Painful Hemiplegic Shoulder

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1 Module 11. Painful Hemiplegic Shoulder 痛 みのある 片 麻 痺 の 肩 Robert Teasell MD, Norine Foley MSc, Sanjit K. Bhogal MSc KEY POINTS - Painful Hemiplegic Shoulder 痙 性 と 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みは 関 連 する. 肩 の 亜 脱 臼 が 痛 みを 引 き 起 こすかどうかは 明 らかではない. 長 期 的 なポジショニングやストラップが 痛 みを 予 防 するまたは 軽 減 するかどうかは 明 らかではない. 肩 のスリングが 亜 脱 臼 の 進 行 を 予 防 するという 限 定 的 なエビデンスがある. プーリーのような 強 引 な 可 動 域 運 動 は 明 らかに 肩 の 痛 みの 発 生 の 増 加 につながる;より 緩 やかな 可 動 域 運 動 が 好 ましい. 超 音 波 治 療 を 加 えても 有 効 ではないが,NSAID が 有 効 かもしれない. ボツリヌス 毒 素 の 注 射 が 痛 みを 軽 減 するまたは 他 動 可 動 域 を 改 善 するかどうかはよくわからない. コルチコステロイド 注 射 は 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みまたは 可 動 域 を 改 善 しない. 機 能 的 電 気 刺 激 は 亜 脱 臼 を 軽 減 したり 予 防 に 役 立 つかもしれないが, 痛 みの 軽 減 には 有 効 ではない ようだ. 肩 甲 下 筋 の 除 神 経 は 大 胸 筋 の 除 神 経 よりも 肩 の 痛 みを 軽 減 するまたは 他 動 可 動 域 を 改 善 するかもし れない. マッサージや 鍼 と 組 み 合 わせたアロマテラピーなどの 代 替 療 法 が 肩 の 痛 みを 軽 減 するというエビデ ンスがいくつかある. 経 口 コルチコステロイドは 少 なくとも 初 めの 4 週 間, 肩 手 症 候 群 を 改 善 するようである. ミラーセラピーは 肩 手 症 候 群 に 関 連 した 痛 みを 軽 減 する 事 ができる. 1

2 Table of Contents Key Points Incidence of Hemiplegic Shoulder Pain Causes of Hemiplegic Shoulder Pain Shoulder Subluxation Pathophysiology Scapular Rotation Pain in Shoulder Subluxation Spasticity, Contractures and Hemiplegic Shoulder Pain (HSP) Spastic Muscle Imbalance Frozen or Contracted Shoulder Rotator Cuff Disorders Functional Impact of Painful Hemiplegic Shoulder Management of the Painful Hemiplegic Shoulder Positioning of the Hemiplegic Shoulder Slings and Other Aids Strapping the Hemiplegic Shoulder Active Therapies in the Hemiplegic Shoulder Electrical Stimulation in the Hemiplegic Shoulder Surgery as Treatment for Muscle Imbalance Botulinum Toxin Injections as Treatment for HSP Steroid Injections as Treatment for HSP Aromatherapy/Acupressure Treatment for Shoulder Pain Massage Therapy Subscapular Nerve Block for the Treatment for Shoulder Pain Summary of the Management of Hemiplegic Shoulder Complex Regional Pain Syndrome (CRPS) Stages and Symptoms of CRPS Pathophysiology of CRPS Incidence of CRPS Diagnostic Tests of CRPS Treatment of CRPS Pharmacological Treatment of CRPS Mirror Imagery as a Treatment for CRPS Passive Range of Motion Exercises for the Prevention of CRPS Calcitonin for the Prevention of CRPS Summary References

3 11. Painful Hemiplegic Shoulder 痛 みのある 片 麻 痺 の 肩 11.1 Incidence of Hemiplegic Shoulder Pain 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 発 生 片 麻 痺 に 起 因 する 肩 の 痛 みは, 血 管 損 傷 ( 例 えば, 出 血 性 または 虚 血 性 脳 梗 塞 )に 起 因 する 局 所 の 脳 損 傷 の 一 般 的 な 臨 床 症 状 である. 肩 の 痛 みの 罹 患 率 は 研 究 により 様 々で,48%から 84%の 幅 があると 推 定 されている (Najenson et al.1971,poulin de Courval et al 1990).HSP の 発 生 に 関 するいくつかの 研 究 の 結 果 が Table11.1 に 示 されている. 肩 の 痛 みは,それ 自 身 によって, 重 要 な 傷 害 をもたらし(Najenson et al.1971,poduri 1993),そして 早 けれ ば 脳 卒 中 後 2 週 間 で 引 き 起 こされる 事 があるけれども, 発 症 後 2-3 ヶ 月 に 起 こるのが 標 準 的 である(Poduri 1993). 最 近 の 前 向 き 研 究 では,Gamble ら(2002)は 52/152(34%)が 脳 卒 中 後 に,28%は 2 週 間 後,そして 87% が 2 ヵ 月 後 に 肩 の 痛 みが 発 生 したと 報 告 している.6 ヶ 月 経 過 して, 患 者 の 80%で 痛 みが 消 失 した.Lindgren ら(2007)は 416 人 の 元 の 集 団 患 者 から 残 った 305 人 の 初 回 脳 卒 中 患 者 のうち 74 人 (24%)が 16 ヶ 月 までに 肩 の 痛 みを 経 験 したと 報 告 している.およそ 半 数 の 患 者 が, 脳 卒 中 発 症 後 から 4 ヶ 月 の 間 に 痛 みが 発 生 していた. Rajarathanam ら(2007)は 98%の 正 確 さで 脳 卒 中 急 性 期 以 降 の 片 麻 痺 肩 の 痛 みの 進 行 を 予 測 する 3 つの 要 因 を 同 定 した.それは Neer テスト 陽 性, 手 を 頸 部 の 後 方 に 動 かした 際 の 中 等 度 以 上 の 肩 の 痛 み,そして 肩 関 節 他 動 外 旋 可 動 域 の 10 以 上 の 制 限 である.うつ, 軽 度 の 接 触 および 温 覚 の 低 下 もまた 肩 の 疼 痛 と 関 連 してい る(Gamble et al. 2000). 良 い 肩 の 機 能 は 移 乗 の 成 功,バランス 保 持,ADL 機 能,そして 効 果 的 な 手 の 機 能 のための 必 要 条 件 である ため, 肩 の 痛 みはリハビリテーション 結 果 に 悪 影 響 を 及 ぼす(Risk et al.1984).lo ら(2005)は 臨 床 と 関 節 造 影 の 両 方 に 基 づいて 肩 の 機 能 障 害 をタイプ 別 に 分 類 し,そして 脳 卒 中 発 症 後 1 年 以 内 で 肩 の 痛 みが 発 生 した 片 麻 痺 患 者 32 人 の 集 団 のうち 16%の 患 者 が 肩 手 症 候 群 になり,4%が 腱 板 断 裂,そして 50%が 凍 結 肩 を 患 ったと 報 告 している.63%の 患 者 が 1 つのタイプの 肩 の 機 能 障 害 を 持 っており,その 上 34%が 2 つのタイプの 障 害 を 持 っていた. 3

4 HSP の 発 生 はレビューした 研 究 間 においてかなり 異 なっていた.そのばらつきは 評 価 の 時 期 や 患 者 の 特 徴 などによって 影 響 されたと 思 われる. 肩 の 痛 みの 進 行 は 脳 卒 中 後, 時 間 経 過 とともに 増 加 しているように 思 わ れる. Conclusions Regarding the Incidence of Hemiplegic Shoulder Pain Following Stroke 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みの 発 生 に 関 する 結 論 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みの 発 生 は9%から73%の 間 でばらつきがある Causes of Hemiplegic Shoulder Pain 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 原 因 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みについてたくさんの 病 因 が 提 案 されてきたにもかかわらず,ますます 肩 の 痛 みは 痙 縮 と 片 麻 痺 の 姿 勢 を 維 持 することにより 発 生 しているように 思 われる. 肩 の 痛 みは, 脳 卒 中 後 の 無 視 を 伴 った 患 者 の 間 でより 一 般 的 に 生 じているかもしれない(Kaplan 1995).Table11.2 は 肩 の 痛 みの 原 因 の 可 能 性 についての 一 覧 である.よく 頻 繁 に 言 われている 肩 の 痛 みと 関 係 している 因 子 は, 肩 関 節 ( 肩 甲 上 腕 関 節 )の 亜 脱 臼 (Crossens-Sills and Schenkman 1985,Moskowitz et al.1969b,savage and Robertson 1982,Shai et al 1984), 肩 の 拘 縮 や 肩 関 節 可 動 域 制 限 (Bloch and Bayer 1978,Braun et al.1981,fugl-meyer et al 1975,Crossens-Sills and Schenkman 1985,Hakuno et al 1984,Risk et al.1984),そして, 特 に 肩 甲 下 筋 と 胸 筋 群 の 痙 縮 (Braun et al 4

5 1981,Caldwell et al.1969,moskowitz 1969a,1969b)である.その 他 の 提 示 される 肩 の 痛 みの 原 因 として, 反 射 性 交 感 神 経 性 ジストロフィー(Chu et al.1981,davis et al.1977,parrigot et al.1975),また 回 旋 筋 腱 板 の 損 傷 (Najenson et al.1971,nepomuceno et al.1974)がある. 肩 の 痛 みの 病 因 論 における 脳 卒 中 後 中 枢 痛 の 役 割 は, はっきりしていない(Walsh 2001). 近 年 の 研 究 でその 種 としては 初 めての 試 みとして 構 造 的 変 化 と 痛 みの 関 連 を 調 べるのに MRI が 用 いられた. 肩 の 痛 みがある 89 名 の 患 者 群 の 中 で 35%の 被 験 者 は 回 旋 腱 板, 二 頭 筋, 三 角 筋 のうち 少 なくとも 一 つが 損 傷 し(Shah et al. 2008),53%は 腱 板, 二 頭 筋, 三 角 筋 のうち 少 なくとも 一 つに 腱 障 害 があった.これらの 変 化 は 肩 の 痛 みの 重 症 度 と 関 連 しなかった. 5

6 11.2 Shoulder Subluxation 肩 の 亜 脱 臼 Pathophysiology 病 態 生 理 学 肩 関 節 亜 脱 臼 とは, 肩 峰 と 上 腕 骨 頭 の 間 が 触 診 可 能 な 隙 間 がある 肩 甲 上 腕 関 節 の 機 械 的 完 全 性 の 変 化 と 定 義 されている. 臨 床 研 究 において 亜 脱 臼 の 評 価 で 最 も 信 頼 性 のある 臨 床 的 な 評 価 方 法 がキャリパー( 測 径 器 )で ある(Boyd 1992). 肩 甲 上 腕 関 節 は 多 軸 性 で, 身 体 の 他 のどの 関 節 よりも 上 回 る 可 動 域 を 持 っている. 肩 甲 上 腕 関 節 のその 可 動 性 を 達 成 するためには, 固 定 性 を 犠 牲 にしなければならない. 固 定 性 は 肩 の 動 きと 同 時 に, rotator cuff という, 関 節 窩 に 上 腕 骨 頭 を 保 持 するための 筋 腱 板 によって 達 成 されている. 脳 卒 中 を 発 症 し 始 め た 時 の 麻 痺 肢 は 弛 緩 性 または 低 緊 張 である.そのため 肩 の 筋 群, 特 に 回 旋 筋 腱 板 は 関 節 窩 に 上 腕 骨 頭 を 保 持 す る 機 能 が 出 来 なくなり,それが 亜 脱 臼 の 高 いリスクとなる. 肩 の 亜 脱 臼 は 片 麻 痺 患 者 でよく 起 こる 問 題 点 である. 弛 緩 した 麻 痺 肢 の 初 期 では, 麻 痺 側 上 肢 は 適 切 に 保 持 されなければならず,でなければ 腕 の 重 みに 亜 脱 臼 が 生 じる.ベッドでの 不 適 切 なポジショニング, 高 重 力 肢 位 での 支 持 不 足 やトランスファー 時 の 麻 痺 肢 の 牽 引 など 全 てが 亜 脱 臼 の 原 因 である. 下 方 や 外 側 への 亜 脱 臼 は 一 般 に, 抵 抗 が 少 ししかない 低 緊 張 の 筋 に 逆 らった 長 期 の 下 方 向 きの 牽 引 によって 二 次 的 に 生 じるとされてい る(Chaco and Wolf 1971). 機 械 的 影 響 の 結 果 は 肩 甲 上 腕 関 節 の 関 節 包 ( 特 に 上 面 ), 弛 緩 した 棘 上 筋 や 三 角 筋 の オーバーストレッチングである.(Basmajian and Bazant1959,Shahani et al.1981)(figure11.1). 6

7 Scapular Rotation 肩 甲 上 腕 関 節 の 亜 脱 臼 は, 他 にも 要 因 があるように 思 われる.Basmajian and Bazant(1595)は 正 常 の 状 態 に おいて, 上 腕 骨 頭 の 脱 臼 は, 上 向 きの 角 度 がついた 関 節 窩 と 関 節 包 上 部, 烏 口 上 腕 靭 帯 と 棘 上 筋 によって 防 が れていると 述 べている. 彼 らは 脳 卒 中 片 麻 痺 後 では 肩 甲 骨 の 上 向 きの 角 度 が 失 われると 仮 説 立 てた. Calliet(1980)は 弛 緩 期 では, 麻 痺 した 前 鋸 筋 と 僧 帽 筋 上 部 はもはや 肩 甲 骨 を 支 持 しておらず, 肩 甲 骨 は 下 制 し, 下 方 回 旋 した 状 態 になっていると 付 け 加 えている. 弛 緩 した 補 助 筋 群 ( 特 に, 棘 上 筋 )と 下 方 回 旋 した 肩 甲 骨 と の 組 み 合 わせは, 上 腕 骨 頭 を 傾 かせ, 関 節 窩 に 対 して 下 方 へ 亜 脱 臼 させると 推 定 されている. 7

8 Prevost et al.(1987)は 脳 卒 中 患 者 の 肩 甲 骨 と 上 腕 骨 の 動 きを 3DX 線 技 術 を 用 いて 研 究 している. 彼 らの 研 究 では 50 人 の 患 者 の 麻 痺 側 と 非 麻 痺 側 の 肩 関 節 を 比 較 している. 彼 らは 上 腕 骨 の 肩 甲 骨 に 対 する 垂 直 のポジシ ョン( 例 えば, 亜 脱 臼 の 程 度 )において 麻 痺 側 と 非 麻 痺 側 に 違 いがあることを 示 すことができた. 関 節 窩 の 位 置 も 違 うが, 彼 らは, 脱 臼 した 肩 関 節 の 関 節 窩 は, 下 向 きが 少 ないことを 見 つけた. 脱 臼 の 重 症 度 と 肩 甲 骨 の 位 置 とに 有 意 な 関 係 はなかったとしている. 彼 らは 片 麻 痺 における 脱 臼 を 引 き 起 こす 要 因 として, 肩 甲 骨 の 位 置 はそれほど 重 要 でないことを 結 論 付 けた(Prevost et al.1987).culham ら(1995)は, 脳 卒 中 患 者 において, 高 緊 張 のグループに 比 べ, 低 緊 張 の 人 の 方 が 有 意 に 脱 臼 にするとしており(0.52 vs 0.21 ), 脱 臼 の 量 と 肩 甲 骨 お よび 上 腕 骨 の 外 転 角 度 に 相 関 は 認 められなかったと 報 告 している.Price ら(2001)は 脳 卒 中 のない 患 者 と, 脳 卒 中 の 患 者 での 比 較 では, 脳 卒 中 患 者 の 亜 脱 臼 と 安 静 時 の 肩 甲 骨 の 位 置 に 関 係 はなかったとしている.また, 健 常 肩 甲 骨 は 下 方 傾 斜 が 他 の 研 究 で 示 された 角 度 より 大 きく 起 こるという 結 果 を 報 告 している Pain in Shoulder Subluxation 肩 関 節 脱 臼 は 肩 の 痛 み (Crossens-Sills and Schenkman 1985, Moskowitz et al. 1969b, Savage and Robertson 1982, Shai et al. 1984, Roy et al. 1994) や 凍 結 肩, 上 腕 神 経 叢 の 引 き 抜 き 損 傷 (Kingery et al. 1993) 8

9 を 含 む 様 々な 状 態 に 関 わりがあるかもしれない. 後 者 においてエビデンスは 不 足 しているが(Kingery et al. 1993). 弛 緩 性 の 肩 にかかる 牽 引 力 がもし 修 正 されなければ 痛 みを 引 き 起 こし, 可 動 域 を 低 下 させ, 拘 縮 を 引 き 起 こすと 長 い 間 仮 定 されてきた.しかし, 全 ての 片 麻 痺 後 の 肩 関 節 亜 脱 臼 の 患 者 が 痛 みやその 持 続 を 経 験 し ておらず, 亜 脱 臼 が 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 原 因 であるかどうかに 関 して 議 論 の 余 地 があるとしている (Fitzgerald-Finch and Gibson 1975, Moskowitz et al. 1969b, Shahani et al. 1981, Bender and McKenna 2001). それらに 関 連 した 報 告 に 一 貫 性 がないのは, 痛 みの 原 因 となる 他 の 要 因 についての 研 究 が 少 ないと 同 時 に, 脱 臼 の 早 期 からの 徴 候 と 痛 みの 進 行 について 相 関 があるので, 脳 卒 中 の 慢 性 化 について 説 明 出 来 ないからである. Paci ら(2005)は, 亜 脱 臼 に 関 連 のある 痛 みは, 靭 帯 や 関 節 包 などの 結 合 組 織 の 線 維 化 や 損 傷 が 上 腕 骨 と 肩 甲 骨 の 異 常 な 配 置 が 原 因 で 起 こってから, 脳 卒 中 後 遅 れて 起 こると 述 べている.いくつかの 研 究 ではその 関 連 につ いて 報 告 しているけれども,その 他 の 研 究 ではその 結 果 には 一 致 していない. 患 者 の 個 性 のばらつき, 評 価 の タイミングや 方 法 ( 放 射 線 vs 医 学 的 検 査 )が 結 果 の 一 貫 性 が 欠 けている 理 由 かもしれない.(Table11.4 参 照 ) 肩 の 亜 脱 臼 と 痛 みの 関 連 について 調 べた 研 究 の 選 抜 が Table11.5 に 示 されている. 9

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12 Conclusions Regarding Shoulder Subluxation Post-Stroke 脳 卒 中 後 の 肩 の 亜 脱 臼 に 関 する 結 論 片 麻 痺 上 肢 における 亜 脱 臼 は 早 期 に 起 こり, 弛 緩 した 肩 関 節 補 助 筋 により 引 き 起 こされ, 肩 甲 骨 の 下 方 回 旋 に よるものではない. 肩 関 節 亜 脱 臼 が 肩 関 節 の 痛 みの 原 因 かもしれない;しかしながら, 亜 脱 臼 の 患 者 は 必 ずしも 痛 みを 経 験 してい るわけではなく, 片 麻 痺 の 肩 関 節 の 痛 みの 全 てのケースが 亜 脱 臼 に 悩 まされるわけではない. 肩 関 節 亜 脱 臼 が 肩 関 節 の 痛 みの 最 も 重 要 な 原 因 であるとは 立 証 されていないが, 亜 脱 臼 を 防 ぐために 早 期 から 片 麻 痺 上 肢 を 慎 重 に 扱 う 必 要 があるように 思 われる. 肩 の 亜 脱 臼 が 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 引 き 起 こすかどうかは 定 かでない 痙 性, 拘 縮 と 片 麻 痺 の 肩 の 痛 み(HSP) 痙 性 を 含 む 異 常 筋 緊 張 は HSP と 直 接 的 に 関 連 があるかもしれない. 痙 性 は 筋 の 伸 張 反 射 亢 進 に 付 随 する 速 度 依 存 性 の 筋 の 他 動 伸 張 に 対 する 抵 抗 の 増 大 により 特 徴 づけられる 運 動 機 能 の 障 害 として 定 義 され,よく 折 り たたみナイフ 現 象 と 連 想 される. 痙 性 は 上 位 運 動 ニューロン(UMN) 症 候 群 の 構 成 要 素 のひとつで, 片 麻 痺 の 避 けられない 随 伴 症 状 および 不 完 全 な 運 動 回 復 である. 正 常 な 環 境 ではαとγ 運 動 ニューロンの 影 響 で 促 通 と 抑 制 に 繊 細 なバランスが 存 在 する.そしてこれが, 脊 髄 レベルで 骨 格 筋 の 長 さや 収 縮 の 強 さを 適 切 にコント ロールし 続 ける. 脳 卒 中 発 症 後, 上 位 脊 髄 レベルの 抑 制 領 域 の 1 つかそれ 以 上 からの 入 力 が 減 少 もしくは 完 全 に 中 断 される. 筋 によるコントロールのバランスは 促 通 優 位 になる.そして 痙 性 が 起 こる. 痙 性 は 錐 体 路 およ び 錐 体 外 路 両 方 からの 入 力 の 消 失 がある 場 合 にのみ 起 こる. 痙 性 は 身 体 の 影 響 を 受 けた 側 の 緊 張 および 反 射 の 増 加 として 起 こる. 12

13 Van Ouwenaller らは(1986), 脳 卒 中 発 症 後 1 年 経 過 した 219 名 の 患 者 の 様 々な 因 子 を 調 べ, 弛 緩 性 (18%) よりも 痙 性 麻 痺 (85%)の 方 が 肩 の 痛 みの 発 生 率 がより 高 いことを 明 らかにした. 彼 らは 痙 性 を 片 麻 痺 患 者 の 肩 関 節 痛 の 発 生 において 重 要 な 因 子 であり, 最 も 頻 繁 に 遭 遇 することの 1 つ として 同 定 した. 彼 らは 随 伴 す る 肩 関 節 痛 の 病 因 を 明 らかにはしなかった.Poulin de Courval らは(1990), 脳 卒 中 後 のリハビリテーションプ ログラムを 受 けた 94 名 の 片 麻 痺 患 者 を 評 価 し, 肩 関 節 痛 がある 患 者 がない 患 者 と 比 べて 罹 患 肢 の 痙 性 が 有 意 に 高 かったことを 報 告 した. 対 照 的 に,Bohannon らは(1986),50 名 の 片 麻 痺 患 者 (36 名 が 肩 関 節 痛 あり) に, 統 計 学 的 分 析 を 行 い 痙 性 は 肩 関 節 痛 とは 無 関 係 である と 主 張 した.Joynt(1992)も 脳 卒 中 後, 肩 に 問 題 のある 67 名 の 患 者 を 評 価 した 後 にこの 見 解 を 支 持 した.それでもなお, 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 原 因 として, 痙 性 特 に 過 緊 張 筋 のインバランスとしてのエビデンスが 増 えている Spastic Muscle Imbalance 脳 卒 中 後 の 片 麻 痺 は 過 緊 張 の 筋 のパターンを 反 映 した 特 有 の 姿 勢 に 特 徴 づけられる. 片 麻 痺 の 上 肢 では 屈 筋 13

14 が 優 位 で 肩 関 節 内 旋, 内 転 に 加 えて 肩 甲 骨 内 転, 下 制 となる.この 姿 勢 は 高 位 中 枢 の 切 除 の 結 果 であり, 錐 体 路 と 錐 体 外 路 のコントロールからの 運 動 グループの 解 離 の 結 果 として 起 こる. 脳 卒 中 の 回 復 では, 回 復 が 不 十 分 なところでは, 筋 の 共 同 運 動 パターン は 必 然 的 である.この 結 果 の 1 つは 肩 関 節 に 関 する 痙 性 筋 のイン バランスの 進 行 である. 臨 床 的 に, 肩 関 節 内 旋 筋 群 が 脳 卒 中 後 の 患 肢 で 優 位 であり, 外 旋 は 肩 の 機 能 回 復 の 最 後 の 領 域 のひとつであ る.それゆえに, 運 動 単 位 が 回 復 している 間, 適 切 には 動 員 もしくは 抑 制 されない;その 結 果, 主 動 作 筋 と 拮 抗 筋 の 共 同 収 縮 が 同 時 に 起 こる. 共 同 運 動 パターン 下 の 短 縮 した 主 動 作 筋 はより 強 くなり, 主 動 作 筋 の 持 続 的 な 緊 張 は 痛 みを 生 じ 始 める.これらの 固 くなった 痙 性 筋 を 伸 張 すると,より 痛 みが 生 じる. 短 縮 した 筋 は 運 動 を 抑 制 し, 可 動 域 を 制 限 し, 他 の 動 き 特 に 外 旋 が 必 要 である 肩 関 節 の 90 以 上 の 外 転 時 に 妨 げる. 肩 関 節 内 旋, 内 転 の 痙 性 に 寄 与 する 筋 は 肩 甲 下 筋, 大 胸 筋, 大 円 筋, 広 背 筋 を 含 む.しかし, 特 に 2 つの 筋 は 最 も 痙 性 が 高 くなりやすく,インバランスにつながっていく.これは 肩 甲 下 筋, 大 胸 筋 である. Subscapularis Spasticity Disorder 肩 甲 下 筋 は 肩 甲 骨 底 面 下 から 始 まり, 肩 関 節 包 と 同 様 に(Figure11.2) 上 腕 骨 小 結 節 に 付 着 する.それは 主 な 肩 関 節 内 旋 筋 である(Holliushead and Jenkins 1981). 肩 甲 下 筋 は 肩 関 節 屈 曲 位 からの 外 転, 伸 展 にも 作 用 す る(Cole and Tobis 1990). 正 常 な 肩 甲 下 筋 への 神 経 インパルスは 上 腕 が 外 転 している 間, 抑 制 され, 筋 が 弛 緩 し 上 腕 骨 外 旋 を 許 し,それによって 大 結 節 の 肩 峰 へのインピンジメントを 防 いでいる(Codman 1934). 痙 性 麻 痺 による 共 同 屈 曲 運 動 パターンの 一 部 として, 肩 甲 下 筋 を 含 む 内 旋 筋 は 緊 張 が 亢 進 している.これは, 肩 関 節 外 転, 屈 曲, 外 旋 を 制 限 する. Bohannon らは(1986) 片 麻 痺 の 肩 の 外 旋 制 限 が 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 と 最 も 関 連 した 因 子 であったことを 発 見 し た.Zorowitz らも 肩 関 節 外 旋 制 限 が 肩 の 痛 みと 強 く 関 連 していたことを 発 見 した.Hecht(1995)は 特 にこの 問 題 を 肩 甲 下 筋 と 結 び 付 けており, 外 旋 が 最 も 制 限 される 際 には 肩 甲 下 筋 は 痙 性 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 第 一 要 因 で ある. 他 の 筋 群 も 痙 性 や 痛 み, 機 能 的 な 構 造 の 一 因 となるかもしれないが, 肩 甲 下 筋 は 異 常 な 共 同 運 動 パター ンのかなめ 石 である. と 報 告 した. 14

15 肩 甲 下 筋 の 痙 性 による 障 害 は 外 旋 時 に 最 も 制 限 される 動 きと, 外 旋 時 に 起 こる 痛 みに 特 徴 づけられる. 緊 張 した 痙 性 筋 繊 維 は 後 方 の 腋 窩 で 触 診 される.これを 支 持 するものとして Inaba や Piorkowski(1972)は 片 麻 痺 の 肩 において 外 旋 は 最 も 痛 みが 強 く, 運 動 を 制 限 すると 報 告 した. Pectoralis Spasticity Disorder 大 胸 筋 は 上 腕 の 前 方 挙 上, 内 転, 内 旋 に 作 用 する.Hecht(1995)は 脳 卒 中 片 麻 痺 患 者 の 一 部 では 外 旋 よりも 外 転 ( 屈 曲 )の 方 がより 顕 著 に 制 限 があると 報 告 している.このような 患 者 の 場 合, 大 胸 筋 の 痙 性 が 疑 わしい. この 障 害 は 外 転 時 に 最 も 制 限 され, 痛 みが 出 現 するという 特 徴 がある. 緊 張 した 痙 性 の 筋 繊 維 は 腋 窩 の 前 方 で 触 診 できるだろう. 大 胸 筋 は 肩 甲 下 筋 の 協 働 筋 であるということも 注 目 すべきである. 15

16 Frozen or Contracted Shoulder 凍 結 または 拘 縮 肩 ( 癒 着 性 の 関 節 包 炎 )は 臨 床 的 に 制 限 のパターンを 伴 う 可 動 域 の 制 限 によって 特 徴 づけら れる.この 状 態 は 痙 性 麻 痺 の 痛 みの 原 因 として 頻 繁 に 同 定 されている.(Bohannon et al.1986, Eto et al.1980, Fugl-Meyer et al.1975, Grossens-Sills and Schenkman 1985, Hakuno et al. 1984, Risk et al.1984) 16

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18 要 するに, 肩 の 亜 脱 臼 が 肩 の 痛 みと 必 ずしも 関 連 がない 一 方, 痙 性 は 一 般 的 に 関 連 がある. 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 問 題 は, 痙 性 のインバランスと 凍 結 した 拘 縮 肩 との 組 み 合 わせによるもののようだ.しかしながら, 積 極 的 な 肩 のストレッチプログラムは 痙 性 筋 のインバランスをまともに 問 題 として 扱 わないので, 度 が 過 ぎた 肩 の ストレッチは 単 に 痛 みを 悪 化 させるだけかもしれない. Conclusions Regarding Spastic Hemiplegic Shoulder 痙 性 と 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 進 行 には 関 連 がある. 痙 性 と 二 次 的 な 凍 結 肩 は 片 麻 痺 の 肩 関 節 痛 の 主 要 な 原 因 である. 痙 性 と 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みは 関 連 がある 11.4 Rotator Cuff Disorders 脳 卒 中 でない 人 における 肩 の 痛 みは, 腱 板 損 傷 に 関 係 していることが 多 々あることから, 麻 痺 側 の 肩 の 痛 み と 共 通 の 原 因 であるかもしれないと 考 えることは, 驚 くべきではない.しかし,Risk et al.(1984)は, 麻 痺 側 の 肩 の 痛 みがある 30 人 の 患 者 の 関 節 造 影 において 腱 板 損 傷 のいくつかのエビデンスを 立 証 できなかった. 同 様 の 研 究 (Nepomuceno and Miller 1974)では, 脳 卒 中 後 痛 みのある 肩 において 腱 板 損 傷 の 発 生 率 が 33%と 報 告 されている.Najenson ら(1971)は, 上 肢 に 重 度 の 麻 痺 がある 患 者 32 人 中 13 人 (40%)は, 関 節 造 影 で 確 認 す ると 腱 板 靭 帯 の 断 裂 があると 報 告 している. 腱 板 の 筋 肉 組 織 の 部 分 損 傷 は 頻 発 し, 症 状 が 出 ていない 患 者 にお いて 病 前 からあるかどうか 決 定 することはたいてい 難 しい.Joynt(1992)は, 麻 痺 側 の 肩 の 痛 みがある 67 人 の 脳 卒 中 患 者 を 診 断 した.28 人 の 患 者 は 1%のリドカインの 肩 峰 下 滑 液 注 射 を 受 け, 約 半 数 は 痛 みが 和 らぐ,も しくは 劇 的 に 軽 減 した.そして, 可 動 域 が 改 善 した.しかし,これは 考 えられる 麻 痺 側 の 肩 の 痛 みの 原 因 とし て, 腱 板 損 傷 の 状 況 証 拠 のみ 提 供 している. 一 般 的 に, 麻 痺 側 の 肩 の 痛 みは, 腱 板 損 傷 と 結 びつかない Functional Impact of Painful Hemiplegic Shoulder 痛 みのある 麻 痺 側 の 肩 は 非 常 に 制 限 され,また 片 麻 痺 にみとめられる 障 害 に 更 なる 制 限 を 加 える 可 能 性 があ る.しかしながら, 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みと 運 動 機 能 の 明 らかな 関 係 はまだ 示 されていない.いくつかの 研 究 結 果 は 対 立 している 18

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20 運 動 障 害 が 肩 の 痛 みと 関 連 する 一 方, 原 因 と 結 果 の 関 係 はまだ 立 証 されていない. 現 在 のレビューでは,4 つの 試 験 において 関 連 が 示 されている.2 つのより 新 しい 研 究 (Chae et al. 2007, Lee et al. 2009) からの 結 果 はそのような 関 連 を 支 持 していない. Conclusions Regarding Functional Impact of Hemiplegic Shoulder Pain 痛 みのある 片 麻 痺 患 者 の 肩 は, 重 度 な 脳 卒 中, 乏 しい 機 能 的 な outcome と 関 連 がある Management of the Painful Hemiplegic Shoulder 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みは, 一 旦 症 状 が 進 行 すると 管 理 が 難 しく, 治 療 に 対 する 反 応 はたびたび 不 十 分 である(Risk et al. 1984). 痛 みの 原 因 がはっきりしないことも 最 善 の 治 療 方 法 が 明 確 に 確 立 されていない 理 由 の 一 つである. 結 果 として, 様 々な 治 療 方 法 が 用 いられ, 様 々な 効 果 の 程 度 がある(Snels et al. 2002). 理 想 を 言 えば, 肩 の 痛 みが 進 行 するのを 最 小 限 にするため, 脳 卒 中 発 症 後 早 期 より 対 策 がなされるべきである. 弛 緩 期 より 早 期 に 他 動 的 な 肩 関 節 可 動 域 運 動 を 行 い, 麻 痺 側 の 肩 を 支 持, 保 護 することは 肩 の 痛 みの 進 行 を 減 らす 重 要 な 手 段 で ある. 20

21 Positioning of the Hemiplegic Shoulder 麻 痺 側 の 肩 関 節 周 囲 筋 はたびたび 麻 痺 し, 初 期 には 弛 緩 し, 後 に 連 合 的 な 痙 性 が 起 こる. 注 意 深 いポジショ ニングは 亜 脱 臼 や 拘 縮 を 最 小 限 にすることに 役 立 ち,また 機 能 回 復 を 促 進 する 可 能 性 がある. 一 方, 不 十 分 な ポジショニングでは 逆 に 対 称 性 やバランス,ボディーイメージに 影 響 を 与 える.Gilmore ら(2004)に 引 用 さ れたように Davies は 注 意 深 く 正 確 なポジショニングによって 肩 の 痛 みの 進 行 は 予 防 できると 主 張 している. Bender と McKenna(2001)は 脳 卒 中 初 期 における 最 初 の 目 標 は 過 緊 張 (Johnstone 1992)と 非 効 率 的 なパ ターン(Bobath 1990)の 進 行 を 予 防 することだと 述 べている.Bender と McKenna(2001)は 上 肢 の 推 奨 されるポジションは 肩 の 外 転, 外 旋, 屈 曲 位 である と 述 べているが,Carr と Kenny(1992)のレビューで は Bender と McKenna は 多 くの 一 般 的 な 理 論 はポジショニングの 正 確 な 角 度 に 一 致 した 意 見 は 得 られてい ない と 述 べている. 近 年 のメタアナリシス(Borisova & Bohannon 2009)は 5 つの RCT からの 結 果 を 含 み,126 名 の 患 者 を 表 し ているが, 肩 のポジショニングは 外 旋 可 動 域 制 限 の 予 防 や 軽 減 には 効 果 的 でないと 報 告 している.その 5 つの トライアルの 介 入 はポジショニングとストレッチを 含 んでいる. 著 者 らはストレッチの 時 間 が 十 分 ではなかっ たのかもしれないと 推 測 している.2 つのトライアルでは 2 時 間 のストレッチが 提 供 されているが, 著 者 らは 少 なくとも 1 回 6 時 間 のストレッチが 脳 性 麻 痺 の 子 供 の 腓 腹 筋 の 拘 縮 を 予 防 するのに 必 要 と 推 測 している. 著 者 らはまた, 脳 卒 中 後 に 治 療 が 開 始 されるのが 効 果 が 出 せるよりも 遅 すぎるかもしれないと 提 案 している. 21

22 Conclusions Regarding Positioning of the Hemiplegic Shoulder 片 麻 痺 の 肩 を 適 切 にポジショニングすることが 亜 脱 臼 を 予 防 するという 統 一 見 解 (Level3)がある.しかし, 長 期 に 渡 るポジショニングが 自 動 他 動 可 動 域 制 限 の 予 防 や 痛 みを 軽 減 するということには 対 立 したエビデン ス(Level4)がある. 片 麻 痺 の 肩 のポジショニングに 関 する 結 論 がなされるには 更 なる 研 究 が 必 要 である Slings and Other Aids 脳 卒 中 後 の 初 期 において 患 側 上 肢 を 支 持 するためアームスリングはたびたび 用 いられる.しかしながら,そ れらの 使 用 には 議 論 の 余 地 があり, 以 下 の 点 でデメリットとなりうる. 屈 筋 共 同 運 動 を 促 通 し, 上 肢 のスイン 22

23 グを 抑 制 し, 拘 縮 の 形 成 とボディーイメージの 減 少 に 寄 与 し, 患 者 はその 腕 をより 使 用 することを 避 けるよう になる.しかし, 起 立 や 移 乗 の 際 にはスリングは 弛 緩 した 麻 痺 側 上 肢 を 支 持 するのに 最 もよい 方 法 である.Ada ら(2005)はコクランシステマティックレビューを 行 い, 肩 のスリングとサポートの 効 果 を 評 価 し,それらの 装 置 が 脳 卒 中 後 の 亜 脱 臼 を 減 らすまたは 予 防 するというエビデンスは 不 十 分 であると 結 論 している.レビュー はRCT 研 究 が4つのみであった(Ancliffe et al. 1992, Griffin et al [unpublished data], Hanger et al and Hurd et al. 1974).その 結 果 をTable11.10に 示 す. 肩 の 筋 緊 張 が 戻 ってくるにつれて 肩 の 亜 脱 臼 のリスクは 減 少 し,スリングを 取 り 除 くことができる.スリン グは 肢 を 不 良 な 肢 位 に 保 持 する 傾 向 があり, 内 転 や 内 旋 などを 強 調 し, 緊 張 のある 筋 の 短 縮 に 寄 与 するかもし れない. 肩 を 支 持 する 最 善 の 方 法 は 決 定 されていない.それらの 効 果 が 検 証 されたエビデンスがなく, 様 々な スリングやひざ 板 などを 含 む 多 くの 装 置 が 利 用 可 能 で,よく 用 いられている. 23

24 評 価 されたトライアルの 大 部 分 はクロスオーバーデザインを 使 用 しており,その 期 間 内 に 1 つ 以 上 のスリン グを 試 用 し, 患 者 自 身 のコントロール 期 間 がある.それらのトライアルはどれもスリングの 順 番 がランダム 化 されていない.このタイプのデザインはキャリーオーバー 効 果 を 省 く 事 もまた 難 しい.それゆえ, 結 論 を 形 作 るのは 難 しい. Conclusions Regarding Slings in Hemiplegic Shoulder ある 特 定 の 優 れた 装 置 や 方 法 はないという 限 定 的 なエビデンス(Level2)があるが, 肩 のスリングが 痛 みと 関 連 する 亜 脱 臼 を 予 防 するという 限 定 的 なエビデンス(Level2)がある. 肩 のスリングが 臨 床 的 アウトカムに 影 響 を 与 えるという 限 られたエビデンスがある. 24

25 Strapping the Hemiplegic Shoulder 片 麻 痺 の 肩 へのストラッピングは 肩 の 亜 脱 臼 の 予 防 または 重 症 度 を 軽 減 するための 手 段 として 用 いられ,ま たある 程 度 の 感 覚 刺 激 を 与 えるかもしれない. 片 麻 痺 の 肩 に 対 しては 3 種 類 のストラッピングがあり, 以 前 か ら 記 述 されている. Ancliffe(1992): 5cm 幅 で 計 量 な 粘 着 テープ(Fixomull Stretch), 1 つ 目 のテープは 鎖 骨 に 沿 って 半 分 の 長 さで 肩 に 用 いられ, 対 角 線 方 向 の 三 角 筋 と 交 差 するよう 続 いた...そして 肩 甲 棘 に 沿 って 約 4 分 の 1 で 終 わっ た.2 つ 目 のテープは 1 つ 目 と 同 じ 方 向 だが 2cm 下 方 に 用 いられた. 短 めのテープが 肩 を 超 えて 用 いられ, それぞれの 先 端 を 固 定 した. Morin&Bravo(1997): 10cm 幅 のエラストプラスト 粘 着 性 包 帯 (Elastoplast adhesive bandage)が 肘 頭 下 の 前 腕 部 から 肩 の 上 端 にかけて 外 側 に 用 いられた. 他 に 7.5cm 幅 の 包 帯 が 2 本 前 腕 下 の 肘 頭 から 肩 の 上 端 に かけて 用 いられた.そのうち1つは 鎖 骨 の 前 方 を 通 り,もう 1 つは 肩 甲 棘 を 覆 った. 各 包 帯 間 には 空 間 は 残 ら ないようにされた. Hanger ら(2000): 3 つの 長 さの 非 伸 縮 性 エラストプラスト(nonstretch Elastplast Sports tape)が 用 いら れた. 2 本 の 支 持 テープがまず 用 いられた. 両 方 とも 腕 を 持 ち 上 げるように 用 いられ, 肘 の 5cm 上 から 始 ま り, 腕 の 前 方 と 後 方 を 通 り, 肩 の 上 端 で 交 差 した.それから 後 方 を 通 ってきたテープは 鎖 骨 を 通 り 止 まり, 前 方 を 通 ってきたテープは 肩 を 横 切 って 下 がり, 肩 甲 棘 を 通 り 止 まった.それらは 下 端 において 短 いテープによ って,はがれないよう 固 定 された. 25

26 Conclusions Regarding Strapping the Hemiplegic Shoulder 片 麻 痺 の 肩 へのストラッピングが 痛 みの 進 行 を 減 らすということには 矛 盾 するエビデンス(Level4)がある. ストラッピングは 上 肢 機 能 や 可 動 域 を 改 善 しないという 適 度 なエビデンスがある(Level1b). 片 麻 痺 の 肩 のストラッピングは 上 肢 機 能 を 改 善 しないようであるが, 疼 痛 を 軽 減 するかもしれない Active Therapies in the Hemiplegic Shoulder 痙 性, 筋 バランス 不 良, 凍 結 肩 と 肩 の 痛 みとの 関 連 は 片 麻 痺 の 肩 関 節 可 動 域 改 善 を 想 定 した 治 療 アプローチ が 痛 みを 改 善 するかもしれないということを 示 している. 26

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28 Discussion Inabaら(1972)の 良 い 研 究 (PEDro=7)では 以 下 の 各 群 のアウトカムに 有 意 差 を 認 めなかった:ROM エクササイズとポジショニング 群,ROMエクササイズと 超 音 波 群,ROMエクササイズと 偽 超 音 波 群.Kumar ら(1990)はオーバーヘッドプーリーがより 控 えめなROMエクササイズよりも 劇 的 に 高 い 肩 の 痛 みを 引 き 起 こす 事 を 発 見 した.コントロール 群 と 実 験 群 の 間 に 統 計 学 的 な 有 意 差 はなかったものの,Lynchら(2005)は OrthoLogic Danniflex600 shoulder CPM systemを 用 いた 持 続 的 他 動 運 動 と 関 連 した 肩 関 節 の 安 定 性 改 善 の 傾 向 を 報 告 している.Partridgeら(1990)はボバース 法 を 用 いた 治 療 がクライオセラピーよりも 有 意 な 痛 みの 減 少 につながることを 発 見 した.これら3つの 研 究 より 得 られる 一 般 的 な 解 釈 は, 自 動 的 なROMエクササイズ が 他 動 的 な 物 理 療 法 よりも 好 ましいが,オーバーヘッドプーリーのように 過 度 に 攻 撃 的 なアプローチはよりゆ るやかなアプローチと 比 べて 非 常 に 高 い 麻 痺 側 肩 の 痛 みの 発 生 につながるということである. Conclusions Regarding Active Therapies in the Hemiplegic Shoulder オーバーヘッドプーリーを 用 いた 攻 撃 的 な 可 動 域 訓 練 は 肩 の 痛 みの 発 生 の 増 加 につながるという 適 度 なエビ デンスがある.(Level 1b) 麻 痺 側 の 肩 に 対 するボバース 法 が 他 動 的 なクライオセラピー( 局 所 への 寒 冷 療 法 の 適 用 )よりもより 疼 痛 を 減 少 するという 適 度 なエビデンスがある.(Level 1b) 可 動 域 を 改 善 するための 緩 やかなエクササイズが 好 ましいアプローチであるという 適 度 なエビデンスがある. (Level 1b) 可 動 域 訓 練 に 超 音 波 を 加 えてもアウトカムが 変 化 しないという 適 度 なエビデンスがある.(Level 1b) 作 業 療 法 を 受 けている 肩 に 痛 みのある 脳 卒 中 患 者 において, 経 口 NSAID の 提 供 が 疼 痛 の 減 少 につながり, 可 動 域 を 改 善 し 機 能 回 復 を 改 善 するという 限 定 的 なエビデンスがある.(Level 2) 日 々のリハビリテーション 時 における 静 的 ポジショナルストレッチは 疼 痛 の 増 加 と 可 動 域 の 減 少 に 関 連 する という 適 度 なエビデンスがある.(Level 1b) 攻 撃 的 な 関 節 可 動 域 訓 練 (プーリーなど)は 疼 痛 肩 の 発 生 の 顕 著 な 増 加 に 結 びつく.より 穏 やかな 関 節 可 動 域 訓 練 が 望 ましい.NSAIDS は 効 果 的 であるかもしれないが, 超 音 波 治 療 を 加 えても 効 果 的 ではない Electrical Stimulation in the Hemiplegic Shoulder 電 気 的 神 経 筋 刺 激 は 皮 膚 または 直 接 的 に 筋 へ 電 流 を 適 用 することを 表 現 するのに 用 いられ, 運 動 神 経 や 筋 繊 維 を 刺 激 し, 収 縮 力 の 改 善 とより 優 れた 筋 肉 量 につながる.この 治 療 は 筋 力, 関 節 アライメント 不 整, 筋 緊 張, 感 覚 障 害 および 自 己 で 訴 えた 疼 痛 の 強 さの 改 善 に 用 いる 事 ができるかもしれない(Price & Pandyan, 2000). 電 気 刺 激 は 典 型 的 に2つの 方 法 で 用 いられる, 機 能 的 電 気 刺 激 (FES)または 経 皮 的 電 気 神 経 刺 激 である. 通 常 これら2つの 形 の 治 療 の 区 別 として, 低 強 度, 高 周 波 刺 激 がTENSと 結 びつく.それはより 一 般 的 には 疼 痛 治 療 に 用 いられる. 患 者 は 通 常 ピンや 針 で 刺 されたような 感 覚 と 表 現 する.FESは 筋 収 縮 の 強 化 や 運 動 制 御 の 改 善 を 目 的 として, 脳 卒 中 で 障 害 された 神 経 や 筋 肉 に 用 いられる 電 気 刺 激 の 発 火 として 表 現 されている 28

29 (Gresham et al. 1995). 肩 甲 上 腕 関 節 を 正 しいアライメントに 保 持 するのに 重 要 な 筋 である(Paciら2005)ため, 棘 上 筋 や 三 角 筋 後 部 が 最 も 治 療 に 使 われる 傾 向 にある. 理 論 上,FESは 弛 緩 した 肩 の 筋 肉 を 代 償 または 促 通 し, 肩 の 亜 脱 臼 のリ スクを 減 らすために 用 いられる. 治 療 の 理 想 的 な 強 度 は 毎 日 6 時 間, 週 5 日 を6 週 間 である.FESの 周 波 数 は35 から50Hzで 用 いられる(Paciら2005). Price & Pandyan(2001)は 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みの 予 防 と 治 療 におけるすべての 形 の 電 気 刺 激 (ES)のシス テマティックレビューを 行 った.それに 含 まれる 研 究 は Table11.14(a)と(b)に 示 されている. 著 者 たちは 結 論 を 出 すにはエビデンスが 十 分 ではないと 結 論 づけた. 伝 統 的 な 療 法 に 加 えた FES は 機 能 を 改 善 するが 痛 みの 予 防 には 優 れていないというエビデンスがある. Ada & Foongchomcheay(2002)はまた 脳 卒 中 後 の 肩 の 亜 脱 臼 に 対 する 電 気 刺 激 の 効 果 を 調 査 するメタアナ リシスを 行 った.このレビューは 6 つの RCT からの 結 果 を 含 んだ(Baker & Parker 1986, Faghri et al. 1994, Kobayashi et al. 1999, Linn et al. 1999, Wang et al. 2000).その 結 果 は Table11.15 に 示 されているが, 伝 統 的 な 療 法 に 加 えた 早 期 の 治 療 は 片 麻 痺 の 肩 の 進 行 を 予 防 するのに 役 立 ち, 後 の 治 療 は 痛 みを 軽 減 するのに 役 立 つ と 提 案 している. 29

30 14 の 研 究 が 特 に 肩 の 痛 みの 治 療 に 関 する FES の 効 果 を 評 価 している(Table11.16). 30

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34 Discussion 評 価 に 使 われたアウトカムは 様 々であるが,RCT の 多 くは 電 気 刺 激 に 関 連 する 利 点 を 報 告 している:ROM, 筋 緊 張,EMG 活 動, 肩 亜 脱 臼, 肩 の 痛 みと 筋 機 能 である. 電 気 刺 激 は 脳 卒 中 後 急 性 期 に 開 始 された 場 合, 肩 の 亜 脱 臼 の 進 行 を 予 防 するのに 効 果 的 であるとみとめられ た(Faghri et al. 1994, Fil et al. 2010, Kiyuncu et al. 2010).また, 脳 卒 中 慢 性 期 の 烏 口 突 起 と 上 腕 骨 頭 との 垂 直 距 離 の 軽 減 においてもまた 有 効 である(Baker & Parker 1986, Kobayashi et al. 1999). 大 部 分 のトライアルは 表 面 FES を 評 価 し, 一 方 Yu ら(2004)や Chae ら(2005, 2007)は 筋 内 装 置 を 評 価 している.1 つのトライアルは TENS の 効 果 を 評 価 している. 結 果 は FES は 麻 痺 側 肩 の 疼 痛 を 軽 減 し, 上 肢 機 能 を 向 上 させる 事 ができる 事 を 示 した. 表 面 FES は 痛 みを 引 き 起 こしうるので, 経 皮 的 に 置 かれた 装 置 は 治 療 のコンプライアンスを 高 めるかもしれない.しかしながら 最 も 大 きく, 方 法 論 的 に 厳 しいトライアル (Church et al. 2006)からの 結 果 は FES 治 療 は 特 に 重 度 の 麻 痺 患 者 において 実 際 は 有 害 であり, 上 肢 機 能 を 悪 くするかもしれないと 示 している. 著 者 らはこの 知 見 の 説 明 の 可 能 性 として, 麻 痺 側 上 肢 の 過 用, 過 剰 刺 激 を 含 むいくつかのメカニズムを 提 案 している.そしてその 刺 激 が 運 動 再 学 習 過 程 に 干 渉 し, 治 療 終 了 後 におい ても 上 肢 回 復 に 影 響 し 邪 魔 する 可 能 性 を 示 している.これらの 著 者 は 肩 の 亜 脱 臼 や 痙 性 を 減 らすという 利 点 に 関 してはエビデンスが 示 されているということに 言 及 し,それらのパラメータを 評 価 しなかった.レビューさ れた RCT 研 究 のまとめは Table に 示 されている. 34

35 Conclusions Regarding Electrical Stimulation in the Hemiplegic Shoulder 電 気 刺 激 が 肩 の 亜 脱 臼 の 進 行 を 予 防 するのに 役 立 つという 強 いエビデンスがある(Level 1a) 電 気 刺 激 は 脳 卒 中 後 の 麻 痺 側 肩 の 痛 みを 軽 減 しないという 強 いエビデンスがある(Level 1a) FES が 肩 の 亜 脱 臼 を 軽 減 するという 強 いエビデンスがある(Level 1a). FES は 片 麻 痺 の 肩 において, 亜 脱 臼 を 改 善 するかもしれないが, 疼 痛 は 軽 減 しない Surgery as Treatment for Muscle Imbalance 痙 性 筋 のインバランスが 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 原 因 の 一 つであると 仮 定 し,このインバランスを 回 復 するよう デザインされた 治 療 が 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 軽 減 する 可 能 性 がある. 35

36 Conclusions Regarding Surgery as Treatment for Hemiplegic Shoulder Pain 肩 に 痛 みを 有 する 脳 卒 中 患 者 において 肩 甲 下 筋 と 胸 筋 腱 の 外 科 的 切 除 が 痛 みと 可 動 域 を 改 善 するという 限 定 されたエビデンスがある(Level 2).これらの 知 見 を 確 かめるにはさらなる 研 究 が 必 要 である Botulinum Toxin Injections as Treatment for HSP 以 前 議 論 されたように, 肩 甲 下 筋 の 痙 性 は 外 旋 時 に 再 現 される 痛 みによって 最 も 制 限 される 肩 の 可 動 域 によ って 最 も 特 徴 づけられる.これは 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みとよく 関 連 するようであり, 痛 みは 現 在 多 くの 症 例 におい て 痙 性 筋 のインバランスの 結 果 として 考 えられている. 大 胸 筋 の 痙 性 は 肩 の 外 転 時 の 可 動 域 制 限 と 痛 みによっ て 特 徴 づけられ,より 少 ない 程 度 ではあるが, 同 様 の 筋 インバランスを 引 き 起 こすと 考 えられている.ステロ イドの 関 節 内 注 射 では,ボツリヌス 毒 素 と 他 の 物 質 が 痙 性 筋 の 治 療,インバランスの 是 正 そして 片 麻 痺 肩 の 痛 みの 軽 減 に 用 いられている. コクランレビュー(Singh & Fitgerald 2010)において 肩 の 痛 みの 治 療 に 対 するボツリヌス 毒 素 の 有 効 性 が 調 査 された.6 つの RCT が 含 まれ,5つは 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みがある 患 者 を 含 んでいた.6 つ 目 の 研 究 は 変 形 性 関 節 症 や 関 節 リウマチによる 肩 の 痛 みを 含 んでいた.BT による 治 療 は 3 ヶ 月 および 6 ヶ 月 時 点 において 疼 痛 の 軽 減 と 関 連 していたが, 注 射 1 ヶ 月 後 には 関 連 しなかった. 36

37 37

38 Discussion 4 つの 質 の 良 い RCT 研 究 が 片 麻 痺 の 肩 の 治 療 におけるボツリヌス 毒 素 の 効 果 を 評 価 した. 肩 甲 下 筋 が 最 も 多 く 注 射 される 場 所 であった. 取 り 込 み 基 準 は 概 して 厳 しく,サンプルサイズは 小 さくなり, 十 分 な 検 出 力 が なかったかもしれない. 治 療 や 用 量 がばらついているので, 結 論 を 形 作 りにくい. 疼 痛 の 軽 減 を 報 告 している 2 つのトライアルでは 高 濃 度 のボトックスまたは TENS の 追 加 が 行 われている.それらの 結 果 はいかに 示 され ている. Conclusions Regarding Botulinum Toxin for Shoulder Pain 肩 甲 下 筋 に 注 射 されるボツリヌス 毒 素 が 痙 性 のある 肩 の 痛 みを 軽 減 したり, 片 麻 痺 の 肩 関 節 可 動 域 を 改 善 する という 事 には 対 立 したエビデンスが 有 る. ボツリヌス 毒 素 が 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 軽 減 するかどうかは 定 かでない. 38

39 Steroid Injections as Treatment for HSP 片 麻 痺 患 者 の 肩 の 痛 みを 軽 減 する 方 法 としてのトリアムシノロン アセトニドの 肩 甲 上 腕 関 節 内 注 射 の 使 用 もまた 調 査 されている. 納 所 中 後 のステロイド 使 用 について 調 査 した 5 つのトライアルが 見 つかった. 39

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41 Discussion 3 つの RCT で HSP の 治 療 におけるステロイド 注 射 の 効 果 の 可 能 性 を 調 査 している.2 つのトライアルから の 結 果 は 効 果 を 示 さなかった.3 つめのトライアルでは TENS を 含 む 従 来 のリハにステロイド 注 射 を 加 えた 際 効 果 が 報 告 されている.トリアムシノロン アセトニドとボツリヌス 毒 素 を 比 較 した 1 つのトライアルは 両 群 で 改 善 がみとめられたため 解 釈 がより 難 しい(Lim et al. 2008). 統 計 学 的 には 有 意 でないがその 著 者 らはボト ックスの 効 果 がより 強 く, 長 続 きしたと 主 張 している. Conclusions Regarding Steroid Injections for Shoulder Pain 関 節 内 ステロイド 注 射 がプラセボや 治 療 なしと 比 較 して 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 改 善 に 関 係 するという 事 には 対 立 したエビデンスがある.(Level 4). ステロイド 注 射 は 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 軽 減 に 役 に 立 たない Aromatherapy/Acupressure Treatment for Shoulder Pain アロマテラピーは 痛 みと 慢 性 的 な 痛 みに 関 連 した 不 安 を 軽 減 するのに 役 立 つと 示 されている. 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みの 治 療 における 指 圧 とアロマテラピーの 利 用 は 1 つの RCT で 調 査 されている. 41

42 著 者 らは 肩 の 痛 みの 改 善 はリラクゼーションを 促 す 香 りや 接 触 の 効 果 を 通 じて 副 交 感 神 経 の 反 応 を 増 強 さ せたことによるかもしれないと 推 測 している.リラクゼーションは 以 前 から 痛 みの 知 覚 を 変 化 させる 事 が 示 さ れている. Conclusions Regarding Aromatherapy / Acupressure 指 圧 と 組 み 合 わされたアロマテラピーは 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みに 関 連 した 疼 痛 を 軽 減 する 事 ができるという 中 等 度 のエビデンスがある(Level 1b) Massage Therapy マッサージ 療 法 もまた HSP の 治 療 として 調 査 されている. Mok と Woo(2004)は 肩 の 痛 みと 不 安 のある 高 齢 脳 卒 中 患 者 に 対 するゆっくりとした 廃 部 マッサージの 治 療 効 果 を 調 査 する RCT を 行 った.すべての 患 者 はマッサージ 介 入 から 痛 みの 軽 減,リラクゼーション, 良 民 を 含 む 良 い 効 果 を 報 告 した.また,マッサージを 受 けた 患 者 はコントロール 群 と 比 較 して 有 意 に 血 圧 が 低 く, 不 安 が 低 く, 痛 みや 心 拍 数 も 低 かった. Conclusions Regarding Massage Therapy マッサージ 療 法 が 脳 卒 中 の 痛 みと 不 安 レベルを 軽 減 するという 中 等 度 のエビデンスがある. 42

43 Subscapular Nerve Block for the Treatment for Shoulder Pain 肩 甲 下 神 経 ブロックが 腱 板 炎, 関 節 リウマチ, 凍 結 肩 を 含 む 様 々な 状 態 における 痛 みと 可 動 域 の 治 療 に 用 い られている 一 方, 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みに 対 して 特 異 的 に 用 いられ 評 価 されているのは 今 までない. 通 常 のケア, この 場 合 超 音 波 と 比 較 して,この 治 療 の 脳 卒 中 後 の 肩 の 痛 みに 対 する 治 療 を 評 価 した 少 数 例 での 1 つの RCT が 公 表 されている. たった 2 つの 少 数 例 で 検 出 力 の 弱 い 研 究 が 行 われているにすぎず,またどちらにもプラセボが 用 いられてい ないので 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みに 対 する 肩 甲 下 神 経 ブロックの 効 果 について 述 べることは 難 しい. Conclusions Regarding Subscapular Nerve Block 超 音 波 と 比 較 して, 肩 甲 下 神 経 ブロックが 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 軽 減 するという 中 等 度 のエビデンスがある. (Level 1b) 43

44 Summery of the Management of Hemiplegic Shoulder 片 麻 痺 患 者 において 肩 の 痛 みが 高 い 広 がっているにもかかわらず, 効 果 的 治 療 へのエビデンスは 失 望 させる ものであり,ある 特 定 の 介 入 が 優 れているわけではない. 近 年 のシステマティックレビューおよびメタアナリ シスは 8 つの RCT に 限 られている(Koog et al. 2010)が,アロマ/ 指 圧, 背 部 マッサージ, 筋 内 神 経 筋 電 期 刺 激 がプラセボと 比 べ, 効 果 的 であると 報 告 している.しかしながら 3 ヶ 月 の 長 期 効 果 は 電 気 刺 激 のみ 評 価 さ れ, 示 されている. 治 療 に 関 連 したエフェクトサイズは-1.173(95% CI to 0.403)であった.その 著 者 ら はまた 痙 性 と HSP に 関 連 がなかったと 報 告 している. 電 気 刺 激 が 痛 みや 亜 脱 臼 と 軽 減 する 事 には 対 立 したエビデンスがある.またボツリヌス 毒 素 が 痛 みと 痙 性 を 軽 減 することにも 対 立 したエビデンスがある.プーリーを 使 った 過 度 に 攻 撃 的 治 療 は 穏 やかな 可 動 域 練 習 アプ ローチと 比 べ,おおむね 痛 みを 増 強 するが. 積 極 的 な 治 療 志 向 アプローチを 支 持 する 中 等 度 のエビデンスがあ る. 肩 のポジショニング,ストラッピングに 関 しては 亜 脱 臼 の 予 防 や 疼 痛 の 減 少, 機 能 改 善 という 点 において エビデンスは 不 十 分 である.スリングの 使 用, 痙 性 筋 のインバランスに 対 するモーターブロック,または 治 療 前 の NSAID 服 用 による 効 果 に 関 する 限 定 的 なエビデンスがあるが,RCT は 行 われていない. 過 度 に 攻 撃 的 な 治 療 を 予 防 し, 避 けることが 大 事 だという 同 意 がある(Level 3). 特 に 早 期 の 脳 卒 中 患 者 を ケアする 個 々 人 は 肩 を 損 傷 するという 可 能 性 を 認 識 すべきである. 肩 は 注 意 深 くポジショニングされ, 座 って いるまたは 立 っている 間 は 特 に 重 力 からサポートされるべきである. 可 動 域 エクササイズでは 肩 甲 帯 の 上 方 回 旋, 上 腕 骨 頭 の 外 旋 が 起 こっていないのであれば 90 度 以 上 の 屈 曲 と 外 転 を 行 うべきではない.(Gresham et al. 1995) 44

45 45

46 11.7 Compelx Regional Pain Syndrome (CRPS) 複 合 性 局 所 疼 痛 症 候 群 Stages and Symptoms of CRPS CRPS は typeⅠと typeⅡに 分 かれる.TypeⅠはより 一 般 的 で 片 麻 痺 と 関 連 がある.また, 肩 手 症 候 群 また は 反 射 性 交 感 神 経 ジストロフィーとしても 述 べられる.TypeⅡ CRPS はカウザルギーとしても 述 べられ, 数 はより 少 なく, 外 傷 と 関 連 がある.CRPS typeⅠは 明 らかな 神 経 損 傷 なしに 非 常 に 多 岐 にわたる 末 梢 および 中 枢 神 経 系 の 変 化 によって 特 徴 付 けられる. 末 梢 性 の 変 化 としては, 麻 痺 側 上 肢 の 手 の 痛 みや 腫 張 と 関 連 した 血 管 運 動 神 経 の 緊 張, 非 常 に 強 い 圧 痛 または 感 覚 過 敏, 保 護 的 な 不 動 状 態, 栄 養 面 に 関 する 皮 膚 の 変 化 や 血 管 運 動 の 不 安 定 性 を 含 む. 中 枢 性 の 変 化 は 大 脳 皮 質 感 覚 野 の 変 化 による 混 乱, 運 動 野 の 興 奮 抑 制 の 解 放 や 身 体 図 式 の 混 乱 を 含 む(Moseley et al. 2004). この 病 態 は 脳 卒 中 からの 回 復 過 程 の 患 者 のみでなく, 幻 肢 痛 や 頭 部 外 傷, 脊 髄 損 傷,そして 四 肢 の 軽 度 の 損 傷 でさえ 関 連 がある.Iwata ら(2002)は, 経 験 に 基 づいて RSD を 3 段 階 で 表 現 した( 表 11.27). CRPS は 一 般 的 に, 初 期 は 肩 の 痛 みが 起 こり, 続 いて 手 や 手 首 に 痛 み, 浮 腫 を 伴 う.よく 肩 と 手 の 関 節 可 動 域 制 限 の 減 少 がみられる 一 方, 肘 関 節 は 残 存 する(Davis et al. 1977). 指 の 背 面 全 体 に 広 がる 浮 腫 のために 手 首, 中 手 指 節 間 関 節 (MCP)と 近 位 指 節 間 関 節 (PIP)の 他 動 屈 曲 は 痛 みを 伴 い, 制 限 される. 時 間 が 経 つに つれて, 伸 筋 腱 は 挙 上 し 並 行 する 靭 帯 は 短 縮 する.もし 治 療 を 施 さないままであれば, 肩 手 症 候 群 は 最 終 的 に 乾 燥 し, 冷 たく 薄 青 くなり, 萎 縮 した 手 へと 進 行 することが 考 えられる.しかしながら, 経 験 上 ではたいてい の 場 合, 疼 痛 としばしば 浮 腫 は, 数 週 間 で 自 然 に 治 まる. CRPS はたびたび 片 麻 痺 の 上 肢 を 含 んだ 交 感 神 経 系 の 介 在 した 痛 みの 一 形 態 としてみなされる. 交 感 神 経 系 と 痛 みの 関 連 性 は 不 確 定 なままであり,いまだに 立 証 されていない.HSP の 発 生 は 痙 性 のある 患 者 で 多 い 事 で 知 られている.CRPS は, 片 麻 痺 の 人 の 約 4 人 に 1 人 発 症 する. 運 動 前 野 の 影 響 と 麻 痺 側 上 肢 の 痙 性 に 関 連 がある. 脳 卒 中 後 CRPS の 典 型 的 な 患 者 は 痛 み, 痛 覚 過 敏, 関 節 の 固 さ,そして 腫 脹, 自 律 神 経 異 常 を 示 す. 回 復 は,たいてい 自 然 に 進 む 一 方,6 ヶ 月 以 上 持 続 する 状 態 では 治 療 が 難 しい. 46

47 Pathophysiology of CRPS CRPS は, 脳 の 運 動 前 野 の 障 害 と 関 連 付 けられてきた.CRPS の 病 因 はまだ 知 られていない; 血 管 運 動 の 変 化 を 伴 うので 交 感 神 経 系 は 大 いに 関 係 していると 考 えられてきた. 理 論 上 の 末 梢 および 中 枢 の 病 因 が 提 示 され てきた. 末 梢 の 病 因 論 では, 末 梢 神 経 の 損 傷 が 一 因 と 仮 定 される.これらのうち 一 つは, 痛 みとして 知 覚 され る 求 心 性 の 体 性 神 経 の 脱 分 極 に 伴 い, 遠 心 性 の 交 感 神 経 と 求 心 性 の 体 性 神 経 の 間 でエファプス 伝 達 があると 仮 定 する. 多 くの 中 枢 性 の 病 因 論 もまた 提 示 されてきている. 例 えば, 中 枢 神 経 系 のより 上 位 の 中 枢 から 自 律 神 経 系 への 制 御 に 混 乱 がおこるといわれている.そして 直 接 的 に 脊 髄 の 介 在 ニューロンプールに 影 響 を 及 ぼし, 交 感 神 経 外 側 核 の 抑 制 の 減 少 につながる. 拘 縮 または 亜 脱 臼 からおこる 疼 痛 は 脊 髄 介 在 ニューロンプールを 刺 激 し, 正 常 ではない 交 感 神 経 の 反 応 を 起 こす. 正 常 でない 交 感 神 経 系 と 痛 みの 関 連 性 もまた 仮 説 を 立 てられて いるが,まだはっきりとしていない. Geurt ら(2000)は, 脳 卒 中 後 の 手 の 浮 腫 や, 肩 手 症 候 群 に 関 する 病 因 や 治 療 法 のシステマティックレビュー を 行 った. 著 者 らは,5 つの 病 因 研 究 や,6 つの 治 療 研 究 を 同 定 した. 著 者 らは,11 の 方 法 論 的 基 準 と 標 準 化 されたエフェクトサイズに 基 づいた 研 究 を 評 価 した. 文 献 のシステマティックレビューに 基 づいて, 著 者 らは, すべての 場 合 に 手 関 節 や 手 の 痛 みを 伴 う 腫 脹 を 特 徴 としているけれども 肩 はたった 半 分 ほどの 場 合 にしか 含 まれず,それゆえ, 半 分 の 場 合 は, 手 関 節 手 症 候 群 にしてはどうかと 提 案 すると 結 論 付 けた.さらに, 手 の 浮 腫 はリンパ 浮 腫 ではなく,CRPS は 通 常 動 脈 血 流 の 増 加 を 伴 うと 記 した. Iwata ら(2002)は,CRPS は 脳 卒 中 に 続 く 麻 痺 によって 起 こり,ホメオスタシスや 細 胞 内 液, 細 胞 外 液 のバ ランスの 乱 れを 介 するものであろうと 提 示 した.3つの 可 能 なメカニズムは 以 下 である:ⅰ) 末 梢 の 静 脈 血 の 還 流 やリンパの 流 れの 減 少 によって 起 こる 毛 細 血 管 の 血 圧 上 昇 ;ⅱ) 急 性 期 の 反 応 として 脳 卒 中 の 早 期 の 段 階 におけるコロイドの 浸 透 圧 の 低 下 ;ⅲ) 麻 痺 側 の 腕 や 手 の 荒 っぽい 処 置 によって 起 こされる 滑 膜 炎 に 起 因 する かもしれない 毛 細 血 管 壁 の 浸 透 性 の 亢 進 Incidence of CRPS いくつかの 研 究 で 脳 卒 中 後 CRPS 進 行 の 頻 度 を 調 査 している. 47

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50 脳 卒 中 後 CRPS の 広 がりに 関 しての 報 告 は 大 きな 幅 がある.RSD の 発 症 頻 度 は 12~32%の 割 合 で 起 こる 一 方,Petchkrua ら(2000)は,RSD の 発 症 頻 度 が 過 大 評 価 されており, 先 行 研 究 の 結 果 は 患 者 が 早 期 に 集 中 的 な 入 院 リハビリテーションを 受 けるのが 日 常 になる 以 前 に 得 られていたと 主 張 した. 病 院 へ 入 院 し 退 院 するまで 1 週 間 に 1 回, 急 性 期 リハビリテーション 施 設 に 入 院 した 患 者 は, 肩 の 痛 み, 肩 の 他 動 関 節 ROM の 減 少, 手 首 及 び 手 の 痛 み, 浮 腫, 皮 膚 の 変 化 について 評 価 された.これら5つの 基 準 のうち3つが 陽 性 ならば, 患 者 は 3 相 の 骨 の 断 層 写 真 (TPBS)を 受 けた.CRPS type1 と 一 致 する 骨 断 層 写 真 の 所 見 は, 診 断 を 確 定 するもの として 撮 影 された.64 症 例 のうち 13 症 例 が 骨 断 層 撮 影 を 受 け,たった1 人 (1.56%)のみが 陽 性 であった. 著 者 らは, 患 者 は 彼 らが RSD 症 状 に 発 展 する 前 に 退 院 することが 起 こりうると 述 べた.より 最 近 のいくつか の 研 究 では RSD 発 症 頻 度 がより 高 かった.これらの 研 究 は 同 じ 国 で 行 われていたことから, 一 般 化 すること はできないかもしれない.その 著 者 ら 自 身 は 経 済 的 い 厳 しい 状 況 での 患 者 ケア 能 力 がより 頻 度 の 高 さに 寄 与 し ていたようだと 仮 定 している(Kocabas et al. 2007). Conclusions Regarding the Incidence of RSD Post Stroke 脳 卒 中 後 の RSD 発 症 頻 度 は 12~48%の 幅 があり, 評 価 の 種 類 と 同 様 タイミングによって 影 響 されるかもしれ ない Diagnostic Tests of CRPS 1 つのテストだけで SHS のすべての 患 者 を 同 定 する 事 はできないが,CRPS の 診 断 にはいくつかの 方 法 が 用 いられてきている. 日 常 的 には 3 つの 基 準 が 用 いられている:IASP の 1994 年 の 同 意 基 準 (Station-Hicks et 50

51 al. 1995), Bruehl の 基 準 (Bruehl et al. 1999), Veldman の 基 準 (Veldman et al. 1993).これらの 基 準 の 感 度 と 特 異 度 はそれぞれ 70%から 100%,36%から 94%となる.これらの 基 準 の 一 般 的 な 特 徴 は 痛 み,アロディ ニア, 痛 覚 過 敏, 浮 腫, 発 汗 変 化,ROM 制 限 を 含 む.Quisels ら(2005)は 骨 スキャン(シンチグラフィー), 放 射 線 など 器 具 を 用 いた 診 断 はよく 用 いられるが,それらの 技 術 を 診 断 に 加 えることで 正 確 性 が 高 まるという エビデンスは 限 られていると 主 張 している. 麻 痺 側 上 肢 の 定 期 的 なレントゲン 撮 影 では, 早 ければ 臨 床 徴 候 が 発 症 した3~6ヶ 月 後 より 不 完 全 な 関 節 周 囲 の 無 機 質 の 脱 落 (ズテック 萎 縮 )を 認 めるかもしれない. 最 も 鋭 い 診 断 検 査 はテクネチウム, 二 リン 酸 の 骨 断 層 写 真 であり, 麻 痺 側 上 肢 において 増 加 する 関 節 周 囲 組 織 の 摂 取 ( 大 部 分 は 肩 と 手 関 節 )を 立 証 する. 骨 断 層 写 真 での 異 常 は,X 線 よりも 早 く 現 れる.Tepperman ら( 1984)は, 片 麻 痺 患 者 の 25%が 上 肢 に 関 して RSD の 徴 候 を 示 し,その 2/3 のみで 臨 床 徴 候 が 発 展 し 続 けた. 診 断 の 妥 当 性 においては 難 しい 点 があるが, 交 感 神 経 の 遮 断 で 一 時 的 に 徴 候 が 軽 減 すれば 確 定 診 断 とみなされる. 比 較 研 究 では,サーモグラフィーは, 一 貫 して RSD を 診 断 することができず, 妥 当 性 のある 検 査 とはみなされない.しかしながら,Kozin ら(1981)は, たとえば 握 力 のような 臨 床 的 な 指 標, 圧 痛 過 敏 性 と 指 輪 のサイズは,RSD より 正 確 な 診 断 指 標 であったと 述 べていた.イワタら(2002)は, 中 指 の 周 径 の 比 ( 麻 痺 側 / 非 麻 痺 側 )が 脳 卒 中 後 4 週 間 で 1.06 より 大 きい 場 合 は,RSD の 予 兆 であると 主 張 した. Conclusions Regarding Shoulder-Hand Syndrome CRPS は, 痛 みを 伴 う 臨 床 的 なものであり,それは 病 態 生 理 学 的 な 基 礎 からは 解 明 されていない. 診 断 は 臨 床 的 に 作 られている.たいていの 場 合 は 時 間 とともに 改 善 されるようである Treatment of CRPS 肩 の 問 題 の 予 防 と 積 極 的 な 早 期 治 療 は, 機 能 的 でない 痛 みの 強 い 上 肢 への 進 行 を 予 防 するため 勧 められる. 様 々な 治 療 選 択 は, 表 で 述 べられている. 治 療 は 関 節 可 動 域 訓 練 に 焦 点 を 当 てた 積 極 的 な 理 学 療 法 から 成 る.1 から 2 週 間 のコースで, 星 状 神 経 節 ブ ロックもしくは guanethedine の 局 所 的 静 脈 ブロックの 形 での 高 濃 度 のコルチコステロイド 薬,また/もしく は 交 感 神 経 節 ブロックのどちらかを 用 いる 治 療 は 障 害 が 持 続 するケースに 試 されるかもしれない.CI 療 法 や 感 覚 識 別 訓 練 もまた 肩 手 症 候 群 の 治 療 として 提 案 されている(Acerra et al. 2007). 外 科 的 な 交 感 神 経 切 除 術 は, たとえ 星 状 神 経 節 交 感 神 経 ブロックが 一 貫 して 効 果 的 であるが 症 状 が 再 発 する 場 合 考 慮 されるかもしれない. しかしながら 外 科 的 な 交 感 神 経 切 除 術 がアウトカムを 変 えるという 証 拠 はない. 提 案 される 治 療 の 数 が 多 いことに 反 映 されるように, 決 定 的 な RSD に 対 する 治 療 の 介 入 はない. 実 際,そ の 事 は 広 く 受 け 入 れられており,SHS に 関 連 して 用 いられている 治 療 の 多 くが 効 果 的 であるというエビデン スはほとんどない(Pertoldi & Benedetto 2005, Quisel et al. 2005). 適 切 な 治 療 なしに 6 ヶ 月 以 上 経 過 する 肩 手 症 候 群 は,つらい 予 後 となる.(Lieberman 1986). トライアルの 数 は 限 られているが,Geurts ら(2000)のレビューでは 経 口 コルチコステロイドは SHS に 最 51

52 も 有 効 であると 結 論 づけてられている.カルシトニンが SHS に 関 連 した 痛 みに 効 果 的 だという 1 つの RCT があるが, 臨 床 的 には 広 くは 用 いられていない Pharmacological Treatment of CRPS 3 つの 研 究 が 脳 卒 中 に 関 連 する 肩 手 症 候 群 の 薬 物 治 療 を 評 価 した. 結 果 は table に 示 された. 52

53 Discussion CRPS-1 治 療 に 対 するコルチコステロイドの 効 果 はあまり 研 究 されていない.2 つの RCT がある 中 で,1 つ はプラセボが 用 いられ,もう 1 つは 代 替 として NSAID が 用 いられている.ステロイドは 効 果 があると 示 され ている.Braus ら(1994)は 経 口 のコルチコステロイドは 少 なくとも 4 週 間 は 肩 手 症 候 群 を 改 善 したと 報 告 し た.Kalita ら(2005)もまたステロイドによる 有 意 な 症 状 の 軽 減 を 報 告 している. Conclusions Regarding Oral Corticosteroids in CRPS 経 口 コルチコステロイドは 少 なくともはじめの 4 週 間 は 肩 手 症 候 群 を 改 善 するという 適 度 なエビデンスがあ る(Level 1b). 経 口 コルチコステロイドは 少 なくともはじめの 4 週 間 CRPS を 改 善 するようだ Mirror Imagery as a Treatment for CRPS1 ミラーセラピーはリハビリテーションアウトカムを 改 善 するために, 運 動 パフォーマンスについての 視 覚 フ ィードバックを 用 いる 技 術 である. 運 動 パフォーマンスを 改 善 するためにも 用 いられるが,それについては 他 の 章 で 議 論 されている. 幻 肢 痛 の 治 療 としてより 一 般 的 に 関 連 しているが, 脳 卒 中 後 の CRPS-1 の 治 療 にもま た 有 効 であるかもしれない. 鏡 像 が 脳 を 介 して 麻 痺 側 上 肢 の 運 動 錯 覚 を 創 りだすのに 役 立 つと 信 じられている. これらの 鏡 像 錯 覚 が 減 少 したまたはなくなった 固 有 覚 入 力 を 補 い, 感 覚 フィードバックと 運 動 意 図 間 の 疼 痛 の ない 正 常 な 関 係 を 再 現 し, 疼 痛 状 態 を 改 善 すると 信 じられている. 患 者 は 上 肢 の 様 々な 動 きを 実 行 している 間 に 鏡 の 後 方 に 麻 痺 側 肢 が 隠 れている 状 態 で, 麻 痺 側 肢 が 鏡 (あるいはミラーボックス)の 中 に 見 えるように 座 る. 53

54 脳 卒 中 後 のミラーセラピーの 使 用 を 調 査 した 3 つの RCT が 評 価 されている. 54

55 上 記 に 示 された 3 つの RCT の 中 で,Moseley(2006)によって 著 された 1 つは 研 究 は Motor Imagery Program (MIP)の 1 つの 要 素 としてミラーセラピーを 含 んでいある. 実 際 とイメージでの 運 動 の 両 方 が 同 様 の 皮 質 の ネットワークを 活 性 化 するということが 知 られているが, 運 動 イメージの 基 礎 となるメカニズムは 不 明 確 なま まである. 提 示 されているメカニズムは 運 動 の 出 力 と 感 覚 のフィードバックを 融 和 すること,ミラーニューロ ンの 活 性 化 と 段 階 化 された 皮 質 運 動 ネットワークの 活 性 化 を 含 む.(Accera et al. 2007). 最 初 の 治 療 である 手 の 左 右 認 知 課 題 期 には 運 動 前 野 のみの 活 性 化 を 起 こし, 一 次 運 動 野 の 活 性 化 は 避 けられ た. 第 2 期 には 患 者 らは 28 枚 の 写 真 からランダムに 選 ばれた 手 の 写 真 と 自 分 たちの 手 が 同 じ 位 置 になるよう にイメージするよう 求 められた. 最 終 期 には 段 ボールのミラーボックス 内 に 非 患 側 の 手 の 写 真 が 置 かれた. 患 者 らは 20 枚 の 写 真 の 肢 位 を 両 手 を 用 いて 取 るよう,しかし, 痛 みを 経 験 したら 終 了 するよう 求 められた. ミラーセラピーは 単 独 で 用 いられた 際,シャムミラーセラピーやメンタルプラクティスと 用 いられた 際 よりも 疼 痛 の 軽 減 により 有 効 であった.その 効 果 はまた 長 期 持 続 効 果 も 報 告 されている(Cacchio et al. 2009a) Conclusions Regarding Graded Motor Imagery ミラーセラピーが 肩 手 症 候 群 に 関 連 する 痛 みを 軽 減 するという 強 いエビデンスがある.(レベル 1a) ミラーセラピープログラムは 肩 手 症 候 群 を 改 善 するようだ Passive Range of Motion Exercises for the Prevention of CRPS CRPS-1 の 治 療 だけでなくその 進 行 を 予 防 する 方 略 もいくつかある. 理 学 療 法 は 統 合 的 な 治 療 の 要 石 として 考 えられるが,CRPS の 進 行 を 予 防 するための 効 果 を 評 価 するためのコントロール 研 究 はない.1 つの 歴 史 的 なコントロールトライアルで 脳 卒 中 後 CRPS の 進 行 を 軽 減 するための 運 動 プログラムの 効 果 を 評 価 している (Table 11.32). 55

56 著 者 らによるセットプロトコールは CRPS の 進 行 に 寄 与 しているかもしれない 不 適 切 に 行 われている 過 度 の 他 動 関 節 可 動 域 訓 練 の 観 察 から 作 られた. 彼 らは 不 適 切 な 運 動 を 制 限 し, 療 法 士 によるセットプロトコール を 行 うことで CRPS の 発 生 を 減 少 させる 事 ができるのではないかと 仮 定 した. Conclusions Regarding Physical Therapy for Prevent CRPS 他 動 可 動 域 訓 練 は CRPS の 進 行 を 予 防 する 事 ができるという 限 定 的 なエビデンスがある(Level 2) Calcitonin for the Prevention of CRPS カルシトニンは 骨 粗 鬆 症 の 治 療 や 手 術, 外 傷 後 の 様 々な 疼 痛 状 態 にも 有 効 的 に 用 いられているが, 脳 卒 中 後 の CRPS-1 の 治 療 に 対 する 使 用 はまだ 調 べられていない. 作 用 のメカニズムはよく 理 解 されておらず, 作 用 場 所 も 同 定 されていない. 通 常 のリハビリテーションに 加 えたカルシトニンの 筋 内 注 射 の 効 果 を 調 査 した 1 つの 歴 史 的 なコントロールトライアルが 見 つけられた. Conclusions Regarding Calcitonin to Prevent CRPS カルシトニンの 筋 内 注 射 が CRPS の 進 行 を 予 防 するという 限 定 的 なエビデンスがある(Level 2) 56

57 11.8. Summery 1. 肩 の 亜 脱 臼 は 脳 卒 中 後 早 期 に 起 こる. 2. 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みは 亜 脱 臼 と 痙 性 に 関 係 するが, 肩 甲 骨 の 回 旋 には 関 係 がない. 3. 肩 甲 下 筋 が 重 要 な 働 きをし, 大 胸 筋 はそれよりは 重 要 ではないが,それぞれが 麻 痺 側 で 緊 張 が 高 くなり, 肩 関 節 周 囲 の 筋 のインバランスにつながるようだ. 4. 痛 みのある 片 麻 痺 患 者 の 肩 は, 重 度 な 脳 卒 中, 乏 しい 機 能 的 な outcome と 関 連 がある. 5. 長 期 に 渡 るポジショニングが 自 動 他 動 可 動 域 制 限 の 予 防 や 痛 みを 軽 減 するということには 対 立 したエビ デンス(Level4)がある. 6. 肩 のスリングが 痛 みと 関 連 する 亜 脱 臼 を 予 防 するという 限 定 的 なエビデンス(Level2)がある. 7. 片 麻 痺 の 肩 へのストラッピングが 痛 みの 進 行 を 減 らすということには 矛 盾 するエビデンス(Level4)があ る.ストラッピングは 上 肢 機 能 や 可 動 域 を 改 善 しないという 適 度 なエビデンスがある(Level1b). 8. オーバーヘッドプーリーを 用 いた 攻 撃 的 な 可 動 域 訓 練 は 肩 の 痛 みの 発 生 の 増 加 につながるという 適 度 な エビデンスがある(Level 1b). 9. 可 動 域 を 改 善 するための 緩 やかなエクササイズが 好 ましいアプローチであるという 適 度 なエビデンスが ある(Level 1b). 10. 肩 に 痛 みを 有 する 脳 卒 中 患 者 において 肩 甲 下 筋 と 胸 筋 腱 の 外 科 的 切 除 が 痛 みと 可 動 域 を 改 善 するという 限 定 されたエビデンスがある(Level 2). 11. 作 業 療 法 を 受 けている 肩 に 痛 みのある 脳 卒 中 患 者 において, 経 口 NSAID の 提 供 が 疼 痛 の 減 少 につながり, 可 動 域 を 改 善 し 機 能 回 復 を 改 善 するという 限 定 的 なエビデンスがある(Level 2). 12. 電 気 刺 激 は 脳 卒 中 後 の 麻 痺 側 肩 の 痛 みを 軽 減 しないが, 電 気 刺 激 が 肩 の 亜 脱 臼 の 進 行 を 予 防 するのに 役 立 つという 強 いエビデンスがある(Level 1a). 13. 肩 甲 下 筋 に 注 射 されるボツリヌス 毒 素 が 痙 性 のある 肩 の 痛 みを 軽 減 したり, 片 麻 痺 の 肩 関 節 可 動 域 を 改 善 するという 事 には 対 立 したエビデンスがある(Level 4). 57

58 14. 関 節 内 ステロイド 注 射 が 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 改 善 するという 事 には 対 立 したエビデンスがある(Level 4). 関 節 内 ステロイド 注 射 がプラセボやボツリヌス 毒 素 と 比 較 して 上 肢 の 機 能 を 改 善 しないという 強 いエビ デンスがある(Level 1a). 15. 超 音 波 と 比 較 して, 肩 甲 下 神 経 ブロックが 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みを 軽 減 するという 中 等 度 のエビデンスがあ る(Level 1b). 16. 指 圧 と 組 み 合 わされたアロマテラピーは 片 麻 痺 の 肩 の 痛 みに 関 連 した 疼 痛 を 軽 減 する 事 ができるという 中 等 度 のエビデンスがある(Level 1b). 17. マッサージ 療 法 が 脳 卒 中 の 痛 みと 不 安 レベルを 軽 減 するという 中 等 度 のエビデンスがある(Level 1b). 18. CRPS は 臨 床 的 にあまりその 存 在 を 理 解 されず,たいていの 場 合 は 時 間 とともに 改 善 される. 19. 経 口 コルチコステロイドは 少 なくともはじめの 4 週 間 は 肩 手 症 候 群 を 改 善 するという 適 度 なエビデンス がある(Level 1b). 20. 修 正 されたイメージプログラムが 肩 手 症 候 群 に 関 連 する 疼 痛 を 軽 減 するという 中 等 度 のエビデンスがあ る(Level 1b). 21. 他 動 可 動 域 訓 練 は CRPS の 進 行 を 予 防 する 事 ができるという 限 定 的 なエビデンスがある(Level 2). 22. ミラーセラピーが 肩 手 症 候 群 に 関 連 した 疼 痛 を 軽 減 するという 強 いエビデンスがある(Level 1a). 23. カルシトニンの 筋 内 注 射 が CRPS の 進 行 を 予 防 するという 限 定 的 なエビデンスがある(Level 2). 58

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δ Ⅸ 上 肢 ( 上 肢 及 び 手 指 )の 障 害 ( 第 9 次 改 正 全 部 ) 1 障 害 の 等 級 及 び 程 度 (1) 上 肢 ( 上 肢 及 び 手 指 )の 障 害 について 省 令 別 表 第 二 に 定 める 障 害 は 次 のと おりである ( 第 10 次 改 正 一 部 ) ア 上 肢 の 障 害 (ァ) 欠 損 障 害 ( 系 列 区 分 18 21) 第 1 級

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