<824F E7C8A7788CA90528DB895F18D908F E B695A88B7B97C7816A5F46696E616C2E786477>

Size: px

Start display at page:

Download "<824F E7C8A7788CA90528DB895F18D908F E B695A88B7B97C7816A5F46696E616C2E786477>"

しまなかいて
5 years ago
Views:

1 学位論文の内容の要旨論文提出者氏名論文審査担当者宮良香菜主査宇尾基弘副査荒木孝二高橋英和論文題目 The influence of heat treatment on the mechanical properties of Ni-Ti file materials ( 論文の内容の要旨 ) < 緒言 > 根管治療に NiTi 製ファイルが導入され, 根管形成は飛躍的に進歩した.NiTi 製ファイルはステンレススチール製ファイルと比較して優れた柔軟性を示す. この柔軟性は湾曲根管の形成に効果的に作用する. そもそも NiTi 合金には, 特徴的な様々な性質があり, 特に NiTi ファイルは超弾性が注目され改良が進められている. この特性はマルテンサイト変態により発揮され, また, 相変態挙動は, 組成, 加工, そして熱処理に大きく影響を受ける. 以前の研究で,NiTi 合金の熱処理は柔軟性を向上させる, と報告がある. 一方,NiTi 製ファイルは湾曲根管で回転させることで回転疲労破折のリスクが高まる. ファイル使用中に塑性変形の徴候が見られず, 破折は予期せず起こる. また, 市販製品の回転疲労破折についての報告は数多くあるが, 熱処理が NiTi ファイルの回転疲労特性に与える影響についての報告はほとんどない. そこで, 本研究の目的は NiTi 合金より作製された試作ファイルの回転疲労特性における熱処理効果を評価することとした. < 材料および方法 > 試料直径 1.0 mm の NiTi 合金ワイヤー (NT-N,Ti at%) を, 先端径 0.30 mm,0.06 テーパーに加工した. 熱処理試料を石英ガラス管に減圧封入し 30 分間加熱した. 加熱温度は,300 (group 300),400 (group 400), 450 (group 450),500 (group 500),600 (group 600) とし, 熱処理終了後直ちに石英ガラス管を氷水中で粉砕し急冷した. 無処理の群を対照群とした. 示差走査熱量分析 (DSC) 試料 20 mg を長さ約 2 mm に切断し, アルミニウムセルに封入した. 空のアルミニウムセルを対照とし, アルゴンガス雰囲気下で, 室温から 100 までの予備加熱後,-100 まで冷却する過程でマルテンサイト変態が始まるマルテンサイト変態開始温度 (M s) および終了温度 (M f) を測定した. その後, 再び 100 まで加熱する過程で逆変態が始まる逆変態開始温度 (A s) および終了温度 (A f) を測定した. 加熱スピードは 0.33 /s, 冷却には液体窒素を使用した. 曲げ試験最大荷重 5 kg のロードセル, 可動式ステージ, 差動トランス式変位計から構成される自作の試験装置を用いて曲げ特性を評価した. 試料先端から 3.0 mm の点がロードセルに植立された直径 5.0 mm の金属製丸棒と接触するように先端から 9.5 mm の点をスチール製治具で把持した. 可動式ステージが動くことで試料に荷重が加わり, たわみが与えられる. このときの荷重およびたわみの関係を記録し, 解析処理を行った. -1 -

2 試験装置全体は 37 に保たれたアクリル製の恒温槽内に設置されており, 変位速度約 1.0 mm/min, 最大変位量 3 mm の条件で測定を行った. 得られた荷重たわみ線図から, 弾性率に相当する荷重 -たわみ比 (L/D 比 ) と 2.0 mm たわみ時の曲げ荷重を計測した. 回転疲労試験直径 2.0 mm の 3 個のステンレススチールピンよりなる自作回転疲労試験機にて実験した. 試料は, 曲率半径 10 mm, たわみ角度 15 ( 以下,R10) および曲率半径 5 mm, たわみ角度 20 ( 以下,R5) の 2 条件で試験機に固定した. 試験温度 37, 潤滑材としてジメチルシリコーンオイルを用い, 試料が破折するまでの回転数 (NCF) を計測した. 統計学的解析各測定点について, それぞれ有意水準 5% で, 一元配置分散分析および Tukey 法を用いて解析を行った. < 結果 > DSC group400 と 450 の M s および A f は, その他の group300,500,600 および対照群と比較して有意に高い値を示した (p<0.05). また,group400 と 450 の M s は 37 付近で,A f は 37 より高かった.group300,500 および対照群の M s は,group600 より有意に高かった (p<0.05).group300 および 600 の A f は対照群と比較して有意に高い値を示した (p<0.05). 曲げ試験全ての群で超弾性挙動を示した.group400 および 450 の L/D 比は group600 と対照群と比較して有意に小さい値を示した (p<0.05). また,group500 の L/D 比は group600 より有意に小さかった (p<0.05).group400, 450 および 500 の 2.0 mm たわみ時における曲げ荷重は group300 と対照群と比較して有意に小さい値を示した (p<0.05). 回転疲労試験 R10 において,group500 の NCF は group600 と対照群より有意に大きい値を示した (p<0.05).group400 と 450 は group600 より有意に大きかった (p<0.05).r5 において,group400,450 および 500 は group600 と対照群より有意に大きかった (p<0.05). < 考察 > 相変態挙動相変態挙動は,NiTi 合金の機械的特性に影響を与える最も重要な因子の一つである. 冷間加工や熱処理はまた,NiTi 合金の機械的特性を制御するうえで重要であり,NiTi 製ファイルの寿命を向上させる. 特に, 熱処理は相変態挙動に影響を及ぼすため, 相を特定することは極めて重要である. DSC は,NiTi 製ファイルの特性を評価するのに適した装置であり, 相構成について相変態温度を計測することにより把握することができる. 本研究では, この DSC を用いて相変態挙動に与える熱処理効果を検討した.DSC の結果より,group400 と 450 の A f は口腔内温度である 37 より高温であった. これは, 口腔内環境下においてこの 2 群はオーステナイト相とマルテンサイト相の混合相であることを意味している. 一方,group500 の A f は 37 付近,group300,600 および対照群の M s と A f は 37 より低く, この温度条件下ではオーステナイト相単相で存在すると考えられる. この相構成の違いは曲げ特性に影響すると推察される. 曲げ特性 NiTi 超弾性合金の荷重たわみ線図はヒステリシスループを描く.L/D 比は NiTi 合金の弾性率に相当し, 構成される相に依存する. また, マルテンサイト相の弾性率ははオーステナイト相より小さいことがわかっている. それゆえ, 弾性領域内の柔軟性は M s と A f の影響を受ける. 本研究の曲げ試験の結果より, group400 と 450 の L/D 比は 37 条件下で他の群より小さかった. これは,DSC の結果と一致する. 試料のたわみが弾性領域を超えて超弾性領域になると, マルテンサイト変態誘起応力によりマルテンサ -2-

3 イト変態がおこる. オーステナイト相は負荷時にマルテンサイト相へと変態し, 除荷後オーステナイト相へと逆変態する. 本研究では試料の超弾性領域内における機械的特性は 2.0 mm たわみ時における曲げ荷重によって特徴づけられる.group400,450 および 500 の 2.0 mm たわみ時における曲げ荷重は対照群より有意に小さかった. 応力と相変態温度との間には相関関係があり,M s が低下するとマルテンサイト変態誘起応力が上昇する.group400 および 450 のM s は対照群のそれより有意に高く, そしてマルテンサイト変態誘起応力は減少した. オーステナイト相は高温でより安定であり, オーステナイト相で安定していると応力誘起マルテンサイト変態をおこすためにはより大きな応力が必要となる. 相変態温度の相違が group400,450 および 500 の 2.0 mm たわみ時の曲げ荷重を対照群より低く抑えている理由の一つと考えられる. また, group600 では再結晶化により除荷後永久ひずみがわずかながら認められた. 回転疲労特性 NiTi 製ファイルの器具破折には 2 種類の異なるメカニズムがあるすなわち, ねじれ負荷および回転疲労により起こる破折である. 通常, 過剰なねじれ負荷による破折は, ファイル先端径よりも細い根管にファイル先端が拘束されたときに生じる. すなわち, ファイルと根管との接触面積が広く, 術者が根尖方向に加える力が大きいと, ファイル先端が根管にロックされてしまい, ファイル軸部の回転に追いつかなくなって破折が生じる. この場合, 破折ファイルには塑性変形が観察される. 一方, 回転疲労は湾曲根管でファイルを回転させることにより生じ, しばしば突然破断する. この場合破断面にめだった形態変化が認められない. Parashos らは根管形成中における器具破折の 70% は回転疲労破折によるものであると報告している. 本研究では, この回転疲労による破折実験を行った.NiTi 製ファイルでは, 曲率半径, たわみ角度およびファイルサイズが器具破折において回転速度より重要である. 回転疲労試験は一定のたわみ量で行われた. 疲労寿命は一般的に応力に強く影響される. 応力が増加すると疲労寿命は短縮される. 本研究の曲げ試験結果より, 一定のたわみ量において線材の応力は群間で異なる. 各群の応力たわみ線図より,1.0 mm たわみ量は弾性領域内であるが 1.5 mm たわみ量では超弾性領域となることがわかる. つまり,R10 における回転疲労特性は相構成に依存する.group400,450 および 500 の L/D 比は group600 より有意に小さいため,R10 における group400,450 および 500 の NCF は group600 より有意に大きかった. 一方,R5 における回転疲労特性は, 応力誘起マルテンサイト変態に依存するため R5 における group400,450 および 500 の NCF は group600 より有意に大きかった. 市販されている NiTi 製ファイルは異なる組成や製造工程, デザインである. 本研究では市販製品間のそれらの差による影響を除外し, 熱処理の影響を検討するために線材を用いた. 最近の研究では, 特別な熱処理を加えた新規 NiTi 製ファイルが従来の NiTi 製ファイルより優れた柔軟性および回転疲労特性を有しているとの報告がある. 本研究はこれらの報告と一致している. それゆえ, 適切な熱処理は柔軟性および回転疲労特性を向上させることを裏付けた. < 結論 > NiTi 合金線材の機械的特性に与える熱処理効果を DSC, 曲げ試験, 回転疲労試験によって検討した. 結論は以下の通りである. 1. 相変態温度は熱処理により変化し, また, この変化は熱処理温度と関連がある. 2. group400 と 450 の L/D 比は対照群より小さかった.group400,450 および 500 の 2.0 mm たわみ時の曲げ荷重は対照群より小さかった. 3. R10 条件下で group500 は最大の NCF を示した.R5 においては group400,450 および 500 の NCF は対照群と比して大きかった. 4. NiTi 製ファイルの熱処理による柔軟性の変化は, 回転疲労特性に影響を与えうる. 柔軟性に優れた NiTi 製ファイルは回転疲労特性も優れていることが示唆された. -3 -

4 論文審査の要旨および担当者報告番号甲第 4594 号宮良香菜論文審査担当者論文題目主査宇尾基弘副査荒木孝二高橋英和 The influence of heat treatment on the mechanical properties of Ni-Ti file materials ( 論文審査の要旨 ) 根管治療は, 深在性の齲蝕, 亀裂および外傷などにより歯髄に炎症や感染が起きた時に行われる. 緊密かつ本来の根管形態を維持した根管充填を達成するためには, 効果的な根管形成および根管洗浄が必要である. NiTi 製ファイルは従来のステンレススチール製ファイルと比較し柔軟性に優れるため, 湾曲根管にも追従するという利点を有するとともに, 専用エンジンとの併用により根管形成の効率化を可能にした画期的な根管治療用器具であり, さらに,NiTi 製ファイルの使用により治癒率が向上したとの報告もある年に,Walia らにより NiTi 合金製矯正用ワイヤーより作製された試作ファイルが臨床で用いられた. そして 1992 年には NiTi 製ファイルの製造について研究が始まり, 翌年には臨床用に市販されるようになった.NiTi 製ファイルの登場は根管治療の質を向上させ, 画期的な影響を与えた.NiTi 製ファイルのデザインや合金の組成, 製造工程および表面処理等における著しい向上が見られる. NiTi 製ファイルによる根管形成は効果的で一般的に安全であると言われているが新規ファイルが開発されているにもかかわらず器具の破折が高頻度で起こるとの報告もある. 近年熱処理についての研究が行われており, 適切な熱処理により曲げ特性が向上したとの報告もあるが, 熱処理の疲労特性に与える影響についての研究はなされていない. 上記のような状況を背景として, 宮良は,NiTi 製ファイルを試作し, 熱処理による機械的特性変化の観点から, 熱処理が回転疲労特性に与える影響について詳細に解析した. 実験には, 直径 1.0 mm の NiTi 合金ワイヤーを先端径 0.30 mm,0.06 テーパーに加工した試作ファイルを用い,300,400,450,500,600 で 30 分熱処理し, 無処理を対照群とした. また, 熱処理によるニッケルチタン合金の相変態挙動の変化を定量的に測定するために示差走査熱量分析 (DSC) を行った. DSC は JIS 規格にも記載のある一般的な方法であり, 形状記憶合金の相変態温度を調べる上で妥当な選択といえる. 独自の片持ち梁式曲げ試験は, ステンレススチール製ファイルに用いられている ISO 規格試験では不十分とされてきた点を補完するものであり,DSC と合わせて機械的特性を検討したことは高く評価できる. さらに, 自作の回転疲労試験機を用いて熱処理が回転疲労特性に与える影響を検討した. 回転疲労による破折は, ファイルに顕著な形態変化が認められないまま突然予期せず起こることから, 破折様相が注目されてきた. 宮良は, 回転疲労試験条件について NiTi 合金の特徴を考慮して設定していることから, 実験に対する慎重な配慮が窺える. 本研究で得られた主な結果は以下の通りである 1. 相変態温度は熱処理により変化し, また, この変化は熱処理温度と関連がある. 2. group400 と 450 の L/D 比は対照群より小さかった.group400,450 および 500 の 2.0 mm たわみ時の曲げ荷重は対照群より小さかった. 3. R10 条件下で group500 は最大の NCF を示した.R5 においては group400,450 および 500 の NCF は対照群と比して大きかった. ( 1 )

5 4. NiTi 製ファイルの熱処理による柔軟性の変化は, 回転疲労特性に影響を与えうる. 柔軟性に優れた NiTi 製ファイルは回転疲労特性も優れていることが示唆された. 以上のように, 宮良は,NiTi 製ファイルの機械的特性に着目して回転疲労特性に与える熱処理効果を総合的に検討し, 柔軟性に優れた NiTi 製ファイルは回転疲労特性も優れていることを明らかにしている. これは臨床的にも極めて有用と考えられる研究成果である. このように, 本研究は現在世界で広く用いられている NiTi 製ファイルの回転疲労特性と熱処理の関係特徴を明らかにしたものであり, 歯科医学医療の今後の発展に寄与するところが大きいと認められる. よって, 本論文は博士 ( 歯学 ) の学位を請求するに十分値するものと認められる. ( 2 )

中分類名 : エンジン用リーマーファイル小分類名 : ニッケルチタン製ファイル根管治療用器材編メーカーマニー ( 株 ) ジッペラ - 社 / 茂久田ジッペラ - 社 / 茂久田商品名 NRT ファイル (NiTi) フレックスマスターレシプロック規格ステンレススチール製ファイルと

中分類名 : エンジン用リーマーファイル小分類名 : ニッケルチタン製ファイル根管治療用器材編メーカーマニー ( 株 ) ジッペラ - 社 / 茂久田ジッペラ - 社 / 茂久田商品名 NRT ファイル (NiTi) フレックスマスターレシプロック規格ステンレススチール製ファイルとジッペラ - 社 / 茂久田ジッペラ - 社 / 茂久田 NRT ファイル (NiTi) フレックスマスターレシプロックステンレススチール製ファイルと NiTi 合金製ファイルを組み合わせたシステムで構成しています種類 : テーパー (.04.06) サイズ : 各 #20~#40 根管の太さに合わせてシステム化されたニッケルチタンエンジン用ファイル種類 :02 テーパー (21 25mm)#15~70