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えつまいそみ
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1 国内外の電力構造改革の動向と課題電力中央研究所社会経済研究所上席研究員後藤美香 2012 年 8 月 3 日 1

2 目次欧米における電力構造改革の流れ欧米における電力構造改革の評価国内外の電気事業費用構造分析の動向まとめ 2

3 目次欧米における電力構造改革の流れ欧米における電力構造改革の評価国内外の電気事業費用構造分析の動向まとめ 3

4 欧米における電力構造改革の流れ規制された電気事業国営 / 民営の垂直一貫体制地域独占電力自由化 ( 卸電力市場, 小売市場への競争導入 ) ネットワーク部門のアンバンドリング ( 会計, 機能, 法的, 所有権 ) アンバンドリングのデメリットアンバンドリングのメリット部門間の密接な技術的連携に基づく運用面での費用節約効果の喪失部門間の協調的な投資意思決定の喪失による経済効率性の低下取引費用や二重マージン問題の発生送電ネットワークへの公平なアクセス発電部門小売供給部門の競争促進による効率化消費者メリットへの期待 ex.) 電気料金低下選択肢拡大 1980 年代 1990 年代 2000 年代 2012/2/29 4

厳格な規制発電配電小売送電第三者に売却 ISO: Independent System Operator(

5 種々のアンバンドリングの形態垂直統合 ISO モデル ITO モデル所有権分離発電送電 ( 所有運用 ) 配電小売発電送電 ( 所有 ) 配電小売系統運用機能は ISO へ移管発電送電 ( 所有運用 ) 別法人配電小売厳格な規制発電配電小売送電第三者に売却 ISO: Independent System Operator( 独立送電系統運用者 ) ITO: Independent Transmission Operator( 持株会社の下にある独立送電系統運用者 ) 5

6 欧州における制度改革とアンバンドリングの流れ欧州域内統一市場の形成を目的とした一連の電力自由化指令 1996 年電力自由化指令会計分離 2003 年第 2 次電力自由化指令送電部門 / 配電部門との情報遮断機能分離, 法的分離 2009 年第 3 次電力自由化指令所有権分離 ISO 化 ITO 化第四の選択肢 ( アイルランドなど ) 6

7 欧州におけるアンバンドリングの状況 ISO: Independent System Operator ( 独立送電系統運用者 ) ITO: Independent Transmission Operator( 持株会社の下にある独立送電系統運用者 ) 出所 ) 電力システム改革専門委員会第四回資料 7

8 米国における制度改革とアンバンドリングの流れ 1996 年 :FERC の指令 888,889 第 3 者への送電線オープンアクセス,ISO の推奨 FERC: 全米エネルギー規制庁 1999 年 :FERC の指令 2000 RTO の自主的な設立と参加 ( 運営の分離 or 所有権分離 ) 2002 年 : 標準市場設計に関する指令案垂直分離と送電系統運用者による卸電力市場の運営 2005 年 : 標準市場設計の全米への適用断念南東部電力会社の反発, カリフォルニア州電力危機 RTO: 地域送電機関現在 :ISO/RTO は 7 つ ISO/RTO に送電線所有権はない送電系統運用, 信頼度維持, 設備投資計画策定, 卸電力市場の運営などを行う 8

9 米国における独立送電系統運用者出所 )FERC (Federal Energy Regulatory Commission: 全米エネルギー規制庁 ) 9

10 目次欧米における電力構造改革の流れ欧米における電力構造改革の評価国内外の電気事業費用構造分析の動向まとめ 10

11 評価のポイントアンバンドリングと電気料金アンバンドリングと再生可能エネルギー 11

欧州主要国の事業者における送電部門の法人格分離 / 所有権分離の実施時期所有権分離の実施時期によるグループ化グループ 1: 早期 ( 積極的 ) グループ 2: 中期 ( やや積極的 ) グループ 3: 晩期 ( 消極的 ) 国送電会社 ITO 所有権分離スペイン REE 1985 年 1999 年イギリス National Grid 1990 年 5 月 1995 年 12 月

12 欧州主要国の事業者における送電部門の法人格分離 / 所有権分離の実施時期所有権分離の実施時期によるグループ化グループ 1: 早期 ( 積極的 ) グループ 2: 中期 ( やや積極的 ) グループ 3: 晩期 ( 消極的 ) 国送電会社 ITO 所有権分離スペイン REE 1985 年 1999 年イギリス National Grid 1990 年 5 月 1995 年 12 月ベルギー Elia 2001 年 6 月 2005 年 6 月イタリア Terna 1999 年 5 月 2004 年 5 月オランダ Tennet 2005 年 6 月 2005 年 7 月フィンランド Fingrid 1996 年 11 月 2011 年 4 月ドイツ Amprion 2005 年 6 月 2011 年 9 月ドイツ Tennet TSO 2007 年 12 月 2010 年 1 月ドイツ 50Hertz Transmission 2002 年 4 月 2010 年 5 月グループ 4: 未実施 ( 慎重 ) ドイツ EnBW Transportnetz 1997 年フランス RTE 2005 年 1 月 12

13 所有権分離の実施時期と家庭用電気料金 ( 水準 ) の関係 2010 年における電気料金 ( ユーロセント /kwh) 30 ドイツ 25 イタリアベルギースペイン 20 フランスフィンランドオランダイギリス未実施 2010 年前後消極的送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) 年代半ばやや積極的年代後半積極的出所 Eurostatデータを元に作成注 ) 年間使用量 3,500kWh( うち夜間 1,300kWh) のモデル需要家

14 所有権分離の実施時期と家庭用電気料金 ( 変化率 ) の関係電気料金の変化率 ( ) 80% スペイン 70% 送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) 未実施ドイツ 2010 年前後消極的フィンランド 2000 年代半ばやや積極的 1990 年代後半積極的 60% 50% ベルギーイギリス 40% 30% 4 フランス 3 オランダ 2 イタリア 1 20% 10% 0% -10% 出所 Eurostatデータを元に作成注 ) 年間使用量 3,500kWh( うち夜間 1,300kWh) のモデル需要家 14

所有権分離の実施時期と産業用電気料金 ( 水準 ) の関係 2010 年における電気料金 ( ユーロセント /kwh) 16 イタリア 14 フランスドイツフィンランドベルギーオランダスペインイギリス 12 10 8 6 4 未実施 2010 年前後消極的

15 所有権分離の実施時期と産業用電気料金 ( 水準 ) の関係 2010 年における電気料金 ( ユーロセント /kwh) 16 イタリア 14 フランスドイツフィンランドベルギーオランダスペインイギリス未実施 2010 年前後消極的送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) 年代半ばやや積極的年代後半積極的出所 Eurostat データを元に作成注 ) 年間使用量 2,000MWh / 最大需要 500kWのモデル需要家

所有権分離の実施時期と産業用電気料金 ( 変化率 ) の関係電気料金の変化率 (2000 2010) フランス送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) ベルギー 80% 70% 60% 4 未実施ドイツ 3 フィンランド 2010

16 所有権分離の実施時期と産業用電気料金 ( 変化率 ) の関係電気料金の変化率 ( ) フランス送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) ベルギー 80% 70% 60% 4 未実施ドイツ 3 フィンランド 2010 年前後消極的 2 オランダイタリア 2000 年代半ばやや積極的イギリススペイン 1990 年代後半積極的 1 50% 40% 30% 20% 10% 0% 出所 Eurostat データを元に作成注 ) 年間使用量 2,000MWh / 最大需要 500kWのモデル需要家 16

17 各国の電力消費量に占める再生可能エネルギー発電の比率 ( 水力含まず ) 20% 18% 16% 14% 12% 10% 8% 6% 4% 2% イギリススペインドイツフィンランドイタリアオランダフランスベルギー 0% 出所 Eurostat データを元に作成 17

18 所有権分離の実施時期と再生可能エネルギーの導入水準の関係年における再生可能エネルギーの導入割合送電部門のアンバンドリングの実施時期によるグループ分け ( スライド 12 を参照 ) 未実施フランス 2010 年前後消極的 3 ドイツフィンランドオランダ 2000 年代半ばやや積極的スペイン 20% 18% 16% 14% 12% 10% 8% 6% 4% イタリアイギリス 2% ベルギー 1990 年代後半積極的 0% 2 1 出所 Eurostatデータを元に作成 18

19 ここまでのまとめ ( よく ) 言われている点欧州の事例から分かったこと発送電分離によって競争が活性化され, 結果として料金は下がる発送電分離によって再生可能エネルギー電源に対するアクセス差別は解消され, 再生可能エネルギーの導入は促進される料金水準は各国の電源構成や燃料価格に加え, ネットワーク料金, 税金や再生可能エネルギー支援費用といった, 規制や国の政策で決まる部分が大きく, 最近では特にその傾向が高まっている発送電分離の進展と電気料金の水準や変化率の間にこれまでのところ明確な関係は見られない再生可能エネルギーの導入には各国の導入支援制度が大きく影響しており,FIT(Feed-in Tariff: 固定価格での買取 ) や FIP(Feed-in Premium : 市場価格 α での買取 ) といった投資家に有利な制度の存在により導入率は高まるその分需要家の費用負担も高まる発送電分離の進展と再生可能エネルギー導入の水準や変化率の間にこれまでのところ明確な関係は見られない 19

20 目次欧米における電力構造改革の流れ欧米における電力構造改革の評価国内外の電気事業費用構造分析の動向まとめ 20

21 電気事業の費用構造分析電気事業構造改革検討の際の理論基盤となる産業の経済的特性の確認規模の経済性の有無垂直統合の経済性の有無分析手法経済学の理論的基盤を有し, 定量的な評価を行うことが可能な費用関数モデルに基づく手法 21

経済性指標 ( 一般電気事業者 9 社平均 ) 発電部門の規模の経済性は失われている送配電部門の規模の経済性はある ( ほぼ 1 の最適規模 ) 垂直統合による費用節約額は総費用の 20%~30% 程度垂直統合によって節約できる費用の現状費用に対する割合を示す規模の経済性垂直統合の経済性 (%) 1.

22 経済性指標 ( 一般電気事業者 9 社平均 ) 発電部門の規模の経済性は失われている送配電部門の規模の経済性はある ( ほぼ 1 の最適規模 ) 垂直統合による費用節約額は総費用の 20%~30% 程度垂直統合によって節約できる費用の現状費用に対する割合を示す規模の経済性垂直統合の経済性 (%) 1.3 全体の規模の経済性 ( 左軸 ) 垂直統合の経済性 ( 右軸 ) -30 規模の経済性あり最適規模 1.0 発電の規模の経済性 ( 左軸 ) 送配電の規模の経済性 ( 左軸 ) 規模の経済性なし出所 ) 電力中央研究所報告書 Y11009(2012) 22

23 垂直統合の経済性の分析事例論文掲載雑誌 / 書籍サンプルデータ主な分析結果垂直統合の経済性 Analyzing the Impact of Henderson (1985) Regulatory Change in Public 1970 年の米国 IOU 160 社 Utilities, Lexington, MA: 費用関数において各生産段階 ( 発電と送配電 ) は分離可能ではない Lexington Books Roberts (1986) Land Economics 1978 年の米国 IOU 65 社費用関数において各生産段階 ( 発電と送配電 ) は分離可能ではない Eftekhari (1989) The Journal of Economics 1986 年の電力会社 61 社, 発電の 80% は火力, 原子力は保有せずサンプル平均で統合生産の不経済性あり - Kaserman and Mayo (1991) Gilsdorf (1994, 1995) Lee (1995) Journal of Industrial Economics Quarterly Review of Economics and Finance Southern Economic Journal Journal of Applied Econometrics 1981 年の米国 IOU 74 社, その内発電のみの会社 10 社, 送配電のみの会社 14 社, 垂直統合事業者 50 社サンプル平均で垂直統合の経済性 11.96% ただし小規模事業者では垂直統合の経済性は見られず 1985 年の米国の垂直統合 IOU 発電, 送電, 配電の各生産段階間に費用補完性はなし 72 社, 発電の65% は原子力以外 1990 年の米国の IOU 70 社分離可能性を棄却発電, 送電, 配電の分離は技術効率性の喪失につながる 1977, 1982, 1987, 1992 年の米 Thompson (1997) Land Economics 分離可能性を棄却国の IOU 85 社 1983 年から1987 年の米国の IOU 発電部門と送配電部門の分離可能性は棄却 Hayashi et al (1997) Southern Economic Journal 50 社原子力なし垂直統合の経済性は13.9%~16.8% International Journal of 垂直統合の経済性は13%~57% Kwoka (2002) 1989 年の米国の IOU 147 社 Industrial Organization 平均で43% 垂直統合の経済性は平均で6.5% Jara-Diaz et 多くの研究で電気事業における垂直統合の 1985 年から1996 年のスペインの al (2004) Energy Economics 発電部門の範囲の経済性 ( 水平統合の経済性 ) は9.1~10% 12 電力会社垂直水平両方の統合の経済性は28.1% International Journal of 1981 年から1998 年の日本の垂直発電部門と送配電部門の間に技術的外部性が認められることから垂直統合の経済性の存在 Nemoto and Goto (2004) Industrial Organization 統合型 9 電力会社を確認経済性 ( 費用節約効果 ) が検証されている 1978 年から1998 年の日本の垂直 Ida and Kuwahara (2004) Asian Economic Journal 発電部門と送配電部門の間に費用補完性あり統合型 9 電力会社 1996 年から2003 年のオンタリオ Houldin (2005) Electricity Journal 統合の経済性 ( 規模および範囲 ) の喪失により5% の費用増加電力システム 1994 年から2000 年のイタリアの Journal of Regulatory Fraquelli et al (2005) 25 公営電気事業者 ( 垂直統合型平均で垂直統合の経済性 3% Economics 14 社, 配電のみ 11 社 ) 1989 年から1997 年のスペインの垂直統合により費用節約と供給品質の向上 Arocena (2008) Energy Economics 12 電力会社サンプル平均で垂直統合の経済性 40% 以上 Greer (2008) Energy Economics 1997 年の地域電力会社 831 社垂直統合の経済性はサンプル平均で 40% 以上 Arocena et al (2009) Meyer (2011) 後藤井上 (2012) Aston University Working Paper, RP0917 Journal of Regulatory Economics 電力中央研究所報告書米国の IOU 116 社 ( 垂直統合型 88 社, 配電のみ 21 社, 発電のみ 7 社 ) 出所 )Saal (2011), Arocena, Coelli & Saal (2009) を元に加工垂直統合の経済性は平均で 8.1%, 発電部門の水平統合の経済性は 5.4%, 全体の統合の経済性は 13.5% 2001 年から2008 年の米国の IOU 143 社 ( 火力と原子力が主体, 水発電, 送電, 配電, 小売の複数の分離シナリオについて垂直統合の経済性を費用関数に基づ力その他が10% 以上のサンプルき推定発電部門とその他の部門の分離により平均で 19% から 26% の費用上昇送電のみは排除 ) 垂直統合の程度は事他部門から分離の場合 4% の費用上昇業者ごとにさまざま 1990 年から2008 年の日本の垂直垂直統合の経済性は平均で19%~29% 統合型 9 電力会社 - 23

24 目次欧米における電力構造改革の流れ欧米における電力構造改革の評価国内外の電気事業費用構造分析の動向まとめ 24

発送電一貫体制は全体として費用を抑制してきた卸電力市場の活性化 ( 新規参入の促進 ) は費用を抑制する可能性がある

25 まとめ欧州における事例から, これまでのところアンバンドリング ( 発送電分離 ) と電気料金の間に明確な関係は見られない 1990 年 ~2008 年のわが国電気事業の実証分析から, 発送電一貫体制は全体として費用を抑制してきた卸電力市場の活性化 ( 新規参入の促進 ) は費用を抑制する可能性がある市場の広域化 ( 送電部門の部分統合 ) は費用を抑制する可能性がある電気事業構造改革の議論のためには, 電気事業の費用特性と競争活性化による効率化を比較考量する必要がある 25

26 ご清聴ありがとうございました参考資料電力中央研究所報告書 Y11009(2012) 電気事業の構造改革に関する経済性分析わが国電気事業の費用構造分析電力中央研究所報告書 Y11010(2012) 欧州における送電部門アンバンドリングの現状と評価 26

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スライド 1 内外における電力自由化の到達点と課題学習院大学矢島正之会津大学大藤建太電力中央研究所後藤美香後藤久典井上智弘公益事業学会政策研究会 1 内容内外における電力自由化の現状米国 EU 日本内外における電力自由化のパフォーマンスわが国における電力自由化の課題公益事業学会政策研究会 2 内外における電力自由化の現状 EU 全面自由化と構造分離米国全面自由化と構造分離および規制と垂直統合の併存