3) 解析範囲は日本および東アジア域 ( 北緯 20~50 度 ; 東経 110~150 度 ) とし, 日本については 10km スケール, 東アジア域については 0.5, 降水量予測値を算出した 観測降水量として, 日本域については農業環境技術研究所作成の AMeDAS メッシュ値 1) を,

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1 2. 全球及びアジアの水資源将来予測 2.2. アジア域水循環予測 統計的ダウンスケーリングによる 10km スケールの降水量予測 独立行政法人農業環境技術研究所地球環境部食料生産予測チーム西森基貴 要約本課題では, 全球気候モデルから出力される循環要素を入力とする統計的ダウンスケーリング手法を, 東アジア地域への適用を念頭に置いて開発 改良し, 主に日本における温暖化時の夏季 冬季の降水量分布を 10kmスケールで予測することを試みた その結果, 夏季においては温暖化時の降水量は本州太平洋岸で減少 / 北日本で増加することが,2 つの全球気候モデルの出力を用いた場合に共通していた これは全球気候モデル自身における温暖化予測において, 北太平洋高気圧の西偏傾向が類似しているためである いっぽう冬季においては, 降水量は本州南岸で増加 / 北陸で減少という結果が示された 目的温暖化予測に用いられる全球気候モデル (GCM) から出力される気温 降水量などの再現値および予測値は, 空間的に大循環スケール (200~500km) を代表したものであり, また雲や水に関わる物理過程が不十分という問題がある この問題を解決するために,GCM の出力を境界条件として駆動させ対象領域周辺のみの再計算を行う ( ネスティングする ) 地域気候モデル (RCM) 実験が行われているが, 計算機資源とマンパワーの不足から予測値がようやく公開され始めた段階であり, またその空間解像度も現状では 40~50km 程度である 農業分野において水資源に対する影響を評価するためには, さらに小さな局地スケール (10km 以下 ) の予測値が必要不可欠であるが, 現状では過去の気候システムにおける統計的関係を利用するほかはなく, これは過去の気候システムにおける大循環要素と降水量など気候要素との間の統計的関係を将来にも適用し, 温暖化時の循環要素の変化から気候要素の変化値を計算する統計的ダウンスケール手法 (SDSM) と呼ばれる SDSM にも様々な方法があり, 対象とする時空間スケールに応じた適用が求められるが, ここでは比較的平易な線形重回帰法を用いて,2050 年を中心とする 20 年間を対象とした農業分野における水資源変動の温暖化による影響を評価するために,GCM および RCM の出力から 10km 以下のスケールの降水量を推定できる SDSM の開発を行った 研究方法 1) 入力に用いる GCM は, 本プロジェクトで新たに計算された気象研究所の大気 GCM(MRI/JMA98-AGCM) および東京大学 / 国立環境研究所の大気 GCM(CCSR/NIES-AGCM5.6) である また結果の比較および考察のために, 同様に本プロジェクトで計算された気象研究所 (MRI), 電力中央研究所 (CRIEPI) および国立環境研究所 (NIES) の各 RCM の計算結果をそのまま, あるいはその出力値に SDSM を適用して使用した またこれらの結果を検討するために,IPCC で公開している英国ハドレーセンターの GCM(HadCM3) の結果についても使用した 2) 解析期間は本プロジェクト全体の方針により, 現在気候として 1981~2000 年, 将来気候として 2041~2060 年のそれぞれ 20 年間とした 各期間の温暖化の程度を左右する温室効果ガスの排出シナリオは, 気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の歴史シナリオおよび新排出シナリオ (SRES) の A2 とした なお RCM を用いた解析では, モデル計算の制約により, それぞれの 20 年の期間中での 10 年のみとなっている 94

2 3) 解析範囲は日本および東アジア域 ( 北緯 20~50 度 ; 東経 110~150 度 ) とし, 日本については 10km スケール, 東アジア域については 0.5, 降水量予測値を算出した 観測降水量として, 日本域については農業環境技術研究所作成の AMeDAS メッシュ値 1) を, 東アジア域については英国イーストアングリア大学の CRU 0.5*0.5 degree Monthly Climate Time-Series を, それぞれ用いた 4)SDSM の基本的な手法は, 以下の通りである 入力に用いる説明変数は地上気圧とし, その範囲は, 日本の降水量に対しては北緯 25~55 度, 東経 115~155 度の範囲とした 地上気圧と降水量の関係を示す正準相関解析の結果から, 現在の降水量を地上気圧パターンの時系列の組み合わせで説明する以下の重回帰式を作成した p Yij = Σ aim Zmj + bi (1) m=1 ここで Z mj は地上気圧 - 降水量間の CCA による, 降水変動に関連した地上気圧変動モードである 各成分 Z m は独立であるた め,a im は Y と Z の偏回帰係数を表す 地上気圧と降水量は, まず観測データ相互で検証を行った後, 実際の予測は, 後述す る 類似年降水量置換法 により行う 次に温暖化時の SLP 変化パターンZ`mj を,CNTL の正準相関パターンh m から構築した p p Zmj = Σ hmk Xkj Z`mj = Σ hmk X`kj k=1 k=1 ここで X kj は CNTL,X`kj は GCO2 で, それぞれ k グリッドにおける j 年の SLP 偏差,h mk は CNTL および GCO2 に共通な正準相 関パターンである 最終的には (1) 式の Z mj を Z`mj に入れ替えて, 温暖化時の降水量予測値 Y`ij を算出した 5) 解析は, 春夏秋冬の季節単位で行った ただし各季節は春 :3~6 月, 夏 :6~9 月, 秋 :9~12 月, 冬 :12~3 月の 4 ヶ月間とし, 重複する 6,9,12,3 月の結果が類似するように季節ごとの採用成分数を調整した 研究成果 1) 日本における降水量変動は, どの季節においても, その分散の相当な部分が地上気圧の変動のみで説明できることを示した 図 -1 は, 正準相関解析を用いた 1981~2000 年の日本の夏季 (6~9 月 ) 降水量変動, およびそれと相互の相関の高い地上気圧偏差である また参照用として, 降水量変動と有意な相関ある 850hPa 面風ベクトル偏差をも示している これによると第 1 成分として, 日本の南西海上での地上気圧の正偏差, すなわち北太平洋高気圧の西方への張り出しと本州太平洋岸の少雨との関連が ( 図 -1a), 第 2 成分として高気圧の縁辺を回る南西気流 ( 湿舌 ) の流入と西南日本の多雨との関連が ( 図 -1b), それぞれ示された 図 -1 東アジア域の地上気圧と日本の降水量の正準相関解析における上位 2 成分 等値線は地上気圧, 陰影は降水量, 矢羽根は 850hPa 面風 ( 参照 ) の偏差をそれぞれ表す 95

3 ここでこれらを含む上位 8 成分の地上気圧変化パターンを説明変数とする重回帰式を作成し, 日本における観測降水量が正しく再現できるか検証を行うと, 中国から九州北部にかけての地域および中部内陸部に説明率の悪い地域が見られるものの, 特に北日本, 四国の太平洋岸および九州と紀伊半島の東側で観測降水量の分散の 50% 以上を説明できることがわかった ( 図 -2) 実際に,7 月における観測降水量と地上気圧変動のみで再現または推測される降水量を比較したものを図 -3 に示す ここでは北日本を秋田で, 東日本を東京 ( 図 -3b) で, 西日本を高知 ( 図 -3c) で, それぞれ代表させたが, いずれも解析期間の 1981~2000 年のみならず, 独立資料を用いた検定期間となる 1979~1980 年および 2001 年の降水量についても, よく再現できていることを示す 例えば秋田では 1987 年から 1991 年の連続した多雨年 少雨年がほぼ正確に再現されている ( 図 -3a) また東京では, 梅雨明けが宣言されないという顕著な冷夏年であった 1993 年や,1999 年など最近の多雨傾向をよく再現し ( 図 -3b), また高知でも, 同じく 1993 年および 1998 年の多雨はほぼ地上気圧変動のみで説明できることを示している ( 図 -3c) 図 ~2000 年の夏季における観測された月平均地上気圧と月降水量の正準相関解析の結果をもとに, 同期間の 7 月の降水量を説明できる割合を % で示す 図 -3 夏季における正準相関解析の上位 8 成分の地上気圧を入力とし再現した降水量 ( 赤 ) と観測された降水量 ( 青 ) の比較 いずれも 1981~2000 年の平均を 100 とする比で表す 2) 上で得られた重回帰式に,GCM で計算された温暖化時の地上気圧偏差を入力すると, いちおうの温暖化予測値が計算できる しかしながら GCM と観測場においては, そもそも平均場としての作用中心, すなわち北太平洋高気圧やオホーツク海高気圧, 梅雨前線などの位置が異なる したがって正準相関解析で得られた観測地上気圧の偏差場に対し,GCM で得られた地上気圧偏差をそのまま入力するのには問題が残る このためここではその問題を解決する試みとして,GCM の降水量を GCM の地上気圧偏差に類似した観測年の降水量で置き換えることにより, これらの系統的差異を解消する 類似年降水量置換法 を導入した 以下に, その例を示す 図 -4(a) は,MRI/JMA98-AGCM における 1981 年 7 月の地上気圧偏差と降水量の比である 地上気圧偏差より, 北太平洋高気圧の張り出しが北に偏り, それに覆われる日本は GCM 中では少雨となっている いっぽう図 -4(b) は,1979~2001 年の 7 月のうち図 -4(a) の地上気圧偏差と最も類似度の高い

4 年 7 月の地上気圧偏差および降水量比である 地上気圧偏差は, 概ね GCM のものと類似しているが, 降水量偏差はやや北に偏り北日本で少雨であり, 高気圧性偏差の南側に位置する本州太平洋岸では多雨となっている 本課題で取り扱う SDSM においては,GCM から得られる地上気圧偏差を入力とするため,GCM 中の降水量を実際の降水量で置き換える必要があることから, 各年各月の GCM 地上気圧偏差に対応する類似度の高い 5 年の降水量を GCM の降水量と置き換えることを行った 図 -4(c) は, その例である GCM の地上気圧偏差に対応した降水量分布は, 最も相関の高かった 1989 年のように, 北日本で少雨, 太平洋岸で多雨という, 現実に即したものとなった 最終的には, ここで得られた GCM 地上気圧偏差と置き換えられた降水量との間で改めて正準相関解析を行い, 上記研究方法に示した手順に従って, 得られた上位成分の地上気圧偏差で降水量を説明する重回帰式を作成し, 温暖化時の地上気圧偏差を入力して, 温暖化時の予測降水量を得ることになる 図 -4 GCM と観測における循環場を類似させる方法の一例 (a) は MRI/JMA98-AGCM における 1981 年 7 月の地上気圧偏差 ( 等値線 ) および降水量比 ( 陰影 ) (b)1979 ~2001 年の 7 月の観測地上気圧場のうち (a) の地上気圧偏差と最も類似度の高い 1989 年 7 月の地上気圧偏差および降水量比 (c)(a) の地上気圧偏差に, 観測地上気圧場のうち類似度の高い 5 年の降水量比を平均したものを重ね合わせたもの 3) 実際に温暖化時の地上気圧偏差を入力し, 日本域における 10km メッシュの降水量予測値を算出した 図 -5a は MRI/JMA98-AGCM 自身による, 約 50 年後に当たる 20 年平均の 7 月降水量と循環場の変化である GCM では, 温暖化時には夏の南西アジアモンスーンが強化され, それに伴い黄海 ~ 朝鮮半島 ~ 日本海にかけて梅雨前線が強化されて降水量が増加している また北太平洋高気圧の日本への張り出しも強まり, その圏内に入る本州太平洋岸の降水量は, やや減少となっている この地上気圧偏差に SDSM を適用した結果 ( 図 -5b) は, 温暖化時の降水量は日本海側で増加, 太平洋側で減少と GCM に比較的類似したものとなったが, 降水量の減少傾向が特に関東地域で顕著となっている いっぽう図 -5 には,CCSR/NIES-AGCM5.6 を用いた例を示す GCM 自身の予測結果では, 北太平洋高気圧の西方への張り出しは MRI/JMA98 のものと比べてやや南に偏る傾向にあるが, 日本の南方で正偏差となる傾向は共通している ( 図 -6a) いっぽう GCM 自身による降水量予測は,MRI/JMA98 とは異なり, 降水量は九州から東シナ海にかけて増加となっている これに SDSM を適用した結果 ( 図 -6b) では, 降水量は太平洋側, 特に関東で減少, 日本海側で増加と MRI/JMA98 に SDSM を適用した結果と類似したものとなった 97

5 図 -5 GCM と SDSM による約 50 年後 (2041~2060 年平均 ) の 7 月降水量予測値の比較 (a) は MRI/JMA-98 AGCM による,SRES-A2 シナリオによるモデル予測値 (b) はその地上気圧を用いて SDSM により再計算した予測結果 陰影域で表した降水量変化は (a) は基準実験,(b) は観測平均値 ( いずれも 1981~2000 年 ) に対する比 (%) GCM で計算された地上気圧と 850hPa 面風の偏差は, 等値線とベクトルでそれぞれ (hpa または m/s) 表す 図 -6 図 -5 に同じ ただし CCSR/NIES-AGCM5.6 による 7 月のもの ここまでは温暖化時の 20 年平均の結果であるが, さらに年々の予測結果がどのようになっているのかを示す 図 -7 は, CCSR/NIES による 7 月の日本の 6 地点における SDSM 予測降水量, および GCM 予測降水量との比較である 20 年平均の空間分布図 ( 図 -6b) に示されているように, 秋田 ( 図 -7a) や富山 ( 図 -7d) などの日本海側地域では,SDSM による予測降水量は GCM 自身によるものに比べて多くなっている ( ただし秋田では年々変動が大きく,GCM 降水量よりも下回る年もある ) これに対し東京( 図 -7b) や高知 ( 図 -7e) などの太平洋側の地点では, 数年を除きほとんどの年で,SDSM 予測降水量は GCM 降水量を下回っている 98

6 図 -7 CCSR/NIES-AGCM5.6 による 7 月の SDSM 予測降水量と ( 赤 ) と GCM 自身による予測降水量 ( 青 ) の比較 いずれも 1981~2000 年の平均を 100 とする比で表す 4) 冬季についても, 同様の解析を行った 図 -8a は,CCSR/NIES-AGCM5.6 自身による 1 月の予測結果である GCM によると, 温暖化時の冬季には, 西高東低のいわゆる冬型の気圧配置をもたらすシベリア高気圧とアリューシャン低気圧はそれぞれ弱まり, それに伴い北西季節風も弱まる また日本の南岸での気圧の低下は, いわゆる南岸低気圧が頻発することを示している このため降水量は, 日本のみならずアジア陸域のほとんどの領域で増加している いっぽうで日本海上には, 降水量減少域がわずかにみられるが, 数グリッドのものであり, しかも GCM のグリッド配置から実際の陸域には一致していない ここで SDSM を適用することにより, 日本の地形に対応した太平洋側で増加, 北陸 ~ 東北の日本海側で減少という結果が示された ( 図 -8b) ちなみに高い空間解像度により, 地域性の再現が望まれる RCM の結果においては, 日本海側の降水量減少は示されていない ( 図 -8c) 99

7 図 -8 (a) および (b) は図 -5 に同じ, ただし CCSR/NIES-AGCM5.6 による 1 月のもので, また (c) は NIES-RCM 自身による 1 月の結果を表す 考察 1) まず本課題で用いた SDSM の方式自体の信頼性について, 考察を行う 一般に気温は, 広域代表性があり,GCM による予測においても降水量に比して一定の信頼性を持つとされる このため同じ手法を気温についても適用し, 本手法の有効性を検証した 図 -7 は東アジア域において, 入力変数を HadCM3 の 500hPa 面高度とするほかは全く同じ手法で気温を予測した結果である これによると SDSM による気温予測値は夏季 ( 図 -7b) 冬季( 図 -7d) とも,GCM 自身による結果 ( 夏季 : 図 -7a; 冬季 : 図 -7c) とよく類似した結果が再現されていることがわかる 特に SDSM 予測においても, 冬季の中国内部の局所的な強い昇温域も再現されていることが注目される この結果は, 気温に比して地域性が大きく GCM 自身による再現や予測が難しいとされる降水量についても, 変数の選択が適切であれば本手法の適用が極めて有効であることを示している 100

8 図 -9 GCM と SDSM による約 50 年後 (2041~2060 年平均 ) の気温予測値の比較 (a) および (c) は, それぞれ 1 月と 7 月の HadCM3 による,SRES-A2 シナリオによるモデル予測値 (b) および (d) はその 500hPa 面高度を用いて SDSM により再計算した予測結果 陰影域で表した気温変化は (a)(c) は基準実験,(b)(d) は観測平均値 ( いずれも 1981~2000 年 ) に対する差 ( ) GCM で計算された 500hPa 面高度の偏差は, 等値線で表す 2) 次に, 本課題で得られた結果自体の信頼性について検討する 夏季の 7 月において,MRI/JMA98 および CCSR/NIES の 2 つの GCM 自身の降水量予測結果は異なっているものの, その地上気圧を用いた SDSM 予測では日本海側で増加 / 太平洋側で減少という降水量変化の分布は一致している これは北太平洋高気圧の西偏 強化の傾向が,2 つの GCM の間で比較的一致しているからである ( 図 5-a および図 5-b) またこの SDSM の結果は, 本プロジェクトとは別個に行われている,RCM を用いた気象庁気候統一シナリオの結果とも類似しているほか, 世界の他の複数の GCM でも, 温暖化時の夏季には北太平洋高気圧の強化 西偏の傾向がみられるため, あながち的はずれではないと考えられる 3) 最後に, 本課題で構築した方式を含む SDSM による温暖化予測のメリットとデメリットについて, 総合的に検討する メリットについては, これまで述べてきたように GCM の出力を用いて, 気候の現象やモデリングに精通していなくても容易に温暖化時の気候シナリオが作成でき, かつ目的に応じた様々な領域や入力変数の設定を行うことができるのが SDSM の最大のものである いっぽうで, このような平易な方法には, 当然それに見合う限界点や問題も数多く存在する 例えば本課題で用いた線形回帰手法をとってみただけでも, 以下のような問題点が存在し, その解決に当たっては難しい面も多い 1. 有効な時間解像度は月降水量が適当で, 半旬程度までが限界である 現在の気候変化予測では, 長期間継続する渇水のみならず, 極端な気候, すなわち雨でいえば集中豪雨などの日 時間単位の降水量の変化に関心が集まっているが, これに解答するためには,2 節で述べた天気図型や確率論を適用する必要がある 2. 循環要素と気候要素の線形関係 ( 例えば (1) 式 ) は将来も不変か? SDSM に取り組む数多くの研究が共通して抱える悩みで, 基本的には不変との仮定を置くか, 非線形性やランダム性を考慮するしかない 101

9 3. 重回帰式で有意な線形関係のみを拾うため, 計算される降水量の分散は現実に比して小さくなる ここでは, 統計式の Calibration の時点で計算値の分散が現実の気候値の分散にあうように Adjust しているが, このような インフレーション 手法は誤りで, ランダムノイズを加算する方法をとるべきとする見解もある 4. 温暖化に伴って, 一般には大気中に含まれる水蒸気量が増加するとされるが, 降水量の減少予測は信頼できるか? ここでは, 結果の 2) における類似年の作成に当たって GCM の降水量を現実降水量で置き換える際に, 過去の高温年における降水パターンを取り入れられるようにしているが, この処理は当然, 物理過程に基づくものではない また単に降水量にゲタを履かせるようなものも, 望ましくないであろう 5.GCM による循環要素の予測値は真か? また基準実験ですでに現実場との系統的差異がみられる場合はどうか? この点,RCM と同様の問題を抱える 例えば夏季において,GCM で北太平洋高気圧の南北位置の表現に 1 グリッドのずれがあると, 日本の降水量分布は大幅に変わることになる 入力要素を RCM の出力に変えても, 結局は親 GCM の問題から逃れることはできない また複数 GCMの出力の平均を入力とすることも考えられるが, 各 GCMで基本場にずれがあれば, 単にグリッド位置を合わせた平均だけでは, 問題解決にはならない さらにこれは SDSM の問題ではないが, 入力に用いる GCM を選択する場合に, それが結合モデルによるものか海面水温を境界条件とする大気モデルによるものかに注意を要する というのは大気モデルによる結果は, 一般に偏差が大きい, つまり温暖化による影響が循環場においても過大に評価される可能性があるからである 2 引用文献 1. 清野豁 : アメダスデータのメッシュ化について, 農業気象, Vol.48, , (1993) 2. Kitoh, A. and Arakawa, O: On overestimation of tropical precipitation by an atmosphere GCM with prescribed SST, Geophys. Res. Lett., Vol.26, (1999) 成果の発表原著論文による発表国内誌 ( 国内英文誌を含む ) なし 国外誌なし 原著論文以外による発表 ( レビュー等 ) 国内誌 ( 国内英文誌を含む ) 1. 西森基貴, 鬼頭昭雄 : 統計的ダウンスケーリング手法による温暖化時の夏季東アジア域の降水量予測, 第 6 回水資源に関するシンポジウム論文集, , (2002) 2. 西森基貴 : 地球温暖化が農林生態系に及ぼす影響.1. 気候変化 ( 地球温暖化 ) の実態とその予測, 日本土壌肥料学会誌, 第 73 巻, , (2002) 3. 西森基貴, 鳥谷均 : 統計的ダウンスケーリング手法による気候変化予測とその限界点, 水文 水資源学会 気候変動が水資源に与える影響評価研究会 平成 16 年度報告書, ( 印刷中 :2004) 102

10 国外誌なし 口頭発表招待講演なし 応募 主催講演等 1. 西森基貴, 鬼頭昭雄 : 統計的ダウンスケーリング手法を用いた温暖化時の夏季東アジア域の降水量予測結果の比較, さいたま, 日本気象学会 2002 年春季大会, 西森基貴, 鬼頭昭雄 : 統計的ダウンスケーリング手法の改善と温暖化時の日本域における降水量予測, 仙台, 日本気象学会 2003 年秋季大会, Nishimori, M: Estimation of Future Regional-Scale Precipitation Changes over East Asia by using Statistical Downscaling Method, Tsukuba, Symposium on Water Resource and its Variability in the 21st Century, Nishimori, M: Estimation of Future Regional-Scale Climate Change over East Asia by using Statistical Downscaling Method, Tsukuba, International Workshop on Prediction of Food production Variation in East Asia under Global Warming, 特許等出願等なし 受賞等なし 103

(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

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