 栄養動脈の種類と総本数 (Table 2) 最低本数 11 本 (No,30R, No.52L ) から最高 本数 22 本 (No.69R, No.69L ) までで, 最高例は 女性 (No.69) の両側に出現した 出現頻度の多 V ものは 14 本と 16 本で, それぞれ 4 例 (20.0 ± 8.94%) ずっであった 考 足の 長母指伸筋 M, extensor haliucislon gus,langer Grosszehenstrecker Extenseur, pro pre du gros orteil,p6ron60 sus phalangettien (CHAUSS ), p6ron60 susphalanginien ( DU M ) 11, 姆長仲肌 は前膰骨筋, 長指伸筋, 第 3 腓骨筋と共に下腿の前面に位置し, 下腿の伸筋群 を構成してい 25 る 個体発生学的所見 53 では腓骨筋群と共に胎生 4 期 (CR 1L6mm ) に筋原基の 出現が認められ, および発達が早い た遠藤 1ω 察 下腿の屈筋群よりも分化の時期 しかし, 生後の発育を観察し の報告では, 下腿筋総重量に対する胎児 と成人の比率は, 伸筋群 足の 長母指伸筋 (EHL ) は 4.5% と 3.7 %, 長指伸筋 (EDL ) は 10.3 % と 8.9 %, 前怪骨筋 (TA ) は 15.8% と 14.7%, 腓骨筋群 ; 長腓骨筋 (PL ) は 10.3% と 8,1 %, 短 腓骨筋 (PB ) は 6.5 % と 3.9%, 屈筋群 足の 長母指屈筋 (FHL ) は 0.3% と 8,1%, 長指屈筋 (FDL ) は 6,5% と 3.9%, 後隆骨筋 (TP ) は 11.9 % と 12.3%, 腓腹筋 (G ) は 31.4% と 34,9%, ヒ ラメ筋 (S ) 33.9% と 42,8% である 伸筋群, 腓骨 筋群および屈筋群の FHL と FDL は胎生期に 比較して成人期では比率が低下するが, 屈筋群の TP,G, 特に S ははるかに良好な発育を示す の PrimatesiSl では屈筋群の TP, G および S の 発育は Homo ほど著明ではないので, この Ho mo の特徴は二足起立 歩行 plantigrade loco motion のためと考えられる また, 足の第 1 指と第 2 5 指に関係する伸筋 群の EHL と EDL の重量比 (3.8/8.9 1/2) と, 屈筋群の FHL と FDL の重量比 (8.1/ 3.9 2/1) がまったく逆であるのは, Homo の 足の機能を考察する上で大変に興味深い所見であ り, 著者らの測定値もほ 10 ぼ遠藤 } の比率と同様の 結果であった 481 比較解剖学的には, 有尾両生類 Caudata お よび爬虫類 Reptilia の総指伸筋が, 哺乳類 Mam malia で長母指伸筋, 長指伸筋および第 3 腓骨筋 他

8 110 横山寿光ほか 杏林医会誌 22 巻 2 号 の 3 筋に分化する しかし, Mammalia2 1 でも Bos, Equus,Capra,Felis8 ) 等では EHL を欠如し,Canis2s },Lepus2m では退化した EHL が痕 跡的な第 1 趾に停止し,Sus2 では内側副蹄骨に 停止する Ursus3, の EHL は発育が良好で, 第 1 指の末節骨底につくが, 停止腱中に種子軟骨が 存在する また,Macacus34 ) では EHL と EDL および TA との筋束の癒合例 (23,5% と 11 7%) の報告があるが, これは復古型とも考えられ, 著 者らの Homo の検索では認められなかった て 足の 長母指伸筋の形態および機能につい a ) 著者らの 筋質部および停止腱の形態 42 ] 4 足の 長母指屈筋, 長腓骨筋, 短 40 腓骨筋等の報告にもあるように, これらの筋は 外観では半羽状筋 penniform muscle であるが, 停止腱が筋上部から起こり, 筋束の中央を下行するので, 上部 中部は実質的に羽状筋 bipenni from muscle で, 下部では外表に出現した停止腱 が筋束の片側に寄り, 半羽状筋の形態をとる 本 筋では所見の項で述べ た如く, 停止腱が筋質部の ほぼ中央の内側寄りから起こるので, 長三角形の 純粋な半羽状筋の形態を呈する b ) 停止腱の形態 主腱 Hauptendsehne(HES ) は第 1 中足骨の 背面を通り末節骨底に停止する ヒ トでは多くの 例で副腱 Nebenendsehne (NES ) が認められ, 主に HES の内側を前走し, 基節骨に停止する 9, 11, , 29, 33, 35 44, 著者らは本筋の 停止腱について 1 型 (HES のみ ), H 型 (NES が HES から分岐 ), 皿型 ( NES が固有の筋束 をもつ副長母指伸筋 ) の 3 型に分類し, その出現 頻度はそれぞれ 15 0 ± 7.98%, 40.0 ± % お よび 45.0± 11.12% であった 各型について先人の報告を加えて考察する ( 分 母を総検索数, 分子は出現数 ) 1 型 日本人成入 河合 21) 300), 今村 16 27) (5 / 50 ), 松川 (3/20) 合計 73/774,9 4 ± 1 05%o 15, 日本人胎児 碇 44 ) アイヌ人 椎名 (1 / ), 庄 (4 / (60/200 >, 著者ら (30/50), 60.0 ± 6.g3% (0/10), 0 % 中国人 劉 33 (66 / 100 ), 66.0 ± 14.98%. ヨーロッパ入 Le Double49 ) (14/40), 35.0± 7.54% o 上記の如く, 日本人は副腱の出現頻度の高い人 種といえる 2P ff 型 ; 河合は HES から NES が直接分岐 する 発育中等度と, HES の腱鞘から NES が分岐する 発育低度に分類し, 著者らの No, 73L は後者に属する 発育中等度 21 日本入成人 河合 (26/72 ) 46 } ), 庄 (153/ 300), 著者ら (7/20 ) 合計 186 / 392, 47.4 ± 2.52% 発育低度 21 日本人成人 河合 ] 46 (29 /72 ), 庄 (82 /300 ), 著者ら (1/20 ) 合計 122/392,28,6± 2.28 % 皿型 日本人成人 河合 (16/72 ), 庄 (60/ 300 ), 著者ら (9/20) 合計 85 / 392, 21.7 ± 2.08% 河合および庄は NES の幅は両側に出現した時 には右側が左側より太いと報告しているが, 著者 らは右側の太いもの 2 体, 左側の太いもの 4 体で, 左側の太い例の出現頻度が高かった 副々腱束 副腱が 2 本ある場合 日本入成人 河合 (1172 ), 庄 (4 / 300 ), 今村 (2/50 ) 合計 7/422, 1.7± 0.63% 副々腱束は著者らの検索例中には認められなか った 上記の報告の副腱はすべて主腱の内側を走るが, Nagel32 はメラネシア人 (40 歳男, 右 ) で主腱 の外側から分岐し, 副腱を報告している 主腱に併走する大変に珍しい 比較解剖学的に NTS の出現は,Macacus34v で,, 1 例 (2.9%) 報告があるのみで, Pongo Pan Gorilla4B } では報告例がない ) また, 著名な解剖学書の Spalteholz47(Han. datlas der Anatomie des Menschen, 1921), Rauber Kopschso ) (Lehrbuch und Atlas der Anatomi6 des Menschen, 1987 ), Grayi2 (Gray s Anatomy, 1973 ), Rouviere9 > (Anatomie Hu maine,1979 ) の図譜では主腱のみで副腱は描か

9 1991 年 6 月ヒトの 足の 長母指伸筋の動脈分布にっいて 111 れてない しかし, 日本の代表的解剖書の分担解 剖学 19, には主腱から分枝し, 内側を併行して走る 副腱 ( 且型 ) が描かれており, 解剖学書の図譜上 にも人種差を認め, 大変に興味深い c) 支配神経について Sl 唐人原 ] は 30 側の検索から, 深腓骨神経 N. peroneus profundus (L, Sl ) から分枝する 足 の 長母指伸筋枝の本数は, 1 本 6.7%, 2 本 23.3 %, 3 本 23.3 %, 4 本 26,7 %, 5 本 13.3%, 6 本 6.7 % で, 単独枝と長指伸筋枝および前膰骨筋枝 との共通枝があると報告している 著者らの検索 例では 1 枝が 13 例で, そのうち単独枝は 10 例 (50.0 ± 1L18 %), 共通枝は 3 例 (15.0 ± 7.98 %) である 2 枝は 7 例で, 単独枝のみのもの 6 例 (30.0± %), 単独枝と共通枝は 1 例 (5.0± 4.87%) であり, 共通枝は長指伸筋のみで, 唐人 原の報告とやや相違していた e) 足の 長母指伸筋の機能について 本筋の主な機能 5 14 は母指の伸筋であるととも に足関節の背屈筋である 22 工藤は足関節底屈運 動の EMG の所見で, 70% の症例でわずかな放 電が見られ, また足の回外, 回内運動時にも薯明 な放電活動が認められたことから, 本筋は底屈運 動時に stabilizing muscle として働くと報告して V る また, Lapidus23 は本筋は SubtalarAxis の外側を通過するので, 距踵関節 Articulatiota locruralis ( 上跳躍関節 ) では Evertor として働くが, 踵立方関節 Articulatio calcaneonavicul aris ではこの関節軸の内側を通過するので, In vertor として働くとし, 足の回外, 回内いずれの 運動にも assistant mover として関与すると記載 しているのが興味深い 足の 長母指伸筋の栄養動脈について Homo の下腿の動脈の分岐形態につ V ては, 目 本人成入では AdachiD 等が, 日本人胎児につい て 2 ) 45 } 55 は青井, 嶋田, 矢野 ) が, Homo 以外の Mammalia にっ v ては Crouch8 },Goss12 20,45 等 が詳細な報告を行っている また, 骨格筋内の血管分布の組織学的レベルで の検索は Bennett ら 6,, Myrhage ら 3P が, 腱 s,wqilen 内の栄養動脈の分布に関しては新井 berg54 等の多くの報告がある 動脈の筋内分布に関する数少ない報告の中で, tg 泉 は本筋の上部より下部まで数本の短い前経骨 動脈 A.tibialis anteri r (Ta ) の筋枝が中央部 後面より侵入して, いずれも下方に短い少数の分 枝を分布すると説明し, 泉の附図では 6 本の長母 17 指伸筋枝 (Rehl ) いを描ている また, 今奈良 は 30 側の検索例から, Ta は 30 例 (100% ), 足背 動脈 A.dorsalispedis (Dp ) は 21 例 (70 %), 腓 骨動脈 A.peronea (Pe) が 13 例 (43.3%), 前内 果動脈 A.malleolaris anterior 皿 edialis (Mam ) が 7 例 (23,3 %), 前外果動脈 A, malleolaris anterior lateralis(mal) が 2 例 (6.6%), 前膰 骨反回動脈 A.recurrens tibialis anterior (Rta ) が 1 例 ( 3,3 % ) また,Ta からの本筋枝の本数 は 7 本から22 本で, 本が 14 例 (46.6%) で最も多く, 次 V で 本が 7 例 (23.3%) Pe からの本筋枝の本数は 1 5 本で, 1 本が 8 例 (23.3 %) で最も多く, 次 V で 2 本が 4 例 (13.3 %) で工あると報告してい 9 る 泉 は 30 側の検索に もかかわらず, Pe や Rta 等からの筋枝の記載も なく, また頻度も不明である 今奈良 17 の報告は 著者らの所見とほぼ一致するが,Dp からの筋枝 は著者らの検索中には認められず, この相違は今 奈良の Ta と Dp の境界がやや高い ( 近位 ) ため ではないかと推察する 著者らは Dp からの枝が 足の 長母指筋腱鞘の周囲に分布している所見 を認めているが, この動脈枝が腱組織内に侵入す る所見は認めることが出来なかった a 著者らは本筋内の動脈分布を分類して, 1 型, 1 b 型 H a, 型 H b, 型の 4, 型に分 けたが, a 型では上上部筋束が非常によく発達し, その部位に Rta の枝が分布していたので, 著者 4 } らの検索した短腓骨筋と同様に本筋も筋の形態 と型のとの間に強い相関関係のある筋といえる 本筋に分布する栄養動脈の本数は 11 本から 22 本 であるので, 3 4 ) 8 本の長腓骨筋や 3 7 本の 40 短腓骨筋等の少数群に比較し, 9 22 本の 足 42 の 長母指屈筋や 本の前腥骨筋等の多 数群に本筋は属する また, 本筋の栄養動脈の分布型式は CampbelI

10 112 横 i[1 寿光ほか ら 7 ) の Type I ( many different sources ) およ び Mathes ら 261 の Type IV ( segmental vascular pedicles) に該当する 各栄養動脈枝の分布面積比に関しては他に報告 例がな V Ta が全体の 96 % を占め, 全例に存在 する Ta ( om ) は平均 58.9% で, この中で pb は 27.1% を占め, また Ta ( Rehl ) は 35.8% を占め ていた しかし, 1 本の筋枝の分布面積が 20 % を 越えるものはなかった 本筋の Homo 特有の副 腱の存在, 栄養動脈の本数の多数群に属すること, 加うるに機能学的に単に母指の伸筋であるばかり でなく, 足の回外 回内の assistant mover また 底屈運動の stabilizing muscle であることから, 足の 長母指屈筋とともに Homo が二足起立 歩行 plantigrade Iocom tion へと進化の過程を 進めたために, 他の Primates に比較して最も Homo としての特徴をそなえた筋に変化した筋 群の 1 っと推察出来る 結 当解剖学教室のヒトの骨格筋の栄養血管の研究 の一環として, 日本人成人 10 体 20 体側例の 足の 長母指伸筋について, 動脈内にアクリル系色素 (Liquitex, Value 3 Red ) を注入して筋内の動 脈の分布状態, 筋束 腱および支配神経等につい 論 杏林医会誌 22 巻 2 号 本筋を貫通後に長指伸筋を栄養する貫通枝 (pb ) をもつものが約半数に存在した. a 型は同一個体 ( 男性 ) の左右に出現し, 左右 同型が 7 体存在した 2. 各型の栄養動脈の分布面積比 1 a 型 Ta (Rta ) 7.9%, Ta ( om ) 60.0%, Ta ( Rchl ) 27,9%, Pe 4.2 % 1 b 型 Ta ( om ) 58.6%, Ta ( Rehl ) t 36.1%,Ta ( om Rehl 以外の枝 ) 0.6 %, Pe 4,2% 1 a 型 Ta ( Rta ) 9,0%,Ta ( om ) 48,4%, Ta (Rehl) 42.6% H b 型 Ta ( om ) 65.6%, Ta (Rehl ) 34.4% o Ta は全体の 96.0 % を占める また全例に認め られる Ta (om ) は平均 58.9% ( うち pb は 27.1 % ),Ta ( Reh1 ) は 35.8% を占めて V た 3. 栄養動脈の総数は 11 本から 22 本まで, 最も 頻度の高いものは 14 本と 16 本で, それぞれ 4 例 (20% ) であった 4, 停止腱について 1 型 ( 副腱が欠如し主腱のみ ) 3 例 (15% ) H 型 ( 副腱が主腱から分枝する ) 8 例 (40 % ) 皿型 ( 副腱が固有の筋束を有する, 副長母指伸 て検索し, 興味ある所見を得たので報告する 1. 栄養動脈の分布状態による分類および頻度 1 a 型 上上部筋束には下腿骨間膜 ( mic ) 貫 通直後の前隆骨動脈 (Ta ) から分岐する前隆骨反 回動脈 (Rta ) が分布し, 上下部 中部 下部筋束 には他筋との共通枝 Ta (om ), 本筋のみを栄養 する長母指伸筋枝 Ta ( Rehl ) お よび腓骨動脈 (Pe ) の枝が分布する (1 例, 5 %) 1 b 型 1 a 型から Rta が欠如 (16 例, 80%) U a 型 1 a 型から Pe が欠如 (1 例, 5 %) 1 b 型 1 b 型から Pe が欠如 (2 例, 10 %) 尚, a 型では上上部筋束が非常によく発達し, その部位に Rta が分布していた Ta (o 叫 ) では 筋 ) 9 例 (45 %) o ll 型の中の 1 例は副腱が主腱の腱鞘から起って いた ( 河合 21 ) の発育度の弱いものに属す ) 5. 支配神経は深腓骨神経からの筋枝であるが, 本筋のみに分布する固有の長母指伸筋枝 (Nre hi) と長指伸筋との共通枝 (Nom ) がある 1 型 ;Nrehl が 1 本のもの 10 例 (50 %) 2 型 Nom が 1 本のもの 3 例 (15 %) 3 型 Nrehl が 2 本のもの 6 例 (30%) 4 型 Nrehl と Nom が 1 本ずつのもの 1 例 (5 %) 稿を終えるにあたり, 本研究のためご協力を頂いた教 室員江村ゆかり嬢, 栗原敏枝嬢に深い感謝の意を表しま す 本論文の一部は, 第 72 回日本解剖学会関東地方会にお

11 1991 年 6 月 ヒトの 足の 長母指伸筋の動脈分布について 113 いて発表した 文 1)Adachi B Arter 三 ensystem der Japaner.Bd ll, Kyoto & Tekyo,Maruzen, 1928, p ) 青井文男 日本人胎児の下肢動脈, 巨医大誌 , ) 新井春次郎 ; 腱ノ血管, 東京医会誌 , ) 東昇吾, 佐藤泰司, 高藤豊治, 竹内隆治, 川島帝 都夫, 戸澤孝夫, 池谷知格 ヒトの長腓骨筋の動脈分布につ V て. 杏林医会誌 , )Basmajian JV MusclesAlive.Baltirnore,W i1. liams& Wilkins,1974. p )Bennett HS,Luft JH & Hampton JC Mor phological classifications of vertebrate blood capi1 laries.aln J Physio , )Campbell J & Pennefather CM The blood sup. ply of muscles,with special reference surgery.lancet ,1919. 亡 o war 8)Crouch JE Text Atlas of Cat Anatomy,Phi. ladelph 量 a, Lea & Febiger,1969. p )DelInas A Rouvi さ re H ; Anatomie Humaine, 11e Ed.,Tome 皿,Paris& New York, Masson, p > 遠藤充朗 下肢筋ノ重量的発育関係二就テ. 東京医会誌 , )Frohse F & Frankel M. Handbuch der Anato mie des Menschen.Bd ll,die Muskeln desmen schlichen Beines.Jena, Gustav Fischer,1908. p )Goss CM Graゾs Anatomy,Philadelphia, Lea & Febiger, )Hailisy JE The muscular variations in the hu. man foot.am J Anat 45 ; , )Hollinshead WH FunctionalAnatomy of the Limbs and Back.2nd ed.philadelphia & London, Saunders, ) 碇泰輔 人胎児の下肢筋の研究第 1 編下腿諸筋及び足筋. 医学研究 , 1950, 16) 今村貞勝 巨本人成人の足筋に就て. 医学研究 , へ 17> 今奈良盛文目本人下腿諸筋の動脈分布に関する研究鹿児島大医誌 , ) 石田英実 相対重量値からみた類人猿の下肢筋構成にっ V て 人類誌 , 1972, 19> 泉隆夫 二邦人下肢 於ケル筋動脈二 就イテ. 名古 屋医会誌 53 ; , ) 加藤嘉太郎 家畜比較解剖図説上巻. 東京, 堂,1983.p 養賢 21) 河合松尾 日本人長躅伸筋抵止腱ノ副腱束二角翠著剛誌 , 就テ. 22) 工藤弘毅 ; 二現象同時撮影法による足関節運動の筋 電図学的研究. 日大医誌 , 献 23) Lapidus PW Kinesiology and mechanical an atomy of the tarsal joints Clin Orthop , )Lipper 仁 H & Pabst R Arterial Variationsin Man. Classificationand frequency. Munchen, Bergmann Verlag p )Luthiger U Die Differenzierungder mensch!i chen ExtremitHtenmuskeln in Relation zu den Embryonalstadien.Z Anat Entwickl Gesch , )Mathes SJ & Nahai F ClinicalApplications for Muscle and MusculocutaneusFlaps.Toronto & London,Mosby,1982, 27) 松川光雄 邦人胎児の下肢筋に関する解剖学的研究, 岩手医大解剖業績集 , エ962, 28)Miller ME,ChrlstensenGC & Evans HE Ana tomy of the Dog.Philadelphia,Saunders,1964. p ) 森於苑, 小川鼎三, 大内弘, 森富解剖学 1 巻, 東京, 金原出版, ) 森田 信つきのわぐま Ursustorquatus japonicus ノ後肢筋ノ観察. 医学研究 , 1940, 31)Myrhage R & Eriksson E Arrangement of the vascular bed in differen types of skeletal mu scles.progress in Applied microciculation.vol 5.Basel, Karger, p, )Nagel R Die FussrUcken Muskulatur von Pa pua. und MelanesierfUssen.Z Morphol Anthropol , )Nishi S Miologio de la japano, Statistika ra porto pri muskolano 皿 a 夏 iojce japanoj.h.musko Ioj de malsupra 皿 embro.gunma J Med Sci , ) 奥田茂 Macacus rhesus の下肢筋の形態学的研究第 2 篇下腿筋及び足筋. 日大医誌 , 工 953, 35 ) 奥田茂下肢筋の破格数例. 口大医誌 12 ; , ) 佐藤泰司, 竹内隆治, 川島帝都夫, 高藤豊治, 戸澤 孝夫 ヒトの足底筋の動脈分布について. 杏林医会誌 , ) 佐藤泰司, 竹内隆治, 川島帝都夫, 高藤豊治, 戸澤孝夫 ヒトの膝窩筋の動脈分布について, 杏林医会誌 , 1984, 38) 佐藤泰司, 東昇吾, 竹内隆治, 川島帝都夫, 高藤 豊治, 戸澤孝夫 ヒトの下腿三頭筋の動脈分布につ いて. ( 1 ) 腓腹筋. 杏林医会誌 16 ; , 1985, 39) 佐藤泰司, 東昇吾, 池谷知格, 竹内隆治, 川島帝 都夫, 高藤豊治, 戸澤孝夫 ヒ トの下腿三頭筋の動 脈分布について. ( H ) ヒラメ筋. 杏林医会誌 16 ; , ) 佐藤泰司, 東昇吾, 池谷知格, 竹内隆治, 川島帝 都夫, 高藤睾治, 戸澤孝夫 ヒトの短腓骨筋の動脈

12 114 横山寿光ほか 杏林医会誌 22 巻 2 号 分布にっいて. 杏林医会誌 , ) 佐藤泰司, 東昇吾, 竹内隆治, 川島帝都夫, 高藤豊治, 戸澤孝夫, 池谷知格 副第 5 指屈筋 (M.He xor digiti quinti accessorius ) にっいて, 杏林医会誌 , ) 佐藤泰司, 川島帝都夫, 高藤豊治, 竹内隆治, 戸澤 孝夫, 五十嵐純, 東昇吾, 池谷知格 ヒトの 足 の 長母指屈筋の動脈分布について. 杏林医会誌 , ) 佐藤泰司, 竹内隆治, 川島帝都夫, 高藤豊治, 五十嵐純, 神林隆幸, 横山寿光, 守屋厚, 斎藤嘉代, 戸澤孝夫, 東昇吾 ヒトの長指屈筋の動脈分布に っ V て. 杏林医会誌 , > 椎名順二 アイヌ 人体質ノ研究, 其十二 アイヌ 人ノ下肢筋二就テ. 福岡医誌 , 1931, 45 ) 嶋田鷲四郎日本人胎児ノ下肢動脈. 第三編下腿部動脈. 慶応医学 , ) 庄 泰嗣 日本人の 下腿及び足筋の 停止腱の形態に つ いて. 慈恵医大解剖業 , ユ )Spalteholz W Handatlas der Anatomie des Menschen.Leipzig,Hirzel, )Starck D VergleichendeAnatomie der Wir. beltiere.bd 3.Berlin, Springer,1982. p ) 竹内隆治, 川島帝都夫, 加々野武男, 郭守仁 ; 下肢筋の破格数例. 日大医誌 19 ; , )Tillmann B & T6ndury G Rauber Kopscl1, Anatomie des Menschen.Band I. Stuttgart, Thieme, ) 唐仁原誠 日本人の下肢筋の神経 ( 筋枝 ) に関する 研究第 1 編下腿筋の神経筋枝について. 鹿児島大医誌 , ) 戸澤孝夫, 佐藤泰司, 高藤豊治, 竹内隆治, 川島帝 都夫, 東昇吾, 池谷知格 ヒトの前膰骨筋の動脈分布にっいて. 杏林医会誌 ,1987, 53) 上杉光道 ; 目本人胎児に於ける下肢筋の発生学的研究. 広島大第一解剖業 , )Wo11enberg GA Die Arterienversorgung von Muskeln und Sehnen.Zschr Orthop Chir 14 i , ) 矢野佑 南九州人胎児の下腿の動脈について. 鹿児島大医誌 ,1959.

13 TheKyorinMedical Medical Society 1991 ap 6 A t Fa) [mop)ftnie{out op et wt fi ntic D Vi ( 115 J Kyorin Med Soc 22 (2)103-vl15,1991 On thearterial Supply in the Human Hallugis Longus MuscleExtensor TosihimitsuYoKOYAMA, Atsushi MORIYA, Takayuki KANBAyASHI, Kayo SAITO, JunIGARASHI, Toyoharu TAKAFUJI, Tetsuo KAWASHIMA, RyujiTAKEUCHI and Yasushi SATO First Department of Anatomy, Kyorin University School of Medicine ' Distribution of arterial supply in human skeletal muscles has been examined in a series of our laboratory studies4,36-4s,52). This paper reports on the distribution of arterial supply observed by injecting acrylic pigment into the arteries of the extensqr hallucislongusmuscles of 10 bodieswith 20 sides in the cases of Japaneseadults. The muscle is mainly supplied by a branch from the A. tibialis anterior (Ta)after running through the membrana interossacruris (mic).in many cases, a portion of the muscle (arounditsorigin) is supplied by a branch of the A. peronea (Pe)after running through the mic. Ameng these arterial branches of the muscle are the R. extensor hallucislongus(rehl) which supplies this muscle alone, and brancheswhich are commen with other muscles (om). 1) Classificationsof arteries and frequency of their distribution Type I-a A. recurrens tibialis anterior (Rta), which branchesfrom Ta just after entering mic, is distributedin the upper-upper part of the muscle, and Ta (om),ta (Rehl)and Pe are distributed in the upper-lower, middle and lower parts, respectively, of the muscle (5 %). Type I-b Same as Type I-a but lacking Rta (80%). Type ll-a Same as Type I-a but lacking Pe -- (5%). Type ll-b; Sameas Type I-b but lackingpe. -(10 %). In the case of the types ---a, in which Rta isdistributed, the upper-upper part of the muscle is well organized. In regard to branchesof the Ta, the ramus perforans (pb)is present in halfof all eases, proceeding en to supply the M. extensor digiterum longus after runnlng through the Ta. The Type I-a arterial supply exists on both the right and left sides of the body (male). 2) Nutrient artery areas of distribution Type I-a Ta (Rta), 7,9%; Ta (om), 60 %; Ta (Rehl), 36,1 %, and Pe, 4.2 %. Type I-b Ta (om),58.6%; Ta (Rehl),36.1 %; Ta (otherbranches),o.6%, and Pe, 4.8%. Type fi-a Ta (Rta),9,O%; Ta (om),48.4%, and Ta (Rehl) Type [-b 42.6 %. Ta(om), 65.6%,andTa(Rehl),34.4 %- Ta is present in 96.0% of all cases, while Ta (om) is present in an average of 58.9 % (pbispresent in 27.1% of these). Ta (Rehl), which is present in all cases, accounts for a 35,8 % area of distribution. 3) The total numbers of nutrient arterial branches counted ranged from 11 to 22, with 14 (20%) and 16 (20%) registering the highestfrequencies. NII-Electronic Library