QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 8

Size: px

Start display at page:

Download "QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 8"

しまなたけはな
4 years ago
Views:

1 QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 8

2 2 はじめに浅井 : 祖父江先生は 1993 年に名古屋市立大学医学部を卒業されその後カナダのモントリオールの McGill 大学研究員岡崎市の病院や名古屋市立大学の麻酔科の助手を経て 2007 年より名古屋市立大学の麻酔科部長集中治療部部長また麻酔危機管理学の教授であられますさらに 2008 年から名古屋市立大学の救命救急センター長も兼任されておりますではよろしくお願いいたします祖父江 : 浅井先生丁寧にご紹介いただきましてありがとうございます名古屋市立大学の祖父江と申します私はもともと麻酔科医でありますが ICU 救命救急センター長も兼任しております名古屋市立大学病院救急は北米型のERです処置を終えた受傷者はクローズドシステムになっている ICUに入ってきます次に集中治療部ですがこのデータは少し古いものですが最近では心臓血管外科の術後が100% 子どもで小児 ICUというような状況です ( 図 1 ) 本日は血液ガス分析装置の話をさせていただきます当院の急性期部門のサテライト検査室では血液ガス分析装置と心筋のマーカー等を測れる免疫測定装置血算や浸透圧測定装置などが設置してあり集中治療部にも同様の装置がございます検査部門の方々がここにいらしたら大変失礼な発言なのですがこのようにサテライトの検査室を作りますとここは先生方の領域だからどうぞご勝手にということなりメンテナンスを実施いただけませんこのような装置のメンテナンスはデータの質の担保という観点から非常に重要な問題であります本日は血液ガス分析と免疫測定装置を合わせて "Point Of Care Testing" についてお話を差し上げたいと思います血液ガス分析装置再考つい先日 ICUのカンファレンスで私とレジデントの A 先生で話をしておりました A 先生が動脈血液ガス分析では酸素化能の低下ナトリウム低下クレアチニンが若干上昇していますと言うのです彼女の中でクレアチンなども血液ガス分析になってしまっていることが分かりましてそういう時代になったのだと感じましたまた ICUの当直でレジデントの B 先生と6 年目のC 先生がいたのでところで血液ガス分析の項目は何が入るか知ってる? と尋ねるとまず B 先生は ph PaO2 PaCO2 - HCO3 ですかと言いましたここまではまだ許せますところが 6 年目のC 先生乳酸もじゃないですか? とやはり血液ガス分析装置と言いながらも既に付加価値的なこういう項目自体が血液ガス分析の一部と認識されているようです

3 つまり血液ガス分析という名称ではありますがすでに多機能化された検査装置であると言っていいのではないかと思いますこれは私の造語ですが多機能急性期検査装置 (Multi-Functional Acute-Care Testing System; MFACTS) と言ってもいいかもしれません POCT の臨床効果このような血液ガス分析装置を含めた中央検査室以外で行う検査は Point Of Care Testing( 以下 POCT) といいますこの POCTの臨床効果はいかなるものかということを少し文献的に考察していきたいと思います POCTとは被験者である患者さんのそばで医療従事者が行う検査のことですこれが最大の利点でありまして検査時間が短縮でき被験者である患者さんが隣にいるということが非常に重要になります迅速かつ適切な診療看護に役立つひいては医療の質被験者のQOL 満足度の向上に寄与する検査であるということがガイドラインに書かれております普通の検査ですと検査を依頼ラベルを貼る採血して検体を移送検査室で受付遠心分離測定結果の転送医師が結果の検索検査を確認と非常に煩雑になります POCTの利点は検査時間の短縮そして検査結果が放置されないということが挙げられます自分で検査していますのですぐに検査結果の評価を行えるこれが重要です POCTは臨床の判断に直結するので災害の現場でも重要なテクニックであると思います ( 図 2 ) Stay:LOS) が短くなった医師の満足度が上がったという報告です 2 は虚血性心疾患冠動脈の異常を疑う患者さんのトロポニンの測定を現場で行うことで除外診断ができ 8 時間以内に帰宅できる人が 10% も増加したという報告です 3 はERで POCTを行うと感染症重症感染症における治療の決定治療方針の決定までの時間が短縮したとの報告もございます以上のように POCTの効果というのは ER 部門でも徐々に認識されていると考えます DMERC について私が究極のPoint Of Careだと思いますのが名古屋市立大学病院の関連連携病院である岐阜県立多治見病院救命救急センターにDMERC:Doctor driven Medical Emergency Response Carですこれはドクターあるいはナースが運転して現場に直行し救急車とドッキングするという車です最近の年間出動件数は400 件を超えているそうです % 20.9% 17.1% 84.5% 4.2% 3.7% 46.7% 44.1% 33.0% 0.2% 83.9% 52.7% 26.9% 16.1% 23.7% 17.2% 15.1% 7.5% 2.2% 0 実際に POCT の効果に関する論文がいくつかございます ( 図 3 ) 1 は主に救急 ERの部門に特化していますがサテライト検査室を作って POCTを行うと検査が返って来るまでの時間 (Turn Around Time:TAT) が非常に短くなった患者さんが ERにいる時間 (Length of DMERCに搭載しているのは薬剤に加えて 12 誘導心電図ハンディなエコー COが測れるパルスオキシメーター血液ガスの機械など様々な POCTの機器です実際に DMERCが医療介入を行っておりますが酸素投与や末梢静脈路の確保が非常に多く図 4 に示す通り成人では

4 44% の傷病者に血液ガス分析を行っておりますまたエコーの検査も行っておりこのような比較的簡便な検査は現場でも施行可能で当然災害の現場でも行われる検査だろうと思います地域の医療を変えた救急医療を変えたこれは事実だと思いますし地域の医療の質を非常に高めたということでドクターヘリが飛べない場合にはこのDMERCが走るということになりますしかしながら

4 4 44% の傷病者に血液ガス分析を行っておりますまたエコーの検査も行っておりこのような比較的簡便な検査は現場でも施行可能で当然災害の現場でも行われる検査だろうと思います地域の医療を変えた救急医療を変えたこれは事実だと思いますし地域の医療の質を非常に高めたということでドクターヘリが飛べない場合にはこのDMERCが走るということになりますしかしながら DMERCの出動の費用対効果についてはまだ検討がなされておりません実は患者の身近で検査をする POCTは非常にすばらしいことですがコストについての論文は日本では発見できず欧米でもほとんどございませんもちろん学会レベルでの発表はあるかもしれませんが日本からの論文は発見できませんでしたアメリカの放射線部門における造影剤による腎機能障害という文献ではクレアチニンを測定したところコストでは測れない臨床的効果があったとされていますオーストラリアの文献では総合診療部において PT-INR HbA1C LIPID ACR( 尿のアルブミンとクレアチニンの比 ) を測ってみると経済的効果があったものは ACR 経済的効果ないものは PT-INR 多くのものはその効果についてよくわからなかったとしていますこの様にまだまだ POCTの費用対効果については検証が進んでいません国によって医療システムが違うので日本の現状での費用対効果は今後の検討が必要であると思います ( 図 5 ) 検査精度の担保コストメンテナンスなどです検査精度に関しては今の装置は非常に精度が高まっておりますこの精度を担保する為にもメンテナンス精度管理を病院機能のひとつとして考えるべきだと思います付加的測定項目の応用血液ガス分析に話を戻します血液ガス分析装置の付加的項目をどのように応用していくかです当院の ERにはラジオメーター社の血液ガス分析装置 ABL800 FLEX その隣に心筋マーカー等が測定可能なAQT90 FLEXがあります当院ではほとんどこの 2 台が一体化し ERで検査を行っております ( 図 7 ) ABL00 FLEX AQT90 FLEX POCT の利点として時間が短縮される臨床判断に直結するというのが重要ですが問題点もございます ( 図 6 ) 60% 40% 20% 0% <= 実は血液ガスというのは ph pco2 p O 2だけで ABL800ではそれ以外の項目の方がはるかに多く測れるようになっております我々のような ICUでは血糖値 ( グルコース ) の管理重症度に関係する乳酸 ( ラクテート ) の測定管理は非常に重要ですこれは我々のデータですが ( 図 8 50% 40% 30% 20% 10% 0% ) 横軸に乳酸値で縦軸に APACHE II という重症度をとり乳酸値が上がるほど重症度が上がる緩い相関がみられます乳酸値が上がるほどつまり右にいくほど死亡あるいは重症障害が残った方が増えていますグラフ中の赤部分は後遺症が残ったり死亡した方です予後への関

5 与に関しましては色々な施設から報告がございますこのように乳酸値の測定は病態の把握や予後の予測に使えますので血液ガス分析装置で測定できるということは非常に有効だと感じていますクレアチニン活用法またこの ABL800 ではクレアチニンを測定することが出来ますのでその活用法について少しご紹介したいと思いますかつて急性腎不全と呼ばれていたものが最近は Acute Kidney Injury(AKI) 急性腎障害という概念へ変化してきております AKIは一般的にはRIFLE 分類に従って診断されます ( 図 9 ) AKIにおいて早くどのように障害が出てどのように治療したらいいかというのはいまだにはっきり分からないわけでありますが AKIを早く検知し何らかの対策を打つというのは非常に重要でありそのためにはクレアチニンの値を知る事が重要です当院のICUは半数が小児でありますので先ほどの RIFLE 分類ではなく小児用 prifle 分類を使用します ( 図 10 ) 小児 AKI 症例検討小児心臓血管外科の手術後 ICU に入室した症例 119 例を後ろ向き検討した結果を示します ( 図 11 ) 今回 egfrに基づいてakiのprifle 分類を行いましたすると 119 例中 37 例つまり 30% 以上のお子さんに腎障害があったことが分かりました腎障害が起こったグループは比較的年齢が小さなお子さんが多く AKIが起こるとICU 在室日数も伸び死亡例も増加しますこの様な事からもクレアチニン測定でAKIを早く見つけ出すことは重要であると考えますさらにこの AKIを起こした 37 例のうち15 例はeGFRの低下のみです ( 図 12 ) 5 RIFLEというのは Risk Injury Failure Loss End- Stageの略で尿量による分類もございますがクレアチニンを重症急性期部門で測るというのは AKIを早期に見つけるという点では非常に重要となります

6 6 この15 例 ( このうち 12 例は新生児 ) はもともと腎臓が未熟でeGFRが低いという症例ですこういう症例はICUから比較的早く退室していますところが egfrが変化しさらにeGFRが低下している症例は ICU 在室日数が伸びていることが分かりますこのように小児でもクレアチニンを測定して早く対応をしていくことが重要であると思います次にうまく prifle 分類に適合せず AKIを早く検知できない症例もありますので血清のシスタチン Cを測ってみることにしましたこのシスタチン Cの特徴は分子量が大きいために腎の糸球体が障害された初期に血中濃度が上昇しやすいことと普段の産生量がほとんど変わらないことで 24 時間以内の短期的な腎傷害のマーカーとしてはよいと言われておりますこのマーカーを同様な小児症例で調べてみますと弱い相関ではありますがシスタチン Cが上がるほどつまり腎機能障害が起こっている患者さんほどICUの在室日数が長くなることが分かりました ( 図 13 ) 図ンの上昇は ICU 在室期間に関与するということが分かりましたシスタチン Cとクレアチニンを合わせることによって AKI 診断の精度が上がり小児でも使える可能性があるということでこのシスタチン CもPOCTとして測定できると腎障害を早く発見できその病態把握や最後予後予測にも有効なのではないかと思っております AQT90 FLEX 測定項目について次はAQT90 FLEXをご紹介したいと思いますわれわれはこの装置を血液ガス分析と同じように使用しておりますこの装置は心筋心臓のマーカートロポニンやミオグロビン後ほどご説明します心不全マーカー NT-proBNP そしてD-dimer CRP βhcgというような血栓炎症妊娠のマーカーを 1 台で定量測定することができます測定操作は非常に簡単であり全血をスピッツにとり装置にセットしますと測定が始まります測定時間は約 10 分から20 分ですこれでも待てないという先生方もおられるかもしれませんが検査室に出すよりははるかに早いと思っていただいた方がいいと思いますその上検査室レベルの精度が保たれているということでなかなかいい装置だと思っております測定原理はいわゆる抗原抗体反応を応用しておりますので中央検査室で測るものと原理は一緒だと認識します測定時間は項目によりトロポニン Tが 12 分 NT-proBNPが10 分 D-Dimerが20 分と速やかです NT-proBNP が有用であった症例報告これは当院で少し前にあった 10 代の女性の原発性肺高血圧の症例です ( 図 15 ) 図 14 図 15 図 14 に示す様にクレアチニンも決していけないというわけではありません術前から手術の翌日までのクレアチニ以前より息切れを自覚していましたがずっと放置しており失神発作を起こして救急搬送となりました結局原発性

7 肺高血圧症との診断で人工心肺 (PCPS) をして当院に運ばれてまいりましたベラプロストナトリウム ( エポプロステロール ) を投与しながら ICUに入室となりましたまずはこの肺高血圧は許容しようということで早期に PCPSを離脱し結局気管切開を行い最終的には約 20 日後に人工呼吸も離脱できました治療経過ですが肺動脈圧が下がってまいりますと当初 pg/mLであった NT-proBNPが治療と共に速やかに 173pg/mLまで下がり約 7カ月経過で23pg/mLと基準値内まで低下しました心不全の状態を非常によく表わすまた治療に反応する大変良いマーカーだと感じました NT-proBNP の今後調べてみますとBNPがあまり上がらないのが急性呼吸促迫症候群 :ARDS:Acute respiratory distress syndromeであるという論文もありました ( 図 16 ) 今後の付加的測定項目さて今後この血液ガス分析装置がどこまで進化していくかは分かりません何でも POCTで測れるようにしてしまったら中央検査室は要らなくなってしまいます我々は検査室のデータを信頼しておりますしチーム医療として力を合わせていきたいと思っていますクレアチニンやビリルビンが POCTで測れるようになっただけでもある意味驚きでありましたし乳酸も今ではこんなに簡単に測定できどこまで進化するのかは私には想像もつきませんただ何でも測れればいいというものではなく何らかの診断の補助になるあるいは重症度治療の効果を反映するようなマーカーがよいと思います完全なマーカーはなかなかありませんが予後の予測が可能なマーカーなどを選別して血液ガス分析装置にのせていくとよいでしょうそして日本ではほとんど報告されていない POCTによる各マーカー測定の費用対効果を検証することが今後必要であります ( 図 17 ) 図 16 図 17 7 つまり BNPとCRPを組み合わせることによって ARDS の診断の正確性が向上したことになりますまた BNPは ARDSと心原性肺水腫との判別に有効という発表もあります ARDSはBNPが軽度上昇することが重要だということがこの論文に書かれておりましたさらに重症敗血症でBNPもNT-proBNPも上がるという論文もありますつまり必ずしも心不全ではない疾患でも BNP NTproBNPは上がる可能性があり今後の検討が必要であると思っております現在当院では AQT90 FLEXを使用し POCTでNT- probnpを測定しておりますが心不全の診断に有効であると思いますまた ARDSと心不全との判別に有効だと考えます一方心不全以外の疾患での上昇の可能性については今後の検討が必要であると思いますまとめさて本日は血液ガス分析装置がすでに多機能急性期検査機器 :MFACTS になっているというお話をさせていただきましたそしてクレアチニンシスタチン CというものはAKIの診断に有効 NT-proBNPは心不全の診断に有効であるということをお伝えしましたさらにこれらの項目はPOCTで測定できるつまり ICU 救急という場所で測定できるものであります今後 MFACTSがどこに向かっていくかというのは楽しみであります最後に私とレジデントの会話です今後は MFACTS では酸素化能の低下とNT-proBNPの若干の上昇がありまして ARDSと診断しておりますなるほどこういう時代となっているのかもしれません以上で私の話を終えさせて頂きますこのような講演の機会を与えていただきました学会長の金沢医科大学救急医学教授和藤幸弘先生に感謝を申し上げて終わりたいと思いますご静聴ありがとうございました

8 ph pco2 po2 so2 cthb FO2Hb FCOHb FMetHb FHHb FHbF ck + cna + cca 2+ ccl - cglu clac ccrea ctbil 800 FLEX Troponin T (TnT) Troponin I (TnI) Myoglobin NT-proBNP D-Dimer CRP hcg TEL : FAX : J , A

QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 6 8

QA JOURNAL RADIOMETER June No. C O N T E N T S 2 6 8 QA JOURNAL RADIOMETER June 2012 19 No. C O N T E N T S 2 6 8 2 はじめに麻酔集中治療領域では重症または理解が困難な酸塩基平衡異常に遭遇することは珍しくありません従来の方法ではわかりにくい酸塩基平衡異常もStewart approachではわかりやすいといったこともあります今回は急性腎障害 (Acute Kidney Injury:AKI)