鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物における 補修工法適用性と維持管理に関する研究 渡邉佳彦

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1 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物に Titleおける補修工法適用性と維持管理に関する研究 ( Dissertation_ 全文 ) Author(s) 渡邉, 佳彦 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

2 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物における 補修工法適用性と維持管理に関する研究 渡邉佳彦

3 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物における 補修工法適用性と維持管理に関する研究 目次 第 1 章序論 研究の背景 研究の目的 論文の構成...3 第 2 章既往の研究 コンクリート中の鉄筋腐食 コンクリート中の鉄筋の腐食反応 鉄筋腐食の代表的な劣化機構 コンクリート中の鉄筋腐食を調査する非破壊検査手法 自然電位法 分極抵抗法 電気抵抗法 鉄筋腐食により劣化したコンクリート構造物の補修工法 表面保護工法 電気化学的防食工法 電気防食工法による補修 本章のまとめ...23 第 3 章鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理 鉄道構造物の維持管理体系 鉄道構造物の検査体系 鉄道構造物における検査実施後の措置 長期間供用した鉄筋コンクリート鉄道構造物の健全度評価および維持管理のあり方 調査概要 試験体の調査結果 供用中の高架橋の調査結果 長期間供用中の高架橋の維持管理について 山陽新幹線のコンクリート構造物について 鉄筋腐食により劣化した RC 鉄道構造物の補修 本章のまとめ...40 第 4 章表面被覆工法の耐久性評価手法に関する研究 はじめに 山陽新幹線における表面被覆工法の要求性能...42

4 4.3 試験施工概要 試験実施工法 現地試験概要 暴露試験概要 試験実施内容 試験施工結果および考察 現地試験結果 暴露試験結果 試験結果のまとめ 試験施工結果に基づいた表面被覆工法の選定 試験方法 規格項目と規格値 本章のまとめ...53 第 5 章鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート構造物の補修工法適用性に関する研究 はじめに 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への部分断面修復工法の適用性 供試体の概要 実験項目 実験結果 実験結果に基づく各手法の比較 本実験のまとめ 塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への犠牲陽極材を用いた電気防食工法の適用性 供試体の概要 測定項目 実験結果 本実験のまとめ 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物へのセメント系電気防食材料を用いた電気防食工法の適用性 供試体の概要 測定項目 実験結果 本実験のまとめ 本章のまとめ...86 第 6 章電気防食工法の実構造物への適用による効果の検証 はじめに 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する流電陽極方式による電気防食工法 施工箇所概要...88

5 6.2.2 施工後の追跡調査内容 施工後の追跡調査結果 本施工のまとめ 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する外部電源方式による電気防食工法 施工箇所概要 施工後の追跡調査内容 施工後の追跡調査結果 本施工のまとめ 外的塩害により劣化した RC 構造物に対する外部電源方式による電気防食工法 施工箇所概要 施工後の追跡調査内容 施工後の追跡調査結果 本施工のまとめ 本章のまとめ 第 7 章結論 本研究で得られた結論 鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理に関するシナリオデザイン 鉄筋コンクリート鉄道構造物の点検のあり方 鉄筋コンクリート鉄道構造物の補修 ( 山陽新幹線以外を対象 ) 山陽新幹線鉄筋コンクリート構造物に適用する補修工法選定フローの見直し ( 案 ) 鉄筋コンクリート鉄道構造物に適用する電気防食工法の課題 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物の補修後の維持管理

6 第 1 章序論 1.1 研究の背景 20 世紀後半は, 高度経済成長に支えられ, 次々と新しい構造物を造り続けた 開発と建設の時代 であった. 特に,1960 年代から 1970 年代にかけて相次いで開業した東海道 山陽新幹線や東名 名神高速道路などの鉄道 道路構造物が日本の国土発展に与えた影響は計り知れない. しかし, 一方で 20 世紀終盤,1999 年に相次いで発生した山陽新幹線のトンネル覆工や高架橋からのコンクリート剥落事故を契機に, 維持管理の重要性が高まってきている. 土木学会コンクリート標準示方書では,2001 年に新たに [ 維持管理編 ] が 1),2007 年には 鉄道構造物等維持管理標準 同解説 ( 構造物編 )-コンクリート構造物 が発刊された 2). またコンクリート構造物の診断に関する新たな資格制度として,2001 年に コンクリート診断士 (( 社 ) 日本コンクリート工学協会 ) 3),2007 年に コンクリート構造診断士 (( 社 ) プレストレストコンクリート技術協会 ) 4) が制定された. さらに, 鋼構造の分野でも 2005 年に 土木鋼構造診断士 制度 (( 社 ) 日本鋼構造協会 ) が発足している. 21 世紀は大量の既存の構造物を維持管理することが技術者にとって重要な任務の一つになることは明らかであり, そのためにはこれらの資格を有効に活用すること, 資格所有者が適切な判断を行って構造物を適切に維持管理することが重要である. 本来, 鉄道コンクリート構造物は,50 年間メンテナンスフリーを目標とし, 通常の環境において適切な維持管理がなされた場合には 100 年程度の耐用年数を考慮して設計されており 5), 適切に設計 施工した場合には, きわめて耐久性に富む構造形式である. しかし, 高度経済成長期に建設された構造物の中には, その時代背景から, 洗浄不足の海砂使用やポンプ施工に伴う品質管理に対する配慮が不足するなど, 設計 施工が適切でないケースが見受けられる. 事実, 山陽新幹線のコンクリート構造物の劣化は中性化および内在塩化物イオンに起因する 6) とされており, 維持管理の重要性は大きい. アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市郊外で 2007 年 8 月に高速道路の橋桁が崩落したのは記憶に新しい. この橋桁の完成は 1967 年 11 月と, 経年 40 年で桁の崩落が発生しており, 原因の一つとして点検で疲労亀裂を見落とした可能性も示唆されている 7). このような惨事を発生させないためにも, コンクリート構造物の現状を検査で適切に把握するとともに, 変状が発生した場合, あるいは今後発生が予想される場合に, 適切な補修 補強を行うなど, 維持管理のシナリオデザインの確立が今後ますます重要となってくる. 1.2 研究の目的鉄道コンクリート構造物の維持管理は, 図 に示すとおり, その供用中は定期的に検査を行うほか, 必要に応じて詳細な検査を実施し, その結果, 健全度を考慮して必要な処置を講じるものとしている 8). この維持管理体系は, 図 に示すコンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ] 9) に記された維持管理の手順とほぼ同様となっている 年に相次いで発生した山陽新幹線のトンネル覆工や高架橋からのコンクリート剥落事故から約 10 年が経過し, この間コンクリート構造物の調査 補修に関する様々な取組みがなされているが, これらの長期耐久性については, いまだ不明な点が多い. 1

7 図 コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ] における構造物の維持管理の手順 9) 図 鉄道構造物の維持管理の手順 8) そこで, 本研究の目的は, まず筆者の所属する西日本旅客鉄道 ( 株 )( 以下 JR 西日本 とする ) を中心として, 鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理についてとりあげ, その中で長期間供用した構造物の耐久性について調査を実施し, 同種の長期間供用している鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理上の要点をまとめた. また, 山陽新幹線のコンクリート問題を契機に, 補修工法の見直しがなされたが. 見直し前と見直し後の違いについて検討を加えた. 次に, 補修工法として, 多く用いられている表面被覆工法, 断面修復工法, 電気防食工法を取り上げる. 表面被覆工法では, 山陽新幹線を対象とした耐久性評価手法の確立に向け, 塗膜の室内試験と暴露試験を実施し, その結果に基づき表面被覆工法の選定に関しての検討を実施した. 断面修復工法では, 近年問題となっているマクロセル腐食の抑制を目的として, 種々の断面修復材を用いて腐食抑制効果の比較検証を実施した. 一方で, 部分的な断面修復ではマクロセル腐食を完全に抑制することが難しいことが想定されることから, 電気防食工法によるマクロセル腐食の抑制, さらに断面修復工法で問題となっていることの一つである, 鉄筋裏はつり深さの低減に向けた電気防食工法の取組みについて実験を行った. 実験結果を踏まえ,JR 西日本で供用中の鉄筋コンクリート鉄道構造物への電気防食工法の適用とその維持管理について, 施工後数年間の調査結果を踏まえて, 今後の維持管理手法のあり方を検討した. 最後に, これらの研究結果をふまえ, 山陽新幹線 RC 構造物への補修を念頭とした補修工法選定フローの見直しの提案するとともに, 日本の社会資本の土台となる, 鉄筋コンクリート鉄道構 2

8 造物を末永く供用し続けていくためのシナリオを構築すべく, その維持管理手法の提案を行う. 1.3 論文の構成本論文は, 全 7 章からなる. 第 1 章 序論 では, 研究の目的ならびに論文の構成を示す. 第 2 章 既往の研究 では, 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物に関して, 腐食のメカニズム, 腐食を調査するための非破壊検査手法, 劣化した構造物に対する補修工法についての既往の研究をまとめる. 第 3 章 鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理 では,2000 年にとりまとめられた 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書 をもとに, 山陽新幹線鉄筋コンクリート構造物の現状をとりあげる. そして, 現在の鉄道構造物の維持管理体系を述べる. さらに, 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書 の公表前と公表後での補修方法の違いについて検討を加える. 最後に, 長期間供用した鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理のあり方について, 詳細調査の結果を基に述べる. 第 4 章 表面被覆工法の耐久性評価手法に関する研究 では, 山陽新幹線を対象に, これまで明確でなかった表面被覆工法に要求する性能を明らかにし, その性能を満足するために種々の材料を用いて, 実高架橋による現地試験, および試験体を用いた暴露試験を実施した. その結果を取りまとめるとともに, 表面被覆工法の要求性能を確保するための試験項目や規格値について, 試験結果を基に検討を行った. 第 5 章 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート構造物の補修工法適用性に関する研究 では, 以下の 3 種類の研究を実施し, それぞれの補修工法による鉄筋コンクリート構造物の耐久性を評価した. 1 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物に対する部分断面修復工法の適用種々の補修材を用いて部分断面修復を行い, 補修材の違いによる補修効果の違いを評価 検討した. 2 塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物に対する電気防食工法の適用部分断面修復工法では, 適用方法によってはマクロセル腐食を完全に抑制することが難しいことから, 流電陽極方式の電気防食工法により, その補修効果を評価した. なお, 腐食環境として, 内的塩害と, 内的および外的塩害とした. 3セメント系電気防食材料を用いた電気防食工法の適用性新しい電気防食材料の一つである, 亜鉛粒子および黒鉛粒子をセメント成分に混和した, セメ 10) ント系電気防食材料を用い, 鉄筋腐食により劣化したコンクリート構造物へ適用した場合の補修効果について検討を行った. 3

9 第 6 章 電気防食工法の実構造物への適用による効果の検証 では, 以下の 3 箇所で施工されている電気防食工法に関して, 施工後の調査を実施し, 調査結果を基に健全性について評価した. 1 流電陽極方式による, 中性化および内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への適用 2 外部電源方式による, 中性化および内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への適用 3 外部電源方式による, 飛来塩分により劣化した鉄筋コンクリート構造物への適用 第 7 章 結論 では, 本研究で得られた結論を総括するとともに, 各章で得られた知見を基に, 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物, 特に山陽新幹線 RC 構造物を対象に, 鉄筋腐食により劣化した構造物に対する適切な維持管理のあり方について提言を行い, 本研究のまとめとする. *************** 第 1 章参考文献 1) 宮川豊章, 森川英典 :2001 年制定土木学会コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ] の概要, コンクリート工学,Vol.39,No.4,pp.3-8, ) 谷村幸裕, 曽我部正道, 岡本大, 上田洋 : 鉄道構造物等維持管理標準 同解説 ( 構造物編 ) コンクリート構造物の概要, コンクリート工学,Vol.46,No.2,pp.18-23, ) 魚本健人 : コンクリート構造物の維持管理とコンクリート診断士, コンクリート工学,Vol.39, No.4,pp.10-13, ) 魚本健人, 二羽淳一郎 : コンクリート構造診断士制度の発足について, プレストレストコンクリート,Vol.49,No.3,pp.70-75, )( 財 ) 鉄道総合技術研究所 : 鉄道構造物等設計標準 同解説 -コンクリート構造物平成 16 年 4 月,pp.13-14, ) 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 : 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書, ) 日経 BP 社 : 日経コンストラクション 2007 年 8 月 24 日号,pp.10-12, )( 財 ) 鉄道総合技術研究所 : 鉄道構造物等維持管理標準 同解説 ( 構造物編コンクリート構造物 ), )( 社 ) 土木学会 :2007 年制定コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ], ) 稲木倫道, 宮田義一, 永井崇昭, 朝倉祝治 : 亜鉛および黒鉛粉末を混入したセメントによる鋼の防食, 材料と環境,Vol.53,No.5,pp ,

10 第 2 章既往の研究 2.1 コンクリート中の鉄筋腐食 コンクリート中の鉄筋の腐食反応コンクリート中では Ca(OH) 2 が多量に析出し,pH が約 12~13 という強アルカリ性を保持し, 鉄筋表面の不動態被膜によって鉄筋の腐食が抑制されている. この不動態被膜のメカニズムは明確ではないが, 鋼材表面に酸素が化学吸着し, さらに緻密な酸化物層が生じることによって厚さ 3mm 程度の不動態被膜が形成されるという説明が多い 1). しかし, 鉄筋近傍の液相中の塩化物イオン濃度が高くなったり, あるいはコンクリートの中性化による ph の低下などによって不動態被膜が破られたりした場合, 図 ) に示すように, 式 [2.1.1] [2.1.2] で 2) 図 鉄筋腐食反応の模式図表される電気化学反応によって鉄筋は容易に酸化 腐食し始める. Fe Fe e - ( アノード反応 ) [2.1.1] 1/2O 2 + H 2 O + 2e - 2OH - ( カソード反応 ) [2.1.2] コンクリート中の鉄筋の腐食は, 鉄イオンが溶出するとともに電子を発生するアノード反応と, その電子が溶存酸素を還元するために消費されるカソード反応が鉄筋表面で生じ ( 腐食電池の形成 ), これらの反応が同時に同一速度で進行する. その結果, 溶出した鉄イオンは複雑な経路を経て溶存イオンや錆となる. 式 [2.1.1] [2.1.2] で示した 2 つの反応式を 1 つにまとめると式 [2.1.3] となり, 腐食反応により水酸化第一鉄 Fe(OH) 2 が生成される. Fe + 1/2O 2 + H 2 O Fe(OH) 2 [2.1.3] 鉄筋腐食の代表的な劣化機構コンクリート構造物の劣化機構とその劣化要因, 劣化現象, 劣化指標の例は, 表 ) に示される. この中から, 鉄筋腐食の代表的な劣化機構である, 中性化と塩害について, 詳しく述べることとする. (1) 中性化 (1-1) 概説中性化とは, 大気中の二酸化炭素がコンクリート内に浸入し, 水酸化カルシウム Ca(OH) 2 などのセメント水和物と炭酸化反応を起こすことにより, コンクリート空隙中の水分の ph を低下させる現象である. これにより, 内部の鋼材表面の不動態被膜が失われ, 酸素と水分の供給により腐食が進行する. さらに鋼材の腐食により, ひび割れの発生, かぶりのはく落, 耐荷力の低下などが起こる. 中性化の進行とそれに伴う鋼材の腐食による劣化過程は, 図 ) および表 ) に示すように, 潜伏期, 進展期, 加速期, 劣化期に区分される. (1-2) 劣化予測 5

11 3) 表 劣化機構と要因, 指標, 現象の関連 劣化機構 劣化要因 劣化現象 劣化指標の例 中性化 二酸化炭素 二酸化炭素がセメント水和物と反応し, 細孔溶中性化深さ液中の ph を低下させることで, 鋼材の腐食が鋼材腐食量促進され, コンクリートのひび割れやはく離, 腐食ひび割れ鋼材の断面現象を引き起こす劣化現象. 塩害 塩化物イオン コンクリート中の鋼材の腐食が塩化物イオンにより促進され, コンクリートのひび割れやはく離, 鋼材の断面現象を引き起こす劣化現象. 塩化物イオン濃度鋼材腐食量腐食ひび割れ コンクリート中の水分が凍結と融解を繰返すこ 凍害 凍結融解作用 で劣化する現象. とによって, コンクリート表面からスケーリン凍害深さグ, 微細ひび割れおよびポップアウトなどの形鋼材腐食量 化学的侵食 酸性物質や硫酸イオンとの接触によりコンクリ劣化因子の浸透深さ酸性物質ート硬化体が分解したり, 化合物生成時の膨張中性化深さ硫酸イオン圧によってコンクリートが劣化する現象. 鋼材腐食量 骨材中に含まれる反応性シリカ鉱物や炭酸塩岩 アルカリを有する骨材がコンクリート中のアルカリ性水膨張量反応性骨材シリカ反応溶液と反応して, コンクリートに異常膨張やひ ( ひび割れ ) び割れを発生させる現象. (a) 美観 景観に着目した場合 (b) 安全性に着目した場合 3) 図 中性化 塩害による劣化進行過程の概念図の一例 中性化を受けたコンクリート構造物の維持管理においては, 点検時の構造物の性能を定量的に把握し, また性能低下を予測するために, 中性化による劣化を定量的に予測する必要がある. ただし, 現在の技術レベルでは定量的な予測を行うことが困難であるため, 図 および表 に示すような劣化過程に分類し, 各劣化過程が基本的には構造物の状態 ( 性能 ) に対応していることを考慮して, それぞれの期間の長さを表 のように予測することで劣化進行予測に置き換え 6

12 3) 表 中性化 塩害による各劣化過程の定義 劣化過程 定義期間を決定する要因中性化塩害中性化塩害 潜伏期 塩化物イオンの中性化深さが鋼材の鋼材表面における塩化物イオン濃中性化進行拡散腐食発生限界に到達度が腐食発生限界濃度 (1.2kg/m 3 を速度初期含有塩化物するまでの期間標準とする ) に達するまでの期間イオン濃度 進展期 鋼材の腐食発生から腐食ひび割れ発生までの期間 鋼材の腐食速度 加速期 腐食ひび割れ発生により鋼材の腐食速度が増大する期間 ひび割れを有する場合の鋼材 劣化期 鋼材の腐食量の増加により耐荷力の低下が顕著な期間 の腐食速度 ることが出来る. (1-3) 中性化の進行予測中性化の進行予測手法は, t 則 促進試験の利用 物理化学的モデルの利用 などがある. 実構造物での中性化進行予測では t 則が一般的である. この手法は, 中性化深さが式 [2.1.4] に示すように中性化期間の平方根に比例することを用いたものである. y = b t [2.1.4] ここに,y: 中性化深さ (mm) t: 中性化期間 ( 年 ) b: 中性化速度係数 (mm/ 年 ) 中性化深さの測定値がある場合には, 中性化速度係数を測定結果から求め, その後の予測を行うとよい. 点検結果がない場合の中性化の進行予測は, 対象となる構造物と同じ, あるいは類似した材料, 配合, 環境条件を対象としている式を用いることが望ましいが, そのような式がない場合には, 以下の式 [2.1.5] を用いてよい 3). y = ( W/B) t [2.1.5] ここに,W/B: 有効水結合材比 =W/(C p +k Ad) W: 単位体積あたりの水の質量 B: 単位体積あたりの有効結合材の質量 C p : 単位体積あたりのポルトランドセメントの質量 Ad: 単位体積あたりの混和材の質量 k: 混和材の影響を表す係数フライアッシュの場合 :k=0 高炉スラグ微粉末の場合 :k=0.7 (1-4) 鋼材腐食の進行予測中性化による鋼材腐食は, 中性化深さが鋼材位置に到達する以前に開始すると言われている. また, 腐食開始時期はかぶりと中性化深さの差である中性化残りと関係がある調査事例が多く, 一般的には中性化残りが 10mm となった時点で腐食が開始するとされている. 中性化による腐食ひび割れ発生前の鋼材腐食の進行予測には, 点検結果で得られた腐食量に基づく方法や, 鋼材の腐食反応速度に基づく方法などがある. 7

13 また, 腐食ひび割れの発生予測には, 腐食量から判定する方法や力学モデルを用いる方法など がある. 示方書では, 腐食ひび割れ発生時の鋼材腐食量を 10mg/cm 2 とすれば腐食ひび割れの発生 時期を安全側に推定できるとしている 3). (2) 塩害 (2-1) 概説塩害とは, コンクリート中における塩化物イオンの存在により, コンクリート中の鋼材の腐食が進行し, 腐食生成物の体積膨張によるコンクリートのひび割れやはく離, あるいは鋼材の断面減少が生じ, ひいては構造物の性能低下につながる現象のことをいう. 塩化物イオンは, 海水や凍結防止剤などのように構造物の外部環境から供給される場合 ( 以下, 外的塩害 という) と, コンクリート製造時に細骨材等の材料から供給される場合 ( 以下, 内的塩害 という) とがある. 塩害の進行とそれに伴う鋼材の腐食による劣化過程は, 図 ) および表 ) に示すように, 潜伏期, 進展期, 加速期, 劣化期に区分される. (2-2) 劣化予測塩害を受けたコンクリート構造物の性能低下を予測するためには, コンクリート中の鋼材腐食や鋼材腐食に伴うコンクリートの劣化の進行を定量的に予測する必要がある. ただし, 中性化と同様, 現在の技術レベルでは定量的な予測を行うことは必ずしも容易ではない. このため, 塩化物イオンのコンクリート中への浸透と鋼材腐食の進行を考慮して, 表 に示すような各劣化過程とその期間を予測することが現実的である. (2-3) 塩化物イオンの拡散の予測塩化物イオンの拡散の予測は, 拡散方程式を適用して見かけの拡散係数を求める方法 促進試験により材料の拡散係数を求める方法 塩化物イオンの反応や環境との境界における移動を考慮した数値解析による方法 点検結果を用いる方法 などがある. 拡散方程式を適用する手法は, コンクリート中の塩化物イオンの移動を拡散過程と考えて, 式 [2.1.6] に示すフィックの第 2 法則として知られる拡散方程式を, 境界条件を一定として解いた解を用いる方法が式 [2.1.7] である. C t = Dc 2 C 2 x [2.1.6] ここに,C: 液相の塩化物イオン濃度 Dc: 塩化物イオンの拡散係数 x: コンクリート表面からの距離 t: 時間 x C ( x,t ) = γ ( i ) cl C 1 0 erf + C 2 D t ap [2.1.7] ここに,C(x,t): 深さ x (cm), 時刻 t ( 年 ) における塩化物イオン濃度 (kg/m 3 ) C 0 : 表面における塩化物イオン濃度 (kg/m 3 ) D ap : 塩化物イオンの見かけの拡散係数 (cm 2 / 年 ) 8

14 erf: 誤差関数 γ cl : 予測の精度に関する安全係数 C i : 初期含有塩化物イオン濃度 (kg/m 3 ) 塩化物イオンの見かけの拡散係数については, 調査結果より測定された塩化物イオン濃度の分布に最も合う見かけの拡散係数を, 回帰分析等を用いて算出するのが基本である. 調査結果から見かけの拡散係数が得られない場合, 普通ポルトランドセメントを使用した場合には式 [2.1.8] を, 高炉セメントを使用した場合には式 [2.1.9] を用いてもよい 3). 2 log10 D = 3. 9(W / C ) (W / C ) 2. 5 [2.1.8] 2 log10 D = 3. 0(W / C ) (W / C ) 2. 2 [2.1.9] ここに,D: 塩化物イオンの見かけの拡散係数 (cm 2 / 年 ) W/C: 水セメント比 (2-4) 鋼材腐食の進行予測塩害による鋼材腐食の開始は, かぶりにおける塩化物イオン濃度で判断することを基本とする. 一般的には腐食発生限界塩化物イオン濃度を 1.2kg/m 3 としている. 塩害による腐食ひび割れ発生までの鋼材腐食の進行予測には, 点検結果で得られた腐食量に基づく方法や, 鋼材の腐食反応速度に基づく方法などがある. また, 腐食ひび割れ発生の予測には, 中性化による劣化と同様, 腐食量から判定する方法や力学モデルを用いる方法などがある. (3) 中性化と塩害の複合劣化 (3-1) 概説コンクリート中の中性化が進行することにより, コンクリート中の塩化物イオンの移動 濃縮が生じ, 鉄筋の腐食が促進される現象である. この場合には, 中性化による鉄筋腐食よりも, 塩化物イオンによる鉄筋腐食が卓越して起こる. 一般に, 中性化は乾燥状態が比較的長い乾湿繰り返し条件で進行し, 塩化物の外部からの供給は塩化物イオンを含む水の存在が条件となる. したがって, 海洋環境における飛沫帯や感潮帯では, 塩化物イオンの供給量は多いが, 供用条件下でのコンクリートの含水状態によっては, 中性化がほとんど進行しない場合があり, 複合劣化があまり問題とならない. 一方, 除塩不足の海砂の使用などによって建設当初から塩化物イオンが内在する場合には, 中性化の進行による塩化物イオンの濃縮が塩害を促進する可能性がある. コンクリートの練り混ぜの時点から混入された塩化物イオンは, セメント量に対して一定量 ( 一般的にはセメント重量の約 0.4% とされている 4) ) がフリーデル氏塩として固定される. しかし, 中性化によりこのフリーデル氏塩が分解して, イオン解離した塩化物イオンは濃度拡散により内部へと移動し, そこで再びフリーデル氏塩として固定されるため, 塩化物イオンの濃縮を生じるのである. このような, 中性化による塩化物イオンの移動と濃縮の機構を図 ) に示す. 9

15 山陽新幹線高架橋等の鉄筋コンクリート構造物の, 劣化の主要因は中性化とされているが, 塩化物イオン量が大きいほど鉄筋腐食が進行する傾向にあり, また塩化物イオンは中性化の進行とともに内部に移動していくことが確認されている 6) ( 詳細は第 3 章を参照 ). また, 凍結防止剤の影響を受ける構造物の漏水部では, 高濃度の塩化物イオンが供給されるとともに, 比較的乾燥状態が長いために中性化が進行し, 中性化により塩害が促進されていると考えられる場合が多い 7). 道路構造物では, 飛来塩分以外の塩化物の供給源は, 一般に凍結防止剤であるとの報告もある 8). (3-2) 鋼材腐食の進行予測前述の通り, 中性化と塩害の複合劣化の場合, 中性化の進行によりセメント水和物に固定化されていた塩化物イオンが分解し, 未中性化領域に濃縮するため腐食の開始が早まる. 鳥取らは, 鉄筋腐食が認められる鉄道高架橋において, 建設後 14 年および 26 年の時点で行ったコンクリートの中性化深さ, 塩化物イオン量, かぶりおよび鉄筋腐食状況の調査結果をもとに, 鉄筋腐食の進行予測モデルを構築し, 構造物の耐久性を評価した. その結果, コンクリート中の塩化物イオン量と中性化の進行に伴い, 鉄筋腐食が進行することが伺えるとしている 9). 北後らは,ASR や内在 5) 塩分が中性化の進行および鉄筋腐図 中性化による塩化物イオンの移動と濃縮の機構 10

16 食に与える影響を供試体実験により検証した結果, 初期塩化物イオン量が 1.5~3.3kg/m 3 の範囲内では, 混入した塩化物イオンが中性化の進行を促進することはなかったが, 同程度の中性化深さであれば塩化物イオン量の大小が鉄筋腐食に大きく影響を与える, としている 10). 荒巻は, 中性化と塩害の複合劣化を受ける RC 構造物において, 中性化領域における全塩化物イオン量は, 実験 実構造物ともに初期あるいは深部の塩化物イオン量に関わらず,0.3kg/m 3 程度の一定値を示し, 中性化領域の固定塩化物イオン量が遊離して, コンクリート表面から内部へと移動していることを確認した 11). コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ] では, 海砂等に起因する塩化物イオンを含み, 中性化が進行した構造物の調査結果では, 中性化残りが 15mm 程度を下回ると, 鋼材腐食が顕著になる構造物の割合が増加するとされている 3). しかし, この値は塩化物イオン量やコンクリート中の水分量等により変動することが想定され, また, 塩化物イオンが存在する場合の鋼材の腐食速度は中性化のみによる腐食速度よりも大きいことから, 鋼材腐食が開始する中性化残りは構造物の点検結果も踏まえ, 適切に定めることが望ましいと考えられている. 2.2 コンクリート中の鉄筋腐食を調査する非破壊検査手法コンクリート中の鉄筋の腐食状態を把握することは極めて難しいことから, 腐食によるひび割れの発生あるいは錆汁の流出によって初めて問題とされることが多く, これがさらに進行すると有効な補修や補強が困難な状態に陥ることが多い. したがって, コンクリート中の鉄筋の腐食状態を診断するための非破壊検査法には, 腐食によるひび割れや錆汁などの劣化変状が顕在化する前に腐食状況が把握できること, また補修前や補修後など構造物の併用期間中のどの時点であっても, なるべく定量的な評価と腐食進行予測ができることなどが要求されている. 現在鉄筋腐食に関して検討されている非破壊検査法の中で最も有効な方法とされているのが自然電位法, 分極抵抗法および電気抵抗法に代表される電気化学的方法である. これらの検査手法から得られる情報をまとめると, (A) 自然電位法 : 測定時点における内部鉄筋腐食の可能性または腐食活性域の検出 (B) 分極抵抗法 : 測定時点における測定点直下にある鉄筋の腐食速度の評価 (C) 電気抵抗法 : かぶりコンクリートの電気抵抗, 腐食の進行のしやすさなどである 12) 自然電位法自然電位法とは, コンクリート表面で測定された鉄筋の自然電位を測定することによって鉄筋腐食を診断しようとする電気化学的手法である. この手法は 1950 年代にアメリカでコンクリート橋床版の腐食調査に利用され,1977 年に ASTM C 876 規格として標準化された. 日本では, 土木学会規準 コンクリート構造物における自然電位測定方法 (JSCE-E 601) として規定されている. 鉄イオンがコンクリート内に移動すると, 鉄筋内に取り残された電子は鉄筋に負の電荷を与える. その結果, 鉄筋が溶解しているアノード部では電位が低くなる. 特に腐食が激しい場合には, この傾向が顕著に表れてくる. 自然電位法はこの負の電荷を検出するものである. 自然電位による鉄筋の腐食性の判定は, 電位値および電位分布により行われている. 自然電位測定値による鉄筋腐食性評価は ASTM C 876 規格が広く用いられている. これは, コンクリート表面における鉄 11

17 筋の自然電位と鉄筋の腐 13) 表 自然電位測定値による鉄筋腐食性評価食性の関係を表 ) 自然電位 (E) のように定義している. 鉄筋腐食の可能性 ( 飽和塩化銀電極基準 ) ただし, 自然電位法の -80mV<E 非腐食領域 (90% 以上の確率で腐食なし ) 問題点の一つに, かぶり -230mV E -80mV 不確定領域コンクリートの性状によ E<-230mV 腐食領域 (90% 以上の確率で腐食あり ) って値が大きく影響を受けることが指摘されている 7). 中川は, 乾湿繰返しおよびコンクリート表面への給水に伴う, コンクリート表面での自然電位の変化には, かぶりコンクリートでの電位変化の影響に加えて, 鉄筋近傍での自然電位の変化が含まれ, かぶりが小さい場合にはかぶりコンクリートの含水状態の変化に伴い, 鉄筋近傍での自然電位が大きく変化する傾向が認められた, としている 14). 佐々木らは, かぶりコンクリートの含水率が 5.5% 以下の場合は, 含水率と中性化深さを変数とした補正が必要であるとしている 15). また, 中村らは, 季節間の気温の変化に連動する形で変動し, 特にかぶりが小さく腐食環境にある鉄筋では, 降雨の影響による鉄筋近傍の含水状態の変化に伴い短期的に変動した, としている 16) 17). 図 等電位線図の一例内部鉄筋が複数本ある場合など, 自然電位値による腐食判定が困難な場合は, 図 ) に示すような等電位線図 ( 電位分布図 ) を描き, 周辺に比べて低い電位を示す部分を腐食の可能性が高いところ ( 腐食箇所 ) として検出している 分極抵抗法自然電位法は, 本来はコンクリート中の鉄筋が腐食しているかどうかという可能性を示す指標にすぎない. これに対して, 分極抵抗法は, 電極反応速度論から, 腐食電流( 腐食速度 ) は分極抵抗と呼ばれる腐食反応の抵抗と反比例の関係にある ことを利用して, コンクリート表面に当てた電極から内部鉄筋へ微弱な電流を流したときの抵抗 ( 分極抵抗 ) を測定して鉄筋の腐食速度を推定しようとする電気化学的手法である. 試料金属の電位を自然電位から E だけ分極させて微小電流 I が生じたとすると, E が ±10 ~20mV 程度の微小な変化であれば, 式 [2.2.1] のように電圧と電流の間に直線関係が成立する. E=R p I [2.2.1] この直線の勾配 ( E/ I) は抵抗に対応するため,R p が分極抵抗と呼ばれる. 分極抵抗は腐食速度と反比例関係にあるとされている 18). 腐食速度は一般に式 [2.2.2] で示すように, 測定された分極抵抗 R p ( 単位 :Ω cm 2 ) の逆数に定数 K を乗じて求められる, 単位面積あたりの腐食電流密度 I corr ( 単位 :A/cm 2 ) で表現されることが多い. 定数 K は金属の種類や環境条件によって異なる比例定数 ( 単位 :V) で, 一般に K 値と呼ばれる. コンクリート中の鉄筋腐食に関する K 値は 0.026~ 0.052(V) などといわれている 18). 12

18 I corr =K/R p [2.2.2] 分極抵抗測定値と実際の腐食状況との相関関係については, 分極抵抗逆数の時間積分値と腐食 減量実測値の関係を求めた研究によると, 室内試験および実環境における暴露試験ともに比例関 係が認められている 19).CEB( ヨーロッパコンクリート委員会 ) による腐食速度の判定基準を表 ) に示す. 20) 表 CEB による腐食速度の判定基準 腐食速度測定分極抵抗 Rp 腐食速度の判定 I corr (μa/cm 2 ) (kω cm 2 ) 0.1~0.2 未満 不動態状態 ( 腐食なし ) 130~260 より大 0.2 以上 0.5 以下 低 ~ 中程度の腐食速度 52 以上 130 以下 0.5 以上 1 以下 中 ~ 高程度の腐食速度 26 以上 52 以下 1 より大 激しい, 高い腐食速度 26 未満 電気抵抗法分極抵抗法のうち, 交流法により分極抵抗を求める場合, 分極抵抗に相当する腐食反応抵抗 Rct と液抵抗 Rs とを分離して同時に測定できるが, 液抵抗 Rs がコンクリート表面に当てた電極と内部鉄筋との間の, みかけのコンクリート抵抗に相当すると考えられている. コンクリート抵抗は, コンクリートの組成, 含水量,Cl - 等の塩類含有量などに依存し, 腐食電池内を流れる腐食電流の大きさを支配するので, コンクリート中の鋼材の腐食状況を直接表すものではないが, 鋼材の腐食速度に影響を与える要因の一つである 17)21). みかけのコンクリート抵抗の測定値 Rs(Ω) からコンクリート比抵抗 ρ(ωcm) への換算は容易ではない. それは, 実構造物における電流分散状況がコンクリート中の鉄筋の幾何学的配置 ( 径, かぶり, 配筋状況, 断面形状 ) やコンクリートの電気抵抗などの影響を受けるため, 電流の流れがつかみづらいためである. そこで, 鉄筋径や配筋状態を考慮して実験や解析によって求めた電流分布から換算する方法 22) や 2 重対極プローブの使用によって電流の分散を抑制する方法が提案されている. 後者の場合, センター対極からの電流が直下に流れると仮定すれば, 式 [2.2.3] より, かぶりコンクリートの比抵抗が求められる 12). ρ=rs A/d [2.2.3] ここに, ρ: コンクリートの比抵抗 (Ωcm) Rs: 測定された見かけのコンクリート抵抗 (Ω) A:2 重対極のうちのセンサー対極の面積 (cm 2 ) d: コンクリート表面から鉄筋までの距離 (cm) 上記とは別に, コンクリートの比抵抗の測定法としては, 実構造物を対象とした 4 点電極法 (Wenner 法 ) 22) などがある. これは, かぶりコンクリートの電気抵抗を測定するために, 土壌抵抗の測定に用いられている方法を応用したものである. 図 に示すように, 等間隔 a に一列に並べた 4 本の電極のうち, 両端の電極 A B 間に直流あるいは周波数 10~100Hz 程度の交流を流して, その電流量 I と内側の 2 本の電極 C D 間で測定される電位差 Δφから, 式 [2.2.4] により比抵抗 ρを求めるものである. 13

19 表 コンクリートの比抵抗による鋼材腐食性評価の例 23) ( 単位 :Ωcm) Cavalier and Vassie Taylor Woodrow Res. Lab. 武若および小林 比抵抗の範囲 腐食性 比抵抗の範囲 腐食性 比抵抗の範囲 腐食性 > 微候なし > なし > 小さい 5 000~ 危険性あり ~ 小さい 5 000~ 大きい 5 000~ 不確定 <5 000 確実 <5 000 非常に大 <5 000 大きい ρ=2πaδφ/i [2.2.4] ここに, ρ: コンクリートの比抵抗 (Ωcm) a: 電極の間隔 (cm) Δφ: 電極 C D 間の電位差の実測値 (V) I: 電極 A B 間を流れる全電流 (A) また, コンクリートの比抵抗と鉄筋の腐食性との関係の一例を表 に示す 23). 2.3 鉄筋腐食により劣化したコンクリート構造物の補修工法コンクリート構造物に適用される, 耐久性の回復あるいは向上を目的とした主な補修工法は表 のように分類される 3) 表面保護工法 24) 表面保護工法は, コンクリートの劣化や鋼材の腐食の原因となる劣化因子の侵入を防止 抑制することを主目的として, コンクリート構造物の表面, 表面近傍断面あるいは修復を要する欠損断面に対して保護的措置を講ずる工法である. 表面保護工法は, コンクリート構造物の表面に被覆を施す 表面被覆工法, 表面に表面含浸材を含浸させる 表面含浸工法, 欠損 図 点電極法 (Wenner 法 ) による 18) コンクリートの比抵抗測定方法表 耐久性の回復あるいは 向上を目的とした主な補修工法 1 表面被覆工法 A. 表面保護工法 2 表面含浸工法 3 断面修復工法 4 電気防食工法 5 脱塩工法 B. 電気化学的防食工法 6 再アルカリ化工法 7 電着工法 8 表面塗布工法 9 注入工法 C. ひび割れ補修方法 10 充てん工法 11 含浸材塗布工法 あるいは劣化因子を除去した後の断面を修復する 断面修復工法 の 3 つに大別される. なお, 表面被覆工法 と 表面含浸工法 をあわせて 表面処理工法 と称することもある. (1) 表面被覆工法表面被覆工法は, 図 に示すように, 劣化因子の侵入やコンクリートのはく落を抑制する 3) 14

20 効果を有する, 厚さ 0.1~5mm 程度の被膜をコンクリー ト構造物の表面に形成させる工法であり, 中性化 塩害 凍害 化学的侵食 アルカリ骨材反応対策や美観 景観に配慮する必要がある場合に有効である. 表面被覆材の種類により, エポキシ系やポリブタジエン系等鉄筋の材料を用いる有機系被覆工法と, ポリマーセメント系などの材料を用いる無機系被覆工法に分類される. また, 繊維シートやメッシュなどを併用することによプライマーり, はく落防止効果を兼ね備えた工法となる. パテ中塗りコンクリート構造物の種類や損傷状況によって, 上塗り様々な塗装仕様が用いられており, またそれぞれの工図 表面被覆工法の概略図法 材料で期待される性能も異なることから, 各事業主体によって表面被覆工法の性能や品質規格等が規定されているのが現状である 25). また, 海沿いの道路橋での試験施工実施 10 年後の調査報告事例 26) などにより, 表面被覆工法の長期耐久性状が明らかになってきている. 本工法の採用にあたっては, 劣化機構を明らかにし, 劣化要因を除去または再浸透防止を考慮 した方法で施工することが重要である. 劣化因子を除去しないまま表面被覆を行うと, コンクリート中の鋼材が腐食しやすい環境となり, かえって腐食を促進することになりかねないからである. 劣化因子を除去するためには, 後述する断面修復工法を行ってから表面被覆を施工すると良い. また, 施工範囲は, 基本的には部材全面を被覆することとしているが, 劣化機構や劣化程度, 部材の種類やその形状 寸法などを考慮して, 適切に定める必要がある. (2) 表面含浸工法表面含浸工法は, 所定の効果を発揮する表面含浸材をコンクリート表面から含浸させることによって, コンクリート表層部の改質, コンクリート表層部への特殊な機能の付与などを実現させ, コンクリート構造物の耐久性を向上させる工法であり, 中性化 塩害 凍害 アルカリ骨材反応などによるコンクリート構造物の劣化を抑制 防止する対策として有効である.1 回当たりの塗布量は 0.1~0.4kg/m 2, 塗布回数は 1~3 回程度, 総塗布量は 0.1~0.4kg/m 2 の範囲で使用されることが多い 24). 表面含浸工法は, コンクリート表面の外観を著しく損ねることがなく, 表面被覆工法と比較すると, 少ない工程で, かつ短期間で施工できるという特徴を有している. (3) 断面修復工法断面修復工法は, 中性化 塩害 凍害 化学的侵食 アルカリ骨材反応等による劣化または損傷によって喪失したコンクリート構造物の断面や, 上記の劣化因子を許容限度以上含むコンクリート部材を除去した後の構造物の断面を, 当初の断面寸法に復旧し, コンクリート構造物の要求性能に基づく修復水準に応じて, コンクリート構造物の耐久性能を回復または向上させる工法である. 断面修復工法には, 左官工法, 吹付け工法および充填工法があり, 採用する工法は, 一般には対象となる断面の部位 範囲および規模等を考慮して決定される ( 概念図を図 ) に示す ). 断面修復材に要求される性能は, 修復部位 環境条件 施工条件により様々であるが, 一般的には, 15 鉄筋

21 1 圧縮 曲げおよび引張強度等が既存コンクリートと同等以上であること 2 熱膨張係数 弾性係数およびポアソン比が既存コンクリートとほぼ同等であること 3 乾燥収縮が小さく, 接着性が高いこと図 断面修復工法の適用範囲 ( 概念図 ) 24) 4 水 二酸化炭素 酸素 塩化物イオン等の劣化因子に対する透過性が出 (a) 補修前来るだけ小さいこと 5 現場施工であるため作業性が良いこと等があげられる. 一般的に使用されている断面修復材は, セメントモルタル, ポリマーセメントモルタルおよびポリマーモルタルの 3 種類に分類される. 中でも, ポリマーセメントモルタルは, 亜硝酸リチウム, 亜硝酸カルシウムやア (b) 補修後ミノアルコール系の防せい剤を添加したものや, 塩化物イオンやアルカリ金属イオン (Na +, K + ) 等の有害物質を吸着する特殊混和材を添加したもの等, 劣化要因に応じて種々の材料がある. 図 補修前と補修後の腐食メカニズム本来は, 断面修復をきっちり行った構造物は, 28) 健全な構造物と同等とみなすことができる. 荒巻らは, 中性化や塩害により鉄筋が腐食し, コンクリートに剥離や浮きが生じたコンクリート構造物に断面修復を施工し, 施工後 6 年における自然電位の測定を行ったところ, 良好な防食性能を示している, としている 27). しかし, 断面修復工法の問題点として, 劣化部分のはつり取りが不十分であったり, あるいは補修部周辺に劣化因子が残存している場合に, マクロセル腐食による再劣化が生じる可能性があることがよく知られている で述べたアノード反応 ( 式 [2.1.1]) およびカソード反応 ( 式 [2.1.2]) は, 鉄筋の同位置で起きているが, 塩化物イオンが腐食に関係する場合にはこれらの反応がさらに離れた位置でも起きていると考えられる. 前者の場合はミクロセル腐食反応, 後者の場合はマクロセル腐食反応といわれている. 塩化物イオンや二酸化炭素がコンクリート中の鉄筋位置に到達し, 鉄筋の不動態被膜が破壊されると, 図 2.3.3(a) に示すように, 不動態被膜が破壊された箇所 ( 中央部 ) がアノード, その周囲 ( 両端部 ) がカソードとなる, マクロセル腐食が生じる. アノード領域では, 酸素と水分の供給により腐食が進行するが, カソード領域ではアノード領域での腐食の進行により, たとえ発錆限界塩化物イオン量や二酸化炭素が鉄筋に到達していたとしても, 腐食は発生しない. ところが, 鉄筋が腐食した箇所のみをはつり落とし, モルタルで補修した場合, 図 2.3.3(b) に示すように, 補修した箇所がアノードからカソードに, 隣接した未補修部がアノードとなり, 元々カソードであった部分で発錆限界塩化物イオン量や二酸化炭素が鉄筋に到達している場合には, 腐 16

22 食し始めるのである 28). ミクロセル腐食が比較的穏やかで均一な腐食形態をとるのに対し, マクロセル腐食は急速で局所的な腐食形態となる場合が多い. この一例として, 松浦らは, 図 に示すように, 部分補修を 反かぶり側かぶり側補修部 図 部分補修での鉄筋腐食 状況 29) 行った試験体を 3 年間海洋環境下に暴露した結果, 未補修部ではかぶり側の腐食が卓越したが, 補修部ではマクロセル腐食により反かぶり側で腐食が卓越した, としている 29). 一方, マクロセル腐食の影響については, 必ずしも大きくないという研究もある. 北野らは, 複数の補修材料を用いて断面修復を模擬した供試体の促進試験および暴露試験を行っている. その結果, 残留塩分が多いほど母材部がアノードとなるマクロセル電流が大きくなる傾向にあることがわかったが, マクロセルの形成に起因すると考えられる鉄筋腐食減量の占める割合は必ずしも大きくなく, マクロセル腐食が母材側の鉄筋腐食の主要因ではないとしている 30). 川東らは, 鋼板を埋設した供試体による実験と解析の結果, マクロセル腐食よりもミクロセル腐食による腐食量の割合の方が大きくなった, としている 31). 断面修復工法を施工する面的および深さの範囲を決定する際には, 劣化因子の侵入状況や劣化の状態を事前に十分調査し, 対象となる部材の種類やその形状, 寸法, 施工条件等を考慮して, 施工の範囲を適切に決定することが重要である. はつりが不十分であると, マクロセル腐食の発生など, 断面修復によって新たな劣化が生じることもありうるので, 使用材料の性能を含めてはつりの範囲を慎重に決定することが大切である. また, 劣化の進行程度, 構造的な要因, 施工空間の制約等で, はつりが十分に行えない場合, あるいは塩化物イオンなどの劣化因子を十分に除去できない場合には, 断面修復工法と, 表面被覆工法あるいは次に述べる電気化学的防食工法を併用することも選択肢として考える必要がある 電気化学的防食工法 32) 電気化学的防食工法は 構造物表面あるいは外部に設置した陽極からコンクリート中の鋼材へ直接電流を流し 電気化学的反応を利用して 鋼材腐食による劣化を抑制することで コンクリート構造物の耐久性を向上させることを目的としている 鋼材の腐食は電気化学的反応で進行するため 電気化学的防食工法をコンクリート構造物に適用することは非常に効果的である 電気化学的防食工法は 表 に示すように 通電期間や通電量 効果の確認方法等にそれぞれ特徴を有している 電気防食工法による補修 2.3.2で述べた電気化学的防食工法のうち, 最も多く使われている電気防食工法について, 特徴や施工事例等を紹介する. (1) 特徴電気防食工法は, 電気化学的防食工法の中で最も多く用いられる工法であり, 鋼材腐食が電気化学的反応によって進行することに着目し, 鋼材に直接電流を継続的に流して鋼材電位を制御し, 17

23 表 電気化学的防食工法の主な特徴 32) 電気防食工法脱塩工法再アルカリ化工法電着工法 通電期間防食期間中継続約 8 週間約 1~2 週間約 6 ヶ月 電流密度 0.001~0.03A/m 2 1A/m 2 1A/m 2 0.5~1A/m 2 通電電圧 1~5V 5~50V 5~50V 10~30V 電解液 - Ca(O H) 2 水溶液等 Na 2 C O 3 水溶液等海水 効果確認の方法 電位または 電位変化量の測定 コンクリートの塩化 コンクリートの コンクリートの 物イオン量の測定 中性化深さの測定 透水係数の測定 効果確認の頻度数回 / 年通電終了後通電終了後通電終了後 鋼材腐食反応を電気化学的に抑制することで, コンクリート構造物の耐久性を向上させる工法である. 主として, 塩害環境下での既設コンクリート構造物に適用するが, 予防保全を前提とした新設コンクリート構造物への適用も実施されており, 既設コンクリート構造物と新設構造物の双方に適用可能である. 電気防食工法では, コンクリート表面もしくは表面近傍のコンクリート中に陽極材を設置し, この陽極材からコンクリート中の鋼材 ( 陰極 ) に向かって継続的に電流を流し, 適切な防食電流が流れている限り, 鋼材腐食を抑制することができる. 鋼材の防食に必要な電流量 ( 防食電流 ) は,0.001~0.03A/m 2 程度が一般的で, 継続して通電することが基本であるが, 防食効果確認のための試験や停電等による短期間の通電の停止は可能である. 防食効果の確認は, 防食電流を流す前後の鋼材の電位変化量を基準とし, 鋼材の電位をマイナス方向に100mV 以上変化させる, すなわち防食電流の通電を停止した直後の電位 ( インスタント OFF 電位 ) と, 通電を停止してから一定時間 (24 時間とするのが一般的である ) 経過後の電位 (OFF 電位 ) の差が100mV 以上となる ( 100mVシフト と呼ぶこともある ) ことを基本としている 32). (2) 供給電源方式による違い電気防食工法は, 防食電流の供給方法により, 外部の電源から強制的に防食電流を流す 外部電源方式 ( 図 2.3.5) と, 内部鋼材と陽極材 ( 例えば亜鉛等 ) の電池作用により防食電流を流す 流電陽極方式 ( 図 2.3.6) に大別できる. 外部電源方式では, 直流電源装置の (+) 極にコンクリート表面またはその近傍に設置した陽極システムを,(-) 極に防食対象鋼材を接続し, 直流電源装置により両者間に防食電流を流し, 電気防食を行う. 流電陽極方式は, コンクリート内部の鋼材よりも電気的に卑な金属の陽極システムをコンクリート表面あるいはその近傍に設置し, 両者間の電位差を用いて防食電流を流すもので, 電源設備が不要であることが特徴である. また, 使用 図 外部電源方式 図 流電陽極方式 18

24 表 各種電気防食工法の特徴 32) 陽極材の形状陽極材の設置方法陽極材の種類電源方式 面状陽極方式 線状陽極方式 点状陽極方式 チタンメッシュ 導電性塗料防食対象面全体に面状陽導電性モルタル 外部電源 極を設置 チタン溶射 など 亜鉛板亜鉛溶射など 流電陽極 防食対象面に一定間隔でチタングリッド線状陽極を設置するチタンリボンメッシュなど 外部電源 防食対象面に棒状陽極を点状に挿入し, 設置するチタンロッドなど 外部電源 する陽極システムの形状により, 表 に示す 3 種類に区分することが出来る. (3) 外部電源方式による施工事例国内での電気防食工法の主流となる外部電源方式による施工事例や施工後の追跡調査の事例は, ( 社 ) 土木学会 コンクリート中の鋼材の腐食性評価と防食技術研究小委員会 (338 委員会 ) 委員会報告書 33) に数多く記載されている. 追跡調査は施工後 1~15 年と幅広いが, いずれの施工でも無防食や表面被覆工法などの塩害対策工法と比較して, 電気防食工法を適用することで防食効果があると認めている. その一方で, 一部施工では陽極システムやモニタリング機器である照合電極の劣化事例を紹介しているものもある. (4) 流電陽極方式による研究事例流電陽極方式では, 陽極材として亜鉛を用いることが多く, 歴史的にも腐食電池の陽極として最も早くから用いられてきた金属のひとつとされている 34). これは, 鋼材 ( 鉄 ) よりもイオン化傾向が大きいことにより, 亜鉛と鉄が結びつくと電子が亜鉛から鉄へ流れることで亜鉛が腐食し, 結果として鉄を保護することになるからである. 現在, 世界の年間亜鉛消費量のほぼ半分は鋼材の腐食防止に使われている 34). 亜鉛を用いた流電陽極方式の電気防食工法として, (i) 亜鉛を犠牲陽極材として用いる方式 (ii) コンクリート表面に亜鉛板を当てる, あるいは亜鉛を溶射する方式等があるが, ここでは図 に示すように, 亜鉛を水酸化リチウム混入モルタルで覆い, コンクリート中の鉄筋と電気的に接続することで, 鉄筋の腐食抑制効果があるとされている 35), 亜鉛を犠牲陽極材として用いる方式について, その研究 施工事例を紹介する. 図 犠牲陽極材 19

25 イ )Page らの研究 Page ら 35) は, 図 に示す 1, mm の供試体中にセメント重量比で 0.8% と 4% の 2 種類の塩化物イオンを混入した供試体を作製し, 供試体中の 4 本の鉄筋を外部で接続させ, 湿度 80% 環境下で, コンクリートにひび割れが発生した材齢 350 日まで 35) 図 供試体平面図暴露を行った. その後, 塩化物イオンを 4% 混入したコンクリート部を除去し, 鉄筋をケレン後, 塩化物イオン無混入コンクリートのみで補修したもの ( スラブ A) と, 図 に示す亜鉛を混入した犠牲陽極材を設置して補修したもの ( スラブ B) の 2 種類の補修を行い, 引き続き湿度 80% 環境下に暴露した. その結果, スラブ A では補修後 2 ヶ月で, 図 に示すように補修していない箇所の電位が補修部より卑となった. 一方, スラブ B では補修後 1 ヶ月で, 図 に示すように犠牲陽極材を設置した付近の電位が最も卑となり, 高い防食性を示している. 補修後 18 ヶ月においても, 図 に示すように電位は全体的に貴変し, かつ犠牲陽極材を設置した付近の電位が最も卑な状態を保っている. また, スラブ B の補修後 18 ヶ月の時点で 4 本の接続を開放してから 24 時間後の電位の変化を図 に示すが, 接続解放前の電位が卑な位置ほど電位の変化 ( 復極量 ) が大きく,24 時間後では部位による電位差が小さくなっており, 犠牲陽極材による防食効果が示されている. ロ )Rincon らの研究 Rincon ら 36) は, 犠牲陽極材を用い, 湿度や養生条件などを変化させた 2 種類の実験を行った. 図 自然電位分布 ( 銅硫酸銅電極を使用 )( スラブ A, 補修後 2 ヶ月 ) 35) 図 自然電位分布 ( 銅硫酸銅電極を使用 )( スラブ B, 補修後 1 ヶ月 ) 35) 図 自然電位分布 ( 銅硫酸銅電極を使用 ) ( スラブ B, 補修後 18 ヶ月 ) 35) 図 スラブ B, 補修後 18 ヶ月,24 時間後の自然電位分布 ( カッコ内は復極量 ) 35) 20

26 36) ロ-1)Zulia 大学 ( ベネズエラ ) での研究 Zulia 大学での実験では, 図 に示す, D10 鉄筋をかぶり 25mm で 4 本配置し, 上部 に mm の欠損部を設けた, mm の供試体を 6 体作製した.28 日間養生後, 写真 に示すように欠損部 図 Zulia 大学での実験供試体概略図 36) に犠牲陽極材を配置してからコンクリートと同じ砂セメント比のモルタルを打設した. その後, 屋外日陰に暴露 ( 平均気温 28 湿度 77%) した. うち 2 本は濃度 3.5% の塩水を週に 1 度散水した. その結果, 下面側の鉄筋の自然電位が上面側より卑となっているが, 最も卑となったのは雨量が多い時期で-550mV( 銅硫酸銅電極基準, 以下同じ ) 程度で, 雨量が少ないときは貴側にシフトした. つ写真 Zulia 大学実験供試体 36) 犠牲陽極材配置まり, 一般に防食領域とされる-750mV に到達していないことがわかった. また, 塩水の散水が自然電位に与える影響はそれほど大きくなかった. これは, 暴露環境があまり厳しくないことと, 補修を想定したモルタルの電気抵抗が高いことなどが考えられる. もう一つの理由として, 暴露 1 年半経過後, 全ての供試体で写真 に示すように鉄筋腐食に起因するひび割れが発生し, 防食効果が低下していることもあげられる. 36) 写真 Zulia 大学実験供試体ロ-2) メキシコ運輸研究所の研究 36) ひび割れ状況メキシコの運輸研究所での実験では, 図 に示すように, 長さ 100mm の D10 鉄筋を 5 本, それぞれの鉄筋が絶縁されるようにアクリル棒を用いて接続した上で配置した, mm の供試体を, コンクリートの配合を W/C=50% とし,Cl - =3% 混入と無混入の 2 種類を 3 体ずつ, 計 6 体作製した. 供試体右端に mm の欠損部を設け, コンクリート打設翌日に最も右の鉄筋に犠牲陽極材を配置し, コンクリートと同じ W/C=50% のモルタルを欠損部に打設した. その後, 湿度 90±5% の一定環境で暴露を行った. その結果,Cl - 混入の有無に関わらず, 高湿度環境下では良好な防食効果を得られることがわかった. このことから, 海沿いの飛沫帯に位置する構造物の置かれているような高湿度環境下では犠牲陽極材の効果が発揮されるが, 湿度があ導通アクリル棒 W/C=0.5 まり高くない環境下ではコンクリート抵抗独立極が低下するため, 十分な効果が発揮されな 照合極 Ti/TiO 2 いことが考えられる. 一方, 材齢約 400 日 150mm で全ての供試体モルタル部の表面にエフロ対極 100mm レッセンスが発生した. これは, 高湿度の 600mm 36) 図 メキシコ運輸研究所供試体概略図 21

27 影響で亜鉛の腐食生成物の膨張によりひび割れが発生し, 腐食生成物が表面に析出したものと考えられ, これに伴い電気防食の機能が低下していることが考えられるため, 注意すべきであるとしている. ハ )Wang らの研究 Wang ら 37) は, mm,W/C=65% のコンクリート供試体の中央部 250mm のかぶり面だけを, コンクリート補修部コンクリート 43 の NaCl 3% 水溶液に 84 日間浸漬し, 中央部の鉄補修方法筋腐食を確認した後, 図 に示すように, 中央 W/C=35% のモルタル+100mm の亜鉛板 (2 箇所 ) 部の両端に亜鉛板を当て,W/C=35% のモルタルで補 : 腐食大 : 亜鉛板修を行い,1 年間上記と同じ NaCl 水溶液にかぶり面 37) 図 補修 1 年後の鉄筋腐食状況全体を浸せきさせた.1 年後のはつり観察では, 亜鉛板が当たっている範囲の鉄筋のみ腐食の進行が抑えられたが, 未補修部のコンクリート中の鉄筋は亜鉛板があるにも関わらず腐食が進行し, アノード部とカソード部の交代による鉄筋腐食の抑制が見られなかった. この原因として, 以下を挙げている. 1 打継部の存在どんなに注意深く補修を行っても, 母材コンクリートと補修材との打継部には空隙が存在し, 水や塩化物イオンなどの通り道となる. 補修材中に亜鉛が存在している場合, 亜鉛が腐食し, 亜鉛イオンと亜鉛化合物の生成 ( 亜鉛腐食生成物 ) により鉄筋が防食される. しかし, 打継部が存在することで, 亜鉛腐食生成物の通り道が遮断され, 打継部に隣接する鉄筋が防食されない. 2 鉄筋と接する亜鉛の範囲亜鉛は鉄筋と接する場合にのみ犠牲陽極として作用する. 亜鉛が腐食した場合には, 亜鉛腐食生成物は拡散する傾向にあり, 鉄筋と接する亜鉛の領域も減る. もし, 亜鉛腐食生成物が拡散して鉄筋表面に付着する場合は, 鉄筋を保護し, これ以上の腐食から守る働きをする. しかし, 亜鉛腐食生成物は母材コンクリートと補修モルタルの境界に存在する空隙中に拡散するため, 打継部を超えて拡散し, かつ未補修部の鉄筋腐食を抑制することは難しい. ニ ) 平石らの研究平石ら 38) は, ,000mm のコンクリート供試体の一部分に補修材として高靭性セメントモルタル 39) を使用し, さらに犠牲陽極材を補修材中に混入した供試体や変性ポリウレタン系樹脂を使用した防錆剤を鉄筋に塗布した供試体もあわせて作成した. 作成後,40,R.H.90% 環境下で暴露し, 供試体の自然電位を測定した. その結果, 試験開始後 6 ヶ月では, 補修材のみおよび防錆剤を塗布した供試体では補修部分の自然電位が母材部分の自然電位よりも貴な値を示した. 一方で, 犠牲陽極材を設置したケースでは, 補修部分の自然電位が極端に卑な値を示した. これより, 補修材のみおよび防錆剤を塗布した供試体では, 補修部をカソード, 母材コンクリート部をアノードとするマクロセル腐食が生じている可能性があると考えられる. 一方, 犠牲陽極材を設置したケースは, 同時に実施した別の供試体を用いた電流量測定結果と併せ, 犠牲陽極材がアノード, 鉄筋がカソードとなるマクロセル腐食とは逆の防食回路が形成されている可能性があると考えられる. ホ ) 松久保らの研究松久保ら 40) は, 塩化物イオンを 0~9kg/m 3 含んだコンクリート供試体の一部を, 犠牲陽極材を 22

28 用いて断面修復を行い, 海洋環境下を想定した飛沫帯に 2 年 8 ヶ月間暴露し, 電位や防食電流を測定した. その結果, 犠牲陽極材から常に防食電流が供給され, 復極量も一部を除き防食基準とされる 100mV 以上が得られたこと, また供試体を解体して鉄筋の腐食状態を観察したところ, 犠牲陽極材を設置していない供試体に比べ, 犠牲陽極材を設置した供試体はほとんど錆が見られなかった. これらの結果より, この研究では犠牲陽極材による鉄筋腐食抑制効果が確認できたとしている. 2.4 本章のまとめ本章では, 既往の研究として, 1コンクリート中の鉄筋腐食のメカニズムとその代表的な劣化機構 2コンクリート中の鉄筋腐食を調べる非破壊検査手法 ( 自然電位 分極抵抗 電気抵抗 ) 3 鉄筋腐食により劣化したコンクリート構造物の補修工法について述べた. 中でも,3 鉄筋腐食により劣化したコンクリート構造物の補修工法では, 表面被覆工法, 断面修復工法や電気防食工法を適用することで, 耐久性の向上につながることがわかってきた. しかし, 下記に示すような, 工法を適用する条件や, 材料の選定, 補修後の効果の検証など, まだまだ未解明な部分も多い. (1) 表面被覆工法の性能や品質規格等が一律でないため, 対象構造物にあった工法を適用する必要があるが, 現状では十分な適用基準が定まっていない. (2) 断面修復工法を適用した場合に, 補修部と未補修部との境界付近でマクロセル腐食が発生するとされているが, マクロセル腐食による影響よりもむしろミクロセル腐食の影響が大きいという研究もあり, マクロセル腐食とミクロセル腐食の影響度合について解明する必要がある. (3) 断面修復工法を行う際に, マクロセル腐食抑制のため, 鉄筋の裏側まで劣化した部材をはつり取ることが基本である. しかし, はつり作業にかかる労力や作業員の負担が大きく, かかるコストも小さくないため, 改良の余地が十分ある. (4) 電気防食工法を適用した場合の長期耐久性については, まだまだ不明な点が多い. そこで, 表面被覆工法, 断面修復工法および電気防食工法を適用する際の材料や工法の選定手法と, 補修後の評価手法を中心に, 第 4 章以降で述べることとする. 次の第 3 章では, 鉄筋コンクリート鉄道構造物の, 検査から措置までの一連の維持管理の流れについて, 特に長期間供用した構造物の維持管理手法や, 補修工法 補修材料を選定する基準について述べる. *************** 第 2 章参考文献 1) 大即信明, 樫野紀元, 片脇清士, 小林明夫, 宮川豊章 : コンクリート構造物の耐久性シリーズ塩害 (Ⅰ), 技報堂出版,1986 2)( 社 ) 日本コンクリート工学協会 : コンクリート診断技術 05[ 基礎編 ],

29 3)( 社 ) 土木学会 :2007 年制定コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ], )Richartz, W.:Die binding von Chlorid bei der Zementerhartung,Zement-Kalt-Gips,Heft 10,pp , ) 小林一輔 : コンクリート構造物の早期劣化と耐久性診断, 森北出版,pp , ) 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 : 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書, )( 社 ) 日本コンクリート工学協会 : 複合劣化コンクリート構造物の評価と維持管理計画委員会報告書, )G.P.Mallet 著, 望月秀次 上田隆雄 宮川豊章共訳 : コンクリート橋のリハビリテーション, 技報堂出版,1997 9) 鳥取誠一, 神野嘉希, 北後征雄, 宮川豊章 : 鉄筋腐食から見た既設鉄道高架橋の耐久性評価, コンクリート構造物のリハビリテーションに関するシンポジウム論文集,pp.49-54, ) 北後征雄, 菊池保孝, 小林茂広, 宮川豊章 : 複合した原因による鉄筋腐食に関する実験的研究, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.13, No.1, pp , ) 荒巻智 : 中性化と内的塩害を受けた鉄筋コンクリート鉄道構造物の鉄筋腐食に関する研究, 京都大学博士論文, ) 横田優 : 電気化学的方法, 講習会 コンクリート構造物の診断技術,( 社 ) 日本材料学会, pp.26-36, )ASTM C :Standard Test Method for Half-cell Potentials of Uncoated Reinforcing in Concrete, ) 中川元宏 : 中性化による鉄筋腐食状態の自然電位法による推定に関する研究, 京都大学博士論文, ) 佐々木孝彦, 飯島亨, 立松英信 : 自然電位による鉄筋腐食判定に関する一考察, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.18,No.1,pp , ) 中村英佑, 渡辺博志, 古賀裕久, 中村雅之, 井川一弘 : 塩害環境化にあるコンクリート構造物への自然電位法の適用に関する研究, 土木学会論文集 E,Vol.64,No.1,pp , )( 社 ) 土木学会 : 鉄筋腐食 防食および補修に関する研究の現状と今後の動向 -コンクリート委員会腐食防食小委員会報告 -, コンクリート技術シリーズ 26, )H.H. Uhlig and R.W. Revie 共著, 岡本剛監修, 松田精吾, 松島巌共訳 : 腐食反応とその制御 ( 第 3 版 ), 産業図書,pp , ) 松村卓郎ほか : 交流インピーダンス法による海洋暴露供試体の鉄筋腐食検査, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.19,No.1,pp , )CEB Working Party V/4.1:Strategies for Testing and Assessment of Concrete Structures Affected by Reinforcement Corrosion (draft 4), BBRI-CSTC-WTCB, )Taylor Woodrow Research Laboratories:Marine Durability Survey of the Tongue Sands Tower, Concrete in the Ocean Technical Report No.5, C1R1A/UEG. CCA. Dept. of Energy, ) 文献 11) に同じ,p.215,p

30 23) 武若耕司 : コンクリートの非破壊検査方法 ( 原理と手法 )- 鋼材腐食 -, コンクリート工学, Vol.27,No.3,pp.69-74, )( 社 ) 土木学会 : 表面保護工法設計施工指針 ( 案 ), コンクリートライブラリー 119, ) 石橋忠良, 津吉毅, 松田芳範 : 鉄道コンクリート構造物の表面被覆材の選定事例について, コンクリート工学,Vol.41,No.9,pp.36-41, ) 安藤幹也, 藤原俊明, 山本雅貴, 山田卓司 : コンクリート構造物の塗装系防食材の追跡調査報告, コンクリート構造物の補修, 補強, アップグレード論文報告集, 第 5 巻,pp , ) 荒巻智, 大江崇元, 京泉憲明, 津田博利, 秋枝幸治 : 各種防錆剤を用いて断面修復した箇所の鉄筋腐食に関する追跡調査, 土木学会第 61 回年次学術講演会概要集,V-276, pp , )M. Raupach:Patch repairs on reinforced concrete structures-model investigations on the required size and practical consequences, Cement and Concrete Composites 28, pp , ) 松浦誠司, 森本丈太郎, 元売正美, 魚本健人 : 各種補修条件が補修後の再劣化に及ぼす影響に関する研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.27,No.1,pp , ) 北野勇一, 渡辺博志, 久田真, 北山良 : 補修 RC 梁中の残留塩分に起因するマクロセル腐食に関する暴露試験, コンクリート工学年次論文集,Vol.28, No.1, pp , ) 川東龍夫, 小林孝一, 宮川豊章 : コンクリートに埋設された鋼材のマクロセルおよびミクロセル腐食に関する研究, 土木学会論文集,No.732/V-59,pp.1-15, )( 社 ) 土木学会 : 電気化学的防食工法設計施工指針 ( 案 ), コンクリートライブラリー 107, )( 社 ) 土木学会 : コンクリート中の鋼材の腐食性評価と防食技術研究小委員会 (338 委員会 ) 委員会報告書, ) 日本鉛亜鉛需要研究会編 : 亜鉛とその耐食性 - 改訂版 -, )C.L. Page and G. Sergi:Developments in Cathodic Protection Applied to Reinforced Concrete,ASCE Journal of Materials in Civil Engineering,Vol. 12,No. 1,pp.8-15, )Oladis Troconis de Rincon, Yolanda Hernandez-Lopez, Angelica de Valle-Moreno, Andres A. Torres-Acosta, Freddy Barrios, Pablo Montero, Patricia Oidor-Salinas, and Jose Rodriguez Montero: Environmental influence on point anodes performance in reinforced concrete, Construction and Building Materials, Vol.22, No.4, pp )K. Wang, P.R.L. Helene, and P.J.M. Monteiro:Potential use of zinc in the repair of corroded reinforced concrete, Cement and Concrete Composites 28,pp , ) 平石剛紀, 新井淳一, 坂田昇, 須田久美子 : 犠牲陽極材のマクロセル腐食抑制効果に関する実験的研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp , ) 閑田徹志, 斉藤忠, 坂田昇, 平石剛紀 :PVA 繊維を用いた高靭性 FRC による吹付け補修材料の基礎的特性, コンクリート工学年次論文集,Vol.23,No.1,pp , ) 松久保博敬, 真下昌章, 芦田公伸, 審良善和, 濱田秀則 : 海洋環境下における犠牲陽極材料の腐食抑制効果, コンクリート構造物の長期性能照査支援モデルに関するシンポジウム論文集,pp ,

31 第 3 章鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理 鉄筋コンクリート ( 以下 RC とする) 構造物の維持管理に関する研究はこれまで多くの研究がなされている. 本章では, 対象を本論文のテーマである鉄道構造物に限定し, まず鉄道構造物の検査 措置 記録という一連の維持管理体系について概説する. 次いで, 建設後約 80 年経過した鉄道 RC 構造物の詳細な健全度調査を実施したので, その結果について述べる. さらに, 山陽新幹線にコンクリート構造物の概要 維持管理に関する取組みについて紹介する. 3.1 鉄道構造物の維持管理体系鉄道構造物の標準的な維持管理の手順は第 1 章図 に示すとおりである 1). 大別すると, 以下の 3 項目があげられる. 1 検査 : 構造物の供用中は定期的に検査を行うほか, 必要に応じて詳細な検査を行う 2 措置 : 検査の結果, 健全度を考慮して, 必要な措置を講じるものとする 3 記録 : 検査および措置の結果等, 構造物の維持管理において必要となる事項について, 適切な方法で記録する初回検査 鉄道構造物の検査通常全般検査体系全般検査現在, 鉄道構造物の検査体系は, 図 に示すよ検査特別全般検査うに, 初回検査 全般検個別検査査 随時検査 個別検査 の 4 つに分類されており, 随時検査そのうち 全般検査 は 通常全般検査 と 特別全般 1) 図 構造物の検査の区分検査 に区分されている 1). それぞれの検査の詳細は以下の通りである. また, 検査実施後は, 表 に基づき健全度判定を行う. 1 初回検査 : 構造物の初期状態の把握等を目的に, 新設工事, 改築 取替を行った構造物の供用開始前に行う検査である. 2 全般検査 : 構造物全般の健全度を把握するとともに, 個別検査の要否, 措置の要否について判定することを目的とする定期的な検査である. 通常全般検査: 構造物の変状等を抽出することを目的とし, 定期的に ( 土木構造物においては, 法律の定めにより 2 年に 1 度 2) ) 実施する全般検査である. 特別全般検査: 健全度判定の精度を高めるために, 構造種別や線区の実態に合わせて必要に応じて実施する検査である. 3 個別検査 : 全般検査および随時検査で健全度 A と判定された構造物に対して実施する検査である. 詳細な調査に基づき, 変状原因の推定, 変状の予測, 性能項目の詳細な照査を行って精度の高い健全度の判定を実施することである. 個別検査により, 措置の要否, 措置する場合の時期, 26

32 表 構造物の状態と標準的な健全度の判定区分 1) 健全度構造物の状態変状の程度措置等 A B AA A1 A2 運転保安, 旅客および公衆などの安全ならびに列車の性状運行の確保を脅かす, またはその恐れがある変状等があるもの運転保安, 旅客および公衆などの安全ならびに列車の性状運行の確保を脅かす変状があり, 緊急に措置を必要とするもの進行している変状等があり, 構造物の性能が低下しつつあるもの, または大雨, 出水, 地震等により, 構造物の性能を失う恐れのあるもの変状等があり, 将来それが構造物の性能を低下させる恐れのあるもの将来, 健全度 A になる恐れのある変状等があるもの 重大 C 軽微な変状等があるもの軽微 進行中の変状等があり, 性能低下も進行している性能低下の恐れがある変状等がある進行すれば健全度 A になる S 健全なものなしなし 緊急に措置 早急に措置 必要な時期に措置 必要に応じて監視等の措置次回検査時に必要に応じて重点的に調査 方法等について詳細な検討が可能となる. 4 随時検査 : 地震や大雨などの災害による変状が発生した場合, および変状を生じた構造物と類似の構造を有し, 同様の変状が発生する可能性がある場合等, 必要と判断された場合に行う検査である. また, コンクリートの剥落等が第三者の安全に重大な影響を与えると考えられる場合においても適宜実施するものとする 鉄道構造物における検査実施後の措置 で実施した検査の結果, 健全度が A(AA,A1,A2) と判定された構造物に対しては, 必要な措置を適切な時期に講じる必要がある. 措置の種類は, 以下のうち一つあるいは複数を組み合わせて選択する. 1 監視 : 構造物の変状の進行を把握する 2 補修 補強 : 構造物の性能の維持, 回復あるいは向上を目的とし, 検査結果および構造物の重要度, 施工性, 施工時期等を考慮して実施する 3 使用制限 : 列車の安全な運行, 旅客, 講習の安全を確保するために実施するもので, 列車の運転規制および構造物直下やその周辺の通行規制がある. 4 改築 取替 : 構造物の変状が大規模で補修 補強が技術的に困難である場合や, 補修 補強に多額の費用を要し, 改築 取替による措置のほうがより有効である場合などに行われる発生した変状に対して必要な措置を講じるために, 変状原因の推定が重要である. そのためには,3.1.1 で述べた個別検査等で十分な調査を行うことが大切である. 補修 補強等の措置を講じた後は, 健全度の見直しを行うとともに, 回復した性能に応じて措置の内容を見直すことができる. また, 監視により変状の進行が見られるあるいは見られない場合, または新たな変状発生の兆候が認められるあるいは認められない場合は, 健全度の見直しを行うとともに, 措置の内容を見直すことができる. 27

33 3.2 長期間供用した鉄筋コンクリート鉄道構造物の健全度評価および維持管理のあり方 3.1 では, 鉄道構造物の維持管理における一般的な流れを述べた. コンクリート構造物は, 適切に設計 施工された場合は, きわめて耐久性に富む構造物である.1904 年に建設された我が国最初の鉄道構造物である, 山陰本線米子 - 安来間の島田川暗渠 ( 写真 3.2.1) は,100 年以上経った現在も健全な形で供用を続けている 3). また,1932 年に完成した, 山陰本線須佐 - 宇田郷間の惣郷川橋梁 ( 写真 3.2.2) は, 土木学会選奨土木遺産にも指定されており 4),80 年近く経っ写真 島田川暗渠た現在も列車の安全輸送を支えている. これら以外にも, 第 2 次世界大戦前から供用中の鉄道 RC 構造物は数多く存在している. しかし, これらの構造物の大半は建設当時の記録がほとんど残っておらず, 長期間供用されている構造物を適切に維持管理していくためには, 供用中のある時点で詳細な調査を行うことが非常に有効であり, その結果を基に今後の維持管理のシナリオを描くことが重要である. 写真 惣郷川橋梁本節では, 連続立体交差化事業に伴い撤去されることになった, 約 80 年間供用した鉄道 RC 高架橋の一部 ( 以下, 試験体 とする) を用いて, 圧縮強度 かぶり 中性化深さなどの各種調査を実施し, 同高架橋の健全度を調査した. 一方で, 引き続き供用される残りの高架橋は高架下を店舗などで利用している箇所が多く, 検査が困難な状況にあることから, その一部箇所で同様の調査を実施し, これらの結果を基に, 長期間供用している鉄道 RC 高架橋の維持管理のあり方について検討を行ったので, その結果を述べる 調査概要 1 試験体を用いた調査調査で使用した試験体は,1929 年に竣功した RC ラーメン構造の A 高架橋をワイヤーソーで切断して撤去したものである. 撤去した床版 梁 柱の各試験体の概略図を図 に, 撤去した 28

34 上部 鉛直方向 上面 側面 直角方向主筋方向下面側面側面 主筋方向 側面床面 軸方向 下部 床版部 梁部 柱部 図 試験体の概略図 床版部 (4 分割 ) 試験体の位置の平面図 縦断図を図 に示す. また, 撤去したそれぞれの試験体の寸法, 数量および各試験数 < 下記 (c) および (h) を除く>を表 に示す. 調査項目は以下 (a)~(h) の通りである. (a) リバウンドハンマーによる圧縮強度推定 JIS A 1155 コンクリートの反発度の測定方法 桁 梁部ラーメン構造 柱部桁 に準じ, 図 表 に示す床版部 16 箇所, 図 A 高架橋平面図 ( 上 ), 縦断図 ( 下 ) 梁部 6 箇所, 柱部 8 箇所, 合計 30 箇所で実施し た. (b) コア採取による圧縮強度 静弾性係数試験 JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法 および JIS A 1149 コンクリートの静弾性係数 試験方法 に準じて実施した. コアは, 図 表 に示すように, 床版部 9 本, 梁部 6 本, 柱部 3 本, 合計 18 本採取した. (c) 塩化物イオン濃度測定 試験体が供用されていた位置が都市部 ( 内陸地 ) であることから, 試験体内部の塩化物イオン量を 調査する目的で, 柱部の表面から 100mm 程度の位置における塩化物イオン濃度を JIS A 1154 硬 化コンクリート中に含まれる塩化物イオンの試験方法 に準じて測定した. (d) かぶり測定 試験体 寸法 (m) 数量 床版部 体 梁部 ~ 体 柱部 体 表 試験体の寸法と試験数量 (a) リバウンド (d)~(f) かぶり (b) コア採取ハンマー中性化 鉄筋腐食度 下面 4 箇所 4 体 鉛直方向 6 本 上下面各 2 箇所 4 =16 箇所 主筋方向 3 本 体 =16 箇所 両側面および下面各 主筋方向 3 本 両側面 + 下面各 2 箇 2 箇所 1 体 =6 箇所 直角方向 3 本 所 1 体 =6 箇所 4 側面各 2 箇所 1 体 4 側面各 2 箇所 1 体軸方向 3 本 =8 箇所 =8 箇所 (g) 鉄筋付着強度主鉄筋 6 本 2 体 =12 本圧縮鉄筋 2 本引張鉄筋 4 本主鉄筋 6 本 合計 30 箇所 18 本 30 箇所 24 本 29

35 表 鉄筋の腐食度評価基準 5) 腐食度 評価基準 0 Ⅰ Ⅱa 施工時の状態を保ち, 以後の腐食が認められない部分的に軽微な腐食が認められる表面の大部分に腐食が認められる D 筋チャックシ ャッキ C50S7 Ⅱb 部分的に断面欠損が認められる スイヘ ル Ⅲ 鉄筋の全周にわたり断面欠損が認められる Ⅳ 鉄筋断面が 1/6 以上欠損している 引張鉄筋圧接部 ロート セル はつり取り撤去時切断面 試験長 切出し試験体 変位計 写真 付着試験実施状況 図 付着試験実施要領 鉄筋探査後, チッパー等でかぶりコンクリートをはつり取り, ノギス等を用いて鉄筋 1 本当たり 3 箇所程度かぶりを測定した. 測定位置は, 図 表 に示す床版部 16 箇所, 梁部 6 箇所, 柱部 8 箇所, 合計 30 箇所で実施した. (e) 中性化深さ JIS A 1152 コンクリートの中性化深さの測定方法 に準じて実施した. 測定位置は,(d) かぶり測定と同じ位置とした. (f) 鉄筋腐食度測定 (e) 中性化試験を実施前, 同じ位置で鉄筋の表面を観察し, 表 に示す鉄筋の腐食度評価 2) 基準に従って鉄筋の腐食度を評価した. (g) 鉄筋付着強度試験 JSCE-G 503 引抜き試験による鉄筋とコンクリートとの付着強度試験方法 に準じ, 試験体中の鉄筋をはつり出し, 鉄筋の定着部に延長用の異型鋼棒を圧接した後, 試験を実施した. 試験実施概要を図 写真 に示す. (h) 床版載荷試験図 に示すように, 床版試験体を梁状に 3 体に分けて切断し, 整形した後, 載荷試験を実施した. 試験体床版から切り出す梁供試体幅は, 引張主鉄筋を 2 本含むように 200mm 程度とした. また主鉄筋は丸鋼が使用されていることから, すべり破壊を防止するために, 主鉄筋を端部から 100mm 程度はつり出し, 定着用の鉄板を溶接して無収縮モルタルで埋め戻して定着効果を回復させた. 載荷方法は, 図 に示すように, 一方向からの静的 2 点載荷により実施した. 載荷試 30

36 験での加圧は,10kN ピッ チで 50kN までの載荷を 2 回繰返し,3 回目から 10kN 間隔で単調増加させた. 切断線鉄筋 3 体切り出し 2 供用中の高架橋の調査 試験体 (A 高架橋 ) とほぼ同年代に建設された,A 図 床版載荷試験試験体切り出し状況端部定着処理 高架橋の近隣に位置する 2 つの高架橋 (B C) の劣化 調査を実施した. 調査実 施項目は,(1) のうち, 300 (a) リバウンドハンマー 200 による圧縮強度推定 (d) かぶり調査 (e) 中性化深さ 寸法の単位 :mm 寸法は概寸を示す (f) 鉄筋腐食度測定図 試験体載荷要領の 4 項目とし, それぞれ B 高架橋で 4 箇所,C 高架橋で 2 箇所の, 計 6 箇所で調査を行った. なお, 調査した時期が 3 つの高架橋で異なるが (A 高架橋 :2007 年,B 高架橋 :2003 年,C 高架 橋 :2005 年 ), 経年が約 80 年であることに対して調査時期の差は最大 4 年であることから, 中性 化速度予測式に用いる経年を除き, 調査した時期をほぼ同等とみなした 試験体の調査結果 (a) リバウンドハンマーによる圧縮強度推定リバウンドハンマー試験結果および結果から推定される圧縮強度を表 に示す. なお, 圧縮強度推定には, 日本材料学会による推定式 ( 式 [3.2.1]) 6) を用い, さらに式 [3.2.2] 7) により, 材齢による補正を行った. F 1 = R [3.2.1] F 2 =0.63 F 1 [3.2.2] ただし,F 1 : コンクリート推定圧縮強度 (N/mm 2 ) F 2 : 補正後の推定圧縮強度 (N/mm 2 ) R: 反発度 ( 打撃方向による補正済の値 ) 表 より, 補正後の推定圧縮強度が 27~33(N/mm 2 ) 程度であった. また, 柱部は床版部や梁部に比べて若干小さいが, 試験体における測定場所間のばらつきもあまり見られなかった. (b) コア採取による圧縮強度 静弾性係数試験コアによる圧縮強度および静弾性係数試験の結果を,(a) で求めた補正後の推定圧縮強度の平均値と併せて表 に示す. 31

37 式 [3.2.1] [3.2.2] で求めた補正後の推定圧縮 表 リバウンドハンマー試験結果 強度 (F 2 ) に比べて, コアによる圧縮強度 (F 3 ) のほうが 1~2 割程度大きい.70 年間経過し 部位 場所 反発度 [ 平均 ]R 推定圧縮強度 F 1 補正後の推定圧縮強度 た道路橋橋脚の調査でも, 使用材料等は異な (N/mm 2 ) F 2 (N/mm 2 ) 下面 るが, 式 [3.2.1] [3.2.2] で求めた補正後の推定下面 床版部圧縮強度に比べて, コアによる圧縮強度のほ下面 うが大きい結果が得られている 8). 下面 ここで, 式 [3.2.2] に示す材齢係数は 0.63 で 側面 ( 東 ) あるが, コアによる圧縮強度 (F 3 ) に一致する 梁部 側面 ( 西 ) ように, 材齢係数を修正すると 0.72 となる. 下面 側面 ( 東 ) 今後, 同高架橋の調査で, リバウンドハンマ側面 ( 西 ) 柱部ーにより圧縮強度を推定する場合には, 下記側面 ( 南 ) の式 [3.2.2] を用いるほうがよいと考えられ 側面 ( 北 ) る. F 2 =0.72 F 1 [3.2.2] 表 コアによる圧縮強度 静弾性係数 平均圧縮強度平均ただし,F 2 : 修正後の推定圧縮強度リバウンリバウンド (N/mm 2 ) 部位コア静弾性ドハンマハンマー F 3 係数ー F 一方, 静弾性係数であるが, コンクリート 2 修正 (N/mm 2 ) (N/mm 2 ) F 2 (N/mm 2 ) (kn/mm 2 ) 標準示方書 [ 設計編 ] 9) において, 圧縮強度が 床版部 ~40(N/mm 2 ) の場合, 静弾性係数は 28~ 梁部 (kN/mm 2 ) と示されている. 今回コアによる 柱部 静弾性係数は 18.5~21.7(kN/mm 2 ) と, 示方書の値の 2/3 程度となった. 試験体のコンクリートは写真 に示すように川 砂利が使われており, 砕石に比べて, 川砂利とモルタ ルとの界面の方が, 角が丸い分摩擦が小さく, そのた め静弾性係数が小さくなったことも一因と推測でき 8) る. しかし, 前出の 70 年間経過した道路橋橋脚は, A 高架橋と同じく川砂利を使用しているが, 圧縮強度 が 23.5 ~ 34.4(N/mm 2 ), 静弾性係数が 19.1 ~ 37.0(kN/mm 2 ) であり, 橋脚によってばらつきがあるも 写真 試験体断面の一例 のの, 静弾性係数の平均値は 27.9(kN/mm 2 ) と現示方書に近い値であった. これらより, 現時点で は A 高架橋の静弾性係数が通常に比べて低くなっている原因が明確にはならなかった. 今後さら に他の高架橋からもデータ収集を行い分析する必要がある. (c) 塩化物イオン濃度測定柱部の塩化物イオン濃度は,Cl - 換算で (kg/m 3 ) であった. これは, 現在のコンクリート標準示方書 [ 施工編 ] 10) で定められた規制値である 0.30(kg/m 3 ) より低い値である. 試験体が供用していた位置が都市部 ( 内陸地 ) であり, 飛来塩分の影響を受けないことから, 本試験体内には塩化物イ 32

38 オンがほとんど存在していなかったものと 表 はつり調査結果 ( 床版部下面 ) 考えられる. 試験体番号 かぶり (mm) 鉄筋腐食度 中性化深さ (mm) 中性化残り (mm) (d) かぶり測定 中性化深さ 鉄筋腐食度 ~Ⅰ ~Ⅰ 測定 ~Ⅰ 測定したかぶり, 鉄筋腐食度, 中性化深 ~Ⅰ さの結果を, 試験体ごとに表 3.2.5~ 表 に示す. なお, かぶりと中性化深さの 平均 28.3 差である中性化残りも併せて示す. また, 表 はつり調査結果 ( 梁部 ) 試験体かぶり鉄筋中性化深中性化残 かぶりは主筋と配力筋のうち, 小さい方 ( 床 番号 (mm) 腐食度 さ (mm) り (mm) 版部は主筋, 梁部および柱部は配力筋 ) を示 側面 ( 東 ) ~Ⅰ している. 側面 ( 西 ) ~Ⅰ 中性化深さは床版部 ( 下面 )< 梁部 < 柱部 下面 ~Ⅰ の順となった. 圧縮強度が小さいほど中性 平均 33.4 化深さが大きくなる傾向にあるとされてい 表 はつり調査結果 ( 柱部 ) る 11) などが, 今回の結果から, コアの圧縮強度は床版部 梁部 柱部で差はほとんどな 試験体番号 かぶり (mm) 鉄筋腐食度 中性化深さ (mm) 中性化残り (mm) いものの, リバウンドハンマーでの反発度 側面 ( 東 ) ~Ⅰ は柱部が床版部や梁部より若干小さく, こ 側面 ( 西 ) ~Ⅰ 側面 ( 南 ) ~Ⅰ の影響が中性化深さの大小に現れている可 側面 ( 北 ) ~Ⅰ 能性があると考えられる. 平均 40.8 また表 より, 柱部の中性化深さに ついて, 西面が他の 3 面より小さい結果が得られた. これ は, 図 に示すように, 柱部試験体の位置が, ラーメ ン構造と桁構造の境界部のために目地が存在し, かつ西側 に位置することから, 西面に高架橋上部からの漏水がかか りやすいことによるものと考えられる. 鉄筋腐食状況の一例を写真 に示す. 鉄筋腐食度は 床版部上面を除き, ほとんどの箇所でⅠ( 部分的に軽微な腐 食 ) 程度であった. なお, 写真に示す通り, 当該高架橋中の鉄筋は全て普通丸鋼であった. 塩害による劣化を考慮し 写真 普通丸鋼腐食状況アスファルト防水層 ない場合の腐食開始の判定は, 中性化残りが 10mm とな ったとき 12) とされているが, 今回の調査では, 表 ~ 表 に示すとおり, 中性化残りが一部では 10mm を上回っている場合でも. 軽微な腐食が見られた. ただ し, 中性化残りが 10mm 以上であることがどのような場 合でも鉄筋が腐食しないことを保証するものではないことと, 腐食しても構造物の機能を損なうような重大な 写真 アスファルト防水層 33

39 腐食が生じた例が極めて少ないこと 12) を考慮すると, 中性化残りから判定される鉄筋腐食と実際 の鉄筋腐食の関係もほぼ一致していると考えられる. なお, 床版部上面は, アスファルト防水層 ( 写真 参照 ) の影響により, 床版躯体の中性化深 さは 0mm, かつ鉄筋の腐食もみられなかった. 鉄道高架橋として約 80 年間供用された状態であ っても, 防水層はほぼ健全な姿を保っており, 床版上面の中性化抑制に対しても長期的な効果が あったといえる. 表 部位ごとの鉄筋の最大付着強度および コア採取による圧縮強度 静弾性係数 (e) 鉄筋付着強度試験最大付着強度圧縮静弾性部位ごとの鉄筋の最大付着強度を部材平均値最大値最小値強度係数表 3.2.8, 各部位の付着強度とすべ (N/mm 2 ) (kn/mm 2 ) り量の関係の一例を図 に示す. 床版部 なお,(a) コア採取による圧縮強度試梁部 験および静弾性係数試験結果を表柱部 に併記している. 表より, 柱部の最大付着強度は床版部や梁部に比べて小さく, また図より, 柱部の付着剛性が床版部や梁部に比べて小さいことがわ 5 床版部梁部柱部 4 3 かった. コンクリート強度が高くなるほど付 着強度が増し, すべり量も小さくなるとされている 15) が, 本実験では部位の違いによる圧縮強度の大きな違いはない. 柱部が床版部や 梁部に比べて, 付着強度が小さくすべり量が大きい原因としては, 建設当時の打設状況や試験体内部に存在すると思われるひび割れなどの影響も考えられるが, 現時点では不明である すべり量 (mm) 図 付着強度 -すべり量の関係の一例表 鉄筋付着強度の特性値と実測値の比較 ( 単位 :N/mm 2 ) 設計標準値との比較について, コンクリート標圧縮強度付着強度付着強度部材準示方書 [ 設計編 ] 9) では,JIS G 3112 鉄筋コンク ( 実測値 ) ( 特性値 ) ( 実測値 ) リート用棒鋼 の規定を満足する異型鉄筋の付着 床版部 強度の特性値 f bok を, 式 [3.2.3] で定義している. 梁部 /3 f bok =0.28f ck (f bok 4.2N/mm 2 ) 柱部 * f ck : 設計基準強度 [3.2.3] 普通丸鋼の場合は, 異型鉄筋の場合の 40% とする (a) コア採取による圧縮強度試験結果を基に, 本試験体の付着強度の特性値を算出し, 表 ) に示す. なお, 設計基準強度は, 圧縮強度の実測値をコンクリートの材料係数 1.3 で除した値 とした. 表より, 本試験体の付着強度の実測値は, いずれの部位においても式 [3.2.3] の特性値を上 回っており, 現時点では付着強度は健全な状態を保っていることがわかった. 腐食度評価においても写真 に示すように鉄筋はほぼ健全 ( 部分的に軽微な腐食が認められ る程度 ) であり, 付着強度の健全性を裏付けている. したがって, 現在の示方書を用いて約 80 年 前の RC 構造物の付着強度を推定しても, 安全側に評価できることがわかった. 34 付着強度 (N/mm 2 )

40 表 載荷試験結果 計算値との比較 (f) 床版載荷試験試験体実験値計算値床版載荷試験に先立ち, 耐荷力の計算を行っ No. 1(kN) 2(kN) 1/2 破壊形態 た. せん断耐荷力の算定は, コンクリート標準 No せん断 No せん断示方書 [ 設計編 ] 9) の 棒部材の設計せ No せん断ん断耐力 および二羽らの提案式より求め た. 曲げ耐荷力の算定は, 等価応力ブロック 表 供用中の高架橋の調査結果 ( 床版部 ) 法により求めた. いずれの試験体も, 曲げ耐中性化中性化圧縮かぶり鉄筋場所深さ残り強度力がせん断耐力を上回っており, 計算上はせ (mm) 腐食度 (mm) (mm) (N/mm 2 ) ん断破壊先行型と想定された. B 高架橋 ~Ⅰ 算定結果および載荷試験の結果を表 B 高架橋 ~Ⅰ に示す. 試験体はいずれもせん断破 B 高架橋 ~Ⅰ 壊した. また, せん断耐荷力は計算値に比べ B 高架橋 ~Ⅰ て 1.18~1.53 倍の耐荷力を有し, 現行の示方 C 高架橋 Ⅰ~Ⅱa 書式を適用しても部材の耐荷力を安全側に C 高架橋 Ⅰ~Ⅱa 評価できることがわかった. 表 供用中の高架橋の調査結果 ( 梁部 ) 中性化中性化圧縮かぶり鉄筋 供用中の高架橋の調査結果場所深さ残り強度 (mm) 腐食度 (mm) (mm) (N/mm 2 ) 試験体と同年代に建設された, 供用中の B 高架橋 ~Ⅰ B C 高架橋の健全度評価結果を表 ~ B 高架橋 -2 4 Ⅰ~Ⅱa 表 に示す. なおリバウンドハンマー B 高架橋 Ⅰ~Ⅱa の結果から圧縮強度を推定する際には, 式 B 高架橋 Ⅰ~Ⅱa [3.2.1] [3.2.2] を用いた. C 高架橋 ~Ⅰ かぶりは, 一部の箇所で 10mm 以下となっ C 高架橋 Ⅰ~Ⅱa ている他は, 現在のコンクリート標準示方書 表 供用中の高架橋の調査結果 ( 柱部 ) [ 設計編 : 標準 ] 9) で示されている最低値 ( 柱 : 中性化中性化圧縮かぶり鉄筋 45±15mm, 梁 :40±10mm, スラブ :35±5mm) 場所深さ残り強度 (mm) 腐食度 (mm) (mm) (N/mm 2 ) を上回っていることがわかる. 鉄筋腐食度は, 一部の鉄筋で腐食度がⅡ B 高架橋 Ⅰ~Ⅱa B 高架橋 ~Ⅰ a( 表面の大部分に腐食が認められる ) となっ B 高架橋 ~Ⅰ ていた. また中性化残りが腐食判定開始とさ B 高架橋 ~Ⅰ れる 10mm を下回っていないにもかかわら C 高架橋 Ⅰ~Ⅱa ず, 腐食度がⅡa となっている場所も見受けられ,A 高架橋の調査結果と異なるものであ C 高架橋 ~Ⅰ った.A 高架橋から切り出した各試験体の外観はほぼ健全であったが,B C 高架橋は, 一部ジャ ンカ等の初期欠陥が存在しており, 既に断面修復を実施している箇所があった. このことから, 高架橋の一部のコンクリートに認められる初期欠陥によって鉄筋腐食が生じているものと推定さ れる. リバウンドハンマーから推定した圧縮強度は, どの場所においても 27~40(N/mm 2 ) とばらつき 35

41 も少なく, 部位による差も見られなかった. さらに, 式 [3.2.2] を用いて推定した試験体の圧縮強度推定値 ( 表 参照 ) とほぼ同じ値であった. したがって, 材齢係数を補正した式 [3.2.2] が妥当であるといえる. 今回調査した高架橋のコンクリートの品質は設計基準強度が不明なため, 初期強度と単純に比較することはできないが, 調査した 3 つの高架橋とも, 圧縮強度やはつり調査の結果から, 現在もなお供用に十分な強度や耐久性を有しているといえる 長期間供用中の高架橋の維持管理について で述べたように, 供用中の B C 高架橋では, 一部の鉄筋が腐食しており, 腐食の進行に伴いかぶりコンクリートの剥離による第三者被害や構造物の耐力低下を引き起こすことにつながることが想定される. JR 西日本では, 後述する 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 での検討結果 15) を受 けて, 補修工法選定フロー 16) に基づき, 変状が発見されたコンクリート構造物の補修を順次進めているところである. 今回の調査結果を踏まえ, 特に長期間供用している高架橋をさらに長く供用していく上で, 以下の点に留意して維持管理を行うべきであると考える. 1 今回実施したような鉄筋のはつり調査を行って鉄筋腐食度, 中性化深さ, 塩化物イオン濃度やかぶり等を把握することは, 今後の構造物を維持管理していく上で重要である. 2 今回調査した高架橋の鉄筋の一部には, 中性化残りが大きいにも関わらず, 表面の大部分に腐食が認められるものもあったが, 一般的に鉄筋の腐食は中性化残りに左右されることが多いので, 中性化残りが 10mm 以下の箇所は, たとえはつり調査時に鉄筋が腐食していなくても, その後の点検等で注意する必要がある. 3 点検等でかぶりコンクリートに浮きが発見された場合は, 叩き落とし後, 補修を行う. その際, 鉄筋腐食度や中性化残りの値によって適用可能な補修工法が異なるので, 補修前に調査を行い, 補修工法選定フロー 16) に基づき, 適切に補修工法を選択する必要がある. 4 構造物が設置されている位置, 向きによっても変状の発生状況が異なるため, 環境把握も大事である. 3.3 山陽新幹線のコンクリート構造物について 3.2 で述べた島田川暗渠や惣郷川橋梁, あるいは調査を行った高架橋のように, 建設後 80~100 年以上を経てもなお現在供用中の構造物も存在している. 一方で, 山陽新幹線 ( 新大阪 ~ 博多間 :560km) は,1972 年 3 月に新大阪 ~ 岡山間 (158km),1975 年に岡山 ~ 博多間 (402km) が開業した. 開業以降今日に至るまで, 国土の均衡ある発展や豊かな国民生活の実現に果たしてきた役割は大きい. しかし,1999 年 6 月に福岡トンネル,10 月に北九州トンネルと, 同じ年に 2 度のトンネル覆工コンクリート剥落事故が発生した. また, 同時期に RC ラーメン高架橋からのコンクリート片の落下が相次いで発生した. 本事象を契機として, 山陽新幹線の RC 構造物の健全性を維持していくための方策を提言することを目的として,1999 年 8 月に運輸省 ( 当時 ) の指導のもとで 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 ( 以下 検討委員会 とする ) が設置された. 検討委員会での検討結果の概要は以下の通りである 15). 1 山陽新幹線高架橋等の RC 構造物の劣化要因は, 図 に示すように, 中性化が主要因であ 36

42 ることが確認された. また, 塩化物イオン量が多いほど, 鉄筋腐食が進行する傾向にあることがわかった. さらに, 図 に示すように, 塩化物イオンは中性化の進行とともに内部に移動していくことが確認された. 2 高架橋中間スラブの曲げ耐力 疲労耐力のいずれにおいても, 現在の高架橋設計の考え方に基づく耐力を上回っており ( 図 3.3.3~3.3.4), 構造上問題のないことが確認された. 3 将来にわたって健全な状態を維持するためには, 適切な時期に検査を実施し, その結果を元に適切な時期に適切な補修を実施していくことが重要である. 図 中性化残りと鉄筋腐食度の関係 15) * 鉄筋腐食度は, 表 ) による 3.4 鉄筋腐食により劣化した RC 鉄道構造物の補修山陽新幹線を初めとした RC 鉄道構造物において, 床版下面に発生した鉄筋腐食による変状に対して, 過去には 15) 図 深さ方向の塩分量 ( 全塩分量 ) 分布図 に示すような変状が発生している箇所に対する部分断面修復と全面的なコーティング ( 表面被覆 ) を併用した工法で対処してきた事例が多い 17). しかし, このような施工では, 鉄筋のケレンが構造物の表側面の露出面にだけ行われていることや, 鉄筋裏側に残された劣化因子を除去できていないた 15) 図 高架橋中間スラブの曲げ耐力評価め, 補修部と未補修部の境界部でマクロセル腐食による再劣化が懸念される. また, 以前はこのような補修が, 構造物の変状の程度や原因にあまり関係なく一律に同じ方法で行われていることが多い. 例えば, 写真 に示すように, 表面被覆施工後約 10 年程度で再変状が発生している事象などは, 適切 15) 図 高架橋中間スラブの疲労耐力評価な補修方法であったとは言いがたい. これに対して,3.3 で述べた検討委員会において, 十分な耐力を有している現状の構造物に対 37

43 して, 今後とも健全な状態で維持管理していくために必要な補修工法の適用の考え方が提案された 15). 検討委員会での提案, およびに山陽新幹線全線を対象に実施した山陽新幹線高架橋等総合診断の結果 18) を併せて, 山陽新幹線高架橋等 17) 図 過去の RC 構造物の補修システム概念図を対象とした補修工法選定フローを図 に示すように作成した. これは主に, 中性化と内的塩害の複合的な影響により鉄筋腐食の生じた RC 構造物に対する補修工法を選定する際に適用され, 浮き, 中性化, 塩化物イオン量などの調査 点検結果に基づき, 表 に示す a~e に分類された 5 つのグループの中から, 補修工法を選択するものである. また, 山陽新幹線等の RC 構造物の補修を行う場合において, 変状状態, 補修の環境条件等を踏まえ, 使用する材料や機械等の特性を考写真 表面被覆施工約 10 年後での再変状例慮した上で, 適切な方法で補修を行う必要がある. これらを実現するために, 各種補修工法の材料, 施工手順をわかりやすく説明した コンクリート構造物補修の手引き 16) に基づいて補修が実施されている. 一方で, 東海道新幹線の RC 構造物については, これまでの調査結果から, 塩害や ASR による劣化はほとんど見られず, 経年による中性化進行に起因する鉄筋腐食が劣化の課題であるとされ, 2000 年から予防保全として中性化進行抑制のための表面保護工法が実施されている 19). 表面保護工法の施工には, 東海道新幹線鉄筋コンクリート構造物維持管理標準 20) に基づき実施されている. さらに近年では, 将来にわたり健全性を維持するため, ひび割れや浮き, ポータブル型蛍光 X 線分析装置による鉄筋表面の錆の状態等の点検 評価結果に基づき, これまでの表面保護工法 (+ 部分断面修復工法 ) に加え, 電気化学的防錆材注入工法, 耐力補強工法の 3 つの補修 補強工法が提案されている 21). 38

44 START 記号 a b 16) 補修工法一覧工法全断面修復工法脱塩 再アルカリ化工法 / 電気防食工法 浮き箇所の有無有叩き落とし c d e 再アルカリ化工法表面被覆工法部分断面修復工法 公称安全率 1.2 No Yes 叩き落とし率 [Hr] Hr <0.3% 0.3% Hr<25% 25% Hr d/e 15mm R 5mm R<15mm 中性化残り [R] R<5mm 鉄筋腐食度 [Co] Co Ⅲ a/d 塩化物イオン量 Cl - の判定 Cl - 0.6kg/m 3 No Yes Hr<5% 塩化物イオン量 Cl - の判定 Cl - 0.6kg/m 3 No Co<Ⅱb 5% Hr Yes d/e e c/e b/e a 図 山陽新幹線高架橋等補修工法選定フロー < 文献 16) を一部修正 > 16) 表 図 における用語の説明 用語 用語の説明 公称断面積 鉄筋径の測定等により推定した実耐力を設計耐力により除した値 叩き落とし率 [Hr] 部材面積に対して, 当該点検においてハンマー等により叩き落とした面積の割合 はつり率 叩き落とした周囲を, 鉄筋の腐食状況が点錆程度になるまで, 電動ピック等では つり取った面積 ( 過去にはつり取った面積を含む ) の部材面積に対する割合 中性化残り [R] 鉄筋のかぶりから中性化深さを引いた値 鉄筋腐食度 [Co] 表 ) 参照 39

45 3.5 本章のまとめ本章では, まず鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理体系について, 検査と措置に大別して概説した. 次に, 経年約 80 年と, 長期間供用され撤去された鉄筋コンクリート鉄道構造物を調査し, その結果を基に現在も供用中の長期間供用している鉄筋コンクリート鉄道構造物の維持管理のあり方について, 以下の点に留意して維持管理を行う必要があると考えている. 1 今回実施したような鉄筋のはつり調査を行って鉄筋腐食度, 中性化深さ, 塩化物イオン濃度やかぶり等を把握することは, 今後の構造物を維持管理していく上で重要である. 2 今回調査した高架橋の鉄筋の一部には, 中性化残りが大きいにも関わらず, 表面の大部分に腐食が認められるものもあったが, 一般的に鉄筋の腐食は中性化残りに左右されることが多いので, 中性化残りが 10mm 以下の箇所は, たとえはつり調査時に鉄筋が腐食していなくても, その後の点検等で注意する必要がある. 3 点検等でかぶりコンクリートに浮きが発見された場合は, 叩き落とし後, 補修を行う. その際, 鉄筋腐食度や中性化残りの値によって適用可能な補修工法が異なるので, 補修前に調査を行い, 補修工法選定フロー に基づき, 適切に補修工法を選択する必要がある. 4 構造物が設置されている位置, 向きによっても変状の発生状況が異なるため, 環境把握も大事である. 一方で,1975 年に全線開業した山陽新幹線について, 開業後わずか 24 年の,1999 年にラーメン高架橋からのコンクリート片の剥落が相次いだことを受けて運輸省 ( 当時 ) に設置された 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 の検討結果について概説した. 最後に, 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート鉄道構造物の補修について,1999 年以前と以降の違いについて概説した. 建設後 80~100 年以上経過した RC 構造物が健全な姿で現在もなお供用中である一方で, 建設後約 35 年の山陽新幹線は, 中性化を主要因とする鉄筋腐食による劣化問題を今もなお抱えている. 3.4 で述べたように, 補修工法選定フローが作成されたが, それぞれの補修工法で使用する材料については, これまで十分な検討がなされてこなかった面も否定できず, かつ第 2 章 2.4 で述べたように, 材料選定や補修後の効果の検証などまだまだ未解明な点も多い. そこで, 次章以降で, 表面被覆工法, 断面修復工法および電気防食工法を適用する際の材料や工法の選定手法と, 補修後の評価手法を中心に検討を行うこととする. 40

46 *************** 第 3 章参考文献 1)( 財 ) 鉄道総合技術研究所 : 鉄道構造物等維持管理標準 同解説 ( 構造物編コンクリート構造物 ), ) 平成 13 年国土交通省告示第 1786 号 : 施設及び車両の定期検査に関する告示, ) 谷内田昌煕, 石橋忠良, 小林明夫 : 耐久性の優れたコンクリート構造物 - 鉄道構造物 -, 土木学会論文集, 第 360 号 /V-3,pp.11-26, ) 土木学会ホームページ URL: 5) 鳥取誠一, 神野嘉希, 北後征雄, 宮川豊章 : 鉄筋腐食から見た既設鉄道高架橋の耐久性評価, コンクリート構造物のリハビリテーションに関するシンポジウム論文集,pp.49-54, )( 社 ) 日本材料学会 : シュミットハンマーによる実施コンクリートの圧縮強度判定法,1958 7)( 社 ) 日本建築学会 : コンクリート強度推定のための非破壊試験方法マニュアル,1983 8) 迫田恵三, 渡邉晋也, 斯波明宏, 樋口正典 :70 年間経過した鉄筋コンクリート橋の耐久性調査, セメント コンクリート論文集,No.60,pp , )( 社 ) 土木学会 :2007 年制定コンクリート標準示方書 [ 設計編 ], )( 社 ) 土木学会 :2007 年制定コンクリート標準示方書 [ 施工編 ], ) 岸谷孝一, 喜多達夫 : コンクリート構造物の耐久性シリーズ中性化, 技報堂出版, )( 社 ) 土木学会 :2007 年制定コンクリート標準示方書 [ 維持管理編 ], )( 社 ) 日本コンクリート工学協会 : コンクリート便覧 ( 第二版 ),pp , ) 二羽淳一郎, 山田一宇, 横沢和夫, 岡村甫 : せん断補強筋のない RC はりのせん断強度式の再評価, 土木学会論文集,No.372/V-5,pp , ) 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 : 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書, ) 西日本旅客鉄道 ( 株 ): コンクリート構造物補修の手引き, ) 北後征雄, 石橋忠良 : 鉄筋コンクリート床版下面に施工した各種補修工法の効果, コンクリート工学年次論文報告集,Vol.9,No.1,pp , ) 荒巻智, 垣尾徹, 松田好史 : 鉄筋コンクリート鉄道高架橋の詳細調査, コンクリート構造物の補修, 補強, アップグレードシンポジウム論文報告集第 1 巻,pp.1-6, ) 筑摩栄, 森川昌司 : コンクリート構造物維持管理の取組, 日本鉄道施設協会誌, 第 38 巻第 10 号,pp.24-25, )( 社 ) 日本鉄道施設協会 : 東海道新幹線鉄筋コンクリート構造物維持管理標準, ) 長谷川昌明, 久保淳一郎, 関雅樹, 荒鹿忠義 : 東海道新幹線の鉄筋コンクリート構造物の健全度評価および補修フローの研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.30,No.3, pp ,

47 第 4 章表面被覆工法の耐久性評価手法に関する研究 4.1 はじめに鉄筋腐食により劣化した RC 構造物の耐久性の回復あるいは向上を目的として, 表 で示した補修工法などが用いられている. 第 3 章では, 山陽新幹線を中心とした RC 鉄道高架橋の補修工法について述べた. そのなかで, 1999 年に多発した山陽新幹線高架橋からのコンクリート片落下事故を契機として, 運輸省 ( 当時 ) の指導のもと ( 財 ) 鉄道総合技術研究所に設置した 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 ( 委員長 : 長瀧重義 新潟大学教授 [ 当時 ]) での提言 1) に基づき,JR 西日本では,RC 構造物に表面被覆工法を適用するケースを, 以下の 2 点としている. 1 中性化残り ( かぶりと中性化深さとの差 ) が 15mm 以上 2 中性化残りが 10mm 以上 15mm 未満で, かつ塩化物イオン量が 0.6kg/m 3 未満山陽新幹線 RC 高架橋の早期劣化の主要因は中性化である 1) ことから, 表面被覆工法を適用する主な目的は, 中性化の進行を抑制することである. 山陽新幹線においても表面被覆工法はこれまで種々の工法や材料が用いられ, そのほとんどの材料で中性化の進行をある程度抑制する効果があるとされている 2) が, 一部の材料で調査時期によっては中性化が進行していたことや, 長期耐久性については必ずしも定量的に明らかになっておらず, 工法や材料等の違いによる差異についても不明確な点が多く残っていた. そこで, まず山陽新幹線 RC 高架橋に適用する表面被覆工法に求める性能を明確にした. 次いで, 表面被覆工法に求める性能を評価するための試験方法について,2001 年より, 表面被覆工法の実高架橋による現地試験, および試験体を用いた暴露試験を実施し,1 年,3 年および 5 年経過後に種々の調査を実施した. さらに調査結果をもとに, 表面被覆工法の要求性能を確保するための試験項目や規格値について, 調査結果をもとに行った検討結果について述べる. 4.2 山陽新幹線における表面被覆工法の要求性能山陽新幹線 RC 高架橋に対して行う表面被覆工法については,1990 年に表 に示す 16 項目の試験方法 規格値を定めたが, 主に以下のような問題点があった. (a) 当時の要求性能が明確でなく, 表 の試験方法や規格値が要求性能を必ずしも満足したものではなかった (b) 必ずしも中性化の進行を抑制するという, 耐久性を目的とした規格値となっていない (c) 山陽新幹線 RC 高架橋の劣化要因となる可能性が小さい, 飛来塩による塩害抑制を目的とした項目が混在していたそこで,4.1 で述べたように, 中性化進行の抑制を表面被覆工法の主目的とし,4.3 以降で述べる,2001 年から実施した表面被覆工法の試験施工実施の前提として, 表面被覆工法に求める性能を以下の 5 項目とした. 1 中性化阻止性能は 1.5mm 以下 /20 年 を目標値とする 2 適切な施工管理システムが確立されている 3 塗膜の劣化により将来的に母材に悪影響を与えない 4 塗膜が劣化していない部分には重ね塗りの補修ができる 42

48 表 年に制定された表面被覆工法の試験方法 規格値 No. 規格項目試験方法規格値 1 中性化阻止性 JCI-SC4( 硬化コンクリート中に含まれる塩分の分析方法 ) 20,R.H.60%,CO 2 5%,720 時間有機 0.75mm 以下, 無機 1.2mm 以下 2 促進耐候性 JIS K ( 促進耐候性 時間異常なし サンシャインアーク法 ) 3 付着性 建研式 1.0N/mm 2 以上 4 酸素透過阻止性 製科研式フィルム 2.3mol/m 2 以下 5 水蒸気透過性 JIS K ( 水蒸気透過度 ) 有機 3.35mg/cm 2 day 以下, 無機 10.0mg/cm 2 day 以下 6 耐アルカリ性 JIS K ( 耐アルカリ性 ) 30 日間異常なし 7 遮塩性 道路協会方式 有機 mg/cm 2 day 未満, 無機 mg/cm 2 day 未満 8 耐水性 JIS K ( 耐水性 ) 30 日間異常なし 9 透水性 JIS K ( 透水度 ) 有機 0.15ml/m 2 day, 無機 0.8ml/m 2 day 以下 10 碁盤目法 JIS K ( 付着性 - 碁盤 9/9( 全数剥がれないこと ) 目法 ) 11 耐塩水噴霧性 JIS K ( 耐塩水噴霧性 ) 300 時間異常なし 12 温冷繰返し試験 JIS A ( 建築用仕上塗材 10 サイクル異常なし - 温冷繰返し試験 ) 13 熱膨張係数 JIS K ( 熱硬化性プラス 母体と同等程度とする チック一般試験方法 - 熱膨張 ) 14 耐塩水性 JIS K ( 耐塩水性 ) 30 日間異常なし 15 塗膜の外観 JIS K ( 塗膜の外観 ) 異常なし ( 流れ, むら, 膨れ, 割れ, 剥がれ ) 16 乾燥時間 JIS K ( 乾燥時間 ) カタログの時間を厳守 *JIS K 5400 塗料一般試験方法 は,JIS K 5600( 名称は同じ ) 制定に伴い,2002 年 4 月に廃止 となった 5 規制値を超える環境有害物質を周辺環境に放散しないこのうち1については, 表面被覆工法の耐用年数は仕様の違いにより様々であるが,15 年と設定されているものが多い 3) など. また耐用年数までは劣化因子の侵入を遮断するが, 耐用年数に達すると遮断効果がなくなる ( 無補修と同じ状態 ) とする考え方 4) を用い, 塗替周期などを考慮して 表面被覆の塗替間隔を 20 年, 耐用年数を 15 年 と設定した. 補修対象とする山陽新幹線 RC 高架橋のかぶりを 30mm, 建設後 30 年 ( 最初の補修開始時点 ) での中性化深さを 15mm( 中性化残り 15mm, 中性化速度係数 b=2.74) とすると, 図 に示すように, 建設後 100 年経過時点の 70 年間で 5 年 3 回 =15 年間は遮断効果のない無補修の状態となる. しかし, 仮に補修を一切実施しない場合は, 図より建設後 53.2 年, つまり残り 23.2 年で中性化深さ 20mm( 中性化残りが 10mm) となることから,20 年間隔で表面被覆の塗替を実施すると, 建設後 100 年経過時点でも中性化残りが 10mm を上回ることがいえる. 言い換えると, 無補修の 5 年 3 回 =15 年で中性化の進行が 5mm 以下として, 安全率を考慮して 1 回 (5 年 ) あたり 1.5mm 以下が許容値と考えられる. このことから, 中性化阻止性を, 施工後 15 年は 0mm,20 年で 1.5mm と定めた. これより,2001 年から実施した試験施工における評価項目 規格値について, 表 に示し 43

49 た内容から, 表 に示す項目を削除し, 表 に示す試験を実施することとした 無補修被覆 20 年間隔 無補修の場合, 経年 53.2 年で中性化深さ 20mm に到達 中性化深さ (mm) 被覆 (20 年 ) 被覆 (20 年 ) 遮断 (15) (5) 遮断 (15) (5) 被覆 (20 年 ) 被覆 (20 年 ) 遮断 (15) (5) 遮断 (15) (5) 経年 ( 年 ) 図 中性化の進行予測 ( 無補修と表面被覆 20 年間隔との比較 ) 表 年に制定された表面被覆工法の試験方法 規格値のうち 2001 年の試験施工で削除した項目とその理由 No. 削除項目削除の理由 6 耐アルカリ性 室内試験で補完 7 遮塩性 室内試験で補完 8 耐水性 鉄筋腐食抑制効果を確認する補完的試験であり,No.2: 促進耐候性試験に集約 9 透水性 水遮断性試験 (JIS A 1404 建築用セメント防水材の試験方法 に準拠; 新規 ) に移行 10 碁盤目法 付着性能試験であるため,No.3: 付着性試験に統一 11 耐塩水噴霧性 山陽新幹線は飛来塩分を考慮しないので, 山陽新幹線対策としては不要 12 温冷繰返し試験 促進耐候性試験と同種の試験項目であるため,No.2: 促進耐候性試験に集約 13 熱膨張係数 寒暖によるコンクリートの伸縮に追従するか否かの指標. 追従しない場合は促進耐候性試験などで異常が出るため, 促進耐候性試験で補完 14 耐塩水性 No.8: 耐水性,No.11: 耐塩水噴霧性と同じ理由 15 塗膜の外観 No.2: 促進耐候性試験と重複 16 乾燥時間 メーカーの補修仕様書の手順を遵守することで, 他の試験を補完 44

50 表 年から実施した表面被覆工法の試験施工における試験項目 No. 規格項目試験方法 1 中性化阻止性 JIS A 1152( 中性化試験 ) および JIS A 1153( 促進中性化試験 ) 2 耐候性 JIS K ( 膨れ ),JIS K ( 割れ ),JIS K ( 式差 ), JIS K ( 白亜化 ),JIS K ( 光沢値 : 試験前水洗浄なし ) 3 付着性 JSCE-K 531( 表面被覆材の付着強さ試験方法 ) 4 酸素透過阻止性 製科研式フィルム ( 試験片 : モルタルに改良 ) 5 水蒸気透過性 JIS A ( ポリマーセメントモルタルの試験方法 - 透湿度試験 : 放湿による試験 ) 9 水遮断性 JIS A 1404( 加圧時間を 6 時間に変更 ) 4.3 試験施工概要試験施工は, 山陽新幹線高架橋における現地試験, および山陽新幹線高架橋より厳しい環境条件により試験体を用いた暴露試験を行い, 表面被覆工法の耐久性評価を実施した 試験実施工法各材料メーカーの提示する室内試験データが,4.2 で述べた要求性能を満足することを確認したうえで, 表 に示す 13 工法について実施した. 表 試験実施工法 No. 工法 主材成分 ( 膜厚 :μm) 上塗材成分 ( 膜厚 :μm) 1 E1 エポキシ系 (160) ふっ素系 (30) 2 E2 エポキシ系 (100) ふっ素系 (30) 3 E3 エポキシ系 (200) ふっ素系 (25) 4 E4 エポキシ系 (150) ふっ素系 (40) 5 E5 エポキシ系 (150) ポリウレタン系 (40) 6 E6 エポキシ系 (150) ふっ素系 (30) 7 E7 エポキシ系 (160) ポリウレタン系 (30) 8 S1 シリコーン系 ( ) シリコーン系 (30) 9 S2 シリコーン系 (1,000) シリコーン系 (40) 10 R1 ゴム系 (300) ポリエチレン系 (30) 11 U1 ポリウレタン系 (2,000) ハイブリッド (40) 12 C1 ポリマーセメント系 ( ) エマルション (75) 13 C2 ポリマーセメント系 (1,500) ポリウレタン系 (40) * 比較のため, 同時に無塗装試験体の暴露試験も実施 現地試験概要現地試験は, 岡山県内の山陽新幹線高架橋 ( 瀬戸内海から約 10km 入った内陸部に位置し, 降水量が少なく晴天日数の多い場所 ) において, 各材料メーカーの施工のもと実施した 暴露試験概要 45

51 山陽新幹線は大半の区間が内陸部に位置している. しかし, 暴露試験は, 促進させることを目的に, 環境条件が山陽新幹線より厳しい条件を選び, 温暖で降雨量や日照時間が多く, かつ海岸沿いに位置する, 和歌山県東牟婁郡串本町において実施した 試験実施内容現地試験は, 主に至近からの目視調査とし, 暴露試験は表 で示した試験項目を以下の要領で実施した. それぞれ試験開始から 1 年,3 年および 5 年後に各種調査を実施した. (1) 中性化試験 mm のコンクリート供試体 (W/C=70%) の全面に表面被覆を施した後に暴露を行い, 暴露 1 年,3 年および 5 年後に供試体を割裂して, フェノールフタレイン 1% 溶液を噴霧して中性化深さを測定した. ここでコンクリート供試体の W/C を 70% と, 山陽新幹線における設計時の耐久性から定まる W/C の最大値である 55% よりも大きくしたのは, 山陽新幹線 RC 構造物の中性化の進行が早い 1) ことなどを考慮したものである. (2) 促進中性化試験 (1) で割裂した供試体の割裂面をエポキシ樹脂でシールし, 促進中性化槽 ( 温度 30, 湿度 60%, CO 2 濃度 5%) に 1 ヶ月間暴露後, フェノールフタレイン 1% 溶液を噴霧して中性化深さを測定した. (3) 付着強度試験 mm の市販のコンクリート平板に表面被覆を施した後に暴露を行い, 暴露 1 年,3 年および 5 年後に JSCE-K 531 により付着強度を測定した. (4) 耐候性試験 (3) と同じ供試体を用いて, 膨れ(JIS K ) 割れ(JIS K ) を外観より観察し, また 光沢値 (JIS K : 試験前水洗浄なし ) 色差(JIS K ) 白亜化(JIS K ) を測定した. (5) 遮断性試験 φ18 10mm およびφ68 10mm のモルタル供試体に表面被覆を施した後に暴露を行い, 暴露 1 年,3 年および 5 年後に 酸素透過阻止性 ( 製科研式 : 改良 [ 試験片にモルタル使用 ]) 水遮断性 (JIS A 1404: 改良 [ 加圧 6 時間 ]) 水蒸気透過性(JIS A 1171: 放湿 ) を測定した. 4.4 試験結果および考察 現地試験結果高架橋における施工後 1 年での外観調査において,E4,S1 および U1 を除く 10 工法で, 図 に示すようにラーメン高架橋縦梁中央部に幅 0.1mm 以下の細かなひび割れが発生していた. 一方,4.4.3 で後述するが, 暴露 1 年後の供試体では, 現地試験でひび割れが発生した 10 工法のうち,C1 および R1 を除く 8 工法でひび割れや膨れなどの変状が見られなかった. このことから, 図 梁中央部における表面被覆材のひびわれ ( 現地試験 ) 46

52 梁部に発生したひび割れ表 中性化深さ試験 促進中性化試験結果は, 造膜過程および硬化後中性化深さ (mm) 促進中性化深さ (mm) の塗膜性能が, 列車走行に工法 1 年 3 年 5 年 1 年 3 年 5 年 よる細かな繰返し振動が E ひび割れの開口に追従で E きずに塗膜が疲労破断し E たものと推測される. E4 0 0 最大 最大 9.0 最大 6.0 E5 0 0 最大 最大 9.0 最大 3.2 施工後 3 年および 5 年で E 最大 5.0 最大 2.0 の外観調査では, 施工後 1 E 最大 2.7 年の調査よりもひび割れ S1 0 最大 5.0 最大 最大 6.0 最大 10.1 の本数や長さが増加して S2 0 0 最大 最大 3.9 いる工法もあった. 一方で, R S1 および U1 工法は施工後 U C 年でもひび割れが全く見 C られなかった. これは,S1 無塗装 最大 最大 14.0 工法が柔軟タイプの材料 であることや,U1 工法は膜厚が多いことによる膜厚効果によるものと考えられる. ただし,S1 工法には塗膜表面に汚れが目立っていた 暴露試験結果 (1) 中性化試験, 促進中性化試験 暴露試験における中性化試験, 促進中性化試験結果を表 に示す. 暴露 1 年後の中性化試 験, 促進中性化試験での中性化深さは 13 工法全ていずれも 0.0mm であった. 同様に暴露した無 塗装供試体は中性化試験で 表 付着強度試験結果 3.1mm, 促進中性化試験で 7.5mm 付着強度 (N/mm 2 ) 破壊/ 破断位置工法であったことから, 表面被覆に 1 ヶ月 1 年 3 年 5 年 よる中性化阻止性能が発揮され E1 3.3(K2) 4.3(K2) 5.4(K2) 4.6(K2) たと考えられる. E2 1.8(K2) 4.3(K2) 4.4(K2) 4.9(K2) E3 2.1(K2) 4.8(K2) 5.2(K2) 4.2(J) ただし, 暴露 5 年後では, 中 E4 2.9(K2) 3.9(K2) 3.9(K2) 3.7(K2) 性化試験で E4,E5,S1 および E5 2.1(K2) 4.6(K2) 5.2(K2) 4.8(K2) S2 の 4 工法で中性化の進行が認 E6 3.1(K2) 4.5(K2) 4.7(K2) 3.9(K2) められ, 促進中性化試験ではこ E7 3.1(K2) 4.2(K2) 4.2(K2) 5.7(K2) の 4 工法に E6,E7 を加えた 6 工 S1 0.6(D1) 0.7(D1) 0.7(D2) 不可 *(D1) 法で中性化の進行が認められた. S2 2.8(K2) 3.2(K2) 3.9(G/E) 3.8(K2) R1 2.5(F) 3.6(F) 3.1(D2) 3.3(D2) (2) 付着強度試験 U1 1.6(G) 1.6(G) 1.9(D2/F) 1.5(J) 暴露試験結果における付着強 C1 1.1(F) 2.2(F) 2.3(F) 2.4(F) 度試験結果を表 に示す. C2 1.3(F) 3.2(F) 3.6(D3/D1) 3.3(D2) 暴露 1 年後の付着強度は S1 工法 無塗装 - 以外の 12 工法で土木学会 表面 * 試験が出来なかったもの ** カッコ内は破壊 / 破断位置 ( 図 参照 ) 47

53 保護工法設計施工指針 ( 案 ) 4) A 接着剤 - 上塗塗膜間の界面破断 において定められている評価基準値 1.0N/mm 2 を上回り, 十分な付着強度を有していると考えられる. また, ほとんどの材料で材齢初期 ( 約 1 ヶ月 ) と比較して付着強度が大きくなっていた. これは既往の調査結果とほぼ同様であり, 造 B 上塗塗膜内の凝集破壊 C 上塗 - 主材 ( 中塗 ) 間の界面破断 D1 主材 ( 中塗 ) 塗膜内上層部の凝集破壊 D2 主材 ( 中塗 ) 塗膜内中層部の凝集破壊 D3 主材 ( 中塗 ) 塗膜内下層部の凝集破壊 E 主材 ( 中塗 )- 不陸調整材間の界面破断 F 不陸調整材内の凝集破壊 膜反応が継続し塗膜がさらに安定 G 不陸調整材 -プライマー間の界面破断したことや, 材齢の経過とともに H プライマー塗膜内の凝集破壊コンクリートの水和反応が進み, J プライマー - 基材間の界面破断コンクリート強度が増加したこと によるものと考えられる. ただし, 今回の付着強度は鉛直方向に力を K1 基材 (<1mm) の破壊 K2 基材 (>1mm) の破壊 加えた強度であり, 現実の塗膜の はがれ現象を直接評価したもので 図 付着強度試験での塗膜破壊 / 破断箇所の位置 はない. 暴露 3 年後の付着強度は, ほとんどが暴露 1 年後と同等もしくはそれ以上であったが, 暴露 5 年後の付着強度は,S1 工法を除き評価基準値を上回っているものの,13 工法のうち 8 工法で暴露 3 年後より若干ではあるが低下しており, 暴露 5 年の時点で塗膜が徐々に劣化する傾向が見受け られた. 材料による破壊もしくは破断位置の違いについては, 主材がエポキシ系のものを使用した工法 (E1~E7) は,E3 工法の暴露 5 年目のみプライマーと基材間の界面破断で, その他は全てコンクリ ート基材位置での破壊となった. 一方, 主材がエポキシ系以外のものは, 多くが不陸調整材内で の凝集破壊となった. これは, 材料の特性によるものと考えられ, 破壊もしくは破断位置の違い による付着強度の差異は特に見られなかった. (3) 耐候性試験 暴露 1 年後において,C1 工法に細かい割れ, S1 工法に著しい汚れ,R1 および U1 工法に膨れ が見られた. 暴露 3 年後では S2 工法に全面 5 割れが発生した. 暴露 5 年後は各工法とも暴 4 露 3 年後とほぼ同じ状態を示した. 暴露 1 年 また白亜化は, 暴露 1 年後において E2, 3 暴露 5 年 E7 および R1 の 3 工法で発生していたが, 暴 2 露 5 年後では 10 工法に増えた. 光沢保持率 1 0 は暴露 5 年後でほとんどの工法で 50% を下回 る結果となった. 暴露 1 年後と 5 年後におけ光沢保持率 (%) 150 る光沢保持率と白亜化の関係を図 に示 図 光沢保持率と白亜化の関係 すが, 塗膜自体が著しく汚れており, 色差が ( : S1) 白亜化 48

54 他の工法に比べて大きい S1 工法 ( 図 の 印 ) を除き, 白亜化した工法では光沢保持率が低下傾向にあり, 数値の特定は困難ではあるが両者に何らかの相関が見られることがわかった. 特に, 暴露 1 年後では光沢保持率が 70% を下回ったものに白亜化が見られた. しかし, 暴露 5 年後で E3 および S2 工法のように, 光沢保持率は 70% を下回っているが, 白亜化が見られないものもあるため, 長期にわたる屋外暴露試験の光沢保持率と白亜化との関係は今後も検討を続ける予定である. (4) 遮断性試験暴露試験結果における酸素透過阻止性, 水遮断性および水蒸気透過性の試験結果を表 に示す. 酸素透過阻止性は, 暴露 1 年後では E6 工法のみ酸素透過が見られ, その他は定量下限である mg/cm 2 day 以下であった. しかし, 暴露 3 年および 5 年後ではほとんどの工法で酸素透過が見られた. これは, 暴露 3 年および 5 年後に基盤モルタルの劣化が見られたことによる影響も考えられる. 暴露 5 年後の無塗装供試体では基盤の一部が欠損し, 測定条件である平面性を保つことができず測定できなかったが, 暴露 3 年後では, 塗膜が著しく汚れている S1 工法および塗膜に一部割れが見られた S2 工法以外は, 無塗装供試体より小さな値を示した. 水遮断性は, 暴露 1 年後で S1 工法が他に比べて大きい値を示し, 水遮断性に乏しい結果となった. 暴露 3 年および 5 年後において一部工法で塗膜に一部割れが見られたことにより測定不能となった以外は, 無塗装供試体より非常に小さな値であった. 水蒸気透過性は, 塗膜の内側 ( モルタル側 ) から水蒸気を透過させ, コンクリート中の含水率を小さくする度合を測定した. 暴露 1 年後に比べて, 暴露 3 年および 5 年後の値が大きな値を示した. これは暴露に伴い, 塗膜のみならず基盤の劣化の影響によることも考えられる. 塗膜に一部割れ 表 酸素透過性, 水遮断性, 水蒸気透過性試験結果 水蒸気透過性酸素透過性 (mg/cm 2 day) 水遮断性 (g) 工法 (mg/cm 2 day) 1 年 3 年 5 年 1 年 3 年 5 年 1 年 3 年 5 年 E * E * (2.14) E * E * E * E (8.27) E * S * * S * 不可 ** 不可 ** 不可 ** (2.66) 不可 ** 0.23 (2.88) 不可 ** R * U * C * C * (2.59) 不可 ** 0.39 (2.85) (8.48) 無塗装 不可 ** *: ( 定量下限値 ) 以下 **: 試験が出来なかったもの ( ): いくつかの試験片でひび割れが発生したもの 49

55 が見られた工法も参考値ではあるが同様の傾向も示した 試験結果のまとめ現地試験では,S1 および U1 工法を除く 11 工法で, 施工 5 年後までにラーメン高架橋縦梁中央部に微細なひび割れが発生していた. しかし, 現地試験でひび割れの発生しなかった 2 工法のうち,S1 工法は現地試験および暴露試験の両方で汚れが目立った. また, 現地試験では, 塗膜のはがれ現象は確認されなかったが, 暴露試験で中性化の進行や付着強度の低下が確認され, 鉛直方向から見た付着性能は劣ることがわかった. ただし, 中性化の進行については, 今後詳細な検討が必要と考えられる. 一方,U1 工法は暴露試験では膨れが見られたものの, それ以外の試験項目は良好であった. その他, 現地試験の外観調査でひび割れが発生していた工法でも, 暴露試験でひび割れが発生せず, かつ他の試験項目でも良好なものもあった. 今回, 実構造物よりも過酷な自然環境下に 5 年間暴露を実施した試験において, 中性化阻止性をはじめとした様々な耐久性等を評価することができたものと考えられる. ただし, 現地試験と暴露試験との相関関係については, 今回の試験結果からは明確な評価が困難であった. 今後は, 現地試験で確認されたひび割れの開口部の繰返し疲労による塗膜追従性能にも着目し, 今回明確にならなかった塗膜の材質あるいは膜厚と耐久性の関係や, 暴露試験との関連性についても検討が必要であると考えている. 4.5 試験結果に基づいた表面被覆工法の選定 5 年間にわたる現地試験および暴露試験の結果を受けて,4.2 で述べた性能を満足する, 山陽新幹線 RC 高架橋に適用する表面被覆工法を選定する試験方法およびその規格値を以下のとおりとした 試験方法工法を選定するために, 室内試験と暴露試験の 2 種類を実施する. 室内試験は, 新しい材料 ( 工法 ) の基本的な性能を早期に評価するために実施するものである. 一方, 暴露試験は, 実構造物に施工した場合の長期耐久性を評価するために実施するためのものである. 室内試験での規格項目とその規格値を表 に, 暴露試験での規格項目とその規格値を表 に示す に各項目の内容および決定した背景を示す. なお, 要求性能の中で中性化阻止性能が最も重要であり, 暴露 1 年後では全ての工法で中性化深さ 促進中性化深さが 0mm であったが, 暴露 3 年および 5 年後において中性化が見られたことから, 中性化阻止性のみ暴露 1 年,3 年および 5 年後に評価を行うこととした. 一方, 中性化阻止性以外の項目は, 各工法の試験結果の差異が暴露 1 年,3 年および 5 年後の各時点で大きな違いが見られなかったことや, 暴露 3 年および 5 年目の調査で基盤の劣化がみられ, 表面被覆材そのものの評価が正しくできないことが考えられ, 暴露 1 年後のみでの評価が妥当であると考え, 暴露 1 年後に評価を行うこととした 規格項目と規格値 (1) 中性化阻止性中性化阻止性に関わる試験項目として, 中性化阻止性そのもののほか, 酸素透過阻止性とした. (a) 中性化阻止性 50

56 表 室内試験方法と規格項目 規格項目 試験方法 規格値 中性化深さ 30,R.H. 60%,CO 2 濃度 5% の環境下で 28 日間促進後,JIS A 1152 平均値 0.0mm JSCE-K 511( キセノンランプ法 ) により 1,500 時間照射後, 以下により評価 JIS K ( 膨れ ) 異常なし JIS K ( 割れ ) 異常なし 促進耐候性 JIS K ( はがれ ) 異常なし JIS K ( 光沢保持率 ) 80% 以上 JIS K ( 色差 ) 3.0 以下 JIS K ( 白亜化 ) 0 または 1 付着性 JSCE-K 531( 標準状態試験体 ) 1.0N/mm 2 以上 酸素透過性 製科研式 : 改良 ( 試験片 : モルタル ) mg/cm 2 日以下 水遮断性 JIS A 1404: 改良 ( 加圧時間 :6 時間 ) 0.05g 以下 水蒸気透過性 JIS A ( 放湿 ) 0.03mg/cm 2 day 以上 ひび割れ追従性 JSCE-K mm ( 促進 )/0.6mm( 常温 ) 以上 耐アルカリ性 JIS K ( 飽和水酸化カルシウムを使 割れ 膨れ はがれ 軟化 用 ):30 日間浸漬 溶出 のそれぞれに異常なし 遮塩性 JSCE-E 530( 試験片 : モルタル ) mg/cm 2 日以下 表 暴露試験方法と規格項目 規格項目 * 試験方法規格値 中性化深さ ** 耐候性 暴露 1 年 /3 年 /5 年後に,30,R.H. 60%,CO 2 濃度 5% の環境下で 56 日間平均値 0.0mm 促進後,JIS A 1152 外観( 割れ, 膨れ, はがれ ) に著しい欠陥がなく, かつ 光沢保持率 色差 白亜化 のうち 2 項目以上が規格値を満足すること JIS K ( 膨れ ) JIS K ( 割れ ) JIS K ( はがれ ) JIS K ( 光沢保持率 ) ( 試験前水洗浄なし ) JIS K ( 色差 ) いずれも著しい欠陥がないこと 70% 以上 5.0 以下 JIS K ( 白亜化 ) 0,1 または 2 付着性 JSCE-K 531( 標準状態試験体 ) 1.0N/mm 2 以上 酸素透過性 製科研式 : 改良 ( 試験片 : モルタル ) mg/cm 2 日以下 水蒸気透過性 JIS A ( 放湿 ) 0.03mg/cm 2 日以上 ひび割れ追従性 JSCE-K mm 以上 試験施工において, 暴露 1 年目の中性化深さおよび促進中性化深さはどの工法も 0.0mm であったが,5 年目に一部工法でコンクリートの打設面と思われる一面から中性化の進展が見られた. これより, 中性化の進行の差異をより顕著にするため, 暴露試験の中性化阻止性では, 試験施工時と同様に供試体の W/C を 70% とし, 促進期間を 28 日から 56 日に倍増するとともに, 中性化の測定面を打設面以外の 3 面とした. (b) 酸素透過阻止性酸素透過阻止性は, 鉄筋腐食因子である酸素を阻止するだけでなく, 中性化因子である炭酸ガ 51

57 ス分子の大きさと酸素分子の大きさがほぼ等しいことから, 酸素を阻止することで炭酸ガスも阻止できるという概念で選定している. 試験施工において暴露 1 年後で酸素透過がみられた E6 工法は他の試験項目で特に問題がないことから, 規格値を mg/cm 2 day 以下とした. (2) 付着性付着性は, 土木学会 表面保護工法設計施工指針 ( 案 ) 4) において定められている評価基準値 1.0N/mm 2 を規格値として採用した. (3) 塗膜の耐久性塗膜の耐久性試験として, 耐候性試験を実施する. 室内試験では,JSCE-K 511 表面被覆材の耐候性試験方法 ( 案 ) のキセノンランプ法による促進耐候性試験を実施し, 土木学会 表面保護工法設計施工指針 ( 案 ) 4) において定められている評価基準値 1,500 時間を規格値として採用した. また, 促進耐候性試験と自然環境下との相関が明確でないことから, 暴露供試体による塗膜の耐候性も評価対象とした. 評価項目は 外観 光沢保持率 色差 白亜化 の 4 項目とした. (a) 外観塗膜の耐久性を直接評価するもので, 特に塗膜の割れや膨れは耐久性を著しく低下させることから, 割れや膨れを重点的に目視により評価する. (b) 光沢保持率 4.5.2(3) の暴露試験の結果から, 暴露 1 年後の光沢保持率の規格値を 70% 以上とした. (c) 色差暴露 1 年後の結果から, 著しい汚れがあった工法以外は概ね 5 以下であったことから, 暴露 1 年後の色差の規格値を 5 以下とした. (d) 白亜化暴露 1 年後に白亜化が確認された 3 工法の値が等級 3~5 であったことから, 暴露 1 年後の白亜化の規格値を等級 0,1 または 2 とした. (4) 鉄筋腐食抑制表面被覆工法の本来の目的である鉄筋腐食抑制については, 水遮断性 水蒸気透過性 ひび割れ追従性により評価することとした. (a) 水遮断性暴露 1 年後の結果,1 工法を除き透水量が 0.05g 以下であったため, 規格値を 0.05g 以下とした. (b) 水蒸気透過性 RC 高架橋に貫通ひび割れが生じている場合は, 内部の水分を放出することが要求される. また, 降雨の影響を受ける部分に表面被覆工法を施工する場合であっても, 下地コンクリートが乾燥した状態を確認してから施工を行うことや, 外部からの水分の供給があっても, 表面から 20mm より深い範囲では水分含有量が変化しないとされており 5), 試験施工と同様, 内部に蓄積された水分を放出する性能を重視することとした. 暴露 1 年後の結果, 水蒸気透過性の最小値 (E3 および R1 工法 ) が 0.03mg/cm 2 day であり, かつ E3 工法は他の試験結果が良好であったことから, 規格値を 0.03mg/cm 2 day 以上とした. (c) ひび割れ追従性平成 13 年の試験施工開始時には, 表面被覆にひび割れが生じたとしても部分的で, 工法全体と 52

58 しての中性化阻止性は損なわれないと考え, ひび割れ追従性能を検討項目から除外していた. しかし, 高架橋での現地試験施工において, 図 に示すように被覆材表面のひび割れが多くの工法で発生していたことや, 列車荷重による繰返し振動等を考慮して, 工法選定試験ではひび割れ追従性に関する試験を追加した. 規格値は, 東海道新幹線コンクリート構造物維持管理標準で定める, 室内試験では常温で 0.6mm 以上, および促進試験後で 0.3mm 以上とし, 暴露試験では暴露 1 年後で 0.3mm 以上とした 4). なお, ここで定めた規格値については, 今後データを蓄積して検討を行っていきたい. 4.6 本章のまとめ山陽新幹線 RC 高架橋に適用する表面被覆工法について 5 年間の試験施工を行い, 要求性能を確認するため, 試験施工開始から 1 年,3 年および 5 年後に各種調査を実施した. その主な結果は以下のとおりである. 1 暴露 1 年後の中性化試験および促進中性化試験における中性化深さはいずれも 0mm であった. 一方無塗装供試体では中性化の進行が見られたことから, 表面被覆による中性化阻止性能が発揮されたと考えられる. しかし, 暴露 5 年後において中性化の進行が見られた工法が 13 工法中 4 工法あった. 2 暴露 1 年後の光沢保持率が 70% を下回ったものに白亜化が見られた. 3 高架橋での施工 1 年後の外観調査において, 多くの工法でラーメン高架橋縦梁中央部に微細なひび割れが発生していた 4 今回実構造物よりも過酷な自然環境下で 5 年間実施した暴露試験において, 中性化阻止性をはじめとした様々な耐久性等を評価することが出来たと考えられる. ただし, 試験結果から現地試験と暴露試験の相関関係を明確に評価することは困難であった. また, 調査結果を受けて, 表面被覆工法の要求性能を確保するための試験項目, 試験方法や規格値を定めた. 主な内容は以下のとおりである. 1 試験は室内試験と暴露試験の 2 種類実施する. 2 暴露試験の中性化阻止性は暴露 1 年,3 年および 5 年後で評価を行うこととし, 付着性, 塗膜の耐久性および鉄筋腐食抑制性能は暴露 1 年後に評価する. 3 暴露試験の中性化阻止性は, 供試体の W/C を 70% とし, 暴露後の中性化促進期間を 56 日間とする. 4 規格値は, 暴露試験で得られた値を元に決定した. また, 試験施工で実施した試験項目に加え, ひび割れ追従性試験を追加することとした. 今回,5 年間の現地試験および暴露試験を実施し, 表面被覆工法を評価する試験方法および規格値について, 一定の整理は出来たと考えている. しかし, 今回の試験で残っている問題点として, 以下のことがあげられる. 1 暴露試験による促進劣化と実構造物での施工位置における経年劣化との関係が不明確特に, 図 のモデルで用いた, 中性化阻止性が施工後 15 年間は 0mm, かつ 20 年で 1.5mm としたが, 実構造物での実際の中性化進行との比較 2ひび割れ追従性による評価 ( 塗膜追従性能 ) 3 塗膜の材質あるいは膜厚と耐久性の関係, 暴露試験との関連性 53

59 これらについては, さらに継続して実施中の暴露試験により, 引き続きデータを蓄積し, 山陽新幹線 RC 高架橋に適用する表面被覆工法のさらなる性能向上を図る必要があると考えている. *************** 第 4 章参考文献 1) 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会 : 山陽新幹線コンクリート構造物検討委員会報告書, ) 藤原申次, 奥井明彦, 荒巻智 : コンクリート構造物における表面処理工法に関する研究, 土木学会第 55 回年次学術講演会概要集,Ⅴ-403,pp , ) 例えば, 奥平幸男, 川田秀夫, 藤松康裕, 松室能生, 羽渕貴士 : 桟橋上部工に適用された塩害劣化補修工法の耐久性評価について, 複合劣化コンクリート構造物の評価と維持管理計画に関するシンポジウム,( 社 ) 日本コンクリート工学協会,pp , )( 社 ) 土木学会 : 表面保護工法設計施工指針 ( 案 ), コンクリートライブラリー 119, )Jocken Stark and Bernd Wicht: Dauerhaftigkeit von Beton, Birkhäuser,

60 第 5 章鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート構造物の補修工法適用性に関する研究 5.1 はじめに第 3 章で, 山陽新幹線を中心とした RC 鉄道高架橋の補修工法について述べた. 第 4 章では, その中で表面被覆工法について取り上げた. 表面被覆工法は適用可能な構造物の変状が, 中性化残りが 10mm ないし 15mm 以上といった, 比較的軽度, すなわち潜伏期あるいは進展期前半の状態に対して適用可能と考えられる. しかし, 構造物の状態によっては, 変状がかなり進行してから補修している, あるいは補修せざるを得ないケースも当然想定される. その場合には, 断面修復工法によることが多いが, 構造物の置かれている環境が厳しいなどの場合は, 電気化学的防食工法が適用されるケースがある. 断面修復工法は,2.3.1(3) で述べたように, 劣化因子を取り除いてから代替の材料を当初の断面寸法に復旧し, コンクリート構造物の耐久性能を回復または向上させる工法である. しかし, 近年補修した箇所と未補修箇所との境界部において, マクロセル腐食による再劣化が生じる可能性があることがよく知られている 1) など. かつ, 再劣化の原因はいまだ不明瞭な点も多い. 一方で, マクロセル腐食による再劣化防止のための補修方法の一つとして, 電気防食工法が用いられることがある で述べたように, 電気防食工法は外部電源方式と流電陽極方式とに分類されるが, 日本では外部電源方式が主流となっている. これは, 電源の管理が簡単なことと, 陽極材の交換が容易に出来ることによるものと考えられる. しかし, 電源装置の維持管理にかかる費用は少なくないため, 流電陽極方式にもメリットは少なくないと考えられる. そこで, 本章では, 以下の 3 種類の補修工法による供試体実験を行い, 補修によるマクロセル腐食の影響や, それぞれの補修工法の適用性評価を行った. 1 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への部分断面修復工法の適用性 (5.2) 2 塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への犠牲陽極材を用いた電気防食工法の適用性 (5.3) 3 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物へのセメント系電気防食材料を用いた電気防食工法の適用性 (5.4) 5.2 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への部分断面修復工法の適用性本節では, 内的塩害により劣化した RC 構造物を断面修復した際に, 打ち継ぐ補修材の違いによるマクロセル腐食進行の違いについての検証を行った 供試体の概要図 に示すように, mm の角柱供試体に長さ 900mm の D13 鉄筋を, かぶりが新幹線鉄筋コンクリート構造物設計要項 ( 案 ) で定める 25mm( スラブ部材 ) と, かぶり不足を想定した 10mm の 2 水準となるように打設面と底面の中間で供試体側面に配置し, 基材部と補修材部の 2 配合に分けたものを作製した. 作製した供試体の一覧を表 に示す. 各配合 5 体ずつ作製した. 鉄筋はコードをつけて自然電位 分極抵抗等が測定できるようにした. 打設方法は, 打設 1 日目に基材部を打設し, 打設 2 日目にあらかじめ打継ぎ面をワイヤーブラ 55

61 [A]( 基材部 ) [B]( 補修材部 ) 図 供試体形状 ( 単位 :mm) シで粗くした後, 補修材部を打継いだ. 養生 表 供試体一覧 方法は湿潤養生とし, 養生期間は 2 週間とし 名称 [A] 基材部 [B] 補修材部 た. 養生終了後, 打設面および鉄筋の出てい Cl=3, PCM-S1 PCM-S1 る 2 側面の, 計 3 面をエポキシ樹脂でコーテ Cl=3, PCM-S2 PCM-S2 ィングした. その後, 室内で暴露をおこなっ W/C=70%, Cl=3, PCM-AQ PCM-AQ たが, さらに腐食を促進させるために, 材齢 Cl - =3kg/m 3 Cl=3, FAM FAM 約 4 ヶ月後からは室内にて毎日 1 回の散水暴 Cl=3, OCM OCM 露に, 材齢約 1 年後からは恒温室 ( 設定温度 20±2 ) での暴露に切り替え, 材齢約 2 年 2 ヶ月まで実験を継続した. 使用材料は, 基材部に用いたコンクリートについては W/C=70%, スランプ 8±2.5cm, 空気量 4.5±1.5% とし, 塩化物イオン (Cl - ) を 3kg/m 3 混入した. 補修材部に用いたモルタルについては, 以 下の 5 種類とした ( 配合を表 に示す ). (a)[pcm-s1]: 市販の SBR 系ポリマーセメントモルタル (b)[pcm-s2]:(a) とは別の, 市販の SBR 系ポリマーセメントモルタル (c)[pcm-aq]: アクリル系ポリマーセメントモルタル+ 塩分吸着剤含有アクリル系ポリマーセメ ント系防錆モルタルを併用 (d)[ocm]: 混和材を用いないモルタル (e)[fam]: フライアッシュⅡ 種を [OCM] の細骨材内割 10% 置換で混和したモルタル 表 モルタルの配合一覧 単位量 (kg/ m 3 ) 単位量 (kg/ m 3 ) 配合 W 粉体 液体 配合 W C FA S AE 剤 PCM-S , FAM ,251 C 0.4% PCM-S , OCM ,390 0 PCM-AQ ,800 0 *PCM-AQ1: ポリマーセメントモルタル PCM-AQ ,979 0 *PCM-AQ2: 防錆モルタル 実験項目 (1) 鉄筋腐食モニタリング鉄筋の腐食状況を経時的にモニタリングすることにより, 打継ぐ補修材の違いによるマクロセル腐食抑制効果の違いについて検討した. モニタリングは, 自然電位 分極抵抗 ( 交流法 ) コンクリート抵抗の 3 項目について測定した. 56

62 照合電極には銀塩化銀電極 (Ag/AgCl) を用いた. 測定位置は, かぶり 10mm およびかぶり 25mm の各々の側面部において基材部中央, 打継ぎ部 ( 基材部側 ) および補修材部中央の計 6 箇所とした. (2) 腐食面積率材齢約 1 年を経過した時点で, 各配合の 5 体中, 自然電位および分極抵抗の値から最も腐食が進行していると推察される 2 体ずつの供試体の鉄筋をはつり出した. さらに, 材齢約 2 年 2 ヶ月を経過した時点で, 残り 3 体ずつの供試体の鉄筋をはつり出した. はつり出した鉄筋は, 目視観察を行うとともに, 基材部と補修材部の鉄筋腐食の違いを把握するために, 打継部で切断し, さらに端部からの水分の浸透による影響を除去するため, 突き出した鉄筋を含む部分 ( 端部から約 150mm) を切断した. その後, はつり出した鉄筋の腐食状況をスケッチした. そのスケッチを 10 10mm のメッシュに区切り, それぞれのメッシュでの腐食面積を 10mm 2 ピッチで表し, 鉄筋全体での腐食面積率を計算した. (3) 腐食量 (2) で供試体からはつり出して, 両端部から約 150mm ずつを取り除き, 打継ぎ部で切断した鉄筋を, 材齢約 1 年および材齢約 2 年 2 ヶ月において,JCI-SC1 コンクリート中の鋼材の腐食評価方法 に準じ,60 の 10% クエン酸二アンモニウム [(NH 4 ) 2 HC 6 H 5 O 7 ] 水溶液に 24 時間浸漬後, 水洗いを行ってから鉄筋重量を測定した. ここで, 両端部約 150mm を切断したのは, 暴露により両端部からの水分の浸入の影響と推測される腐食が見られ, この腐食は補修材の打継ぎと直接関係がないと考えたためである 実験結果 (1) 鉄筋腐食モニタリング ( イ ) 自然電位材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における自然電位の測定結果を図 に示す. 自然電位測定値による鉄筋の腐食性評価は,ASTM C ) を用いた. 材齢約 1 ヶ月では, すべての補修材を用いた供試体で, 基材部と補修材部の自然電位の差は小さく, かぶりの違いによる自然電位の差も小さかった. 材齢約 1 年で, すべての補修材を用いた供試体で, 基材部と補修材部の自然電位に差が見られ基材部の方が卑となった. かぶり 10mm においては基材部および打継ぎ部近傍の自然電位はすべての補修材を用いた供試体で不確定領域にあるが, 補修材部の自然電位は補修材に [PCM-AQ] および [FAM] を用いた供試体は非腐食領域にある. かぶり 25mm においては基材部および補修材部の自然電位は不確定領域にあるが, 補修材部では非腐食領域にある. 補修材部の違いによる比較では, 材齢約 1 年でかぶり 10mm においては基材部 打継ぎ部近傍では補修材に [FAM] を用いた供試体の自然電位は補修材に [PCM-AQ] を用いた供試体よりも卑となったが, 他の補修材を用いた供試体よりも貴となった. 補修材部では補修材に [PCM-AQ] および [FAM] を用いた供試体が最も貴となり, 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体が最も卑となった. かぶり 25mm においても, 補修材に [FAM] を用いた供試体の補修材部の自然電位が最も貴となり, 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体が最も卑となった. 材齢初期では補修材に [FAM] を用いた供試体の自然電位は, 他の補修材を用いた供試体と差は見られなかったが, 材齢約 1 年において最も貴となったことから, 材齢が経過しポゾラン反応が進展して, 酸素や水分の浸透が抑制され腐食 57

63 左端からの距離 (mm) 左端からの距離 (mm) 自然電位 (mv) 材齢 1 年かぶり 10mm 非腐食領域不確定領域腐食領域 自然電位 (mv) 材齢 1 年かぶり 25mm -400 基材部 補修材部 -400 左端からの距離 (mm) 左端からの距離 (mm) 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 10mm 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 25mm 0 0 自然電位 (mv) 自然電位 (mv) 図 自然電位 PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 反応が抑制されたものと考えられる. 材齢約 2 年 2 ヶ月では, 材齢 1 年の時点と比べて, 全ての供試体で基材部と補修材部の自然電位の差が小さくなった. これは, 基材部の自然電位が全て非腐食領域もしくは不確定領域にあることから, マクロセル腐食が発生しにくい状況にあり, これにより, 補修材部中の自然電位が基材部中の自然電位の値に近づいていることが考えられる. かぶり 10mm においては補修材に [OCM] を用いた供試体の基材部 打継ぎ部近傍の自然電位が腐食領域にあるが補修材部は不確定領域にある. 他の補修材を用いた供試体では 基材部および補修材部の自然電位は不確定領域にある. 一方, かぶり 25mm においては基材部の自然電位は補修材に [PCM-S2] を用いた供試体は非腐食領域にある. 打継ぎ部近傍の自然電位は補修材に [PCM-S1] を用いた供試体のみ不確定領域にあるが, 他の補修材を用いた供試体は非腐食領域にある. 補修材部の自然電位はすべての補修材を用いた供試体で非腐食領域にある. 以上より, 自然電位の面から見た場合, かぶり 10mm 25mm とも, 腐食はあまり進行していないものと考えられる. 補修材部の違いにより比較すると, 材齢約 2 年 2 ヶ月では材齢約 1 年の時点と同様に, かぶり 10mm においては打継ぎ部近傍では補修材に [OCM] を用いた供試体の自然電位は最も卑となった. 補修材部では, かぶり 10mm および 25mm で補修材に [FAM] を用いた供試体が最も貴となり, ポゾラン反応が進展して腐食反応が抑制され, 自然電位が貴になったと考えられる. 補修材に [PCM-AQ] を用いた供試体は, 補修材部が最も卑であるが, 自然電位は不確定領域にある. また, 基材部と補修材部の電位差を起電力としてマクロセル回路が形成されるといわれているが, 基材 58

64 10 左端からの距離 (mm) 材齢 1 年かぶり 10mm 腐食判定基準 10 左端からの距離 (mm) 材齢 1 年かぶり 25mm 腐食速度 (μa/cm 2 ) 中 ~ 高 低 ~ 中 腐食なし 腐食速度 (μa/cm 2 ) 左端からの距離 (mm) 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 10mm 左端からの距離 (mm) 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 25mm 腐食速度 (μa/cm 2 ) PCM-S1 PCM-S2 基材部補修材部 PCM-AQ FAM 0.01 OCM 腐食速度 (μa/cm 2 ) 1 図 腐食速度部と補修材部の電位差が見られないため, アクリル系ポリマーおよび防錆モルタルによるマクロセル腐食抑制効果が得られたと考えられる. ( ロ ) 腐食速度材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における分極抵抗 ( 交流インピーダンス法 ) の測定結果を用いて求めた腐食速度を図 に示す. ここで, 腐食速度は, 見かけの分極抵抗の測定値 Rct (Ω) と鋼材の被測定表面積 A(=8cm 2 ) の積を鉄筋単位表面積あたりの分極抵抗 Rct(Ωcm) とし, 腐食速度 Icorr を式 [2.2.2] より求めた. ただし, 式 [2.2.2] 中の K 値は 0.026V 3) とした. 腐食の判定は,CEB による判定基準 4) を用いた. 材齢約 1 年で, かぶり 10mm では補修材に [OCM] を用いた供試体は, 打継ぎ部近傍で最も大きく, 次に補修材に [PCM-S1] を用いた供試体の腐食速度が大きい値を示した. 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体の腐食速度は基材部, 打継ぎ部近傍で大きく, 補修材部で最も小さい値を示した. かぶり 25mm においても腐食速度の大小はかぶり 10mm と等しい. 材齢約 2 年 2 ヶ月では, かぶり 10mm, かぶり 25mm ともに補修材に [PCM-S1],[PCM-S2] および [OCM] を用いた供試体の基材部および打継ぎ部近傍の腐食速度が大きくなった. これは, 材齢約 1 年では室内暴露 ( 外気温とほぼ等しい ) で冬期であり気温が低かったのに対し, 材齢約 2 年 2 ヶ月では恒温室暴露 (20±2 ) であったために, 材齢約 1 年の時点に比べコンクリート中の鉄筋の腐食環境が厳しかったものと考えられる. 一方, 補修材に [PCM-AQ] および [FAM] を用いた供試体 59

65 100 材齢 1 年かぶり 10mm 100 材齢 1 年かぶり 25mm コンクリート抵抗 (kω) 10 1 コンクリート抵抗 (kω) 左端からの距離 (mm) 左端からの距離 (mm) 100 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 10mm 100 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 25mm コンクリート抵抗 (kω) 左端からの距離 (mm) コンクリート抵抗 (kω) PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 左端からの距離 (cm) 図 コンクリート抵抗の基材部および打継ぎ部近傍の腐食速度は小さくなった. これは, フライアッシュによるポゾラン反応およびアクリル系ポリマーによって補修材部の水分および酸素の供給が減少し, カソード反応が制限されることでマクロセル腐食が抑制されたものと考えられ, 前出の自然電位の結果と相関が見られる. ( ハ ) コンクリート抵抗材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における基材部と補修材部のコンクリート抵抗の測定結果を図 に示す. 材齢約 1 年では, 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体は, 補修材部のコンクリート抵抗が基材部よりかなり大きい値となったが, 他の補修材を用いた供試体で, 基材部および補修材部のコンクリート抵抗に顕著な差はない.[PCM-S2] に含まれている SBR 系のポリマーが他の補修材に含まれているポリマーより抵抗が大きい可能性が考えられるが, ポリマーそのものの抵抗の測定を行っていないので, 今後検討を加える必要がある. また, このことと, 後述する (2) での材齢約 1 年では [PCM-S2] の補修材部における腐食面積率が他に比べてかなり小さいことと相関があると考えられる. 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体を除くと, 補修材に [FAM] を用いた供試体のコンクリート抵抗が最も大きくなっている. これは, 前出の自然電位の結果と同様に, フライアッシュの 60

66 ポゾラン反応によってコンクリートが密実になったためとも考えられる. なお, コンクリート抵抗のかぶりによる違いは, かぶり 10mm がかぶり 25mm より小さい値となった. 材齢約 2 年 2 ヶ月では, すべての供試体のコンクリート抵抗が大きくなったが, 補修材の違いによる大小は材齢約 1 年の時点と変わらなかった. (2) はつり出した鉄筋の目視観察および腐食面積率供試体中に埋め込んでいた鉄筋をはつり出し, 目視観察すると, 材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月において, どの供試体においても, 基材部では, 鉄筋のかぶり側で浅い孔食が見られたが, 断面欠損は軽微であり, かぶりの反対側でも表面的な腐食であった. 材齢約 1 年では, 補修材に [OCM] を用いた供試体が最も腐食が大きく, 次いで補修材に [PCM-S1] を用いた供試体が大きかった. 材齢約 2 年 2 ヶ月でも, 補修材に [OCM] および [PCM-S1] 供試体の腐食が大きかった. すべての供試体で材齢の経過とともに腐食の進行は見られたが, 腐食は軽微であった. 補修材に [FAM] を用いた供試体は材齢約 1 年ではほとんど腐食が見られなかったが, 材齢約 2 年 2 ヶ月では腐食範囲が広がっていた. かぶりによる違いは, かぶり 10mm のほうがかぶり 25mm よりも腐食していた. 補修材に [OCM] および [PCM-S1] を用いた供試体は, 打継ぎ部での軽微な腐食が見られたが, これは打継ぎ部からの水分や酸素の浸入によるものと考えられる. また, 図 のように, かぶり 10mm では基材部側で打継ぎ部近傍ではなく, 打継ぎ部から 7~15cm 程度離れた位置での腐食が目立ち, 打継ぎにより発生すると想定されたマクロセル腐食による打継ぎ部近傍での鉄筋腐食は顕著でなかった. これは, かぶりが 10mm と小さく, かつコンクリートの W/C が 70% と大きいことから, マクロセル腐食が発生する前に, 塩害による鉄筋腐食が発生したものと推測される. 材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における供試体中の鉄筋の腐食面積率を図 に示す. 目視観察では, 補修材部側の鉄筋でいずれの供試体においてもほとんど腐食が見られなかったので, 基材部側の鉄筋のみ 5cm ごとに分割して腐食面積率を示した. 腐食面積率は, 材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月で補修材に [OCM] を用いた供試体は, 打継ぎ部から 10~15cm の位置で他の位置に比べて大きくなった. 一方, 補修材に [PCM-S2],[PCM-AQ] および [FAM] を用いた供試体では, 打継ぎ部からの水分の浸入はあまり見られなかったことから, 打継ぎ部でのマクロセル電流減少は少ないものと想定され, マクロセル腐食抑制効果が見られたものと考えられる. Cl=3, OCM Cl=3, PCM-S1 図 鉄筋腐食状況写真 ( 材齢約 2 年 2 ヶ月 ) 打継ぎ部 61

67 腐食面積率 (%) 材齢 1 年かぶり 10mm 20~25 15~20 10~15 5~10 0~5 打継ぎ部からの距離 (cm) 腐食面積率 (%) 材齢 1 年かぶり 25mm 20~25 15~20 10~15 5~10 0~5 打継ぎ部からの距離 (cm) 腐食面積率 (%) 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 10mm 20~25 15~20 10~15 5~10 0~5 打継ぎ部からの距離 (cm) 腐食面積率 (%) 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 25mm 20~25 15~20 10~15 5~10 0~5 打継ぎ部からの距離 (cm) PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 図 腐食面積率 ( 基材部 ) 1 材齢 1 年かぶり 10mm 1 材齢 1 年かぶり 25mm 腐食量 (g/cm 2 ) 0.5 腐食量 (g/cm 2 ) PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 0 PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 1 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 10mm 1 材齢 2 年 2 ヶ月かぶり 25mm 腐食量 (g/cm 2 ) 0.5 腐食量 (g/cm 2 ) PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 図 腐食量 ( 基材部 ) (3) 鉄筋の腐食量材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における基材部の鉄筋の腐食量を図 に示す.(2) より, 目視観察による補修材部の鉄筋はほとんど腐食していなかったので, 材齢 1 年では最も質量減少の小さい, 補修材に [PCM-S2] を用いた供試体のかぶり 10mm 側の補修材部鉄筋の腐食量を 0 として, 62

68 それ以外の鉄筋の腐食量は [PCM-S2] のかぶり 10mm 側の腐食量との差で表した. 材齢 2 年 2 ヶ月では補修材に [FAM] を用いた供試体のかぶり 10mm 側の補修材部鉄筋の腐食量を 0 として, それ以外の鉄筋の腐食量は差で表した. 材齢約 2 年 2 ヶ月における腐食量は材齢約 1 年に比べ減少していた. これは, 材齢約 1 年の時点で腐食が進行していると推察された供試体を各 5 体のうち 2 体を選んで鉄筋をはつり出したために, 腐食があまり進行していなかった供試体が残り, 材齢約 1 年で鉄筋のはつり出しを行わずに残った供試体の腐食が進行しなかったため, 材齢の経過とともに腐食量が減少したような結果が得られたものと考えられる. 補修材の違いによる腐食量の大きな違いは見られなかった. 材齢約 1 年では, かぶり 10mm では補修材に [OCM] を用いた供試体が基材部 補修材部とも 5 種類の中で一番大きな腐食量である. 補修材に [FAM] を用いた供試体の基材部の腐食量は,5 種類の中で最も小さな値を示している. しかし, かぶり 25mm では, 補修材に [FAM] を用いた供試体の腐食量は,5 種類の中で最も大きな値となり, かつかぶり 10mm のものより若干多くなった. これは, 補修材とはあまり関係なく, 基材部中の Cl - による腐食によるものと推定される. 材齢約 2 年 2 ヶ月では, かぶり 10mm では補修材に [FAM] および [OCM] を用いた供試体の基材部の腐食量が最も大きくなった の目視観察より, マクロセル腐食による鉄筋腐食は顕著ではなく, 基材部中の Cl - による腐食によるものと推定される. かぶり 25mm では, 補修材による違いは見られなかった 実験結果に基づく各手法の比較 (1) 自然電位と腐食速度の比較材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月での基材部の 2 点において測定した自然電位と分極抵抗から求めた腐食速度の関係を図 に示す かぶり 10mm では基材部および打継ぎ部近傍の自然電位が卑になるほど腐食速度が大きい値を示し, 相関関係にあると考えられる. かぶり 25mm においても相関関係があるようにも見受けられるが, かぶり 10mm のものほど顕著ではないと推察される. 10 かぶり 10mm 10 かぶり 25mm 腐食速度 (μa/cm 2 ) 1 腐食速度 (μa/cm 2 ) 1 PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 系 自然電位 (mv) 自然電位 (mv) -400 図 自然電位と腐食速度の関係 63

69 腐食面積率 (%) かぶり 10mm 腐食面積率 (%) かぶり 25mm PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 腐食量 (g/cm 2 ) 腐食量 (g/cm 2 ) 図 腐食量と腐食面積率の関係 かぶり 10mm かぶり 25mm 腐食速度 (μa/cm 2 ) 1.00 腐食速度 (μa/cm 2 ) 1.00 PCM-S1 PCM-S2 PCM-AQ FAM OCM 系 腐食量 (g/cm 2 ) 腐食量 (g/cm 2 ) 図 腐食量と腐食速度の関係補修材の違いでは, かぶり 10mm では補修材に [PCM-S1],[PCM-S2] および [OCM] を用いた供試体は, 同様の傾向を示し, 自然電位の値の変動は少ないが, 腐食速度の値はばらつきが見られた. 補修材に [PCM-S1] および [PCM-S2] を用いた供試体は, 補修材に [OCM] を用いた供試体に比べて, 自然電位および腐食速度が小さくなったことから,SBR 系ポリマー混入によるマクロセル腐食抑制効果が見られたと考えられる. 一方, 補修材に [PCM-AQ] および [FAM] を用いた供試体は自然電位が卑となっても, 腐食速度に大きな違いは見られなかったことから, アクリル系ポリマーおよびフライアッシュ混入によるマクロセル腐食抑制効果も見られたと考えられる. かぶり 25mm ではかぶり 10mm と同様の傾向となった. (2) 腐食量と腐食面積率の比較材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における基材部の腐食量と腐食面積率の関係を図 に示す. 今回の実験では, 腐食量がそれほど大きくないため, 明確な相関は見られなかった. (3) 腐食速度と腐食量の比較 64

70 材齢約 1 年および約 2 年 2 ヶ月における基材部の腐食量と腐食速度の関係を図 に示す. 腐食量が大きいほど, 腐食速度が大きくなると考えられたが, 今回の実験では,(2) と同様に, 腐食量がそれほど大きくないため, 明確な相関は見られなかった 本実験のまとめ以下に, 本実験で得られた主な結果を要約する. 1 補修材部にフライアッシュ混入モルタルを用いた場合, ポゾラン反応により他の補修材を用いた場合と比べて自然電位が貴になり, コンクリート抵抗が大きくなった. しかし, 腐食面積率および腐食量が他の補修材を用いた供試体を比べて小さくなることはなかった. 2 補修材部にアクリル系ポリマーセメントモルタルを用いた場合, 基材部において他の補修材を用いた場合より自然電位が貴になり, 腐食速度が小さな値を示した. しかし, 腐食面積率および腐食量が他の補修材を用いた供試体と比べて小さくなることはなかった. 3 目視観察の結果より, いずれの供試体もマクロセルによる顕著な腐食が予想された打継ぎ部近傍の鉄筋腐食は顕著でなかった. 4 今回の実験で得られた腐食量が小さかったため, 自然電位等の電気化学的測定結果, 腐食面積率, 腐食量に明確な相関は見られなかった. 今回の実験では, かぶり 10mm 側の基材部中の鉄筋が初めに腐食したこともあり, 補修材の違いによる補修後の鉄筋腐食抑制効果の差がほとんど現れなかった. これは, コンクリートの W/C が 70% でかつ塩化物イオンを 3kg/m 3 混入して練り混ぜたことと, かぶりが 10mm と小さいことから, マクロセル腐食の影響よりも, 塩害により生じた鉄筋腐食による影響, すなわちミクロセルによる影響のほうが卓越していたと推測される. 一方, かぶりを 25mm 確保した側の鉄筋には, 打継部近傍を含め顕著な腐食が見られなかった. これは, 材齢 2 年 2 ヶ月の範囲では腐食が発生するまでに至らなかったと推定される. さらに, かぶり 10mm 25mm とも, 打継部近傍での腐食が発生しなかった. 以上より, 本実験の範囲内では, 今回使用した 5 種類の補修材料全てに, 打継部近傍に発生すると推定されたマクロセル腐食に対して抑制効果があったと言える. また, ミクロセルによる影響のほうがマクロセルよりも卓越していると考えられる. ただし, かぶり 25mm 側の鉄筋腐食がほとんど発生しなかったことから, 補修材料の違いによる腐食抑制効果の差を明確にすることが出来なかった. 今後の課題として, 腐食が進行した際のマクロセル腐食抑制効果について, さらに検討を加える必要があると考えている. 65

71 5.3 塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物への犠牲陽極材を用いた電気防食工法の適用性中性化や塩害に起因する鉄筋腐食により劣化した RC 構造物の性能回復のために, 部分断面修復工法などの修繕方法が取り入れられている. しかし, 補修した箇所と未補修箇所との境界部において, マクロセル腐食による再劣化が懸念されている. 再劣化抑制のための修繕方法の一つとして, 亜鉛を犠牲陽極材として用いた流電陽極方式の電気防食工法がある. この工法を用いた実 5)6) 験などによると, 部分断面修復を行う際に, 犠牲陽極材を用いることで, 防食回路が形成され, マクロセル腐食を防止することが可能である 6) とされているが, その長期耐久性や犠牲陽極材が受け持つ防食範囲については未解明の部分が多い. そこで, 本節では, 塩害により劣化した鉄筋コンクリート部材の補修に対し, 断面修復材中の鉄筋に亜鉛を使用した犠牲陽極材を取り付け, マクロセル腐食抑制効果や犠牲陽極材の防食範囲を検証することを目的とした実験を行った. また, 鉄筋腐食により劣化した RC 構造物を断面修復する際に, マクロセル腐食抑制のため, 鉄筋の裏側まで劣化した部材をはつり取ることが基本である. しかし, はつり作業にかかる労力や作業員の負担が大きく, コストも大きい. そこで, 鉄筋裏側のはつり深さを変化させた供試体を作成し, 犠牲陽極材を用いて断面修復を行うことで, マクロセル腐食が抑制され, はつり作業やそれにかかるコストが軽減できるかどうかを検証する実験も行った 供試体の概要実験は, 供試体形状の違いにより,3 つのシリーズに分けて実施した. なお,3 つのシリーズともに, 使用した材料等は以下の通りである. (i) セメント : 普通ポルトランドセメント ( 比重 :3.15) (ii) コンクリートの配合 :W/C=70%, スランプ 8±2.5cm, 空気量 4.5±1.5% とし, 塩化物イオン (Cl - ) 混入量の違いにより, 以下の 2 配合を設定した. (a)cl=3:cl - を 3kg/m 3 混入した配合 (b)cl=6:cl - を 6kg/m 3 混入した配合 (iii) 断面修復材 :SBR 系ポリマーセメントモルタル (5.2 での配合 [PCM-S1] と同一 ) なお, ポリマー混入量の違いによる補修効果を検証するために, 断面修復材のポリマーセメント比 ( 以下, P/C とする) を以下の 3 水準設定した. 10%( ノンポリマーを想定 ) 26.5%(5.2 での配合 [PCM-S1] と同一, 本材料で使用する標準使用量 ) 39.9%( 標準使用量より多くし,JR 西日本 コンクリート構造物補修の手引き 3) で定める P/C の上限値 (10% 以下 ) に近い値 ) (iv) 犠牲陽極材 : 亜鉛塊とそれを覆う保護モルタルで形成された, 直径 64mm 厚さ 27mm の陽極材 (1) シリーズA: 打継部近傍のマクロセル腐食に関する研究シリーズ A では, コンクリート中の鉄筋を分割させることで, 鉄筋内部を流れるマクロセル電流を測定し, 亜鉛を混入した防食モルタルにより, マクロセル腐食が抑制できるかどうか, 犠牲 66

72 φ13 みがき棒鋼 675 中空鋼棒 基材部 犠牲陽極材 補修材部 コード 測定位置 ( 印 ) 図 シリーズA 供試体形状 モニタリング測定位置 ( 単位 :mm) 表 シリーズA 供試体一覧陽極としての亜鉛が鉄筋のどの範囲まで防食基材部補修材部犠牲できるかを検証した. 名称 Cl - (kg/m 3 ) P/C(%) 陽極材 図 に示すように, mm の角柱供試体にみがき棒鋼 φ13 をかぶり 25mm で配置し, 基材部と補修材部の 2 配合に分けたものを作成した. シリーズ A の供試体一覧を表 に示す. 鉄筋は両端をエポキシ樹脂でコーティングした上で基材部と補修 Cl=3, P/C=0, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 Cl=6, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 有有有有無 材部に分割し, さらに補修材の中に犠牲陽極材を埋め込み, かつ図 のように犠牲陽極材と鋼材をコードでつなぐとともに, 両者の接続が一時的に開放できるようにした. また鋼材には自然電位等測定用コードをさらに取り付けた. なお比較用として, 犠牲陽極材を用いない供試体も作製した. さらにマクロセル腐食の影響範 接続 ( 開放可 ) 犠牲陽極材 囲を特定するために, 基材部と補修材部で分割した鉄筋の両端にコードを取り付け, マクロセ 鋼材電位 抵抗 電流測定用コード ル電流の測定ができるようにした. ただし, 電 位 電流等の計測時以外は常時基材部と補修材 図 犠牲陽極材と鋼材の接続例 部中の鉄筋のコードを結線した. 打設時には, 打継部で供試体が破損するのを防ぐため, 図 に示すように長さ約 100mm の樹脂で被覆した中空鋼棒を 2 本挿入した. 打設方法は, 打設 1 日目に基材部を打設し, 打設 2 日目にあらかじめ打継面を金ブラシで粗く した後, 補修材部を打ち継いだ. その後,7 日目に脱型し, 材齢 28 日まで湿布養生を行った. そ の後 mm 断面となる端面 2 面をエポキシでコーティングした後, 供試体 1 要因につき 3 体ずつ, 以下の 2 条件で腐食を促進させるための暴露を行った. (i) 内的塩害を模擬 : 温度 40 湿度 95% で 96 時間, 温度 20 湿度 60% で 72 時間を 1 サイ クルとする乾湿繰返し環境 (ii) 内的塩害 + 外的塩害を模擬 : 室内にて Cl - =3.0kg/m 3 の塩水を 1 日 1 回散布 (2) シリーズ B: 鉄筋裏はつり深さによる影響 67

73 鉄筋腐食により劣化したコンクリート部材に対 コード 犠牲陽極材 基材部して, 断面修復を行う際, 劣化した部分をはつり 落とし, 鉄筋のケレンおよび防錆処理を行った後, 47 補修材部断面修復材で断面を復旧する方法が取られる. こ の際, マクロセル腐食防止などのため, 鉄筋裏ま 1 鉄筋裏はつり深さ 20mm 供試体 ではつり落としを行うが, はつり作業にかかる労 力が大きく作業員の負担が大きい. そこで, 鉄筋基材部 裏側のはつり深さを変化させた供試体を作製し, 47 補修材部はつり作業が犠牲陽極材を用いて軽減できるかど うかの検証を行った. 2 鉄筋裏はつり深さ 0mm 供試体 図 に示すように, mm の角 基材部柱供試体にみがき棒鋼 φ13 を埋め込み, 基材部と 補修材部の 2 配合に分けたものを作製した. シリーズ B の供試体一覧を表 に示す. かぶりは 補修材部 400 底面 ( 補修材部側 ) から 47mm とし, 鉄筋裏はつり深さを以下の 3 水準設定した. 3 鉄筋裏はつり深さ-6.5mm 供試体図 シリーズ B 供試体 ( 単位 :mm) 120mm( 現在の一般的なはつり深さ ) 表 シリーズ B 供試体一覧 20mm( 鉄筋裏位置まではつり取り ) 基材部補修材部犠牲 3-6.5mm( 鉄筋中心位置まではつり取り ) 名称 Cl - (kg/m 3 ) P/C(%) 陽極材 また, 鉄筋の腐食モニタリングを行うため, 鉄筋にコードを取り付けた. 打設, 養生, 暴露方法はシリーズ A と同様とした. Cl=3, P/C=0, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 Cl=6, P/C=6.5, 犠 有有有有 (3) シリーズC: 犠牲陽極材の防食範囲に関する研究 ( スラブ模擬 ) スラブを模擬した供試体を作製し, 補修材中の鉄筋に犠牲陽極材を取り付け, マクロセル腐食抑制効果や犠牲陽極材の防食範囲の検証を行った. 図 に示すように mm の供試体を 基材部と補修材部の 2 配合に分け 補修材部に犠牲陽極材を埋め込んだものを作製した 縦に長さ 550mm と長さ 950mm のみがき棒鋼 φ19 を 2 本ずつ 横に長さ 550mm のみがき棒鋼 φ19 を 4 本埋め込み 長さ 950mm のみがき棒鋼 φ19 2 本の両端 200mm ずつをエポキシでコーティングした シリーズ C の供試体一覧を表 に示す. かぶりは底面から 25mm とした 鉄筋はコードをつけて自然電位 分極抵抗等が測定できるようにした また 犠牲陽極材と鉄筋にコードをつけて犠牲陽極材と鉄筋との接続 切離しができるようにした なお 測定時以外は常表 シリーズ C 供試体一覧時 犠牲陽極材 鉄筋間のコードを結線した 基材部補修材部犠牲打設, 養生方法はシリーズ A と同様とし, 名称 Cl - (kg/m 3 ) P/C(%) 陽極材暴露条件は, 以下の 2 条件とした. Cl=3, P/C=6.5, 犠 有 1 室内暴露環境 : 外気温とほぼ同温度の Cl=6, P/C=6.5, 犠 有 68

74 Y-Y 断面 112 Y [A] 基材部 X 100 X [B] 補修材部 φ19 みがき棒鋼 Y 犠牲陽極材エポキシコーティング X-X 断面 打設面 底面 ( 腐食モニタリング測定面 ) 室内で暴露 図 シリーズ C 供試体 ( 単位 :mm) 2 塩水散布環境 :Cl - =3.0kg/m 3 の塩水を 1 日 1 回散布 測定項目腐食モニタリングは, 自然電位 分極抵抗 ( 交流インピーダンス法 ) の各モニタリング計測を定期的に実施した. 照合電極には銀塩化銀電極 (Ag/AgCl) を用いた. 各シリーズの測定位置は, 以下の通り. (1) シリーズ A: 図 に示す 印 7 箇所 (2) シリーズ B: 供試体の基材部面および補修材部面中央部 (2 箇所 ) (3) シリーズ C: 図 に示す底面 24 箇所 69

75 また, 腐食モニタリング後に 2 つの鉄筋同士の結線を断線させ,24 時間後に再度モニタリングを実施し, 結線時と断線時の電位の変化量 ( 復極量 ) を調査した. さらに同時に電流量も測定し た 実験結果 (1) シリーズ A (1-1) 材齢 6~7 ヶ月での OFF 電位 復極量 (21) 材齢約 6~7 ヶ月 (1 乾湿繰返し環境 :190 日, (22) (23) (24) 2 塩水散布環境 :210 日 ) における各供試体の OFF 電位および復極量を図 に示す.OFF 電位測定による鉄筋の腐食性評価は,ASTM C 犠牲陽極材 876 規格 2) を用い, 犠牲陽極材が防食効果を発揮図 測定位置 ( シリーズ C) しているとされる基準は, 土木学会 電気化学 * 底面 ( 測定面 ) を上向きにして図示している的防食工法設計施工指針 ( 案 ) に基づき, 復極量が 100mV 以上であること 7) とした. ( イ )OFF 電位乾湿繰返し環境では, 補修材部が最も貴となり, すべての供試体で不確定領域となった. 一方, 塩水散布環境では, 犠牲陽極材を用いたすべての供試体で基材部および補修材部の OFF 電位に差は見られず, 腐食領域にある. また, 暴露環境の違いでは, 塩水散布環境の OFF 電位は, 乾湿繰返し環境に比べて卑となっており, 塩水散布環境の腐食環境が厳しいことがいえる. ( ロ ) 復極量乾湿繰返し環境では, 基材部が Cl - =3kg/m 3, 補修材部が P/C=0% の供試体の基材部左端から 200mm まで ( 基材部と補修材部の境界位置から 475mm 以上, 犠牲陽極材設置位置から 538mm 以上 ) の位置で復極量が 100mV を若干下回る結果となり, 補修材部から離れた位置では防食効果が得られていない可能性がある. 一方, 補修材部にポリマーを混入した供試体の復極量は, 補修材部にポリマーを混入しない供試体の復極量に比べて, やや大きな値となり, この時点では, ポリマー混入により水密 機密性の高い組織構造となる 8) ことから, 防食性がやや向上しているものと考えられる. 塩水散布環境では, 実験を行った全ての供試体において, 基材部の一部 ( 補修材から遠い位置 ) で復極量が 100mV を下回っていた. 基材部が Cl - =3kg/m 3 の,P/C が異なる 3 種類の供試体の復極量を比較すると, あまり違いは見られず, ポリマー混入による防食性の明確な違いは見られなかった. また, 暴露環境の違いでは, 塩水散布環境の復極量は, 乾湿繰返し環境に比べて小さくなっており, 暴露環境が厳しくなるにつれて復極量は小さくなるとともに防食範囲が小さくなるものと考えられる. (1-2) 材齢 1~1.6 年での OFF 電位 復極量一方, 材齢約 1~1.6 年 (1 乾湿繰返し環境 :600 日,2 塩水散布環境 :350 日 ) における各供 70

76 OFF 電位 (mv) 復極量 (mv) 左端からの距離 (mm) Cl=3, P/C=0, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 Cl=6, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 左端からの距離 (mm) OFF 電位 (mv) 復極量 (mv) 左端からの距離 (mm) 不確定領域 非腐食領域 腐食領域 Cl=3, P/C=0, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 Cl=6, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 左端からの距離 (mm) OFF 電位 (mv) 復極量 (mv) 材齢 190 日 ( 乾湿 ) 材齢 210 日 ( 塩水 ) 左端からの距離 (mm) 左端からの距離 (mm) 図 シリーズ A OFF 電位 復極量 1 OFF 電位 (mv) 試体の OFF 電位および復極量を図 に示す. 左端からの距離 (mm) 材齢が経過すると,OFF 電位や復極量に差はあるものの, 乾湿繰返し環境 塩水噴霧環境のい ずれの供試体も, 復極量が 100mV 以上となり, 犠牲陽極材による良好な防食性を示している. こ の結果の考察については, 次の (1-3) の結果とともに述べることとする. (1-3) 基材部 = 補修材部間の電流量 (1-1) および (1-2) で示した電位測定時期における, 結線時の基材部と補修材部に流れる電流量の 測定結果を表 に示す 不確定領域 非腐食領域 腐食領域 Cl=3, P/C=0, 犠 900 Cl=3, P/C=0, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 800 Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 700 Cl=3, P/C=9.9, 犠 Cl=6, P/C=6.5, 犠 600 Cl=6, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 500 Cl=3, P/C=6.5, 犠 復極量 (mv) 図 シリーズ A OFF 電位 復極量 左端からの距離 (mm) 材齢 600 日 ( 乾湿 ) 材齢 350 日 ( 塩水 ) 過去の犠牲陽極材を用いた事例では, 暴露期間の経過に伴い, 電位が安定し, 防食電流が低下 したとされている 9) が, 本実験の期間内では, 材齢が経過しても電流値がほぼ同等もしくは若干 71

77 増加している程度であり, ポリマー混入量による違いも明確には見られなかった. この理 表 基材部 = 補修材部間の電流量 (μa) [ 基材部 補修材部の向きを正 ]: 結線時乾湿繰返し塩水散布 由としては,(1-1) および (1-2) で述べたように, 電位や復極量の変動があり, 防食効果を発揮 名称 材齢 190 日 材齢 600 日 材齢 210 日 材齢 350 日 させるために, 犠牲陽極材からの防食電流が Cl=3, P/C=0, 犠 一定量流れていることによるものと考えられ Cl=3, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=9.9, 犠 る. したがって, 本実験の範囲内では防食効 Cl=6, P/C=6.5, 犠 果があると考えられるが, 今後さらに電位や Cl=3, P/C=6.5, 犠 復極量をさらに測定を続け, 電位や復極量, 表 基材部 = 補修材部間の電流量 (μa) 電流量の変化を把握し, 防食効果の判断を行 [ 基材部 補修材部の向きを正 ] う必要がある. : 結線時と断線後 24H の比較 一方,(1-2) の測定時期 (1 乾湿繰返し環境 : 乾湿繰返し 塩水散布 600 日,2 塩水散布環境 :350 日 ) における, 名称 ( 材齢 600 日 ) ( 材齢 350 日 ) 断線後断線後 結線時と断線後 24 時間の電流量の比較を表 結線時 24H 結線時 24H に示す. Cl=3, P/C=0, 犠 塩水散布環境では, 断線 24 時間後の電流量 Cl=3, P/C=6.5, 犠 がマイナス, つまり補修材部 基材部に電流 Cl=3, P/C=9.9, 犠 が流れており, 断線後 24 時間経過すると腐食 Cl=6, P/C=6.5, 犠 Cl=3, P/C=6.5, 犠 反応と変化することがわかる. これより, 腐 食に対して比較的厳しい環境下では, 犠牲陽極材設置による電気防食が効果を発揮していること がいえよう. 乾湿繰返し環境では, 断線 24 時間後の電流量がプラス, つまり基材部 補修材部に電流が流れ ており, 塩水散布環境ほど腐食に対して厳しくないと考えられるが, 犠牲陽極材を設置していな い供試体では電流量がマイナスであることから, 乾湿繰返し環境下でも犠牲陽極材の設置効果が 現れていると考えられる. (2) シリーズ B (2-1) 電位材齢約 7 ヶ月における各供試体の表面 ( 基材部側 ) および底面 ( 補修材部側 ) における自然電位の ON 電位,OFF 電位および復極量を表 に示す. なお, 鉄筋裏はつり深さが 0mm および 20mm の供試体において, 犠牲陽極材と鉄筋の接続を断ってから, 電位が復極するまでに相当な時間を要しているからか, 断線後 24 時間での OFF 電位が ON 電位とあまり変化しない供試体があった. 24 時間で十分に復極しない供試体は, 材齢が経過しても,24 時間で OFF 電位に変化は見られなかったが,ON 電位が他の供試体と同様に, 卑となっているため犠牲陽極材が防食効果を発揮していると考えられる. 表は OFF 電位が十分復極していると推定される供試体の平均で表した. また, 材齢約 3 ヶ月の時点において, 図 に示すように, すべてのシリーズ 2 供試体において, 補修材部の表面にエフロレッセンスが発生した. これは, 補修材の打設容積が大きいことによる乾燥収縮の影響と考えられるが, エフロレッセンスの発生による電位の変化は見られず, 犠牲陽極材の防食効果への影響はほとんどないものと考えられる. 72

78 表 シリーズ B 自然電位 ( 材齢約 7 ヶ月 ) ( 単位 :mv) 乾湿繰返し環境 Cl - 量 P/C はつり ON 電位 OFF 電位 復極量 (kg/m 3 ) (%) 深さ (mm) 基材部 補修材部 基材部 補修材部 基材部 補修材部 塩水散布環境 Cl - 量 P/C はつり ON 電位 OFF 電位 復極量 (kg/m 3 ) (%) 深さ (mm) 基材部 補修材部 基材部 補修材部 基材部 補修材部 ( イ )ON 電位暴露環境によらず, 補修材部側から測定した ON 電位は基材部側から測定した値より卑となり, 鉄筋裏はつり深さが大きいほど卑になる傾向が見られた. 暴露環境および配合の違いによる ON 電位の違いは見られなかった. 図 エフロレッセンス析出状況 ( ロ )OFF 電位 OFF 電位は, 十分に復極していないと推定される供試体を除き, 大半の供試体が塩水散布環境の OFF 電位が乾湿繰返し環境に比べて卑となった. 塩水散布環境下では犠牲陽極材を設置しない 73

79 場合, 腐食環境にあると想定される. ( ハ ) 復極量 乾湿繰返し環境では,OFF 電位が十分に復極していないと推定される供試体を除けば, 鉄筋裏 はつり深さが大きいほど復極量が大きくなる傾向が見られた. 復極していないと推定される供試 体を除けば, いずれの供試体においても復極量は 100mV 以上となっており, 犠牲陽極材を設置す ることで鉄筋裏はつり深さを軽減できる可能性がある. 塩水散布環境では, いずれの供試体においても復極量は 100mV 以上となっており, 犠牲陽極材 を設置することではつり深さを軽減できる可能性があると考えられる. 復極量は OFF 電位が十分に復極していない供試体を除けば, 復極量の最も小さい鉄筋裏はつり 深さ-6.5mm の供試体においても, 復極量は 100mV 以上得られたことから, 犠牲陽極材により鉄 筋裏はつり深さは軽減できると言える. しかし, はつり深さが小さいほど, 復極量が小さくなり 犠牲陽極材の防食範囲が小さくなると考えられる. これは, 鉄筋の裏側まではつり取らないで断 面修復を行った場合, 完全に鉄筋裏側まではつり取った場合と比べて, さらに鉄筋の表側と裏側 でのマクロセル腐食 表 シリーズ B 腐食速度 ( 材齢約 4 ヶ月 ) ( 単位 :μa/cm 2 ) も懸念されるため, Cl - 量 P/C はつり 乾湿繰返し 塩水散布 犠牲陽極材が鉄筋裏 (kg/m 3 ) (%) 深さ (mm) 基材部 補修材部 基材部 補修材部 側まで防食するため と考えられる. 以上 より,RC 高架橋等の 実構造物に対し犠牲 陽極材を適用する場 合には, 鉄筋裏はつ り深さの違いにより 犠牲陽極材の防食範 囲が異なることから, シリーズ A の結果と あわせて, 犠牲陽極材の設置間隔を適切に設定 表 シリーズ B 電流 ( 材齢約 4 ヶ月 ) ( 単位 :μa) する必要があると考えられる. Cl - 量 P/C はつり乾湿塩水 (2-2) 腐食速度 (kg/m 3 ) (%) 深さ (mm) 繰返し散布 材齢約 4 ヶ月における各供試体の表面 ( 基材 部側 ) および底面 ( 補修材部側 ) における, 分極 抵抗測定値から求めた腐食速度を表 に示 す 暴露環境によらず, 基材部側の腐食速度が補 修材部側より大きくなった. 配合の違いおよび 鉄筋裏はつり深さの大小による腐食速度の大 小の傾向は見られなかった. また, 大半の供試 体で塩水散布環境の腐食速度が乾湿繰返し環

80 境に比べて大きく, 犠牲陽極材がなければ腐食反応が進む環境にあると推測される. (2-3) 電流材齢約 4 ヶ月における各供試体の犠牲陽極材 - 鉄筋間に流れる電流の測定結果を表 に示す. 補修材部にポリマーを混入した供試体は, はつり深さが大きいほど電流が犠牲陽極材から鉄筋に流れ込む電流量が大きく, より大きな防食効果が確認できた. これは,(2-1) の復極量の結果と一致し, 電流の結果からも鉄筋裏はつり深さが大きいほど, 犠牲陽極材の防食効果が大きいことがわかる. はつり深さが-6.5mm および 0mm の場合, 基材部の Cl - の違いによる電流の値に違いは見られなかったが, はつり深さが 20mm の場合, 基材部の塩化物イオン量が大きいほど電流が大きくなった. 一方, 腐食速度の場合と異なり, 暴露環境の違いによる電流量の違いは見られなかった. (3) シリーズ C 材齢約 7 ヶ月における各供試体の復極量の測定結果を図 に示す. 材齢約 7 ヶ月において, 復極量は犠牲陽極材を接続した縦鉄筋のみ 100mV 以上となり, 犠牲陽極材に近づくほど復極量が大きくなった. 犠牲陽極材を接続した縦鉄筋のみ犠牲陽極材の防食効果が得られたが, それ以外の鉄筋において復極量が 100mV 以下となり犠牲陽極材の防食効果が得られていない可能性がある. 防食効果が得られていない理由として, 直交する鉄筋の番線で結束したのみで打設時のバイブレーター等による振動で結束がゆるみ, 鉄筋間の導通が不十分であったものと考えられる. 75

81 (Cl=3, 自然暴露 ) (Cl=6, 自然暴露 ) (Cl=3, 塩水散布 ) (Cl=6, 塩水散布 ) 図 シリーズ C 復極量 (4) シリーズ C-2 シリーズ C の供試体では直交する鉄筋の導通が不十分であったことが考えられるため シリーズ C-2 では シリーズ C を補完する目的で 直交する鉄筋を溶接し 鉄筋間の十分な導通を確保した供試体を作製し 鉄筋を番線で固定した供試体と比較を行った (i) 供試体概要図 のような mm の供試体中にみがき棒鋼 φ13 を縦 2 本 ( 長さ 350mm) 横 3 本 ( 長さ 250mm) 挿入し かつ基材部 (Cl - =6kg/m 3 のコンクリート ) と補修材部 (P/C=6.5% のポリマー 76

82 セメントモルタル ) とを打ち継いだ供試体を作製し 3@100 た 犠牲陽極材と鋼材の接続方法として, 実際の施 基材部 工では, 直交する鋼材の両方に犠牲陽極材を接続する場合が多い. しかし, 本実験では後述の通り防食効果を検証するため復極量を測定することから, 犠牲陽極材と鋼材を図 に示す接続を行い, 犠牲陽極材と接続する鋼材の接続方式を, 図 で示すように, 横方向の鋼材端部と接続した X と, 4@ 100 A 補修材部 A 150 縦方向の鋼材端部と接続した Y の 2 方式に分け X *X Y: 犠牲陽極材と Y 鋼材の接続方式た. また防食範囲の分布を検討するため, 直交する A-A 断面犠牲陽極材 鋼材を番線で固定したもの ( 犠牲陽極材と鋼材の接 続 : Y のみ および X+Y ) と, 溶接したもの ( 同 : X+Y ) を作製した. 供試体一覧を表 に示 す. 各要因につき 1 体作製した. 図 シリーズ C-2 供試体形状 モニタリング測定位置 ( 単位 :mm) 供試体作製は,1 日目に基材部を打設し,2 表 シリーズ C-2 供試体一覧日目に補修材部を打ち継いだ. 補修材部翌日に鋼材犠牲陽極材脱型した後, 室内にて 1 日 1 回水道水による散基材部補修材部名称結束と鋼材の Cl - (kg/m 3 ) P/C(%) 水を行った. 方法接続方式 (ii) 測定項目番 -X X のみ番線番 -XY 図 で示す供試体底面の 印 17 箇所で, X+Y 溶 -XY 溶接経時的に ON 電位 OFF 電位を測定した. (iii) 測定結果 材齢 28 日および 335 日における復極量をそれぞれ図 , 図 に示す. 交差する鋼材を溶接した供試体は, どちらの材齢でも, 全ての測定位置で復極量が 100mV を上 回っており, 良好な防食効果を得られていると考えられる. 一方, 交差する鋼材を番線で固定し た供試体は 2 種類とも, 材齢 28 日では復極量が 100mV を下回っている箇所が見受けられるが, 材齢 335 日では 1 箇所だけとなった. ただし, 犠牲陽極材と鋼材の接続を 2 箇所とした供試体 ( 番 -XY) では, 復極量が 100mV を上回っていても, 他の測定位置より復極量が大幅に小さい箇所 ( 図 の 印 ) もあり, 今後の計測において復極量が 100mV を下回ることが想定される 番 -X 番 -XY 溶 -XY 図 シリーズ C-2 材齢 28 日復極量 ( 単位 :mv) 77

83 番 -X 番 -XY 溶 -XY 図 シリーズ C-2 材齢 335 日復極量 ( 単位 :mv) このことから, 犠牲陽極材を設置して防食効果を発揮させるためには, 交差する鋼材の導通を十分確認してから施工を行うことが重要であるといえよう 本実験のまとめ以下に, 本実験で得られた主な結果を要約する 年間の乾湿繰返し環境下, および 1 年間の塩水散布環境下において, 一方向の鉄筋に対して, 犠牲陽極材を用いた電気防食工法が十分効果を発揮していると考えられる. 2 本実験で設定した,3 種類のポリマー含有量が異なる補修材を用いた場合のいずれにおいても本実験の範囲内では有効な防食効果を得られた. ただし, ポリマー含有量の違いによる犠牲陽極材の防食効果の違いはあまり見られなかった. 3 犠牲陽極材を断面修復材と併用することで,RC 高架橋等の断面修復時に鉄筋裏はつり深さを軽減できる可能性が見受けられた. 4 犠牲陽極材を設置する場合, 防食対象となるすべての鉄筋は, 防食回路が電気的に一体となっていることを確認しなければならない. また, 導通不良が確認された鉄筋については, 溶接等によって, 鉄筋の導通を確保しなければならない. 本節では, 特に (A) 防食範囲の把握 と (B) 鉄筋裏はつり深さの軽減 を目指して実験を行った.(A) では, 特に材齢初期において防食範囲が限定される可能性が見られたが, 本実験の範囲内では,1 個の犠牲陽極材が受け持つ防食範囲の閾値が明確とはならなかった. また,(B) では, 犠牲陽極材を設置することで, はつる深さを鉄筋中心位置までとすることが可能となり, 鉄筋裏はつり深さを軽減できる可能性が示唆された. ただし, 鉄筋裏はつり深さを軽減した場合, 犠牲陽極材の防食範囲が小さくなることも考えられるので, 適切な犠牲陽極材の設置範囲の設定に関する考察がさらに必要である. 今後は, さらに長期間暴露した場合の防食範囲の変化あるいは鉄筋裏はつり深さの違いによる防食効果の把握を行い, 犠牲陽極材設置による防食効果について検討を行う必要があると考えている. 78

84 5.4 内的塩害により劣化した鉄筋コンクリート構造物へのセメント系電気防食材料を用いた電気防食工法の適用性前節では, 犠牲陽極材を用いた流電陽極方式による電気防食工法を用いることで, 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート構造物の耐久性向上に寄与することを確認した. ただし, 電気防食工法の問題点の一つに, 配線の問題がある. 配線に水などが侵入することにより腐食が生じ, 電気的に導通しなくなると, 電気防食の機能が失われることになる. そのため, 電気的に導通し, 電気防食が正常に機能していることを随時確認する必要がある. しかし, 確認のためには事務所等でモニタリングするか, あるいは現地へ随時赴くかであるが, どちらにせよコストの問題がある. そこで, 配線を用いずに電気防食の機能が発揮できる工法として, 亜鉛および黒鉛の粉末をセメント中に混入した材料に着目した. 亜鉛の粉末のみをセメント中に混入し, 鉄筋コンクリート構造物の補修材料として用いた研究例もある 10)11) が, この場合はコストが一般の断面修復工法や電気防食工法に比べて非常に高価であり, 実用的とは言いがたい. 稲木らは, 亜鉛とともにアルカリ性環境において安定な電子伝導体である黒鉛粉末を加えることにより, 亜鉛に鉄筋との導通を持たせる方法を考案している 12). 亜鉛および黒鉛の粉末をセメント中に混入した材料を用いた電気防食工法の原理は, 図 に示すとおりである. すなわち, セメント中に亜鉛 (Zn) および黒鉛 (C) の粉末を散在させることで, 黒鉛粉末は亜鉛粉末と鋼材とを電気的に接続し, 亜鉛粒子と鋼材とのイオン化傾向の差を利用して, 防食電流が鋼材へと流れ, 鋼材の腐食を抑制する効果を有している. しかし, 練り混ぜ時に水和熱による発熱が一般の補修材料に比べて大きいことや, 強度が一般の補修材料に比べて弱く, 特にコンクリート構造物に適用した場合の効果については未知数である. そこで, 亜鉛および黒鉛の粉末をセメント中に混入した材料を断面修復材として用いることで, 電気防食の機能も発揮することを期待することを念頭に, 内的塩害により劣化した RC 構造物に対する, 断面修復工法による補修効果に関しての研究を行った. なお, 本節で使用する, 亜鉛および黒鉛の粉末をセメント中に混入した材料を, これ以降 セメント系電気防食材料 と呼び, セメント系防食材料と水 細骨材を混錬したものを 防食モルタル と呼ぶ. Zn 防食材料 Zn C C C Zn 防食電流 Zn C Zn 鋼材 図 セメント系電気防食材料による電気防食の原理 ( イメージ図 ) 79

85 5.4.1 供試体の概要実験は, 供試体形状の違いにより,3 つのシリーズに分けて実施した. なお,3 つのシリーズともに, 使用した材料等は以下の通りである. セメント : 普通ポルトランドセメント ( 比重 :3.15) 鋼材 : 異型鉄筋 (D13,SD295A) およびみがき棒鋼 (φ13) 防食モルタル : 前ページに記載の通り コンクリートの配合 :W/C=70%, スランプ 8±2.5cm, 空気量 4.5±1.5% とし, 塩化物イオン (Cl - ) 混入量の違いにより, 以下の 3 配合を設定した. (a)cl=0:cl - 無混入リード線 400 (b)cl=3:cl - を 3kg/m 3 混入した配合 (c)cl=6:cl - を 6kg/m 3 混入した配合 (1) シリーズA: 腐食モニタリング値の基礎データ収集亜鉛粉末を混入したモルタル中の鋼材 の自然電位や分極抵抗などの腐食モニタリング値が明確でないことから, 以降のシリーズにおける腐食モニタリング値の参考とするため, 防食モルタル単体の供試体を作成した. あわせて, コンクリート単体の供試体も作成した. 図 に示すように, mm の角柱供試体に長さ 300mm の異型鉄筋 D13 もしくはみがき棒鋼 φ13 を, かぶり 25mm で配置したものを作成した. シリーズ A の供試体一覧を表 に示す. 鋼材の腐食モニタリングを行うため, 鋼材にコードを取り付けた. 養生方法は のシリーズ A と同一とした 鋼材 300 図 シリーズ A 供試体 ( 単位 :mm) 表 シリーズ A 供試体一覧 名称 鋼材 配合 作製数 Cl=0-φ φ13 Cl=0 Cl=0-D D13 Cl=3-φ φ13 Cl=3 Cl=3-D D13 Cl=6-φ φ13 Cl=6 各 2 体 Cl=6-D D13 防モル-φ φ13 防モル-D D13 防食モルタル (2) シリーズB: 打継部近傍のマクロセル腐食に関する実験シリーズ B では, コンクリート中の鉄筋を分割させることで, 鉄筋内部を流れるマクロセル電流を測定し, 亜鉛を混入した防食モルタルにより, マクロセル腐食が抑制できるかどうか, 犠牲陽極としての亜鉛が鉄筋のどの範囲まで防食できるかを検証した. 図 に示すように, mm の角柱供試体に異型鉄筋 D13 もしくはみがき棒鋼 φ 13 をかぶり 25mm で配置し, 基材部と補修材部の 2 配合に分けたものを作成した. シリーズ B の供試体一覧を表 に示す. 鉄筋は両端をエポキシ樹脂でコーティングした上で基材部と補修材部に分割し, 補修材部中の鉄筋端にコードをはんだ付けを行い, 鋼材の腐食モニタリングを行うことができるようにした. さらにマクロセル腐食の影響範囲を特定するために, 基材部と補修材部で分割した鉄筋の両端にコードを取り付け, マクロセル電流の測定ができるようにした. なお, 電位 電流等の計測時 80

86 鉄筋 アラミド繊維ロッド 測定位置 ( 印 ) 0 基材部 コード 600 補修材部 737 図 シリーズ B 供試体形状 モニタリング測定位置 ( 単位 :mm) 以外は常時基材部と補修材部中の鉄筋のコードを結線した. 打設方法は, 打設 1 日目に基材部を打設し, 打設 2 日目にあらかじめ打継面を金ブラシで粗くした後, 補修材部を打ち継いだ. 表 シリーズ B 供試体一覧なお, 打継部で供試体が破損す名称鋼材配合 ( 基材部 ) 配合 ( 補修材部 ) 作製数 るのを防ぐため, 図 に示 Cl=3,φ13 すように長さ約 100mm のアラ Cl=3, D13 ミド繊維ロッドを 2 本挿入した. Cl=6,φ13 養生方法はシリーズ A と同 Cl=6, D13 様とした. (3) シリーズC: 鉄筋裏はつり深さによる影響 5.3 同様, セメント系電気防食材料が鉄筋裏はつり深さ低減に与える影響について検証した. 図 に示すように, mm の角柱供試体にみがき棒鋼 φ13 を埋め込み, 基材部と補修材部の 2 配合に分けたものを作製した. シリーズ C の供試体一覧を表 に示す. かぶりは底面 ( 補修材部側 ) から 47mm とし, 鉄筋裏はつり深さを 5.3 と同様に以下の 3 水準設定した. 1 20mm ( 現在の一般的なはつり深さ ) 2 0mm ( 鉄筋裏位置 ) 3-6.5mm ( 鉄筋中心位置 ) また, 鉄筋の腐食モニタリングを行うため, 鉄筋にコードを取り付けた. 打設方法, 養生方法はシリーズ B と同様とした. φ13 Cl=3 D13 防食モルタル各 3 体 φ13 Cl=6 D13 基材部 補修材部 鉄筋裏はつり深さ 20mm 供試体基材部 補修材部 鉄筋裏はつり深さ 0mm 供試体基材部 補修材部 鉄筋裏はつり深さ-6.5mm 供試体図 シリーズ C 供試体 ( 単位 :mm) 測定項目腐食モニタリングは, 自然電位 分極抵抗 ( 交流インピーダンス法 ) の各モニタリング計測を定期的に実施した. 各シリーズの測定位置は, 以下の通り. (1) シリーズ A: 供試体底面中央部 (1 箇所 ) 81

87 表 シリーズ C 供試体一覧 名称 鋼材 配合 ( 基材部 ) 配合 ( 補修材部 ) 鉄筋裏はつり深さ (mm) 作製数 Cl=3, 裏 Cl=3, 裏 0 Cl=3 0 Cl=3, 裏 φ13 防食モルタル Cl=6, 裏 各 3 体 Cl=6, 裏 0 Cl=6 0 Cl=6, 裏 (2) シリーズ B: 図 に示す 印 7 箇所 (3) シリーズ C: 供試体の基材部面および補 100 材齢 ( 月 ) 修材部面中央部 (2 箇所 ) また, シリーズ B では上記の腐食モニタリング後に 2 つの鉄筋同士の結線を断線させ, 24 時間後に再度モニタリングを実施し, 結線時と断線時の変化を調査した. さらに同時に電流量も測定した Cl=0-φ Cl=3-φ -600 Cl=6-φ -700 防モル-φ 実験結果 CL=0-D -800 (1) シリーズ A Cl=3-D -900 シリーズ A のコンクリート 3 種類および防 Cl=6-D 防モル-D 食モルタルそれぞれの単体配合供試体の自 然電位および分極抵抗から求めた腐食速度を図 5.4.5~5.4.6 に示す. 図 シリーズ A 供試体自然電位 100 なお, 腐食速度は, 見かけの分極抵抗の測 定値 Rct (Ω) と鋼材の被測定表面積 A(cm 2 ) の 10 積を鉄筋単位表面積あたりの分極抵抗 Rct(Ω cm) とし, 腐食速度 Icorr を式 [2.2.2] より求めた. 1 ただし, 式 [2.2.2] 中の K 値は 0.026V 3) とした. 腐食の判定は,CEB による判定基準を用いた. また, 鋼材の被腐食表面積 A は, 測定器 0.1 の対極内径 4cm 部分にかかる鋼材片側部分の 面積であり, 以下のとおりとした みがき棒鋼 (φ13) の面積 : A(φ13)=4.0 ( )=8.164(cm 2 ) 異型鉄筋 (D13) の面積 : A(D13)=4.0 (4.0 2)=8.0(cm 2 ) 材齢 ( 月 ) 図 シリーズ A 供試体腐食速度 ( イ ) 自然電位 防食モルタルは材齢初期ではかなり卑な値を示していたが, 材齢約 50 日 (2 ヶ月弱 ) あたりで急 自然電位 (mv) 2 ) 腐食速度 (μa/cm 82

88 激に貴変し, 材齢約 4~6 ヶ月では正値となった. その後, 材齢約 2 年にかけてはコンクリート供試体の塩化物イオン混入量が 0 もしくは 3kg/m 3 のものとほぼ同じ値を示している. 亜鉛が犠牲陽極として作用している環境下での鉄筋の自然電位は一般的に-1,000mV 程度とされており 6), この結果から, 現時点では防食モルタル中の亜鉛が犠牲陽極としての効果を発揮していないと考えられる. この原因としては, モルタル中の保水性が通常のモルタルに比べて小さいことや, 供試体の暴露環境が飛来塩分の影響のないところであることより, 亜鉛がほとんど消費されないことが考えられる. 塩化物イオン混入量の異なる 3 種類の供試体は, 塩化物イオン混入量が多いほど自然電位が卑な値を示した. また, 鉄筋の種類による 違いについては, 材怜の経過に伴い, 同じ塩化物イオン混入量であれば, みがき棒鋼のほうが異型鉄筋に比べて自然電 0 左端からの距離 (mm) 位が卑な傾向を示した. ( ロ ) 腐食速度腐食速度は, 自然電位とほぼ同じ傾向を示した. すなわち, 防食モルタルは, 材齢初期ではかなり大きな値であったが, 材齢材齢約 2 ヶ月弱で小さくなり, ON 電位 (mv) CL=3,D13 CL=6,D13 CL=3,φ13 CL=6,φ13 その後材齢約 2 年にかけてはコンクリート供試体の塩化物イオン混入量が 0 もしくは 3kg/m 3 のものとほぼ同じ値を示した. 図 シリーズ B 供試体 ON 電位 0 左端からの距離 (mm) 塩化物イオン混入量の異なる 3 種類の供試体は, 塩化物イオン混入量が多いほど自然電位が卑な値を示した. 一方, 鉄筋の種類による違いは, それほど顕著な差は見られなかった. OFF 電位 (mv) CL=3,D13 CL=6,D13 CL=3,φ13 CL=6,φ (2) シリーズ B ( イ ) 電位 復極量シリーズ B の材齢約 2 年における, 電位 ( 結線時 :ON 電位 / 断線 24 時間後 : OFF 電位 ) を図 5.4.7~5.4.8 に, 復極量を図 に示す. 基材部の塩化物イオン濃度が多いほど,ON 電位は卑な傾向を示しているが, OFF 電位は塩化物イオン濃度 6kg/m 3 でかつみがき棒鋼を使用したものが他の 3 復極量 (mv) 図 シリーズ B 供試体 OFF 電位 CL=3,D13 CL=6,D13 CL=3,φ13 CL=6,φ 左端からの距離 (mm) 図 シリーズ B 供試体復極量 83

89 腐食速度 (μa/cm 2 ) CL=3,D13 CL=6,D13 CL=3,φ13 CL=6,φ13 μa/cm 2 ) 腐食速度 ( CL=3,D13 CL=6,D13 CL=3,φ13 CL=6,φ 左端からの距離 (mm) ( 結線時 ) 図 左端からの距離 (mm) ( 断線 24 時間後 ) シリーズ B 供試体腐食速度 種類より貴な傾向を示している. しかし, いずれの供試体も,ON 電位時に, 防食 CL=3.D13 CL=6.D13 CL=3.φ13 CL=6.φ13 モルタル中の鋼材の電位が基材部コンクリート中の鋼材の電位より貴であり, これは 2 年間の計測中ほぼ同じであっ た. 本来, 防食モルタルが防食効果を発 揮しているならば, 防食モルタル中の鋼材の電位が基材部コンクリート中の鋼 材の電位より卑であるべきであるが, そのような状況は見られなかった 材齢 ( 月 ) 図 シリーズ B 供試体電流量 また, 復極量は, 塩化物イオン濃度 6kg/m 3 で, かつみがき棒鋼を使用したもので, 基材部中のほとんどが防食規準とされている 100mV シフト 7) を上回っていた. しかし,OFF 電位が非腐食領域にあることから, 防食モルタルは防食 効果にあまり影響がないものと考えられる. その他は復極量が 100mV 以下であった. ( ロ ) 腐食速度 シリーズ B の材齢約 2 年における, 分極抵抗から求めた腐食速度 ( 結線時 / 断線 24 時間後 ) を図 に示す. 腐食速度の算出方法は, シリーズ A と同様とした. 結線時, 断線時ともに, 塩化物イオン濃度 6kg/m 3, かつみがき棒鋼を使用した供試体が他の 3 種類より腐食速度が小さい傾向を示した. これは,OFF 電位が小さいことと関連していると考え られる. また, 塩化物イオン濃度 6kg/m 3 で, かつみがき棒鋼を使用した供試体以外の 3 種類の供 試体は, 結線時の腐食速度が断線時に比べて大きくなっているが, これは防食モルタル中の亜鉛 によって防食電流が流れ, 電気抵抗を下げている影響によるものと考えられる. ( ハ ) 電流量 シリーズ B の基材部と補修材部を流れる電流量を図 に示す. 電流値は, 基材部から補修 材部に流れる電流値を正とした. 材齢初期は供試体ごとのばらつきが大きいが, 材齢の経過とともに供試体ごとにほぼ一定とな る. 供試体ごとの違いでは, 塩化物イオン濃度 6kg/m 3 でかつみがき棒鋼を使用した供試体が他の ) 電流値 (µa 84

90 3 種類より大きい傾向を示した. これは腐食速度が小さい ( 抵抗が大きい ) ことと関連している. ま た, 塩化物イオン濃度 6kg/m 3 でかつみがき棒鋼を使用した供試体以外の 3 種類の供試体は,5.3 での電流量よりかなり小さな値であり, 防食効果はあまり得られていないものと考えられる. ( ニ ) まとめ 分極抵抗から求めた腐食速度や電流測定の結果より, 防食モルタル中の亜鉛により防食電流が流れている可能性はあるが, 復極量が防食規準を満足していないことから, シリーズ A と同様, 材齢約 2 年の時点で防食モルタル中の亜鉛が犠牲陽極としての効果を発揮していないと考えられる. 表 シリーズ C 自然電位 (mv) (3) シリーズ C [ 参考 ] 犠牲陽極材使用 * 防食モルタル使用 ( イ ) 自然電位 Cl - はつり量 ( 乾湿繰返し環境, ( 材齢約 2 年 ) (kg/m 3 深さ ) 材齢約 7 ヶ月 ) シリーズ C の材齢 (mm) 基材部補修材部基材部補修材部約 2 年における, 自然 電位の値を表 に 示す シリーズ A や B と 同様, 防食モルタルが 効果を発揮していれ * 犠牲陽極材使用 については,5.3 節シリーズ B の P/C=6.5% の供試ば, 自然電位の値は- 体のデータを用いた ( 表 参照 ) 1,000mV に近い値を 表 シリーズ C 腐食速度 (μa/cm 示すことが想定され ) [ 参考 ] 犠牲陽極材使用 * たが, いずれの供試体防食モルタル使用 Cl - はつり量 ( 乾湿繰返し環境, も電気防食工法では ( 材齢約 2 年 ) (kg/m 3 深さ ) 材齢約 7 ヶ月 ) (mm) ない, 一般的な補修方基材部補修材部基材部補修材部 法での値にほぼ近似 したものとなった. 比 較として,5.3 節で述 べた, 犠牲陽極材を用 いた場合の, 同種供試 体の ON 電位の値を同じ表に記載したが, 犠 * 犠牲陽極材使用 については,5.3 節シリーズ B の P/C=6.5% の供試体のデータを用いた ( 表 参照 ) 牲陽極材を用いた場合の ON 電位よりもかなり貴な値を示している. ( ロ ) 腐食速度 シリーズ C の材齢約 2 年における, 分極抵抗から求めた腐食速度を表 に示す. 腐食速度 の算出方法は, シリーズ A と同様とした. 鉄筋裏はつり深さが 20mm の供試体と比較して, 鉄筋裏はつり深さが 0mm あるいは-6.5mm の 供試体は, 基材部側 補修材部側ともに, 一部供試体を除き腐食速度が大きい傾向を示している. 比較として,5.3 節で述べた, 犠牲陽極材を用いた場合の腐食速度を同じ表に記載しているが, 鉄筋裏はつり深さが 0mm あるいは-6.5mm の供試体は, 犠牲陽極材用いた場合に比べて, 腐食速 85

91 度がやや大きい値を示している. つまり, 通常の補修でみられるように, はつり深さが不足していることに起因した, 腐食に伴う再劣化が発生する可能性があり, 電気防食としての効果が発揮されていない可能性がある. ( ハ ) まとめ自然電位および分極抵抗から求めた腐食速度の結果より, 防食モルタル中の亜鉛の作用があまり見られないことから, シリーズ A および B と同様, 材齢約 2 年の時点で防食モルタル中の亜鉛が犠牲陽極としての効果を発揮していないと考えられる 本実験のまとめ本実験では, 内的塩害により劣化した RC 構造物に対して, セメント系電気防食材料を断面修復材として用いることで, その補修効果 防食効果の検証を実施した. 本研究の範囲内では, 十分な防食効果を得ることが出来なかった. これは, 防食モルタルの保水性が通常のモルタルに比べて小さいことや, 供試体の暴露環境が飛来塩分の影響のないところであることより, 亜鉛がほとんど消費されていないことが考えられる. そのため, 保水性を向上させた材料への取組みや, 飛来塩分の影響下にあるような環境の厳しい箇所で適用すれば防食効果が得られる可能性が考えられる. 本材料はまだ開発途上にあるが, 配線が不要なため, 電気防食材料としての十分活用できる可能性があり, 今後もさらに実用化に向けた取組みを行っていきたい. 5.5 本章のまとめ本章では,3 種類の補修工法による供試体実験を行い, それぞれの補修工法の適用性評価を行った. 主な結論をまとめると以下の通りである の部分断面修復工法については, 本実験で用いた 5 種類の補修材料ともマクロセル腐食抑制に一定の効果があったと推定されるが, 腐食が進行した際のマクロセル腐食抑制効果について, さらなる検証が必要である の犠牲陽極材を用いた電気防食工法では, 犠牲陽極材が受け持つ防食範囲の閾値を見出すまでには至らなかったが, 鉄筋裏はつり深さを軽減できる可能性が見られた のセメント系電気防食材料を用いた電気防食工法は, 本章で行った実験手法では防食効果が得られなかった. ただし, 保水性を向上させた材料への取組みや, 飛来塩分の影響下にあるような環境の厳しい箇所で適用すれば防食効果が得られる可能性が考えられる. 86

92 *************** 第 5 章参考文献 1) 例えば,C.E. Stewart:Consideration for repairing salt damaged bridge decks, Journal of ACI, Vol.72, No.12, pp , )ASTM C :Standard Test Method for Half-cell Potentials of Uncoated Reinforcing in Concrete, ) 横田優 : 電気化学的方法, 講習会 コンクリート構造物の診断技術,( 社 ) 日本材料学会, pp.26-36,2001 4)CEB Working Party V/4.1:Strategies for Testing and Assessment of Concrete Structures Affected by Reinforcement Corrosion (draft 4), BBRI-CSTC-WTCB, ) Oladis Troconis de Rincon, Yolanda Hernandez-Lopez, Angelica de Valle-Moreno, Andres A. Torres-Acosta, Freddy Barrios, Pablo Montero, Patricia Oidor-Salinas, Jose Rodriguez Montero: Environmental influence on point anodes performance in reinforced concrete, Construction and Building Materials, Vol.22, No.4, pp ) 平石剛紀, 新井淳一, 坂田昇, 須田久美子 : 犠牲陽極材のマクロセル腐食抑制効果に関する実験的研究, コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp , )( 社 ) 土木学会 : 電気化学的防食工法設計施工指針 ( 案 ), コンクリートライブラリー 107, )( 社 ) セメント協会 : すぐに役立つセメント系補修 補強材料の基礎知識, ) 松久保博敬, 真下昌章, 芦田公伸, 審良善和, 濱田秀則 : 海洋環境下における犠牲陽極材料の腐食抑制効果, コンクリート構造物の長期性能照査支援モデルに関するシンポジウム論文集,pp , ) 特開平 ) 稲木倫道, 永井崇昭, 宮田義一, 朝倉祝治 : 海水環境における各種金属粉末を混合したセメントによる鋼の防食方法, 材料と環境,Vol.53,No.3,pp , ) 稲木倫道, 宮田義一, 永井崇昭, 朝倉祝治 : 亜鉛および黒鉛粉末を混入したセメントによる鋼の防食, 材料と環境,Vol.53,No.5,pp ,

93 第 6 章電気防食工法の実構造物への適用による効果の検証 6.1 はじめに第 5 章では, 鉄筋腐食により劣化した鉄筋コンクリート構造物の補修について実験的に検証を行った. その結果, 種々の補修材料を用いた部分断面修復工法や, 犠牲陽極材を用いた電気防食工法で一定の腐食抑制あるいは防食効果が得られることがわかった. 中性化や塩害により劣化した RC 構造物の補修を行う場合には, 構造物の劣化状況に応じた補修方法を選択することが望ましい. しかし, 高架下に店舗等がある場合, 駅設備であって施工スペースが非常に狭い場合, さらに道路や鉄道との交差部分など, 検査や補修が容易でない箇所については, 今後の維持管理を容易にするために, 断面修復工法や表面被覆工法を適用するよりも, 電気化学的防食工法を適用するほうが望ましい場合もある. あるいは, 海岸線から近く, 塩害による劣化が著しい場合にも, 電気防食工法が優位であると考えられる. そこで, 本章では, 供用中の鉄道構造物に対して, 以下に示す 3 つのパターンでの電気防食工法による補修を行い, その効果を経時的に検証した. 1 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する, 亜鉛を犠牲陽極材として用いた流電陽極方式による電気防食工法 (6.2) 2 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する, 種々の陽極方式を用いた外部電源方式による電気防食工法 (6.3) 3 飛来塩分により劣化した RC 構造物に対する, 種々の陽極方式を用いた外部電源方式による電気防食工法 (6.4) 6.2 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する流電陽極方式による電気防食工法 施工箇所概要施工箇所は, 図 に示す, 内陸部に位置する 2 径間ラーメン高架橋と隣接するゲルバー桁の張出部分である. 平成 11 年度に亜鉛を犠牲陽極材として用いた流電陽極方式による電気防食工法により補修を実施した. 補修時のコンクリートの状況は, 中性化深さが 20~25mm, 塩化物イオン濃度は深部 ( 表面から約 100mm) で 1.2kg/m 3, 中性化移動濃縮領域で 2~3 kg/m 3, 鉄筋腐食度はⅡa ( 表面の大部分に腐食 )~Ⅱb( 部分的に断面欠損 ) 1) であった. 犠牲陽極材は, 図 および写真 に示すように,200~1,000mm 間隔で配置した. 犠牲陽極材設置後は,SBR 系ポリマーセメントモルタルにより断面修復を施した 施工後の追跡調査内容施工直後, 施工 3 ヶ月後,10 ヵ月後,19 ヵ月後,47 ヵ月後, および 90 ヵ月後において, 補修箇所およびその近傍の電位測定, および犠牲陽極材と鉄筋をつなぐリード線に流れる電流量の測定を行った. 併せて外観調査も実施した. また, 施工 47 ヵ月後に, 陽極材 ( 亜鉛 ) 部分には EPMA 写真 犠牲陽極材設置状況 88

94 図 電気防食工法 ( 流電陽極方式 ) 施工位置図 試験 -3 ( 犠牲陽極材配置間隔 :200~300mm) 試験 -6 ( 犠牲陽極材配置間隔 :1,000mm) 図 電気防食工法 ( 流電陽極方式 ) 犠牲陽極材配置図 ( 抜粋 ) 89

95 による元素分析を, 亜鉛を覆っている保護モルタル部分には粉末 X 線回折による腐食化合物の同 定を行い, 防食効果について検証した 施工後の追跡調査結果 (1) 電位測定図 に示す試験 -3について, 補修箇所およびその近傍の鉄筋の, 回路接続中および回路開放 24 時間後の電位を測定した. 施工 10 ヵ月後,47 ヵ月後,90 ヵ月後の結果をそれぞれ図 ~6.2.5 に示す. 図より, 回路解放後, 鉄筋の電位が概ね 100mV 程度貴側にシフトしていることが確認され, このことから通常の回路接続中は鉄筋の電位が防錆側にシフトし, 防食効果が見られると考えられる. (2) 電流量測定犠牲陽極材と鉄筋をつなぐリード線間に流れる電流を無抵抗電流計で測定した. 測定結果を表 に示す. 施工直後から施工 90 ヵ月後まで, 犠牲陽極材から鉄筋に向かって防錆電流が流れていることを確認した. また, 試験 -3が他に比べて電流量が多いが, これは犠牲陽極材の設置数が他の箇所に比べて多いことによると考えられる. さらに, 防食電流量と犠牲陽極材設置個数について明確な相関を見出すことが出来なかった. 表 犠牲陽極材 - 鉄筋間を流れる電流量 (μa) 試験番号 施工後の経過月 ( 犠牲陽極材個数 ) 直後 3ヵ月後 10 ヶ月後 19 ヵ月後 47 ヵ月後 90 ヵ月後 2 (4) (16) (6) (3) * 6 (3) (1) (1) (1) (1) (1) (1) (1) (3) 外観調査未補修部との境界部分から 100mm 程度の箇所で幅 0.2mm 程度のひび割れが施工 47 ヵ月後から確認されているが, 電気防食工法施工前から発生していたものかが不明である. その他, 顕著な変状は見られなかった. 90

96 図 施工後 10 ヶ月の自然電位 ( 左 : 回路接続中, 右 : 回路解放 24 時間後 ) 図 施工後 47 ヶ月の自然電位 ( 左 : 回路接続中, 右 : 回路解放 24 時間後 ) 図 施工後 90 ヶ月の自然電位 ( 左 : 回路接続中, 右 : 回路解放 24 時間後 ) 91

97 (4) 化学分析 2) 施工 47 ヵ月後に, 施工箇所から犠牲陽極材を取り出し, 陽極材 ( 亜鉛 ) 部分には EPMA による元素分析を, 亜鉛を覆っている保護モルタル部分には写真 犠牲陽極材の EPMA 分析画像粉末 X 線回折による腐食化合物の同 ( 左 : 未施工, 右 :47 ヶ月施工後 ) 定を行った. EPMA による元素分析の測定では, 写真 に示すように, 施工後取り出した犠牲陽極材の亜鉛 (Zn) が減少し 保護モルタルへ溶出していることが確認された. また モルタル部の生成物を粉末 X 線回折により同定したところ 1ZnO,2Ca(Zn(OH) 3 ) 2 2H 2 O 等の生成物が確認された. 一方, 未使用の犠牲陽極材は, いずれの分析においても, 上記化合物が確認されていないことから, 施工した箇所の犠牲陽極材から検出された化合物は, 防食電流が流れたことによって生成されたものと推測される 本施工のまとめ亜鉛を犠牲陽極材として用いた流電陽極方式の電気防食工法を実高架橋に対して施工し, 施工 90 ヶ月後までの電位, 電流量, 外観を調査した. 主な調査結果は以下の通りであり, 施工 90 ヶ月後まで十分な防食効果を発揮していることを確認した. 1 施工後の調査で, 回路解放後, 鉄筋の電位が概ね 100mV 程度貴側にシフトしていることが確認され, このことから通常の回路接続中は鉄筋の電位が防錆側にシフトし, 防食効果が見られると考えられる. 2 施工直後から施工 90 ヵ月後まで, 犠牲陽極材から鉄筋に向かって防食電流が流れていることを確認した. ただし, 防食電流量と犠牲陽極材設置個数には明確な相関が見られなかった. 3 施工 47 ヵ月後に取り出した犠牲陽極材の亜鉛 (Zn) が減少し, 保護モルタルへ溶出していることが確認された. また, モルタル部の生成物を粉末 X 線回折により同定したところ, 亜鉛生成物が確認された. これより, 施工した箇所の犠牲陽極材から検出された化合物は, 防食電流が流れたことによって生成されたものと推測される. 92

98 6.3 中性化と内的塩害の複合劣化を受けた RC 構造物に対する外部電源方式による電気防食工法 施工箇所概要施工箇所は, 図 に示す, 内陸部に位置する 3 径間ラーメン高架橋の床版部分 6 スパンである. 平成 15 年度に表 に示す 6 工法を各工法 1 スパンずつ施工した. 同時に mm の角柱供試体を各工法 1 体ずつ作成し, 当該高架橋近くの屋外環境下に暴露した. 当該箇所はこれまでに断面修復と表面被覆による補修が過去 2 回行われていたが, 補修前の調 図 電気防食工法施工箇所 表 電気防食工法の施工工法および断面修復対象面積 床版陽極方式施工面積断面修復対象箇所工法 No. 面状線状点状 (m 2 ) 面積 (m 2 ) 割合 (%) 1 チタン溶射方式 リボンモール方式 チタンロッド方式 導電性モルタル方式 チタントレイ方式 チタングリッド方式 平均 床版 No. 工法 表 施工前はつり調査結果 かぶり 中性化深さ 中性化残り 塩化物イオン量 表面部 (30mm) 深部 (100mm) 鉄筋 1) 腐食度 (mm) (mm) (mm) (kg/m 3 ) (kg/m 3 ) ( 最大 ) 1 チタン溶射方式 Ⅱb 2 リボンモール方式 Ⅱb 3 チタンロッド方式 Ⅱa 4 導電性モルタル方式 Ⅱa 5 チタントレイ方式 Ⅱa 6 チタングリッド方式 Ⅰ 平均

99 査では表 に示すとおり, 平均 30% 程度の剥離箇所が存在していた. また, 施工前にはつり調査を実施した結果を表 に示す. 表より, 当該箇所の劣化原因は, 中性化および内的塩害による複合劣化によるものと推察される. また,ASR 促進膨張試験も実施したが,ASR の可能性は認められなかった. さらに, 比抵抗測定の結果より, 当該箇所は比抵抗が非常に高く, コンクリートが乾燥していることもわかった 施工後の追跡調査内容施工後に実施した追跡調査の内容を表 に示す. 現地での追跡調査は平成 16~17 年度の 2 年間は季節ごとに 4 回 / 年実施し, 施工 5 年後の平成 20 年は最もコンクリートが乾燥しており, 電流量が多いことが想定される夏季 (8 月 ) に 1 回実施した. また, 復極量試験および分極試験は事務所内での遠隔管理システムにより月 1 回自動計測を行った. なお, チタン溶射方式 および 導電性モルタル方式 は, 打音検査を実施すると陽極システムを損傷する可能性があるため, 打音検査を実施していない. 表 追跡調査内容 項目 内容 頻度 外観調査 高所作業車による至近距離目視調査 ( 一部工法を除き打音検査を実施 ) 含水率調査 表面水分計による計測 ( 母材, 補修材 ) H16~17:4 回 / 年, 比抵抗測定 比抵抗測定器による計測 ( 母材, 補修材 ) および H20.8 に実施 温度 湿度 データロガーによる環境測定 電位分布 ON 電位,OFF 電位のポテンシャルマッピング 復極量試験分極試験 遠隔管理システムによる復極量測定遠隔管理システムによる分極曲線測定 1 回 / 月 ( 自動計測 ) 施工後の追跡調査結果 (1) 外観調査打音検査が不可能な 2 工法 ( チタン溶射方式および導電性モルタル方式 ) を除き, 施工後 2 年までの間で補修した断面修復材の一部 ( 主に隅角部 ) に軽音が確認された. 断面修復による補修範囲が電気防食工法の効果を得られるための必要最小限としたことから,JR 西日本で定めた コンクリート構造物補修の手引き 3) に定められた補修方法 ( はつり面積, 深さ等 ) ではないことも原因と考えられる. 施工 5 年後の調査で, 図 に示すように, リボンモール方式にひび割れが 4 本 ( 幅 0.2mm) 新たに発生していることが確認された. 鉄筋探査の結果, ひび割れの位置と鉄筋位置がほぼ等しいことが判明したため, ひび割れ箇所のコア採取を行った. その結果を写真 6.3.1~6.3.3 に示す. ひび割れ直下の鉄筋は施工時の鉄筋ケレン後の状況 ( 写真 6.3.4) を保っており, 新たな腐食の進行は鉄筋表面に認められなかった. また, 採取コアの断面状況より, コンクリート表面に認められるひび割れは, 鉄筋から表面まで貫いていることが確認された. 当該箇所は施工後 5 年間にわたり良好な防食状態を維持している ( 後述 ) ことや, ひび割れ箇所の 94

100 断面修復厚さが 17~25mm と薄いことから, このひびわれは施工直後からの乾燥収縮によるひび 割れが列車振動により増幅したものと推定される. 今後は, 日常の定期検査等で変状の把握を行うこととしている. ひび割れ 姫路 事前外観調査結果スラブ 2 岡山 (08/08 調査 ) (08/08 調査 ) (08/08 調査 ) (08/08 調査 ) 凡 例 : ひび割れ : 浮き (08/08 調査 ) (08/08 調査 ) (08/08 調査 ) : 補修跡 スラブ位置図 姫路 岡山 図 外観調査図 図 施工 5 年後リボンモール工法のひび割れ 起点側 終点側 写真 リボンモール工法ひび割れ箇所の鉄筋表面写真 起点側 終点側 写真 リボンモール工法ひび割れ箇所のコアの鉄筋界面写真 95

101 鉄筋側 コンクリート表面側 ひび割れ 起点側 終点側 写真 リボンモール工法ひび割れ箇所の採取コア状況 写真 施工時の鉄筋ケレン状況 (2) 比抵抗および含水率測定結果コンクリート全面が陽極材で被覆されている 2 工法を除く,4 工法の比抵抗の経時変化を図 に示す. 比抵抗 (kω cm) 200 母材 リボンモールチタンロッドチタントレイチタングリッド 0 H16.6 H17.6 H18.6 H19.6 H20.6 調査時期 比抵抗 (kω cm) 200 補修材 リボンモール チタンロッド チタントレイ チタングリッド 0 H16.6 H17.6 H18.6 H19.6 H20.6 調査時期 図 比抵抗の経時変化 96

102 補修材ではリボンモール工法が他に比べて特に施工後初期で比抵抗が小さな値であるが, その他は母材と補修材でほぼ同様の値を示しており, 季節変動に伴う比抵抗の変動もほぼ同等といえる. 季節ごとでは, 冬季が夏季より比抵抗が高いことがわかる. これは, コンクリートの水分率の結果 ( 図 参照 ) にもあるように, 冬季は夏季よりかぶりコンクリートが乾燥傾向にあることによると推測される. また施工後 5 年 ( 調査時期 :8 月 ) の結果は, 施 水分率 (%) 5 リボンモール チタンロッド 4 チタントレイ チタングリッド H16.6 H17.6 H18.6 H19.6 H20.6 調査時期 図 母材の水分率の経時変化 工後 1~2 年での夏期の調査結果とほぼ同等であった. このことより, 施工後 5 年経過した時点でも, 断面修復材の水和反応により既設コンクリートと補修材はほぼ同じ比抵抗となり, かぶり部分のコンクリート抵抗が均一になる, すなわち防食電流が均等に流れやすくなると考えられる. (3) 復極量, 電流密度 電気防食工法の効果を確認する方法の一 つに, 防食電流密度が 1~30mA/m 2 程度の範 復極量 (mv) チタン溶射チタンロッドチタントレイ リボンモール導電性モルタルチタングリッド 囲で, 復極量が 100mV 以上という防食基準 200 を用いて評価することが示されている 4). 復 100 極量が 100mV 以上となるための防食電流量 0 を設定することを目的として, 分極試験を定 H16.4 H17.4 H18.4 H19.4 H20.4 H21.4 測定時期期的に実施し, その試験結果により電流量図 復極量の経時変化 ( 電流密度 ) の調整を実施している. 各工法の 復極量と電流密度の経時変化を図 6.3.5, 図 20 チタン溶射リボンモール に示す. また, 施工 2 年後と 5 年後のチタンロッド導電性モルタル 15 分極曲線を, チタンロッド工法およびチタンチタントレイチタングリッド トレイ工法を例として図 に示す. 10 復極量は 5 年間を通じて概ね 100mV 以上 を維持しており, 防食効果があるものと考え 5 られる. なお, チタングリッド工法は, 通電 0 開始 1 年前後および 4 年以降で復極量 100mV H16.4 H17.4 H18.4 H19.4 H20.4 H21.4 測定時期を確保できていない時期があった. これは定図 電流密度の経時変化格電圧上限での運転としても電流量が減少 し, 復極量が減少したものと考えられる. ただし外観調査や打音点検の結果では, 錆汁など鉄筋 腐食に起因する変状は認められなかった. 電流密度 (ma/m 2 ) また, 復極量 100mV シフトを得るために調整している電流密度は, いずれの工法も施工 5 年後 の値が表 に示す初期値よりかなり小さくなっており, さらに季節ごとの電流密度では, 施 工 2 年後 5 年後ともに, 冬季は夏季より電流密度が低い. これは図 に示すとおり, 冬季 が夏季より同一分極量を得るために必要な電流密度が小さいことによるものと考えられる. 97

103 以上より, 分極試験の結果により通電電流量の調整を行い, 復極量 100mV シフトを確保することができており, また今後も分極試験の結果をもとに通電電流量の調整を行うことが, 電気防食工法の長寿命化に不可欠であると考えられる. 分極量 (mv) H20.7- チタンロッド H チタンロッド H20.7- チタントレイ H チタントレイ 本施工のまとめ 外部電源方式により 6 工法の電気防食工法を施工電流密度 (ma/m 2 ) し, 施工後 5 年間にわたり追跡調査を行った. 一部図 分極曲線の一例工法に若干の不具合が見られるものの, 施工 5 年後では総じて良好な防食状態を保っていることが確認された. 今後さらに引き続き追跡調査を行い, 長期耐久性について検討を加えていくこととしたい. 98

104 6.4 外的塩害により劣化した RC 構造物に対する外部電源方式による電気防食工法 施工箇所概要 断面図 平面図 8700mm 山側 C D A B 8780mm 起点方 海側 終点方 図 施工した橋梁 施工箇所は, 図 に示す, 瀬戸内海に面し, 海側に防潮提桁を有する複線 RC 単 T 桁である. 昭和 27 年に建設されたが, 海からの飛来塩分により鉄筋腐食が進行し, 昭和 49 年 昭和 59 年と 2 度にわたって表面被覆 表 電気防食工法の施工工法 施工年度陽極方式施工エリア工法面状線状年度 A チタンメッシュ方式 H4 B 導電性塗料 H4 C チタンリボンメッシュ方式 H14 D 導電性モルタル方式 H14 工法による補修が実施されたが, いずれも変状の進行を抑制することができなかった. そこで, 平成 4 年に表 に示す 2 工法の電気防食工法を図 の A B のエリア ( 海側 ) にて施工した. 同時に,C D のエリア ( 山側 ) には表面被覆工法による補修を行った. しかし,C D エリアの桁に再変状が生じたため, 平成 14 年に表 に示す工法の電気防食工法を施工した 施工後の追跡調査内容平成 4 年の A B エリア施工後, 平成 8 年までの約 4 年間にわたり復極量や分極試験を半年ないし 1 年ごとに実施した. また,A B エリア施工 2 年後の平成 6 年に, 表面被覆工法の 2 エリアを含めた 4 エリアの塩化物イオン量と全アルカリ量の調査を行った 5). 平成 14 年の C D エリア施工に併せて A B エリアの外観調査 復極量調査を実施し,C D エリア施工 3 年後の平成 17 年に 4 工法の復極量調査を実施した 施工後の追跡調査結果 (1) 平成 6 年の調査 5) 平成 6 年の調査では, 以下のことがわかった. ( イ ) 塩化物イオンの分布 : 防潮提と海側橋りょうの塩化物イオン量が同程度, 山側橋りょうの塩化 99

105 物イオン量がやや少ない傾向にあり, 海岸からの距離に関係しているものと考えられる. 表面被覆工法の山側橋りょうと比較して, 通電した防潮提と海側橋りょうで, 塩化物イオンがコンクリート表面に移動している傾向が見られた. ( ロ ) アルカリイオンの分布 : 導電性塗料方式では鉄筋近傍へのアルカリイオンの移動, 集積が認められたが, チタンメッシュ方式や表面被覆工法の場合にはその傾向は見られなかった. また, 塩化物イオンの場合と異なり, 試料の採取位置による違いはそれほど顕著ではなかった. 鉄筋近傍 へのアルカリイオンの移動, 集積は, 鉄筋の付着性能を低下させる原因となるとされている が, 調査の範囲内では, 表面被覆工法のみの施工を行った部分とそれほど変わらなかった. 6) など (2) 平成 14 年の調査平成 14 年の C D エリア施工に併せて実施した A B エリアの調査結果は, 以下の通りである. (i) Aエリア ( チタンメッシュ工法 ) 中性化深さが 39.8mm( かぶり :77.0mm) と他のエリアと比較して大きいものの, 鉄筋腐食は軽微であった ( 鉄筋腐食度 :Ⅰ 1) ). また, チタンメッシュの表面にモルタルの吹き付けを行っているが, このオーバーレイ材がはく離してメッシュが露出している ( 写真 6.4.1). (ii) Bエリア ( 導電性塗料工法 ) 施工箇所は, スターラップの大部分に腐食がみられた ( 鉄筋腐食度 :Ⅱa 1) ). また, 塗料の一部が剥離していた ( 写真 6.4.2). ただし, 鉄筋腐食によるひび割れや浮きは認められなかった. オーバーレイ材の剥離とチタンメッシュの露出写真 オーバーレイ材の剥離導電性塗料の剥がれ (3) 復極量写真 導電性塗料の剥がれチタンメッシュ工法 (A エリア ) と導電性塗料工法 (B エリア ) の復極量の経 主桁 (S-1) 主桁 (S-2) 時変化を図 6.4.2~6.4.3 に示す. 350 防潮堤 (S-3) 防潮堤 (S-4) チタンメッシュ工法は, 通電機関を 300 通じて概ね復極量が防食基準とされ る 100mV 以上を確保しており, 防食 150 効果が見られた 一方, 導電性塗料工法では, 復極量 0 の変化を見ると, 夏季から冬季にかけ て復極量が増加し, 逆に冬季から夏季経過年数 ( 年 ) にかけては減少する傾向が認められ図 復極量の経時変化 ( チタンメッシュ陽極方式 ) た. また, 防潮堤桁および海側の主桁において, 復極量 100mV が確保できていない時期があった. これは,(2) で述べたように, 導電性塗料の一部が剥離したことによるものと考えられる. しかし, 鉄筋の腐食による錆汁やひび割れは認められなかったことと,(2) より鉄筋の腐食が軽微であるこ 復極量 (mv) 100

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