米中貿易戦争とマーケット 今週は イギリスでもアメリカと中国の間で起きつつある 貿易戦争の可能性 が 大きく報道されるようになりました 今までずっと英国の EU 離脱 (Brexit) についての報道が多かったのですが 完全に主役の入れ替わりという印象すら受けます 今回のコラムでは この貿易戦争の報

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1 米中貿易戦争とマーケット 今週は イギリスでもアメリカと中国の間で起きつつある 貿易戦争の可能性 が 大きく報道されるようになりました 今までずっと英国の EU 離脱 (Brexit) についての報道が多かったのですが 完全に主役の入れ替わりという印象すら受けます 今回のコラムでは この貿易戦争の報道を受けてのマーケットの反応 そして それが今後のドル円にどのような影響を及ぼすのかについて 考えてみたいと思います エスカレートしてきた米中貿易摩擦今週に入りますますエスカレートしてきた米中貿易摩擦 米中貿易摩擦の内容まず 米通商代表部 (USTR) が 4 月 3 日に 中国の知的財産の侵害に対し発動する制裁関税の原案を発表しました 内容は 約 1,300 品目に 25% の関税をかけるものであり 対象品目の総額は約 500 億ドル (5 兆 3000 億円 ) 相当 5 月末までに民間企業などからの意見をまとめ 最終的にはトランプ大統領が発動の是非を決めるそうです この発表の翌日 中国財政省は 大豆 自動車 一部航空機 とうもろこしなどの農産物を含む米製品 106 品目に対し 25% の追加関税を課すと発表 対象品目の総額は アメリカと同じく約 500 億ドル相当 貿易戦争は望まないが 殴ったら殴り返す! という中国政府筋の発言通りの内容となりました 貿易摩擦の恐いところ今回両国が選んだ 500 億ドル という額について調べてみると 面白い事実がわかりました 昨年の 中国からアメリカへの総輸出額の 10% に値する 昨年の アメリカから中国への総輸出額の 38% に値する つまり もし発動された場合 傷が深くなるのは アメリカ側 そして もう一点 上述のように アメリカ側は 5 月末までという 7 週間の猶予 を設定をしています それに対し 中国側からは同様の時間設定は 現時点では発表されていません この違いに対し 専門家は 中国はロビー活動に時間をかけたいので 敢えて時間設定しないのでは? という意見を述べていました

2 農産物価格急落中国が発表した制裁対象品の中でも特に農産物 ( 大豆 とうもろこし等 ) は 4 月 4 日の欧州市場開始と同時に 先物市場で急落しました これがその時のチャートですが 一気に 4 ~5% 急落しています チャート : 米ナスダック大豆 アメリカには コーンベルトや小麦ベルトと呼ばれる農畜産地帯があります ここでは 米国環境情報センター ( National Centers for Environmental Information:NCEI) の地図を載せますが 大豆 とうもろこし共に アメリカ中西部に広がっています

3 チャート : 米国環境情報センター (NCEI) ホームページ そして これらの農畜産地帯が広がる地域は 2016 年大統領選挙では トランプ大統領率いる共和党支持州となっているのが特徴です もし 米中共に貿易戦争に踏み切った場合 果たして 11 月に控える中間選挙を トランプ大統領はどう乗り切るつもりなのでしょうか? こういう問題もあるためか 今回の問題は双方の威嚇合戦で 正式発動する可能性は低いと言われる理由なのかもしれません

4 資料 : 連邦選挙管理委員会 (Federal Election Commission FEC) ホームページ 火消し役に廻ったトランプ大統領中国が報復措置を発表し 農産物や株価が急落した 4 月 4 日 トランプ大統領はご自分の Twitter を通して こう発言しました Donald J. 4 月 4 日 We are not in a trade war with China, that war was lost many years ago by the foolish, or incompetent, people who represented the U.S. Now we have a Trade Deficit of $500 Billion a year, with Intellectual Property Theft of another $300 Billion. We cannot let this continue! 中国と貿易戦争をしているのではない その戦争は何年も前にアメリカを代表していた馬鹿で無能な者たちのおかげで負けている 現在アメリカには 年間 5000 億ドル ( 約 53 兆円 ) の貿易赤字があり 3000 億ドル ( 約 32 兆円 ) に及ぶ知的財産が盗まれている このようなことをこのまま続けさせるわけにはいかない! この発言を受け 一時的に 600 ポイント近く下落していた米ダウ ジョーンズ株価が 一気にプラス転となり 緊張感がほぐれました 200 日線 またしても死守トランプ大統領が Twitter で呟くまでは 農産物だけでなく アメリカの主要株価指数も大きく下落していました 私は アメリカの制裁に対し 中国が報復することは火を見るより明ら

5 かですので この問題は既に織り込み済みだと思っておりましたが この下落を見る限り間違っていたようです 私は株の専門家ではありませんが 最近マーケット関係者が注意しているのは 1 アメリカの主要株価指数の 200 日線への攻防 2 ブル マーケット ( 上昇 ) の調整による下げなのか? それとも 本格的なベア マーケット ( 下げ ) への転換なのか? の 2 点です 主要株価指数の 200 日線への攻防ニュースを見ていると アメリカの株式指数急落の報道がやけに目に付きますが 主要国の中でもドイツやイギリス そして日本の株価は既に 200 日線を下に抜けています 出典 : Stockcharts それに対し アメリカは S&P500 ダウジョーンズ ナスダックそれぞれが 200 日線をはさむレベルでの攻防となっており 明確に 200 日線を割り込んではいません 4 月 4 日に割り込むか? とハラハラしながら見ておりましたが セーフでした

6 出典 : Stockcharts トレンド変換の見極め方法株価のトレンド変更の見極め方として 最高値からの下落率が 20% 以内の場合は 調整 20% を超えた場合は トレンドの変更 という判断をするようです ここでは米 S&P500 株価指数を例に取りましたが ちょうど 200 日線辺りが 10% 調整レベルとなっていました 20% 調整の場合 2300 割れがターゲットとなります つまり 2300 が割れてしまうと 今までのブル トレンドがベア トレンドに変わったと判断できます

7 出典 : Stockcharts ここからのドル円私は主要通貨の毎月の値幅と方向性を エクセルにまとめています 2001 年から始めましたが 過去 17 年間の 4 月のドル円を見ると ドル高/ 円安 5 回 ドル安/ 円高 8 回 行って来い 4 回 という戦績です つまり 単純計算では 過去 17 年間に限っていえば 47% の可能性で 4 月はドル安 / 円高 になりやすいようですが 50% 以下ですので一応頭の片隅に留めておく程度でよいかもしれませんね それでは チャートをチェックしてみましょう 最初は長期トレンドを見るため 月足にベガス トンネルを載せてみました このチャートは 1993 年秋からのものですが ピンクの 12EMA がベガス トンネルの上抜けに失敗したのは 3 回 ( 黄色星 ) その後 2014 年に晴れてトンネルの上抜けに成功 ( 赤星 ) しました 今月の月足は ちょうどベガス トンネルのところまで落ちてきていますが 12EMA はまだトンネルの上での推移となり 売りシグナルは出ていません

8 次は ドル インデックスの日足チャートです これを見ると 現在 50 日線の上にあり 水色の四角内での動きとなっています 万が一 水色の四角を上に抜けたとしても 過去のサポート / レジスタンス ( 黄緑線 ) の 91 が待っています この 91 というレベルは同時に 昨年からの高値を結んだ黄色い線のレジスタンスにも当たります そのため これを上に抜けるのは時間がかかるでしょうし 逆に抜けたら一気に飛ぶかもしれません 出典 : Stockcharts 最後に 4 時間足のドル円です 4 月 5 日に水色チャネルを上に抜けました ここからの上値目標は 赤い星がついている です ただし これは 4 時間足のチャートですの

9 で 読者の方がこの記事をお読みいただく時点で 既に変わっておりますので そこはご注意願いします 最終的に 緑星がついている を考えてはおりますが そこまで行くのは時間がかかるでしょう