博 士 論 文 災 害 報 道 をめぐる リアリティの 共 同 構 築 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 社 会 情 報 学 専 攻 近 藤 誠 司

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1 Title 災 害 報 道 をめぐるリアリティの 共 同 構 築 ( Dissertation_ 全 文 ) Author(s) 近 藤, 誠 司 Citation Kyoto University ( 京 都 大 学 ) Issue Date URL Right 許 諾 条 件 により 本 文 は に 公 開 Type Thesis or Dissertation Textversion ETD Kyoto University

2 博 士 論 文 災 害 報 道 をめぐる リアリティの 共 同 構 築 京 都 大 学 大 学 院 情 報 学 研 究 科 社 会 情 報 学 専 攻 近 藤 誠 司

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4 目 次 序 論 1 1 研 究 の 目 的 とその 背 景 1 2 問 題 とその 要 点 2 3 研 究 の 前 提 2 4 論 文 の 構 成 3 第 Ⅰ 部 理 論 7 第 1 章 災 害 報 道 の 定 義 9 第 2 章 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 と 現 況 11 1 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 11 2 日 本 マス コミュニケーション 学 会 における 災 害 報 道 研 究 の 位 置 づけ 11 3 日 本 災 害 情 報 学 会 における 災 害 報 道 研 究 の 位 置 づけ 14 4 災 害 報 道 研 究 の 現 況 18 第 3 章 マスコミュニケーション モデルの 変 遷 21 1 伝 達 と 受 容 の 二 項 対 立 21 2 マスコミュニケーション モデルに 関 する 学 説 の 主 な 変 遷 23 第 4 章 災 害 報 道 研 究 における 減 災 の 正 四 面 体 モデル 27 1 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 特 長 27 2 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 限 界 28 第 5 章 情 報 とリアリティ 31 1 情 報 という 概 念 の 再 検 討 31 2 リアリティという 概 念 の 再 検 討 32 3 < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデル 33 4 < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデルから 捉 えるリアリティの 動 的 過 程 34 5 リアリティの 共 同 構 築 とそのポテンシャル 36 6 集 合 流 の 合 流 点 に 結 節 するリアリティ 38 第 6 章 メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 提 起 43 1 メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル 43 2 メディア イベントとしての 災 害 対 応 44 3 事 態 に 内 在 するリアリティ ステイクホルダー 45

5 第 Ⅱ 部 調 査 分 析 47 第 7 章 緊 急 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 2010 年 チリ 地 震 における 津 波 来 襲 時 のテレビ 報 道 の 内 容 分 析 49 1 はじめに 49 2 問 題 : 低 調 だったチリ 地 震 津 波 の 住 民 避 難 行 動 49 3 対 象 :NHK 総 合 テレビの 緊 急 報 道 50 4 方 法 : 内 容 分 析 と 聞 き 取 り 調 査 51 5 分 析 :リアリティの 構 築 過 程 とその 課 題 51 (1)テレビ 放 送 分 析 の 妥 当 性 とタイムフレーム 51 (2) 課 題 1: 放 送 内 容 におけるリアリティの 競 合 53 (3) 課 題 2:リアリティ ステイクホルダーの 偏 り 55 (4) 課 題 3: 情 報 のローカリティ 58 6 考 察 59 (1) 抽 出 された3つの 課 題 59 (2) 放 送 の 基 本 フォーマットからの 逸 脱 の 可 能 性 61 (3)まとめと 今 後 の 課 題 63 第 8 章 緊 急 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2011 年 東 日 本 大 震 災 における 津 波 来 襲 時 のテレビ 報 道 の 内 容 分 析 65 1 はじめに 65 2 問 題 : 繰 り 返 された 情 報 あれど 避 難 せず 65 3 対 象 :NHK 総 合 テレビの 緊 急 報 道 66 4 方 法 : 内 容 分 析 と 聞 き 取 り 調 査 67 5 結 果 : 第 1フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 68 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 1フェーズ] 68 (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 1フェーズ] 71 6 結 果 : 第 2フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 73 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 2フェーズ] 73 (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 2フェーズ] 74 7 結 果 : 第 3フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 76 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 3フェーズ] 76 (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 3フェーズ] 76 8 考 察 77 (1) 情 報 の ローカリティ の 早 期 確 保 の 必 要 性 78 (2)リアリティ ステイクホルダーとしての 役 割 認 識 の 必 要 性 79 (3) 災 害 情 報 をめぐる 基 本 フォーマットからの 逸 脱 の 可 能 性 79

6 第 9 章 復 興 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 2008 年 四 川 大 地 震 における 被 災 地 調 査 から 83 1 はじめに 83 2 問 題 : 数 値 という 形 式 で 流 布 する 災 害 情 報 83 3 対 象 と 方 法 83 4 結 果 : 見 出 された 社 会 的 逆 機 能 の 諸 相 84 (1)カネの 数 値 : 仇 富 の 道 具 と 化 した 寄 付 金 の 額 84 (2) 時 間 の 数 値 : 被 災 者 に 一 方 的 に 提 示 される 期 限 85 (3)ヒトの 数 値 : 死 者 カウントアップのリアリティ 87 5 考 察 88 第 10 章 復 興 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2011 年 東 日 本 大 震 災 における 救 援 ボランティアに 関 する 報 道 内 容 分 析 91 1 はじめに 91 2 問 題 : 救 援 ボランティアの 不 足 や 遅 れ 91 3 ボランティア 報 道 の 内 容 分 析 と 結 果 93 (1) 原 発 事 故 報 道 と 地 震 津 波 災 害 報 道 の 競 合 93 (2)ボランティアに 関 する 報 道 量 の 推 移 94 4 ボランティア 報 道 のメタ メッセージ 分 析 とその 結 果 95 (1)NHKニュースのボランティア 報 道 95 (2)NHKニュース 放 送 におけるネガティブなメタ メッセージの 抽 出 97 (3) 東 京 読 売 新 聞 のボランティア 報 道 97 (4) 東 京 読 売 新 聞 紙 上 におけるネガティブなメタ メッセージの 抽 出 98 5 被 災 地 メディアのボランティア 報 道 の 内 容 分 析 とその 結 果 99 (1) 福 島 民 報 のボランティア 報 道 99 (2) 福 島 民 報 紙 上 におけるポジティブなメタ メッセージの 抽 出 99 6 考 察 100 (1) 広 域 災 害 時 におけるボランティア 報 道 101 (2) ボランティアと 報 道 の 関 係 性 102 第 11 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 の NHKスペシャル の 内 容 分 析 はじめに 問 題 対 象 方 法 結 果 考 察 108

7 第 12 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2008 年 四 川 大 地 震 に 関 して 日 本 で 発 刊 された 新 書 の 内 容 分 析 はじめに 問 題 : 国 際 情 勢 というコンテキストに 依 存 して 構 築 されるリアリティ 対 象 と 方 法 結 果 考 察 113 第 13 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (3) 2011 年 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 における 無 常 のリアリティ はじめに 問 題 : 被 災 地 における 言 葉 をめぐる 多 様 なリアリティ 対 象 と 方 法 結 果 考 察 117 第 Ⅲ 部 実 践 事 例 119 第 14 章 従 来 型 の 実 践 アプローチ はじめに NSL 関 西 なまずの 会 減 災 報 道 研 究 会 KOBE 虹 会 123 第 15 章 発 展 型 の 実 践 アプローチ はじめに 問 題 : ポスト 3.11 における 津 波 避 難 をめぐる 社 会 的 なコンテキスト 129 (1) 新 想 定 に 対 する 信 / 不 信 に 根 差 した 諦 めムード のドライブ 129 (2) 情 報 過 多 の 渦 中 における 疎 外 感 ムード のドライブ 130 (3) ローカリティの 欠 如 による 不 全 感 ムード のドライブ 個 別 訓 練 タイムトライアル の 実 施 および 動 画 カルテ の 制 作 131 (1) 訓 練 の 概 要 131 (2) 訓 練 のフロー 事 態 の 内 在 者 になる 契 機 としての 個 別 訓 練 タイムトライアル 133

8 第 Ⅳ 部 総 合 的 考 察 137 第 16 章 総 合 的 考 察 得 られた 知 見 連 帯 によるリアリティの 共 同 構 築 連 帯 の 前 提 条 件 144 (1) プロフェッショナリズムに 対 するリスペクト 144 (2) 社 会 的 成 解 144 (3) 連 帯 の 困 難 性 の 自 覚 インストゥルメンタルな 連 帯 /コンサマトリーな 共 振 147 終 章 課 題 と 展 望 151 謝 辞 153 参 考 文 献 157

9 図 表 索 引 図 図 -Ⅰ マス コミュニケーション 研 究 における 災 害 報 道 関 連 文 書 の 出 現 傾 向 (%) 13 図 -Ⅰ 一 般 的 な 通 信 システム 21 図 -Ⅰ オズグッドとシュラムの 循 環 モデル 22 図 -Ⅰ ライリーとライリーの< 送 り 手 / 受 け 手 >モデル 22 図 -Ⅰ クラッパーの 現 象 論 的 アプローチ モデル 24 図 -Ⅰ 減 災 の 正 四 面 体 モデル 27 図 -Ⅰ < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデル 34 図 -Ⅰ メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル 43 図 -Ⅱ 全 42 時 間 余 の 放 送 内 容 内 訳 54 図 -Ⅱ Phase 1 の 放 送 内 容 内 訳 54 図 -Ⅱ 情 報 発 信 元 の 出 現 頻 度 ( 回 ) (Phase 1 の 2 月 27 日 分 ) 56 図 -Ⅱ 最 初 の 30 分 間 の 映 像 内 容 69 図 -Ⅱ 分 間 ごとの 映 像 内 容 の 推 移 70 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 種 類 別 の 出 現 度 数 ( 回 ) 71 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 出 現 度 数 の 時 間 推 移 72 図 -Ⅱ 地 震 発 生 30 分 ~60 分 の 映 像 内 容 73 図 -Ⅱ 分 間 ごとの 映 像 内 容 の 推 移 ( 第 2フェーズ) 74 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 出 現 度 数 の 時 間 推 移 74 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 種 類 別 の 出 現 度 数 ( 回 ) 75 図 -Ⅱ 地 震 発 生 60 分 ~90 分 の 映 像 内 容 76 図 -Ⅱ ボランティアの 延 べ 活 動 人 数 比 較 ( 千 人 ) 91 図 -Ⅱ キーワード 原 発 を 含 む 記 事 本 数 の 推 移 93 図 -Ⅱ キーワード 津 波 を 含 む 記 事 本 数 の 推 移 94 図 -Ⅱ キーワード ボランティア を 含 む 記 事 本 数 の 推 移 94 図 -Ⅱ NHKニュース ボランティア 報 道 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 ) 96 図 -Ⅱ 東 京 読 売 新 聞 ボランティア 報 道 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 ) 98 図 -Ⅱ 福 島 民 報 ボランティア 放 送 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 ) 99 図 -Ⅱ 無 常 記 事 の 出 現 数 推 移 ( 本 数 ) 116 図 -Ⅱ 無 常 発 話 者 の 属 性 分 類 (MA) 116 図 -Ⅲ NSL の 各 主 体 の 関 係 図 122 図 -Ⅲ 関 西 なまずの 会 の 各 主 体 の 関 係 図 122 図 -Ⅲ 減 災 報 道 研 究 会 の 各 主 体 の 関 係 図 123 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 各 主 体 の 関 係 図 125 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 のちらし( 第 40 回 のもの) 125

10 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 会 合 の 様 子 ( 第 31 回 ) 2012/2/2 筆 者 撮 影 126 図 -Ⅲ 個 別 訓 練 タイムトライアル 実 施 時 の 様 子 131 図 -Ⅲ 動 画 カルテ のスナップショット 132 図 -Ⅲ 発 展 型 の 実 践 アプローチ( 理 念 型 ) 134 図 -Ⅳ メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル ( 最 終 型 ) 146 表 表 -1-1 災 害 報 道 をめぐる 主 な 問 題 1 表 -Ⅰ マス コミュニケーション 研 究 の 特 集 タイトルの 変 遷 12 表 -Ⅰ マス コミュニケーション 研 究 における 災 害 報 道 関 連 文 書 13 表 -Ⅰ 災 害 情 報 における 災 害 報 道 研 究 記 事 数 14 表 -Ⅰ 震 災 報 道 シンポジウム( 日 本 新 聞 労 働 組 合 連 合 近 畿 地 方 連 合 会 主 催 ) 19 表 -Ⅱ リアリティ ステイクホルダーへの 聞 き 取 り(2010 年 ) 52 表 -Ⅱ 月 27 日 午 後 4 時 半 の 特 設 ニュース 56 表 -Ⅱ 根 室 港 からの 中 継 リポート 58 表 -Ⅱ 聞 き 取 り 調 査 の 概 要 (2011 年 ) 68 表 -Ⅱ 東 北 地 方 における 最 初 の 出 番 ( 書 き 起 こしデータ) 70 表 -Ⅱ 四 川 大 地 震 (5.12 汶 川 大 地 震 ) 現 地 調 査 の 概 要 84 表 -Ⅱ NHKスペシャル( 予 防 報 道 関 連 ) 分 析 対 象 リスト 106 表 -Ⅱ NHKスペシャル 登 場 支 配 率 (%) 107 表 -Ⅱ NHKスペシャル 発 話 支 配 率 (%) 107 表 -Ⅱ 登 場 支 配 率 と 発 話 支 配 率 の 順 位 表 107 表 -Ⅱ 中 国 に 関 連 する 新 書 サンプル 50 冊 ( 発 刊 ) 112 表 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 活 動 記 録 (2006 年 6 月 ~2013 年 7 月 ) 124 表 -Ⅲ おもな 報 道 リスト( 興 津 地 区 ) 135

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12 序 論 1 研 究 の 目 的 とその 背 景 本 研 究 の 目 的 をワンフレーズで 述 べるならば それは 災 害 報 道 のベターメントを 目 指 注 1) 注 すこと にある これは 巨 大 災 害 や 局 地 災 害 のリスク 2) が 高 まっているとの 警 鐘 が 強 く 打 ち 鳴 らされている 現 代 日 本 社 会 において しかも 災 害 の 対 策 をとる/とらない 注 といった 選 択 の 結 果 がすべて 自 己 責 任 3) とみなされてしまう リスク 社 会 (Beck, 1986=1998; ベック 鈴 木 伊 藤, 2011)の 渦 中 にあって まさに 時 代 と 社 会 の 要 請 にマ 注 ッチしたテーマであるといえよう 4) 日 本 で 災 害 情 報 が 社 会 心 理 学 の 関 心 事 となったのは 廣 井 によれば 1970 年 代 頃 の ことだという( 廣 井, 2004) マスメディアによる 災 害 報 道 のありようは 災 害 情 報 論 というカテゴリーにおいて 重 要 な 研 究 テーマのひとつとして 検 討 されてきた たとえば 1995 年 の 兵 庫 県 南 部 地 震 ( 災 害 名 は 阪 神 淡 路 大 震 災 以 下 そのように 表 記 する)を 注 めぐる 災 害 報 道 においては 取 材 の 過 集 中 5) やプライバシーの 侵 害 など さまざまな 課 題 が 見 出 され すくなくとも 研 究 上 は 重 要 な 画 期 となった(たとえば 野 田, 1995; 廣 井, 1996; 小 城, 1997; 安 富, 2012) しかしながら その 議 論 が 実 践 上 災 害 報 道 のベタ ーメントにつながったのかといえば 残 念 ながらそのように 断 言 するのは 難 しい 状 況 にあ ると 言 わざるをえない いまいちど 災 害 報 道 の 現 場 を 見 渡 してみれば さまざまな 課 題 が 積 み 残 されたままであ ることを 容 易 に 指 摘 できる 代 表 的 な 問 題 をリストにしたのが 表 -1-1である( 李 近 注 藤 矢 守, 2013) 6) 筆 者 が 本 研 究 をスタートしたのちに 発 生 した 2011 年 の 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 ( 災 害 名 は 東 日 本 大 震 災 以 下 そのように 表 記 する)においても 災 害 報 道 をめぐる 問 題 は あちこちで 引 き 起 こされた その 多 くは 阪 神 淡 路 大 震 災 の 際 にも もっと 時 代 をさかのぼれば 1983 年 日 本 海 中 部 地 震 などの 際 にも もっと 時 代 をくだれば 2004 年 新 潟 県 中 越 地 震 などの 際 にも 繰 り 返 し 指 摘 されてきたことであった また 津 波 避 難 をめぐる 緊 急 報 道 のミスリードや 被 災 地 支 援 をめぐる 復 興 報 道 の 社 会 的 逆 機 能 さ 表 -1-1 災 害 報 道 をめぐる 主 な 問 題 センセーショナリズム 映 像 優 先 主 義 集 団 的 過 熱 報 道 横 並 び クローズアップ 効 果 一 過 性 報 道 格 差 中 央 中 心 主 義 - 1 -

13 らには 取 材 活 動 の 地 域 的 な 偏 りに 至 るまで マスメディアの 超 えるべき 課 題 ( 関 谷, 2012) 注 の 数 々を 厳 しく 指 摘 する 声 は 枚 挙 にいとまがない 7) 最 近 では このような 閉 塞 した 状 況 を 論 難 する 言 葉 として 報 道 災 害 というフレーズ が 使 われたり(たとえば 上 杉 烏 賀 陽, 2011) もっとセンセーショナルに 報 道 の 脳 死 注 と 言 い 切 ったりするような 著 作 が 登 場 している( 烏 賀 陽, 2012) 8) 2 問 題 とその 要 点 これまで 何 度 も 議 論 の 俎 上 に 載 せられてきた 災 害 報 道 のベターメント の 問 題 に 関 し て 解 決 に 向 けたあらたな 一 歩 を 踏 み 出 すためには 虚 心 坦 懐 に 理 論 の 立 脚 点 を 問 いなお したり 実 践 上 のアプローチを 替 えてみたりすることが 求 められるのではないか これが 本 研 究 の 核 となる 問 題 意 識 である そこで 問 題 の 要 点 を 以 下 の2 点 にしぼって 検 討 することにした ひとつは 従 来 災 害 情 報 の 送 り 手 と 受 け 手 を 峻 別 して 前 者 には 前 者 に 向 けたアプローチを たとえば 記 者 のスキルアップなど(たとえば 花 田 廣 井, 2003; 黒 田, 2005) 後 者 には 後 者 に 向 けたアプローチを たとえば 市 民 のメディア リテラシー 教 育 など(たとえば 今 野, 2004; 渡 辺, 2007) を 別 個 に 採 用 することを 前 提 としてきた いわば 二 項 対 立 的 なマスコミュニケーション モデルの 再 検 討 である のちに 詳 述 するが 本 研 究 ではこの 点 に 関 してあらたな 理 論 フレームの 構 築 をおこなうため 火 山 災 害 の 知 見 にもとづき < 住 民 行 政 メディア 専 門 家 >の 四 者 のインタラクションをとらまえた 岡 田 宇 井 の 減 災 の 正 四 面 体 モデル ( 岡 田 宇 井, 1997; 岡 田, 2008)を 援 用 している 要 点 のもうひとつは 災 害 報 道 でやりとりされる 情 報 という 概 念 そのものの 再 検 討 である これものちに 詳 述 するが 本 研 究 では 普 遍 的 な 意 味 や 価 値 を 持 つと 擬 制 された 情 報 特 に 災 害 情 報 に 関 して その 内 容 の 高 度 化 精 緻 化 を 推 し 進 めるばかりで あった 従 来 のアプローチを 批 判 的 に 継 承 していく そこでは 人 々が 日 常 の 中 で 体 験 し ている リアリティ 空 間 的 にも 時 間 的 にも ローカルな 多 様 性 多 層 性 を 前 提 として 現 前 する 世 界 の 有 意 性 構 造 (Berger&Luckman, 1966=2003) の 観 点 からも 事 態 をとらえ なおすことの 重 要 性 を 提 起 する 前 述 した 減 災 の 正 四 面 体 モデル をふまえるならば 関 係 当 事 者 たちが 単 に 情 報 を 伝 達 しあう 過 程 としてとらえるのではなく リアリティ を 共 同 で 構 築 していく 動 的 な 過 程 として 再 定 位 することになる ここにおいて 減 災 の 正 四 面 体 モデル は リアリティの 共 同 構 築 モデル として 修 正 される 3 研 究 の 前 提 ひとは 自 身 の 生 きる 時 代 を 自 由 に 選 びとることはできない かのニュートンの 著 名 な な 言 を 借 りれば 巨 人 の 肩 の 上 からしか 世 の 趨 勢 を 見 渡 すことはできない そして 当 の 巨 人 の 肩 自 体 を 超 越 した 立 場 から すなわち 中 立 的 客 観 的 に 選 択 するこ とはできない したがって 自 己 の 立 ち 位 置 をしっかり 内 省 しておくことが まず 肝 - 2 -

14 心 である そこで 本 研 究 の 成 果 を 記 述 するまえに 大 前 提 として 筆 者 の 立 ち 位 置 すなわち 依 拠 する 巨 人 の 肩 自 体 に 関 連 する 事 項 を あらかじめ2 点 明 示 して おこう まず 本 研 究 がコミットしている 時 代 と 社 会 は すでに 述 べてきたとおり 高 度 に 情 報 化 した 21 世 紀 初 頭 の 日 本 社 会 である 本 研 究 に 着 手 したころは 阪 神 淡 路 大 震 災 から 10 年 をこえて 震 災 の 記 憶 の 風 化 や 防 災 の 取 り 組 みの マンネリ 化 などが 課 題 として 感 じられていた しかし 2008 年 には 中 国 で 四 川 大 地 震 (512 汶 川 大 地 震 )が 起 きて そ の 後 もハイチ(2010 年 ) チリ(2010 年 ) ニュージーランド(2010 年 )と 世 界 を 揺 るが す 災 害 が 続 き 状 況 は 様 変 わりしてく そして 本 研 究 が 道 半 ばに 差 し 掛 かったころ 2011 年 3 月 11 日 東 日 本 大 震 災 が 起 きた これらの 出 来 事 のうち いくつかは 本 研 究 の 調 査 対 象 として 組 み 込 まれることになった したがって 本 研 究 のいう 災 害 報 道 のベターメ ント における 価 値 基 準 は これらの 大 震 災 すくなくとも 本 論 文 の 執 筆 時 においては いずれもが 歴 史 的 な 一 大 事 件 だったとして 認 識 されている の 影 響 を 強 く 受 けているとい わざるをえない 次 に 筆 者 は 自 身 も 災 害 報 道 に 従 事 している 現 役 のジャーナリストである 上 述 した すべての 大 震 災 に 関 して 何 らかの 災 害 報 道 をおこない またいくつかの 現 場 には 実 際 に 取 材 に そして 学 術 調 査 にも 訪 れている 純 粋 に 自 然 科 学 的 な 観 点 からいえば 採 取 したデータにはバイアスがかかっている 可 能 性 があることは 否 めない 人 間 科 学 的 な 観 点 (たとえば 矢 守, 2009; 2010; 杉 万, 2013a)からいっても 同 様 の 危 険 が 潜 んでいるこ とに 変 わりはない ただし 矢 守 (2012)は アクション リサーチ 現 場 の 当 事 者 と 研 究 者 が 共 にコトをなすプロセスを 通 して 共 同 知 を 生 み 出 す 構 え のひとつとして 当 事 者 研 究 を 位 置 づけたうえで 知 を 生 み 出 す 側 に 回 ることで 得 られる 信 を 重 視 した 当 事 者 研 究 には まさに リスク 社 会 においてその 有 用 性 を 発 揮 することができると 指 摘 している(p.9) 本 研 究 も この 当 事 者 研 究 の 範 疇 に 含 まれており 理 論 の 妥 当 性 を 現 場 に 還 して 検 証 する 道 が 常 に 開 かれている 点 では アドバンテージを 有 していると 言 えるだろう 注 また 本 論 文 は 杉 万 (2013a)のいう 協 同 的 実 践 9) における 一 次 モード と 二 注 次 モード の 交 替 運 動 10) のなかで 執 筆 された 杉 万 によれば グループ ダイナミック ス の 伝 統 は レヴィン 以 降 個 人 還 元 主 義 的 で 不 毛 の 研 究 の 累 積 ( 杉 万, 2013a: p.319) となったという この 反 省 を 本 研 究 では 真 摯 に 受 け 止 め 課 題 を 抱 え 閉 塞 した 災 害 報 道 と いうフィールドの 言 説 空 間 を 豊 かにすることに 意 を 尽 くすよう 努 めた 4 論 文 の 構 成 本 論 文 は 四 部 構 成 となっている 第 Ⅰ 部 では 既 往 研 究 を 概 観 したのち あらたな 理 論 フレームの 提 起 をおこなう まず 災 害 報 道 とは 何 かを その 機 能 に 着 目 して 定 義 したのち( 第 1 章 ) 災 害 報 道 に 関 する 研 究 - 3 -

15 状 況 を 概 括 し( 第 2 章 ) これまで 情 報 の 送 り 手 と 受 け 手 の 二 項 対 立 的 な 図 式 でとらえ られてきた 災 害 報 道 のマスコミュニケーション モデルを 再 検 討 する( 第 3 章 ) そして 災 害 報 道 をめぐる 問 題 閉 塞 を 打 開 する 手 がかりとして 火 山 災 害 の 減 災 の 正 四 面 体 モデ ル に 着 目 し その 特 性 と 限 界 を 整 理 する( 第 4 章 ) そのうえで 普 遍 不 変 を 擬 制 した 情 報 の 概 念 と 日 常 世 界 で 体 験 している リアリティ の 概 念 の 区 別 をおこない 後 者 リアリティ の 観 点 からも 事 態 をまなざすことの 意 義 を 指 摘 する( 第 5 章 ) そして 災 害 報 道 をトータルに 検 討 するためのあらたな 理 論 フレームとして 減 災 の 正 四 面 体 モデ ル を 修 正 した メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル を 提 起 する ( 第 6 章 ) 第 Ⅱ 部 では 第 Ⅰ 部 で 準 備 された 理 論 フレームをもちいて 災 害 のマネジメントサイク ルに 沿 って 災 害 報 道 の 局 面 ごとの 課 題 の 再 検 討 をおこなう 第 7 章 ~ 第 8 章 では 緊 急 報 道 における 課 題 抽 出 を 第 9 章 ~ 第 10 章 では 復 興 報 道 における 課 題 抽 出 を 第 11 章 ~ 第 13 章 では 予 防 報 道 における 課 題 抽 出 を それぞれ 実 際 に 報 道 されたテレ ビ 放 送 等 の 内 容 分 析 をもとにおこなう 第 Ⅲ 部 では 第 Ⅰ 部 と 第 Ⅱ 部 から 浮 かび 上 がった 課 題 をふまえて 具 体 的 にどのような 実 践 活 動 が 災 害 報 道 のベターメントに 適 しているといえるのか まず 従 来 型 の 実 践 アプ ローチ の 類 例 を 整 理 し( 第 14 章 ) さらに 発 展 型 の 実 践 アプローチ ( 第 15 章 )を 例 示 して 検 討 する さいごに 第 Ⅳ 部 で まず 総 合 的 な 考 察 をおこない( 第 16 章 ) あわせて 本 研 究 の 課 題 と 展 望 をまとめる( 終 章 ) 注 1) 美 馬 (2012)は リスクとは その 社 会 の 望 ましいあり 方 ( 社 会 秩 序 )とは 何 かという 文 化 的 価 値 観 (しばしば 道 徳 と 結 び 付 く)をもとにして 規 定 される 社 会 現 象 (p.36)であると 定 義 している 本 研 究 も 同 様 の 立 場 に 立 つ さらに 美 馬 は リスクを たんに 個 人 の 心 理 傾 向 や 情 報 伝 達 の 正 確 さという 側 面 だけではなく 望 ましい 社 会 についての 集 合 的 価 値 観 との 関 わりのなかで 理 解 (p.38)しなければなら ないと 指 摘 している この 文 脈 における 集 合 的 価 値 観 の 概 念 が 本 研 究 にいう 最 広 義 の リアリティ と 重 なっている 注 2) 矢 守 吉 川 網 代 (2005)や 矢 守 (2011)は リスクを ニュートラルなリスク と アク ティブなリスク の2つに 分 類 している 前 者 は 当 事 者 の 営 みに 依 存 しない danger に 相 当 し 後 者 は 当 事 者 の 営 みに 依 存 して 構 成 される risk に 相 当 する 矢 守 の 指 摘 するとおり 現 代 社 会 では ニュートラ ルなリスクのアクティブ 化 が 起 きており アクティブなリスクが 台 頭 している Beck(1986=1998)の 言 葉 を 借 りて リスク 状 況 においては 意 識 が 存 在 を 決 定 する (p.30) 点 に 着 目 するならば もはや ア クティブなリスク が 環 境 化 した 事 態 にあると 言 ってよいだろう この 点 に 関 連 して リュシアン フェーベルを 引 いたバウマンの 次 の 言 葉 に 注 視 すべきである Peur toujours, peur partour ( 不 安 が 常 - 4 -

16 に 至 るところに)(Bauman, 2006=2012) さらにこのことを 災 害 報 道 の 課 題 に 引 き 付 けて 警 句 として 記 すならば Virilio(2005=2006)のいう アクシデントを 演 出 する 社 会 の 到 来 ということが 指 摘 できる だろう なお 近 代 化 の 過 程 とリスクの 関 係 を 簡 潔 に 論 じたものとして 山 田 (2007)がある 注 3) バウマンの 言 によれば 強 制 的 自 己 決 定 (Bauman, 2000=2001)の 時 代 が 到 来 したということに なるだろう 注 4) 今 田 (2013)は 健 康 リスク 経 済 リスク 家 族 リスクは 生 活 リスクのトロイカをなす と 述 べているが 災 害 リスクは さらにそれらを 根 底 から 揺 さぶるものとして 措 定 される 注 5) 取 材 の 過 集 中 は 日 本 社 会 においては メディア スクラム と 表 現 される 場 合 が 多 い(た とえば 池 上, 2008) しかし 本 来 の 意 味 からすれば メディア スクラム は 当 局 の 権 力 的 な 作 用 に 対 して メディアがスクラムを 組 んで 対 抗 することを 指 していた したがって メディア フレンジー (media frenzy)と 呼 ぶべきだとする 主 張 も 有 力 である(たとえば 浅 野, 2007; 堀 江 上 杉, 2011) 本 研 究 では いずれのカタカナ 語 も 採 用 せず 端 的 に 日 本 語 で 表 記 することにした なお 取 材 の 過 集 中 のケース スタディを 数 多 く 扱 った 著 作 として 松 本 (2006)がある また 徳 山 (2013)は 和 歌 山 毒 物 カレー 事 件 を 例 にあげて メディア スクラム の 実 態 がメディアを 通 じて 伝 播 することで 良 い 意 味 で メディア 不 信 の 萌 芽 を 促 したとする 独 自 の 見 解 を 述 べている 注 6) もちろんこれ 以 外 の 問 題 として 平 素 の 報 道 と 同 じく 虚 報 誤 報 の 類 いが 数 多 くあったことも 指 摘 されている(たとえば 与 那 原, 1997) 注 7) 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 に 関 して 課 題 しか 見 当 たらなかったのかといえば もちろんそんなこ とはない 被 害 の 実 態 を 速 報 したテレビ 映 像 世 界 的 なスクープとなったヘリコプターからの 空 撮 による 津 波 俎 上 のライブ 映 像 など の 効 果 威 力 を 絶 賛 する 声 は 多 かった(たとえば 藤 田, 2011) また こ ころ 温 まる 報 道 だったとして 成 功 事 例 として 賛 美 されているケースも 数 多 く 存 在 する(たとえば, 新 聞 記 事 に 関 して 池 上, 2011; ラジオ 放 送 に 関 して やまだ, 2012) テレビ 放 送 を 採 点 するウェブサイト Quae によれば 東 日 本 大 震 災 に 関 しては 緊 急 地 震 速 報 や 空 撮 映 像 などによる 初 期 の 報 道 対 応 を ポジティブに 評 価 するコメントが 寄 せられた 一 方 で 特 に 原 発 関 連 の 垂 れ 流 し 報 道 に 対 してネガティ ブなコメントが 数 多 く 寄 せられたという( 山 下, 2013) 注 8) 阪 神 淡 路 大 震 災 が 起 きた 年 野 田 (1995)は マスメディアの 傍 若 無 人 なふるまいを 批 判 して 報 道 する 恐 竜 と 論 難 した 頭 脳 を 忘 れて 胴 体 ばかりを 巨 大 化 させ 災 害 地 を 走 り 回 っている ( 野 田, 1995: p.43)と 思 慮 や 反 省 の 不 十 分 さを 問 題 視 していた これをひとつの 参 照 点 とするならば 烏 賀 陽 (2011)による 造 語 すなわち 報 道 の 脳 死 は 報 道 機 関 による 思 慮 も 反 省 も もはや 期 待 することが できなくなっている 閉 塞 を 強 く 印 象 付 けるものであるといえよう 注 9) 宮 本 (2013)のいうとおり キョウドウ は 共 同 / 協 同 / 協 働 / 恊 働 など さまざまな 字 があ てられる ここでは 杉 万 (2013a)の 表 記 ならって 協 同 とした 注 10) 杉 万 (2013b: pp.54-57)によれば 当 事 者 と 研 究 者 の 協 同 的 実 践 においては ローカルな 現 状 過 去 将 来 を 把 握 し その 把 握 に 基 づいて 問 題 解 決 に 取 り 組 む 段 階 すなわち 一 次 モード と 気 づかざる 前 提 に 気 づく 段 階 すなわち 二 次 モード が 連 続 的 に 交 替 するという - 5 -

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18 第 Ⅰ 部 理 論 第 Ⅰ 部 では 災 害 報 道 に 関 連 する 既 往 研 究 を 概 観 したのち 本 研 究 で 使 用 するあらたな 理 論 フレームの 提 起 をおこなう 以 下 6つの 章 で 構 成 されている 災 害 報 道 の 定 義 ( 第 1 章 ) 災 害 報 道 研 究 の 概 括 ( 第 2 章 ) 災 害 報 道 をめぐるマスコミュニケーション モデルの 再 検 討 ( 第 3 章 ) 火 山 災 害 の 知 見 から 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 援 用 ( 第 4 章 ) 情 報 と リアリティ の 両 概 念 の 整 理 をふまえて リアリティ の 層 からも 事 態 をまなざすことの 重 要 性 の 指 摘 ( 第 5 章 ) 減 災 の 正 四 面 体 モデル を 修 正 した メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 提 起 ( 第 6 章 )という 流 れで 論 を 進 める - 7 -

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20 第 1 章 災 害 報 道 の 定 義 中 村 (2012: p.473)の 定 義 によれば 災 害 報 道 とは 災 害 の 状 況 を 伝 えたり 論 評 するジ ャーナリズム 機 能 と 災 害 の 被 害 を 軽 減 するための 情 報 を 提 供 する 防 災 機 能 を 同 時 に あわせもっているとされる 本 研 究 では この 定 義 を 参 考 にしながらも 被 災 者 の 観 点 を 最 重 要 視 して 災 害 報 道 の 機 能 を 再 分 類 することにした 災 害 マネジメントサイクルに 沿 って 整 理 したものが 下 注 記 の3つである( 近 藤, 2009; 2011a; 2011b; 2012) 1) (1) 災 害 発 生 時 の 応 急 対 応 期 におこなわれる 緊 急 報 道 (2) その 後 の 復 旧 復 興 期 におこなわれる 復 興 報 道 (3) おもに 平 常 時 におこなわれる 予 防 報 道 これらの 分 類 は あくまで 便 宜 的 なものであり ひとつの 被 災 地 においてさえも それ ぞれの 局 面 が 単 線 的 不 可 逆 的 に 変 遷 していくとは 限 らない 点 注 意 が 必 要 である 緊 急 報 道 と 復 興 報 道 が 並 行 しておこなわれたり 復 興 報 道 の 途 上 に 二 次 災 害 が 発 生 して 緊 急 報 道 が 始 まったり 混 乱 期 にあっても 先 手 を 打 って 予 防 報 道 がおこなわ れたりすることがある また 災 害 報 道 の 意 図 と 機 能 が 厳 密 に1 対 1で 対 応 するとは 限 らない 点 にも 留 意 して おく 必 要 がある 災 害 報 道 の 従 事 者 のねらいとは 別 に たとえば 復 興 報 道 を 丹 念 にお こなうことが ひるがえって 未 来 の 被 災 者 に 対 する 予 防 報 道 につながることも 十 分 考 えられる 災 害 報 道 の3 機 能 < 緊 急 報 道 復 興 報 道 予 防 報 道 >は 被 災 者 未 来 の 被 災 者 を 含 む の 立 場 から 鑑 みて それぞれ 重 要 な 使 命 を 担 っている 緊 急 報 道 では 救 命 救 急 活 動 に 資 すること 復 興 報 道 では 被 災 者 の 暮 らしに 資 すること 予 防 報 道 では 防 災 減 災 の 取 り 組 みに 資 することである これらを 平 易 な 述 語 で 言 い 表 せば 1 救 う 2 支 える 3 守 る ということになろう それぞれの 述 語 の 目 的 語 には 究 極 的 には いのち があてはまる 災 害 報 道 のベターメントを 目 指 すためには 研 究 上 は これらすべての 諸 機 能 を 統 一 的 包 括 的 に 検 討 することができる 理 論 フレームが 求 められる 次 章 では 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 と 現 況 について 概 観 したのち 災 害 報 道 研 究 独 自 の 理 論 フレームがいまだ 乏 しいと 言 わざるをえないことを 指 摘 する - 9 -

21 注 1) 大 牟 田 (2009)は 阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 自 身 が 企 画 制 作 を 担 当 したラジオ 番 組 のシリーズ を 振 り 返 り 災 害 報 道 震 災 報 道 復 興 報 道 防 災 減 災 報 道 という4ステップをたどっ たと 指 摘 している(p.187) 大 牟 田 のいう 災 害 報 道 の 概 念 は 本 研 究 にいう 緊 急 報 道 と ほぼ 重 なっているものと 考 えられる また 大 牟 田 のいう 震 災 報 道 は 被 災 者 に 焦 点 を 当 てた 報 道 と 説 明 されており 復 興 報 道 の 一 部 を 指 しているものと 考 えられる 大 牟 田 の 語 法 は 多 分 に 独 特 のものを 含 んでおり 震 災 報 道 という 概 念 は 通 常 は 地 震 被 害 に 関 連 する 報 道 全 般 を 指 すことが 多 い 本 研 究 で は オールハザード オールフェーズの 観 点 からトータルに 災 害 報 道 をとらえようとしているため 震 災 報 道 という 言 葉 は 特 段 使 用 しない( 近 藤, 2011a; 2012) なお 震 災 報 道 という 概 念 の 内 在 的 限 界 に 関 して 第 2 章 第 4 節 を 参 照 のこと

22 第 2 章 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 と 現 況 1 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 中 森 (2008)によれば 災 害 報 道 研 究 の 体 系 的 な 研 究 がはじまったのは 1964 年 の 注 新 潟 地 震 時 の 調 査 など 一 部 の 例 外 を 除 けば 1970 年 代 頃 のようである 1) 1976 年 の 駿 河 湾 東 海 地 震 仮 説 の 発 表 や 1978 年 の 伊 豆 大 島 近 海 地 震 の 余 震 情 報 パニック な ど 社 会 的 なトピックが 研 究 活 動 を 後 押 しするかたちとなった その 後 も 1982 年 の 浦 河 沖 地 震 同 年 の 長 崎 水 害 など 災 害 の 発 生 と 調 査 の 要 請 が 連 動 して 展 開 するかたちとなり 1983 年 の 日 本 海 中 部 地 震 では 住 民 の 津 波 避 難 行 動 をめぐっ て マスメディアによる 警 報 の 伝 達 に 技 術 的 な 限 界 があったことなどが 詳 細 に 検 証 された ( 田 中 田 中 林, 1986) また こうした 研 究 活 動 と 並 行 して 過 去 の 災 害 報 道 に 関 する 検 証 もおこなわれるようになった たとえば 1923 年 の 関 東 大 震 災 における 災 害 報 道 と 住 民 行 動 の 関 係 を 多 方 面 の 文 献 記 録 をもとに 分 析 したものなどがあげられる( 廣 井, 1987) 1995 年 に 起 きた 阪 神 淡 路 大 震 災 を 契 機 として 災 害 に 関 する 研 究 全 般 が 活 発 化 するよ うになると 災 害 報 道 研 究 の 面 でも 進 展 があった ( 中 森, 2008 : p.165) 中 森 によれば 従 来 の 定 量 的 な 調 査 の 内 容 は 住 民 の 情 報 ニーズやメディアの 接 触 度 が 中 心 であった ( 同 p.165)ものが 報 道 の 質 の 評 価 に 関 する 事 項 が 拡 充 されるようになったという その 背 景 には 取 材 の 過 集 中 や 報 道 格 差 プライバシーの 侵 害 ヘリコプター 取 材 の 騒 音 報 道 従 事 者 のモラルの 欠 如 などの 問 題 があった また 災 害 報 道 の 内 容 分 析 の 対 象 が それまで 新 聞 等 活 字 メディアに 偏 りがちだった ものが 20 世 紀 も 末 を 迎 えると 録 画 録 音 媒 体 が 発 達 したことによって ようやく 放 送 メディアを 俎 上 に 載 せて 研 究 できるようになった(たとえば 樫 村, 1998) さらに 中 森 (2008)は 報 道 現 場 にたずさわっている 当 事 者 による 研 究 成 果 の 発 表 も 増 えていっ 注 たと 指 摘 している 2) 以 下 節 をわけて 阪 神 淡 路 大 震 災 発 生 時 から 東 日 本 大 震 災 発 生 時 までの 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 を 概 観 する 2 日 本 マス コミュニケーション 学 会 における 災 害 報 道 研 究 の 位 置 づけ 日 本 の 災 害 報 道 研 究 の 現 況 をふまえるために おもだった2つの 学 会 の 動 向 を 順 に 検 討 することにした まず 本 節 では マス コミュニケーション 研 究 全 般 の 中 で 災 害 報 道 がどのように 位 置 づけられてきたのかを 把 握 するため 日 本 マス コミュニケーション 学 会 の 動 向 を 以 下 に 見 ていく 日 本 マス コミュニケーション 学 会 は 前 身 である 日 本 新 聞 学 会 の 設 立 (1951 年 )から 数 えると 悠 に 半 世 紀 を 超 える 歴 史 を 持 つ 日 本 のマスメディア 関 連 では 最 も 伝 統 ある 学 会 である( 日 本 マス コミュニケーション 学 会, 2013) 毎 年 冬 と 夏 に それぞれ 研 究 報 告 集 マス コミュニケーション 研 究 を 発 刊 している

23 表 -Ⅰ マス コミュニケーション 研 究 の 特 集 タイトルの 変 遷 発 刊 年 月 1995 年 1 月 1995 年 7 月 1996 年 1 月 1996 年 7 月 1997 年 1 月 1997 年 7 月 1998 年 1 月 1998 年 7 月 1999 年 1 月 1999 年 7 月 2000 年 1 月 2000 年 7 月 2001 年 1 月 2001 年 7 月 2002 年 1 月 2002 年 7 月 2003 年 1 月 2003 年 7 月 2004 年 1 月 2004 年 7 月 2005 年 1 月 2005 年 7 月 2006 年 1 月 2006 年 7 月 2007 年 1 月 2007 年 7 月 2008 年 1 月 2008 年 7 月 2009 年 1 月 2009 年 7 月 2010 年 1 月 2010 年 7 月 2011 年 1 月 特 集 タイトル 映 像 コミュニケーション 研 究 の 新 展 開 戦 後 50 年 連 続 と 不 連 続 変 容 の 時 代 とジャーナリズム 地 域 メディアと 政 治 現 代 マス コミュニケーション 理 論 のキーワード I)ポスト 冷 戦 時 代 の 国 際 コミュニケーション 論 Ⅱ) 出 版 ジャーナリズムの 理 論 課 題 ディジタル 化 時 代 におけるメディア 環 境 マス コミュニケーション 理 論 の 展 開 マス メディアと 子 ども 転 換 期 のマス メディア メディア 支 配 と 言 論 の 多 様 性 マス メディアの 批 判 の 軸 をめぐって 情 報 技 術 の 進 展 とメディア 秩 序 の 変 容 変 貌 と 模 索 の 中 のマス コミュニケーション 教 育 パワフル メディア 論 再 考 コミュニケーション 学 会 50 年 回 顧 と 展 望 メディアイベントとしてのスポーツ テレビ50 年 の 光 と 影 メッセージ 分 析 の 可 能 性 メディア 秩 序 の 変 容 と 新 しい 公 共 性 戦 時 におけるメディアと 権 力 - 日 本 を 中 心 として- メディア 史 研 究 の 方 法 再 考 -メッセージの 生 産 と 受 容 の 歴 史 - メディア 変 容 時 代 のジャーナリズム ( 特 集 タイトル 該 当 なし) マス コミュニケーション 研 究 回 顧 と 展 望 ( 特 集 タイトル 該 当 なし) メディア 法 はどこへゆくのか メディア 法 研 究 者 の 認 識 ( 特 集 タイトル 該 当 なし) <ラジオの 個 性 >を 再 考 する ラジオは 過 去 のメディアなのか 放 送 アーカイブをめぐるメディア 研 究 の 可 能 性 昭 和 の 記 憶 とメディア 世 論 と 世 論 調 査 メディア 文 化 研 究 の 課 題 と 展 望 まず この 研 究 報 告 集 の 特 集 タイトル の 変 遷 から 災 害 報 道 がどのように 位 置 づけ られてきたのか 調 査 した 対 象 とする 期 間 は 阪 神 淡 路 大 震 災 が 起 きた 1995 年 から 東 日 本 大 震 災 が 起 きる 直 前 の 2011 年 1 月 までに 区 切 っている 結 果 を 表 -Ⅰ-2-2-1に 示 す 一 瞥 すればわかるとおり 災 害 報 道 が 特 集 タイトル に 掲 げられたことは 一 度 も 無 かった 阪 神 淡 路 大 震 災 が 起 きた 1995 年 においてすら 当 然 冬 号 (1 月 号 )は 間 に 合 わなかったとしても 夏 号 にさえ 掲 げられることは 無 かった 代 わりに 採 用 されてい たテーマは 戦 後 50 年 連 続 と 不 連 続 であった そこで もうすこし 詳 しく 動 向 を 検 討 するために 今 度 は 掲 載 された 論 文 や 報 告 文 の 注 タイトルを すべて 確 認 することにした 3) 災 害 報 道 を 正 面 から 論 じていると 推 察 できた ものを 表 -Ⅰ-2-2-2に 示 す 結 果 として 8 本 が 該 当 することがわかった(N=883) Sample No.1 は 1995 年 6 月 3 日 に 実 施 された 春 季 研 究 発 表 会 の 要 約 文 で 特 集 タイトルにこそのぼらなかったもの の 学 会 内 において 災 害 報 道 のありようが 熱 心 に 議 論 されていたことが 確 認 された No.2 ~No.3 No.5~8 は それぞれワークショップの 報 告 文 だった No.4 は 該 当 文 書 の 中 で 注 4) 唯 一 論 文 という 形 式 で 記 述 されたものだった また 各 号 における 該 当 文 書 数 の 割 合

24 表-Ⅰ-2-2-② マス コミュニケーション研究 における災害報道関連文書 年月 年 1 月 1997 年 1 月 1997 年 7 月 1998 年 1 月 2007 年 7 月 2011 年 1 月 文書タイトル ワークショップ1 阪神大震災と放送 在阪 在神放送局の現場責任者の報告を中心に ワークショップ2 市民の側からみる阪神大震災テレビ報道 メディア リテラシーによるクリティカル アプローチ 阪神大震災とマス メディア 1995 年度春季研究発表会 特別報告 災害 特集 現代マス コミュニケーション理論のキーワード 50号を記念して ワークショップ7 阪神大震災とマスメディア 被災者のためのメディア 災害におけるマス メディアの役割とその可能性について みやぎ災害救援ボランティアセンターのマニュアル策定に当たって ワークショップ3 災害 事故 事件報道にみるジャーナリストの惨事ストレス ストレスケアシステムの構築をめざして 災害と住民ジャーナリズム 兵庫県佐用町水害の事例から 図-Ⅰ-2-2-① マス コミュニケーション研究 における災害報道関連文書の出現傾向 の推移から 出現傾向 災害報道研究のプレゼンス を確かめると 阪神 淡路大震災か らちょうど1年の 1996 年 1 月が最高値 9.09% 該当文書数は3本 であり あとはおし なべて 0 数 該当文書数はいずれも1本 と低い値になっていた 図-Ⅰ-2-2-① 以上をふまえると マス コミュニケーション研究 というカテゴリーの中においては 日本では 阪神 淡路大震災を契機に災害報道研究が進展したとはいえ その中身が充実 深化を見せたとまでは言い難い状況にあったといえる それは 1998 年 つまり阪神 淡 路大震災から3年後 の学会誌に掲載された Sample No.6 の本文中における 次のような フレーズからも傍証されていよう 今回の学会では ほぼ唯一と思われる 災害とマスコミ をテーマにしたワーク ショップであったにも関わらず 開催期間中を通じて出入りされた方が数人しかなく 阪 神大震災直後の学会で同種のテーマを話し合ったワークショップと比べるとその少なさが 目に付いた 以下 略 No.6: p

25 3 日 本 災 害 情 報 学 会 における 災 害 報 道 研 究 の 位 置 づけ 前 節 に 続 いて 本 節 では 災 害 情 報 研 究 の 中 で 災 害 報 道 に 関 する 研 究 がどのように 位 置 づけられてきたのか 検 討 する 対 象 としたのは 日 本 災 害 情 報 学 会 の 論 文 集 災 害 情 報 である 発 刊 がスタート した 2003 年 から 東 日 本 大 震 災 が 起 きる 前 までの 8 年 間 分 を 調 査 した 特 集 投 稿 論 文 その 他 の 記 事 を 対 象 として 災 害 報 道 に 関 する 記 述 を ある 程 度 の 比 注 重 をおいておこなっているものを 通 覧 した 5) 結 果 は 表 -Ⅰ-2-3-1のようになった 総 じて 言 えば 災 害 報 道 に 関 する 論 文 や 記 事 の 数 は 決 して 少 なくなかった( 該 当 率 28.2%, N=181) しかし 災 害 報 道 研 究 の 理 論 フレームを 根 底 から 問 い 返 すような 視 座 を 持 ったものは 数 多 くは 見 当 たらなかった ただし 学 会 誌 上 において 2009 年 度 に 重 要 注 な 画 期 があったことがわかった 6) 以 下 に 詳 しく 述 べる まず 2003 年 度 号 は 学 会 誌 の 発 刊 年 であるため 発 刊 を 記 念 する 挨 拶 文 が 多 く 記 事 の 母 数 が 多 かった その 中 には 多 数 災 害 報 道 にふれたものがあった しかし 内 容 は 災 害 報 道 の 諸 課 題 をリフレインしたに 過 ぎないものが 多 かった たとえば 避 難 を 呼 びか ける 側 の 危 機 感 を 呼 びかけられる 側 にも 持 ってもらうために 情 報 伝 達 の 何 が 欠 けてい るのか そこを 埋 める 工 夫 がいる (p.37)といった 指 摘 がみられるが 肝 心 のその 工 夫 の 中 身 は 当 事 者 の 努 力 としてのみ 語 られていた また 風 評 被 害 をめぐる 報 道 のネ ガティブな 効 果 を 指 摘 した 査 読 論 文 があったが その 対 策 に 関 しては もっとも 効 果 的 な のが 流 通 業 者 関 係 者 の 過 剰 反 応 を 抑 えるための 教 育 啓 蒙 活 動 であると 指 摘 するに 留 まっていた 続 いて 2004 年 度 には 宮 城 県 沖 地 震 (2003 年 )の 住 民 の 避 難 行 動 に 関 する 調 査 論 文 の 中 で メディアとの 関 連 を 記 述 したものがあった 人 々が 警 報 を 入 手 した 手 段 としては テ レビが 最 も 多 かったという(51.2%) 報 道 の 効 果 に 関 しては マスメディアが 流 した 津 波 警 報 は 防 災 無 線 が 流 した 情 報 と 本 質 的 にはほとんど 同 じ 内 容 であったが 受 け 止 め 方 表 -Ⅰ 災 害 情 報 における 災 害 報 道 研 究 記 事 数 ( 注 意 ) 括 弧 外 の 数 字 は 母 数 括 弧 内 の 数 字 が 該 当 数 年 特 集 投 稿 論 文 そのほか 合 計 合 計 28 (6) 8 (5) 6 (5) 5 (1) 3 (1) 5 (2) 2 (1) 4 (1) 9 (4) 6 (0) 11 (1) 8 (0) 8 (2) 8 (0) 9 (2) 8 (1) 84 (26) 44 (6) 3 (0) 4 (0) 7 (0) 10 (6) 6 (3) 10 (3) 7 (4) 6 (3) 34 (7) 17 (7) 15 (6) 19 (8) 21 (7) 29 (4) 23 (6) 23 (6) 53 (19) 181 (51)

26 が 大 きく 違 った ことを 指 摘 している その 原 因 として メディア 自 体 の 持 つメッセージ 性 に 着 目 した 点 重 要 である 当 該 論 文 では 防 災 無 線 のほうがテレビやラジオの 放 送 よりも 危 機 を 伝 えてくれるメディア として 人 々に 認 知 されていると 主 張 していた た 注 だしこの 点 に 関 して 実 証 的 な 根 拠 は 示 されていない 7) 総 じて 避 難 率 が 低 かったことに 関 して 当 該 論 文 では 問 題 解 決 に 向 けた 提 言 として 今 後 真 剣 に 対 策 を 検 討 すること が 望 まれる とだけ 結 んでいた 同 じ 号 の 特 集 記 事 には 当 該 学 会 の 宮 城 県 沖 地 震 に 対 する メディア 調 査 班 の 調 査 結 果 が 記 載 されていた(ただし 住 民 の 反 応 に 関 する 調 査 結 果 は 東 京 大 学 社 会 情 報 研 究 所 の 紀 要 をまとめたものである) 災 害 時 メディアの 役 割 が 極 めて 重 要 であることが 示 され ている 今 回 の 地 震 情 報 に 関 して 役 立 ったメディアは 何 か という 質 問 について NH Kテレビ と 答 えたのは 仙 台 市 78.9%(N=394) 大 船 渡 市 87.7%(N=410)となってい た しかしここでさらに 重 要 なのは 多 数 の 住 民 から 津 波 があるかないかという 情 報 を もっと 早 く 伝 えてほしかった という 声 が 寄 せられていたことであろう( 仙 台 市 で 34.3% 大 船 渡 市 で 63.2%) 放 送 を 視 聴 していた 人 々にとってみれば 本 当 に 津 波 の 危 機 が 迫 って いるのかという 肝 心 な 点 が 伝 わらなかった 可 能 性 が 示 唆 されているからである しかし 当 該 記 事 には この 点 を 深 く 考 察 した 痕 跡 が 見 当 たらなかった 2004 年 度 号 の 査 読 論 文 の 中 には 災 害 報 道 に 関 連 するものが2 本 あった 1 本 は 火 山 情 報 1 本 は 原 発 情 報 に 関 するものであった 前 者 では 情 報 ( 用 語 )のわかりにくさに 焦 点 をあて 自 治 体 とメディア 双 方 の 意 見 を 聴 取 していた 一 方 後 者 では 実 験 的 に 作 成 した 広 報 文 を 住 民 に 評 価 してもらい 内 容 は 長 すぎないか 事 態 の 重 大 性 に 関 してどの ように 感 じたかなど 受 け 止 め 方 を 丹 念 に 調 査 していた 特 に 後 者 の 研 究 手 法 は 本 研 究 にとって 重 要 な 示 唆 を 持 っていると 考 えられる 2005 年 度 号 には 岩 手 宮 城 連 続 地 震 (2003 年 )を 対 象 として 自 治 体 の 災 害 対 応 状 況 を 分 析 した 査 読 論 文 の 中 で マスコミ 対 応 に 関 してふれた 箇 所 があった マスコミの 取 材 が 24 時 間 以 内 の 業 務 に 支 障 が 出 た とする 自 治 体 は 49.0%にのぼることが 示 されてい る しかしながら そのような 状 況 下 において 実 際 に 何 が 広 報 されたのか(または で きなかったのか) それを 受 けて 何 が 報 道 されたのか(または されなかったのか) 当 該 論 文 では 内 容 の 分 析 にまでは 踏 み 込 んでいなかった 2005 年 度 号 には 台 風 23 号 災 害 時 の 特 にコミュニティFMの 利 活 用 に 関 する 調 査 結 果 が 特 集 されていた しかしこちらも 放 送 された 内 容 の 分 析 にまで 踏 み 込 んだ 記 述 は 見 ら れなかった また 同 じ 号 の シンポジウムの 抄 録 からは 災 害 報 道 / 災 害 情 報 に 関 する 議 論 が 活 発 に おこなわれていたことがうかがえる 地 震 災 害 多 発 時 代 に メディアが 正 しい 情 報 をどう 迅 速 に 伝 えるかが 問 われている といった 10 年 来 繰 り 返 されてきたフレーズも 見 られ る 一 方 で 直 下 型 地 震 や 集 中 豪 雨 などのマスコミが 作 った 言 葉 を 例 にとって メデ ィアの 語 彙 想 像 力 をポジティブに 評 価 するコメントなどが 記 述 されていた ここでは

27 発 信 する 側 と 媒 体 としてのマスメディアと それから 受 け 手 の 側 が できる 限 り 情 報 を 共 有 することが 大 切 と 結 ばれている しかしながら どのようなかたちで 共 有 を 図 ればよいのか その 仕 方 を 洞 察 したコメントは 見 当 たらなかった 2006 年 度 号 の 査 読 論 文 の 中 には 民 間 研 究 者 の 地 震 予 知 情 報 をめぐって 災 害 報 道 が 果 たした 役 割 がまとめられている 当 該 論 文 では 民 間 研 究 者 の 地 震 予 知 情 報 が リスク コミュニケーションのきっかけとなった 可 能 性 を 示 唆 できる とポジティブに 評 価 してい て さらに 科 学 リテラシーに 劣 る 市 民 に 啓 発 が 必 要 であるとする 市 民 観 からの 脱 却 が 行 政 に 求 められるかもしれない と 指 摘 している また 行 政 と 住 民 をつなぐイ ンタープリターやファシリテーターなどの 第 三 者 機 関 マスメディア 以 外 の 何 らかの 主 体 の 介 在 を 提 案 している 同 年 度 の 記 事 の 中 には 気 象 災 害 報 道 に 関 する 勉 強 会 の 記 録 があった 予 報 区 を 細 分 化 した 結 果 かえって 情 報 過 多 となり 危 機 感 を 共 有 しにくくなるなどの 弊 害 が 出 ること それを 乗 り 越 えるためには 気 象 庁 だけで 努 力 すればすむ 話 ではないことなど 示 唆 に 富 む 内 容 となっている ただし 情 報 の 受 け 手 にどうすれば 伝 わるかという 問 いを 立 てながら も 受 け 手 すなわち 地 域 住 民 と 一 緒 に 問 題 の 解 決 を 目 指 すといった 根 本 的 な 改 革 の 構 えなどは 見 せていない 2007 年 度 号 の 特 集 テーマは 災 害 情 報 で 人 を 救 うために だった この 中 には 災 害 報 道 に 関 連 する 記 事 が 複 数 あった 大 きく3つあげると 1つ 目 は 洪 水 情 報 の 用 語 のわか りにくさを 具 体 的 な 例 たとえば 右 岸 と 左 岸 越 水 と 溢 水 避 難 勧 告 と 避 難 指 示 内 水 氾 濫 と 外 水 氾 濫 など をあげながら 示 した 記 事 で すべての 災 害 情 報 について 言 えることだが 専 門 家 行 政 担 当 者 マスコミ そして 受 け 取 る 住 民 までが 同 じ 言 葉 で 語 り 合 い わかり 合 えるようにする 必 要 がある と 提 言 していた また 2つ 目 は 土 砂 災 害 警 戒 情 報 の 発 表 に 伴 う 運 用 上 の 課 題 すなわち 該 当 エリアが 広 範 囲 におよぶと 報 道 内 容 が 地 名 の 羅 列 になってしまうといった 弊 害 が 指 摘 され せっ かくの 情 報 が 住 民 の 行 動 指 針 になりえていないことが 問 題 提 起 されていた 3つ 目 は 緊 急 地 震 速 報 の 一 般 向 け 運 用 に 関 する 記 事 で 特 にテレビ 放 送 を 念 頭 に 置 いて 速 報 性 と 同 報 性 のアドバンテージがあることをふまえながらも 地 域 性 個 別 性 自 分 がいる 場 所 はどうなのか には 限 界 があることを 指 摘 した 上 で 今 後 は 情 報 の 性 格 を 事 前 に 周 知 しておくことで あらたな 防 災 文 化 を 築 くことが 必 要 であると 結 論 づけていた 2008 年 度 号 は 特 集 テーマが 新 防 災 情 報 システムは 使 えるか? と 設 定 されていて 災 害 情 報 の 受 信 / 発 信 や 集 約 / 共 有 に 関 わる 新 しいテクノロジーやシステムに 焦 点 がしぼ られていたこともあって 災 害 報 道 に 関 連 する 論 文 記 事 は ごくわずかしかなかった その 中 にあって 地 震 防 災 啓 発 ラジオ 番 組 シリーズの 企 画 制 作 に 関 するユニークな 実 践 報 告 が 掲 載 されていて 注 目 に 値 する 放 送 関 係 者 と 防 災 専 門 家 による 協 働 作 業 によ って PDCAサイクルをふまえて1 年 間 のシリーズを 組 んだ 点 番 組 の 準 備 立 て 自 体 が 精 妙 で 参 考 になるものであるが 加 えて 放 送 関 係 者 のメンバーの 中 に 総 務 や 営 業 など

28 平 素 番 組 づくりには 関 与 していない 職 員 すなわち 住 民 の 立 場 に 近 しいメンバー を 加 えている 点 が 特 に 評 価 されてよいと 考 える さらに 2008 年 度 号 には 本 研 究 にとって 重 要 な 示 唆 を 与 えるものとなる 減 災 シンポジ 注 ウム の 抄 録 が 掲 載 されていた 8) テーマは ひとはなぜ 逃 げないのか? 逃 げられない のか? であった パネリストの 報 道 関 係 者 は ( 住 民 を) 納 得 させるためには もっと 情 報 の 精 度 を 上 げ もっとピンポイントの 情 報 になれば 逃 げるだろう といった 考 えを 示 し ているのに 対 して 専 門 家 のひとりは 災 害 情 報 をインフォメーションと 捉 えると 出 す 側 が 情 報 のクオリティを 考 えればいいのだが 重 要 なことはその 情 報 が 住 民 の 行 動 に 結 び つくことだ ということはインフォメーションではなくコミュニケーションになっていな ければいけない そう 考 えると 受 け 手 側 の 論 理 もなければ 実 効 性 のあるものにならない と 指 摘 している これを 受 けて 当 該 シンポジウムのコーディネーターは 議 論 の 要 点 を 相 手 の 立 場 をどこまで 反 映 できるのか それを 緊 急 時 の 中 でどこまで 詰 められるのか に 尽 きると 結 論 づけており このような 示 唆 をふまえた 理 論 フレームの 構 築 が 学 術 的 にも 実 践 上 も 求 められていることが 確 認 できた 2009 年 度 号 では 当 該 学 会 の 調 査 団 による 2008 年 8 月 末 豪 雨 災 害 等 に 関 する 調 査 報 告 が まず 注 目 される 気 象 台 の ( 東 海 豪 雨 ) 匹 敵 表 現 やTVCMLを 利 用 した 災 害 情 報 システムの 実 稼 働 など 興 味 深 い 事 例 が 紹 介 されていた しかし 本 研 究 の 目 的 に 照 らして 最 大 のトピックといえるのは 災 害 情 報 がエンドユ ーザーに 活 用 されるために という 座 談 会 の 記 録 である ここでは 災 害 情 報 誌 上 はじ めて 受 け 手 自 身 の 論 理 そして 受 け 手 と 送 り 手 の 関 わり (p.40)に 明 示 的 に 焦 点 があ てられ 周 到 な 議 論 が 展 開 された 小 見 出 しにも 求 められる 新 たな 防 災 対 策 の 方 向 性 (p.40)などのフレーズが 見 られる 災 害 情 報 と 言 ったとき 発 信 者 と 受 信 者 がいる あ るいは 与 え 手 たる 人 または 与 え 手 に 価 する 人 と 受 け 手 に 甘 んじなければならない 人 が いる という 区 分 けを これまであまりにも 鮮 明 にしてきたことが そもそも 大 問 題 なの ではないか (p.40)といった 問 題 提 起 にはじまり 研 究 者 ( 専 門 家 )だけがニュートラ ル つまり 当 事 者 性 はゼロ というわけにはいかない (p.46)といった 指 摘 絶 対 確 実 な 情 報 を 出 す ということは あんたは 判 断 する 必 要 なし これに 従 っとけ ということ ですから 受 け 手 の 主 体 性 を 奪 うことになる (p.47)といった 反 省 メタ メッセージ の 効 果 までも 織 り 込 んでコミュニケーションというものを 設 計 できる 学 理 はないか (p.48) といった 発 案 そして 情 報 の 受 け 渡 しをおこなった 後 に 送 り 手 と 受 け 手 がその 情 報 を めぐって 何 かを 一 緒 にする 体 制 に 入 っていくことが 重 要 だ (p.51)といった 提 言 が 述 べられ さいごに 情 報 の 受 け 手 が 受 け 取 った 情 報 をどう 解 釈 し 活 用 するかという 一 方 向 的 で 自 己 完 結 的 な 話 を 想 定 してしまっているけれども そうではなく 受 け 手 と 送 り 手 との 間 で 何 かの 関 係 が 生 まれ 何 かの 行 動 が 生 まれ もしくは 新 しい 関 係 が 生 まれる というようなところに 持 っていかなければいけない (p.51)と 結 論 づけられている 次 章 以 降 で 詳 しく 述 べることになるが このような 災 害 情 報 研 究 における 新 たなパラダイムこ

29 そ 本 研 究 が 拠 って 立 つ 礎 となるものであるといえる 2010 年 度 は 特 集 テーマは 災 害 情 報 を 防 災 教 育 にどう 活 かすのか? となっており 災 害 報 道 関 連 は 全 般 的 に 僅 少 であった 該 当 記 事 の 中 には メディア 担 当 者 向 け の 教 育 事 例 を 記 者 自 らが 報 告 したものがあった そこでは メディアと 自 治 体 職 員 の 水 平 な 関 係 (p.22)が 重 要 視 されるとする 一 方 で メディア 自 身 の 宿 題 として 災 害 時 における 適 切 な 議 題 設 定 機 能 を 担 うためにも 独 学 の 限 界 は 独 学 で 破 っていかなければならな い ( p.24)と 結 んでいる 2010 年 度 の 査 読 論 文 の 中 には 2009 年 度 の 画 期 の 系 譜 に いちぶ 関 連 するものが 含 まれていた 鹿 児 島 県 垂 水 市 の 避 難 情 報 の 伝 達 過 程 を 分 析 したもので これまでのアプロ ーチでは 行 政 組 織 やマス メディアは 地 域 における 災 害 情 報 伝 達 と 避 難 に 関 し 情 報 を 発 すれば 必 然 的 に 住 民 に 伝 わり 住 民 は 情 報 を 十 分 受 容 できる 合 理 的 存 在 であるという 前 提 に 立 っていたと 批 判 したうえで 日 常 の 地 域 社 会 に 存 在 する 住 民 の 社 会 的 ネットワ ークの 中 で 交 換 される 情 報 こそが 避 難 行 動 への 契 機 として 大 きく 影 響 している と 主 張 していた さらに 地 域 住 民 は 単 に 分 割 された 個 の 総 和 ではなく 社 会 的 につなが っている 総 体 として 捉 えることが 必 要 (p.82)だとも 指 摘 していた 本 節 において 調 査 対 象 としたのは 以 上 である 先 に 結 論 を 述 べておいたとおり 当 該 分 野 における 学 理 的 な 研 究 は ようやくその 必 要 性 が 強 く 求 められるようになったところ であることが 明 らかとなった 続 く 2011 年 度 号 の 発 刊 準 備 中 に 東 日 本 大 震 災 が 起 きた 2011 年 度 号 には 災 害 情 報 研 究 に 一 言 という 特 集 が 組 まれており 災 害 情 報 学 は 未 だ 中 核 的 なアカデミック ディシプリンを 確 立 しえていないとも 評 しうるだろう とい った 指 摘 もなされている この 点 を 十 分 ふまえた 上 で 本 研 究 は 特 に 災 害 報 道 研 究 に 関 してあらたに 寄 与 するものを 目 指 さなければなるまい 4 災 害 報 道 研 究 の 現 況 第 2 節 と 第 3 節 では アカデミック コミュニティにおける 災 害 報 道 研 究 の 変 遷 を 概 観 した ところで 災 害 報 道 のありかたに 関 して 日 本 社 会 全 般 で 議 論 が 不 熱 心 不 活 発 だ ったというわけではない たとえば 板 垣 (2011)が 日 本 新 聞 労 働 組 合 連 合 近 畿 地 方 連 合 会 主 催 の 市 民 参 加 シンポジウムの 変 遷 に 関 して 着 目 したとおり 例 年 阪 神 淡 路 大 震 災 のメモリアル デーの 近 辺 では 震 災 報 道 の 教 訓 を 継 承 していこうとする 取 り 組 みが 続 けられてきた( 表 -Ⅰ-2-4-1) しかし この 震 災 報 道 という 概 念 自 体 に 内 在 的 な 限 界 があったと 考 えることもできる( 第 1 章 の 補 注 1を 参 照 ) ここで 想 定 しているハザー ドないしリスクは あくまで 震 災 ( 地 震 災 害 ) であり たとえば わずかなリードタイ ムを 生 かして 警 報 を 広 く 伝 達 することが 求 められる 緊 急 報 道 (たとえば 豪 雨 や 津 波 な どの 場 合 )のありかたを 議 論 することは ほとんどの 場 合 において オミットされていた こうした 状 況 も 相 俟 って 日 本 では 本 章 の 第 1 節 で 指 摘 したような 災 害 報 道 のベタ ーメントを 企 図 するトータルな 理 論 フレームの 構 築 に 関 しては 議 論 が 低 調 であったと

30 表 -Ⅰ 震 災 報 道 シンポジウム( 日 本 新 聞 労 働 組 合 連 合 近 畿 地 方 連 合 会 主 催 ) 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 5 回 第 6 回 第 7 回 第 8 回 第 9 回 第 10 回 第 11 回 開 催 日 1995/6/ /2/ /2/8 1998/2/7 1999/2/ /2/ /2/ /1/ /1/ /2/ /2/13 シンポジウムタイトル 震 災 報 道 を 斬 る - そのとき 新 聞 は - 大 震 災 報 道 1 年 - 新 聞 は 被 災 者 の 力 になったのか - 震 災 を 追 い 続 けて - 新 聞 記 者 と 読 者 との 対 話 集 会 - 語 り 合 おう 4 年 目 の 震 災 報 道 - 新 聞 は 映 像 は - 語 り 合 おう 震 災 報 道 99 - 立 ち 上 がる 街 新 聞 は - 見 つめよう 震 災 報 道 今 新 聞 は 何 を 伝 えるべきか - 21 世 紀 震 災 報 道 - 教 訓 を 生 かすために 新 聞 は 今 - 震 災 災 害 報 道 被 災 地 を 結 ぶ 市 民 と 新 聞 - 被 災 地 から 未 来 へ - 震 災 防 災 報 道 震 災 シンポジウム 2004 震 災 10 年 へ 国 とは 地 方 とは 報 道 とは 震 災 シンポジウム 2005 災 害 報 道 は 深 化 したか 阪 神 淡 路 大 震 災 から 10 年 板 垣 (2011: p.66)をもとに 抜 粋 した 考 えられる この 点 に 関 して 中 森 (2008)も 同 様 の 趣 旨 のことを 述 べている 災 害 報 道 の 特 性 の 一 般 化 や 新 たな 分 析 モデルの 検 討 を 行 うことなどが 災 害 報 道 研 究 を さらに 発 展 させていくための 課 題 (p.167)となっていると そこで 次 章 以 降 では 災 害 報 道 の 分 析 にこれまで 援 用 されてきたマスコミュニケーシ ョン モデルの 変 遷 を 概 括 し( 第 3 章 ) 着 目 すべきモデルを 示 したあとで( 第 4 章 ) 情 報 と リアリティ の 各 概 念 の 再 検 討 をおこない( 第 5 章 ) 第 Ⅰ 部 のさいごに あらた な 理 論 フレームの 提 起 をおこなう( 第 6 章 ) 注 1) 災 害 報 道 自 体 の 嚆 矢 としては 日 本 社 会 においては 濃 尾 地 震 (1891 年 )の 際 の 新 聞 雑 誌 メディアの 活 躍 があげられよう 全 国 の 新 聞 社 が 義 捐 金 の 募 集 を 呼 びかけたり 米 の 高 騰 を 防 ぐため 暴 利 をむさぼる 商 売 人 を 批 難 したりした( 内 閣 府 災 害 教 訓 の 継 承 に 関 する 専 門 調 査 会, 2006) 注 2) すでに 序 章 でも 述 べたとおり 本 研 究 も 当 事 者 研 究 のひとつとして 位 置 付 けることができよ う 注 3) 投 稿 規 定 や 執 筆 要 領 英 文 抄 録 などの 文 書 は 分 析 対 象 から 除 いた 注 4) 該 当 文 書 No.4 の 論 文 では コミュニケーション 論 の 観 点 から 災 害 情 報 に 関 する 研 究 史 を 概 観 して おり さいごの 節 が 災 害 報 道 の 研 究 にあてられている そこでは 災 害 と 放 送 の 関 わりが 一 般 社 会 の なかできわめて 大 きな 問 題 として 提 起 されたのは 阪 神 淡 路 大 震 災 をもって 嚆 矢 とするのではなかろう か (p.27)として 当 該 災 害 における 特 に 初 動 期 の 課 題 を 整 理 し 災 害 報 道 の 課 題 はまだまだ 多 いと いうのが 実 感 である (p.30)と 結 んでいる( 廣 井, 1997) 注 5) 災 害 報 道 に 関 して ひとつの 節 以 上 の 記 述 があるものを 対 象 とした 投 稿 規 定 や 編 集 後 記 事 務 局 からのお 知 らせなどの 文 書 は 分 析 対 象 から 除 いた 注 6) もちろん 災 害 報 道 に 焦 点 をあてていないからといって その 記 事 が 災 害 報 道 に 無 関 係 で

31 あるというわけではない 点 付 記 しておく 本 節 は あくまで 災 害 報 道 研 究 の 大 きなトレンドを 把 握 することを 目 的 としている 注 7) たとえば 2011 年 和 歌 山 県 北 部 地 震 のケースでは 地 域 住 民 はテレビから 伝 えられた 安 心 情 報 を 信 じて ローカルなアラームを 軽 視 する 傾 向 が 見 受 けられた( 近 藤 矢 守, 2013) 注 8) 当 該 シンポジウムの 抄 録 には 災 害 報 道 という 言 葉 自 体 は 本 文 中 に 見 当 たらないのだが 災 害 報 道 の 従 事 者 が 参 加 し 報 道 機 関 放 送 局 の 役 割 に 関 してもかなりのボリュームでふれているので 分 析 対 象 に 加 えることにした

32 第 3 章 マスコミュニケーション モデルの 変 遷 1 伝 達 と 受 容 の 二 項 対 立 有 馬 (2007: p.7)は コミュニケーションとはそもそも 送 り 手 コミュニケーション 内 容 受 け 手 (への 影 響 効 果 ) という 過 程 を 経 るものであると 定 義 づけている このうち マスコミュニケーション 理 論 においては 大 衆 (mass)という 抽 象 的 な 存 在 が 前 提 とされてきた 大 衆 は 不 特 定 多 数 の 匿 名 で 非 組 織 的 な 人 々のことである 情 報 の 送 り 手 は 情 報 の 受 け 手 との 関 係 において 原 則 的 に 役 割 を 交 換 することはない (たとえば 野 村, 2002)と 考 えられてきた そこには 両 者 の 非 対 称 性 の 構 図 にこ そ 諸 課 題 の 起 原 があるという 問 題 認 識 があった 大 澤 (2013)は メディア 状 況 としてはインターネットも 含 めた 現 代 社 会 のコンテキ ストをふまえて 情 報 の 発 信 者 という 立 場 に 自 己 を 投 射 すると 平 たく 言 えば 上 から 目 線 の 文 体 を 用 いるようになると 指 摘 している 上 から 目 線 の 文 体 とは すなわち 無 知 な 者 に 教 えてやろう ほんとうのことがわからない 者 の 蒙 を 啓 いてやろう というコ ノテーションをもった 文 体 (p.176)のことである 情 報 の 川 上 と 川 下 というマスメデ ィア 業 界 のジャーゴンが 示 しているとおり 送 り 手 は 受 け 手 に 対 して 権 威 的 権 力 的 に それが 善 意 であったとしてもパターナリスティックに なりがちである すくなくとも 関 係 は 対 等 ではない と 認 識 されている このことが 二 項 を 必 然 的 に 対 立 的 な ものにしていると 考 えられる このような < 送 り 手 / 受 け 手 >を 峻 別 して 対 置 するモデルの 原 型 となったのが シャ ノンとウィーバーの 通 信 システム モデルである( 図 -Ⅰ-3-1-1) ここでは 情 報 が 送 信 者 ( 図 の 左 側 )から 受 信 者 ( 図 の 右 側 )に 向 かって ノイズによる 干 渉 が 考 慮 されて いるとはいえ 線 形 的 な 過 程 で 伝 えられるものとされていた(Shannon&Weaver, 1949=2009) この machine to machine を 想 定 した 数 学 的 なモデルを man to man の 対 人 コミュニケー ションにもあてはめるようになった 1950 年 代 には フィードバックの 作 用 を 組 み 込 むなど コミュニケーションを 非 線 形 のものとみなす 実 際 的 な 観 点 に 立 った 修 正 がおこなわれた (McQuail&Windahl, 1981=1986) しかしながら コミュニケーション 過 程 を 終 わりのな メッセージ 信 号 受 信 信 号 メッセージ 情 報 源 発 信 源 受 信 源 目 的 地 雑 音 源 図 -Ⅰ 一 般 的 な 通 信 システム (Shannon&Weaver, 1949=2009: p.64 を 一 部 改 変 )

33 メッセージ 記 号 化 解 読 解 釈 者 解 釈 者 解 読 記 号 化 メッセージ 図 -Ⅰ オズグッドとシュラムの 循 環 モデル (McQuail&Windahl, 1981=1986: p.25 をもとに 一 部 改 変 ) C C= 送 り 手 R= 受 け 手 R 第 一 次 集 団 第 一 次 集 団 より 大 きい 社 会 構 造 図 -Ⅰ ライリーとライリーの< 送 り 手 / 受 け 手 >モデル (McQuail&Windahl, 1981=1986: p.49 をもとに 一 部 改 変 ) いもの としてとらえなおしたオズグッドとシュラムのモデル( 図 -Ⅰ-3-1-2)や コミ ュニケーション 過 程 は 社 会 的 真 空 のなかにあるわけではないとしたライリーとライリ ーのモデル( 図 -Ⅰ-3-1-3)に 見 られるとおり 二 項 対 立 的 な 図 式 は 多 くの 場 合 において 温 存 されることになった(McQuail&Windahl, 1981=1986) 上 述 したオズグッドとシュラム の 循 環 的 なモデルでさえも マスコミュニケーションの 分 析 にあてはめる 際 には 図 の 右 側 に 大 衆 という 受 け 手 を 設 定 し 送 り 手 に 対 しては 推 論 的 なフィードバック がな

34 注 されるのみとしていた(McQuail&Windahl, 1981=1986) 1) このようなコミュニケーション モデルの 系 譜 のなかで 送 り 手 を 中 心 に 据 えた 研 究 を 伝 達 過 程 論 受 け 手 を 中 心 に 据 えた 研 究 を 受 容 過 程 論 と 呼 び 習 わしてきた 節 をあ らためて それらの 変 遷 を 概 観 する 2 マスコミュニケーション モデルに 関 する 学 説 の 主 な 変 遷 マスコミュニケーション モデルは すでに 多 数 の 学 説 が 提 起 されており 詳 細 を 網 羅 的 に 検 討 することは 難 しい 以 下 で 著 名 な 学 説 の 変 遷 を 概 括 するが 端 的 にいえば マ スメディアの 影 響 を 絶 大 とみる(1) 強 力 効 果 説 から その 影 響 力 を 限 定 的 にとらえる (2) 限 定 効 果 説 そして 受 け 手 からの 作 用 をも 重 視 する 修 正 的 な 理 論 ここでは 野 注 村 (2002)にならって (3) 複 合 影 響 説 2) と 呼 ぶ に 変 遷 してきたと 考 えられている (1) 強 力 効 果 説 では マスメディアが 情 報 の 受 け 手 一 人 ひとりに 直 接 的 な 影 響 を 注 及 ぼす 強 力 なパワーがあることを 主 張 したとされる 3) 代 表 的 な 研 究 として オーソン ウェルズとマーキュリー 劇 場 で 放 送 されたラジオドラマ 宇 宙 戦 争 のリスナーたちが パニックに 陥 った 事 件 を 扱 った キャントリルの 研 究 が 重 要 である(Cantril, 1940=1971; 注 森, 2009) 4) (2) 限 定 効 果 説 に 関 連 する 研 究 の 代 表 例 が ラザースフェルド&ベレルソン&ガウ デットの ピープルズ チョイス である(Lazarsfeld&Berelson&Gaudet, 1944=1987) 人 々は 準 拠 集 団 に 規 定 されながら 情 報 を 選 択 的 に 受 容 することや オピニオン リーダー を 媒 介 してフォロワーに 情 報 が 伝 播 されていくこと 二 段 階 の 流 れを 経 ること などが 見 出 された その 後 (1)や(2)では 事 態 を 単 純 化 しすぎているきらいがあるという 批 判 から さまざまな 修 正 理 論 (3) 複 合 影 響 説 が 提 起 されてきた 以 下 野 村 (2002)を 参 照 して 整 理 すれば (1)を 修 正 するものとして マスメディアが 強 力 な 影 響 力 を 持 ちうる のは 目 新 しい 話 題 を 提 起 する 際 だけであるとする 予 防 接 種 効 果 説 マスメディアが 影 響 力 を 持 ちうるのは 今 なにを 考 えるべきかという 争 点 を 提 起 する 機 能 だけであるとする 注 議 題 設 定 機 能 説 などがある 5) また (2)を 修 正 するものとしては 人 々は 何 が 正 常 で 何 が 異 常 か 判 断 する 際 に マスメディアの 論 調 を 参 照 するという 文 化 規 範 説 や 人 々は 意 見 の 表 明 をする 際 に 自 分 が 多 数 派 か 少 数 派 のどちらに 所 属 しているのか 確 認 し 仮 に 後 者 であることがわかると 容 易 に 意 見 表 明 を 控 えてしまうという 沈 黙 のらせんモデ 注 ル (Neumann, 1980=2013)などがある 6) これらの 代 表 的 な 理 論 をふまえたうえで 修 正 の 修 正 複 合 の 複 合 版 モデルが 提 起 され 続 けている 状 況 にある ただし 程 度 の 差 こそあれ これら 諸 理 論 の 多 くに 共 通 して 見 出 されるのは 前 節 で 確 認 したような< 送 り 手 / 受 け 手 >の 二 項 対 立 的 な 図 式 で 注 7 注 あった 8) クラッパーは 初 期 のマス コミュニケーション 研 究 を 総 合 するうえで 現 象 論 的 アプ

35 教 育 しつけ 道 徳 法 律 マス メディア 媒 介 変 数 受 け 手 効 果 集 団 慣 習 そのほか 図 -Ⅰ クラッパーの 現 象 論 的 アプローチ モデル( 田 崎 児 島, 1992: p.41 を 改 変 ) ローチ(phenomenistic approach) を 提 起 した ここでは 送 り 手 (マスメディア) 対 受 け 手 を 直 接 的 な 関 係 でとらえるのではなく マス コミュニケーションの 効 果 を 他 の 様 々な 影 響 力 の 中 で 作 用 する ワン オブ ゼム として 相 対 化 して 捉 えようとして いる しかしそれでも 左 辺 から 右 辺 に 情 報 が 流 れていくという 従 来 の 枠 組 みに 関 しては そのままのかたちで 踏 襲 している( 図 -Ⅰ-3-2-1) マスメディア 自 体 は 社 会 から 何 ら 影 響 を 受 けていないようにみなせることなど このモデルには 批 判 すべき 点 が 多 い このようにして 学 説 の 系 譜 を 概 観 するかぎりにおいて 災 害 報 道 をめぐる 閉 塞 した 事 態 を 超 克 するためには 理 論 フレームを 根 本 的 に 見 直 すことが 求 められると 考 える そこで 次 章 では その 足 掛 かりを 与 えてくれる 火 山 災 害 の 分 野 における 知 見 を 検 討 する 注 1) もちろん 受 け 手 とされる 大 衆 にも 能 動 性 を 付 与 したモデルが 早 くから 登 場 している たとえば 1970 年 代 ホールは テレビ 番 組 の 制 作 過 程 を コーディング 視 聴 者 が 番 組 をみる 過 程 を デコーディング と 位 置 づけたうえで(Hall, 1980) 両 者 のずれに 着 目 して 支 配 的 なメッセージを 受 動 的 に 受 け 取 る 視 聴 者 像 から 一 定 の 制 約 のもとで 能 動 的 に 受 容 する 視 聴 者 像 への 転 換 ( 門 部, 2009:p.150)を 図 った このときホールは 意 味 の 固 定 された 一 次 元 的 メッセージを 送 り 手 が 生 み 出 し 受 け 手 がそれを 受 信 する 直 線 的 なモデルを 仮 想 敵 とみなして モデルの 修 正 を 提 起 したのだという ( 門 部, 2009:p.154) 注 2) 田 崎 児 島 (1992)は これらを 新 しい 効 果 理 論 と 総 称 していた しかし 本 研 究 の 執 筆 現 時 点 =2013 年 において 新 しい という 形 容 詞 はそぐわないと 考 えられるため 本 研 究 では この 用 語 は 採 用 しなかった 注 3) 有 馬 (2007)は 竹 下 の 知 見 を 引 きながら 実 は 強 力 効 果 説 の 提 唱 者 は 不 詳 であり ラザー

36 スフェルド 以 降 の 研 究 者 たちが 自 分 のモデルを 引 き 立 てるために 後 年 になって 提 出 したのではないかと 指 摘 している 注 4) 本 論 文 では 第 7 章 で 当 該 ラジオドラマ 研 究 の 意 義 を 再 検 討 している 注 5) 議 題 設 定 機 能 説 研 究 の 系 譜 動 向 は 竹 下 (2008)に 詳 しい 注 6) 沈 黙 のらせんモデル において 提 唱 された 意 見 風 土 の 概 念 は 本 研 究 にとって 非 常 に 示 唆 的 である( 宮 武, 2009) 知 覚 された 多 数 派 は 多 くの 場 合 本 研 究 における リアリティ とオーバ ーラップする 概 念 であると 考 えられる 注 7) 伝 達 過 程 論 の 系 譜 における ロジャーズの 普 及 過 程 論 に 関 して 田 崎 児 島 (1992)は マス メディア 対 受 け 手 というように1 対 1の 関 係 のなかでとらえようとするのではなく 受 け 手 を 対 人 関 係 を 持 つ 存 在 として 位 置 付 け マス メディア 対 人 関 係 受 け 手 という 過 程 のなかで 考 察 すべきことを 強 調 した (pp.28-29)と 位 置 付 けている ここにおいても 左 辺 から 右 辺 への 情 報 伝 達 という 二 項 対 立 的 な 枠 組 みは 温 存 されている 注 8) もちろん 有 力 な 例 外 もある 高 田 (2012)は コミュニケーション 理 論 において おおきくわ けて 伝 達 モデル と 構 成 モデル があると 指 摘 している 本 章 で 示 したのは おもに 前 者 の 系 譜 であ る 次 章 以 降 は 後 者 の 理 論 をふまえて 議 論 が 展 開 される

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38 第 4 章 災 害 報 道 研 究 における 減 災 の 正 四 面 体 モデル 1 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 特 長 災 害 報 道 研 究 において 独 自 の 理 論 研 究 が 低 調 であったことは 第 2 章 と 第 3 章 で 述 べ たとおりである ここで いまいちど 災 害 報 道 の 使 命 ( 第 1 章 )をふまえるならば 災 害 報 道 は 被 災 (した/する) 社 会 の 関 係 当 事 者 が 事 態 の 改 善 に 向 けて 尽 力 する 際 に わず かながらでも 寄 与 できるものでなければならない しかしそこでは 前 章 でみたような 二 項 対 立 的 な 問 題 把 握 の 図 式 が 実 践 上 においても 問 題 の 克 服 を 阻 んでいると 考 えられる 従 来 とは 異 なるモデルに 則 したアプローチを 採 用 することが 求 められる 所 以 である こうした 問 題 意 識 をふまえたモデルが すでに 火 山 災 害 の 研 究 において 提 起 されている 本 章 では この 知 見 をひもときながら その 特 長 と 限 界 を 検 討 する 当 該 モデル( 図 -Ⅰ-4-1-1) 減 災 の 正 四 面 体 モデル ( 岡 田 宇 井, 1997; 岡 田, 2008) という は 火 山 災 害 の 被 害 軽 減 を 目 的 として 20 世 紀 末 に 提 唱 された 背 景 には 火 山 被 害 予 測 地 図 などの 防 災 情 報 が 完 備 されたなかで 起 きてしまった ネバド デル ルイス 注 火 山 の 悲 劇 (1985 年 ) 1) などがあげられる リスクに 関 する 情 報 が ただそこにあるだ けでは 人 の 命 は 救 えないとの 切 実 な 反 省 をもとにして 研 究 者 が 独 自 に 当 該 モデルの 構 築 をおこない 実 践 に 結 びつけてきた そこには 科 学 者 は 自 然 の 一 番 の 理 解 者 ( 岡 田 宇 井, 1997: p.112)であり 完 璧 な 噴 火 予 知 が 叶 わないことも 十 分 承 知 したうえで 最 大 限 行 政 や 住 民 やメディアと 連 携 して 適 切 な 避 難 行 動 を 促 す 必 要 があるとの 考 えがあった さらに 当 該 モデルの 提 唱 者 は 強 い 自 戒 の 念 を 込 めて 次 のようにも 記 している しかし 科 学 者 は 自 分 が 理 解 し 論 文 に 仕 上 げると 次 の 仕 事 に 没 頭 し ともすれば 象 牙 の 塔 にこもりがちである( 岡 田 宇 井, 1997: pp ) 図 -Ⅰ 減 災 の 正 四 面 体 モデル ( 岡 田 宇 井, 1997 を 一 部 改 変 )

39 当 該 モデルの 特 長 は 火 山 防 災 に 立 ち 向 かう 代 表 的 な 主 体 を 四 者 すなわち 住 民 行 政 マスメディア 科 学 者 の 四 者 明 示 したうえで その 距 離 を 均 等 に 配 置 している したがって 正 四 面 体 の 立 体 構 造 になっている ことにある そのなかで 敢 えて 住 民 を 正 四 面 体 の 頂 点 に 据 えたのは 住 民 こそが 災 害 当 事 者 であり 災 害 の 主 人 公 とな りうる からであり そのほかの 主 体 行 政 やメディアや 科 学 者 は 住 民 の 自 覚 と 行 動 を 底 辺 から 強 力 に 支 援 する 必 要 がある との 理 由 からであった( 岡 田 宇 井, 1997: p.113) 当 該 モデルの 妥 当 性 を 裏 付 けるリーディング ケースとなったのが 2000 年 の 有 珠 山 噴 火 の 際 の 住 民 避 難 行 動 である 室 﨑 (2008)によれば 的 確 な 情 報 提 供 で 住 民 の 事 前 避 難 を 成 功 裏 に 導 いたことは 良 く 知 られている という 平 素 から 顔 なじみだった 科 学 者 か らの 注 意 喚 起 に 対 して 行 政 は 速 やかに 避 難 指 示 を 発 令 メディアはそれを 冷 静 に 受 け 止 めて 伝 達 し 住 民 も 素 直 に 従 った 結 果 整 然 とした 避 難 行 動 によって ひとりも 犠 牲 者 を 出 さずに 済 んだという 当 時 室 蘭 民 報 に 所 属 して 取 材 活 動 をおこなっていた 記 者 のひ とりは 私 ども 有 珠 山 の 折 には 岡 田 先 生 宇 井 先 生 を 全 面 的 に 信 頼 して その 解 説 をしっ かり 受 けとめる それから 行 政 がいろんな 混 乱 とか 小 さな 局 面 での 混 乱 はあるけれども そこにとらわれることなくて 今 行 政 がどういう 支 援 策 をしていこうとしているのか 明 後 日 には 行 政 がこういうような 対 策 を 打 ちますよということをしっかり 記 事 にしていっ たと 述 懐 している( 日 本 災 害 情 報 学 会, 2004: p.45) このような 有 珠 山 の 成 功 を 導 き 出 した 当 該 モデルを マスコミュニケーション モ デルの 系 譜 に 照 らしてみた 場 合 メディアを 減 災 社 会 を 目 指 すアクターのひとつとして 明 確 に 位 置 づけた 点 において 従 来 の 二 項 対 立 の 図 式 をひとつ 乗 り 越 えたものとして 評 価 することができよう しかしその 上 で 当 該 モデルを 額 面 通 りに 継 承 するだけでは 限 界 があることも 指 摘 して おかなければならない 次 節 に 述 べるとおり 東 日 本 大 震 災 や 2010 年 チリ 地 震 津 波 におけ る 避 難 行 動 に 見 られた 情 報 あれど 避 難 せず といったケースに 関 しては このモデルの ままでは 十 分 にとらえきれない 課 題 が 残 るからである 2 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 限 界 ここであらためて 東 日 本 大 震 災 と 2010 年 チリ 地 震 津 波 で 何 が 問 題 となったのか 特 に 津 波 避 難 行 動 をめぐる 課 題 の 要 点 を 以 下 に 見 ておく( 詳 細 は 第 7 章 と8 章 で 検 討 する) 端 的 にいえば 大 勢 のひとが 情 報 があったにもかかわらず 適 切 な 避 難 行 動 がとれなか った(とらなかった) ということである まず 先 に 東 日 本 大 震 災 のほうをみていくと 2 万 人 近 い 死 者 行 方 不 明 者 ( 警 察 庁, 2011a) の 死 因 の9 割 以 上 は 水 死 だったとみられている( 警 察 庁, 2011b) これは これまで 経 験 したことがないほどの 強 く 長 い 揺 れに 見 舞 われた つまり 体 感 という 直 接 的 な 情 報 があった にもかかわらず 大 勢 の 人 が 適 切 に 避 難 することができなかったことを 示 して いる 加 えて 多 くの 人 たちは 広 域 なエリアが 停 電 したにも 関 わらず 何 らかの 間 接 的

40 な 情 報 を 得 ていたことがわかっている たとえば 環 境 防 災 総 合 政 策 研 究 機 構 が 震 災 か ら1ヵ 月 余 り 後 に 釜 石 市 と 名 取 市 の 避 難 所 で 聞 き 取 り 調 査 した 結 果 によれば 大 津 波 の 警 報 を 聞 いた と 回 答 した 人 は 89.2%にのぼっていた( 環 境 防 災 総 合 政 策 研 究 機 構, 2011) また 内 閣 府 消 防 庁 気 象 庁 が 避 難 所 や 仮 設 住 宅 で 実 施 した 共 同 調 査 の 速 報 (2011) でも 被 災 地 の 沿 岸 住 民 の 過 半 数 は 津 波 情 報 や 避 難 の 呼 びかけ を 見 聞 きした と 答 えていた 大 津 波 の 津 波 警 報 ( 原 文 ママ) に 限 ってみれば 岩 手 県 で87% 宮 城 県 で79% 注 が 見 聞 きした という 結 果 となっていた 2) 次 に 2010 年 チリ 地 震 津 波 であるが 遠 地 で まさに 地 球 の 裏 側 で 津 波 が 発 生 し 襲 来 までのリードタイムがほぼ1 日 あったにもかかわらず 避 難 率 はおしなべてどこも 低 調 だった さまざまな 調 査 結 果 をふまえれば 人 々は 津 波 に 関 する 情 報 を 何 も 知 らなか ったから 逃 げなかった のではなく それなりに 知 っていたからこそ 逃 げなかった こと が 明 らかになっている NHK 放 送 文 化 研 究 所 の 調 査 ( 石 川, 2010)によれば 避 難 対 象 住 民 が 逃 げなかった 理 由 として 最 も 多 く 挙 げたのは 自 分 のいるところは 安 全 だと 思 った という 回 答 だった また 岩 手 県 と 岩 手 大 学 の 調 査 (2010)では 避 難 所 から 帰 宅 した 理 由 の 第 1 位 を 津 波 の 第 1 波 が 予 想 より 低 かったから という 回 答 が 占 めた 東 日 本 大 震 災 と 2010 年 チリ 地 震 津 波 これら2つの 代 表 的 な 事 例 における 課 題 を 減 災 の 正 四 面 体 モデル にあてはめて 考 えてみると 当 該 モデルが 従 来 の< 送 り 手 / 受 け 手 >の 二 項 対 立 の 図 式 から 四 項 連 携 の 図 式 に 押 し 広 げられたものである 点 を 最 大 限 考 慮 しても おそらく もっとよりよい 連 携 を と もっとよりよい 情 報 を という 改 善 策 のみが 導 き 出 されることであろう さらにこれを 補 うとしても 平 素 においても もっとよりよい 連 携 を 緊 急 時 においても もっとよりよい 情 報 を といったことが 指 摘 されるに 留 まるであろう 改 善 に 向 けた 上 述 したような 道 筋 は もちろん 決 して 誤 っているわけではない ただ し 情 報 の 精 度 を 上 げたり 情 報 伝 達 ツールを 拡 充 したりする 従 来 のアプローチと 比 べて 本 質 的 に 何 ら 変 わりがないという 点 において 限 界 があると 言 わざるをえない そもそも 日 本 では 昭 和 27 年 に 津 波 予 警 報 システムの 運 用 が 開 始 されて 以 来 適 切 な 情 報 を 与 え れば 適 切 な 避 難 行 動 に 結 び 付 く との 考 え 方 に 基 づいて 気 象 庁 や 自 治 体 が 発 信 する 情 報 をメディアが 迅 速 的 確 に 住 民 に 伝 達 する 体 制 の 強 化 が 連 綿 と 続 けられてきた それ だけ 長 期 間 にわたって 同 じスタンスで 取 り 組 みを 継 続 してきたにもかかわらず 率 直 にい って 災 害 情 報 による 効 果 は 今 のところほとんど 具 体 的 には 現 れていない というのが 筆 者 の 印 象 である ( 牛 山, 2008: p163)と 厳 しく 評 価 される 状 態 に 留 まってきた このよ うな 閉 塞 した 状 況 を 直 視 するならば 従 来 とは 異 なるアプローチを 模 索 するような 改 善 策 の 立 て 方 自 体 の 改 善 が 検 討 されなければならないはずである この 点 に 関 連 して すでに 矢 守 ( 印 刷 中 )は 災 害 情 報 のパラドックス の 問 題 として 次 のような 整 理 をおこなっている 初 期 の 圧 倒 的 成 功 とは 対 照 的 に 災 害 情 報 が 質 量 とも に 充 実 するにつれて そのプラス 面 ( 効 用 )の 進 捗 は 頭 打 ちになる そして 大 いに 注 視

41 すべきこととして 限 界 効 用 の 逓 減 よりもさらに 一 歩 進 んで かえってマイナス 面 までが 顔 をのぞかせ 始 める のだと その 具 体 例 として 挙 げたのが 情 報 待 ち ( 避 難 に 関 する 情 報 取 得 を 待 ってしまうことで かえって 避 難 が 遅 れる 現 象 )や 行 政 専 門 家 依 存 ( 災 害 情 報 の 扱 いを 含 め 防 災 に 関 する 活 動 を 一 般 の 人 々が 行 政 機 関 や 専 門 家 に 任 せてしまう 傾 向 )などの 現 象 であった このことを さらに 災 害 報 道 研 究 に 引 き 寄 せて メディアの 立 ち 位 置 からとらえなおしてみれば 以 下 のようになる すなわち 災 害 報 道 の 従 事 者 が 従 来 のフォーマットを 墨 守 して 情 報 伝 達 の 役 割 にのみ 関 心 を 示 す 事 態 の 外 在 者 としてふるまえばふるまうほど 問 題 を 拡 大 再 生 産 するおそれさえ 生 じうるというこ とである したがって このような 事 態 もふまえて 根 本 的 な 改 善 策 を 導 き 出 すためには 減 災 の 正 四 面 体 モデル を 継 承 しながらも さらに 一 歩 進 んだ 理 論 フレームを 案 出 していく 必 要 が 注 あると 考 える 3) その 最 初 のステップとなるのは 当 該 モデルにおいて 前 提 となっていた これは 従 来 の(マス)コミュニケーション モデルでも 大 前 提 となっていた 情 報 という 概 念 の 再 検 討 である 次 章 では 情 報 の 概 念 の 再 規 定 をおこなったのち 上 述 したような 理 論 上 / 実 践 上 の 根 本 問 題 を 超 克 するために 情 報 に 替 わって リアリティ という 概 念 を 当 該 モデル の 中 に 定 位 し 理 論 フレームの 修 正 を 図 っていく 注 1) 岡 田 (2008)は ネバド デル ルイス 火 山 の 悲 劇 に 関 して 生 々しい 記 録 を 残 している 以 下 少 し 長 いがここに 引 用 しておこう ネバド デル ルイス 火 山 の 噴 火 で 何 がショックであっ たのか それは この 噴 火 災 害 が 予 測 されたものだったからです 噴 火 が 起 こる 以 前 からコロンビアの 火 山 学 者 とヨーロッパやアメリカの 火 山 学 者 が 協 力 して 調 査 を 行 い 国 際 的 な 火 山 観 測 網 をつくりあげてい ました 災 害 の 及 ぶ 範 囲 を 示 したハザードマップも 緊 急 に 整 備 され その 一 枚 はアルメロの 市 長 にも 届 け られていました かつてこの 町 は 噴 火 で 氷 河 が 溶 けて 流 れ 出 てくる 泥 流 に 埋 まったことがあったので ハザードマップで 想 定 したシナリオのなかには その 危 険 区 域 が 赤 く 塗 られていました そこまでの 準 備 をしながら しかも 実 際 にハザードマップの 想 定 と 全 く 同 じことが 起 こりながら 科 学 は 被 害 を 防 げなか ったのです(p.114) 結 局 死 者 は およそ2 万 1 千 人 に 達 し アルメロ 市 民 の4 分 の3が 1 度 に 命 を 落 とした 注 2) ただしこうした 調 査 は 生 き 残 った 人 だけを 対 象 にして 実 施 されたものである 点 留 意 が 必 要 で ある 本 文 の 中 で 示 されている 情 報 取 得 率 は 実 際 よりも 過 大 に 見 積 もられていると 考 えなければなるま い 注 3) この 点 に 関 して ガーゲン(1994=1998)の 次 の 言 葉 が 示 唆 的 である 理 論 的 作 業 は 実 践 のあ り 方 をも 規 定 する (p.116)

42 第 5 章 情 報 とリアリティ 1 情 報 という 概 念 の 再 検 討 ジャック デリダ 流 に 情 報 という 概 念 の 定 義 を 示 すならば 情 報 とは すなわち 差 異 のことである Bateson(1979=2006)も 情 報 とは 差 異 をもたらす 差 異 として 定 義 づけている(なお 赤 城, 2006) 本 研 究 では こうした 原 理 的 な 定 義 を 参 照 しながらも 災 害 報 道 / 災 害 情 報 をめぐる 諸 課 題 を 改 善 していくことを 念 頭 において 特 に 情 報 の 生 成 過 程 に 着 目 して その 特 性 を 再 検 討 しておく 大 澤 (2013: p.209)も 示 しているとおり われわれが 何 かを たとえば F 情 報 と して 認 知 するときには ありとあらゆる 無 限 の 差 異 を 検 討 してから F を 特 定 して いるわけではない 他 ならぬ F か 非 F かを 一 定 の 意 味 のある 区 別 として 切 注 り 出 している このとき 前 提 となっている 有 意 味 性 のまとまり 1) 上 の 例 をふまえれ 注 ば F の 体 系 を 有 限 ならしめている 構 造 2) を 本 研 究 では 最 広 義 の リアリティ と 呼 ぶ(この 概 念 の 検 討 は 次 節 でおこなう) 情 報 は リアリティ を 媒 介 して それ として 特 定 されたものを 指 す 再 び 大 澤 の 論 考 (1995: p.31)を 参 照 してまとめると 情 報 とは それ が 何 であり 何 でな いかという 同 一 性 の 選 択 肢 の 潜 在 的 な 可 能 性 すなわち リアリティ から 選 択 的 な 作 用 (この 点 に 関 しては 第 3 節 で 述 べる)を 経 て 顕 在 化 したものであるとい うことになる ただし ここで 急 いで 補 っておかなければならないが Berger&Luckmann (1966=2003)が 指 摘 するとおり このときこうした 超 越 ( 意 味 の 特 定 )の 作 用 とは 逆 向 きの 統 合 の 作 用 も 同 時 に 駆 動 している 特 定 の 情 報 を 取 得 したことによって そこ にあらたな リアリティ が 構 築 されて 有 意 性 構 造 の 再 編 成 が 促 されるような 機 制 で ある リアリティ は 社 会 の 産 物 であると 同 時 に 社 会 変 動 のひとつの 要 素 でもある 注 (Berger&Luckmann, 1966=2003: p.133) 3) また 情 報 は 普 遍 / 不 変 な ユニバーサル コード とみなされている 限 りにおい て 原 理 的 に 一 意 である すなわち 特 定 の 意 味 を 持 った 記 号 として 認 識 される( 西 垣, 1999) このような 情 報 の 志 向 性 は 災 害 情 報 において 特 に 顕 著 であると 考 えられ る 警 報 や 注 意 報 避 難 勧 告 や 避 難 指 示 数 値 で 示 された 様 々な 事 態 の 現 況 明 確 に 規 定 された 防 災 や 復 興 の 計 画 など いずれもが 重 要 な 情 報 ゆるぎのないもの ノイズ があっては 困 るもの 最 終 的 には 確 定 報 になることが 期 待 されているもの として 流 通 している 災 害 報 道 の 現 場 には このことをふまえた 象 徴 的 な 教 え がある 情 報 を 伝 える 4 注 つのT すなわち 送 り 手 は 適 時 (Tekiji) 的 確 (Tekkaku) 4) 適 切 (Tekisetsu) 丁 寧 (Teinei) を 心 がけて 伝 達 せよ というものである( 小 田, 2004) この 4つの T を 遵 守 することで 情 報 F は 情 報 F のままで その 意 味 を 保 持 して 伝 達 され 注 5) あるときは 人 々を 避 難 させたり あるときは 人 々を 支 援 できたりするというのである

43 しかしながら 実 際 には man to man の 対 人 コミュニケーションにおいて 情 報 F が F のままで 伝 わることは 困 難 である たとえば 津 波! という 情 報 T があった として 各 人 が つ な み という 音 を 感 知 し 津 波 とは 如 何 なるものかその 意 味 内 容 を 互 いに 知 っていたと 仮 定 しても どれほど 切 迫 した 状 態 で 津 波! という 情 報 がい ま 発 せられているのかまでは 各 人 が 置 かれた 場 所 や 状 況 が 異 なる 以 上 完 全 に 同 じもの として 複 写 されるわけではないからである このことは すでに 東 日 本 大 震 災 の 初 動 期 に おいて 各 所 で 見 出 された 難 題 であった このような 視 座 に 立 ったとき これまでの 災 害 報 道 研 究 の 系 譜 において 見 逃 していたものが 明 らかとなる それは 先 にもすこしふれた が 情 報 の 生 成 過 程 の 母 胎 となっていた リアリティ からのまなざしである 節 をあ らためて リアリティ の 概 念 の 再 検 討 をおこなう 2 リアリティという 概 念 の 再 検 討 前 節 では ひとまず リアリティ を 情 報 との 関 係 性 において 有 意 味 性 のまと まり であると 措 定 した この リアリティ という 概 念 には すでにいくつもの 定 義 が 存 在 するが 本 研 究 では 池 田 (1993; 1997; 1999)や Festinger(1950)などの 従 来 の 社 会 心 理 学 における 定 義 ではなく 社 会 構 成 主 義 ( 社 会 構 築 主 義 )としてガーゲンが 提 起 して きた 定 義 を 援 用 する ガーゲンは あらゆる 対 象 事 象 の 同 一 性 (それが 何 であるかとい うこと)は 人 々の 関 係 性 を 通 して 共 同 的 に 構 築 されるものであると 指 摘 し 同 一 性 を 帯 びたものとして 人 々に 認 識 されている 対 象 事 象 の 総 体 を リアリティ と 呼 んだ(ガ ーゲン, 1994a=1998; 1994b=2004; 1999=2004; 矢 守, 2009) ガーゲンの 定 義 にもとづけば ユニバーサル コードとして 擬 制 された 情 報 が 持 つ 静 的 な 特 徴 とは 対 照 的 に リアリティ は 日 常 世 界 のローカルな 現 場 で 共 同 的 に 構 築 されるという 点 において 社 会 的 で 動 的 な 特 徴 を 有 する リアリティ には どこかに 客 観 的 中 立 的 な 普 遍 不 変 の 不 動 点 があるわけではなく 多 様 多 層 で あり インタラクションによって 変 容 さえもする このとき 我 々が 捕 捉 したとみなして いる リアリティ とは 社 会 的 なダイナミズムにおける 動 的 平 衡 (Dynamic Equilibrium) ( 福 岡, 2009; 2011)として そこに 有 意 味 性 のまとまり を 成 しているもの そのよ うに 経 験 されるもの だということもできよう(この 点 は あらためて 第 6 節 で 検 討 する) 矢 守 ( 印 刷 中 )は コミュニケーションの 一 切 から 離 れて それ 単 体 として 存 在 する 災 害 情 報 は 理 屈 としては 想 定 しえても 現 実 としては 無 意 味 であるとしているが このこ とを 本 研 究 に 引 き 付 けて 考 えてみると すべての 災 害 情 報 をめぐるリアリティは コミュ ニケーションによって 社 会 的 に 共 同 構 築 される ということになる そしてまた 同 時 に す べての 災 害 情 報 は 社 会 的 に 共 同 構 築 されたリアリティを 通 してはじめて その 状 況 にお けるローカルな 意 味 が 与 えられる ということにもなるであろう 次 節 でさらに 説 明 を 加 えるとおり このような リアリティの 社 会 性 ( 共 同 構 築 性 ) は リアリティの 本 源 的 な 特 性 であるとみなさなければならない

44 3 < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデル リアリティ は 社 会 的 真 空 から 生 まれるものではない 世 界 の 中 において 相 互 的 なインタラクションを 通 して ある 一 定 の 同 一 性 を 獲 得 しながら 構 築 されていく ここで 世 界 とは 人 間 が 体 験 している 相 互 に 関 係 しあっている 意 味 の 秩 序 の 総 体 を 示 している( 大 澤, 2012: p.136) また ユクスキュル(1950=2012)やユクス キュル&クリサート(1970=2005)を 参 照 するならば それは 生 物 としての 感 覚 器 を 持 つ 人 間 が その 主 体 的 な 関 わりにおいて 意 味 を 与 えて 作 り 上 げたもの すなわち 環 世 界 (ウ ムヴェルト Umwelt) を 指 すことになる(さらに 日 高, 2003) いずれにおいても 人 間 に とっての 世 界 とは 人 間 が 構 築 するもの そのすべてとして 措 定 されている もちろ ん その 認 識 の 外 に まだ 感 覚 されていない 何 ものか 物 自 体 の 世 界 や something があることを 否 定 するものではない さて この 世 界 の 中 で 多 くの 場 合 同 一 性 は 言 語 によって 媒 介 される す 注 なわち 言 語 を 通 して 世 界 は 分 節 される 6) たとえば F をめぐる リアリテ ィ は F や 非 F や さらには F や f なども 含 めた ある 一 定 のまとまり をもった 状 態 で 世 界 から 切 り 取 られる そしてこのときには 規 範 や 価 値 時 代 や 文 注 化 といった 社 会 的 なコンテキストが 影 響 を 与 えることになる 7) 大 澤 (2008)が ( 後 期 ) ヴィトゲンシュタインの 説 を 引 きながら 言 語 は 本 性 として 社 会 的 であり 私 的 言 語 とい うことは 自 己 矛 盾 的 ( p.6)であると 指 摘 しているとおり(また 永 井, 1995; 橋 爪, 2009) 言 語 自 体 が 社 会 的 な 構 築 物 である 以 上 言 語 の 介 在 は リアリティ が 原 理 的 に 社 会 的 な 注 ものであること 純 粋 に 個 人 的 なものではありえないこと の 証 左 となっている 8) この 点 に 関 して ガーゲン(1994a=1998)は 次 のように 指 摘 している 意 味 をつくる というのは 基 本 的 に 社 会 的 な 営 みなのである 他 者 が 合 意 しなかったら その 言 葉 は ただのナンセンスである(pp ) 社 会 的 な 行 動 に 関 する 知 識 は 単 一 の 個 人 の 独 立 した 行 為 の 産 物 なのではなく 社 会 的 な 共 働 (ママ)の 産 物 なのである(p.114) ガーゲン(1994a=1998)の 立 場 によれば およそ 意 味 というものは それが 受 容 者 の 解 釈 から 独 立 して 存 在 するということはありえない(p.126) エスノメソドロジーでは すべての 語 は 文 脈 表 示 的 であると 主 張 されている 文 脈 表 示 的 な 語 は 文 脈 的 情 報 がないと 理 解 しようがない(p.135) したがって ある 特 定 の 集 団 の 言 語 的 習 慣 に 入 り 込 まない 限 り (p.99) 換 言 すれば ある 事 態 の 経 験 に 内 在 しないかぎり 意 味 を 知 ることなどできないことになる このときに さらに 次 の 点 が 重 要 である 経 験 的 世 界 が 絶 え 間 なく 変 化 し 続 けるのに 対 して 言 語 は 変 容 とは 無 縁 で 永 続 性 のある 実 体 を 作 り 出 すという 性 質 をもっている 経 験 と 言 語 との 間 にあるずれに 注 目 す ることは 社 会 行 動 学 の 理 論 がどのようなものであるかを 研 究 するうえで 格 好 の 出 発 点 となる(p.75)

45 図 -Ⅰ < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデル ここにおいて 本 研 究 が 採 用 する 戦 略 は ガーゲンのいう 言 葉 と 経 験 のずれ すなわち 情 報 と リアリティ のずれを 明 確 に 意 図 するために 敢 えて リアリティ の 観 点 から 事 態 をまなざそうというものであると 要 約 することができる 世 界 リアリティ 情 報 この3つ 連 関 を 階 層 構 造 としてモデル 化 したものが 図 -Ⅰ-5-3-1である この 三 層 は リアリティ ( 第 Ⅱ 層 )を 中 心 に 据 えて 下 層 から 順 に 見 ていけば 世 界 ( 第 Ⅰ 層 )を 母 胎 にして リアリティ ( 第 Ⅱ 層 )が 形 成 され その リ アリティ ( 第 Ⅱ 層 )が 対 象 化 客 観 化 したものとして 情 報 ( 第 Ⅲ 層 )が 生 成 される このようなダイナミズムとして 解 することができる(Berger&Luckmann のいう 超 越 の 作 用 ) そして もちろん 逆 向 きの 作 用 も 同 時 にまた 駆 動 しており インプットされた 特 定 の 情 報 ( 第 Ⅲ 層 )が リアリティ ( 第 Ⅱ 層 )の 再 構 築 再 編 成 をうながし 世 界 ( 第 Ⅲ 層 )の 認 識 を 変 えることもある(Berger&Luckmann のいう 統 合 の 作 用 ) なお ここで 注 意 しておかなければならないのは 図 -Ⅰ-5-3-1の 三 層 構 造 モデルは 注 あくまで 認 識 過 程 の 瞬 間 をとらえた スナップショット 9) であるということである ガーゲン(1994a=1998)の 言 を 借 りれば ずらりと 並 んだ 文 脈 は 静 的 なものではなく 絶 え 間 なく 反 射 しあっている (p.81) われわれは 常 に 動 的 な 過 程 の 中 にあるというこ とを 十 分 ふまえる 必 要 がある 4 < 世 界 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデルからとらえるリアリティの 動 的 過 程 このようにして リアリティ から 事 態 をまなざす 観 点 を 確 保 すると 情 報 をめぐる 諸 問 題 の 構 造 を 動 的 に とらえることができるようになる このことを 確 認 する 上 で 以 下 に 記 す 大 正 時 代 に 起 きた2つの 事 件 を 読 み 解 くことが 有 用 である 刑 法 学 の 分 野 では 事 実 の 錯 誤 の 判 例 として 著 名 な たぬき むじな 事 件 ( 大 判 大 刑 集

46 378)と むささび もま 事 件 ( 大 判 大 刑 集 3 364)である いずれもが 狩 猟 法 違 反 の 案 件 として 当 時 の 大 審 院 で 争 われた 前 者 は 法 律 で 狩 ることが 禁 じられていた たぬき を 捕 った 被 告 人 が 自 分 が 捕 った のは むじな だと 主 張 して 最 終 的 に 無 罪 となった 事 件 である 後 者 は 同 様 に 法 律 で 狩 ることが 禁 じられていた むささび を 捕 った 被 告 人 が 自 分 が 捕 ったのは もま だと 主 張 して 最 終 的 に 有 罪 となった 事 件 である 法 律 的 には 前 者 は 被 告 人 が たぬき と むじな という 言 葉 が 全 く 同 じ 生 き 物 を 指 していることを 知 らなかっただけでなく たぬき と むじな という 言 葉 が 全 く 違 う 生 き 物 を 指 しているはずだという 確 信 を 持 っていたことから 事 実 の 錯 誤 が 成 立 してい る(したがって 過 失 がなく 違 法 性 が 阻 却 される)ので 無 罪 であると 解 釈 する いっぽ う 後 者 は むささび と もま という 言 葉 が 全 く 同 じ 生 き 物 を 指 していることを 知 ら なかったのだが むささび と もま という 言 葉 が 全 く 違 う 生 き 物 を 指 しているはずだ という 確 信 までは 持 つに 至 っていなかったことをもって 事 実 の 錯 誤 が 成 立 していない (したがって 過 失 があり 違 法 性 が 阻 却 されない)ので 有 罪 であると 解 釈 する 両 事 件 は おなじ 大 正 13 年 に 起 きた この 年 は 狩 猟 法 が 制 定 されたばかりの 年 で 多 くの 人 が どんな 生 き 物 が 禁 猟 種 に 指 定 されたのかに 強 く 関 心 を 持 っていた 前 者 の 事 件 の 被 告 人 は たぬき が 禁 猟 種 であることを 知 っており 同 様 に 後 者 の 事 件 の 被 告 人 も むささび が 禁 猟 種 であることまでは 知 っていた にもかかわらず 事 態 の 帰 結 には 天 と 地 ほどの すなわち 有 罪 と 無 罪 という 格 別 の 違 いが 生 まれた ここにおいて まず 情 報 ユニバーサル コードとしての 情 報 の 観 点 から 両 事 件 を 見 てみると 的 確 に 情 報 をキャッチし それを 学 習 していさえすればこうした 事 件 は 起 こらなかったはずだと 指 弾 することはできよう ただしそうすると 前 者 と 後 者 の 事 件 で 判 決 に 違 いが 出 たことについて 整 合 的 な 説 明 をすることが 難 しくなる 後 者 は 前 者 よりも 学 習 不 足 だったといえるかもしれないが しかし 方 言 と 標 準 語 の 対 応 を いち いち 事 前 にすべて 照 らし 合 わせておくべきだったという 主 張 には すくなからず 無 理 があ ろう その 立 場 をとるかぎり よりローカルに 根 差 した 純 朴 な 暮 らしを 送 っている 人 ほど 錯 誤 による 有 罪 のリスクが 高 まることになってしまう ここでもうひとつ 情 報 ではなく リアリティ の 観 点 から 両 事 件 を 比 較 してみると 次 のような 展 望 をもつことができる 両 事 件 の 後 景 にあったはずの リアリティ すなわ ち 裁 判 官 を 含 む 多 くの 国 民 が 持 っていたであろう 当 時 の 社 会 内 の リアリティ を 想 起 し てみるのである 前 者 の 事 件 では たぬき と むじな の 異 同 で 悶 着 を 起 こしても 仕 方 がないと 思 えるような リアリティ が 社 会 の 中 で 構 築 されていた 可 能 性 が 高 い(だか ら 無 罪 となった) いっぽう 後 者 の 事 件 では むささび と もま で 悶 着 を 起 こす ことは 軽 率 であり 同 情 の 余 地 がないと 思 えるような リアリティ が 社 会 の 中 で 共 有 さ れていた 可 能 性 を 否 定 できない(だから 有 罪 となった) すでに 第 1 節 では 世 界 を 言 語 によって 分 節 する 際 に すなわち 有 意 味 性

47 のまとまり である リアリティ が 構 築 される 際 に 選 択 的 な 作 用 を 経 ると 述 べて おいた そして 前 節 で その 時 代 /その 社 会 における 価 値 観 や 規 範 などが それ 選 択 的 な 作 用 に 該 当 することも 述 べておいた これをもうすこし 微 視 的 に 見 れば その 時 /その 場 の 状 況 や 文 脈 なども 有 意 性 構 造 の 構 築 に 作 用 することがあるといえるだろう 現 に 法 律 上 の 解 釈 においても たとえば 刑 法 学 の 大 家 である 大 谷 (1986)が 指 摘 し ているように 前 者 の 事 件 には 社 会 的 な 意 味 における 錯 誤 があり 後 者 にはそうした 錯 誤 を 認 定 することができない 社 会 通 念 上 むささび と もま を 別 の 生 き 物 である というような 間 違 いをおかすはずがない 点 において 両 事 件 にはなんら 矛 盾 はないとい う 見 解 が 有 力 視 されている(p.166) 両 事 件 の 騒 動 を 経 ても 情 報 の 層 ( 第 Ⅲ 層 )の 意 味 の 対 応 < たぬき = むじな もささび = もま >は なお 不 変 である しかし 当 時 の 社 会 の 中 で 方 言 と 共 通 語 をめぐる ある 種 の 新 たな リアリティ すなわち 禁 猟 種 の 錯 誤 には 注 意 せよ が 構 築 されていったであろうことは 想 像 に 難 くない そして 禁 猟 種 をめぐる 次 なる 錯 誤 事 件 が 起 きた 暁 には 情 状 酌 量 の 余 地 はすでに 目 減 りしていたであろうことも 容 易 に 推 測 されるのである 繰 り 返 しになるが このとき 第 Ⅲ 層 の 情 報 ばかりを 見 ていたので は 事 の 本 質 を 見 逃 すおそれがある 動 的 に 変 化 していくコンテキストに 照 らして 情 報 は どのような リアリティ を 帯 びて ひとびとにどのように 経 験 されていたのか を 事 態 に 内 在 する 構 えで 見 定 めなければならない 5 リアリティの 共 同 構 築 とそのポテンシャル ここまでは 災 害 とはおよそ 無 縁 の 例 ばかり たぬき や むささび を 引 いて 説 明 を 進 めてきたが すこし 考 えてみるだけでも 災 害 の 分 野 に 類 例 を 見 つけるのはたやす いことがわかる たとえば 雲 仙 普 賢 岳 災 害 (1991 年 )では ( 小 規 模 な) 火 砕 流 と 溶 岩 の 崩 落 (な 注 いしは 熱 雲 10) )という 情 報 が 問 題 となった 両 者 2 種 類 (ないし3 種 類 )の 情 報 が どんな 火 山 学 的 な 物 理 現 象 を 示 しているのか 勉 強 会 等 を 通 じて 知 って いた 報 道 関 係 者 は 多 数 いたが しかし それぞれの 情 報 の 背 後 にある リアリティ すなわち 火 山 学 者 が 抱 く 危 機 感 のエスカレーションまでをも 共 有 できていた 報 道 関 係 者 は ごくわず かしかいなかったとみられる TV 記 者 の 以 下 のような 証 言 が そうした 事 実 を 傍 証 して いる 火 砕 流 については 学 者 などから 聞 いて 知 ってはいました でも まさかあん な 感 じで 来 るとは 思 っていなかったのが 本 当 のところです( 江 川, 2004: p.178) もうひとつ 津 波 災 害 の 分 野 においても 類 例 を 示 すことができる 明 治 期 から 昭 和 期 に かけて 三 陸 地 方 では 津 波 という 言 葉 以 外 に よだ という 言 葉 や 海 嘯 という 言 葉 が 広 く 流 布 していたという それぞれの 言 葉 を 聞 いて 人 々が 抱 く リアリティ は 異 なるものであったことが 証 言 によってあきらかになっている( 吉 村, 2004) よだ を

48 高 潮 のようなものとして 想 起 する 人 もいれば 津 波 と 同 じようなものとして 想 起 す る 人 もいた また 津 波 を 海 嘯 のようなカタストロフィックな 現 象 であると 理 解 し ている 人 もいれば 突 発 的 な 高 波 のようなものとして 想 起 する 人 もいた このような 多 様 な リアリティ が 背 後 にある 状 況 下 にあって いくら 津 波 だ! と 叫 んでみても その 特 定 の 情 報 津 波 というものが 到 来 するという 情 報 で 誰 もが 適 切 な 避 難 行 動 が 喚 起 できるとは 限 らない 点 容 易 に 想 像 できるはずである このような 難 点 を 十 分 にふまえたうえで そうであるからこそ 危 難 に 見 舞 われるまえ に あらかじめ リアリティ の 層 をまなざしながら 互 いにどのような 有 意 味 性 のまと まりを 保 持 しているのか 確 かめ 合 い リアリティ を 共 同 で 構 築 していかなければならな い 点 に 我 々は 着 目 しなければならないと 考 える たとえば 緊 急 地 震 速 報 という 災 害 情 報 を 例 にとって 考 えてみよう いま 最 大 震 度 6 あと10 秒 という 客 観 的 な 数 値 データが 算 出 されたとする この 情 報 の 意 味 するところは 文 字 通 り 最 大 震 度 6 が あと10 秒 で 襲 ってくるかもしれないとい う 本 来 であれば 危 険 性 切 迫 性 を 示 したものであると ひとまずは 説 明 することが できる しかし この 情 報 の 作 出 にこれまで 関 わってきた 気 象 庁 の 担 当 者 や 専 門 家 からす れば それがどれくらいの 誤 差 を 含 みうるものなのかといった 限 界 ( 幅 )が 想 起 されるだ けに 留 まらず これまでのテクノロジーの 進 展 に 対 する 苦 闘 の 歩 みやそこで 培 われた 誇 り 社 会 に 与 えるインパクトの 大 きさに 対 する 不 安 感 や それでも 人 々の 命 を 守 る 上 で 役 立 て たいという 使 命 感 など そうした 心 情 の 一 切 合 財 が 綯 交 ぜになったうえでの 最 大 震 度 6 あと10 秒 であるはずである いっぽう 市 民 のほうでは 最 近 外 れることが 多 い 情 報 だしなあ と 半 信 半 疑 で 受 け 止 める( 受 け 流 す) 人 もいるであろうし この 情 報 がリ リースされることに 良 い 意 味 で 慣 れてしまったので まあとりあえず 机 の 下 にもぐって おこう と 動 ける 人 もいるだろう また 過 敏 に 反 応 しすぎて このままでは 助 からない と 家 を 飛 び 出 してしまう 人 もいるかもしれない さらにこの 情 報 に 生 まれてはじめてふ れた 外 国 人 がいたとすれば 奇 妙 なアラーム 音 だな といった 些 末 な 印 象 を 持 つのが 精 一 杯 かもしれないし この 予 想 が 外 れたら 誰 が 責 任 とるんだろう といった 素 朴 な 疑 問 し か 抱 けないかもしれない 繰 り 返 せば 震 度 6 あと10 秒 という 情 報 は アラームという 本 来 の 役 割 にお いては 原 理 的 に 一 意 でなければならないはずあった 対 照 的 に その 情 報 の 背 後 に 纏 わりついた リアリティ はといえば 各 人 それぞれの 立 ち 位 置 や 置 かれた 状 況 によって まったくもって 多 様 多 層 なのであった しかし そのばらばらの リアリテ ィ は どれも 決 して 不 変 のままであるというものではない( 情 報 は 不 変 である) 住 民 が 専 門 家 の 思 いをじかに 聞 いたり 行 政 職 員 の 悩 みにふれたり 逆 に 専 門 家 や 行 政 職 員 が 住 民 の 戸 惑 いを 耳 にしたりすると 互 いのリアリティが 少 しずつ 重 なってくる 余 地 が 出 てくる もちろん それを 完 全 に 一 致 させることができる どこかに 正 解 の 交 点 がある と 考 えるのは 早 計 である しかし ともにコトをなす たとえば 緊 急 地 震 速 報 のメッ

49 セージのカスタマイズを 専 門 家 と 素 人 が 同 じテーブルで 共 に 検 討 してみる ことを 試 行 してみたとするならば そこにあらたな 有 意 味 性 のまとまりが 共 同 構 築 されるポテンシャ ルは 十 二 分 にあると 言 うことができる そのささやかな 共 同 作 業 を 通 して 次 に 緊 急 地 震 速 報 が 出 た 際 には その 情 報 に 関 わるアクター 同 士 互 いに 相 手 の 顔 が 浮 かび 相 手 が 言 いそうなこと 相 手 がとりそうな 所 作 がすぐに 想 起 できるようになっているからであ る 換 言 すれば 互 いの 多 様 性 を 前 提 として インタラクションを 通 じて リアリティ は より 豊 かなものへと 変 容 していくのである 情 報 デザイン 論 を 主 導 してきた 渡 辺 (2001)は 情 報 は 人 がこの 世 界 のなかで 他 者 とコミュニケーションしたり 環 境 やモノとかかわったりしているような 複 雑 で 多 様 な 経 験 から 切 り 離 され 紙 やデジタル 媒 体 などのメディアに 閉 じ 込 められ ることで 初 め てデザインの 対 象 となりえた (p )と 指 摘 している これは 本 研 究 でいうとこ ろの 第 Ⅰ 層 ( 世 界 ) 第 Ⅱ 層 (リアリティ)と 第 Ⅲ 層 ( 情 報 )とが 分 離 していること 客 観 化 対 象 化 していること と 同 じことを 指 していると 考 えられる 渡 辺 は 上 記 のよう に 情 報 を 位 置 付 けたうえで しかしながら 情 報 を それを 生 み 出 す 人 や 環 境 と 切 り 離 してしまうことによって デザインは 一 見 やりやすくなるように 見 えながら その 反 面 で 大 きな 誤 りを 抱 える 場 合 もある (p.190)と 課 題 を 提 起 している そして 情 報 デザイ ン の 対 象 はモノではなくコトであると 主 張 している 本 研 究 もこの 点 まったく 意 を 同 じくている だからこそ 情 報 をデザインする 際 において 我 々がよくよくまなざすべきは リアリティ の 層 ともにコトをなす ことの 中 において 経 験 されるリアリティ で あると 考 える それはすなわち 上 述 した 例 において 震 度 6 あと10 秒 という 情 報 だけを 切 り 離 して あと10 秒 震 度 6 と 言 い 換 えたほうがよいかどうか などと いった 小 手 先 の 変 更 を 専 門 家 やメディアが 一 方 的 になすことよりも 当 該 情 報 をめぐる 多 様 な 関 係 者 がどのような リアリティ を 経 験 しているのか 互 いに 配 視 し 共 に 議 論 し 共 同 で 再 構 築 していったほうが リスク コミュニケーション 上 は より 効 果 的 であ るということを 意 味 している 以 上 をまとめると 災 害 情 報 ( 報 道 )をめぐる 動 的 な 過 程 をトータルに 検 証 するために は 従 来 のような 情 報 の 観 点 ( 図 -Ⅰ-5-3-1の 三 層 構 造 モデルにおける 第 Ⅲ 層 )だけ に 拠 るのではなく リアリティ の 観 点 ( 第 Ⅱ 層 )からも 事 態 をまなざすことが より 効 果 的 であるといえるだろう 6 集 合 流 の 合 流 点 に 結 節 するリアリティ ここまで 述 べた リアリティ の 動 的 な 社 会 性 ( 共 同 性 )の 要 点 を 原 理 的 に いま 一 度 おさえておくうえで すでに 第 2 節 において 福 岡 (2009; 2011)の 動 的 平 衡 の 概 念 に 示 唆 がある 点 はふれておいた 杉 万 (2013)の イマココ 集 合 流 の 概 念 と 小 倉 (2012)の<ことかげ>の 概 念 を 参 照 しておくことが 有 用 である まず 杉 万 は 意 味 のまとまりは 必 ず 集 合 体 ( 身 体 と 事 物 の 集 まりで 人 々と 環 境 の 総

50 体 と 定 義 される)の 中 で 形 成 される(p.28)としている この 点 をふまえるならば 本 研 究 にいう リアリティ は まさに 集 合 体 の 中 で 共 同 的 に 構 築 されると 言 うことがで きる 次 に 杉 万 は あるひとりの 人 から 見 れば その 人 は 多 層 的 重 複 構 造 をもった 集 合 体 杉 万 の 用 語 でいえば 多 様 多 層 の かや に 包 摂 されているという(p.36) こ の 点 も 本 研 究 にいう リアリティ の 多 様 多 層 な 特 質 と 共 通 しており そのまま 援 用 す ることが 可 能 である そのうえで さらに 杉 万 は 試 論 と 断 ったうえで 集 合 体 の 空 間 的 規 模 と 時 間 的 規 模 の 分 類 (p.288)をふまえ さらに 場 や 状 況 という 位 相 と 歴 史 的 文 化 的 文 脈 という 位 相 を 統 合 する(p.291)かたちで 人 は イマココ 集 合 流 (the here and now collective stream)という 動 的 な 集 合 性 の 合 流 点 に 身 を 置 いていると 指 摘 している(p.287) この イマココ 集 合 流 の 合 流 点 において リアリティ がそれと 認 識 される そ のように 経 験 される のは そこに 動 的 平 衡 が 起 きているからであると 考 えるのが 適 当 であろう 人 間 のからだが 時 々 刻 々と 細 胞 が 生 き 死 にを 繰 り 返 す 中 で しかしそれで もひとつのまとまりを 保 っていることと 同 じ 現 象 である このように 解 すると 個 人 的 なリアリティ という 認 識 が 存 在 することも リアリテ 注 ィ の 社 会 性 の 一 断 面 として 理 解 することができる 11) すなわち リアリティ を 集 合 流 の 合 流 点 から スナップショット として 写 し 取 ったとすれば それがまるで わたし の 個 人 的 なリアリティ であるかのように 現 前 することになるわけである 鷲 田 ( 2009) のいうとおり それは independent な 認 識 として わたし には 経 験 されているが しか しその 本 質 は inter-dependent なものである ところで たましひ の 作 用 をとらまえようとした 小 倉 (2012)は <ことかげ>とい う 概 念 を 提 起 して 杉 万 と 同 じように 認 識 の 本 源 的 なありようを 別 の 角 度 から 説 明 し ている まず <ことかげ>とは たくさんの 人 や 自 然 がかかわって 結 ばれていくものと して 措 定 される この<ことかげ>が 生 成 される 動 態 を 主 観 の 闘 争 と 表 現 している (p.154) そのアリーナ すなわち 闘 争 の 場 こそが わたし であると 指 摘 して いる 小 倉 のいう 場 の 概 念 は 杉 万 のいう 集 合 流 の 合 流 点 と 一 致 している <ことかげ>は 決 して 単 独 孤 独 では 成 立 しえず すなわち independent には 成 立 し えず したがって 社 会 性 を 前 提 にしている この 点 において <ことかげ>と リ アリティ は 通 底 していることがわかる リアリティ は 小 倉 によれば 主 観 でも 客 観 でもなく 多 重 的 な 主 体 の おしあいへしあい によって 立 ち 現 れる(p.154) これ 注 を 小 倉 は 世 界 の 多 重 主 体 性 (p.42)と 呼 ぶ 12) <ことかげ>は 多 重 主 体 性 の 作 用 によって 社 会 的 に 共 同 構 築 される この 理 路 において <ことかげ>は リアリティ と 置 き 換 えることが 十 分 可 能 であると 考 えられる 以 上 の 概 念 整 理 をあらためてまとめる ならば リアリティ は 集 合 流 における 多 重 主 体 性 の 作 用 に 支 えられながら 生 生 流 転 していくものであると 言 えよう なお 付 言 すれば 小 倉 は <ことかげ>の 多 重 主 体 性 を 感 知 することが<たましひ>の

51 作 用 だと 主 張 している(p.42) 注 リアリティ 13) 注 は 常 に わたし たちに 経 験 されている 14) このような 特 性 を 有 する リアリティ の 観 点 を 意 図 的 に 含 みこんで 事 態 をまなざすことは 実 践 の 現 場 における 問 題 構 造 を その 本 質 から 問 い 返 す 道 筋 を 拓 くはずである ここにきてようや く 前 章 で 援 用 した 減 災 の 正 四 面 体 モデル の 限 界 を 補 うべく モデルを 一 部 修 正 する ための 準 備 が 整 った 次 章 で その 作 業 を 展 開 する 注 1) 意 味 と 価 値 の 概 念 を 峻 別 することは 難 しい 内 田 (2002)は ある 語 が 持 つ 価 値 すなわち 意 味 の 幅 と 定 義 づけている(p.66) 有 元 岡 部 (2008)は 著 作 のなかでは 意 味 と 価 値 を 並 列 して 記 載 しているが 特 段 定 義 づけをおこなっていない 田 崎 児 島 (1992)によれば 情 報 統 合 理 論 においては ひとに 態 度 変 容 をもたらす 情 報 には ウェイト(weight) と 価 値 (value) が 割 り 当 てられると 説 明 している そこでは ウェイト は 情 報 の 真 実 さに 対 する 個 人 の 主 観 的 な 信 念 価 値 は 情 報 の 情 緒 的 な 評 価 と 定 義 されている そして ウェイト と 価 値 の 積 によって 情 報 の 重 要 性 (importance) が 得 られるのだという(pp.63-64) 内 田 の 定 義 に 戻 れば 意 味 は 常 に 何 らか の 価 値 を 帯 びている 価 値 の 要 素 を 分 解 しても それらはすべて 意 味 の 変 化 形 でしかない し たがって 本 研 究 では これ 以 上 の 概 念 操 作 に 立 ち 入 ることはせず 意 味 (man to man の 対 人 コミュニケ ーションにおいて 有 意 味 であること)という 用 語 で 一 本 化 しておくことにした 注 2) 美 馬 (2012)は 情 報 の 経 済 学 に 関 して 次 のように 指 摘 している 人 間 はコンピュータと 違 い しらみつぶしに すべての 選 択 肢 の 得 失 を 事 前 に 調 べることはしない そのための 時 間 やコストが 大 きすぎるからだ 将 来 の 不 確 実 な 状 態 のもとで 決 断 するときには 直 感 的 なもの 好 き 嫌 い 何 となく そう 思 ったという 気 分 などが 関 わってくる この 箇 所 で 決 断 の 根 拠 としてあげられている 感 情 や 気 分 の まとまりを 本 研 究 では 最 広 義 の リアリティ としてとらえなおしていく 注 3) ただし Berger&Luckmann は リアリティ という 言 葉 を 使 用 しているわけではない 知 識 社 会 学 における 広 義 の 知 識 の 特 性 を 説 明 している 注 4) 的 確 の 読 み 方 には 揺 れがある(たとえば 文 化 庁, 1964 ) てっかく と てきかく いずれもが 正 しいとされているが 現 在 NHKの 放 送 では おもに てっかく を 使 うことが 推 奨 され ている 注 5) 東 日 本 大 震 災 以 後 東 北 地 方 を 中 心 にして 3つのT という 教 えに 取 って 代 わられた 感 がある すなわち Talk ( 被 災 者 の 話 に 耳 を 傾 けるべし) Tear ( 被 災 者 と 共 に 涙 を 流 すべし) Time (あせ らず 急 がず 被 災 者 と 共 に 多 くの 時 間 を 過 ごすべし)の3つである 本 研 究 にいう リアリティの 共 同 構 築 モデル においては いずれもが 重 要 な 要 諦 であるといえる 注 6) 本 研 究 では 言 語 決 定 論 (linguistic determinism)の 立 場 をとらない 虹 の 色 を 明 暗 二 色 で しか 表 現 できないインドネシアのダニ 族 でさえも 実 際 には 微 妙 な 色 調 自 体 は 区 別 して 認 識 しているこ とが 調 査 によって 明 らかになっている( 今 井, 2010; 石 黒, 2013) ガイ ドイッチャーの 著 書 には 数 多

52 くの 類 例 が 示 されている(Deutscher, 2010=2012) 言 葉 が 人 の 認 識 の 仕 方 に 影 響 を 与 える 言 葉 が 世 界 の 分 節 の 仕 方 に 作 用 を 及 ぼす という 言 語 相 対 論 (linguistic relativity)を 支 持 する 所 以 である 注 7) その 他 に 高 田 (2012)によれば コミュニケーションの 内 容 を 規 定 するものとして スタイル ポジション( 立 場 ) レイヤー( 論 理 的 か 感 情 的 か) モード( 真 面 目 か 遊 びか 等 の 様 態 )などがあげられ る 注 8) 同 様 に 内 田 (2008)も 次 のように 指 摘 している 言 語 は 他 者 と 分 かち 合 うことでしか 存 立 しな い そうである 以 上 100パーセント 自 分 に 固 有 の 内 的 経 験 を 語 りうる 言 語 などというものが 存 在 する はずがない (p.249) 注 9) 有 元 岡 部 (2008)の 次 の 箇 所 が 示 唆 的 である 現 実 は 真 空 の 中 にはない 現 実 とは 文 化 歴 史 的 な 網 の 目 の 中 で 誰 かの 目 に 明 らかになる 一 断 面 つまり スナップショット と 言 ってもいい (p.38) あまたありうる 可 能 性 の 中 の 可 能 なあるスナップショットが 不 断 に 交 渉 されているそのプロセスの 別 の 名 前 が 私 たちの 現 実 である (p.39) なお 本 研 究 においては 現 実 (リアル)は 最 広 義 の リア リティ として 体 験 されるものとみなしている 注 10) 災 害 情 報 学 会 の 学 会 誌 災 害 情 報 (2005)の 記 事 (シンポジウムの 抄 録 )には 廣 井 脩 によ る 次 のような 発 言 が 掲 載 されている 火 砕 流 は 熱 雲 ともいう 91 年 の 普 賢 岳 噴 火 の 時 には 熱 雲 とい う 言 葉 は 使 わなかった ある 火 山 の 先 生 が あの 時 熱 雲 と 呼 んでいたらどうだっただろうか という 反 省 を 聞 いたことがある (p.20) 注 11) 大 澤 (2010)は 社 会 脳 の 議 論 を 一 歩 進 めて 最 新 の 脳 科 学 と 社 会 学 の 接 合 によっても 同 じように なぜ 個 人 の 意 識 といった 現 象 が 生 まれるのか われわれに 現 前 するのか を 理 解 すること ができるであろうと 予 言 している 脳 の 働 き 脳 が 宿 す 意 識 や 自 己 という 現 象 を 理 解 するためには 脳 そ のものに 対 する< 他 者 > 要 するに< 外 部 の 脳 > をも 前 提 にしなくてはならないのだ 脳 に 内 在 する 他 者 だけではなく 脳 全 体 に 対 する< 外 的 な 他 者 >が 人 間 の 脳 の 働 きの 一 貫 性 を 捉 えるには 必 要 となる 脳 科 学 は < 社 会 >を 脳 の 内 部 にだけではなく 外 部 に 見 出 さなくてはならない (p.106) 注 12) 類 似 の 概 念 として 平 野 (2012a)が 提 起 した 分 人 (dividual)がある この 分 人 とい う 概 念 では ひとは 様 々な 分 人 を 状 況 にあわせて 入 れ 替 わり 立 ち 替 わり 生 きるとされ 複 数 の 分 人 の 構 成 比 率 によって< 本 当 の 自 分 >が 決 まるものとしている 他 者 との 相 互 作 用 によって わたし が 決 まるという 点 においては 杉 万 の かや や 小 倉 の 多 重 主 体 性 とオーバーラップした 概 念 である と 考 えられるが わたし の 内 部 に わたし 固 有 の 領 域 を 温 存 した 点 においては 社 会 性 の 射 程 が 不 徹 底 な 概 念 となっている 注 13) 木 村 (2002)は 離 人 症 患 者 の 例 をひもときながら リアリティとアクチュアリティの 違 いに 関 する 論 考 をおこなっている 離 人 症 患 者 は 対 象 を 知 覚 できるが 対 象 の 実 在 性 を 失 っている この 点 をふまえて 木 村 は アクチュアリティの 概 念 を ベルグソンのエラン ヴィタールの 概 念 を 引 きながら 生 の 各 自 的 で 直 接 的 な 営 みである 生 きる ための 実 践 的 行 為 actio に 全 面 的 に 属 している (p.306) とし 一 方 リアリティは 公 共 的 な 認 識 によって 客 観 的 に 対 象 化 され ある 共 同 体 の 共 有 規 範 としてそ の 構 成 員 の 行 動 や 判 断 に 一 定 の 拘 束 を 与 えるものである (p.305)と 定 義 している この 違 いに 深 入 りす ることは 本 研 究 の 目 的 から 外 れるため 節 を 設 けて 言 を 尽 くすことはしないが 前 者 のアクチュアリテ

53 ィが 言 葉 を 介 して 表 出 される 時 点 において それはすでに リアリティとして 経 験 されている という 点 だけは 指 摘 しておきたい 木 村 自 身 も 論 考 の 中 で 次 のようなセンテンスを 挿 入 している アクチ ュアリティがアクチュアリティとして 完 成 したとき それはもはやアクチュアルであることをやめている (p.308) 注 14) 経 験 されるという 点 においては VR= バーチャル リアリティ も AR= オーグ メント リアリティ も MR= ミクスト リアリティ も それ が 実 在 すると 確 信 されている 度 合 いとその 領 域 の 広 さに 違 いがあるだけで 要 は すべて リアリティ として 現 前 しているに 過 ぎな い 平 野 (2012b)の 近 未 来 SF 小 説 の 中 で 主 人 公 は 最 先 端 のMRとして 開 発 された 死 んでしまっ た 息 子 のイメージと 暮 らしている この 息 子 のMRは 時 間 経 過 に 合 わせて 成 長 するようにプログラム されている ところでもし 仮 に そもそも 主 人 公 が 信 じている 息 子 は 震 災 で 命 を 落 とした という 記 憶 自 体 が 誤 っていたとすれば そして 息 子 のイメージは MR であるという 確 信 が 単 なる 主 人 公 の 思 い 込 みだったとすれば 実 は 目 の 前 にいる 息 子 (のイメージ)は とどのつまり R (リアル)だったとい うことになる 物 語 を 読 み 進 む 途 中 読 者 には MR/Rについて 判 断 する 拠 り 所 が 十 分 に 与 えられてい ないため このVR(SF)としての 物 語 に かえって 没 入 することができる

54 第 6 章 メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 提 起 1 リアリティの 共 同 構 築 モデル まず 説 明 に 先 立 って あらたに 提 起 する 修 正 モデル メディア イベントをめぐるリ アリティの 共 同 構 築 モデル を 図 で 示 しておこう( 図 -Ⅰ-6-1-1) 一 見 すると 修 正 前 の 減 災 の 正 四 面 体 モデル ( 図 -Ⅰ-4-1-1)と 見 分 けが 付 かないかと 思 われる まず 些 末 な 点 を 先 に 処 理 しておくならば 科 学 者 という 用 語 を 専 門 家 と 読 み 替 えた 点 があげられる 災 害 対 応 の 場 面 には 科 学 者 以 外 の 様 々なプロフェッショナル たとえば 医 者 や 建 築 士 など が 参 加 する その 実 態 をふまえて 専 門 家 という 用 語 に 改 めた しかしそれ 以 外 の 主 体 に 関 しては 同 じ 用 語 のままとし 同 じ 位 置 にそれぞれを 配 置 している それでは 修 正 前 のモデルと どこに 違 いがあるのか 要 点 は 次 の2 点 に 集 約 される 詳 細 は 節 をあらためて 述 べる (1) 正 四 面 体 モデルが 表 現 している 事 態 の 総 体 を メディアの 存 在 を 前 提 とした 出 来 事 (メディア イベント)としてとらえなおした (2) そのうえで 情 報 ( 前 章 第 3 節 でいうところの 第 Ⅲ 層 )だけではなく リアリ ティ ( 第 Ⅱ 層 )にも 着 目 した 図 -Ⅰ メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル

55 2 メディア イベントとしての 災 害 対 応 修 正 前 のモデルにおいて 正 四 面 体 の 構 造 によって 表 されていたのは 減 災 社 会 を 目 指 す 各 主 体 の 相 互 連 携 であったと 考 えられる これを 修 正 後 には メディアのプレゼンス をより 重 要 視 して 災 害 対 応 をめぐる メディア イベント としてとらえなおす リップマンが 大 衆 が 読 むのはニュース 本 体 ではなく いかなる 行 動 方 針 をとるべきか を 暗 示 する 気 配 に 包 まれたニュースである (Lippmann, 1922=1987: pp.76-77)と 指 摘 し て 以 来 情 報 の 層 よりもその 背 後 にある リアリティ の 層 をまなざすことの 重 要 性 は 繰 り 返 し 指 摘 されてきた ブーアスティンは 大 衆 消 費 社 会 情 報 化 社 会 の 到 来 を 見 据 えて 人 々の 欲 望 を 満 たすためにメディアが 製 造 したイメージ( 原 典 では イメジ と 表 記 )を 擬 似 イベント と 名 付 けた(Boorstin, 1962=1964) 同 じ 頃 メディアそのものが 人 間 の 経 験 や 社 会 関 係 を 構 造 化 する 力 があることを 分 析 したのがマクルーハンだった(McLuhan, 1962=1968) ブーアスティンとマクルーハン 双 方 の 視 点 を 受 け 継 ぐかたちで メディアが 関 与 する 出 来 事 の 全 体 構 造 とその 影 響 力 を 分 析 する 理 論 フレームとして 提 起 されたのが ダヤーン とカッツの メディア イベント 論 であった( 吉 見, 1994; Dayan&Katz, 1992=1996; 池 田, 1993; 阿 部, 2008; 古 川, 2009; 近 藤, 2011a; 津 金 澤, 2011) 吉 見 によれば メデ ィア イベントとは 1メディア 資 本 が 主 催 するイベント 2メディアが 大 規 模 に 中 継 報 道 するイベント 3メディアによってイベント 化 された 社 会 的 事 件 以 上 3つに 分 類 さ れる ダヤーンとカッツは 英 国 皇 太 子 とダイアナの 結 婚 式 アポロ 11 号 の 月 面 着 陸 オ リンピックのテレビ 中 継 等 を 代 表 例 としてあげている( 吉 見, 1994) ところで これまで 災 害 対 応 における 緊 急 報 道 は 事 前 に 計 画 されていない 突 発 事 象 であるとして メディア イベントの 分 析 対 象 からは 除 外 されてきた しかし 情 報 の 環 境 化 ( 藤 竹, 2004)が 進 んだ 高 度 情 報 社 会 では すでに 状 況 は 一 変 したと 考 えられる ( 藤 竹, 1996) 日 本 では 予 警 報 などの 各 種 災 害 情 報 は 気 象 庁 がメディアを 通 じて 国 民 に 知 らせることがあらかじめ 制 度 化 されており NHKなどでは 常 時 リアルタイムで 報 道 できる 体 制 が 整 えられている 社 会 の 側 でも たとえばマニュアルや 防 災 訓 練 などにおい て メディアが 発 信 する 情 報 をいかに 素 早 く 取 得 して 適 切 に 対 処 するか 事 前 に 計 画 してお くことが 通 例 となってきた そしてさらに 平 常 時 だけでなく 災 害 時 においても メディア が 伝 達 する 情 報 を 利 活 用 することが 常 態 化 している リスク コミュニケーションを 実 証 的 に 研 究 してきた 福 田 も メディアのリスク メッセージはリスクの 関 心 度 を 媒 介 して 間 接 的 にリスク 認 知 やリスク 不 安 に 影 響 を 与 えている ( 福 田, 2010: p.100)とした 上 で テレビがリスク 不 安 に 与 える 影 響 は 強 く その 因 果 関 係 は 証 明 された ( 同 上 )と 主 張 し ている こうした 知 見 をふまえるならば 災 害 対 応 の 総 体 を ひとつの メディア イベ ント と 措 定 できる 条 件 がほぼ 整 ったものとみなすことができるはずである( 近 藤, 2011a) 先 に 藤 竹 の 情 報 の 環 境 化 (2004)という 概 念 を 引 いたが ここから 本 研 究 の< 世 界

56 リアリティ 情 報 >の 三 層 構 造 モデルをふまえて 想 起 しておかなければならないことは 情 報 の 重 要 性 が 増 すことにともなって 必 然 的 に リアリティ をまなざすことの 重 要 性 も 増 しているということである 3 事 態 に 内 在 化 するリアリティ ステイクホルダー 減 災 の 正 四 面 体 モデル では 各 主 体 を 頂 点 に 置 き それぞれを 線 分 でつなぐ その 連 携 構 造 に 焦 点 があてられていたと 推 察 される メディア イベントをめぐるリアリティ の 共 同 構 築 モデル では 線 分 の 連 結 も もちろん 大 事 ではあるが それよりも 四 つ の 面 によって 成 り 立 つ 空 間 自 体 に 焦 点 をあてようとしている したがって すでに 図 で 示 したとおり( 図 -Ⅰ-6-1-1) 正 四 面 体 の 中 身 は 決 して 中 空 などではなく もちろん 仮 にではあるが 色 が 付 されている この 中 身 こそが 本 研 究 において 定 義 してきた 最 広 義 の リアリティ である 図 -Ⅰ-6-1-1では 便 宜 上 ベタ 塗 り されているが 実 際 に は そんな 単 純 なことはありえない 正 四 面 体 内 部 の リアリティ は 各 主 体 相 互 のふ るまいによって 変 容 し したがって 色 調 も 濃 度 もダイナミックに 移 り 変 わっていくことが 想 定 されている 以 下 修 正 モデル メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル では 各 主 体 のことを リアリティ ステイクホルダー ( 奥 村 矢 守 近 藤, 2010; 近 藤, 2011b など)と 呼 ぶことにする リアリティ ステイクホルダー は リアリティ を 共 同 構 築 する 関 係 当 事 者 のことを 指 す 彼 / 彼 女 らは 皆 相 互 に 影 響 し 合 いながらリアリティを 構 築 していく メディア イベント のアクター(ないし プレイヤー)である たとえば 津 波 避 難 を 例 にとれば 実 際 に 避 難 する 住 民 はもちろんのこと 避 難 誘 導 に 関 わる 自 治 体 の 行 政 担 当 者 や 災 害 報 道 に 従 事 するメディアの 関 係 者 などが 該 当 する そ して 緊 急 に 組 まれた 番 組 に 出 演 した 専 門 家 などもすべて 含 まれる ここで もし 従 来 のアプローチにしたがって 情 報 の 層 ( 第 Ⅲ 層 )だけから 事 態 をまなざすならば 住 民 は 情 報 の 受 け 手 として その 位 置 づけを 過 小 に 評 価 されるだけかもしれない しかし リアリティ の 層 ( 第 Ⅱ 層 )からも 事 態 をまなざすならば 実 は 住 民 は 重 要 な リ アリティ ステイクホルダー であることがわかる 住 民 のふるまい 自 体 ( 実 際 に 避 難 所 に 向 かう 行 動 など)が またひとつの 情 報 となって リアリティの 共 同 構 築 過 程 に 影 響 を 及 ぼしていくからである この 重 要 な 相 互 作 用 を 修 正 モデルであれば しっかり 見 据 えることができる そして 逆 に リアリティの 共 同 構 築 過 程 に 関 与 する 度 合 いが 低 い すなわち 事 態 に 外 在 している のであれば その 関 係 性 のありようこそが 今 一 度 問 い 直 される 必 要 が あることを 指 摘 できるだろう さらに 上 述 した 津 波 避 難 の 例 から 今 度 はメディアの 立 ち 位 置 を 省 みてみれば さらに 新 旧 モデルの 相 違 は 明 瞭 となってくる これまでは 情 報 の 送 り 手 としてのみ 役 割 を 確 保 していたメディアが 自 分 たちも 逃 げなければならない 自 分 たちも 当 事 者 に

57 なり 得 る それほどの 重 大 事 である といった 構 えを 見 せたとすれば つまり 事 態 の 内 在 者 としてふるまったとすれば リアリティ の 層 から 大 きな 変 動 従 来 のフォー マットから 言 えば それは 逸 脱 ともいえる を 巻 き 起 こす そうしたポテンシャルがある ことを 指 摘 できるはずである ここまで 本 研 究 において 新 たに 提 起 する メディア イベントにおけるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 要 点 を 概 説 した 以 下 続 く 第 Ⅱ 部 では このモデルの 視 座 に 立 って 災 害 報 道 の 内 容 分 析 をおこない 問 題 を 生 み 続 ける 閉 塞 した 構 造 自 体 を 再 照 射 していく

58 第 Ⅱ 部 調 査 分 析 第 Ⅱ 部 では 第 Ⅰ 部 で 提 起 した メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モ デル をもとに 災 害 報 道 の 内 容 分 析 をおこなう 具 体 的 には 災 害 のマネジメントサイクルに 沿 って 緊 急 報 道 ( 第 7 章 ~ 第 8 章 ) 復 興 報 道 ( 第 9 章 ~ 第 10 章 ) 予 防 報 道 ( 第 11 章 ~ 第 13 章 )の 順 にみていく それ ぞれの 局 面 において 近 年 実 際 になされた 災 害 報 道 の 内 容 分 析 をおこない 課 題 抽 出 と その 検 討 をおこなった

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60 第 7 章 緊 急 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 2010 年 チリ 地 震 における 津 波 来 襲 時 のテレビ 報 道 の 内 容 分 析 1 はじめに 本 章 および 次 章 では 第 Ⅰ 部 第 6 章 で 提 起 した メディア イベントをめぐるリアリ ティの 共 同 構 築 モデル を 使 って 緊 急 報 道 における 重 要 課 題 をあらためて 抽 出 する なお 本 章 に 掲 載 する 文 章 は 東 日 本 大 震 災 が 起 きる1 年 ほどまえに 執 筆 された 査 読 論 文 をベースにしている 抽 出 された 課 題 のいくつかは 残 念 なことではあるが 東 日 本 大 震 災 の 緊 急 報 道 において 課 題 が 再 現 されてしまった その 事 実 は 本 研 究 が 提 起 した 理 論 フレームの 妥 当 性 を 実 証 しているとともに 現 場 のベターメントが 遅 れていることを 示 していると 考 えられる 2 問 題 : 低 調 だったチリ 地 震 津 波 の 住 民 避 難 行 動 2010 年 2 月 末 に 日 本 列 島 に 来 襲 したチリ 地 震 津 波 では 地 震 の 揺 れなどの 直 接 的 な 実 感 を 伴 わない 中 で 水 門 閉 鎖 や 避 難 誘 導 などの 災 害 対 応 をおこなうことが 求 められた メデ ィアを 通 じて 伝 達 される 間 接 的 な 情 報 の 重 要 性 が 注 目 された 災 害 事 例 だったと 言 える しかし 各 地 で 情 報 あれど 避 難 せず という 課 題 が 浮 上 した(たとえば 内 閣 府 総 務 省 消 防 庁, 2010; ウェザーニューズ, 2010) NHK 放 送 文 化 研 究 所 の 調 査 ( 石 川, 2010) によれば 避 難 対 象 住 民 が 逃 げなかった 理 由 として 最 も 多 く 挙 げたのは 自 分 のいる ところは 安 全 だと 思 った という 回 答 だった また 岩 手 県 と 岩 手 大 学 の 調 査 (2010)で は 避 難 所 から 帰 宅 した 理 由 の 第 1 位 を 津 波 の 第 1 波 が 予 想 より 低 かったから とい う 回 答 が 占 めていた これらの 調 査 結 果 は 人 々が 津 波 に 関 する 情 報 を 知 らなかったか ら 逃 げなかった のではなく それなりに 知 っていたからこそ 逃 げなかった ことを 示 し ている 以 上 の 視 点 に 立 ったとき 重 要 な 示 唆 を 与 えてくれるのが 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 住 民 の 避 難 行 動 を 分 析 した 金 井 片 田 (2010)の 調 査 研 究 である 金 井 らは 津 波 情 報 がはず れたことを 是 とする 態 度 (attitude)の 形 成 を 促 す こと および 今 が 緊 急 事 態 である という 社 会 の 雰 囲 気 (atmosphere)をつくりだすこと の2 点 が 今 後 の 津 波 避 難 促 進 策 には 必 要 だと 提 言 している( 金 井 片 田, 2010: p183-p188) このうち 本 研 究 の 立 場 から 特 に 注 目 されるのは 2つ 目 の 指 摘 である なぜならば 金 井 らが 提 起 した 雰 囲 気 (atmosphere) を 社 会 心 理 学 の 視 点 からより 厳 密 に 定 位 するならば それはまさに たと えそれが 現 前 していなくても 迫 り 来 る 危 機 として 人 々に 行 動 を 促 すような リアリティ のことを 言 い 表 しているからである これを 本 研 究 の 対 象 に 即 してより 具 体 的 に 表 現 すれば 次 のように 言 い 換 えることが できる 迅 速 な 避 難 行 動 は 災 害 情 報 の 正 確 性 や 迅 速 性 によって 規 定 されるのみならず 今 が 避 難 を 要 するような 緊 急 事 態 である (この 認 定 は いま 現 れている 対 象 事 象 の 同

61 一 性 の 認 定 の 一 種 に 他 ならない)という リアリティ が 共 同 的 に 構 築 されるか 否 かに よって 強 く 規 定 されるのだと そして どのようなリアリティが 共 同 構 築 されるかは そ れが 多 様 な 人 々が 関 与 する 共 同 的 なプロセスである 以 上 共 同 構 築 の 動 的 な 過 程 をト ータルに 見 据 えることが 重 要 であり のちに 分 析 するテレビ 放 送 に 照 らしていえば 個 別 の 報 道 内 容 ( 災 害 情 報 )だけではなく 報 道 全 体 がどのように 構 造 化 され 誰 を 対 象 とし て 情 報 が 発 信 されているかなど 情 報 のコミュニケーションをめぐる 形 式 (フォーマッ ト) に 大 きな 影 響 を 受 けると 考 えられる 本 研 究 で あえて メディア イベント とい う 観 点 もふまえて 津 波 避 難 とリアリティの 関 係 を 分 析 しようとする 最 大 の 理 由 は この 点 にある 本 事 象 を リアリティがメディア イベントとして 社 会 的 に 構 築 される 事 象 と して 捉 え 直 すことで 災 害 情 報 と 避 難 に 関 してこれまで 軽 視 されてきた 課 題 を 明 らかにし ようとする 戦 略 である 3 対 象 :NHK 総 合 テレビの 緊 急 報 道 以 下 本 章 では 2010 年 チリ 地 震 津 波 というメディア イベントで 大 きなプレゼンスを 示 した 指 定 公 共 機 関 である 日 本 放 送 協 会 ( 以 下 NHKと 略 す)の 特 にテレビ 放 送 ( 総 合 テレビジョン)における 緊 急 報 道 に 焦 点 をあて 津 波 避 難 に 関 するリアリティが 構 築 さ れる 過 程 でどのような 課 題 があったか 検 討 する 発 災 後 に 実 施 された 様 々な 調 査 によれば 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 際 警 報 を 覚 知 するた めに 最 も 役 に 立 ったメディアは テレビ であった 内 閣 府 と 総 務 省 消 防 庁 が 実 施 したア ンケートでは 大 津 波 警 報 を 見 聞 きした 手 段 として 91.5%の 人 が テレビ と 回 答 して いる( 内 閣 府 総 務 省 消 防 庁, 2010) 釧 路 市 と 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 が 実 施 した 調 査 で も 警 報 認 知 の 手 段 として テレビ と 回 答 した 人 が 89%に 上 った( 釧 路 市 連 合 防 災 推 進 協 議 会 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 河 川 研 究 部 海 岸 研 究 室, 2010) NHK 放 送 文 化 研 究 所 の 調 査 では テレビ で 大 津 波 警 報 を 知 ったと 答 えた 人 は 72%となった( 石 川, 2010) い ずれにしても 他 のメディア(ラジオ ネット 防 災 無 線 など)と 比 べて テレビはその プレゼンスが 大 きなものであったことがうかがえる こうした 中 で NHK 総 合 テレビジ ョン は 2 月 28 日 ( 日 )の 視 聴 率 が およそ 15~25%をキープしており 他 のどのチャ ンネルよりも 高 いポイントを 示 していた 2010 年 チリ 地 震 津 波 では 気 象 庁 が 最 初 に 警 報 を 発 表 (2 月 28 日 午 前 9 時 33 分 )して から 解 除 (3 月 1 日 午 前 10 時 15 分 )するまで つまり オフィシャルに 警 戒 が 求 められて いた 時 間 は 24 時 間 42 分 であった しかし これをひとつの メディア イベント とし て 捉 えた 場 合 そのフレーム 自 体 異 なったものとなる NHKがチリで 巨 大 地 震 が 起 き たことを 最 初 に 伝 えたのは 2 月 27 日 午 後 4 時 1 分 56 秒 であった 月 刊 やさい 通 信 と いう 録 画 番 組 の 放 送 中 で 画 面 の 上 段 に 午 後 3 時 34 分 ごろ 地 震 がありました と 速 報 ス ーパーが 表 示 された そして 午 後 4 時 半 には 2 分 間 の 特 設 ニュースで 日 本 に 津 波 が 到 達 するか 気 象 庁 が 調

62 査 中 である 旨 を 伝 えた その 後 午 後 6 時 7 時 8 時 45 分 と 定 時 ニュースの 枠 内 では 必 ず 続 報 が 出 た 深 夜 帯 になるとニュースの 放 送 枠 自 体 が 無 くなり チリ 地 震 津 波 の 続 報 は 途 絶 えたが 明 けて 翌 朝 午 前 5 時 台 6 時 台 7 時 台 のニュース 中 にそれぞれ 続 報 が 出 され 午 前 8 時 29 分 からは 気 象 庁 の 会 見 場 の 様 子 を 生 中 継 で 放 送 し 始 めた そしてこのま ま 緊 急 特 番 に 移 行 した 午 前 9 時 33 分 に 警 報 が 発 表 されてからは 予 定 されていた 番 組 は 休 止 となり 緊 急 特 番 が 続 いた 午 後 7 時 台 の ニュース7 の 放 送 枠 を 拡 大 して 1 時 間 放 送 を 出 した 後 よう やく 緊 急 特 番 体 制 が 終 了 した しかしその 後 も 警 報 や 注 意 報 が 出 たエリアの 地 図 は 画 面 に 表 示 したままだった 新 たに 入 った 情 報 は 文 字 スーパーやL 字 画 面 を 使 って 断 続 的 に 伝 えていた 放 送 上 の 警 戒 がすべて 解 かれたのは 3 月 1 日 の 午 前 10 時 15 分 44 秒 だった 当 該 メディア イベントの 始 点 と 終 点 を 指 定 公 共 機 関 であるNHKの 全 国 発 信 から 捉 え 直 した 場 合 その 継 続 時 間 は 42 時 間 13 分 48 秒 だったといえる 4 方 法 : 内 容 分 析 と 聞 き 取 り 調 査 本 研 究 では 前 節 で 概 観 した 42 時 間 余 りの 放 送 を 対 象 として これらすべてをトランス クリプトに 書 き 起 こし 内 容 分 析 (Krippendorff, 1980=1989; 有 馬, 2007)をおこなった 繰 り 返 し 放 送 されたコメントや 出 演 者 が 言 いよどんだコメント さらにゲストの 大 学 教 授 が 解 説 した 話 などもすべて 分 析 対 象 に 含 めるために 実 際 に 放 送 に 出 た 内 容 を 一 字 一 句 すべて 書 き 起 こして 分 析 することにした 映 像 に 関 しては 画 面 に 表 示 されている 内 容 を カテゴリー 分 けして 量 的 なデータとして 集 計 をおこなった( 次 節 で 詳 述 する) また 様 々な リアリティ ステイクホルダー に 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 した( 表 -Ⅱ ) 高 知 県 内 の 自 治 体 の 行 政 担 当 者 津 波 避 難 タワーの 近 隣 住 民 沿 岸 部 で 営 業 している 観 光 土 産 店 の 店 主 大 阪 湾 沿 岸 部 の 自 治 体 の 行 政 担 当 者 海 上 保 安 庁 の 担 当 者 やポートラ ジオの 担 当 者 などである さらに 津 波 来 襲 当 日 の 放 送 対 応 に 従 事 した 複 数 のNHK 職 員 にも 直 接 聞 き 取 りをおこなった( 東 京 仙 台 大 阪 で 実 施 ) 聞 き 取 り 調 査 では フィー ルド ノートを 作 成 して 採 取 されたデータの 整 理 をおこなった 5 分 析 :リアリティの 構 築 過 程 とその 課 題 以 下 NHKのテレビ 放 送 の 内 容 分 析 を 通 して 当 該 メディア イベントのリアリティ ステイクホルダーたちがリアリティを 構 築 していく 上 でどのような 課 題 があったかについ て 3つの 側 面 から 整 理 する (1)テレビ 放 送 分 析 の 妥 当 性 とタイムフレーム 課 題 分 析 に 先 立 って NHKのテレビ 放 送 をメディア イベントの 中 核 要 素 として 分 析 することの 妥 当 性 を 先 述 した 警 報 取 得 率 などのデータとは 別 に 聞 き 取 り 調 査 の 結 果 に よって 傍 証 する 聞 き 取 り 調 査 でも テレビ とりわけNHKの 放 送 に 対 する 接 触 度 が 高

63 表 -Ⅱ リアリティ ステイクホルダーへの 聞 き 取 り(2010 年 ) No. 属 性 カテゴリー 聴 取 月 日 高 知 県 危 機 管 理 部 地 震 防 災 課 高 知 県 危 機 管 理 部 地 震 防 災 課 高 知 県 土 佐 市 総 務 課 防 災 担 当 高 知 県 土 佐 市 沿 海 部 の 消 防 団 員 高 知 県 須 崎 市 総 務 課 安 全 防 災 係 高 知 県 中 土 佐 町 総 務 課 高 知 県 中 土 佐 町 総 務 課 高 知 県 高 知 市 危 機 管 理 室 高 知 県 高 知 市 危 機 管 理 室 高 知 県 高 知 市 商 工 観 光 部 商 工 振 興 課 高 知 県 高 知 市 種 崎 地 区 住 民 高 知 県 高 知 市 種 崎 地 区 住 民 高 知 県 高 知 市 種 崎 地 区 住 民 高 知 県 高 知 市 種 崎 地 区 住 民 高 知 県 高 知 市 桂 浜 地 区 観 光 土 産 店 主 大 阪 府 港 湾 局 大 阪 府 港 湾 局 東 洋 信 号 通 信 社 ( ポートラジオ ) 東 洋 信 号 通 信 社 ( ポートラジオ ) NHK( 東 京 ) 社 会 部 災 害 気 象 担 当 NHK( 東 京 ) 社 会 部 災 害 気 象 担 当 第 5 管 区 海 上 保 安 部 警 備 救 難 部 第 管 区 海 上 保 安 部 警 備 救 難 部 第 5 管 区 海 上 保 安 部 交 通 部 安 全 課 NHK 仙 台 放 送 局 NHK 大 阪 放 送 局 和 歌 山 県 印 南 町 防 災 担 当 和 歌 山 県 印 南 町 防 災 担 当 和 歌 山 県 印 南 町 防 災 担 当 行 政 行 政 行 政 住 民 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 行 政 住 民 行 政 行 政 メディア メディア メディア メディア 行 政 行 政 行 政 メディア メディア 行 政 行 政 行 政 3 月 3 日 4 月 14 日 4 月 30 日 5 月 13 日 6 月 25 日 7 月 1 日 7 月 17 日 7 月 29 日 8 月 3 日 かったことがわかった 自 治 体 の どの 災 害 対 策 本 部 ( 事 務 局 ) 内 でも NHKの 映 像 が 流 れたままになっていたとの 証 言 が 得 られた(Sample No.1, No.5, No.6, No.8, No.16, No.22, No.27) たとえば 第 5 管 区 海 上 保 安 部 では NHKはつけっぱなし だったと いう(Sample No.24) また 普 段 はテレビのスイッチを 入 れることが 禁 じられているポー トラジオの 管 制 室 でさえ 知 らない 間 に 誰 かがテレビをつけて おり 状 況 を 確 認 する ため 常 時 NHKのニュースをチェックしていた という(Sample No.18) 高 知 市 種 崎 地 区 の 津 波 避 難 タワーでは 住 民 が 集 会 室 に 集 まり 皆 でNHKの 放 送 を 見 ていた (Sample No.11~14) 次 に テレビ 放 送 を 分 析 する 際 のタイムフレームを 設 定 しておこう 聞 き 取 り 調 査 では 多 くの 人 が NHKの 緊 急 特 番 がスタートした 2 月 28 日 午 前 8 時 29 分 の 時 点 で ああ 本 当 に 始 まったんだ と 実 感 したと 回 答 しており 行 政 担 当 者 の 中 には 覚 悟 はしていた

64 が 身 震 いするほど 緊 張 した と その 瞬 間 を 振 り 返 る 人 もいた(Sample No.8) 一 方 NHKの 報 道 従 事 者 たちも 2 月 28 日 の 朝 の 時 点 で ( 地 震 の 規 模 は M8 級 であるし)やは り 津 波 は 来 るんだろうなあ (Sample No.20) まずいことになるかもしれない (Sample No.25)といった 印 象 を 持 っていたと 証 言 している 2010 年 チリ 地 震 津 波 は 実 際 には 10 時 間 以 上 も 前 に 地 球 の 裏 側 で 発 生 していたのであるが 日 本 にいるリアリティ ステイク ホルダーの 間 で 本 事 象 に 関 するリアリティが 強 まったのは まさに 気 象 庁 が 会 見 を 開 く ためのアクションを 起 こし かつ そのニュースが 報 じられた 2 月 28 日 午 前 8 時 29 分 だ ったといえよう このようにして 始 まった 災 害 モードの 局 面 が 次 に 大 きくシフト チェンジしたのは 東 京 にいたNHKの 報 道 従 事 者 たちによれば 同 日 午 後 8 時 ちょうどだった 災 害 報 道 の 担 当 者 たちは 夕 方 の 時 点 ではまだ 後 続 波 に 対 する 警 戒 感 を 緩 めていなかったが 通 常 は 30 分 間 の 放 送 枠 である 夜 7 時 のニュースを 1 時 間 に 拡 大 して この 日 1 日 の 動 きと 今 後 の 注 意 情 報 を 伝 えることで もうこれで 津 波 特 番 を 終 えても 大 丈 夫 だろう と 考 えたという (Sample No.20, No.21) ビデオリサーチ 社 の 視 聴 率 調 査 ( 関 東 版 )を 参 照 すると 夜 7 時 台 の 視 聴 率 は およそ 15%だった そして 夜 8 時 から 通 常 の 編 成 どおり 大 河 ドラマ 龍 馬 伝 が 始 まると 視 聴 率 は 上 昇 して 25% 近 くになった 1 週 間 前 の 同 じ 時 間 帯 でもNH K 総 合 の 視 聴 率 が 25%だったことをふまえると 多 くの 視 聴 者 にとって 夜 8 時 は 大 河 ド ラマを 見 る といった 日 常 モードに 戻 る 大 きな 節 目 だったと 考 えることができる 聞 き 取 り 調 査 でも 沿 岸 部 の 店 を 心 配 してずっとテレビを 見 ていた 店 主 が テレビを 見 ていて もう 大 きな 津 波 が 来 る 心 配 はないだろう と 感 じ 実 際 に 警 戒 を 解 いたとの 証 言 が 得 られ た(Sample No.15) 以 上 のように 日 常 モード 災 害 モード 日 常 モードと 遷 移 したタイムフレームは 大 きく3つの 局 面 に 整 理 することができる 本 研 究 では 各 局 面 を Phase 1 ( 2 月 27 日 地 震 発 生 の 速 報 が 出 た 時 から 翌 28 日 朝 の 気 象 庁 会 見 場 の 中 継 開 始 まで) Phase 2 ( 緊 急 特 番 開 始 時 から ニュース7 の 放 送 が 終 了 した 夜 20 時 まで) Phase 3 ( 大 河 ドラ マ 龍 馬 伝 放 送 開 始 時 から 翌 3 月 1 日 朝 の 注 意 報 全 解 除 の 速 報 が 出 た 時 点 まで)と 呼 ぶことにする (2) 課 題 1: 放 送 内 容 におけるリアリティの 競 合 ダヤーンとカッツは メディア イベントと 競 いあえる 唯 一 の 現 実 は 別 のメディア イベントである と 指 摘 している(Dayan&Katz, 1992=1996: p.125) 2010 年 チリ 地 震 津 波 に 関 して 言 えば バンクーバー 冬 季 五 輪 が まさにそれであった 42 時 間 余 りの 分 析 対 象 を 放 送 の 内 容 別 に 分 類 したものが 図 -Ⅱ-7-5-1である 冬 季 五 輪 に 関 する 特 番 と 関 連 ニュースは 全 体 の 20%を 占 めていた その 一 方 で チリ 地 震 津 波 関 連 の 内 容 は 合 計 32%だった これを Phase 1 に 限 って 見 てみると 冬 季 五 輪 が 39%あ るのに 対 して チリ 地 震 津 波 はわずか 4%だった( 図 -Ⅱ-7-5-2) チリで 巨 大 地 震 が 起 き

65 図 -Ⅱ 全 42 時 間 余 の 放 送 内 容 内 訳 図 -Ⅱ Phase 1 の 放 送 内 容 内 訳 た 2 月 27 日 は フィギュアスケート 女 子 で 浅 田 真 央 選 手 が 銀 メダルを 獲 得 した 日 の 翌 日 だ った そして 津 波 が 来 襲 した 2 月 28 日 には 女 子 団 体 パシュートが 再 びメダル 獲 得 圏 内 に 入 った NHK( 東 京 )の 報 道 従 事 者 の 証 言 によれば この 時 点 で 津 波 襲 来 のリスクより も 冬 季 五 輪 のほうにニュース バリューがあったことを 認 めざるを 得 ず(Sample No.20, No.21) Phase 2 では 津 波 の 緊 急 特 番 に 割 り 込 むかたちで 冬 季 五 輪 の 速 報 を 流 すことになっ た(L 字 画 面 や 警 報 エリアの 地 図 表 示 などは 継 続 した) 女 子 団 体 パシュートの 銀 メダルが 確 定 した 直 後 には 津 波 の 緊 急 特 番 を 中 断 して 選 手 たちのインタビュー 映 像 を 放 送 した オリンピックは 選 手 一 人 ひとりの 苦 闘 のドラマが 周 到 に 描 き 込 まれた 代 表 的 なメディ ア イベントである 2010 年 チリ 地 震 津 波 をメディア イベントのフレームで 捉 えるなら ば 世 界 的 な 一 大 イベントのクライマックスと 競 合 するかたちで 注 意 喚 起 や 避 難 継 続 に 関 わるリアリティを 構 築 していかなければならなかった 状 況 にあったことが 指 摘 できる また 放 送 の 分 析 からは 別 種 の リアリティの 競 合 が 生 じていたことを 抽 出 すること ができた それは 津 波 襲 来 という 非 日 常 のイベントと 日 常 そのもののリアリティの 競 合 である まず Phase 1 では 2 月 27 日 から 28 日 にかけての 深 夜 帯 パフォー ダンス スペシ ャル (0 時 55 分 ~1 時 24 分 )や NBAマガジン 2 月 号 (2 時 35 分 ~3 時 5 分 )などの 娯 楽 番 組 が 放 送 されていた そして 結 局 4 時 間 以 上 チリ 地 震 津 波 に 関 する 情 報 が 放 送 さ れることはなかった 土 曜 の 深 夜 帯 は 視 聴 者 の 多 くを 若 者 が 占 めている 放 送 の 編 成 も そのことを 考 慮 して 組 まれている しかし 上 述 した 状 況 をふまえると NHKテレビを 視 聴 した 若 者 の 中 には 土 曜 の 深 夜 の 時 点 で 津 波 襲 来 のリスクを 知 ることなく 翌 日 の 日 曜 日 を 迎 えた 人 がいた 可 能 性 を 指 摘 することができる また Phase 1~3 のすべての 局 面 で 気 象 情 報 のコーナーが 平 常 どおりの 演 出 で 放 送 され ていた きょうの 天 気 や 世 界 の 天 気 予 報 といったコーナーでは 日 本 列 島 の 全 体 図 を 画 面 に 映 し 出 して 天 気 の 概 況 を 伝 えていた それにも 関 わらず 沿 岸 部 の 津 波 襲 来 のリ スクに 関 しては 一 言 もふれていなかった(ただし 東 北 エリアのローカル 枠 では 例 外 が

66 あったことが 確 認 されている(Sample No.25)) このことに 関 して たとえば 雨 が 予 想 される 沿 岸 部 では 避 難 の 際 は 傘 をお 忘 れなく といった 注 意 喚 起 をするなど 気 象 情 報 と 津 波 警 報 を 関 連 づけて 日 常 のリアリティと 津 波 襲 来 のリアリティとをよりスムーズに 接 合 するための 工 夫 の 余 地 はまだあった (Sample No.25)との 証 言 が 得 られている 聞 き 取 り 調 査 では Phase 2 から Phase 3 に 移 行 した 時 点 の 周 辺 でも 日 常 性 のリアリテ ィとの 競 合 が 生 じていたことがわかった 夜 8 時 NHKが 通 常 の 編 成 に 戻 して 大 河 ドラ マ 龍 馬 伝 を 放 送 し 始 めた 時 点 である たとえば 高 知 県 や 高 知 市 の 庁 内 に 詰 めていた 担 当 者 の 証 言 によれば 緊 急 特 番 が 終 わりドラマの 放 映 が 始 まったことに 突 如 災 害 モ ードから 日 常 モードに 引 き 戻 されたような 違 和 感 をもったという(Sample No.1, No.8) この 点 に 関 して さらに NHKに 見 捨 てられたと 感 じた 高 知 だけが 取 り 残 された 気 分 だった との 証 言 も 得 られた(Sample No.8) このあと 夜 8 時 23 分 23 秒 高 知 県 内 の 須 崎 港 で この 日 の 最 大 波 となる 1 メートル 20 センチを 記 録 していた という 速 報 が 入 った NHKの 放 送 では 大 河 ドラマ 龍 馬 伝 を 中 断 して 特 設 ニュースを 構 えることはせ ず L 字 画 面 のみで 伝 えた 高 知 県 にとっては 大 きな 事 件 が 起 きていたにも 関 わらず 放 送 上 は 際 立 った 対 応 がなされることはなかった 一 方 高 知 市 種 崎 地 区 の 津 波 避 難 タワーにいた 住 民 たちは 日 中 つまり Phase 2 の 段 階 で 皆 でテレビを 見 ていた しかし 東 北 地 方 の 津 波 高 さなどを 見 て たいしたことは 起 きない というリアリティが 強 まっていったという そして 夕 刻 までには 全 員 が 帰 宅 し た 避 難 所 を 閉 じる 判 断 をする 上 でもっとも 重 視 したのは そろそろ 暗 くなってくるし 晩 御 飯 の 準 備 も 始 めないといけない ということだった(Sample No.11~14) そして 後 続 波 が 実 際 にそのリスクを 高 めていた Phase 3 の 局 面 で 再 び 津 波 避 難 タワーが 開 場 される ことはなかった 近 隣 住 民 の 中 には 家 族 と 大 河 ドラマを 見 ていて 速 報 を 目 にした 人 もい た しかし 他 の 住 民 に 再 度 避 難 するか 相 談 することはしなかったという(Sample No.11) ここでは 夕 飯 や 団 欒 といった 日 常 性 のリアリティを 打 ち 破 るほど 津 波 避 難 を 強 く 志 向 するリアリティが 構 築 できなかったといえる (3) 課 題 2:リアリティ ステイクホルダーの 偏 り 本 項 では どのような 人 物 がテレビ 画 面 にどのような 形 で 登 場 していたかに 焦 点 をあて メディア イベントとしての 津 波 災 害 をめぐって リアリティを 共 同 構 築 するリアリティ ステイクホルダーの 顔 ぶれが 適 切 であったかどうかについて 分 析 する 表 -Ⅱ-7-5-1は 実 際 に 放 送 されたニュースのトランスクリプトの 一 部 である 情 報 の 発 信 元 となっている 主 体 を 選 定 して それぞれに 下 線 を 付 してある 図 -Ⅱ-7-5-3は Phase 1 の 中 で 2 月 27 日 の 放 送 分 に 関 して 情 報 の 発 信 元 となっている 主 体 の 出 現 頻 度 を 表 し たものである 最 も 多 く 出 現 していた 情 報 発 信 元 は 気 象 庁 だった 次 に アメリカ( 太 平 洋 津 波 観 測 センターや 米 地 質 調 査 所 など)やチリ( 在 チリ 日 本 大 使 館 や 在 チリ 邦 人 など) からの 情 報 発 信 が 多 かった そのほとんどは ハザードの 特 徴 やチリの 被 害 状 況 を 伝 える

67 表 -Ⅱ 月 27 日 午 後 4 時 半 の 特 設 ニュース Q)え ではここで ニュースをお 伝 えします Q) 気 象 庁 によりますと きょう 午 後 3 時 34 分 ごろ 南 米 のチリ 中 部 沿 岸 を 震 源 とするマグニ チュード 8.5 の 大 きな 地 震 がありました Q)この 地 震 で 太 平 洋 の 広 い 範 囲 で 津 波 が 発 生 するおそれがあるということです Q)ハワイにある 太 平 洋 津 波 警 報 センターは チリと 隣 国 のペルーに 津 波 警 報 を 出 して 警 戒 を 呼 びかけています Q) 気 象 庁 が 日 本 への 津 波 の 影 響 があるかどうか 調 べています Q)アメリカの 地 質 調 査 所 によりますと 震 源 は 南 米 のチリの 首 都 サンチアゴの 南 西 およそ 320 キロの 沿 岸 部 で 震 源 の 深 さはおよそ 60 キロと 推 定 しています Q) 震 源 からおよそ 320 キロ 離 れた チリの 首 都 サンティアゴにあるホテルの 従 業 員 によります と ホテルでは 壁 のタイルがくずれ 棚 から 物 が 落 ち 宿 泊 客 や 従 業 員 は 建 物 の 外 に 避 難 して いるということです Q) 市 内 では 車 や 徒 歩 で 避 難 する 人 たちが 出 ているほか 消 防 車 がサイレンを 鳴 らしながら 町 を 走 っているということです Q) 気 象 庁 によりますと きょう 午 後 3 時 34 分 ごろ 南 米 のチリ 中 部 沿 岸 を 震 源 とするマグニ チュード 8.5 の 大 きな 地 震 がありました Q)この 地 震 で 太 平 洋 の 広 い 範 囲 で 津 波 が 発 生 するおそれがあるということです Q)ハワイにある 太 平 洋 津 波 警 報 センターは チリと 隣 国 のペルーに 津 波 警 報 を 出 して 警 戒 を 呼 びかけています Q) 気 象 庁 が 日 本 への 津 波 の 影 響 があるかどうか 調 べています Q) 気 象 庁 によりますと きょう 午 後 3 時 34 分 ごろ 南 米 のチリ 中 部 沿 岸 を 震 源 とするマグニ チュード 8.5 の 大 きな 地 震 がありました Q)この 地 震 で 太 平 洋 の 広 い 範 囲 で 津 波 が 発 生 するおそれがあるということです Q)ニュースをお 伝 えしました 図 -Ⅱ 情 報 発 信 元 の 出 現 頻 度 ( 回 ) (Phase 1 の 2 月 27 日 分 )

68 ものであった 2 月 27 日 の 夜 には すでに 気 象 庁 の 地 震 津 波 監 視 課 長 が 記 者 会 見 で 津 波 来 襲 の 注 意 喚 起 をおこなっていた 津 波 の 専 門 家 たちも 1960 年 チリ 地 震 津 波 の 例 などをひもときながら 放 送 を 通 して 注 意 喚 起 をおこなっていた その 一 方 で 同 夜 鳩 山 首 相 ( 当 時 )は チリに 救 助 隊 を 派 遣 すべきか 検 討 中 である 旨 コメントしていた(NHKでは 27 日 の ニュース 7 で 放 送 ) 岡 田 外 相 ( 当 時 )も 同 様 のコメントを 発 表 していた(27 日 の 夜 8 時 45 分 の ニ ュース 845 で 放 送 ) これとは 対 照 的 に 実 際 に 避 難 をすべき 住 民 たちは NHKテレビの 放 送 画 面 上 にはあ まり 登 場 していなかった まず Phase 1 では 住 民 の 姿 は 全 く 見 られない Phase 2 になる と 水 門 を 閉 める 消 防 団 員 や 避 難 を 呼 びかける 自 治 会 の 役 員 避 難 所 に 集 まった 住 民 など の 姿 が 登 場 してくる そこで Phase 2 における 登 場 人 物 を 津 波 の 第 1 波 が 日 本 列 島 ( 南 鳥 島 )に 到 達 した 2 月 28 日 午 後 1 時 台 の 1 時 間 に 着 目 して 分 析 したところ 人 物 の 姿 が 画 面 に 映 っていたのは 19 分 31 秒 間 だった それ 以 外 の 時 間 (40 分 29 秒 間 )は 港 の 様 子 を ロングショットで 捉 えた 映 像 などだった 画 面 に 登 場 する 頻 度 が 最 も 多 かった 人 物 は N HKのアナウンサーで 28 回 あった また 専 門 家 は 3 回 記 者 は 3 回 だった 一 方 住 民 の 姿 も 画 面 に 登 場 していた 撮 影 された 場 所 ごとに 分 類 すると 避 難 所 3 回 港 3 回 駅 構 内 3 回 高 台 2 回 となった しかし この 中 で 映 像 だけでなく 音 声 も 放 送 で 使 用 され ていた 人 物 は 3 人 だけだった また この 3 人 のカット 尺 (ラップタイム)を 足 し 合 わせ ても 20 秒 に 満 たなかった 住 民 に 関 して さらに どのような 人 たちが 画 面 に 出 ていたか また 何 を 話 していた か 分 析 した 結 果 ある 一 定 の 傾 向 があることがわかった 住 民 は 上 述 したような 様 々な 場 所 ( 避 難 所 港 駅 など)でカメラに 捉 えられていたが その 多 くは 高 齢 者 だった あ る 避 難 所 のシーンでは 画 面 の 奥 にいた 若 者 たちをクローズアップするのではなく 高 齢 者 の 姿 だけをアップショットで 捉 えていた 高 齢 者 よりも 頻 度 は 少 ないが 子 供 の 姿 も 画 面 に 映 し 出 されていた その 一 方 で 若 者 の 姿 はごくわずかしかなかった インタビュー の 映 像 が 放 送 された 人 物 に 限 ってみると 若 者 は 一 人 も 該 当 が 無 かった また 共 助 ( 避 難 の 相 互 促 進 など)に 関 わるインタビューや 映 像 が 少 ないこともわか った たとえば 避 難 所 や 駅 などで 実 施 された ぶらさがり のインタビューを 分 析 する と いやあ 怖 いですよ や 50 年 前 のことを まざまざと 思 い 出 しました といった 不 安 な 心 情 を 吐 露 する 内 容 が 多 かった また とりあえず 逃 げて 来 たんですけど や 早 く 帰 りたいですね など 自 己 の 心 情 に 言 及 する 内 容 が 多 かった これに 対 して 他 人 を 慮 る 内 容 たとえば まだ 避 難 していない 人 がいるので 心 配 だ といった 声 は ごくわずか しか 無 かった メディア イベントとしての 津 波 避 難 に 関 するリアリティを 共 同 構 築 する 関 係 当 事 者 と して メディアや 専 門 家 といった 主 体 と 比 較 して 実 際 に 避 難 すべき 地 域 住 民 はそのプレ ゼンスが 小 さく しかもそれは いわゆる 災 害 時 要 援 護 者 に 限 られていた ここから

69 は 当 該 メディア イベントは 共 助 ではなく 公 助 ( 行 政 が 要 援 護 者 を 避 難 させる) 中 心 のイベントとして 意 味 付 けがなされていたと 概 括 することができる (4) 課 題 3: 情 報 のローカリティ 渥 美 (2011)は ある 出 来 事 を 特 定 かつ 共 通 の 意 味 を 有 する 現 象 として 把 握 させる 空 間 と それが 帯 びる 特 性 を ローカリティ を 呼 んだ 東 京 のスタジオをキー ステーション として 全 国 に 一 斉 放 送 された 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 緊 急 特 番 では このローカリティに 対 する 一 定 の 配 慮 はおこなわれていたと 考 えられる テレビ 画 面 には 地 名 が 頻 出 し 津 波 到 達 予 想 の 情 報 を 伝 える 際 には 多 くの 地 名 が 順 番 に 読 み 上 げられた 各 局 の 中 継 リレーで も 避 難 勧 告 エリアの 地 名 が 列 挙 された NHKの 報 道 従 事 者 に 対 する 聞 き 取 り 調 査 では 視 聴 者 に あなたも 当 事 者 ですよ ということを 知 らせるために 意 識 的 に 地 名 を 使 っ た とする 証 言 が 得 られた(Sample No.25) ここで 情 報 のローカリティは 登 場 する 地 名 が 個 別 具 体 的 であればあるほど 効 果 的 にリアリティを 構 築 できる 傾 向 があることを 想 起 しておきたい 1938 年 アメリカでラジ オドラマの 放 送 によって 火 星 人 が 襲 来 する との 噂 が 集 団 的 なパニックを 引 き 起 こした 事 例 では 皆 さん ルート 23 は 使 用 しないで 下 さい とアナウンサーが 呼 びかけたとき 多 くの 住 民 が これは 本 当 の 出 来 事 だ と 感 じたという(Cantril, 1940=1971: pp.68-78) この 事 例 では 他 にも ハッチンソン リバー パークウェイ タイムズ スクエアなど 具 体 的 な 地 名 が 次 々とラジオから 聞 こえて 来 たことが ニュージャージーやニューヨーク の 住 民 およそ 100 万 人 ( 聴 取 者 は 600 万 人 と 推 定 された)に これは 事 実 だ とのリアリ ティを 構 築 する 一 因 となったと 指 摘 されている さて メディア イベントの 理 論 フレームでさらに 見 ておかなければならないのは 一 見 ローカルな 情 報 が 誰 に 届 けられようとしていたのかというベクトル( 方 向 性 )である もちろん 一 義 的 には 視 聴 者 に 向 けて 情 報 を 伝 えていた しかし 特 にローカル 局 が 担 っていた 中 継 リレーでは もうひとつ 別 のベクトルがあったことが 指 摘 できる 以 下 の トランスクリプト( 表 -Ⅱ-7-5-2)は 2 月 28 日 午 後 3 時 台 の 中 継 リレーの 一 コマ 根 室 港 からのリポートである 東 京 のスタジオから 後 続 波 の 危 険 性 を 繰 り 返 し 伝 えた 後 で 出 番 表 -Ⅱ 根 室 港 からの 中 継 リポート 根 室 市 では 津 波 に 備 えて 午 前 10 時 前 から 花 咲 港 にある 52 の 防 波 堤 を 閉 鎖 して 津 波 の 到 来 に 備 えています 漁 協 によりますと え 岸 壁 で 水 揚 げ 作 業 をしていたおよそ 10 隻 の 漁 船 が 急 遽 沖 合 に 避 難 しましたが 先 ほどから え 次 々と 港 の 中 に 戻 っています え 根 室 市 では 沿 岸 沿 岸 部 の 3 3,000 あ 3,363 世 帯 8,840 人 に 避 難 指 示 を 出 しています 根 室 市 の 花 咲 港 からお 伝 えしました

70 がまわってきた 根 室 港 の 中 継 リポートでは 沖 出 しされた 船 が 港 に 戻 って 来 たことが 淡 々 と 伝 えられていた また 防 波 堤 の 数 や 船 舶 の 数 避 難 指 示 対 象 者 の 数 を 下 1 桁 まで 間 違 えないよう わざわざ 言 い 直 してコメントしていた 以 上 をふまえると 根 室 港 からの 中 継 リレーで 使 用 された 根 室 市 の 沿 岸 部 およびそ れに 付 随 する 情 報 群 ( 防 波 堤 の 数 船 舶 の 数 避 難 指 示 対 象 者 の 数 など)は 中 央 ( 東 京 ) で 事 態 を 鳥 瞰 的 に 総 括 する 立 場 にある 人 たちがナショナルなイベントとしての 津 波 災 害 の 総 体 を 把 握 する 上 では 有 用 な 要 素 として 機 能 したものの 実 際 にそこに 居 合 わせたリア リティ ステイクホルダー( 漁 業 関 係 者 や 地 域 住 民 など)たちを 巻 き 込 んで ローカルな 状 況 下 で 具 体 的 な 対 応 行 動 を 促 すリアリティを 構 築 することに 大 きく 貢 献 したとは 言 い 難 い 中 継 リレーで 使 用 された 以 上 お 伝 えしました という 結 びのコメントが 上 述 し た 推 定 を 裏 付 けている すなわち このコメントが 以 上 東 京 のスタジオに 向 けてお 伝 えしました という 意 味 合 いになっていた 可 能 性 は 十 分 にあった (Sample No.25, No.26) さらに 本 事 象 の 緊 急 報 道 に 関 してウェザーニューズ 社 が 実 施 したアンケートでも 今 回 テレビなどで 大 々 的 に 津 波 情 報 が 取 り 上 げられましたが どう 思 いましたか? との 質 問 に 対 して 37%もの 人 が もっときめ 細 かい 情 報 が 欲 しかった と 回 答 している(ウェ ザーニューズ, 2010) 情 報 のきめ 細 かさとして 求 められていたのは 個 々 人 が 置 かれた 具 体 的 な 状 況 にとって 発 信 された 数 値 などの 情 報 がどのような 意 味 を 持 つのかといった 情 報 のローカリティ だったと 考 えられる 6 考 察 ここでは 前 節 で 指 摘 した3つの 課 題 を 取 り 上 げ このいずれもが 地 域 住 民 の 迅 速 な 避 難 を 阻 害 していた 可 能 性 があることを 指 摘 し 解 決 へ 向 けた 展 望 を 示 しておく (1) 抽 出 された3つの 課 題 3つの 課 題 をあらためて 列 挙 すると 以 下 の 通 りである ( 課 題 1)リアリティの 競 合 :チリ 地 震 津 波 をめぐるメディア イベントは バンクー バー 冬 季 五 輪 という 別 のメディア イベントと 競 合 した 上 で さらに 日 常 性 のリアリティ とも 競 合 が 生 じていた ( 課 題 2)リアリティ ステイクホルダーの 偏 り:テレビの 画 面 上 では リアリティ ステイクホルダーの 重 要 な 一 角 であるべき 避 難 対 象 住 民 は 他 のリアリティ ステイクホ ルダーと 比 較 してもそのプレゼンスが 小 さく メディア イベントの 当 事 者 として 組 み 込 まれている 程 度 が 低 かった ( 課 題 3) 情 報 のローカリティ: 緊 急 特 番 が 東 京 のスタジオを 中 心 に 展 開 されていた 結 果 確 かに 災 害 の 全 体 像 を 鳥 瞰 する 立 場 にとって 有 用 と 思 われるデータは 詳 細 に 伝 えられ たが 異 なる 地 域 性 のもとで 避 難 しなければならない 地 域 住 民 を 実 際 の 行 動 に 促 すような リアリティは 構 築 されていなかった

71 上 述 した3つの 課 題 は いずれも 放 送 の 現 場 で 踏 襲 されてきたフォーマットを 忠 実 に 履 行 した 結 果 引 き 起 こされたものであった これは 逆 に 言 えば 今 後 放 送 のフォーマ ットに 何 らかの 手 を 加 えない 限 り 問 題 の 根 本 解 決 は 図 れない 可 能 性 を 示 唆 している まず 課 題 1では Phase 1~3 のどの 局 面 においても リアリティの 競 合 があった 冬 季 五 輪 との 競 合 は 象 徴 的 であったが より 普 遍 的 な 問 題 として 考 えておかなければならない のは 日 常 性 のリアリティとの 競 合 である この 問 題 を 克 服 するためにどのような 手 立 て があり 得 たのか 本 研 究 から 示 唆 されることを 順 に 見 ていこう まず Phase 1 で 求 められていたのは すでにメディア イベントが 始 まっていること 自 体 を 多 種 多 様 なリアリティ ステイクホルダーに 知 らせること つまり 端 的 に 言 えば 気 象 庁 が 調 査 中 につき 続 報 に 注 意 せよ といった 更 新 情 報 の 感 度 を 高 めるためのメッセ ージ を 断 続 的 に 発 信 することであった 聞 き 取 り 調 査 でも 証 言 が 得 られたとおり 気 象 情 報 を 提 供 するフォーマットに 工 夫 を 施 すことで 続 報 に 対 する 注 意 喚 起 をおこなうこと は 十 分 に 可 能 であった(Sample No.25) たとえば 沿 岸 部 の 明 日 の 天 気 は 雨 津 波 避 難 が 求 められた 際 には 雨 具 をご 準 備 ください 引 き 続 き 津 波 関 連 の 続 報 にご 注 意 ください といったアナウンス コメントが 考 えられる メディア イベントにおけるリアリティを 考 慮 した 臨 機 応 変 なフォーマットづくりの 重 要 性 は Phase 2 から Phase 3 に 移 行 した 局 面 に 関 する 対 応 の 評 価 からも 裏 付 けることがで きる この 時 点 でテレビ 画 面 から 警 報 エリアの 地 図 スーパーを 消 さずに 表 示 し 続 けたこと に 対 して ある 自 治 体 の 行 政 担 当 者 は まだNHKは 警 戒 を 解 かずにいてくれている と 勇 気 付 けられて 緊 張 感 を 維 持 することができたという(Sample No.8) 災 害 対 応 という 重 大 な 局 面 に 相 対 したとき 危 機 を 支 持 するリアリティが 縮 減 されないよう 工 夫 する 余 地 は メディア 内 部 の 取 り 組 みにおいてもまだあるのではないかと 考 えられる 次 に 課 題 2については メディア イベントの 理 論 フレームで 捉 え 直 すならば 実 際 に 多 種 多 様 なリアリティ ステイクホルダーが 当 事 者 となっているイベントであることを より 直 截 的 に 印 象 づける 必 要 があったと 考 えられる 今 回 のケースでは 避 難 対 象 地 区 においては 高 齢 者 や 子 供 だけでなく 若 者 でさえも 皆 当 事 者 であった 災 害 時 要 援 護 者 だけが 参 加 すればよいというイベントでは 決 してなか った メディアを 通 じてリアリティ ステイクホルダーが 互 いの 姿 を 明 示 し 合 うこと 矢 守 (2011a)が 津 波 てんでんこ や 率 先 避 難 者 の 意 義 を 論 じる 中 で 使 用 しているフレ ーズを 使 って 言 い 換 えれば 人 間 にとって 最 大 の 情 報 は 人 間 であること がなされてい れば 避 難 行 動 を 誘 発 するリアリティがより 効 果 的 に 構 築 できたのではないかと 考 える 同 じ 観 点 から 言 えば 住 民 の 姿 を 撮 影 するポイントも 避 難 所 駅 港 だけでなく そこ に 向 かう 道 中 飲 食 店 やレジャー 施 設 子 供 たちが 通 う 塾 公 園 病 院 等 々 バリエーシ ョンを 増 やす 工 夫 があってもよいだろう また 防 災 の 分 野 では 平 素 から 自 助 公 助 だけでなく 共 助 の 理 念 を 説 いている この 点 をふまえると 今 後 災 害 対 応 というメディア イベントにおいても 共 助 の 発 動

72 シーンを 明 示 する 新 たな 放 送 フォーマット すなわち リアリティ ステイクホルダーの 多 様 性 や 包 括 性 を 向 上 させるフォーマットを 積 極 的 に 採 用 することが 有 効 ではないかと 考 える 最 後 に 課 題 3については これまで 放 送 現 場 で 踏 襲 してきたフォーマットを 改 善 するこ とが 望 ましいと 考 えられる 点 が 大 きく2 点 見 つかった 1つ 目 は 数 値 の 扱 い 方 に 関 するフォーマットである 50cm の 津 波 予 想 高 さ 3 時 20 分 に 40 センチの 津 波 到 達 3,366 世 帯 に 避 難 勧 告 等 々 数 値 は 正 確 に そして 迅 速 に 伝 えられていた それは まさに 従 来 の 日 本 の 防 災 対 策 が 追 及 してきた 情 報 の 精 度 を 上 げたり 情 報 伝 達 のツールを 拡 充 したりするアプローチ に 沿 った 内 容 であったと 考 え られる しかし 放 送 で 発 信 された 数 値 の 多 くは 個 々の 視 聴 者 のローカリティとは 結 び 付 きの 弱 いものであった 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 際 NHKの 放 送 を 視 聴 していたある 津 波 の 専 門 家 でさえも ( 多 くの 数 値 情 報 を) 見 ていて 疲 れてしまった とのことだった さらに 放 送 に 従 事 したNHKのアナウンサーの 中 にも 正 直 にいえば 下 1 桁 まですべて 読 み 上 げることに 本 当 に 意 味 があったのか わからない とのことだった 今 後 は 数 値 が ローカリティに 根 ざしたリアリティを 構 築 する 上 でも 寄 与 できる より 効 果 的 なフォーマットを 探 る 必 要 がある たとえば 災 害 復 興 期 に 放 送 される 生 活 情 報 伝 達 番 組 (ライフライン 放 送 )の いわば 緊 急 避 難 時 版 などが 考 えられる また 震 災 時 帰 宅 支 援 マップ (たとえば 昭 文 社 地 図 編 集 部, 2007)のような 目 的 限 定 型 の しか しそれだけにローカルな 課 題 の 解 決 に 資 する 数 値 の 可 視 化 の 模 索 なども 考 えられよう 2つ 目 は 放 送 の 編 成 に 関 するフォーマットである 聞 き 取 り 調 査 では NHKの アナウンサーの 中 から もっと ローカル 発 ローカル 向 け の 放 送 時 間 を 確 保 したほう がよかったのではないかという 意 見 が 複 数 寄 せられた(Sample No.25, No.26) また 記 者 の 中 にも 取 材 のリソースさえあれば もっとローカル 枠 を 増 やしても 良 かったかもしれ ない との 回 答 があった この 点 は 先 に 挙 げた 数 値 の 課 題 と 通 底 している 指 摘 であ ると 考 えられる すなわち もっとローカル 枠 が 確 保 できていれば そこでローカルに 根 ざした 情 報 として 数 値 を 生 かすことができたのではないかという 問 題 認 識 である ま た たとえば 土 木 学 会 東 北 支 部 のシンポジウム(2010)で 成 功 事 例 として 報 告 されてい たような 自 治 体 の 首 長 が 自 らの 肉 声 で 地 域 住 民 向 けに 注 意 喚 起 をおこなう 取 り 組 み を ローカル 枠 を 使 って 伝 達 することも 考 えられよう (2) 放 送 の 基 本 フォーマットからの 逸 脱 の 可 能 性 ここまで メディア イベントの 理 論 フレームに 即 して これは 避 難 を 要 する 事 態 で ある とのリアリティを 共 同 構 築 するという 目 標 にとって 課 題 となっている 事 柄 とその 解 消 法 について 考 察 してきた ここでは 金 井 片 田 (2010)による 注 目 すべき 指 摘 をベー スに さらに 一 歩 進 んで これまで 災 害 報 道 ( 放 送 )が 拠 って 立 つ 基 本 フォーマットとさ

73 れてきたものを 見 直 すことによって 事 態 の 改 善 を 図 る 可 能 性 について 考 えておこう 金 井 らは アナウンサーが 津 波 情 報 を 伝 える 最 中 に テレビなど 見 ていないで 早 く 避 難 してください と 言 ってみる と 人 々が 普 段 と 異 なる 対 応 をとることができるのでは ないかとのアイデアを 提 起 している アナウンサーが テレビ 視 聴 そのものの 放 棄 を 促 すことは 個 別 の 災 害 情 報 の 内 容 に 関 してその 正 確 性 や 迅 速 性 を 向 上 させるアプローチとは 明 らかに 性 質 を 異 にしている それ は これまでの 災 害 情 報 伝 達 の 基 本 的 な 構 造 (フォーマット)を 大 きく 変 容 そして 逸 脱 するものである しかし この フォーマットの 変 容 逸 脱 こそが 津 波 避 難 をめぐる リアリティを たぶん 自 分 は 大 丈 夫 だろう といった いわゆる 正 常 化 の 偏 見 ( 中 森, 2002; 福 田 関 谷, 2005; 片 田 児 玉 桑 沢 越 村, 2005; 矢 守, 2009; 矢 守, 2011b) が 支 配 する 様 相 から 大 きく 転 換 させる 潜 在 力 を 持 っていると 考 える 実 際 キャントリルが 研 究 したラジオドラマのケースが すでにこの 点 を 裏 付 けている この 放 送 の 中 では キーマンとなる 専 門 家 が 被 害 現 場 の 調 査 中 に 行 方 不 明 になったり 何 の 権 威 ある 説 明 もみなさんに 申 し 上 げられません と 発 言 したり 随 所 でフォーマットを 破 っていたことが かえってより 多 くの 人 びとを 引 き 付 けた(Cantril, 1940=1971: pp ) 金 井 らの 指 摘 と 同 じ 趣 旨 の 見 解 は NHKの 報 道 従 事 者 に 対 する 聞 き 取 り 調 査 でも 得 ら れた(Sample No.21) テレビ 視 聴 をやめるよう 促 し ラジオやワンセグ データ 放 送 や ネットなどで 情 報 が 取 得 できることを もっと 視 聴 者 に 訴 えかけてもよかったのではない かという 内 容 だった そして たとえば 次 のようなアナウンス コメントの 案 が 提 起 された 沿 岸 部 の 皆 さん 家 でテレビを 見 ていては 危 険 です 続 きは 避 難 所 でご 覧 ください 避 難 所 に 設 備 が 無 い 場 合 は ワンセグ 携 帯 などをお 持 ちのかたから 新 しい 情 報 を 得 るように してください このような 呼 びかけは 家 でテレビを 受 動 的 に 見 るだけの 視 聴 フォーマットを 離 れて 移 動 しながら 情 報 の 受 発 信 をおこなう 能 動 的 な 人 を 増 やすことにつながるだろう そうな れば 情 報 を 取 得 しながら 実 際 に 避 難 する 人 々を 目 撃 する 人 々を 増 やすことにもつながる 前 述 の 通 り これは リアリティの 共 同 構 築 に 参 画 するリアリティ ステイクホルダーを 増 やすことを 意 味 している このように 従 来 の 災 害 報 道 ( 放 送 )の 基 本 フォーマットを 変 容 逸 脱 することに は メディア イベントの 基 底 的 構 造 を 変 容 させ 効 果 的 な 避 難 行 動 を 喚 起 できる 潜 在 力 が 秘 められていると 考 えられる もちろん このような 方 法 に 対 して 一 度 きり しか 使 えないのではないか 無 用 の 混 乱 を 喚 起 する 可 能 性 はないかといった 疑 義 を 差 し 挟 む 余 地 はあるだろう しかし 日 本 社 会 を 次 に 襲 うと 懸 念 されている 海 溝 型 地 震 に 伴 う 津 波 災 害 注 は まさに 百 年 に 一 度 の 危 機 である 1) それを 切 り 抜 けるための 方 策 については 相 当 程 度 破 格 なものも 含 めて 幅 広 く 議 論 の 俎 上 に 載 せる 必 要 があると 思 われる

74 (3)まとめと 今 後 の 課 題 本 章 では 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 際 のNHKの 災 害 報 道 を 題 材 にして メディア イ ベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 理 論 フレームで 照 射 された 主 な 論 点 を 検 討 した しかし 数 多 くの 限 界 を 抱 えていると 言 わざるをえない まず リアリティ ス テイクホルダーが 多 様 であることを 指 摘 しながらも 時 間 的 経 済 的 な 制 約 もあって 必 ずしも 十 分 多 様 な 調 査 サンプルを 対 象 に 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 することができなかった また マスメディア 報 道 についても NHKのテレビ 報 道 に 限 り 検 証 をおこなったので 組 織 内 部 に 閉 じた 議 論 が 含 まれている 可 能 性 もある 今 後 は 民 間 放 送 や 他 のメディアの 実 践 報 告 などと 照 らし 合 わせて より 立 体 的 な 視 座 を 築 いていく 必 要 がある さらに チ リという 遠 地 で 起 きた 巨 大 地 震 による 津 波 災 害 を 対 象 にしている 点 も 理 論 の 一 般 化 を 阻 む 壁 となっているかもしれない 台 風 や 火 山 災 害 など 他 の 災 害 における 知 見 によっても 注 本 研 究 の 理 論 フレームの 有 用 性 を 検 証 していかなければなるまい 2) 謝 辞 : 関 西 および 四 国 において 大 勢 の 行 政 職 員 や 地 域 住 民 の 皆 さま 港 湾 関 係 者 の 皆 さ まに 聞 き 取 り 調 査 を 実 施 させて 頂 きました この 場 を 借 りて 深 く 感 謝 申 し 上 げます また NHKの 気 象 災 害 担 当 記 者 の 皆 さま アナウンサーの 皆 さまにも 聞 き 取 り 調 査 に ご 協 力 いただきました 重 ねて お 礼 を 述 べさせていただきます 注 1) 本 章 の 冒 頭 にも 記 したとおり 本 章 のもとになった 査 読 論 文 は 東 日 本 大 震 災 の1 年 ほ ど 前 に 書 かれた 百 年 に1 度 のクラスの 災 害 リスクを 懸 念 しての 結 語 であったが 残 念 ながら 千 年 に1 度 のクラスの 災 害 に 先 に 見 舞 われてしまった 注 2) 他 の 災 害 を 対 象 として 本 研 究 が 提 起 する 理 論 フレームの 有 用 性 の 検 証 作 業 に 入 ろうとした 矢 先 東 日 本 大 震 災 が 起 きた 本 章 と 同 じく 津 波 災 害 ではあるが 理 論 フレームの 妥 当 性 をいち 早 く 確 認 できたこともあった 次 章 で 詳 しく 述 べる

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76 第 8 章 緊 急 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2011 年 東 日 本 大 震 災 における 津 波 来 襲 時 のテレビ 報 道 の 内 容 分 析 1 はじめに 前 章 に 記 したとおり 本 研 究 を 進 めるなかでチリ 地 震 津 波 が 起 き そして 東 日 本 大 震 災 が 起 きてしまった 東 日 本 大 震 災 では 再 び 津 波 来 襲 までの 猶 予 時 間 において 災 害 情 報 をめぐる 課 題 を 残 してしまった 本 章 では 本 研 究 が 提 起 するアプローチ すなわち メディア イベントをめぐるリア リティの 共 同 構 築 モデル で 事 態 をまなざすことによって 東 日 本 大 震 災 の 緊 急 報 道 の 課 題 を 抽 出 する 2 問 題 : 繰 り 返 された 情 報 あれど 避 難 せず 2 万 人 近 い 死 者 行 方 不 明 者 ( 警 察 庁, 2011a)を 出 した 東 日 本 大 震 災 では 死 因 の9 割 以 上 を 水 死 が 占 めた( 警 察 庁, 2011b) この 集 計 結 果 は これまで 経 験 したことがな いほどの 強 く 長 い 揺 れに 見 舞 われたにもかかわらず 大 勢 の 人 が 適 切 に 避 難 することがで きなかった 可 能 性 を 示 唆 している では 津 波 来 襲 時 避 難 行 動 を 促 すための 災 害 情 報 を めぐる 状 況 は 一 体 どのようなものであったのか 被 災 地 では 地 震 発 生 直 後 から 広 範 囲 にわたって 停 電 していたことが 政 府 の 発 表 など によって 示 されている(たとえば 経 済 産 業 省, 2011) しかし そうしたなかであっても 何 らかのメディアを 通 じて 危 機 を 知 らせる 情 報 を 入 手 していた 人 が 少 なくなかったと 考 え られる 被 災 者 に 直 接 面 接 調 査 をおこなった 複 数 の 報 告 によれば 津 波 襲 来 の 危 機 に 直 面 した 人 々の 多 くは 何 らかの 情 報 を 得 ていたことが 示 唆 されている たとえば 環 境 防 災 総 合 政 策 研 究 機 構 が 震 災 から1ヵ 月 余 り 後 に 釜 石 市 と 名 取 市 の 避 難 所 で 聞 き 取 り 調 査 した 結 果 によれば 大 津 波 の 警 報 を 聞 いた と 回 答 した 人 は 89.2%にのぼってい た( 環 境 防 災 総 合 政 策 研 究 機 構, 2011) また 内 閣 府 消 防 庁 気 象 庁 が 避 難 所 や 仮 設 住 宅 で 実 施 した 共 同 調 査 の 速 報 (2011)でも 被 災 地 の 沿 岸 住 民 の 過 半 数 は 津 波 情 報 や 避 難 の 呼 びかけ を 見 聞 きした と 答 えていた 大 津 波 の 津 波 警 報 ( 原 文 ママ) に 限 っ てみれば 岩 手 県 で87% 宮 城 県 で79%が 見 聞 きした という 結 果 となっていた 情 報 を 入 手 した 手 段 に 関 しては 環 境 防 災 総 合 政 策 研 究 機 構 の 調 査 では 防 災 無 線 (43.9%)が 圧 倒 的 に 多 く 以 下 ラジオ (24.3%) 消 防 車 か 役 場 の 広 報 車 (16.8%) 家 族 や 近 所 の 人 (13.1%) テレビ (7.5%) 携 帯 電 話 のワンセグ 放 送 (4.7%)な どとなっていた サーベイリサーチセンターの 調 査 でも ほぼ 同 様 の 順 位 や 割 合 になって 注 いた(サーベイリサーチセンター, 2011) 1) このようにして 津 波 来 襲 時 の 災 害 情 報 をめぐる 状 況 を 概 観 してみると 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 際 にも 強 く 問 題 視 されたような 情 報 あれど 避 難 せず (たとえば 近 藤 矢 守 奥 村, 2011; 金 井 片 田, 2011)と 酷 似 した 事 態 が 被 災 地 の 随 所 で 出 現 していた 可 能 性

77 を 指 摘 することができる 迅 速 に 届 いたはずの 情 報 が 渦 中 の 人 々にとっては 切 迫 感 を 欠 いたものであったことは たとえば 次 のエピソードにも 象 徴 的 に 示 されている 戸 羽 太 陸 前 高 田 市 長 は 地 震 直 後 に 庁 舎 から 屋 外 に 出 て 庁 舎 前 の 駐 車 場 で 職 員 たち と 今 後 どうすればよいか 話 し 合 っていた そこには 避 難 してきた 住 民 たちも 集 まってい た 市 長 の 回 顧 録 によれば 駐 車 場 にいたおかげで 唯 一 生 きていたカーラジオから 情 報 を 得 ることができました しかし この 段 階 ではまだ 本 当 に 大 津 波 が 来 ると 思 っていた 市 民 は 少 なかったと 思 います ( 戸 羽, 2011: p.24)とのことであった このあとすぐに 大 津 波 が 庁 舎 を 襲 い 屋 上 に 登 ることができた 人 々 以 外 は 難 を 逃 れることができなかった という 3 対 象 :NHK 総 合 テレビの 緊 急 報 道 リアリティの 共 同 構 築 のダイナミズムを 検 証 する 際 には 本 来 多 様 な リアリティ ステイクホルダー の 相 互 作 用 も 含 めて メディア イベント の 構 造 をトータルに 分 析 する 必 要 がある しかしながら 関 連 するすべての リアリティ ステイクホルダー か ら 網 羅 的 にデータを 集 めた 上 で 考 察 をおこなうことは 極 めて 困 難 であるため 本 研 究 では まず 緊 急 報 道 のありよう(メディアのふるまい)に 焦 点 をしぼって 検 討 することにした 分 析 対 象 としては NHK 総 合 テレビジョンの 緊 急 報 道 を 代 表 的 なサンプルとして 選 んだ その 理 由 は 下 記 のとおり 大 きく4 点 指 摘 することができる 1つ 目 は NHKは 災 害 対 策 基 本 法 放 送 法 上 の 指 定 公 共 機 関 であり 災 害 報 道 を 重 要 な 使 命 として 位 置 づけている( 近 藤, 2011) 点 が 挙 げられる 他 のメディアによって 配 信 された 情 報 の 価 値 を 過 小 に 評 価 することは もちろん 避 けなければならないが 現 代 日 本 社 会 の 法 制 度 上 NHKが 特 に 大 きな 重 要 性 を 帯 びているメディアである 点 を 軽 視 することはできないと 考 える 2つ 目 は 被 災 地 で 大 規 模 停 電 があったにもかかわらず なお NHKの 放 送 が 人 々 の 行 動 に 影 響 を 与 えていた 事 例 が 散 見 される 点 が 挙 げられる たとえば 岩 手 県 庁 では 地 震 発 生 後 も 自 家 発 電 によってテレビが 視 聴 できたので 広 報 担 当 者 は NHKテレビを 見 ながら ツイッターで 県 民 に 注 意 を 促 す 情 報 を 配 信 していた と 述 べている( 筆 者 ら の 聞 き 取 り 結 果 による) 同 様 に 宮 城 県 庁 内 の 災 害 対 策 本 部 でも テレビモニターでは NHKの 放 送 を 流 していた また たとえば 宮 城 県 山 元 町 の 中 浜 小 学 校 のように 校 長 がテレビによって 津 波 襲 来 までの 猶 予 時 間 が 無 いことを 知 り 適 切 な 避 難 行 動 に 結 び 付 け たケースもあった(たとえば 伊 藤, 2011) さらに 宮 城 県 東 松 島 町 の 大 曲 小 学 校 では ワンセグで 津 波 の 危 機 を 知 った 住 民 が 学 校 に 知 らせたことで 体 育 館 から 上 層 階 に 避 難 場 所 を 替 え 難 を 逃 れることができたケースがあった(テレビ 朝 日, 2011) これらの 事 例 か ら 影 響 の 度 合 いを 鑑 みると テレビで 直 接 情 報 を 取 得 した 人 が1 割 に 満 たなかったか らといって その 効 果 を 過 小 に 評 価 することは 適 切 ではないと 考 える 3つ 目 は 上 記 に 密 接 に 関 連 する 事 項 であるが そもそも 停 電 という 事 態 は デバ

78 イスの 限 界 を 招 いた 原 因 であって メディアの 限 界 を 示 したものではない 点 が 挙 げられる 現 在 充 電 器 付 きのテレビが 市 販 されており 停 電 後 も 数 時 間 視 聴 することができるデ バイスが 流 通 している また ワンセグに 関 していえば ipad のようなポータブルのデバ イスでも チューナーを 接 続 すればテレビの 放 送 を 受 信 することができる こうした 実 社 会 における 技 術 革 新 をふまえると 今 後 災 害 時 におけるテレビ(NHKなど)の 重 要 性 がより 高 まる 可 能 性 を 否 定 することはできないと 考 える 4つ 目 は 東 日 本 大 震 災 を 経 た 日 本 社 会 において 現 に 震 災 関 連 情 報 におけるNHK テレビの 信 頼 度 が 相 対 的 に 見 て 非 常 に 高 くなっているという 点 が 挙 げられる 野 村 総 合 研 究 所 が 震 災 後 に 調 査 した 結 果 (2011)によれば 他 のメディアを 大 きく 引 き 離 して 最 も 重 視 するメディア 情 報 源 となっていたのが テレビ 放 送 (NHK) であった このことをふまえれば 次 の 広 域 災 害 に 備 える 上 でも NHK(テレビ)を 重 要 な 主 体 ( リ アリティ ステイクホルダー になるべき 主 体 )のひとつであると 位 置 づけて その 緊 急 報 道 のありかたを 検 証 することに 一 定 の 意 義 を 見 出 すことができると 考 える 以 上 4 点 が 本 研 究 が NHKのテレビ 放 送 をサンプルとして 選 んだ 理 由 である しか し もちろん NHKテレビだけが 重 要 であると 主 張 するものでは 決 してない 本 研 究 の 成 果 が 災 害 対 応 時 において 他 のメディアや さらには 他 の 主 体 のふるまいに 関 し ても 適 用 できる 部 分 が 多 い 点 に 関 しては 第 5 節 ~ 第 7 節 の 分 析 をふまえて 第 8 節 にお いてあらためて 考 察 する 4 方 法 : 内 容 分 析 と 聞 き 取 り 調 査 本 震 災 においてNHKは 地 震 が 発 生 した 直 後 の 午 後 2 時 46 分 50 秒 国 会 中 継 の 中 で 緊 急 地 震 速 報 を 出 した( 瓜, 2011) その 後 国 会 中 継 を 中 断 して 緊 急 報 道 を 開 始 し た そして 以 後 3 月 18 日 まで 全 面 的 な 災 害 報 道 を 継 続 した(NHK 放 送 文 化 研 究 所 メ ディア 研 究 部 番 組 研 究 グループ, 2011) 震 災 当 日 の 視 聴 率 は 他 のどの 民 間 放 送 よりも 高 く 当 初 は 15~20% 台 で 推 移 していた NHKの 放 送 基 準 では 震 度 6 以 上 の 地 震 が 発 生 した 場 合 や 津 波 警 報 大 津 波 警 報 が 出 た 場 合 には すべての 放 送 を 中 断 して 緊 急 報 道 がおこなわれる( 冷 水, 2010) 本 震 災 で は 午 後 2 時 48 分 17 秒 に テレビ ラジオの 全 8 波 の 放 送 を 緊 急 報 道 に 切 り 替 えた( 瓜, 2011) このとき 全 中 脱 禁 と 呼 ばれる 措 置 が 取 られた( 筆 者 らの 聞 き 取 り 結 果 によ る) これは すべての 地 方 局 が 原 則 として 東 京 発 の 全 国 向 け 放 送 をそのまま 受 けなけ ればならない( 全 国 に 中 継 される 放 送 を 脱 することが 禁 じられる) 体 制 が 敷 かれたこと を 意 味 する ラジオでは 総 合 テレビジョンで 放 送 している 音 声 が そのまま 流 さる 状 態 となった( 筆 者 らの 聞 き 取 り 結 果 による) 以 下 に 分 析 の 手 続 きを 記 す まず 緊 急 地 震 速 報 が 放 送 された 時 点 から 90 分 ぶん のテレビの 録 画 データを 使 用 して 書 き 起 こしデータを 作 成 した 次 に 画 面 にどんなこ とが 映 し 出 されていたか 10 秒 ぶんごとにコーディング 作 業 をおこなった 10 秒 間 の 途 中

79 表 -Ⅱ 聞 き 取 り 調 査 の 概 要 (2011 年 ) No. 対 象 者 の 属 性 (いずれも 震 災 当 時 ) 調 査 日 1 NHK 大 阪 放 送 局 ディレクター 6 月 1 日 2 NHK 大 阪 放 送 局 ディレクター 同 上 3 NHK 大 阪 放 送 局 アナウンサー 同 上 4 NHK 福 島 放 送 局 アナウンサー 8 月 24 日 5 NHK( 東 京 渋 谷 )アナウンサー 同 上 6 NHK 仙 台 放 送 局 アナウンサー 同 上 7 NHK 仙 台 放 送 局 アナウンサー 8 月 25 日 8 NHK 大 阪 放 送 局 アナウンサー 同 上 9 NHK 大 阪 放 送 局 アナウンサー 12 月 14 日 10 NHK 大 阪 放 送 局 アナウンサー 同 上 11 NHK 大 阪 放 送 局 アナウンサー 同 上 で 画 面 の 映 像 が 切 り 替 わった 場 合 には 映 し 出 されていた 秒 数 が 多 いほうのカテゴリーで 分 類 した 最 後 に コーディングしたデータを それぞれ30 分 ずつ 3つのフェーズにわ けて 分 析 することにした 第 1フェーズ( 地 震 発 生 時 ~30 分 後 )は 岩 手 県 や 福 島 県 の 港 に 人 命 を 奪 うほどの 大 きな 津 波 が 襲 来 するまでの おおよその 時 間 帯 を 示 している 第 2フェーズ(30 分 ~60 分 後 )は 名 取 川 の 河 口 付 近 などに 人 命 を 奪 うほどの 大 きな 津 波 が 襲 来 するまでの おお よその 時 間 帯 を 示 している そして 第 3フェーズ(60 分 ~90 分 後 )は さらなる 後 続 波 や 川 の 中 流 域 に 向 かって 俎 上 した 津 波 の 危 険 性 が 増 していった 時 間 帯 を 示 している フェーズごとに 内 容 分 析 (Krippendorff, 1980=1989; 有 馬, 2007)をおこなった 放 送 ( 録 画 データ)を 対 象 とした 内 容 分 析 は 古 閑 (2011)が 指 摘 するとおり 膨 大 な 時 間 と 労 力 がかかる 上 に 熟 練 したコーダーが 必 要 となるという 困 難 性 を 伴 い そのため データの 再 現 性 に 乏 しくなるきらいがある そこで 本 研 究 では 上 述 したような 単 純 化 した 手 順 (コーディング 作 業 とフェーズ 分 け)に 従 い 分 析 をおこなうことにした また 本 研 究 では 緊 急 報 道 に 関 する 内 容 分 析 に 加 え 震 災 当 日 実 際 に 放 送 業 務 に 携 わ っていた 報 道 従 事 者 に 聞 き 取 り 調 査 をおこなった( 表 -Ⅱ-8-4-1) 特 に テレビスタジオ の 中 において どのようなリアリティが 形 成 されていたのか その 実 情 を 把 握 しておくた め 主 にアナウンサーを 対 象 とした 聞 き 取 り 調 査 をおこなった しかしながら そのサン プル 数 は ごく 限 られている また 対 象 者 の 選 定 は 紹 介 者 を 介 して 了 解 が 得 られた 人 に 会 うという 方 法 を 繰 り 返 したので 偏 りがある 点 も 留 意 しておかなければならない あ くまで 内 容 分 析 によって 示 唆 された 結 果 を 傍 証 するためのデータとして 位 置 づけておく 必 要 があると 考 える 5 結 果 : 第 1フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 1フェーズ] 第 1フェーズにおいて どのような 映 像 が 画 面 に 映 し 出 されていたのか コーディング データを 分 類 整 理 した 結 果 が 図 -Ⅱ-8-5-1である

80 200 秒,(11%) 200 秒,(11%) 750 秒,(42%) 20 秒,(1%) 宮 城 中 継 映 像 岩 手 中 継 映 像 東 京 中 継 映 像 東 京 スタジオ 図 表 画 面 その 他 480 秒,(27%) 150 秒,(8%) 図 -Ⅱ 最 初 の 30 分 間 の 映 像 内 容 宮 城 県 や 岩 手 県 からの 中 継 映 像 が 全 体 の 半 分 (50%)を 占 めており その 一 方 で 全 体 の27% 4 分 の1あまりを 東 京 の 中 継 映 像 が 占 めていたことがわかった なかでも お 台 場 のビル 火 災 の 様 子 が 画 面 に 登 場 する 頻 度 が 高 く 複 数 のカメラアングルで 撮 影 され た 映 像 によって ビルから 黒 煙 が 立 ち 上 る 様 子 が 生 々しく 伝 えられていた それに 比 べて 宮 城 県 の 気 仙 沼 港 や 岩 手 県 の 釜 石 港 をリモートコントロール カメラで 遠 望 した 映 像 は 非 常 に 静 的 であり 引 き 波 を 判 別 することが 極 めて 困 難 なもの (Sample No.3, No.5, No.6)であった 聞 き 取 り 調 査 において 地 震 発 生 直 後 の 印 象 をたずねたところ 複 数 の 聞 き 取 り 対 象 者 が ついに あの 宮 城 県 沖 地 震 が 起 きてしまったのかと 思 った と 回 答 した(Sample No.3, No.4, No.5, No.6, No.9) しかしながら 東 京 のスタジオ 内 でも かなり 激 しく 揺 れたの で これは 首 都 圏 でも 相 当 ひどい 被 害 が 出 ていることだろう という 印 象 も 早 期 に 持 っていたという(Sample No.5) そのため 東 北 地 方 に 津 波 が 迫 っていることを 早 く 伝 え なければ という 思 いと 東 京 の 被 害 状 況 も 伝 えなければ という 思 いが 競 合 することに なった(Sample No.5) そして スタジオの 外 にある 副 調 整 室 にいたメンバーの 間 では 津 波 の 注 意 喚 起 をおこないながらも 東 京 の 被 害 に 関 する 最 新 情 報 も 意 図 的 に 挟 み 込 んで いこうという 方 針 が 次 第 に 固 まっていった という(Sample No.5) 証 言 が 示 しているとおり 確 かに 第 1フェーズでは 首 都 圏 エリアの 情 報 として お 台 場 の 火 災 以 外 にも 新 橋 駅 周 辺 に 集 まった 人 々の 様 子 を 伝 えたり 都 内 の 被 害 状 況 を 警 視 庁 内 にいる 記 者 が 解 説 したり 断 続 的 に 続 報 が 伝 えられていた このときNHKは 地 震 の 揺 れに 戸 惑 いながらも 事 態 の 全 貌 をその 外 部 から 鳥 瞰 する 外 在 者 として 情 報 の 送 り 手 の 役 割 に 専 念 しようとしていたことがうかがえる 次 に 図 -Ⅱ-8-5-2は 第 1フェーズの 映 像 内 容 の 変 遷 を 見 るために 集 計 データを10 分 ごとの 柱 状 図 で 表 したものである これを 見 ると 当 初 宮 城 県 の 中 継 映 像 が 最 も 優 勢 だったところに 地 震 発 生 から20 分 以 降 は 岩 手 県 の 中 継 映 像 が 加 わってきたこと しか

81 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 0 分 10 分 10 分 20 分 20 分 30 分 宮 城 中 継 映 像 岩 手 中 継 映 像 東 京 中 継 映 像 東 京 スタジオ 図 表 画 面 その 他 図 -Ⅱ 分 間 ごとの 映 像 内 容 の 推 移 表 -Ⅱ 東 北 地 方 における 最 初 の 出 番 ( 書 き 起 こしデータ) NHK 仙 台 放 送 局 のスタジオです え 先 程 の 非 常 に 大 きな 揺 れを 感 じました 今 も 度 々ス タジオの 中 が 揺 れています え ご 覧 頂 いているのは 現 在 の 気 仙 沼 市 の じょこっ 状 況 です え 気 仙 沼 湾 の 状 況 です え 停 泊 している う 船 が 見 えますが え 度 々 あの 画 面 が 揺 れ ているのがわかると 思 います 今 NHK 仙 台 のスタジオでも 大 きな 揺 れを 感 じています え 天 井 に 吊 り 下 げられている あの 照 明 もですね 非 常 に 大 きな あ 音 を 立 てて 揺 れたりする 時 もあるんですが え こちら 変 わって 石 巻 市 の 状 況 です( 以 下 略 ) しそれを 上 回 る 勢 いで 東 京 の 中 継 映 像 が 増 えていったことがわかる これは 東 北 地 方 の 情 報 が 集 まりにくかったことに 比 べ 首 都 圏 エリアの 情 報 のほうが 東 京 のニュース センターに 集 まりやすかった 可 能 性 を 示 唆 している 東 京 のテレビスタジオをベースに 情 報 発 信 する 形 式 から はじめて 東 北 地 方 の 放 送 局 に バトンが 渡 された( 東 北 発 全 国 向 け)のは 第 1フェーズがほぼ 終 わりを 迎 えようとす る 地 震 発 生 からおよそ27 分 後 のことだった 最 初 に 出 番 がまわってきたのは 仙 台 放 送 局 であった この 時 に 実 際 にアナウンサーがしゃべった 内 容 を 書 き 起 こしたデータの 一 部 を 表 -Ⅱ-8-5-1に 示 す これを 読 み 返 すと 仙 台 放 送 局 から 東 北 地 方 の 住 民 に 向 けて 直 接 避 難 を 呼 びかける のではなく たとえば 今 も 度 々スタジオの 中 が 揺 れています 停 泊 している う 船 が 見 えます などのように あくまで 東 京 に 向 けて 現 場 の 様 子 を 実 況 する 構 えに 徹 して いたことが 推 察 される NHKを 含 む 日 本 のマスメディアは 情 報 が 一 度 東 京 に 集 積 されてから 地 方 に 配 信 さ

82 れるという いわば 東 京 中 心 垂 直 統 合 の 構 造 を 持 っている( 宮 台 飯 田, 2011) 聞 き 取 り 調 査 によれば 全 体 状 況 に 関 する 情 報 の 集 約 や 視 聴 者 に 対 する 呼 びかけは 東 京 のスタジオが 一 元 的 におこない 地 方 局 は 東 京 のオペレーションに 資 する 情 報 を あげ る ことに 徹 する 役 割 分 担 がある (Sample No.3, No.6, No.9)という 従 来 から 踏 襲 さ れてきた 形 式 (フォーマット)のもとで 本 震 災 の 緊 急 報 道 が 構 成 されていたことが 聞 き 取 り 調 査 の 結 果 からも 裏 付 けられた 仙 台 放 送 局 も 東 京 のニュース センターと 同 様 に 事 態 の 全 貌 を 鳥 瞰 的 に 把 握 しよう とする 外 在 者 の 立 場 で 純 然 たる 情 報 の 送 り 手 しかも その 主 たる 送 り 先 は 東 京 だったとみられる の 一 翼 を 担 っていたと 概 括 することができよう (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 1フェーズ] 続 いて 今 度 は 第 1フェーズの 音 声 情 報 に 着 目 して 書 き 起 こしデータの 分 析 作 業 をお こなった 落 ち 着 いて 行 動 して 下 さい 家 具 の 転 倒 に 気 を 付 けて 下 さい など 具 体 的 な 行 動 を 指 示 した 内 容 の 呼 びかけコメント を 抽 出 して 出 現 度 数 をカウントした( 図 - Ⅱ-8-5-3) 第 1フェーズでは 地 震 の 揺 れに 関 する 注 意 喚 起 が 数 多 く 見 られるが(たとえば 強 い 揺 れに 注 意 して 下 さい 身 の 安 全 を 確 保 して 下 さい など) やはり 津 波 に 対 する 早 期 警 戒 を 呼 びかける 内 容 が 最 も 多 かった 高 台 ( 高 所 ) 避 難 の 呼 びかけ は 平 均 して2 分 に1 回 以 上 のペースでおこなわれていたことがわかった 次 に この 呼 びかけコメント の 出 現 度 数 の 変 遷 を 5 分 ごとの 推 移 データで 見 てみ る( 図 -Ⅱ-8-5-4) すると 当 初 は 呼 びかけコメント は 頻 繁 に 発 せられていたが 地 震 発 生 から15 分 を 海 岸 河 口 に 近 づかない 高 台 ( 高 所 ) 避 難 家 具 転 倒 落 下 物 強 い 揺 れに 注 意 身 の 安 全 (けが 足 もと) 火 の 始 末 落 ち 着 いて 行 動 情 報 取 得 津 波 の 後 続 波 余 震 警 戒 その 他 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 種 類 別 の 出 現 度 数 ( 回 )

83 ~5 分 ~10 分 ~15 分 ~20 分 ~25 分 ~30 分 海 岸 河 口 に 近 づかない 高 台 ( 高 所 ) 避 難 家 具 転 倒 落 下 物 強 い 揺 れに 注 意 身 の 安 全 (けが 足 もと) 火 の 始 末 落 ち 着 いて 行 動 情 報 取 得 津 波 の 後 続 波 余 震 警 戒 その 他 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 出 現 度 数 の 時 間 推 移 過 ぎると その 数 は 激 減 して さらにその 後 は 呼 びかけが 全 くおこなわれていない 呼 びかけの 空 白 の 時 間 帯 があったことがわかった 詳 細 を 見 てみると 地 震 発 生 14 分 後 か ら21 分 40 秒 後 までの 合 計 7 分 40 秒 間 が 呼 びかけの 空 白 となっていた この 時 間 帯 にどのような 放 送 がおこなわれていたのか 録 画 データをもとに 検 証 した 結 果 1 スキップバック レコーダー ( 地 震 発 生 の 直 前 に 遡 って 地 震 発 生 の 瞬 間 の 映 像 を 見 ることができる NHKが 開 発 した 映 像 記 録 装 置 )の 映 像 紹 介 2お 台 場 の 火 災 の 様 子 を 実 況 3 宮 城 県 七 ヶ 浜 町 役 場 の 総 務 課 長 に 電 話 インタビュー 以 上 3つの 項 目 であっ たことがわかった 1では アナウンサーは 画 面 に 映 し 出 された 録 画 映 像 の 情 景 を 描 写 することしかでき ていなかった 2では 火 災 の 様 子 を 実 況 していたため 津 波 避 難 の 呼 びかけを 挿 入 することは そも そも 困 難 であったと 推 察 される 3は 確 かに 東 北 地 方 の 沿 岸 部 の 自 治 体 ではあるが インタビューの 内 容 が 周 りの 被 害 状 況 を 尋 ねるなどのやりとりに 終 始 していたため まだ 情 報 が 入 ってきていません ( 書 き 起 こしデータより)といった 事 実 を 確 認 することしかできていなかった もちろん 直 截 的 な 呼 びかけコメント が 無 かったからといって 注 意 喚 起 に 何 ら 結 び 付 かなかったと 断 定 するのは 早 計 である たとえば スキップバック レコーダー の 映 像 を 見 れば その 揺 れ 方 の 激 しさから 次 に 起 きる 危 機 的 な 事 態 を 想 起 できた 人 がいた かもしれない また お 台 場 の 火 災 であっても 近 隣 の 住 民 にとっては 有 用 な 情 報 である し ビル 火 災 が 起 きるほどの 災 害 であることを 見 て 事 態 の 深 刻 さをイメージできた 人 も いたであろう

84 注 しかし 上 述 したように テレビの 音 声 は ラジオにもそのまま 流 れていた 2) つまり 音 声 だけを 聞 いていた 人 がいたことを 考 えると 第 1フェーズの 放 送 は 大 津 波 の 危 険 に 対 して 強 く 注 意 を 喚 起 する 訴 求 力 が ごく 限 られたものになっていたのではないかと 考 えられる 冒 頭 に 記 した 陸 前 高 田 市 長 の 証 言 は その 点 を 裏 付 けている また 筆 者 ら が 聞 き 取 り 調 査 した 結 果 によれば 報 道 従 事 者 であってさえも フェーズ1 の 放 送 を 視 聴 して 受 けた 印 象 として いつもと 変 わらない 津 波 中 継 が またしても 始 まったのかなと 思 った (Sample. No.1, No.10)といった 回 答 があったことは リアリティの 構 築 過 程 を 考 察 する 上 で 特 に 留 意 しておく 必 要 があると 考 える 6 結 果 : 第 2フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 2フェーズ] 図 -Ⅱ-8-6-1は 第 2フェーズ すなわち 地 震 発 生 30 分 後 から 60 分 後 までの 間 に 放 送 された 映 像 内 容 をコーディングして 分 類 整 理 したものである 宮 城 県 と 岩 手 県 のみならず 福 島 県 や 千 葉 県 の 映 像 も わずかであるが 使 用 されている 4 県 の 映 像 を 合 計 すれば 全 体 の 76%となる すでに 釜 石 港 に 大 津 波 が 来 襲 した 事 実 が 把 握 されていることから 東 北 地 方 のプレゼンスが 一 気 に 増 加 し 逆 に 東 京 のプレゼンスが 後 退 したのではないかと 考 えられる そこで 再 び 10 分 ごとの 柱 状 図 を 作 成 して 映 像 構 成 の 変 遷 を 検 証 した( 図 -Ⅱ-8-6-2) 地 震 発 生 30 分 後 から 40 分 後 までは 岩 手 県 すなわち 釜 石 港 がメインステージとなっ ていた 全 体 に 占 める 割 合 は 77%となっていた 40 分 後 から 50 分 後 では 宮 城 県 が 最 も 優 勢 (66%)となっていた 気 仙 沼 港 にある 立 体 駐 車 場 に 津 波 によって 流 されてきた 桟 橋 が 衝 突 するなどの 様 子 が 伝 えられていた 上 述 した 傾 向 をふまえると 50 分 後 から 60 分 後 に 関 しては 大 津 波 の 到 達 地 点 が 広 がっ ていくのに 合 わせて たとえば 仙 台 湾 奥 などがメインステージとなり 得 た 可 能 性 を 仮 定 し 110 秒, (6%) 90 秒, (5%) 230 秒, (13%) 60 秒, (3%) 80 秒, (4%) 510 秒, (28%) 720 秒, (41%) 宮 城 中 継 映 像 岩 手 中 継 映 像 福 島 中 継 映 像 千 葉 中 継 映 像 東 京 中 継 映 像 図 表 画 面 その 他 図 -Ⅱ 地 震 発 生 30 分 ~60 分 の 映 像 内 容

85 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 30 分 40 分 40 分 50 分 50 分 60 分 宮 城 中 継 映 像 岩 手 中 継 映 像 福 島 中 継 映 像 千 葉 中 継 映 像 東 京 中 継 映 像 図 表 画 面 その 他 図 -Ⅱ 分 間 ごとの 映 像 内 容 の 推 移 ( 第 2フェーズ) ~35 分 ~40 分 ~45 分 ~50 分 ~55 分 ~60 分 海 岸 河 口 に 近 づかない 高 台 ( 高 所 ) 避 難 家 具 転 倒 落 下 物 強 い 揺 れに 注 意 身 の 安 全 (けが 足 もと) 火 の 始 末 落 ち 着 いて 行 動 情 報 取 得 津 波 の 後 続 波 余 震 警 戒 その 他 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 出 現 度 数 の 時 間 推 移 てみることができる しかしながら 録 画 データを 検 証 してみると 確 かに 宮 城 県 の 映 像 が 全 体 の 半 分 以 上 を 占 めてはいたが 映 像 の 量 が 顕 著 に 増 加 したのは 東 京 の 中 継 映 像 だ った この 時 間 帯 に 伝 えられていたのは 九 段 会 館 の 天 井 落 下 事 故 現 場 をヘリコプターで とらえた 中 継 映 像 だった (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 2フェーズ] 第 1フェーズで 検 討 したのと 同 様 に 第 2フェーズでも 呼 びかけコメント の 分 析 を おこなった 出 現 度 数 の 変 遷 を 5 分 ごとにグラフ 化 した( 図 -Ⅱ-8-6-3)

86 海 岸 河 口 に 近 づかない 高 台 ( 高 所 ) 避 難 家 具 転 倒 落 下 物 強 い 揺 れに 注 意 身 の 安 全 (けが 足 もと) 火 の 始 末 落 ち 着 いて 行 動 情 報 取 得 津 波 の 後 続 波 余 震 警 戒 その 他 図 -Ⅱ 呼 びかけコメントの 種 類 別 の 出 現 度 数 ( 回 ) 地 震 発 生 から 30 分 を 経 過 するその 直 前 に 岩 手 県 の 釜 石 港 に 大 津 波 が 浸 入 したことから 報 道 従 事 者 の 間 では 一 気 に 緊 迫 感 が 高 まり ここで( 感 情 の)スイッチが 入 った (Sample No.5, No.9)との 証 言 も 得 られた 呼 びかけコメント の 回 数 は 30 分 過 ぎ 頃 には 一 旦 増 加 していた その 後 は やや 回 数 は 落 ちるが コンスタントに 呼 びかけが 続 けられてい たことがわかった 次 に 呼 びかけコメント の 内 容 別 に 出 現 度 数 を 見 てみる( 図 -Ⅱ-8-6-4) すると 呼 びかけの 内 容 は 高 台 ( 高 所 ) 避 難 と 身 の 安 全 確 保 に 収 斂 してきていたことが わかった ただし 回 数 は 少 ないとはいえ その 他 に 該 当 する 呼 びかけコメント のバリエー ションが 第 2フェーズでは 多 岐 に 渡 っていた 具 体 的 には がけ 崩 れに 注 意 して 下 さ い や 道 路 の 陥 没 にも 注 意 して 下 さい といった 内 容 である 一 般 的 抽 象 的 な 文 脈 の 中 において これらの 呼 びかけコメント を 受 け 止 めようとすると 実 に 様 々な 事 柄 に 注 意 を 払 わなければならず かえって 注 意 は 拡 散 していく( 津 波 避 難 という 焦 点 が ぼや けていく) 可 能 性 があったのではないかと 推 察 することができる こうした 仮 説 を 傍 証 す るものとして 聞 き 取 り 調 査 においても どの 情 報 も 大 事 であることはよくわかるのだが もっと 津 波 避 難 に 集 中 して 放 送 内 容 を 組 み 立 てたほうがよいのではないかと 感 じていた (Sample No.5)と 回 答 した 人 もいた 以 上 第 2フェーズにおいて 東 京 の 中 継 映 像 が 増 加 した 時 間 帯 があったことや 注 意 喚 起 の 種 類 が 多 岐 に 渡 ったことから NHKが 冷 静 沈 着 な 外 在 者 の 立 場 にあって 事 態 の 全 貌 をヌケ モレなくすべて 伝 える 情 報 の 送 り 手 の 役 割 を 担 い 続 けようとしてい たと 概 括 することができる

87 10 秒, (1%) 40 秒, (2%) 80 秒, (4%) 140 秒,( 8%) 70 秒, (4%) 宮 城 中 継 映 像 千 葉 茨 木 中 継 映 像 北 海 道 青 森 中 継 映 像 東 京 中 継 映 像 東 京 スタジオ その 他 1460 秒, (81%) 図 -Ⅱ 地 震 発 生 60 分 ~90 分 の 映 像 内 容 7 結 論 : 第 3フェーズの 緊 急 報 道 の 内 容 分 析 (1) 映 像 内 容 の 分 析 結 果 [ 第 3フェーズ] 第 3フェーズに 関 しても まず 映 像 内 容 をコーディングして 分 類 整 理 をおこなっ た( 図 Ⅱ-8-7-1) この 時 間 帯 になると 北 海 道 青 森 県 千 葉 県 茨 木 県 のライブ 映 像 が 使 用 されるよう になってきており 東 京 にあるニュース センターでも 広 域 災 害 であることを 十 分 意 識 して 放 送 を 構 成 していたことが 推 察 される しかしながら 放 送 内 容 のバランスは 宮 城 県 の 中 継 映 像 が 81%を 占 めており その 量 は 他 をはるかに 凌 いでいた これは ヘリコプターがとらえた 名 取 川 河 口 付 近 に 津 波 が 浸 入 して 人 家 や 田 畑 を 巻 き 込 んでいく 映 像 が この 時 間 帯 に 放 送 され 続 けたことを 示 して いる こうしたなかで 第 3フェーズの 30 分 間 においては 岩 手 県 や 福 島 県 の 映 像 は 東 京 か ら 発 信 された 放 送 の 中 からは 見 いだせなかった (2) 呼 びかけコメントの 分 析 結 果 [ 第 3フェーズ] 第 3フェーズを 象 徴 する 名 取 川 河 口 付 近 の 津 波 襲 来 映 像 は 地 震 発 生 からおよそ 68 分 後 に 登 場 していた それまでの8 分 間 (60 分 後 ~68 分 後 )は スタジオに 記 者 が 出 演 し て 巨 大 地 震 発 生 のメカニズムを 解 説 していた その 間 に アナウンサーが 呼 びかけコ メント を 発 した 回 数 は わずか2 回 だった 録 画 データを 見 ると 名 取 川 河 口 付 近 の 津 波 襲 来 映 像 が 伝 えられ 始 めてからは アナ ウンサーだけでなく 出 演 していた 記 者 による 呼 びかけもおこなわれるようになっていた 続 いて 気 象 庁 で 会 見 が 始 まったことから 名 取 川 河 口 付 近 の 映 像 をメインに 据 えて そこ

88 に 気 象 庁 担 当 者 による 呼 びかけの 音 声 を 重 ねて 放 送 するようにしていた さらにその 後 スタジオには 大 学 教 授 が 出 演 して 津 波 の 威 力 や 危 険 性 を 解 説 するのに 併 せて アナウン サーと 共 に 津 波 避 難 の 呼 びかけをおこなっていた 津 波 避 難 に 関 する 呼 びかけコメント は 第 1フェーズで 合 計 31 回 第 2フェーズ で 23 回 あったのに 対 して 第 3フェーズでは 43 回 と 最 も 多 くなっていた また 第 3フェーズでは 他 のフェーズに 増 して 声 のトーンが 強 くなっていた 呼 びかけ 方 も 同 じフレーズをただ 繰 り 返 すのではなく 強 調 する 力 点 が 明 瞭 なものとなっていた たと えば 高 台 が 無 い 場 合 には 大 きなコンクリート 造 りの なるべく 上 の 階 に 逃 げてくださ い 警 報 が 解 除 されるまで 絶 対 に 戻 らないでください 津 波 はパワーがあります 大 変 危 険 です 茨 城 県 千 葉 県 方 面 でも 今 後 津 波 が 押 し 寄 せる 可 能 性 が 高 いです といったものである 8 考 察 NHKを メディア イベント の 重 要 な リアリティ ステイクホルダー のひとつ であるととらえた 上 で テレビの 緊 急 報 道 を 題 材 として 地 震 発 生 直 後 の 90 分 間 を3つの フェーズにわけて 映 像 内 容 の 全 般 的 な 推 移 そして 呼 びかけコメント の 実 施 状 況 を それぞれ 分 析 した その 結 果 初 動 期 の 緊 急 報 道 において 様 々な 検 討 課 題 があることがわかった 要 点 を 再 掲 する < 映 像 内 容 に 関 して> 被 災 の 中 心 地 となった 東 北 地 方 の 中 継 映 像 が 東 京 の 映 像 と 比 べて 少 ない 局 面 があっ た 被 害 が 次 に 及 ぶであろう 地 点 を 想 起 させる 映 像 で 放 送 を 構 成 していくというよりも すでに 被 害 が 発 生 した 地 点 の 目 に 見 える 衝 撃 を 入 手 し 得 た 映 像 によって 後 追 いで 報 告 するという 傾 向 があった < 呼 びかけコメントに 関 して> 具 体 的 な 行 動 を 呼 びかけるコメントが 全 くおこなわれていない 空 白 の 時 間 帯 が あった 東 京 から 具 体 的 な 地 域 に 向 けて 呼 びかけること 地 方 局 から 具 体 的 な 地 域 に 向 けて 呼 びかけること そのいずれもがおこなわれておらず 特 に 地 震 発 生 から 最 初 の1 時 間 は 一 般 的 抽 象 的 な 呼 びかけコメント が 断 続 的 に 繰 り 返 される 傾 向 があった 上 記 の 項 目 は いずれも NHKテレビだけに 該 当 する 検 討 課 題 であるかのようにみえ る しかしながら 本 研 究 が 提 起 した 新 たなアプローチ すなわち メディア イベント をめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル の 視 点 からとらえ 返 すと 広 域 災 害 時 における

89 様 々な 主 体 (リアリティ ステイクホルダー)のふるまいかたに 共 通 に 示 唆 を 与 える 検 討 課 題 であることがわかる 以 下 3つのポイントにしぼって 詳 述 する (1) 情 報 の ローカリティ の 早 期 確 保 の 必 要 性 渥 美 (2011)は ある 出 来 事 を 特 定 かつ 共 通 の 意 味 を 有 する 現 象 として 把 握 させる 空 間 とそれが 帯 びる 特 性 を ローカリティ と 呼 んだ 一 般 的 抽 象 的 な 情 報 は 個 別 具 体 的 な 情 報 よりも 訴 求 力 に 欠 ける 場 合 がある しか し ひとたび 情 報 の ローカリティ が 確 保 されれば リアリティ ステイクホルダー による 相 互 作 用 が 活 発 化 され リアリティの 共 同 構 築 が 促 進 されると 考 えられる このこ とは Cantril(1940=1971)の 研 究 をふまえて すでに 矢 守 近 藤 奥 村 (2010)が 2010 年 チリ 地 震 津 波 の 災 害 報 道 を 分 析 した 結 果 指 摘 したとおりである(さらに 近 藤 矢 守 奥 村, 2011) 前 章 ( 第 7 章 )でも その 要 点 をおさえた しかしながら 本 震 災 におけるNHKの 緊 急 報 道 を 分 析 した 結 果 からは 放 送 の 枠 組 み 自 体 が 東 京 中 心 に 組 み 立 てられており 情 報 の ローカリティ は 決 して 豊 かなも のになっていなかった 危 機 が 迫 る 中 で 地 方 局 は 避 難 すべき 地 元 の 住 民 (すなわち 当 該 メディア イベント における 最 も 重 要 な リアリティ ステイクホルダー たち) に 対 して 直 接 呼 びかけることなく 東 京 に 対 して 現 場 の 情 報 を あげる 役 割 に 専 念 していた もちろん 東 京 中 心 垂 直 統 合 ( 宮 台 飯 田, 2011)の 構 造 が 果 たしてきた 機 能 には 大 きな 意 義 がある 点 十 分 に 考 慮 する 必 要 がある 災 害 の 全 体 像 をいち 早 く 把 握 し 被 害 が 甚 大 な 場 所 を 洗 い 出 すためには 東 京 が 果 たしている 中 枢 機 能 は 欠 くことができない また 気 象 庁 を 起 点 として あらゆるメディアから 一 斉 に 情 報 を 配 信 することは より 多 くの 人 に 最 低 限 の 警 戒 情 報 を 知 らせる 可 能 性 を 高 めることにつながる しかしながら たとえば 近 い 将 来 起 きると 予 想 されている 東 南 海 南 海 地 震 のよう な 広 域 災 害 をイメージした 場 合 には 東 京 中 心 垂 直 統 合 の 構 造 が かえって 不 利 に 働 くことも 十 分 に 考 えうる 九 州 四 国 関 西 中 部 関 東 などが 同 時 に 被 災 すれば 容 易 に 中 枢 機 能 が 麻 痺 する 危 険 性 も 高 まり どの 地 点 のどの 危 機 を 優 先 して 伝 えればよいか 判 断 できない 事 態 を 招 くおそれもある 従 来 のフォーマットを 補 完 補 強 するためにも ロ ーカル 発 ローカル 向 け (もしくは ブロック 圏 発 ブロック 圏 向 け)のメディアに 適 宜 主 導 権 を 渡 すことができる 地 域 自 律 型 の 仕 組 みも 充 実 化 しておき ローカリティ 豊 か な 危 機 感 を 形 成 できるような 新 たなフォーマット をも 準 備 しておいたほうが 全 体 の リスクを 低 減 することにつながるのではなかろうか ここには 単 にNHKという 報 道 機 関 の 検 討 課 題 ということに 留 まらず 放 送 メディア (もしくは 通 信 メディアも 含 めて) 全 体 として 広 域 災 害 時 に 対 応 する 枠 組 みを 再 検 討 する 際 に 参 照 すべき 示 唆 が 含 まれていると 考 える

90 (2)リアリティ ステイクホルダーとしての 役 割 認 識 の 必 要 性 放 送 における ローカリティ 不 足 の 問 題 は 多 様 な リアリティ ステイクホルダー の 存 在 に 対 する 認 識 が NHKの 側 に 不 足 していたことにも 関 連 している 実 際 に 本 震 災 におけるNHKの 緊 急 報 道 ( 地 震 発 生 90 分 後 まで)の 呼 びかけコメン ト を 検 証 すると そこには 避 難 する 道 中 に 人 を 見 かけたら 津 波 の 危 機 が 迫 っている 旨 声 かけして 下 さい といったような ( 多 様 な) 他 者 に 対 する 声 かけ を 喚 起 する 呼 びかけコメント ( 呼 びかけを 求 める 呼 びかけ)は 一 度 もなされていなかった また 気 象 庁 大 学 教 授 自 治 体 担 当 者 記 者 以 外 の たとえば 避 難 を 終 えた 住 民 などの 多 様 な 声 を 流 すこともできていなかった 危 機 が 迫 り 来 る 地 域 にいる 人 たちは 皆 当 該 事 象 の 当 事 者 (つまり リアリティ ステイクホルダー)となっていると 考 えられる 当 事 者 の 中 には すでに 危 機 を 察 知 した 人 もいれば まだ 察 知 していない 人 もいる 特 に 前 者 ( 察 知 した 人 )の 声 は 気 象 庁 など の 機 関 から 発 信 される 情 報 よりも 具 体 性 を 帯 びている 場 合 がある たとえば 本 震 災 で は テレビの 画 面 を 通 じて 判 別 することが 困 難 だった 異 常 な 引 き 波 を 偶 然 にも 目 視 した 人 たちも 多 かった あの 日 宮 古 市 田 老 地 区 の 住 民 が いま 海 が 異 常 に 引 いています よ と 電 話 で 知 らせてくれたインタビューを もっと 強 調 して 伝 えていればよかった と 後 悔 の 念 を 語 る 民 間 放 送 の 記 者 もいた( 筆 者 らの 聞 き 取 り 調 査 による) さらにもっと ローカリティ をより 重 視 していれば たとえば 沖 出 しを 終 えた 漁 師 の 声 をなんらかの 手 段 で 短 く 伝 える あるいは 高 台 に 避 難 し 終 えた 住 民 の 声 を 短 く 伝 える など 個 別 具 体 的 な 地 点 ですでに 対 応 行 動 を 終 えた 人 たちがいた 事 実 を 伝 達 しあうこと によって 地 域 全 体 でリアリティを 共 同 構 築 する 道 を 開 くことができた 可 能 性 も 示 唆 され る また 上 述 したような 危 機 を 察 知 していない 当 事 者 に 対 して 声 かけするように 求 め 注 る 呼 びかけ 3) は 報 道 機 関 も リアリティ ステイクホルダー の 一 員 であることを 前 提 としていたならば 当 然 おこなわれていたはずであったことが 容 易 に 理 解 できよう (3) 災 害 情 報 をめぐる 基 本 フォーマットからの 逸 脱 の 可 能 性 ここまで 重 要 な リアリティ ステイクホルダー であるNHKの 緊 急 報 道 の 検 証 結 果 から 示 唆 される 検 討 課 題 を 考 察 してきた ここでは さらに 一 歩 進 んで もう1 点 災 害 情 報 をめぐる 一 般 的 な 考 察 をおこなう 2010 年 チリ 地 震 津 波 災 害 の 調 査 から 金 井 片 田 (2011: p.111)は いざというとき の 秘 密 兵 器 となる 社 会 マネジメント 策 が 必 要 であるとして 次 のようなアイデアを 提 起 していた それは テレビで 津 波 の 危 機 をアナウンサーが 伝 えている 最 中 に 視 聴 者 のみなさん 家 でテレビなど 見 ていないで 早 く 避 難 してください と 敢 えて 宣 言 して しまうというものであった 金 井 らは その 意 義 を 今 が 緊 急 事 態 であるという 雰 囲 気

91 をつくりだすことで 避 難 行 動 を 誘 発 する ことにあると 説 明 していた 本 研 究 では この 点 を より 広 く 災 害 情 報 をめぐる 社 会 状 況 全 般 の 問 題 解 決 策 に 通 じる 糸 口 ととらえて 以 下 に あらためて 検 討 を 加 える 例 に 挙 げた アナウンサーがテレビ 視 聴 そのものを 放 棄 するよう 視 聴 者 に 促 すことは 緊 急 報 道 の 基 本 フォーマットを 明 らかに 逸 脱 するものである この 逸 脱 は テレビ(た とえば NHKなど)が 純 然 たる 情 報 の 送 り 手 という 立 場 を 超 えて 当 該 事 象 の 真 の 当 事 者 (すなわち リアリティ ステイクホルダー )の 一 員 に 変 容 したことを 視 聴 者 に 印 象 づける メタ メッセージ (Bateson, 1972=2000; 野 村, 2008; 矢 守, 2009a; 注 野 村, ) ; 矢 守, 2011a)として 機 能 すると 考 えることができる 換 言 すれば テレ ビが 全 貌 を 冷 静 に 見 届 けようとする 外 在 者 ではなく 事 態 の 内 在 者 に 変 容 した こと そのふるまいを 視 聴 者 が 見 聞 きすることこそが 情 報 内 容 の 精 緻 化 や 迅 速 化 といっ た 従 来 のアプローチとは 異 なる 次 元 で 有 効 な 避 難 行 動 を 誘 発 する 起 爆 剤 となる 新 たな 可 能 性 を 見 出 すことができると 考 えられる これは 従 来 の 基 本 フォーマットでは 決 し て 許 されないことであった 事 実 東 日 本 大 震 災 の 緊 急 報 道 においてさえも そのような (メタ)メッセージが 放 送 されることはなかった しかしながら あえて 立 場 を 超 えて リアリティ ステイクホルダー の 真 の 一 員 に なること(あるいは なったことを 視 聴 者 に 示 すこと)は リアリティを 共 同 構 築 する 上 で これまでとは 異 なる 種 類 の 訴 求 方 法 を 考 える 道 を 切 り 開 くことにつながる たとえば 先 の 例 に 照 らしていえば テレビなど 見 ていないで 早 く 避 難 して 下 さい 避 難 した 先 で 落 ち 着 いてから ワンセグやラジオなどで 新 しい 情 報 を 得 るようにして 下 さい といっ た 呼 びかけを 発 想 することができる しかも このような 基 本 フォーマットからの 逸 脱 と 逸 脱 することによって 真 の 当 事 者 になることの 効 用 もまた テレビ(たとえば NHKなど)にのみ 固 有 の 問 題 ではな く 災 害 情 報 をめぐる 他 の 問 題 にも 密 接 に 関 連 している たとえば 海 岸 近 くの 行 政 庁 舎 に 残 り 防 災 無 線 で 避 難 喚 起 のアナウンスを 続 けた 行 政 職 員 らのケースでは 今 後 はその 立 場 を 超 えて 行 政 職 員 はすでに 避 難 しました この 呼 びかけは 自 動 音 声 でおこなっています とする 逸 脱 を 準 備 しておくことも 考 えう る また たとえば 津 波 来 襲 まで 広 報 車 等 で 避 難 誘 導 をおこなった 消 防 団 員 のケースでは 今 後 はその 立 場 を 超 えて 消 防 団 は 順 番 に 海 際 から 離 れる 方 向 に 向 かって 巡 回 して います この 地 点 には 二 度 と 戻 ってきません いますぐ 一 緒 に 避 難 を 開 始 してください と その 役 割 を 半 ば 逸 脱 して 危 難 にのぞむ 道 も 考 えうる 本 震 災 のような 事 態 においては 情 報 を 発 信 する 側 も 事 態 の 外 在 者 としての 立 場 を 超 えて 避 難 する 当 事 者 であることを 身 をもって 知 らせることによってはじめて 真 の リアリティ ステイクホルダー になりえるのではないか ここにおいてようやく 避 難 行 動 におけるリアリティを たぶん 自 分 は 大 丈 夫 だろう といった いわゆる 正

92 常 化 の 偏 見 ( 中 森, 2002; 福 田 関 谷, 2005; 片 田 児 玉 桑 沢 越 村, 2005; 矢 守, 2009b; 矢 守, 2011b)が 支 配 する 様 相 から 大 きく 転 換 させることができるのではないかと 考 える 実 際 キャントリルが 研 究 したラジオドラマのケースが すでにこのことを 裏 付 けてい た このラジオドラマの 中 では キーマンとなる 専 門 家 が 被 害 現 場 の 調 査 中 に 行 方 不 明 に なったり 何 の 権 威 ある 説 明 もみなさんに 申 し 上 げられません と 発 言 したり 随 所 で フォーマットを 破 っていたことが かえってより 多 くの 人 びとの 避 難 行 動 を 誘 発 していた (Cantril, 1940=1971: pp ) もちろん こうした 方 策 には 無 用 の 混 乱 を 招 く 危 険 もあるのではないかといった 疑 義 を 差 し 挟 む 余 地 があろう しかし 西 日 本 大 震 災 や 首 都 直 下 地 震 そして それ ら 以 外 にも そもそも 想 定 されていない 巨 大 災 害 が 起 きた 事 態 に 備 えて 危 機 を 切 り 抜 けるための 秘 密 兵 器 ( 金 井 片 田, 2011)を 考 えておくとするならば 相 当 程 度 破 格 なものも 含 めて 幅 広 く 議 論 の 俎 上 に 載 せていく 必 要 があると 思 われる この 逸 脱 という 選 択 肢 を 含 めた 対 応 策 を 事 前 に 検 討 するプロセス 自 体 が リスク コミュニケーション の 絶 好 の 機 会 となることは あらためて 指 摘 するまでもないだろう 謝 辞 : 東 日 本 大 震 災 で 亡 くなられた 方 々に 謹 んで 哀 悼 の 意 を 表 しますと 共 に 被 災 され た 方 々に 心 よりお 見 舞 い 申 し 上 げます 本 研 究 の 趣 旨 にご 賛 同 いただき 聞 き 取 り 調 査 に ご 協 力 してくださいました 皆 様 に 深 く 感 謝 申 し 上 げます 本 研 究 は 平 成 24 年 度 京 都 大 学 防 災 研 究 所 萌 芽 的 共 同 研 究 課 題 番 号 (24H-01) から 助 成 を 受 けました ここにあらてめて 感 謝 の 意 を 表 したいと 思 います 注 1) サーベイリサーチセンターの 調 査 では 防 災 無 線 の 屋 外 拡 声 器 (47.8%) 民 放 ラジオ と N HKラジオ ( 合 計 21.0%) 市 町 村 の 広 報 車 (13.8%) 家 族 や 近 所 の 人 から (9.1%) 民 放 テレビ と NHKテレビ (8.7%)となっていた 注 2) 全 中 脱 禁 の 措 置 は 本 研 究 にいう 第 1フェーズ の 途 中 15 時 07 分 の 段 階 で 解 除 され ていた しかし 態 勢 が 整 うまでは テレビの 音 声 がラジオでそのまま 流 される 状 態 が 続 いていた 注 3) 無 論 声 かけするがために 敢 えて 回 り 道 せよということまで 推 奨 しているわけではない たと えば 次 のような 呼 びかけイメージを 想 定 している すぐに 避 難 して 下 さい 道 中 人 を 見 かけたら 声 を かけて 下 さい ただし 歩 みを 緩 めてはいけません 一 緒 に 少 しでも 高 い 場 所 を 目 指 して 下 さい 注 4) 野 村 (2010)は メッセージ ギブン に 対 する 概 念 として 自 分 ではコントロールできない 自 然 にこぼれ 落 ちてしまうメッセージのことを メッセージ ギヴン オフ と 呼 んでいる 前 者 がメッ セージ 後 者 がメタ メッセージにあたるものと 考 えられる

93 - 82 -

94 第 9 章 復 興 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 2008 年 四 川 大 地 震 における 被 災 地 調 査 から 1 はじめに 本 章 および 次 章 では 災 害 報 道 のうち 復 興 報 道 をめぐるリアリティの 共 同 構 築 過 程 に 焦 点 をあてる そこではいずれも 第 7 章 ~ 第 8 章 の 緊 急 報 道 で 見 てきた 事 態 に 通 底 する 課 題 が 見 出 された 2 問 題 : 数 値 という 形 式 で 流 布 する 災 害 情 報 災 害 の 規 模 や 特 徴 を 把 握 するために 報 道 機 関 が 特 に 重 視 して 伝 達 している 情 報 として 種 々の 数 値 があげられる たとえば 地 震 の 規 模 を 表 すマグニチュード 台 風 の 規 模 を 示 す 気 圧 降 水 確 率 や 風 速 などの 速 報 値 はもとより 津 波 の 到 達 予 想 時 刻 や 高 さ 被 害 家 屋 数 死 亡 者 数 や 負 傷 者 数 避 難 勧 告 や 避 難 指 示 が 発 表 された 地 区 の 人 口 世 帯 数 避 難 者 数 また 損 失 金 額 焼 失 森 林 や 浸 水 域 などの 広 さ さらには 災 害 対 策 本 部 の 設 置 時 刻 救 助 隊 の 到 着 時 刻 その 隊 員 数 テントや 機 材 の 量 仮 設 住 宅 の 建 設 棟 数 ボランティア の 数 寄 付 金 の 金 額 など 列 挙 すればきりがない これらの 数 値 は 行 政 当 局 や 専 門 家 などによって 公 的 に 算 出 されたものがほと んどを 占 めている 報 道 機 関 はそれを 客 観 的 なデータ として 取 り 扱 い 迅 速 的 確 に 世 に 流 通 させる それがまた 新 たなリアリティを 構 築 して 被 災 者 を 含 むあらゆるステイ クホルダーを 巻 き 込 み 被 災 社 会 の 内 外 を 突 き 動 かしていく 現 代 における 高 度 情 報 社 会 では こうしたメディアの 作 用 を 前 提 として 大 量 の 高 精 細 な 数 値 情 報 をやりとりする メ ディア イベント ( 阿 部, 2008)が 繰 り 広 げられているといえる しかし ここで 注 意 しなければならないのは メディアによって 表 象 される 数 値 は 被 災 社 会 のリアリティを 純 粋 に 複 写 しているわけではないという 事 実 である 思 わぬメッ セージ(メタ メッセージ)を 身 に 纏 って 人 口 に 膾 炙 することで 混 乱 を 助 長 したり 被 災 者 をより 苦 しめたりすることもある Foucault(2007)が 生 権 力 の 概 念 で 指 摘 したよ うに 社 会 の 中 で 操 作 されている 数 値 には 生 をコントロールする 隠 れた 権 力 性 が 保 持 されている 場 合 があることを 見 逃 してはならない( 田 中 荻 野, 2007) すでに 災 害 復 興 研 究 においても 数 値 からの 疎 外 / 数 値 への 疎 外 の 問 題 として 渥 美 矢 守 鈴 木 近 藤 淳 于 (2008)が 重 要 な 論 点 になり 得 ると 提 起 したとおりである 3 対 象 と 方 法 本 章 では 上 述 した 問 題 意 識 から 被 災 地 における 数 値 をめぐるリアリティに 着 目 する ことにした 以 下 中 国 で 2008 年 5 月 12 日 14 時 28 分 ( 現 地 時 間 )に 発 生 した 四 川 大 地 震 ( 現 地 では 5.12 汶 川 大 地 震 という M8.0 中 国 地 震 局 発 表 )を 例 にとり リアリティ の 動 態 を 見 ていく

95 表 -Ⅱ 四 川 大 地 震 (5.12 汶 川 大 地 震 ) 現 地 調 査 の 概 要 期 間 内 容 訪 問 先 参 加 者 現 地 調 査 成 都 都 江 堰 綿 竹 など 近 藤 現 地 調 査 都 江 堰 白 砂 村 砂 湾 村 渥 美 矢 守 現 地 調 査 成 都 都 江 堰 綿 陽 徳 陽 北 京 など 近 藤 合 同 検 討 会 北 京 渥 美 鈴 木 合 同 検 討 会 成 都 鈴 木 現 地 調 査 成 都 都 江 堰 什 邡 建 川 博 物 館 など 渥 美 近 藤 矢 守 現 地 調 査 成 都 都 江 堰 綿 陽 北 川 汶 川 山 岳 地 帯 什 邡 など 近 藤 現 地 調 査 成 都 什 邡 北 川 など 渥 美 近 藤 鈴 木 矢 守 現 地 調 査 成 都 建 川 博 物 館 都 江 堰 北 川 など 近 藤 現 地 調 査 成 都 北 川 汶 川 都 江 堰 など 渥 美 筆 者 らは 災 害 発 生 4 日 後 (2008 年 5 月 16 日 )からの 被 災 地 取 材 を 皮 切 りに 合 計 10 回 に 渡 る 現 地 調 査 をおこなってきた その 概 要 を 表 -Ⅱ-9-3-1に 示 す また 日 中 両 国 における 公 刊 物 の 収 集 テレビ 報 道 の 分 析 なども 実 施 してきた(たとえば 矢 守 渥 美 鈴 木 近 藤 淳 于, 2008; 近 藤, 2009; 近 藤 矢 守 渥 美 鈴 木, 2009; 近 藤, 2010) これらをもとに カネ 時 間 ヒト に 纏 わる 数 値 のリアリティのダイナミズ ムの 中 から 被 災 地 でネガティブな 反 応 (いわゆる 社 会 的 な 逆 機 能 )が 感 取 されたケース を 抽 出 して 考 察 する 4 結 果 : 見 出 された 社 会 的 逆 機 能 の 諸 相 (1)カネの 数 値 : 仇 富 の 道 具 と 化 した 寄 付 金 の 額 カネの 数 値 の 多 寡 は それが 暮 らしに 直 結 するものであればあるほど 被 災 者 にとって 切 実 さを 増 す 四 川 大 地 震 でも 政 府 から 支 出 される 生 活 支 援 金 の 額 などに 関 しては 迅 速 的 確 な 情 報 提 供 がおこなわれていた これとは 次 元 を 異 にするものとして 中 国 でひときわ 報 道 が 過 熱 したのが 寄 付 金 の 額 に 関 するものである 地 震 発 生 1 週 間 を 経 ずして 寄 付 を 募 るチャリティ 活 動 が 街 頭 や ネット 上 で 大 々 的 におこなわれ 始 めた これをテレビや 新 聞 が 報 道 することによって イ ベントはさらに 巨 大 なものになっていった 実 際 に 寄 付 金 の 額 が 多 い(1,000 万 元 日 本 円 にして 1 億 5,000 万 円 相 当 ) 企 業 家 などを 英 雄 として 讃 える 催 しが 衛 星 放 送 を 通 じて 全 国 放 送 されるなどした 新 聞 でも 寄 付 金 の 金 額 ランキング なるものが 紙 面 を 飾 った こうしたなかで 寄 付 金 が 100 万 元 に 満 たない 企 業 は 鉄 公 鶏 ( 羽 1 枚 落 とさない 鉄 製 の 鶏 = ケチ )と 名 指 しで 非 難 されるようになった( 富 坂, 2008; 渡 辺, 2008) 経 済 的 な 格 差 に 対 する 従 来 からの 不 満 もあって 儲 かっていると 見 做 された 外 資 系 企 業 や 国 有

96 企 業 が 主 な 標 的 となり 経 営 者 個 人 の 年 収 などがネットで 勝 手 に 公 開 され(これを 人 肉 検 索 という=プライバシーを 暴 くこと) もっと 寄 付 金 を 出 すようにと 強 要 される 事 態 も 起 きた 富 める 者 を 攻 撃 して 仇 を 討 つ いわゆる 仇 富 と 呼 ばれる 社 会 現 象 として 定 着 し この 動 きに 関 する 情 報 がまたニュースとなって 中 国 全 土 に 駆 け 巡 った 成 都 市 内 でヒアリングした 結 果 からは 寄 付 金 に 関 して 共 産 党 の 指 導 部 や 中 国 人 民 に 感 謝 する 声 が 大 多 数 を 占 めたが なかには これまで 四 川 省 は 虐 げられてきたので 豊 か な 沿 海 部 のカネを 我 々がもらうのは 当 たり 前 だ (30 代 男 性 )とする 声 や 各 企 業 がこぞっ て 寄 付 金 の 多 さをアピールしているのは 明 らかに 売 名 行 為 だ (50 代 男 性 )とする 声 もあ った 筆 者 らが 震 災 から 1 年 以 上 経 って 被 災 地 を 訪 れた 際 にも まだわずかながらも 寄 付 金 に 関 するニュースが 報 道 されていた しかし 人 々の 話 題 にのぼるのは 誰 もが 驚 くほど 巨 額 の 私 財 を 擲 って 寄 付 をした 超 大 英 雄 など センセーショナルなものに 限 られていたよ うである 端 的 に ニュースに 飽 きた (40 代 男 性 )という 声 もあり また 被 災 地 は 地 震 のおかげで 十 分 に 潤 ったはずだ (50 代 男 性 )といった 声 もあった これらの メディア イベント を 概 観 してみると もちろん 莫 大 な カネ を 被 災 地 に 集 める 機 能 や 当 該 事 象 に 世 の 関 心 を 引 き 付 ける 機 能 など ポジティブな 面 は 十 分 に あったといえる しかしながら この 種 の 数 値 をめぐるリアリティのダイナミズムに は 多 分 にネガティブな 面 も 含 まれていた 持 てる 者 と 持 たざる 者 (もしくは 失 った 者 と 失 わなかった 者 )を 厳 然 と 数 値 で 峻 別 し その 立 場 を 固 定 化 さらには 拡 大 化 する 傾 向 すらあることを 予 感 させた この 観 点 から 数 値 のリアリティが 果 たした 機 能 を 捉 え 直 せば 非 被 災 者 が 被 災 者 と 思 いを 分 かち 合 おうとする 契 機 には 十 分 成 りえなかったの ではないかと 考 えられる (2) 時 間 の 数 値 : 被 災 者 に 一 方 的 に 提 示 される 期 限 中 国 政 府 は 被 災 自 治 体 を 非 被 災 自 治 体 が1 対 1の 関 係 で 支 援 する 枠 組 み すなわち 対 口 支 援 を 導 入 した すでに 西 部 大 開 発 などの 政 策 をめぐって 沿 海 部 から 内 陸 部 に 対 して 実 施 されていた 枠 組 みであり たとえば 漢 語 教 師 派 遣 などの 事 業 フレームを 援 用 したものと 考 えられる 豊 かな 地 域 から 資 源 の 乏 しい 被 災 地 に ヒト モノ カネ 情 報 が 一 気 に 流 入 してくることから メリット/デメリットの 双 方 が 混 在 して 垣 間 見 られ この 枠 組 み 自 体 の 評 価 は 中 国 本 土 でもまだ 定 まっていないようである 将 来 の 復 興 における 制 度 的 な 枠 組 みとしてこれを 法 定 化 していくのか 現 時 点 (2010 年 7 月 時 点 )では 不 明 とのことで ある( 顧, 2010) ここでは この 枠 組 みにおける 時 間 すなわち 期 限 に 纏 わる 数 値 のリアリティを 見 ておきたい 当 初 対 口 支 援 による 復 興 事 業 の 完 了 は 3 年 という 年 限 で 定 められ ていた 仮 設 住 宅 の 建 設 を 皮 切 りに 主 要 道 路 を 敷 設 したり 学 校 や 病 院 を 建 て 直 したり

97 する 作 業 が 急 ピッチで 進 められることになった そして 町 を 丸 ごと 新 たに 開 発 する 事 業 を 決 定 した 場 所 たとえば 町 の 再 建 を 断 念 して 集 団 移 転 した 北 川 県 城 ( 徳 陽 市 黄 土 鎮 に 新 設 移 転 この 地 をあらたに 北 川 県 として 吸 収 することにした)などでも 同 じ 期 限 に 向 かって 都 市 開 発 がおこなわれることになった 工 事 が 着 手 された 箇 所 の 進 捗 を 見 てみると その 猛 烈 なスピードに 圧 倒 される 確 かに 復 興 が 早 ければ 早 いほど 被 災 住 民 が 早 く 元 気 を 取 り 戻 すことができるといった 素 朴 な 期 待 を 抱 くこともできないではない 少 なくとも 明 確 な 期 限 すなわち 3 年 で 復 興 事 業 に 勝 利 する ( 工 事 現 場 のスローガンより)といった 具 体 的 な 目 標 が 示 されていることから 被 災 住 民 は 生 活 再 建 の 見 通 しを 立 てやすいはずだ と 考 えてみることは 十 分 に 可 能 で ある しかし ヒアリングによって 採 取 された 住 民 の 声 は 多 様 であった ここでも まずは 共 産 党 指 導 部 に 対 する 感 謝 の 念 などが 口 々に 唱 えられた そのあとで たとえば 住 宅 再 建 の 補 助 政 策 として 定 められた 無 利 子 融 資 制 度 が 3 年 で 終 了 することに 関 して 話 を 聞 くと 将 来 の 借 金 返 済 の 見 通 しを 示 すことができる 人 ばかりでないことは すぐに 明 らかとなった 観 光 復 興 を 掲 げて 統 一 再 建 ( 伝 統 的 な 町 並 みのデザイン 等 を 統 一 することを 前 提 に 政 府 の 上 乗 せ 補 助 を 得 て 再 建 をおこなうこと)を 実 施 した 複 数 の 村 においてヒアリン グした 結 果 からは 震 災 1 年 目 は あとは 村 に 通 じる 道 さえよくなれば 観 光 客 が 増 えると 思 う といった 期 待 の 声 が 強 かったが その 半 年 後 には 道 はよくなったけれども 客 が 増 えないのは まだPRが 足 りないから といった 声 にトーンダウンし そして 震 災 2 年 を こえると わたしには 将 来 のことはよくわからない といった 苛 立 ちが 出 始 めていること がわかった 地 元 TVメディアでは 復 興 政 策 の 検 証 番 組 ( 負 面 報 道 ともいう)が 継 続 的 に 放 送 さ れている しかし 中 央 政 府 の 大 方 針 として 定 められた 期 限 に 関 して 被 災 住 民 の 生 活 実 感 に 照 らして 納 得 できるものであるかどうかを 根 本 的 に 問 うような 内 容 は 今 のとこ ろ 見 当 たらないと 聞 いた 震 災 2 年 を 前 にして 中 央 政 府 は 主 要 な 事 業 を 2 年 で 終 了 させるという 期 限 の 前 倒 しを 発 表 した この 動 きに 付 随 した 報 道 内 容 としては 復 興 政 策 が 順 調 に 進 んでいる ことを 示 す 成 功 譚 (これらは 正 面 報 道 ともいう)が 特 に 目 につく 困 難 を 乗 り 越 えト ンネルが 開 通 した 最 新 モデルの 学 校 建 築 が 完 工 した といった 類 である 被 災 住 民 にと っては 本 来 ならば 3 年 待 たされていたはずのところを 一 気 に 短 縮 できたわけだから その 反 応 は 喜 びに 満 ちたものばかりになっていてしかるべきである しかし 筆 者 らのヒ アリングで 採 取 された 声 の 中 には 冷 ややかな 反 応 のものもあった たとえば 急 ぎ 過 ぎ ではないか ( 都 江 堰 市 50 代 男 性 )といった 声 である 補 償 の 不 足 などに 対 して 抗 議 する 農 民 たちのデモが 各 地 で 起 きるようになっていることを 見 ても まだメディアには 表 出 さ れていない 懸 念 や 不 満 が あちこちに 燻 っていることを 示 唆 しているのではない かと 考 える

98 迫 り 来 る 事 業 完 了 期 限 の 数 値 のリアリティは (もはや 古 典 的 な 常 套 句 になってしま ったきらいはあるが) 下 記 のフレーズによって 集 約 されるとも 聞 いた( 成 都 市 50 代 男 性 ) すなわち 上 有 政 策 下 有 対 策 である 字 義 の 通 り 上 には 上 の 思 惑 ( 政 策 )がある のだろうが 下 には 下 で 対 抗 していく 手 段 ( 対 策 )がある という 意 味 である( 意 訳 に 関 して たとえば 田 島, 2001) 結 局 将 来 は 自 分 の 手 で 切 り 開 くしかないという 達 観 した 見 通 し であった (3)ヒトの 数 値 : 死 者 カウントアップのリアリティ 四 川 大 地 震 の 死 者 行 方 不 明 者 数 は 公 式 には 87,464 人 被 災 者 は 45,976,596 人 とな っている(CRED/EM-DAT, 2008) 広 大 な 被 災 地 では 山 岳 地 帯 などの 険 しい 土 地 も 多 く 斜 面 崩 壊 によって 埋 もれてしまった 人 々も 少 なくない 遺 体 を 回 収 できなかったケースや 遺 体 の 損 壊 が 激 しくて 身 元 が 確 認 できなかったケースも 多 々あったであろう しかしそう したなかでも 死 者 行 方 不 明 者 の 数 は 当 初 から 下 1 桁 まで 確 定 した 数 値 ( 実 数 )と して 当 局 から 発 表 されていた 混 乱 の 中 でも 高 い 精 度 を 求 めたのは 被 災 者 ひとりひとり の 尊 厳 を 重 視 する 姿 勢 を 示 すためであったと 推 察 される ところが この 数 値 の 受 け 止 め 方 をめぐっては 当 の 被 災 地 でも 早 くから 様 々な 声 があがっていた ヒアリングによって 採 取 したデータの 中 で 被 災 住 民 がネガティブな 反 応 を 示 したもの として 顕 著 だったのは 政 府 による 辻 褄 あわせではないか ( 成 都 市 40 代 男 性 )といっ た 声 である 政 府 の 幹 部 に 対 して そんなことに 知 恵 をしぼるよりも もっと 他 にやるべ きことがあるだろう ( 同 じ 男 性 )といった 批 判 にもつながっていた 知 られているとおり 中 国 では 人 口 抑 制 策 の 導 入 によって たとえば 男 子 を 跡 継 ぎにし たいばかりに 意 図 的 に 女 子 を 戸 籍 に 入 れないようなケースが 後 を 絶 たなかった( 中 国 情 報 研 究 機 構, 2010) いわゆる 黒 孩 子 黒 戸 口 の 存 在 である( 上 海 文 化 協 力 機 構, 2008) こうした 暗 数 がある 以 上 もともと 被 災 地 にどれだけの 住 民 が 暮 らしていたのか そ の 母 数 を 正 確 に 把 握 することはできないはずである 仮 に 遺 体 の 数 を 1 体 ずつ 確 実 に 集 計 できたとしても 行 方 不 明 者 の 数 は 確 定 できないことになる 中 央 政 府 は 地 方 政 府 の 報 告 を 積 み 上 げた 結 果 人 的 被 害 の 数 値 を 確 定 させていたと 推 察 される では 各 郷 鎮 政 府 のレベルでは どうやって 死 者 行 方 不 明 者 の 実 数 を 把 握 することができ たのであろうか このあたりの 疑 義 に 関 して 十 分 に 説 明 がなされていないことから 政 府 が 発 表 する 数 値 に 対 する 信 頼 性 が 削 がれたネガティブなリアリティが 構 築 されたのではないかと 考 え られる 震 災 から 2 年 経 っても 憶 測 が 憶 測 を 呼 ぶような 声 は 消 えていなかった いわく 死 者 行 方 不 明 者 の 数 は 各 郷 鎮 政 府 レベルで 震 災 後 の 補 助 や 支 援 を 中 央 政 府 から 引 き 出 すため 水 増 しされていたのではないかといったものである 震 災 が 起 きる 前 に 社 会 で 醸 成 されてきたコンテキストによって 数 値 のリアリティのネガティブなイメージが 持 続 ( 場 合 によっては 拡 大 強 化 )されていったと 考 えられる

99 5 考 察 以 上 被 災 地 における 数 値 をめぐるリアリティに 関 して 3 つの 事 例 を 概 観 してきた これらは 広 域 で 多 様 な 被 災 地 の 中 にあって 小 さな 断 面 を 垣 間 見 たものに 過 ぎない 筆 者 らのわずかながらの 調 査 をもとにして 知 見 を 敷 衍 化 することは 到 底 できまい しかし 災 害 対 応 の 局 面 において 重 要 となる 論 点 を 抽 出 することはできそうである 以 下 に 要 点 を 示 しておく まず 数 値 は メディア イベント を 形 作 るうえで どの 主 題 にも 付 随 して 現 出 ( 頻 出 )する 傾 向 があることをおさえておきたい そしてそれは 被 災 者 の 置 かれた 立 場 を 表 象 するものでありながらも 被 災 者 自 身 で 操 作 することは 困 難 なものばかりであった この 被 災 者 にとってみれば 遠 くから 到 来 した 数 値 は 客 観 的 なデータ といった 中 立 的 な 装 いを 身 に 纏 いながらも その 実 時 代 や 社 会 のコンテキストに 依 存 して ポジ ティブにもネガティブにもイメージを 変 容 させる 鵺 (ぬえ) のようなものであった この 種 の 問 題 は 中 国 だけに 該 当 するというものでは 決 してなく 日 本 においても 十 分 にあてはまる 問 題 であることを 最 後 に 指 摘 しておきたい 生 活 支 援 金 の 多 寡 や 都 市 計 画 決 定 の 時 期 などをめぐって 社 会 に 投 げ 出 された 数 値 が 被 災 者 を 苦 しめた 事 例 は 過 去 にも 数 多 く 見 出 される 防 災 や 復 興 の 目 標 を 数 値 で 示 すことを 是 として 死 者 半 減 といった 言 葉 を 数 千 の 犠 牲 者 が 出 る 被 害 想 定 において 何 の 慮 りなく 連 呼 しているケ ースもある 阪 神 淡 路 大 震 災 の 被 災 地 においてすら 死 者 の 数 は 下 1 桁 まで 表 記 する いっぽうで 行 方 不 明 者 の 数 (3 人 とされる)をオミットしているケースが 後 を 絶 たな い さらにいえば 震 災 障 碍 者 のように 十 分 に 数 えられなかった ことで 存 在 が 可 視 化 されなかった 例 もある 被 災 者 一 人 ひとりの 特 個 の 尊 厳 を 守 り 抜 くには 今 一 度 数 値 のリアリティに 対 する 真 摯 なまなざしを 持 ち 直 すことが 求 められている また 第 7 章 ~ 第 8 章 で 見 てきたような 緊 急 報 道 においては 一 度 に 大 量 の 数 値 が 流 布 することによって より 問 題 が 圧 縮 されたかたちで 表 出 する 場 合 が 予 想 される たと えば 津 波 避 難 の 猶 予 時 間 だけに 限 っても 地 震 の 規 模 や 震 度 情 報 津 波 到 達 予 想 時 刻 予 想 高 さ さらには 避 難 勧 告 エリアの 世 帯 数 など どれがどこまで 自 分 にとって 重 要 なの か 判 別 しがたい 数 値 が まるで 津 波 のように 押 し 寄 せ 結 局 どれも 有 効 に 生 かせてい ないという 問 題 があった いまこそ 避 難 というリアリティを 共 同 で 構 築 するためには 数 値 情 報 の 効 果 的 な 使 い 方 が 場 合 によっては 使 わないというやりかたさえも 求 めら れている 繰 り 返 しになるがいまいちど 明 記 しておくと 数 値 という 自 然 科 学 に 裏 打 ちさ れた 客 観 的 とされる 情 報 であっても リアリティの 観 点 からとらえかえせばすぐにわ かるとおり 社 会 の 中 において 決 してニュートラルな 存 在 として ただ 在 る というわけ にはいかない 点 リアリティ ステイクホルダー 同 士 が 常 に 認 識 して 実 践 にあたらなけ ればなるまい

100 謝 辞 調 査 にご 協 力 いただいた 被 災 地 の 方 々に 感 謝 の 意 を 表 すると 共 に 亡 くなられた 方 々のご 冥 福 をお 祈 りしたい 現 地 では CODE 海 外 災 害 援 助 市 民 センターの 吉 椿 雅 道 氏 にとりわけ お 世 話 になった 氏 の 深 い 思 索 と 熱 い 実 践 の 両 面 から 被 災 の 総 体 を 何 度 も 見 つめ 直 す 機 会 をいただいた また 2 度 に 渡 って 現 地 調 査 に 同 行 させていただいた 人 と 防 災 未 来 セン ターのみなさまにも 深 くお 礼 を 申 し 上 げたい

101 - 90 -

102 第 10 章 復 興 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2011 年 東 日 本 大 震 災 における 救 援 ボランティアに 関 する 報 道 内 容 分 析 1 はじめに 本 章 は 次 章 に 引 き 続 き 復 興 報 道 のフェーズにおけるリアリティをめぐる 問 題 を 取 り 上 げる 正 確 な 情 報 を 迅 速 に 届 けるという 従 来 のアプローチだけからは 見 据 えることの 難 しかった メタ メッセージによって 強 化 されるネガティブなリアリティの 実 態 を 浮 き 彫 りにする 2 問 題 : 救 援 ボランティアの 不 足 や 遅 れ 東 日 本 大 震 災 では ボランティアの 不 足 や 遅 れがあったことが 課 題 として 指 摘 されている たとえば 被 災 地 での 救 援 活 動 を 地 震 発 生 当 夜 からおこなってきたあるボランティア 団 体 の 代 表 は 過 去 の 震 災 との 明 らかな 違 いを 感 じたのは 被 災 者 支 援 の 全 般 的 な 遅 れ だ ったと 述 べている( 大 西, 2011) また 阪 神 淡 路 大 震 災 時 のボランティア 活 動 者 数 がピ ーク 時 には 1 日 2 万 人 であったこと また 東 日 本 大 震 災 の 被 害 が 甚 大 であったことや 被 災 地 が 広 大 であったことなどを 考 慮 すると 東 日 本 大 震 災 におけるボランティアの 参 加 状 況 は やや 低 調 気 味 だった と 概 括 することができるとの 指 摘 もある( 菅, 2012) 確 かに ボランティアの 延 べ 活 動 人 数 に 関 して 公 式 に 発 表 されたデータをもとに 阪 神 淡 路 大 震 災 と 東 日 本 大 震 災 のケース( 兵 庫 県 県 民 生 活 部, 1995)を 比 較 してみると 東 日 本 大 震 災 のほう( 全 国 社 会 福 祉 協 議 会, 2011)が 圧 倒 的 に 少 ないまま 推 移 してきたことが わかる( 図 -Ⅱ ) しかしながら 前 者 は 兵 庫 県 による 推 計 値 であり その 数 は 千 人 阪 神 淡 路 大 震 災 東 日 本 大 震 災 0 ~1 ~2 ~3 ~4 ~5 ~6 ヶ 月 図 -Ⅱ ボランティアの 延 べ 活 動 人 数 比 較 ( 千 人 )

103 過 大 に 評 価 されたものであるとの 見 方 もある また 後 者 は 全 国 社 会 福 祉 協 議 会 に 登 録 し たボランティアの 数 のみ 足 し 合 わせた 数 字 であり その 値 は 過 小 に 評 価 されたものとの 見 方 もある 未 登 録 ボランティア( 社 協 に 登 録 しなかった 人 たち)の 実 働 は 実 際 には 膨 大 な 数 にのぼっていたという 推 論 には 一 定 の 理 があるといえる ただしそれでも 被 災 地 の 各 所 でボランティアの 手 が 必 要 とされていたことは 事 実 であっ た( 渥 美, 2012) したがって 本 当 に 課 題 だったのは ボランティアの 偏 在 であった という 主 張 もなされている( 新, 2011) 本 研 究 では こうしたボランティアの 参 加 実 態 をめぐる 議 論 を 十 分 に 参 考 にしながらも 東 日 本 大 震 災 の 被 災 地 で 特 に 最 初 の 1 ヶ 月 において ボランティアの 手 が 足 りていなか った 局 面 が 現 に 生 じていた という 事 実 に 注 視 することにする ボランティアの 不 足 傾 向 が 生 じた 原 因 としては すでに 様 々な 指 摘 がなされている 直 接 的 な 原 因 としては 1 被 災 地 が 広 大 だったこと 2アクセスが 困 難 だったこと 3ガソリ ンや 燃 料 が 不 足 したこと 4 余 震 や 津 波 などの 二 次 災 害 が 懸 念 されたこと 5 原 発 事 故 に よる 放 射 線 被 曝 リスクが 懸 念 されたこと 6 被 災 地 側 の 受 け 入 れ 態 勢 が 整 わなかったこと があげられている そして 特 に6の 事 態 をふまえたかたちで 7ボランティアの 秩 序 化 のドライブ ( 渥 美, 2011a) が 進 んだことも 指 摘 されている( 安 富, 2011; 近 藤 矢 守, 2011a; 近 藤 矢 守, 2011b) 阪 神 淡 路 大 震 災 で 脚 光 を 浴 びた 災 害 ボランティアは その 後 参 加 者 の 総 力 を 最 大 限 に 引 き 出 そうという 善 意 も 手 伝 って マネジメントの 合 理 化 や 組 織 化 が 図 られるようになっていった すると 次 第 に ボランティアは ボランティアセンターの 方 針 にしたがって 秩 序 立 って 行 動 すべし といった 暗 黙 の 規 範 が 形 成 されるようになった このような 災 害 ボランティアの 標 準 形 ( 渥 美, 2011a)が 被 災 者 のほうを 見 る 前 に ボランティアコーディネーターのほうを 見 るなどといった 硬 直 化 した 態 度 を 生 み 出 した のだという さらに これら1~7に 加 えて 8マスメディアによる 報 道 のありかたが 支 援 の 広 がりを 阻 む 一 因 となったとする 指 摘 も 随 所 でなされている たとえば 村 井 (2011a)は ボラン ティアが 行 くと 迷 惑 になるというマスメディアの 論 調 はやはり 行 き 過 ぎだったし 過 剰 だ ったと 思 う と 本 震 災 後 に 出 版 した 著 書 の 中 で 明 言 している また 室 﨑 (2011a)は 出 演 したラジオ 番 組 の 中 で 要 するに 隠 す 効 果 って 言 いますかね 原 発 の 話 が 前 面 に 出 て しまうと 津 波 の 被 災 者 の 話 が 出 てこない と 述 べて 原 発 事 故 に 比 して 地 震 津 波 災 害 を 過 小 に 取 り 扱 ってきたマスメディアの 構 え 全 般 を 問 題 視 していた そこで 本 研 究 では 特 に8の 観 点 に 焦 点 をしぼって 東 日 本 大 震 災 におけるマスメディ アの 報 道 内 容 を 分 析 することで ボランティアの 参 加 をめぐるリアリティがどのように 形 成 されていたのかを 概 観 し 併 せてさいごに 観 点 7もふまえながら ボランティア 報 道 の 難 点 に 関 する 基 礎 的 な 考 察 をおこなう

104 3 ボランティア 報 道 の 内 容 分 析 とその 結 果 本 章 ではまず マスメディアにおける 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 全 般 の 状 況 を 整 理 する( 第 1 項 ) そして 次 に ボランティアをめぐる 報 道 量 の 推 移 を 分 析 する( 第 2 項 ) (1) 原 発 事 故 報 道 と 地 震 津 波 災 害 報 道 の 競 合 東 日 本 大 震 災 の 対 応 を 当 初 政 府 は 原 発 事 故 と 地 震 津 波 災 害 に 大 別 していた 菅 首 相 ( 当 時 )は 発 災 2 週 間 後 の 記 者 会 見 において 政 府 は 現 時 点 で 2 つのことに 全 力 を 挙 げて 取 り 組 んでおります その 第 1 は 福 島 第 一 原 発 事 故 の 事 態 収 拾 と 放 射 能 汚 染 へのしっかりした 対 応 であります 第 2 は 被 災 者 の 方 々への 支 援 と 更 に 復 興 に 向 けて の 準 備 を 本 格 化 させることであります と 述 べていた また 4 月 22 日 の 記 者 会 見 では 基 本 的 には 二 正 面 作 戦 をやらざるを 得 ない 状 況 にある と 言 明 していた 政 府 は 少 な くとも 方 針 上 は 原 発 事 故 と 地 震 津 波 災 害 の 対 応 にバランスよく 傾 注 しようとして いたことが 推 察 される この 二 正 面 作 戦 が マスメディアの 報 道 を 通 じて どのように 社 会 に 表 出 していたの か 調 べるため 新 聞 記 事 データベース( 日 経 テレコン)の 検 索 機 能 を 利 用 して 津 波 と いうキーワードを 含 む 記 事 と 原 発 というキーワードを 含 む 記 事 の 本 数 を それぞれ 算 出 した 媒 体 固 有 の 事 情 からデータに 偏 りが 生 じないようにするため 全 国 紙 ( 朝 日 毎 日 読 売 産 経 )およびNHKの 全 国 ニュースの 記 事 本 数 を 足 し 合 わせて 全 体 の 傾 向 を 比 較 することにした( 図 -Ⅱ , 図 -Ⅱ :なお 第 0 週 目 とは 震 災 が 起 きる 前 の 1 週 間 の 数 値 を 参 考 までに 示 したものである) その 結 果 原 発 関 連 の 記 事 量 は 津 波 関 連 の 記 事 量 より おしなべて 1.5 倍 程 度 第 0 週 第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週 第 6 週 第 7 週 第 8 週 第 9 週 第 10 週 第 11 週 第 12 週 第 13 週 図 -Ⅱ キーワード 原 発 を 含 む 記 事 本 数 の 推 移

105 第 0 週 第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週 第 6 週 第 7 週 第 8 週 第 9 週 第 10 週 第 11 週 第 12 週 第 13 週 図 -Ⅱ キーワード 津 波 を 含 む 記 事 本 数 の 推 移 第 0 週 第 1 週 第 2 週 第 3 週 第 4 週 第 5 週 第 6 週 第 7 週 第 8 週 第 9 週 第 10 週 第 11 週 第 12 週 第 13 週 図 -Ⅱ キーワード ボランティア を 含 む 記 事 本 数 の 推 移 多 かったことがわかった 民 間 放 送 のテレビ 報 道 に 関 しても ほぼ 同 様 の 傾 向 があったこ とが すでに 調 査 会 社 の 分 析 結 果 からも 判 明 している これらの 知 見 をふまえると 全 般 的 な 傾 向 としては 津 波 災 害 よりも 原 発 事 故 の ほうがより 強 く リアリティの 共 同 構 築 過 程 に 影 響 を 与 えていたことが 推 察 される (2)ボランティアに 関 する 報 道 量 の 推 移 そこで 次 に 同 様 の 手 順 に 従 い ボランティア というキーワードを 含 む 記 事 本 数 を 算

106 出 した その 結 果 が 図 -Ⅱ である 原 発 というキーワードと 比 較 すれば ボランティア は およそ 3 分 の 1 から 4 分 の 1 程 度 の 量 で 推 移 していたことがわかる これを 見 るかぎり 室 﨑 (2011a)の 言 うよう な 原 発 報 道 がその 他 の 重 要 事 項 を 隠 す 効 果 があった とまで 言 い 切 ることは 難 しいと 考 える しかしながら 両 者 が 競 合 関 係 の 中 にあって 原 発 のプレゼンスが ボランテ ィア を 圧 倒 しており 人 々がボランティアに 関 する 多 様 な 情 報 に 接 する 機 会 が 限 ら れた 状 況 になっていた 可 能 性 を 指 摘 することはできそうである 4 ボランティア 報 道 のメタ メッセージ 分 析 とその 結 果 前 章 では ボランティア 報 道 の 量 的 な 傾 向 を 見 てきた 本 章 では ボランティア に 関 して どのような 情 報 がマスメディアを 介 して 世 に 伝 えられていたのか 質 的 な 傾 向 を 見 ていく テレビ( 第 1 項 ~ 第 2 項 )と 新 聞 ( 第 3 項 ~ 第 4 項 )の 報 道 内 容 分 析 をそれぞ れおこなった (1)NHKニュースのボランティア 報 道 ここではまず 災 害 対 策 基 本 法 上 の 指 定 公 共 機 関 であるNHKのニュース 原 稿 ( 全 国 放 送 ) を 代 表 的 なサンプルとして 分 析 をおこなう 3 月 11 日 から 4 月 10 日 までの 1 ヶ 月 間 のニュ ース 原 稿 の 中 から ボランティア 大 震 災 支 援 活 動 で & 検 索 し 41 本 の ニュース 原 稿 および 解 説 コラムのテキストデータを 得 た(それぞれの 放 送 回 数 は 不 明 で ある なお 特 集 番 組 は 本 調 査 の 母 集 団 に 含 まれていない 点 注 意 されたい) 本 調 査 に 入 る 前 に 対 象 となるニュース 原 稿 の 中 から 無 作 為 に 20 本 を 選 んで 予 備 的 な 調 査 を 実 施 した 本 研 究 の 目 的 に 鑑 み ニュース 原 稿 の 内 容 にどのような 記 述 主 張 が 含 まれているのかをKJ 法 で 分 類 して 分 析 カテゴリーを 抽 出 した その 結 果 (1) 一 般 ボランティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている (2) 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 にふれている (3) 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 から 支 援 する 取 り 組 みにふれている (4) 被 災 地 内 における 人 手 不 足 支 援 不 足 についてふれている (5) 企 業 団 体 などの 組 織 的 ないし 専 門 的 な 支 援 活 動 にふれ ている (6) 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている (7) 被 災 地 外 における 被 災 者 の 受 け 入 れ や 生 活 支 援 活 動 にふれている (8) 一 般 ボランティアの 活 動 に 関 する 課 題 や 困 難 さについ てふれている 以 上 8 つのカテゴリーを 抽 出 することができた これらをもとに 本 調 査 を おこない 全 データを 分 析 した( 重 複 該 当 ありで 集 計 を 実 施 ) その 結 果 を 図 -Ⅱ に 示 す まず 視 聴 者 に 対 して ボランティア 自 粛 をあからさまに 呼 びかけるような 支 援 活 動 に 強 くブレーキをかけるニュースは 精 読 したところ ほとんど 見 当 たらないことがわか った ただし 地 震 発 生 から 日 が 浅 い 3 月 14 日 のニュースでは 全 国 社 会 福 祉 協 議 会 で は 被 災 地 の 受 け 入 れ 体 制 が 十 分 に 整 っていないうちに 個 人 で 勝 手 に 向 かうと 混 乱 につな

107 一 般 ボランティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 に ふれている 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 か ら 支 援 する 取 り 組 みにふれている 被 災 地 内 における 人 手 不 足 支 援 不 足 につ いてふれている 企 業 団 体 などの 組 織 的 ないし 専 門 的 な 支 援 活 動 にふれている 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている 被 災 地 外 における 被 災 者 の 受 け 入 れや 生 活 支 援 活 動 にふれている 一 般 ボランティアの 活 動 に 関 する 課 題 や 困 難 さについてふれている 図 -Ⅱ NHKニュース ボランティア 報 道 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 ) がるため まず 自 分 が 住 んでいる 地 域 の 社 会 福 祉 協 議 会 に 問 い 合 わせてほしい としてい ます という 呼 びかけをおこなっていた また 一 般 ボランティアの 活 動 に 関 する 課 題 や 困 難 さについてふれている 原 稿 は 41 本 中 9 本 ( 全 体 の 22%)と それなりのプレゼンスを 占 めていた たとえば あるボラン ティア 団 体 の 報 告 会 の 模 様 を 伝 えたニュースの 中 では 物 資 の 配 送 にあたった 人 が ガソ リンが 足 りない 中 地 域 と 地 域 が 100 キロ 以 上 も 離 れている 所 があった また 現 地 は 依 然 寒 さが 厳 しく 気 楽 な 気 持 ちで 行 くべきではない と 話 したコメントが 引 用 されてい た(3 月 30 日 放 送 ) また 辻 元 総 理 補 佐 官 ( 当 時 )がボランティア 団 体 の 代 表 と 面 談 した ことを 伝 えるニュースの 中 では 原 子 力 発 電 所 の 問 題 が 起 きているので 現 場 のスタッ フも 不 安 を 抱 えながら 活 動 している 政 府 は 情 報 が 現 地 に 迅 速 に 伝 わるようにしてほし い といった 要 望 が 出 されました といった 表 現 がなされていた(3 月 16 日 放 送 ) こうし た 報 道 が これからまさにボランティアに 参 加 しようと 考 え 始 めていた 視 聴 者 の 意 欲 を 挫 くブレーキ 情 報 となった 可 能 性 を 指 摘 することはできよう その 一 方 で 支 援 活 動 のアクセルを 踏 むような 情 報 とも 言 える 一 般 ボランティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている 原 稿 や 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 にふれている 原 稿 は それぞれ 8 本 (20%) 9 本 (22%)となっていた また 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 から 支 援 する 取 り 組 みにふれている 原 稿 は 12 本 と 全 体 の 3 割 程 度 を 占 めていた NHKのボランティア 報 道 に 関 してここまで 見 てきたかぎりにおいては アクセルとブ レーキの 情 報 発 信 は それぞれ 相 半 ば 拮 抗 していたと 概 括 することができよう

108 (2)NHKニュース 放 送 におけるネガティブなメタ メッセージの 抽 出 ところで 図 -Ⅱ からすぐに 判 別 できるとおり 最 も 該 当 数 が 多 かったカテゴリ ーは 企 業 団 体 などの 組 織 的 ないし 専 門 的 な 支 援 活 動 にふれている 原 稿 ( 該 当 31 本 全 体 の 76%)だった これらの 多 くは 医 師 や 看 護 士 ミュージシャンやスポーツ 選 手 な ど 特 定 の 技 能 を 有 する 人 々や 団 体 の 取 り 組 みを 紹 介 するニュースであった こうしたニ ュースは 善 意 と 希 望 に 満 ちたストーリーとして 受 け 取 ることもできるが 一 般 の 名 も 無 きボランティアにとってみれば その 意 欲 を 挫 きかねない メタ メッセージ ( 矢 守, 2011) 注 ( 平 たくいえば 言 外 のメッセージ 1) )を 含 み 込 んでいた 可 能 性 を 指 摘 することができ る それは この 文 脈 に 即 して 言 えば まだ 今 はあなたの 出 番 ではありません 私 たち 有 力 者 に 任 せておきなさい という メタ メッセージ である また 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている 原 稿 は 15 本 と 全 体 の 37%を 占 めていた こうした 原 稿 の 中 には 本 当 は 現 地 でボランティアをしたいのですが 今 は 迷 惑 になるの で 募 金 を 呼 びかけました (3 月 17 日 放 送 )といった 市 民 の 声 を 半 ば 模 範 的 に 紹 介 したも のもあった もちろん 原 稿 文 中 の 事 実 =ファクト には 何 ら 誤 りはないのだが メ タ メッセージ を 解 釈 すれば わざわざ 被 災 地 に 駆 け 付 けると 被 災 者 に 迷 惑 になるかも しれないのだから とりあえず 間 接 的 な 支 援 に 専 念 しなさい と 呼 びかけているに 等 しい と 言 える 同 様 にして この 種 の メタ メッセージ を 補 強 したのではないかと 推 察 されるのが 被 災 地 外 における 受 け 入 れや 生 活 支 援 活 動 にふれている 原 稿 ( 該 当 7 本 全 体 の 17%) であった この 点 に 関 して 室 﨑 (2011b)は 被 災 地 に 行 かなくてもできる 支 援 があると 逃 げ 道 が 用 意 され 行 くのは 自 己 満 足 のために 迷 惑 をかけに 行 く 連 中 だというレッテルが 貼 られる と 指 摘 し さらにそれは ハードルを 高 くして 一 般 の 人 たちにボランティア に 行 くなといっているのに 限 りなく 等 しい ことであると 論 難 している (3) 東 京 読 売 新 聞 のボランティア 報 道 同 様 の 傾 向 は 新 聞 でも 見 られるのであろうか 続 いて 発 行 部 数 が 国 内 最 多 という 読 売 新 聞 社 の 記 事 データを 代 表 的 なサンプルとして 報 道 分 析 をおこなった 発 災 からの 1 ヶ 月 間 で ボランティア 大 震 災 支 援 活 動 の 各 キーワードを 含 む 記 事 を & 検 索 すると 205 本 の 記 事 が 該 当 した この 中 で 東 京 読 売 新 聞 ( 大 阪 中 部 西 部 を 便 宜 上 今 回 は 除 外 した)の 83 本 を 分 析 対 象 とすることにした 集 計 結 果 を 図 -Ⅱ に 示 す 全 体 としては 各 カテゴリーの 量 が ほぼ 均 等 にバランスされていることがわかる テ レビニュースと 比 較 して 1 本 の 記 事 に 書 き 込 めるテキストの 量 が 相 対 的 に 多 いため 多 岐 に 渡 る 主 張 を 記 述 することができていたものと 考 えられる ボランティアが 被 災 地 に 駆 け 付 けることに 対 してネガティブな 記 事 は 全 体 から 見 れば ごくわずかだった しかしながら やみくもに 被 災 地 に 入 るのは 危 険 (3 月 18 日 配 信 )

109 一 般 ボランティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 に ふれている 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 か ら 支 援 する 取 り 組 みにふれている 被 災 地 内 における 人 手 不 足 支 援 不 足 につ いてふれている 企 業 団 体 などの 組 織 的 ないし 専 門 的 な 支 援 活 動 にふれている 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている 被 災 地 外 における 被 災 者 の 受 け 入 れや 生 活 支 援 活 動 にふれている 一 般 ボランティアの 活 動 に 関 する 課 題 や 困 難 さについてふれている 図 -Ⅱ 東 京 読 売 新 聞 ボランティア 報 道 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 ) 役 に 立 てないどころか 危 険 な 目 に 遭 う (3 月 21 日 配 信 )など テレビよりも 主 張 を 明 確 にして 掲 載 しているものが 見 つかった 社 説 においても 経 験 豊 かなボランティア 団 体 は 即 戦 力 になるが 未 経 験 者 が 個 人 で 被 災 地 に 入 ってトラブルになることは 避 けなければ ならない と 強 く 釘 を 刺 していた(3 月 28 日 配 信 ) 読 売 新 聞 社 の 関 係 者 の 中 には 紙 面 に おいて こうした 傾 向 が 顕 著 にあったことを 認 めた 上 で さらに 震 災 3 ヶ 月 後 には 一 転 して 紙 面 でボランティア 参 加 の 必 要 性 を 訴 え 始 めたことをとらまえて マスコミのご 都 合 注 主 義 が 目 立 った 2) と 総 括 している 人 もいた( 安 富, 2011) (4) 東 京 読 売 新 聞 紙 上 におけるネガティブなメタ メッセージの 抽 出 集 計 上 該 当 数 が 最 も 多 かったのは 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている 記 事 であった ( 該 当 44 本 全 体 の 53%) 寄 付 や 募 金 を 勧 奨 すること 自 体 は 決 して 悪 いことではないが たとえば ボランティアとして 現 地 に 行 くより 被 災 地 支 援 の 経 験 がある 団 体 への 寄 付 が 一 番 効 果 的 だという ある 団 体 の 意 見 を 掲 載 した 記 事 などのように あからさまに 被 災 地 に 駆 け 付 けることに 対 してブレーキをかけるものもあった(4 月 4 日 配 信 ) また 寄 付 や 募 金 を 勧 奨 する 記 事 の メタ メッセージ を 解 釈 するならば それは 先 述 したとおり 被 災 地 に 行 かなくてもできる 支 援 がある ( 室 崎, 2011b)ということであ る なんとしても 被 災 地 に 足 を 運 んで 支 援 をおこないたいという 情 熱 に 対 して マスメデ ィアによる 報 道 が それは 賢 い 選 択 ではない と 水 を 差 した 可 能 性 を 指 摘 することがで きよう このような 報 道 の 効 果 もあってか 読 売 新 聞 社 の 世 論 調 査 では どのような 支 援 をした いか ( 複 数 回 答 )という 質 問 に 対 して 義 援 金 を 寄 付 (91%)が 他 を 圧 倒 しており 生

110 活 物 資 を 送 る (33%) 被 災 地 外 で 支 援 (26%) そして 被 災 地 でボランティア は わずか 9%となっていた(4 月 4 日 配 信 ) 5 被 災 地 メディアのボランティア 報 道 の 内 容 分 析 とその 結 果 前 章 では マスメディアの 代 表 的 なサンプルとして NHKニュースと 東 京 読 売 新 聞 と いう 東 京 発 の 媒 体 を 俎 上 にあげた 本 章 では それとの 相 違 を 確 かめるため 被 災 地 に 本 拠 を 置 くメディアのボランティア 報 道 を 分 析 する 対 象 としては 福 島 民 報 を 選 んだ 地 震 津 波 災 害 だけでなく 原 発 事 故 の 地 元 でもあるとみなすことができるためである (1) 福 島 民 報 のボランティア 報 道 発 災 からの 1 ヶ 月 間 で ボランティア 大 震 災 支 援 活 動 の 各 キーワードを 含 む 記 事 を & 検 索 すると 該 当 した 記 事 は 27 本 あった 集 計 結 果 を 図 -Ⅱ に 示 す 概 観 すると 3 つのカテゴリーに 収 斂 していたことがわかった すなわち 一 般 ボラン ティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 から 支 援 する 取 り 組 みにふれている 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている で あった (2) 福 島 民 報 紙 上 におけるポジティブなメタ メッセージの 抽 出 本 調 査 で 採 取 された 福 島 民 報 の 記 事 データは そのほとんどが 東 日 本 大 震 災 生 活 情 報 一 般 ボランティアが 被 災 地 で 活 動 する 必 要 性 についてふれている 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 に ふれている 一 般 ボランティアの 活 動 を 後 方 ないし 側 面 か ら 支 援 する 取 り 組 みにふれている 被 災 地 内 における 人 手 不 足 支 援 不 足 につ いてふれている 企 業 団 体 などの 組 織 的 ないし 専 門 的 な 支 援 活 動 にふれている 寄 付 行 為 や 募 金 活 動 にふれている 被 災 地 外 における 被 災 者 の 受 け 入 れや 生 活 支 援 活 動 にふれている 一 般 ボランティアの 活 動 に 関 する 課 題 や 困 難 さについてふれている 図 -Ⅱ 福 島 民 報 ボランティア 放 送 内 容 分 類 ( 記 事 本 数 )

111 という 特 設 コーナーのものだった これは 本 震 災 直 後 から 福 島 民 報 の 紙 面 に 配 置 された もので 生 活 支 援 に 関 する 情 報 が 一 覧 で 掲 載 されているものである たとえば 以 下 のよ うな 記 事 があった JA 新 ふくしま= 被 災 者 への 炊 き 出 しボランティアを 募 集 午 前 8 時 30 分 から 正 午 まで( 略 )エプロン 三 角 巾 マスクなどを 持 参 (3 月 16 日 配 信 ) こうした 記 事 の 中 には ボランティア 活 動 を 開 始 したグループの 連 絡 先 として 個 人 の 携 帯 電 話 の 番 号 をそのまま 紙 面 に 載 せているものもあった 福 島 高 有 志 が 福 島 市 森 合 御 山 地 区 を 中 心 に 数 人 が 自 宅 の 片 付 け 高 齢 者 や 体 の 不 自 由 な 方 を 手 伝 う( 略 ) 携 帯 ( ) へ (3 月 17 日 配 信 実 際 には の 箇 所 に 数 字 が 明 示 されていた)な どである 福 島 民 報 の 記 事 を 精 読 するかぎり ボランティアに 参 加 する/しない の 是 非 を 遠 巻 きに 議 論 するような 記 事 は 見 当 たらなかった その 代 わりに たとえばすでに 3 月 19 日 の 紙 面 には 県 内 ボランティア 活 動 広 がる という 記 事 が 載 っていた その 他 には 解 説 記 事 のようなものはほとんど 見 当 たらず いま 何 が 不 足 しているのか 自 分 たちに 何 がで きるのか すでに 何 が 着 手 可 能 となっているのか といった 端 的 な 情 報 が 紙 面 を 埋 め 尽 くしていた 読 者 には 苦 難 を 前 に それでもなんとかして 助 け 合 おう といった メタ メッセージ が 伝 えられていたのではないかと 推 察 することができよう それは 当 然 ボランティア 参 加 に 関 して アクセルを 踏 む 情 報 につながったのではないかと 考 えられる なお ここで 一 般 ボランティアの 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 にふれている 記 事 の 該 当 数 が 集 計 上 わずかしかなかったのは 具 体 的 な 取 り 組 み 状 況 をルポした 記 事 が 少 なかったこ とを 示 している 6 考 察 ここまで 第 3 節 ~ 第 5 節 にわたって 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 を 内 容 分 析 した 結 果 を 詳 述 してきた 要 点 をまとめると 以 下 のとおりである 1 地 震 津 波 災 害 報 道 よりも 原 発 報 道 のほうが 報 道 全 体 の 中 で 占 めるプレゼンス が 高 かった 2 ボランティアに 関 する 報 道 は 確 かに 原 発 報 道 に 埋 もれた 感 もあるが 持 続 的 に おこなわれていた 3 東 京 に 本 拠 を 置 くマスメディアによって 発 信 されたボランティア 報 道 の 中 には ボランティア 参 加 に 対 してブレーキとなる ネガティブなメタ メッセージを 含 んだもの が 多 分 にあった 4 その 一 方 で 被 災 地 に 本 拠 を 置 くメディアから 発 信 されたボランティア 報 道 は 端 的 に 事 実 だけを 伝 えていた これらの 結 果 をふまえて 本 章 では 大 きく2つの 観 点 から 基 礎 的 な 考 察 をおこなう

112 ひとつは 広 域 災 害 発 生 時 におけるマスメディアのボランティア 報 道 のありかたに 関 して である( 第 1 項 ) 近 い 将 来 に 必 ず 起 きると 言 われている 南 海 トラフにおける 巨 大 地 震 津 波 災 害 などの 広 域 災 害 を 想 定 した 場 合 には 東 日 本 大 震 災 で 浮 き 彫 りになった 課 題 が より 深 刻 なかたちで 再 発 するおそれがあると 考 えられる いま 一 度 報 道 機 関 に 求 められる 改 善 点 を 整 理 しておく 必 要 があろう もうひとつは ボランティア 活 動 とマスメディア 報 道 の 関 係 性 をめぐる 本 質 的 な 難 点 に ついてである( 第 2 項 ) 近 年 ボランティアの 指 南 書 の 類 いをひもとくと マスメディア を 通 じて 広 報 する/されることを 前 提 に 活 動 するよう 助 言 するものが 散 見 される しかし ながら こうした 形 態 を 無 反 省 無 批 判 に 推 奨 してよいものなのか ボランティアの 本 旨 に 照 らしてあらためて 検 討 しておく 必 要 があろう (1) 広 域 災 害 時 におけるボランティア 報 道 萩 上 (2011)は 東 日 本 大 震 災 の 救 援 流 言 の 問 題 を 検 証 した 論 考 の 中 で 多 くの 人 が 善 行 へのスタンバイ 状 態 にあった( 略 ) その 一 方 で 何 をすれば 善 行 になるのかとい う 情 報 が 不 足 していました と 指 摘 している 確 かに 本 研 究 の 調 査 でも 明 らかになった とおり 原 発 報 道 が 優 勢 を 保 つ 中 で ボランティア 報 道 は 相 対 的 にプレゼンスが 低 かっ たことがわかっている しかし 萩 上 の 言 う 後 段 ( 善 行 に 関 する) 情 報 の 不 足 という 指 摘 は 妥 当 であろうか マスメディアによるボランティア 報 道 は 一 定 の 量 が 確 保 され 続 けていた そして これ らの 情 報 がソーシャル メディアなどを 通 じて 拡 散 していた 事 実 を 見 逃 すわけにはい かない( 執 行, 2011) ボランティアをめぐる 情 報 は 実 際 には 社 会 で 渦 巻 いていたといっ てもよい 状 況 にあったと 考 えられる 問 題 の 核 心 は 情 報 の 量 や 正 確 さなどではなく(もちろんそれらがしっかり 担 保 されてい ることは 必 要 であるのだが) メタ メッセージ も 含 めたメッセージのありよう 換 言 すれば リアリティ がどのように 形 成 されていたのかという 点 にあったと 考 えられる ネガティブな メタ メッセージ を 帯 びた 情 報 が 東 京 に 本 拠 を 置 くマスメディアによ って 世 に 広 められていき そのプロセスを 通 して 共 同 構 築 された リアリティ が 善 行 へのスタンバイ 状 態 を 保 持 させ 続 けたことにこそ 問 題 が 潜 んでいたと 概 括 することがで きよう 確 かに 震 災 から 1 ヶ 月 近 く 経 ってもなお 一 般 のボランティアが 足 を 踏 み 入 れることに 危 険 を 伴 う 場 所 はあったであろう しかし 被 災 地 すべて に 関 して 一 様 にブレーキを かける 必 要 などなかったことも また 事 実 である たとえば 地 震 発 生 から 10 日 も 経 ずし て 東 京 から 北 上 するルートではなく 青 森 から 南 下 するルートをとったボランティア 団 体 も 複 数 あった( 日 本 災 害 救 援 ボランティアネットワーク, 2011) 遅 くとも 3 月 末 の 時 点 では あちこちで( 東 京 や 大 阪 においてすら)ボランティアバスによるオペレーションが 敢 行 され 始 めていた(ピースボート, 2011) このような 個 別 具 体 の ローカリティ

113 ( 渥 美, 2011b)を 重 視 した 情 報 提 供 こそが 広 域 災 害 時 においては より 一 層 求 められ ると 考 える その 点 において 参 考 になるのが 第 5 節 で 分 析 した 福 島 民 報 のボランティア 報 道 であ る 被 災 地 の 中 において すでに 展 開 されている 支 援 に 関 する 情 報 を 淡 々と 伝 えていたこ とが 本 調 査 によってあらためて 示 された 東 京 に 本 拠 を 置 くマスメディアが 被 災 地 を 遠 巻 きにして 汎 用 性 の 高 い 解 説 記 事 を 書 きあぐねていたとするならば こうした 地 元 メディ アが 何 をどのように 報 道 しているのかを 真 摯 にウォッチすることによって もっと ロー カリティ に 根 ざしたリアリティの 共 同 構 築 に 参 画 する 道 を 開 くこともできたのではない かと 考 える 現 状 日 本 社 会 では マスメディアの 東 京 中 心 垂 直 統 合 ( 宮 台 飯 田, 2011) 構 造 や 公 共 放 送 と 民 間 放 送 による 複 占 ( 松 浦, 2012) 構 造 が 確 立 して 久 しいといわれている 前 者 は 中 央 が 地 方 を 支 配 し 地 方 が 中 央 に 依 存 する 関 係 性 から ローカリティが 等 閑 視 されている 状 況 を 批 判 している 後 者 は 豊 かなローカリティを 尊 重 した 第 三 極 のメディ アが 育 ちにくい 閉 塞 を 批 判 している こうした 構 造 が 壁 となって ローカリティに 根 ざし たリアリティの 共 同 構 築 のアプローチが 図 られないとするならば 業 界 業 態 の 構 造 自 体 を 問 い 直 す 視 座 も 今 後 は 強 く 求 められることになるであろう (2)ボランティアと 報 道 の 関 係 性 ここでは 考 察 をさらに 一 歩 進 めて ボランティアとして 被 災 地 に 駆 け 付 けることの 是 非 を そもそもマスメディアの 論 調 とすりあわせる 必 要 性 があるのか ボランティアと 報 道 の 関 係 性 について 検 討 しておく 社 会 貢 献 学 会 発 刊 のテキストによれば ボランティア 活 動 の 特 性 は まず1 自 発 性 主 体 性 次 に2 社 会 性 公 共 性 そして3 無 償 性 さらに4 先 駆 性 創 造 性 と ある(TKK3 大 学 連 携 プロジェクト 共 同 テキスト 開 発 委 員 会, 2011) 八 ッ 塚 (2010)は このうち1と4に 力 点 を 置 き 次 のように 述 べている 自 らの 思 考 で 自 由 な 決 断 を 行 い きめ 細 かな 支 援 や 長 期 的 な 関 わりを 続 けていける 活 動 類 例 がなけ れば 新 しいものをつくりだしていける 創 造 的 な 活 動 それがボランティアである そして この4に 関 して 渥 美 (2011a)は 災 害 NPOであれば 行 政 企 業 と 連 携 し て 救 援 活 動 を 展 開 しつつも 既 存 の 社 会 には 実 現 していなかった 新 たな 可 能 性 を 示 し 続 け る 活 動 であればこそ 意 義 深 いと 考 える として あらためて 秩 序 化 のドライブ は 認 め られないものとして 斥 けている さらに 矢 守 (2009)は ボランティアの 特 性 として 5 無 根 拠 性 をあげている 理 不 尽 に 奪 われた 者 にとって 理 不 尽 なまでに すなわち 無 根 拠 に 贈 与 する 者 こそ ボ ランティアだという 何 でもありや や 不 良 ボランティア の 構 え( 村 井, 2011b)は 無 根 拠 かつ 積 極 的 な 関 わりをもって 被 災 者 と 共 に 生 きることを ただ 傍 らにいること や 寄 り 添 い の 構 え( 渥 美, 2011c)は 無 根 拠 かつ 消 極 的 な 関 わりをもって 被 災 者 と 共 に

114 生 きることを 示 している このように ボランティアの 特 性 のうち 特 に4や5を 重 要 視 する 立 場 からすれば ボ ランティアに 参 加 する/しない の 是 非 を マスメディアの 報 道 を 参 照 して 判 断 するこ とは 原 理 的 に 言 って 相 容 れないものと 考 えることができよう さらに 踏 み 込 んでいえば 秩 序 化 のドライブ にマスメディアが 加 担 している リスク 社 会 においては いまこ そボランティアの 原 点 に 立 ち 帰 って 1 自 発 性 主 体 性 から 再 出 発 することが 求 めら れるのではあるまいか ポジティブであれ ネガティブであれ アクセルであれ ブレーキであれ マスメディ アの 情 報 に 注 意 せよ という よりメタな メタ メッセージ の 勢 いに 任 せる 風 潮 に 対 しては いま 一 度 距 離 をおき なによりもまず 被 災 した 人 たちのほうに 目 を 向 け その 声 に 耳 を 傾 けることこそが 災 害 ボランティアの 活 動 をかけがえのないもの( 渥 美, 2011d) にすることにつながると 考 える そのためにも 本 研 究 が 提 起 する メディア イベント をめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル から 常 に 事 態 を 反 省 的 にまなざすことが 求 めら れよう 注 1) 野 村 (2010)は 自 分 ではコントロールできない 自 然 にこぼれ 落 ちてしまうメッセージのこと を メッセージ ギヴン オフ と 呼 んでいる これも メタ メッセージ と ほぼ 同 等 の 概 念 であ ると 考 えられる なお メタ メッセージ の 概 念 に 関 しては Bateson(1972=2000)も 参 照 した 注 2) ただし おなじく 安 富 (2011)によれば ネット 配 信 においてのみであるが 読 売 新 聞 東 京 本 社 の 医 療 情 報 部 記 者 が ボランティアは 迷 惑 ではない という 趣 旨 のインタビュー 記 事 を 発 信 して いたとのことである

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116 第 11 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (1) 阪 神 淡 路 大 震 災 以 降 の NHKスペシャル の 内 容 分 析 1 はじめに 本 章 ならびに 第 12 章 第 13 章 では 本 研 究 が 提 起 する メディア イベントをめぐ るリアリティの 共 同 構 築 モデル にもとづき 予 防 報 道 のフェーズにおける 課 題 抽 出 を あらためておこなう 本 章 では テレビ 特 番 を 第 12 章 では 新 書 を 第 13 章 では 主 に 新 聞 を 対 象 として それぞれ 内 容 分 析 をおこなった 2 問 題 予 防 報 道 の 足 元 には 常 に マンネリ 化 の 陥 穽 が 待 ち 受 けている( 近 藤, 2011) その 壁 を 乗 り 越 えるために 制 作 者 側 は テーマを 変 えたり 見 せ 方 を 変 えたり あの 手 この 手 でなんとか 新 味 を 出 そうと 苦 慮 してきた 現 状 の 防 災 行 政 の 進 展 を 見 るかぎり も ちろん 旧 来 の 予 防 報 道 は ある 程 度 はその 効 果 を 発 揮 してきたと 考 えることもできよ う しかしながら 東 日 本 大 震 災 のような 甚 大 な 被 害 を 目 の 当 たりにしたとき もっと 工 夫 できたのではないか といった 後 悔 の 念 がわくのも 無 理 からぬことである ここにおいて 問 題 の 焦 点 を 特 集 テーマの 設 定 や 映 像 表 現 の 工 夫 といった 制 作 者 側 の 力 量 やテクニックだけにしぼってしまうと 旧 来 の 弊 を 温 存 してしまうおそれがある そこで 本 研 究 では 新 たな 選 択 肢 を 探 索 するために メディア イベントをめぐるリア リティの 共 同 構 築 モデル の 観 点 からアプローチする すなわち 予 防 報 道 の 番 組 群 が メディア イベント をどのように 構 成 しようとしていたのか 放 送 の 構 造 (フォーマ ット) 自 体 にスポットをあてるのである 3 対 象 対 象 は 災 害 対 策 基 本 法 の 指 定 公 共 機 関 であるNHKが 1989 年 ( 平 成 元 年 )の 春 以 来 日 本 全 国 に 向 けて( 近 年 は 全 世 界 に 向 けて) 放 送 してきた 大 型 番 組 NHKスペシャル を 選 んだ NHK(2013)によれば 当 該 番 組 は すでに 23 年 間 で 2,387 本 の 放 送 をおこ なっており NHKスペシャルの23 年 間 は 巨 大 災 害 を 記 録 し 続 ける 年 月 でもありまし た とのことである その 間 NHKは 雲 仙 普 賢 岳 火 砕 流 奥 尻 島 津 波 阪 神 淡 路 大 震 災 三 宅 島 噴 火 新 潟 県 中 越 地 震 そして 東 日 本 大 震 災 といった 災 害 の 緊 急 報 道 や 復 興 報 道 に 尽 力 している NHKスペシャル は 日 本 を 代 表 する 災 害 報 道 の 特 番 シ リーズといっても 過 言 ではあるまい 特 に 1995 年 以 降 は 阪 神 淡 路 大 震 災 のメモリアル デー(1 月 17 日 )に 毎 年 必 ず 防 災 に 関 連 した NHKスペシャル が 放 送 されてきた そこで このうち 東 日 本 大 震 災 が 起 きるまでの 10 年 間 に 放 送 され かつ 端 的 に 予

117 表 -Ⅱ NHKスペシャル( 予 防 報 道 関 連 ) 分 析 対 象 リスト No. 震 災 から 放 送 年 月 日 タ イ ト ル Size( 秒 ) 1 16 年 2011 年 1 月 17 日 防 災 力 クライシス そのとき 被 災 者 を 誰 が 救 うか 年 2008 年 1 月 17 日 命 のセーフティーネットは 築 けるか ~ 生 かされない 震 災 の 教 訓 ~ 年 2007 年 1 月 17 日 情 報 テクノロジーは 命 を 救 えるか ~ 阪 神 淡 路 大 震 災 の 教 訓 ~ 年 2006 年 1 月 17 日 活 断 層 列 島 リスクが 足 元 に 迫 っている 年 2004 年 1 月 17 日 地 域 防 災 力 が 命 を 救 う 阪 神 淡 路 大 震 災 の 教 訓 年 2003 年 1 月 17 日 減 災 ~ 阪 神 大 震 災 の 教 訓 はいま~ 2700 防 報 道 を 企 図 したものと 判 別 できる 番 組 を 対 象 として(N=6 本 総 時 間 数 は 17,340 秒 ) 番 組 の 内 容 分 析 をおこなった( 表 -Ⅱ ) 4 方 法 メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル をベースとして リアリ ティ ステイクホルダーごとのプレゼンス すなわち 登 場 人 物 のプレゼンス を 量 的 および 質 的 に 分 析 することにした 具 体 的 には まず 登 場 人 物 のカテゴリー( 住 民 行 政 メディア 専 門 家 )ごとの 登 注 場 時 間 数 を 集 計 し そこから(1) 登 場 支 配 率 と(2) 発 話 支 配 率 を 算 出 した 1) 前 者 は 番 組 時 間 数 (Size: 単 位 は 秒 )を 分 母 として 各 カテゴリーの 総 登 場 時 間 数 を 除 したものである また 後 者 は 各 登 場 人 物 が 画 面 上 で 発 話 している 時 間 数 を 登 場 人 物 全 員 の 総 発 話 時 間 数 で 除 したものである さらに(3) 番 組 の 中 で 登 場 人 物 がどのよう に 紹 介 されていたのか 質 的 なデータも 作 出 した 分 析 対 象 となった 番 組 の 中 で 画 面 に 映 し 出 された 人 が 登 場 人 物 であると 認 定 する 判 断 基 準 としては 本 調 査 では 名 前 が 紹 介 された 人 に 限 定 する 方 法 を 採 用 した たと えば グループショット(いちどに 多 人 数 が 映 っている 映 像 )などでは 各 人 物 がどのカ テゴリーに 属 しているのか 詳 細 を 把 握 できない 場 合 が 多 いからである なお 測 定 単 位 とする 秒 数 は パーソナル コンピュータの 汎 用 ソフト(Windows Mediaplayer)のタイム 注 カウンターで 判 読 できる 水 準 を 目 安 として 1 秒 未 満 はすべて 切 り 上 げることにした 2) 5 結 果 登 場 場 支 配 率 と 発 話 支 配 率 の 結 果 は それぞれ 表 -Ⅱ 表 -Ⅱ のとおりとなった 全 般 的 な 傾 向 としては 登 場 支 配 率 においても 発 話 支 配 率 においても 一 定 し てプレゼンスが 高 かったのは メディア や 専 門 家 であり プレゼンスが 低 かったの は 住 民 であることがわかった( 表 -Ⅱ ) 行 政 は 住 民 よりは 高 いプレ ゼンスを 示 すことが 多 い 傾 向 にあったが しかし メディア や 専 門 家 を 差 し 置 いて

118 表 -Ⅱ NHKスペシャル 登 場 支 配 率 (%) 平 均 メディア 専 門 家 行 政 住 民 表 -Ⅱ NHKスペシャル 発 話 支 配 率 (%) 平 均 メディア 専 門 家 行 政 住 民 ( 注 ) 少 数 第 二 位 を 四 捨 五 入 しているため 4カテゴリーの 合 計 は 100 にならない 場 合 がある 表 -Ⅱ 登 場 支 配 率 と 発 話 支 配 率 の 順 位 表 メディア 専 門 家 行 政 住 民 登 場 発 話 登 場 発 話 登 場 発 話 登 場 発 話 トップになっているケースは 登 場 支 配 率 において1 回 しかなかった(このときの 発 話 支 配 率 は 3 位 になっていた 再 び 表 -Ⅱ を 参 照 ) メディアのカテゴリーは 平 均 すると 登 場 支 配 率 が 一 番 高 かった 6 本 中 2 本 で 登 場 支 配 率 が1 位 3 本 が2 位 となっていた これは 番 組 の 進 行 をアナウンサーが 担 っていたことが 強 く 影 響 している 発 話 支 配 率 が 高 い Sample No.1 の 場 合 番 組 進 行

119 を 男 性 アナウンサー データ 紹 介 を 女 性 アナウンサーが 担 っていた また Sample No.6 の 場 合 には 番 組 進 行 を 男 性 アナウンサー 解 説 を 女 性 記 者 が 担 っていた メディアに 次 いで 登 場 支 配 率 の 平 均 値 が 高 かったのは 専 門 家 のカテゴリーであ った 番 組 進 行 のアナウンサーの 質 問 に 答 えるかたちで スタジオで 詳 しく 解 説 をおこな っていたことが 強 く 影 響 している 登 場 支 配 率 でも 発 話 支 配 率 でも3 本 の 番 組 で1 位 を 占 めていた Sample No.1 で 登 場 支 配 率 と 発 話 支 配 率 の 値 が 0 になって いるのは 当 該 番 組 では VTRにもスタジオ 解 説 にも 専 門 家 が 出 演 しない 構 成 になって いたからである 行 政 のカテゴリーは 登 場 支 配 率 も 発 話 支 配 率 も 平 均 値 の 順 位 は3 位 であった Sample No.1 においてのみ 登 場 支 配 率 が1 位 になっていた これは 当 該 番 組 が 地 域 防 災 力 の 縮 減 傾 向 をテーマとし 自 治 体 職 員 を 主 人 公 に 据 えてVTRをドキュメンタリ ータッチで 構 成 していたからであると 推 察 される しかし Sample No.1 では 登 場 支 配 率 が1 位 であるにも 関 わらず 発 話 支 配 率 は2 位 であり そのプレゼンスはメディアの 半 分 程 度 しかなかった これは 自 治 体 職 員 は 画 面 に 映 ってはいるが ずっと 発 話 している わけではなかったことを 示 している なんらかのメッセージを 発 信 する 役 割 は 結 局 お もにメディアが 担 っていたものと 考 えられる 住 民 のカテゴリーは 平 均 値 でみると 登 場 支 配 率 も 発 話 支 配 率 も いずれも 最 下 位 であった 登 場 支 配 率 では3 本 行 政 よりも 順 位 が 上 だった これが 発 話 支 配 率 では2 本 となっていた Sample No.5 においてのみ 登 場 支 配 率 が1 位 になって いた これは 当 該 番 組 が 地 域 住 民 の 自 助 や 共 助 にフォーカスした 内 容 であったためで あると 考 えられる ただし Sample No.5 の 発 話 支 配 率 の 順 位 は 専 門 家 メディアに 次 ぐ3 位 であった ここでも なんらかのメッセージを 発 信 する 役 割 は 住 民 以 外 のカテ ゴリー すなわち 専 門 家 やメディアであったものと 考 えられる 6 考 察 メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル においては リアリティ ステイクホルダーが それぞれ 防 災 や 復 興 の 取 り 組 みに 内 在 して ともにコトをなす ことが 期 待 される もちろん 各 主 体 における プロフェッショナリズム を 否 定 するも のではなく それぞれの 立 ち 位 置 を 尊 重 したうえで しかし 個 別 具 体 のローカル な 現 場 においては まずもって 住 民 が 主 役 になることが 実 現 されなければならな い ところが 今 回 予 防 報 道 の 番 組 群 を 内 容 分 析 した 結 果 からみると 従 来 の 番 組 フ ォーマットでは ちょうどその 反 対 の 傾 向 すなわち 住 民 のカテゴリーは 主 役 の 座 についているどころか 脇 役 の 座 に 追 いやられている 可 能 性 が 示 唆 された これは 画 面 に 登 場 する 住 民 のなかで さいごまで 名 前 が 表 示 ( 紹 介 )されなかった 人 が 多 数 いたことからも 傍 証 されている また 名 前 が 紹 介 された 登 場 人 物 であっても 耐 震 診 断 をおこなった さん や 地 震 が 来 ると 家 が 倒 壊 するのではないかと 心 配 している

120 さん といったナレーションによって 簡 略 にしか 紹 介 されていない 場 合 が 多 かった 住 民 の 扱 いは きわめて 没 個 性 的 で 防 災 活 動 の 困 難 性 といった 番 組 上 のコンテキス トの 中 で 一 定 の 役 割 を 与 えられた 存 在 に 過 ぎない いわば 記 号 と 化 していたことが うかがえる 番 組 の 中 で 住 民 たちがローカルな 現 場 において どのように 生 きてきた のか( 歴 史 や 過 去 ) どのように 生 きていこうとしているのか( 未 来 や 展 望 ) そもそもい まどのような 暮 らしを 送 っているのか( 背 景 や 思 い)が 詳 しく 描 かれていることは ほと んどなかった 住 民 という 記 号 の 役 割 は メディア の 進 行 によって 導 き 出 され た 専 門 家 の 知 見 をおしいただく 受 動 的 なものでしかなかったと 考 えられる これは 旧 来 のマスコミュニケーション モデルにおける 二 項 対 立 図 式 を 焼 き 直 したものであ ると 理 解 することができよう(なお 第 13 章 でも 被 災 住 民 のプレゼンスの 低 さが 指 摘 される) こうした 傾 向 は 緊 急 報 道 の 検 証 をおこなった 第 7 章 で 浮 かび 上 がった 問 題 リア リティ ステイクホルダーの 偏 り と 相 同 であるといえる 緊 急 報 道 の 際 にも 気 象 庁 や 専 門 家 キャスターや 記 者 のプレゼンスが 高 い 一 方 で 住 民 のプレゼンスが 極 端 に 少 なく 仮 にあったとしても 災 害 時 要 援 護 者 に 限 られていた 点 が 指 摘 されていた ただし 本 章 の 予 防 報 道 分 析 に 関 して 付 言 しておくと それならば 登 場 支 配 率 や 発 話 支 配 率 が1 位 だった メディア のカテゴリーが 事 態 の 主 役 本 来 の 意 味 での 中 心 的 で 主 導 的 な 存 在 の 座 を 占 めていたのかといえば 決 してそうとは 言 えない 点 注 意 が 必 要 である メディア のカテゴリーに 属 する 登 場 人 物 は 番 組 を 進 行 し 専 門 家 に 質 問 し 話 を 展 開 し 解 説 し まとめをおこなっていた しかしその 際 の 多 くの 発 話 内 容 は 事 態 に 内 在 する 当 事 者 としてのそれではなかった たとえば メディア 自 身 がみずからを 主 語 として 自 分 は 耐 震 補 強 をしているのか 否 か 自 分 は 地 域 活 動 に 取 り 組 んでいるのか 否 か 自 分 は 情 報 テクノロジーをどのように 活 用 しているのか 等 々 具 体 を 語 る 場 面 は 一 度 も 無 かった 防 災 に 関 連 する 情 報 を センター (テレビスタジオ)で 集 約 してから 全 国 に 向 けて 伝 達 することはしても 地 味 で 地 道 な 防 災 活 動 に 自 身 がコミッ トする 構 えを 見 せることまではしていなかった このような 点 をふまえると 調 査 対 象 とした NHKスペシャル では リアリティ ステイクホルダーの 四 者 < 住 民 行 政 メディア 専 門 家 >の 関 係 性 をより 豊 かにする 番 組 構 成 には 成 り 得 ていなかったことがうかがえる 問 題 の 構 造 や 解 決 策 を 知 っている のは 常 に 専 門 家 だけであり 住 民 はそれを 知 らない がため 常 に 教 わらなけ ればならない 受 動 的 な 立 場 に 固 定 されていた こうして 視 聴 者 (その 多 くは 住 民 )は 他 律 的 な 自 律 ( 近 藤, 2007)や ダブル ダブル バインド ( 矢 守, 2009) ともにベイ トソンを 引 いていることに 留 意 せよ の 閉 塞 した 状 況 のなかに 再 び 投 げ 込 まれてしまう のである なお 本 調 査 で 見 出 された 課 題 を すぐに 予 防 報 道 全 般 に 敷 衍 することには 無 理 が あろう 番 組 の 演 出 手 法 は 多 種 多 様 であり 反 例 を 見 つけることは 難 しくない 今 後 は N

121 HKスペシャル 以 外 の 番 組 にも 調 査 対 象 を 広 げていくなかで 予 防 報 道 をめぐるリア リティがどのように 構 成 されているのかを 慎 重 に 見 極 めていく 必 要 がある また あわせ て 視 聴 者 を 含 む 多 様 なリアリティ ステイクホルダーに 対 して 番 組 をどのように 受 け 止 めたかヒアリングをおこない 多 角 的 に 検 証 していくことが 求 められると 考 える 注 1) 登 場 人 物 がオフトークの 場 合 すなわち 映 像 に 顔 などが 映 っていなくても 声 のみ 出 演 している 場 合 それは 登 場 しているものとしてカウントした 注 2) 放 送 の 現 場 では 通 常 30 分 の1 秒 単 位 (1フレームという)で 作 業 をおこなう

122 第 12 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (2) 2008 年 四 川 大 地 震 に 関 して 日 本 で 発 刊 された 新 書 の 内 容 分 析 1 はじめに 災 害 報 道 における3 機 能 < 緊 急 報 道 復 興 報 道 予 防 報 道 > は フェーズ ごとに1 対 1の 対 応 をなす 単 線 的 一 方 向 的 なものではない 点 すでに 第 1 章 で 述 べた 予 防 報 道 の 機 能 も 前 章 にみたような 平 素 の 番 組 放 送 だけではなく 広 く 緊 急 時 復 興 時 の 報 道 においても その 作 用 をとらえることできる そこで 本 章 と 次 章 では 災 害 発 生 時 から 間 もない 局 面 であっても それが 予 防 報 道 に 該 当 すると 考 えられる 災 害 報 道 を 対 象 として その 内 容 分 析 をおこなう 本 章 では 国 内 / 国 外 という 隔 たり 次 章 では 被 災 内 / 被 災 地 外 という 隔 たりが 問 題 構 造 の 背 景 にある 2 問 題 : 国 際 情 勢 というコンテキストに 依 存 して 構 築 されるリアリティ メディアの 存 在 が 前 提 となり( 吉 見, 1994) メディアが 環 境 化 ( 藤 竹, 2004)した 現 代 において メディアが 伝 える 災 害 のイメージは 事 態 の 純 粋 な 複 製 であるどころか それは 表 象 をめぐる 闘 争 ( 阿 部, 2008)を 経 て 変 容 したものであることは 間 違 いない 本 研 究 でいうリアリティの 共 同 構 築 をめぐるポリティクスは 時 代 や 社 会 のコンテキスト によって 大 きく 左 右 される 自 然 災 害 であっても その 例 外 ではない 特 に 外 国 で 起 き た 災 害 に 関 しては 国 際 情 勢 という 文 脈 を 抜 きにして そのリアリティを 反 省 的 にまなざ すことはできない そこで 本 章 では 2008 年 に 中 国 で 起 きた 四 川 大 地 震 (5.12 汶 川 大 地 震 )を 対 象 として 日 本 で 数 多 く 出 版 され 続 けている 新 書 のなかで 当 該 事 象 がどのように 取 り 扱 われてい るか 内 容 分 析 をおこない 日 中 関 係 という 現 時 点 では ネガティブなコンテキストの 中 で 形 成 されたリアリティを 読 み 解 いていく 3 対 象 と 方 法 新 書 は 学 術 論 文 や 専 門 書 などよりも トピックに 敏 感 に 反 応 して 素 早 く 公 刊 され るため 時 代 や 社 会 のコンテキストの 影 響 を 受 けやすいと 考 えられる また テレビ ラ ジオ 雑 誌 新 聞 といった 他 のメディアよりも ひとつのテーマに 関 する 情 報 の 量 が 多 い ため 表 象 された 災 害 イメージが 明 瞭 で リアリティを 感 取 しやすいという 特 徴 がある 本 調 査 では 大 型 書 店 をまわり 中 国 に 関 係 していると 思 われる 新 書 を 可 能 な 限 り 網 羅 的 に 入 手 するようにした ただし 発 行 年 月 日 は 2001 年 以 降 のものに 限 定 した これは 日 中 関 係 が 硬 直 化 して 政 冷 経 熱 と 呼 ばれた 小 泉 政 権 下 から 安 倍 福 田 麻 生 鳩 山 と 内 閣 総 理 大 臣 が 目 まぐるしく 変 わった ほぼ 10 年 間 にあたる サンプル 数 が 50 冊 に 達 した 時 点 で 分 析 に 移 ることにした(2010 年 4 月 ~5 月 に 採 取 )

123 表 -Ⅱ 中 国 に 関 連 する 新 書 サンプル 50 冊 ( 発 刊 ) 番 号 書 名 編 著 者 名 発 行 年 月 四 川 記 述 手 抜 き 工 事 緊 急 援 助 隊 四 川 大 地 震 に 関 する 内 容 分 類 少 数 民 族 情 報 統 制 その 他 主 な 内 容 1 中 国 人 の 心 理 と 行 動 園 田 茂 人 中 国 人 という 生 き 方 田 島 英 一 中 国 報 道 の 読 み 方 高 井 潔 司 中 国 経 済 真 の 実 力 森 谷 正 規 中 国 はなぜ 反 日 になったか 清 水 美 和 中 国 語 はおもしろい 新 井 一 二 三 中 国 文 明 の 歴 史 岡 田 英 弘 多 民 族 国 家 中 国 9 日 中 はなぜわかり 合 えないのか 王 柯 莫 邦 富 中 国 は 社 会 主 義 で 幸 せになったのか 北 村 稔 反 日 と 反 中 横 山 宏 章 BRICs 新 興 する 大 国 と 日 本 門 倉 貴 史 日 中 関 係 毛 里 和 子 権 力 社 会 中 国 と 文 化 社 会 日 本 王 雲 海 中 国 10 億 人 の 日 本 映 画 熱 愛 史 劉 文 兵 中 国 大 国 の 虚 実 日 本 経 済 新 聞 社 中 国 アジア 日 本 天 児 慧 日 中 2000 年 の 不 理 解 王 敏 今 の 中 国 がわかる 本 沈 才 彬 中 国 を 知 る ビジネスのための 新 しい 常 識 遊 川 和 郎 新 しい 中 国 古 い 中 国 佐 藤 一 郎 中 国 雑 話 中 国 的 思 想 酒 見 賢 一 中 国 を 追 われたウイグル 人 水 谷 尚 子 中 国 に 人 民 元 はない 田 代 秀 敏 中 国 問 題 の 内 幕 清 水 美 和 中 国 汚 染 公 害 大 陸 の 環 境 報 告 相 川 泰 これが 中 国 人 だ! 佐 久 協 不 平 等 国 家 中 国 園 田 茂 人 日 中 アジア トップ への 条 件 莫 邦 富 猛 毒 大 国 中 国 を 行 く 鈴 木 譲 仁 有 31 中 国 が 笑 う 日 本 の 資 本 主 義 跡 田 直 澄 チベット 問 題 を 読 み 解 く 大 井 功 有 ネット 社 会 核 施 設 33 変 わる 中 国 変 わるメディア 渡 辺 浩 平 有 ネット 社 会 義 援 金 騒 動 ボランティア 34 中 国 人 の 正 体 金 谷 よしの 池 田 有 35 中 国 の 秘 密 結 社 が 共 産 党 政 権 を 倒 す 日 茅 沢 勤 有 秘 密 結 社 36 中 国 ビジネスとんでも 事 件 簿 範 雲 寿 有 法 律 専 門 職 緩 和 37 中 国 はチベットからパンダを 盗 んだ 有 本 香 日 本 と 中 国 相 互 誤 解 の 構 造 王 敏 有 39 新 しい 中 国 人 ネットで 団 結 する 若 者 たち 山 谷 剛 史 有 ネット 社 会 義 援 金 騒 動 五 輪 関 連 40 加 油 (ジャアヨウ)! 五 輪 の 街 から 重 松 清 有 五 輪 仮 設 住 宅 PTSD 被 災 者 の 声 観 光 41 ルポ 中 国 欲 望 大 国 富 坂 聰 有 格 差 社 会 ネット 社 会 義 援 金 騒 動 42 中 国 という 難 問 石 川 好 有 外 省 人 農 民 工 43 中 国 ニセモノ 社 会 事 情 田 中 淳 古 代 中 国 の 虚 像 と 実 像 落 合 淳 思 なぜ 中 国 は 毒 食 を 作 り 続 けるのか 有 本 香 有 核 施 設 46 中 国 共 産 党 天 皇 工 作 秘 録 城 山 英 巳 有 自 衛 隊 受 入 可 否 47 中 国 問 題 の 核 心 清 水 美 和 有 普 遍 的 価 値 論 争 軍 の 対 応 核 施 設 48 拝 金 社 会 主 義 中 国 遠 藤 誉 そうだったのか! 中 国 池 上 彰 中 国 経 済 の 正 体 門 倉 貴 史 有 財 政 赤 字 原 発 建 設 4 結 果 結 果 を 表 -Ⅱ に 示 す タイトルを 一 瞥 しても 容 易 に 推 測 できるとおり 中 国 を 反 日 的 な 脅 威 の 存 在 と 捉 えているタイトルが 目 立 つ 本 文 を 通 読 すると 中 国 の 軍 事 大 国 化 経 済 大 国 化 共 産 党 独 裁 による 権 力 の 腐 敗 広 がる 社 会 的 な 格 差 少 数 民 族 の 迫 害 といった 人 権 問 題 など 日 本 人 にとってネガティブに 受 け 止 められる 事 象 を 扱 ったもの が 多 かった 公 害 大 国 猛 毒 大 国 欲 望 大 国 といった 造 語 によるラベリングも 散 見 され 中 国 問 題 中 国 という 難 問 といった 言 葉 で 括 っている 著 作 もあった 日 本 の メディアが 伝 える 中 国 情 報 はしばしば 見 通 しを 誤 ったり 相 互 理 解 を 促 すどころか 必 要 以 上 に 摩 擦 を 高 める 役 割 を 演 じている ( 高 井, 2002)と 指 摘 されるとおり 2001 年 以 降 日 中 関 係 ではネガティブなイメージのコンテキストが 出 版 界 を 通 して 広 く 醸 成 されてき た 可 能 性 が 示 唆 される

124 このなかで 四 川 大 地 震 の 発 生 後 に 公 刊 された 新 書 にフォーカスをあてると その ほとんどで 本 文 に 四 川 大 地 震 に 関 する 記 述 を 見 出 すことができた 当 該 事 象 のインパクト の 大 きさをうかがい 知 ることができる しかし 触 れられた 内 容 は 非 常 に 限 定 的 なもの であった 倒 壊 した 学 校 の 手 抜 き 工 事 疑 惑 日 本 の 緊 急 援 助 隊 の 黙 祷 美 談 少 数 民 族 に 対 する 差 別 的 な 待 遇 疑 惑 感 動 的 なシーンのみ 報 道 するよう 指 示 した 共 産 党 の 情 報 統 制 など が 主 なものであった( 再 び 表 -Ⅱ を 参 照 のこと) そして その 内 容 に 対 する 編 著 者 の 位 置 づけ 方 を 吟 味 したところ ほとんどの 場 合 ネガティブなイメージのコン テキストに 親 和 性 の 高 い 事 例 を 選 択 的 に 配 置 していることがわかった 表 層 的 にだけ 取 り 繕 われてお 為 ごかしに 終 わる 問 題 は 食 品 問 題 だけに 留 まらない 知 的 財 産 権 や 環 境 問 題 チベット 問 題 そして 四 川 省 の 大 地 震 で 発 覚 した 手 抜 き 工 事 など すべて 中 国 が 抱 える 問 題 に 共 通 しているともいえる (サンプル 30)といったように 問 題 の 構 造 を 中 国 固 有 の 事 情 に 一 般 化 する 記 述 も 散 見 された 災 害 事 象 としての 共 通 性 を 想 起 して 仮 設 住 宅 の 暮 らしぶりや 被 災 者 の 声 を 紹 介 していた 著 作 は 今 回 の 調 査 では 1 冊 しか 見 当 たらなかった (サンプル 40) 5 考 察 中 国 に 何 らかの 関 心 を 抱 き これらの 新 書 を 手 に 取 った 読 者 は そこに 表 象 された 四 川 大 地 震 をめぐる 偏 った ないしは 貧 しい リアリティによって 遠 くで 起 きた 災 害 を そのままに 遠 く 他 人 事 ( 他 山 の 石 ならぬ 対 岸 の 火 事 )として 固 定 化 してしまうお それがある これは 当 該 災 害 事 象 を 未 来 の 教 訓 にしようとする 契 機 をひとつ 失 うことを 意 味 している 50 冊 のサンプル 中 で 阪 神 淡 路 大 震 災 の 例 をひもとき 読 者 に 我 が 事 ( 対 岸 の 火 事 ならぬ 他 山 の 石 )になりうる 事 態 であることを 示 唆 したものは 残 念 な がら 唯 一 つしかなかった(サンプル 40) 被 災 の 痛 みを 共 有 し 教 訓 を 汲 み 取 る 姿 勢 を 社 会 に 浸 透 させていくためには ネガティブ なイメージに 傾 斜 したコンテキストを 慎 重 にバランスして 豊 かなリアリティを 共 同 構 築 していく 必 要 がある 災 害 がグローバルな 共 通 課 題 である 以 上 災 害 対 応 をめぐるリアリ ティ ステイクホルダーは 容 易 に 国 境 を 越 える 来 るべき スーパー 広 域 災 害 ( 河 田, 2006) に 立 ち 向 かうためには 取 り 組 みの 射 程 は グローバルに 裾 野 を 広 げていくことが 求 めら れていると 言 えよう 注 1) ここにいう 新 書 とは 総 ページ 数 が 200 頁 ほどのボリュームで 書 き 下 ろされた 廉 価 本 で 想 定 読 者 層 が 一 般 向 け であるものを 指 すことにした

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126 第 13 章 予 防 報 道 の 課 題 抽 出 (3) 2011 年 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 における 無 常 のリアリティ 1 はじめに 本 章 では 復 興 報 道 と 予 防 報 道 いずれにも 該 当 すると 見 られる 東 日 本 大 震 災 の 災 害 報 道 事 例 を 扱 う 当 該 巨 大 災 害 を だれが すなわち どのリアリティ ステイクホルダーが どのよう に 意 味 づけしようとしていたのか 検 討 する 予 防 報 道 の 観 点 からいえば 当 該 巨 大 災 害 を 他 人 事 として 意 味 づけたり 反 省 すべき 教 訓 なし( 無 過 失 無 責 任 ) として 意 味 づ けたりするリアリティが 優 勢 な 場 合 には 次 なる 災 害 に 向 けて 予 防 に 取 り 組 む 気 運 を 醸 成 することが 難 しくなると 予 想 できるからである 2 問 題 : 被 災 地 における 言 葉 をめぐる 多 様 なリアリティ ここでは 大 澤 (2012)にならって 2011 年 3 月 11 日 に 端 を 発 する 一 連 の 出 来 事 を3 11と 呼 ぶことにする この3 11をめぐっては 多 くの 言 葉 が 世 を 賑 わせた そ れらの 言 葉 は ときに 発 話 者 にとって 都 合 のよい 解 釈 を 引 き 寄 せながらも 一 定 のリ アリティの 構 築 に 寄 与 したと 考 えられる たとえば 想 定 外 という 言 葉 は 少 なくとも 想 定 できなかったこと と 想 定 しな かったこと の2つの 意 味 を 含 み 込 んでいたはずだが( 柄 谷, 2011) 未 曾 有 という これまた 人 口 に 膾 炙 した 言 葉 と 相 俟 って 前 者 の 含 意 を 強 調 する 場 面 において より 広 く 使 用 されていた また 家 畜 などを 拘 束 する 器 具 のことを 指 していた きずな は 3 11を 経 て 時 の 総 理 大 臣 が 海 外 メディアで 発 信 するほどポジティブな 意 味 を 帯 びた 言 葉 としての 地 位 を 得 ることになった(たとえば 絆 という 漢 字 は ある 団 体 によって 2011 年 を 象 徴 する 一 文 字 として 選 ばれたりした) ところで こうした 言 葉 とリアリティに 関 する 検 討 作 業 は 実 践 的 な 意 義 も 大 きい 点 留 意 しなければならない 矢 守 (2012)は 津 波 てんでんこ という 言 葉 をめぐる4つの 意 味 を 丹 念 に 解 きほぐし 自 助 の 警 句 という 貧 弱 なリアリティに 留 まらず 防 災 にも 復 興 にも 資 する 共 助 のポテンシャル が 含 み 込 まれていることを 明 らかにしている(なお 片 田, 2012 も 参 照 のこと) そこで 本 研 究 では 3 11をめぐってよく 目 にした 言 葉 のひ とつ 無 常 というキーワードをとりあげ そのリアリティのありように 関 する 基 礎 的 な 考 察 をおこなう 3 対 象 と 方 法 無 常 は 代 表 的 な 仏 教 用 語 である 2011 年 が 親 鸞 上 人 の 750 回 忌 であったことや 法 然 上 人 の 没 後 800 年 忌 でもあったこと さらに 2012 年 は 鴨 長 明 が 方 丈 記 を 世 に 出 してからちょうど 800 年 であったことなども 作 用 して 3 11を 語 る 際 には 繰 り 返 し

127 使用されていた この言葉を冠した映画や書籍なども 数多く発表された 内容分析の対象サンプルとしては 新聞記事データベース 日経テレコン を使用して 全国紙 朝日 毎日 読売 産経 から 無常 という言葉を含む記事をすべてピックア ップすることにした N=410 その中で 震災 も含む記事 N=69 に関して 誰がどの ような文脈において 無常 という言葉を使用していたのか 精読して分類した Before 図-Ⅱ-13-4-① 無常 記事の出現数推移 本数 2, 2% 2, 2% 23, 26% 芸術家 作家 記者 宗教者 学者 行政職員 読者 4, 5% 18, 20% 21, 23% 20, 22% 図-Ⅱ-13-4-② 無常 発話者の属性分類 MA

128 4 結 果 図 -Ⅱ は 震 災 前 後 およそ1 年 間 の 該 当 記 事 本 数 をグラフにしたものである そ の 数 の 増 加 傾 向 は 地 震 発 生 直 後 からではなく 4ヶ 月 程 度 の 遅 れを 伴 っていたことが 今 回 はじめて 明 らかになった その 量 は 格 段 多 いというわけではなく 震 災 前 の2~3 倍 程 度 であり しかしながらコンスタントに 出 現 していたことがわかった 図 -Ⅱ は 無 常 という 言 葉 を 誰 が 使 用 していたのか 発 話 者 の 属 性 を 分 類 し たものである なお 記 事 本 文 中 において 複 数 の 肩 書 きが 紹 介 されていた 場 合 には た とえば 作 家 であり 住 職 でもある 人 など 各 カテゴリーで 重 複 してカウントした こう して 得 られた 集 計 結 果 によれば 無 常 は 全 国 紙 の 紙 面 においては 被 災 した 市 民 や 読 者 が 使 うよりもむしろ 知 識 人 や 記 者 が 率 先 して 使 用 していたことがわかった 5 考 察 注 無 常 の 使 用 形 態 によって 大 きく6つのリアリティが 現 前 していたことがわかった 1) 第 1 義 は 文 字 通 り 常 ならず 万 事 移 ろいゆくの 謂 いとして 使 われていた 第 2 義 は だからこそ まず 諦 めることが 肝 心 だと 説 く 文 脈 で 出 現 していた かつて 寺 田 寅 彦 が 記 し た 天 然 の 無 常 ( 寺 田, 1948)の 根 本 は これに 該 当 すると 考 えられる(さらに 池 澤, 2011 など) 第 3 義 は そうした 諦 めの 境 地 を 足 掛 かりにて 泰 然 自 若 の 構 えを 導 出 している( 渡 辺, 2012; ひろ, 2011) そしてこれが 第 4 義 ともなると 諦 めの 境 地 に 至 ってこそ 前 を 向 き 歩 み 出 す 力 を 得 ることができると 主 張 する これは 山 折 (2006)が 指 摘 した 明 る い 無 常 観 や 玄 侑 (2011)の 言 う 無 常 という 力 と 通 底 している これに 対 して 第 5 義 では 未 来 志 向 の 無 常 には 過 去 を 水 に 流 してしまう 危 うさを 伴 っていることを 警 告 している 第 二 次 世 界 大 戦 の 敗 戦 を 受 けて 堀 田 (1988)が 指 摘 した 無 常 観 の 政 治 化 と 同 根 である 生 成 流 転 する 世 においては 責 任 を 問 う 構 えさえも 詮 無 いものとして 無 に 帰 してしまう その 思 想 潮 流 こそが 権 力 者 に 与 するものに 他 ならないと 堀 田 は 喝 破 し ていた 最 後 に 第 6 義 は 無 情 非 情 と 同 義 だとする 半 ば 短 絡 した 語 用 ないし 誤 用 であった 第 1 義 と 第 2 義 および 第 3 義 ないし 第 4 義 は 記 事 本 文 中 ワンセットで 記 されたも のが 多 かった 特 に 第 4 義 は 震 災 復 興 を 念 頭 におけば それが 被 災 者 を 励 ますメッセー ジにつながるポテンシャルがあることが 容 易 に 想 像 できる 一 方 第 5 義 にまでふれた 記 事 は ごくわずかしかなかった 3 11という 出 来 事 の 総 体 において 原 発 事 故 が 大 き なプレゼンスを 占 めている 事 実 ( 第 10 章 を 参 照 )をふまえれば これはかなり 偏 りがあ る 結 果 だといえる たとえば あるインタビュー 記 事 においては 震 災 も 原 発 も 綯 い 交 ぜ にしたコンテキストの 中 で 無 常 という 言 葉 を 登 場 させていた そこでは なぜ 被 害 が 拡 大 したのか なぜ 事 故 を 防 げなかったのかといった 問 題 の 核 心 には 関 心 が 及 ばないよう な 仕 掛 けがほどこされており 無 常 の 第 5 義 が 問 題 提 起 したはずのリアリティの 構 築 が 巧 みに 回 避 されていたと 考 えられる これは たとえば 原 発 事 故 の 被 害 を 受 けた 大 熊 町 の

129 町 長 の 発 言 とは あきらかに 食 い 違 いを 見 せている 渡 辺 町 長 は 私 も 一 日 も 早 く 戻 りた い しかし 町 にできることも 限 られている あれこれ 無 力 感 が 漂 うのも 事 実 世 の 無 常 不 条 理 も 感 じるが ここで 負 けるわけにはいかない ( 星, 2013: p.107)と 述 べたという ここにおいて 無 常 は こころに 浮 かんだとしても 打 ち 消 されるべきものとして 措 定 さ れている 鴨 長 明 が 方 丈 記 でふれた 五 大 災 厄 は 大 火 辻 風 飢 饉 地 震 そして 都 遷 (みや こうつり)だった 天 災 と 人 災 それぞれに 対 して 鴨 長 明 は 生 来 の 実 証 精 神 にもとづ き ( 中 野, 2003: p.31) 簡 潔 に 記 述 している 本 研 究 の 立 場 から 言 えば 方 丈 記 は 第 1 義 から 第 5 義 までをバランスよく 網 羅 凝 集 した 作 品 だったと 指 摘 できる ポスト3 11の 日 本 社 会 における 安 易 な 言 葉 の 消 費 に 与 することなく 鴨 長 明 が 体 現 したような 理 論 と 実 践 の 往 還 を 繰 り 返 すなかで 言 葉 の 多 義 性 を 自 覚 的 に 取 り 扱 うことが リアリテ 注 ィの 共 同 構 築 による 社 会 のベターメントに 資 するのではないかと 考 える 2) 注 1) 本 研 究 の 分 類 では 文 芸 評 論 家 小 林 秀 雄 氏 の 無 常 という 事 (2003)における 使 用 形 態 は 類 例 僅 少 のため 便 宜 上 除 外 している また 玄 侑 宗 久 は 放 射 能 の 半 減 期 に 関 して これは ほとんど 諸 行 無 常 に 反 しますよね と 言 った 発 言 を 新 聞 紙 上 や 書 籍 等 で 何 度 もおこなっている(たとえば 玄 侑 和 合 赤 坂, 2013) 放 射 能 にさえ 半 減 期 があることの 事 実 からすれば まさに 無 常 の 実 例 を 示 し ていると 考 えられるが これを 玄 侑 は 全 く 逆 の 意 味 で 使 用 していた これは 筆 者 が 推 測 するに 玄 侑 は 生 活 時 間 をベースにして 無 常 の 概 念 をあてはめているからではないかと 考 えられる 本 調 査 にお ける 分 類 上 は 常 ならず の 第 1 義 とした 注 2) たとえば 2010 年 6 月 10 日 作 家 の 村 上 春 樹 氏 がカタルーニャ 国 際 賞 受 賞 式 典 で 語 った 無 常 mujo (スピーチのタイトルは 非 現 実 的 な 夢 想 家 として )をめぐる 言 説 においては 第 1 義 ~5 義 すべてが 含 み 込 まれていた また 上 述 した 宗 教 評 論 家 のひろさちや 氏 の 著 作 (2011) においても 第 5 義 の 視 点 が 欠 落 しないよう 読 者 に 注 意 を 促 している(pp )

130 第 Ⅲ 部 実 践 事 例 ここまで 本 研 究 が 採 用 する メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデ ル を 使 って 災 害 報 道 の 理 論 上 / 実 践 上 の 課 題 を 見 てきた では その 課 題 を 超 克 する ためには どのような 取 り 組 み( 協 働 的 実 践 )が 求 められるのであろうか 第 Ⅲ 部 では 災 害 報 道 のベターメントを 志 向 した 実 践 のうち 従 来 型 の 実 践 アプローチ をまず 整 理 し( 第 14 章 ) さらに 発 展 型 の 実 践 アプローチ ( 第 15 章 )を 例 示 して 検 討 に 付 す

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132 第 14 章 従 来 型 の 実 践 アプローチ 1 はじめに 災 害 報 道 のベターメントに 資 する 取 り 組 みは すでに 数 多 くなされている このうち その 特 長 を 従 来 の 減 災 の 正 四 面 体 モデル によってある 程 度 まで 説 明 できる 取 り 組 み を 本 章 では 従 来 型 の 実 践 アプローチ と 呼 ぶことにする 従 来 型 であるからといっ て 取 り 組 みの 価 値 が 減 ずるものではない 点 特 に 留 意 されたい これは 次 章 で 説 明 す る 発 展 型 の 実 践 アプローチ との 相 対 的 な 関 係 を 前 提 にした 単 なる 区 分 に 過 ぎない 以 下 節 を 分 けて NSL 減 災 報 道 研 究 会 関 西 なまずの 会 KOBE 虹 会 の 順 に 見 ていく 注 1) 2 NSL NSLは Network for Saving Lives の 略 称 であり 福 和 (2010)によれば マスメ ディアと 研 究 者 を 中 心 とする 協 働 の 仕 組 みである 2001 年 4 月 に 名 古 屋 で 始 まった 活 動 のきっかけとして 福 和 (2010)は 次 のようなエピソードを 記 している 多 くの 記 者 が 取 材 に 訪 れるが いつも 同 じやりとりになり むなしさを 感 じる (p.37) つまり 当 会 の 主 たる 目 的 を 端 的 に 表 現 すれば 専 門 家 の 目 から 見 れば 圧 倒 的 に 不 勉 強 な 報 道 従 事 者 に 対 して 地 震 災 害 に 関 わる 基 礎 知 識 を 共 有 してもらう 専 門 家 の 知 識 を 伝 達 する ことにあった したがって 会 のスタイルも 月 に1 回 程 度 の 勉 強 会 ( 年 に1 度 は 若 手 記 者 を 対 象 にした 合 宿 をおこなう)となっている 当 会 の 意 義 を 論 じた 川 西 (2010) は 本 会 を メディア 担 当 者 向 けの 教 育 の 取 り 組 み のひとつとして 位 置 付 けている 当 初 研 究 者 とメディアだけで 活 動 を 始 めたNSLは その 後 行 政 技 術 者 ボラン ティアなど に 輪 が 広 がっていったという( 福 和, 2010) このようなネットワークの 成 果 として 福 和 (2010)は 地 震 災 害 に 関 わる 記 事 や 番 組 の 質 や 量 の 向 上 にも 寄 与 したこ と 等 をあげている 福 和 (2010)がかつて 描 いたNSLの 各 主 体 の 関 係 相 関 図 によれば 研 究 者 行 政 ライフライン( 事 業 者 ) NPO ボランティア マスコミ 技 術 者 といった 多 彩 なアクターが 輪 を 描 くように 配 置 されていた ここで 注 意 しておきたいのは 地 域 住 民 はこうした 輪 の 外 に 置 かれ マスコミ を 通 して 情 報 が 伝 達 される 太 い 矢 印 がマス コミから 住 民 に 向 けて 描 かれていた 点 である 古 典 的 な 二 項 対 立 図 式 を ここに 見 出 すことができる NSLの 各 主 体 の 関 係 性 を 減 災 の 正 四 面 体 モデル で 要 点 のみ 整 理 すると 図 -Ⅲ における 楕 円 の 部 分 に 該 当 すると 考 えられる なお NSLの 勉 強 会 は オフレコを 原 則 としており また 勉 強 会 のあとには 懇 親 会 が 毎 回 のように 開 かれ 本 音 の 議 論 を 促 進 した ( 福 和, 2010)という 専 門 家 やメディ アなど 一 定 のコアメンバーにおける リアリティの 共 同 構 築 には 十 分 資 する 実 践 であ ることがうかがえる

133 図 -Ⅲ NSL の 各 主 体 の 関 係 図 注 2) 3 関 西 なまずの 会 NSLの 取 り 組 みに 刺 激 を 受 けて 関 西 でも 同 じような 実 践 がおこなわれるようになっ た( 川 西, 2010) そのひとつが 関 西 なまずの 会 である 大 阪 を 起 点 として 2008 年 に 結 成 された 3~4ヵ 月 に1 度 の 頻 度 で 勉 強 会 を 開 催 している 新 聞 社 や 放 送 局 の 記 者 ディレクターらと 京 都 大 学 の 研 究 者 らが 世 話 人 を 務 め ( 川 西, 2010)ている 設 立 の 趣 旨 として 当 会 のHPには 次 のような 記 載 がある( 関 西 なまずの 会, 2008) 報 道 に 携 わる 記 者 やディレクター アナウンサーらが 自 然 災 害 に 対 する 視 点 を 磨 き 質 の 高 い 報 道 を 行 うためには いざとなってからあわてるのではなく ふだんから 専 門 家 たちと 交 流 や 情 報 交 換 を 行 うことが 有 効 ではないでしょうか これを 読 む 限 りにおいて 当 会 の 目 的 はNSLと 同 じように 一 義 的 には 専 門 家 の 知 識 をメディアが 学 ぶことに 主 眼 があると 考 えられる 当 会 に 関 わる 各 主 体 の 関 係 性 をまと めると およそ 図 -Ⅲ の 楕 円 の 部 分 のようになる ただし 実 際 には メディアが 話 題 提 供 者 になることもしばしばあり その 場 合 には 専 門 家 が 学 ぶ 側 にまわることになる 実 態 としては メンバーが 相 互 に 学 びあっている といえる この 点 こそが 当 会 の 利 点 であると 考 えられる また 過 去 に 行 政 の 担 当 者 が 出 席 したこともあるし 最 近 では 大 学 院 生 が 参 加 することも 増 えてきた 図 に 楕 円 で 示 した 該 当 主 体 の 領 域 は あくまで 大 まかな 傾 向 を 示 したものに 過 ぎない 図 -Ⅲ 関 西 なまずの 会 の 各 主 体 の 関 係 図

134 図 -Ⅲ 減 災 報 道 研 究 会 の 各 主 体 の 関 係 図 注 3) 4 減 災 報 道 研 究 会 川 西 (2010)が 防 災 専 門 機 関 によるメディア 担 当 者 向 け 教 育 への 支 援 の 取 り 組 みと して 例 にあげているのが 減 災 報 道 研 究 会 である 当 会 の 前 身 は 災 害 報 道 研 究 会 といったが 2007 年 に 現 在 の 団 体 名 に 改 称 され 会 の 運 営 も 一 新 した 感 があるので ここでは 減 災 報 道 研 究 会 のみ 検 討 に 付 すことにする 当 会 は 神 戸 市 にある 阪 神 淡 路 大 震 災 記 念 人 と 防 災 未 来 センター が 事 務 局 を 務 めている 取 材 する 側 とされる 側 という 一 方 向 的 な 関 係 を 見 直 し 報 道 機 関 と 行 政 機 関 との 対 話 を 通 じて 災 害 対 応 能 力 を 磨 き 合 い 減 災 社 会 を 実 現 するための 実 践 的 な 活 動 の 場 となることを 目 指 している ( 川 西, 2010: p.22)という 年 に3 回 程 度 実 施 される 参 加 主 体 は 関 西 一 円 の 行 政 担 当 者 ならびに 報 道 関 係 者 と 一 部 の 専 門 家 である 当 会 の 該 当 主 体 の 関 係 性 を 図 で 示 すと 図 -Ⅲ の 楕 円 の 部 分 のようになる 災 害 対 応 事 例 に 関 して 担 当 者 から 話 題 提 供 してもらい 効 果 的 な 広 報 のありかたや 効 率 的 な 情 報 システムのありかたなどを 具 体 的 に 検 討 している 川 西 (2010)の 指 摘 すると おり 行 政 機 関 の 担 当 者 と(メディアが) 水 平 な 関 係 で 議 論 し コミュニケーションをと ること が 当 会 では 特 に 重 要 視 されている 当 会 は 懇 親 会 が 必 ず 設 けられていて そこでは 和 気 藹 々とした 雰 囲 気 に 包 まれている しかし そもそも 開 催 頻 度 自 体 が 少 なく また 参 加 者 の 多 くは 異 動 等 で 頻 繁 に 入 れ 替 わっ ており 結 局 会 場 でマイクを 握 って 質 問 しているのは 古 参 のメンバーに 限 られている 感 も 否 めない 当 会 は 現 状 ひとりの 研 究 員 の 熱 意 によって 何 とか 運 営 されている 事 務 局 の 負 担 は かなり 大 きい 当 会 の 目 的 としてうたっているような 率 直 にお 互 いの 考 え をぶつけ 合 い 本 音 で 検 討 する ( 人 と 防 災 未 来 センター, 2009)ためには 今 後 運 営 体 制 の 強 化 も 含 めて 再 検 討 する 余 地 があるのではないかと 考 える 5 KOBE 虹 会 KOBE 虹 会 は 筆 者 と 京 都 大 学 防 災 研 究 所 の 矢 守 克 也 教 授 が 2006 年 に 神 戸 で 結 成 したもので 上 述 した NSL や 関 西 なまずの 会 減 災 報 道 研 究 会 と 異 なり 発

135 表 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 活 動 記 録 (2006 年 6 月 ~2013 年 7 月 ) 日 付 回 数 内 容 2006 年 6 月 15 日 0 準 備 検 討 会 2006 年 7 月 11 日 1 顔 合 わせ 会 ( 自 己 紹 介 大 会 ) 2006 年 8 月 21 日 2 話 題 提 供 1 生 活 防 災 を 考 える 話 題 提 供 2 11 月 の 防 災 イベントについて 2006 年 10 月 18 日 3 話 題 提 供 1 災 害 ボランティアの 今 話 題 提 供 2 キャンペーンちょこぼうのアイデア 2006 年 12 月 29 日 4 話 題 提 供 環 境 防 災 科 の 実 践 から 2007 年 2 月 15 日 5 話 題 提 供 学 習 指 導 要 領 に 即 した 防 災 教 育 2007 年 3 月 22 日 6 話 題 提 供 震 災 メッセージからの 学 び 2007 年 5 月 22 日 7 話 題 提 供 能 登 半 島 ボランティア 報 告 2007 年 7 月 9 日 8 話 題 提 供 阪 神 淡 路 大 震 災 から 何 を 学 ぶか 2007 年 9 月 5 日 9 話 題 提 供 加 古 川 グリーンシティ 防 災 会 の 取 り 組 み 2007 年 10 月 22 日 10 話 題 提 供 ウィーンで 考 えていること 2007 年 12 月 28 日 11 話 題 提 供 震 災 の 語 り 部 さんたち 2008 年 2 月 25 日 12 話 題 提 供 震 災 13 年 最 近 おもうこと 2008 年 4 月 3 日 13 話 題 提 供 プラスアーツの 取 り 組 み 紹 介 2008 年 5 月 12 日 14 話 題 提 供 安 全 と 安 心 について 2008 年 8 月 25 日 15 話 題 提 供 ネパール 帰 国 報 告 2008 年 10 月 9 日 16 話 題 提 供 震 災 防 災 とわたしの 関 わり 2008 年 12 月 15 日 17 話 題 提 供 防 災 の 取 り 組 みの 広 げるには 2009 年 2 月 13 日 18 話 題 提 供 地 域 の 防 災 活 動 を 通 して 考 えていること 2009 年 4 月 9 日 19 話 題 提 供 津 波 災 害 世 界 の 復 興 に 学 ぶ 2009 年 6 月 14 日 20 話 題 提 供 いまここから 始 まる 防 災 2009 年 8 月 29 日 21 話 題 提 供 四 川 そしてネパールからの 学 び 2010 年 2 月 4 日 22 震 災 15 年 の1 月 17 日 をどのように 過 ごしか それぞれの 報 告 2010 年 4 月 26 日 23 話 題 提 供 いま 考 えていること これからやってみたいこと 2010 年 5 月 25 日 24 話 題 提 供 四 川 大 地 震 の 被 災 地 における 学 校 支 援 心 理 支 援 2010 年 6 月 12 日 25 話 題 提 供 奥 尻 島 17 年 教 訓 と 課 題 2010 年 9 月 21 日 26 話 題 提 供 1 ベトナムで 取 り 組 みたいこと 話 題 提 供 2 災 害 体 験 者 の 手 記 を 分 析 する 2010 年 12 月 15 日 27 話 題 提 供 1 防 災 を 考 える 話 題 提 供 2 クロスロード 星 和 台 版 2011 年 6 月 30 日 28 東 日 本 大 震 災 情 報 交 換 会 2011 年 10 月 5 日 29 話 題 提 供 1 野 田 と 神 戸 をつなぐ 取 り 組 み 話 題 提 供 2 仙 台 と 神 戸 をつなぐ 取 り 組 み 2011 年 12 月 21 日 30 話 題 提 供 環 境 防 災 科 10 年 の 歩 みと 学 び 2012 年 2 月 2 日 31 話 題 提 供 1 防 災 活 動 の 中 で 疑 問 に 思 うこと 話 題 提 供 2 クロスロード 星 和 台 版 の 最 新 情 報 2012 年 4 月 19 日 32 話 題 提 供 震 災 と 家 族 2012 年 6 月 20 日 33 話 題 提 供 新 潟 中 越 の 被 災 地 で 学 んだこと 2012 年 8 月 27 日 34 話 題 提 供 1 エルサルバドルのBOSAIの 取 り 組 み 話 題 提 供 2 サマーナイトの 取 り 組 み 2012 年 11 月 1 日 35 話 題 提 供 1 ベトナムのBOUSAIの 取 り 組 み 話 題 提 供 2 台 湾 の 明 星 災 区 に 関 して 2012 年 12 月 6 日 36 話 題 提 供 1 京 都 市 深 草 地 区 の 取 り 組 み 話 題 提 供 高 知 県 四 万 十 町 興 津 地 区 の 取 り 組 み 2013 年 2 月 6 日 37 話 題 提 供 いわてGINGA-NETの 活 動 を 通 して 考 えたこと 2013 年 4 月 8 日 38 話 題 提 供 1 神 戸 市 の 取 り 組 みから 考 えたこと 話 題 提 供 2 オルウィンの 取 り 組 みから 考 えたこと 2013 年 5 月 22 日 39 話 題 提 供 1 防 災 教 育 の 現 場 から 話 題 提 供 2 岩 手 県 野 田 村 で 感 じたこと 考 えたこと 2013 年 7 月 24 日 40 話 題 提 供 1 芦 屋 市 の 取 り 組 みから 考 えたこと 話 題 提 供 2 JICAの 取 り 組 みから 考 えたこと 足 の 目 的 は 勉 強 会 ではなく 交 流 の 場 をつくることであった 以 下 詳 述 する 当 会 は およそ2ヵ 月 に1 度 開 かれている これまで(2013 年 7 月 末 まで)に 40 回 おこなわれた( 表 -Ⅲ ) メンバーは 会 合 の 場 に 出 席 する 者 が およそ20~ 30 人 ふだんメーリングリストでつながっている 者 が 名 簿 上 90 人 ほどになってい る 会 合 の 流 れは 夜 7 時 にスタートして 1 全 メンバーの 自 己 紹 介 2 話 題 提 供 1~2 人 3フリーディスカッション 以 上 で2 時 間 ( 夜 9 時 まで)というのが 通 例 である そ のあと 会 場 を 近 所 の 焼 き 鳥 屋 さん に 移 して あとは 時 間 の 許 すかぎり 酒 を 酌 み 交 わす ことになっている 当 会 の 最 大 の 特 長 は メンバー 構 成 のありように 見 いだされる 自 治 体 職 員 学 校 関 係 者 学 生 NPO ボランティア 自 治 会 役 員 マスメディア 専 門 家 など その 立 ち 位 置 は 非 常 にバラエティに 富 んでいる 全 体 のほぼ 半 数 を 10 代 ~20 代 の 若 者 が 占 めている また 全 体 のほぼ 半 数 を 女 性 が 占 めている すでに 矢 守 (2012)が 指 摘 して いるとおり 草 の 根 の 言 いかえれば 通 常 災 害 情 報 の 受 け 手 あるいは 取 材 され

136 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 各 主 体 の 関 係 図 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 のちらし( 第 40 回 のもの 一 部 伏 字 とした) る 側 と 位 置 付 けられるメンバーが 主 体 となってネットワークされている 点 が 特 徴 的 であ るといえる その 関 係 性 を 図 に 示 せば 図 -Ⅲ の 楕 円 の 部 分 のようになるだろう 当 会 のちらしに 記 載 があるとおり( 図 -Ⅲ ) メンバーは 防 災 という 終 わり なき 目 標 ( 理 想 ) それがすなわち 虹 にたとえられている に 向 かって 走 っている 点 において みなが 横 並 び である 話 題 提 供 者 の 発 表 内 容 を 鑑 みるかぎり 最 新 情 報 の 提 供 や 解 決 策 処 方 箋 の 提 案 といったワンウェイの 講 義 は ほとんど 志 向 されていない

137 図 -Ⅲ KOBE 虹 会 の 会 合 の 様 子 ( 第 31 回 ) 2012/2/2 筆 者 撮 影 いま 自 分 が 壁 に 感 じていること や いま 疑 問 に 感 じていること 武 勇 伝 だけでな く 失 敗 談 などを きれいに 整 理 したりせずに そのまま 発 表 していることが 多 いよう である たとえば 阪 神 淡 路 大 震 災 15 年 のメモリアル デーを 超 えた 第 22 回 の 会 合 の 内 容 を 見 てみると ここでは 内 陸 直 下 型 地 震 のメカニズムを 学 んだり 復 興 まちづくりの 課 題 を 検 討 したりするのではなく メンバーそれぞれが 1 月 17 日 をどのように 迎 えて どのように 過 ごしたのか 一 人 ひとりの 心 模 様 を 発 表 し 合 っていた つまり 当 会 では 防 災 に 対 する 知 識 を 得 ることを 第 一 に 企 図 するのではなく もちろんその 価 値 を 軽 視 してい るわけではないが まず 互 いの 思 いを 確 かめ 合 うことを 優 先 しており 防 災 の 名 のもと に 共 に 連 帯 する ことが 目 指 されているのではないかと 考 えられる 当 会 では NSL や 関 西 なまずの 会 や 減 災 報 道 研 究 会 のような 講 義 形 式 のスタイルとは 異 なり メンバーは ロ の 字 に 机 を 囲 むことが 多 い スクリーン を 使 用 する 際 でも コ の 字 型 に 変 形 させるのが 常 である( 図 -Ⅲ の 写 真 を 参 照 ) 事 務 局 を 務 める 筆 者 が 多 くの 参 加 者 の 座 席 を 確 保 するために 講 義 形 式 すなわち 全 員 が 演 壇 を 向 いて 座 る 教 室 のようなレイアウトに 椅 子 を 並 べた 際 参 加 者 から 異 議 申 し 立 てがあり 結 局 机 を 囲 む 従 来 のレイアウトに 戻 したことが 過 去 に 少 なくとも2 度 あ った このことからも 講 師 がオーディエンスに 向 かって 知 識 を 伝 達 するワンウェイの 勉 強 会 になることを 拒 む 傾 向 があると 考 えられる 当 会 の 取 り 組 みを メディア イベントをめぐるリアリティの 共 同 構 築 モデル にあて はめてそのアドバンテージ(ないしはポテンシャル)がどこにあるのか 検 討 してみると もちろんささやかではあるが ようやく 多 様 なリアリティ ステイクホルダーが 集 まる 場 が 形 成 された 点 がまずあげられるだろう その 効 果 は すでに 少 しずつではあるが 実 際 に 見 え 始 めている たとえば 取 材 した 側 と 取 材 された 側 その 両 当 事 者 が 一 堂 に

138 会 する 場 で 当 の 報 道 内 容 に 関 して ネガティブな 意 見 もポジティブな 意 見 も 交 換 される ようになってきた その 際 に 課 題 を 提 示 する 側 と 課 題 を 持 ち 帰 る 側 というかたち で 従 来 どおり 双 方 の 立 ち 位 置 を 固 定 して 表 面 的 儀 礼 的 な 意 見 交 換 に 終 始 するので はなくて 一 部 ではあるが 共 に ないしは 互 いに 災 害 報 道 のベターメントを 志 向 する 構 えを 持 つようになってきたことが 重 要 である これまでそれぞれの 立 ち 位 置 固 有 の ものとして 構 築 されていたリアリティが ここにおいて 次 第 に 溶 けあい あらたなリアリ ティが 共 同 的 に 再 構 築 されはじめたと 考 えることができる 当 会 の 試 みは 一 瞥 したところ 特 段 世 に 直 接 インパクトを 与 えるものではなく な んら 変 わりばえのしない 地 味 な 取 り 組 みとして 受 け 止 められるきらいもあるだろうし 単 なる 親 睦 会 に 成 り 果 てるおそれもあるだろう しかしながら 現 状 防 災 の 分 野 では 類 例 の 少 ない 貴 重 な 実 践 であることも また 事 実 である ただし メディアの 立 ち 位 置 に 着 目 するならば それでもやはり 従 来 型 のアプローチ の 延 長 線 上 にある 取 り 組 みに 過 ぎないと 捉 えることもできよう 端 的 に 言 えば メディアの 立 ち 位 置 は 防 災 する 当 事 者 というよりは 報 道 する 当 事 者 のままでしかないからである そこで 次 章 では 本 章 とは 異 なる 発 展 型 の 実 践 アプローチ の 一 例 を 提 示 する 注 1) 筆 者 と NSL の 関 わりは 過 去 に2 度 ほど 出 席 したことがあるのみである ただし メー リングリストには 5 年 ほど 前 から 加 入 して 情 報 を 頂 戴 している 注 2) 筆 者 は 関 西 なまずの 会 の 発 足 1 年 後 あたりから 世 話 人 ( 内 部 では 共 同 副 代 表 と 位 置 付 けて いる)を 務 めている また 講 義 をする 側 として 登 壇 したこともある 注 3) 筆 者 は2 年 間 ほど 減 災 報 道 研 究 会 の 事 務 局 メンバーとなった テーマの 設 定 や 講 師 に 対 す る 事 前 取 材 依 頼 要 請 ちらしの 作 成 や 当 日 の 司 会 などを 担 当 した

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140 第 15 章 発 展 型 の 実 践 アプローチ 1 はじめに 前 章 では メディアはその 立 ち 位 置 を 変 えずに 防 災 の 取 り 組 みにおいて 横 並 びの リアリティ ステイクホルダー として 身 を 置 く 従 来 型 の 延 長 線 上 にある 実 践 アプロ ーチを 見 てきた 本 章 では メディアの 立 ち 位 置 を 防 災 実 践 の 当 事 者 により 近 づけ た 当 事 者 性 をより 強 くした 事 例 を 見 ていく 2 問 題 : ポスト 3.11 における 津 波 避 難 をめぐる 社 会 的 なコンテキスト 高 知 県 南 西 部 にある 四 万 十 町 興 津 地 区 ( 人 口 は 千 人 余 り)では 大 学 に 所 属 する 研 究 者 だけでなく 筆 者 も 含 む 報 道 機 関 の 従 事 者 が それが 意 図 的 か 無 意 識 的 かはさておき 協 同 的 実 践 をおこなっている この 地 区 は 2003 年 に 中 央 防 災 会 議 が 発 表 した 想 定 におい ても 甚 大 な 被 害 が 予 想 されていたエリアである( 最 大 津 波 高 さ 約 12m の 想 定 ) 過 疎 化 高 齢 化 が 進 むなかにあって それでも 熱 心 に 防 災 教 育 に 尽 力 する 小 学 校 の 奮 闘 ぶりや 津 波 避 難 タワーの 建 設 などハード 面 の 整 備 に 傾 注 する 地 域 住 民 の 取 り 組 みは たびたびマス メディアの 注 目 を 集 めてきた 全 般 的 に 見 れば 防 災 先 進 地 であると 言 えよう( 興 津 地 区 の 防 災 実 践 の 詳 細 に 関 しては たとえば 孫 矢 守 近 藤 谷 澤, 2012; 孫 矢 守 谷 澤 近 藤 ; 2013 などを 参 照 ) しかし 2011 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 や それを 受 けて 2012 年 春 に 新 たに 発 表 された 津 波 浸 水 想 定 ( 興 津 地 区 は 最 大 津 波 高 さ 20m 超 の 想 定 )は 当 該 地 区 の 人 々の 津 波 避 難 に 対 する 構 えに 少 なからず 影 響 を 与 えたと 考 えられる 筆 者 らが 全 世 帯 を 対 象 に 実 施 したアンケートや フィールドワークを 通 じて 知 り 得 た 情 報 等 を 検 討 した 結 果 当 該 地 区 の 社 会 的 なコンテキストには 現 状 3つの ドライブ があることがわかった ただしここで 注 意 が 必 要 なのは だれがどのドライブにあてはまるのか 1 対 1の 対 応 を 見 せているわけではないことである それぞれのドライブは ひとりの 人 物 の 中 におい てさえも 混 在 しており 力 点 も 日 々 変 動 し 続 けているというような 状 況 にある 問 い 方 を 変 えれば 答 え 方 も 変 わってしまう 以 下 順 に 述 べる (1) 新 想 定 に 対 する 信 / 不 信 に 根 差 した 諦 めムード のドライブ 一 部 の 住 民 の 間 に 以 前 から 存 在 していた 諦 めムード が 未 だに 根 強 く 残 っており さ らにいえば それが 強 化 されている 可 能 性 があることがわかった この 先 いくら 津 波 防 災 に 取 り 組 んだとしても きっと 徒 労 に 終 わるに 違 いない といった 後 ろ 向 きな 確 信 が 醸 成 されつつある 背 景 には 想 定 に 対 するアンビバレントな 感 情 すなわち 信 / 不 信 の 感 情 があるとみられる 新 しい 想 定 を 信 じている 人 たちは ここまで 厳 しい 想 定 が 出 たら もはや 手 のほど こしようがない といった 失 望 感 を 抱 いている この 閉 塞 したドライブを 打 開 する 糸 口

141 が 見 つからなければ やがて 諦 めムード の 中 へと 沈 潜 してしまうおそれがある 一 方 3.11 を 目 の 当 たりにした 経 験 に 基 づいて 結 局 想 定 というものは 自 然 の 猛 威 によって 裏 切 られるものだ といったような 想 定 に 対 する 不 信 の 境 地 に 至 った 人 た ちにおいては 別 種 の 諦 めムード が 形 成 されている どんな 津 波 が 来 るかなんて 誰 にもわからない 来 たときは 来 たときだ と 強 気 に 泰 然 自 若 を 決 め 込 んだり どうせ 私 は 家 ごと 津 波 に 流 されてしまうのよ と 悲 壮 な 覚 悟 を 宿 していたりする ひとつの 達 観 であり また 諦 観 でもある (2) 情 報 過 多 の 渦 中 における 疎 外 感 ムード のドライブ 3.11 以 後 興 津 地 区 でも 津 波 に 関 する 情 報 が 溢 れかえった マスメディアを 介 して もしくは 行 政 の 広 報 を 通 じて 巷 間 で 流 通 する 情 報 の 量 は 飛 躍 的 に 増 えたとみられる そ の 情 報 の 確 からしさを 補 強 する 材 料 となった 数 値 情 報 は 行 政 担 当 者 や 専 門 家 がブラ ックボックスの 中 ではじき 出 した 客 観 的 なデータ と 呼 ばれるものであった これらは 住 民 にとってみれば 遠 いところから 津 波 のように 到 来 するものでしかなかった 蚊 帳 の 外 に 立 たされた 住 民 の 中 には すでに 津 波 避 難 の 主 人 公 ( 主 役 ) の 座 を 降 りて しまった 人 たちもいる アンケートの 自 由 記 述 欄 には 専 門 家 のみなさん (あとは)ど うぞよろしくお 願 い 致 します ( 注 : 括 弧 内 は 著 者 ら)といった 記 述 があった ここには 情 報 の 作 り 手 は(どうせ) 行 政 担 当 者 や 専 門 家 であり 住 民 は(どうせ) 情 報 の 受 け 手 にしか 過 ぎないといった 冷 めた 感 情 が 内 包 されている 可 能 性 がある 想 定 から 疎 外 された 上 に 想 定 の 策 定 に 関 与 できないという 点 において 想 定 へ のアクセスにも 疎 外 されている (3) ローカリティの 欠 如 による 不 全 感 ムード のドライブ 3.11 の 被 災 地 は 広 域 であり 人 々が 置 かれた 状 況 も 様 々であった したがって 導 出 さ れるべき 教 訓 も 多 様 なものとなるはずである しかしながら 一 般 化 抽 象 化 され た 教 訓 は 住 民 一 人 ひとりにとってみれば 必 ずしもフィットしないものが 多 かった たとえば 高 台 という 言 葉 ひとつとっても 住 民 がイメージする 高 台 には 多 種 多 様 なものがあった ところが いち 早 く 高 台 に 逃 げて 助 かった という 教 訓 のエピソ ード(ないし 美 談 )における 高 台 という 言 葉 からは その 肌 触 りが 失 われている 一 体 どれくらいの 高 さで どのような 斜 面 だったのか そこから 海 は 見 えたのか もっと 上 に 登 ることはできたのか 広 さはどれほどで 風 は 吹 きさらしだったのか 普 段 どれほ どの 人 が 使 っていたのか 等 々 これらの 詳 細 で 豊 かな ローカリティ (たとえば 渥 美, 2011)が 担 保 されてはじめて 家 の 裏 山 に 登 るだけではダメなのかしら といった 個 別 具 体 の 問 いに 応 答 することができるはずである 果 たして 隔 靴 掻 痒 の 感 がある 他 人 行 儀 な 情 報 に 囲 まれた 不 全 感 ムード の 先 には とにかく 言 われたとおりにすればいいんで しょう といった 短 絡 が 待 っている そこからは この 問 題 は 我 が 事 であり 自 分 の

142 手 で 事 態 を 改 善 できるといった 実 感 ( 主 体 性 )を 引 き 出 すことは 至 極 困 難 である 3 個 別 訓 練 タイムトライアル の 実 施 および 動 画 カルテ の 制 作 上 述 したような 津 波 避 難 をめぐる 閉 塞 的 なコンテキスト( 諦 めムード 疎 外 感 ムード 不 全 感 ムード のドライブ)に 関 して 従 来 型 の 実 践 アプローチによってメディアが 取 材 する 場 合 には その 断 片 を 問 題 視 することはあったとしても 敢 えて 自 ら 汗 をかいてま で 問 題 の 超 克 に 取 り 組 むことはなかったはずである しかしながら 本 フィールドでは メディアも 事 態 の 内 在 者 として 深 い 関 わりをもっている そのひとつの 証 左 として 筆 者 らは 津 波 避 難 の 新 しい 訓 練 手 法 を 地 域 住 民 と 共 に 開 発 する 協 同 的 実 践 をおこな うことにした それが 以 下 に 述 べる 個 別 訓 練 タイムトライアル である 図 -Ⅲ を 一 瞥 すればわかるとおり 当 該 訓 練 には テレビ 局 員 が 関 与 しなければ まず 成 立 が 困 難 であった 発 想 が 随 所 に 散 りばめられている (1) 訓 練 の 概 要 地 域 住 民 の 中 から 津 波 避 難 訓 練 を 個 別 に 行 う 訓 練 実 施 者 を 各 集 落 でひとりずつ 選 定 する( 立 候 補 ないし 他 薦 ) 一 日 のうちで 最 も 長 く 過 ごす 場 所 から 自 身 が 最 適 と 考 え る 経 路 を 通 って 最 適 と 思 われる 場 所 に 逃 げてもらう この 際 小 学 生 が 訓 練 全 体 をサポ ートする 訓 練 実 施 者 と 小 学 生 の 共 同 作 業 によって 生 成 され 取 りまとめられたデータが 最 終 成 果 物 動 画 カルテ となる( 図 -Ⅲ ) (2) 訓 練 のフロー [step-1] 訓 練 準 備 : 訓 練 実 施 者 と 小 学 生 各 々に 対 して 大 学 側 から 訓 練 の 流 れを 説 明 した 訓 練 実 施 者 1 人 図 -Ⅲ 個 別 訓 練 タイムトライアル 実 施 時 の 様 子

143 図 -Ⅲ 動 画 カルテ のスナップショット ( 制 作 : NHK 大 阪 放 送 局 タニスタ ゼンリン) につき 小 学 生 5 人 でチームを 編 成 小 学 生 Aは 時 間 計 測 係 小 学 生 BとCはビデオカメ ラによる 撮 影 係 Bは 訓 練 実 施 者 の 表 情 を 撮 影 し Cは 訓 練 実 施 者 の 全 身 像 を 撮 影 する Dは 掛 け 声 係 兼 インタビュー 係 Eは 記 録 係 である [step-2] 訓 練 本 番 : 連 続 2コマの 授 業 時 間 を 使 って 個 別 訓 練 を 実 施 した 小 学 生 Dによる 地 震 発 生! の 掛 け 声 でスタート BとCは この 直 前 から 一 部 始 終 を 撮 影 する 最 初 の 100 秒 間 は 震 度 7の 揺 れに 見 舞 われて 歩 き 出 せないことを 想 定 し 訓 練 実 施 者 は 机 の 下 にもぐるなど の 安 全 姿 勢 をとる 100 秒 経 過 すると 地 震 の 揺 れがおさまりました の 掛 け 声 がかかる 非 常 用 持 ち 出 し 袋 を 担 ぐなどして 家 の 外 に 出 て あとはひたすら 避 難 場 所 を 目 指 す ゴー ルした 時 点 で 時 間 計 測 を 終 了 し 撮 影 も 終 了 する その 後 今 度 は 来 た 道 を 戻 りながら どの 箇 所 に 不 安 な 点 があったか 小 学 生 Dを 中 心 に 訓 練 実 施 者 にインタビューし それを Eが 書 き 取 っていく スタート 地 点 まで 戻 ったら 訓 練 終 了 となる [step-3] 動 画 カルテ の 作 成 : 図 -Ⅲ が 筆 者 らが 動 画 カルテ と 名 付 けた 成 果 物 である 4つの 画 面 および 中 央 のタイマー 表 示 で 構 成 されており いずれもが 動 画 である まず4 画 面 のうち 左 上 は 小 学 生 Bが 撮 影 した 訓 練 実 施 者 の 表 情 である 次 に 右 下 の 画 面 は Cが 撮 影 した 訓 練 実 施 者 の 全 身 像 および 道 路 状 況 である そして 左 下 の 画 面 は GPS ロガーのデータをもとに 作 画 した 現 在 位 置 を 表 示 した 地 図 である 画 像 は すべてタイマーとリンクしているので 地 震 発 生 から 何 分 何 秒 後 にどの 地 点 まで 避 難 することができたのか この 動 画 カルテ を 見 ることで 容 易 に 後 から 検 証 することができる 最 後 に 右 上 の 画 面 は テキストのみ で 構 成 されている これは 授 業 1コマを 使 って 小 学 生 が 訓 練 を 振 り 返 る 中 で 完 成 させ

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